(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004447
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】水中沈殿物回収システムおよび水中沈殿物回収方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/88 20060101AFI20250107BHJP
E02F 5/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
E02F3/88 A
E02F5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104139
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】西沢 孝壽
(72)【発明者】
【氏名】花岡 草
(72)【発明者】
【氏名】菊池 史朗
(72)【発明者】
【氏名】内島 大作
(72)【発明者】
【氏名】鎌原 健志
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 茂男
(72)【発明者】
【氏名】松平 昌之
(57)【要約】
【課題】ホースがロボットの移動を妨げることがなく、且つロボットがホースを引きながら移動する際の負荷を軽減することが可能な水中沈殿物回収システムおよび水中沈殿物回収方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる水中沈殿物回収システムの構成は、浸水したフロアの沈殿物を回収して集積する水中沈殿物回収システム100aであって、浸水したフロアを走行して沈殿物を吸引するロボット100と、ロボットの上部に配置されて吸引した沈殿物を外部に吐出する吐出ノズル156と、フロアの水面を走行可能な運搬ボート200と、を備え、運搬ボート200は、底面が開閉可能なバケット210と、バケットを水面に浮かせる浮体220と、バケットを移動させるスクリュー230と、を有し、吐出ノズル156は、ロボットに隣接された運搬ボートのバケットに沈殿物を吐出可能な位置に設置されていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸水したフロアの沈殿物を回収して集積する水中沈殿物回収システムであって、
前記浸水したフロアを走行して前記沈殿物を吸引するロボットと、
前記ロボットの上部に配置されて前記吸引した沈殿物を外部に吐出する吐出ノズルと、
前記フロアの水面を走行可能な運搬ボートと、
を備え、
前記運搬ボートは、
底面が開閉可能なバケットと、
前記バケットを水面に浮かせる浮体と、
前記バケットを移動させるスクリューと、
を有し、
前記吐出ノズルは、前記ロボットに隣接された前記運搬ボートのバケットに前記沈殿物を吐出可能な位置に設置されていることを特徴とする水中沈殿物回収システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水中沈殿物回収システムを用いて、浸水したフロアの沈殿物を回収して集積する水中沈殿物回収方法であって、
前記運搬ボートを前記ロボットの吐出ノズルの下方に移動し、
前記ロボットは、前記フロアを走行して前記沈殿物を吸引しつつ、該吸引した沈殿物を前記運搬ボートのバケットに吐出し、
前記運搬ボートを前記沈殿物の集積場所まで移動し、
前記バケットの底面を開いて該バケット内の前記沈殿物を前記集積場所に放出することを特徴とする水中沈殿物回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸水したフロアの沈殿物を回収して集積する水中沈殿物回収システム、およびそれを用いた水中沈殿物回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水質汚染を防止するためや、水中に沈殿している有害物を除去するために、水中に沈殿している沈殿物を回収することが行われている。沈殿物を回収する手段としては、例えば特許文献1に汚泥回収装置および方法が開示されている。特許文献1の汚泥回収装置は、水中を移動可能であると共に水底の汚泥を吸引して回収可能な浚渫装置と、水中を移動可能であると共に浚渫装置により回収された汚泥から水分を除去した回収物を回収物受槽に貯蔵する処理装置と、処理装置に電力や高圧空気などを供給する設備車とを有している。
【0003】
ところで、例えば原子力発電所建屋では、水中の放射線量を低減するために、放射線物質を吸着する吸着材(例えばゼオライト)を袋に収納した土嚢を水中に載置することがある。この土嚢の内容物を回収する場合、内容物が土嚢に収容されたままであると、特許文献1の汚泥回収装置では、沈殿物を回収することができない。
【0004】
そこで発明者らは、「水中を走行可能なロボット本体と、ロボット本体に対して装着されたコンテナと、ロボット本体に搭載されコンテナを通じて沈殿物を吸引する内蔵ポンプと、ロボット本体の下部の前方に縦向きに軸支され自由回転可能なチップソーとを備えた」水中沈殿物回収ロボットを開発した(特許文献2)。
【0005】
特許文献2の水中沈殿物回収ロボットによれば、チップソーを押し当ててロボット本体が左右に回転運動することで土嚢の袋を破き、土嚢から流出した内容物をロボット本体の内蔵ポンプによって吸引して回収することができる。したがって、内容物が土嚢に収容された状態であっても内容物を効率的に回収することができ、沈殿物の回収作業を迅速に行うことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-125754号公報
【特許文献2】特開2022―147083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、特許文献2の水中沈殿物回収ロボット(以下、ロボットと称する)のコンテナに貯留された沈殿物の回収方法について検討した。詳細には、「沈殿物をコンテナ内に貯留した状態のロボットを集積場所まで移動し、ロボットからコンテナを取り外す。そしてコンテナの内部の沈殿物を集積場所に放出する。その後、集積場所に設置された吸引装置とロボットとを連結し、吸引装置によってコンテナ内のゼオライトを吸い上げる。」という運用方法を検討した。
【0008】
さらに、発明者らは、現地状況に応じて様々な回収方法を適用できるように、ロボットによって回収した沈殿物を、コンテナに貯留せずに、直接集積場所に移送する運用方法について検討を行った。この場合、ロボットに連結したホースの吐出口を集積場所に配置して沈殿物を移送することになる。しかし、沈殿物はフロアの広い範囲に散在しているため、ホースの長さは最大で50m以上の長さになることがある。すると、ロボットはホースを引っ張りながら移動することになり、ホースがロボット移動の妨げになる可能性がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、ホースがロボットの移動を妨げることがなく、且つロボットがホースを引きながら移動する際の負荷を軽減することが可能な水中沈殿物回収システムおよび水中沈殿物回収方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる水中沈殿物回収システムの代表的な構成は、浸水したフロアの沈殿物を回収して集積する水中沈殿物回収システムであって、浸水したフロアを走行して沈殿物を吸引するロボットと、ロボットの上部に配置されて吸引した沈殿物を外部に吐出する吐出ノズルと、フロアの水面を走行可能な運搬ボートと、を備え、運搬ボートは、底面が開閉可能なバケットと、バケットを水面に浮かせる浮体と、バケットを移動させるスクリューと、を有し、吐出ノズルは、ロボットに隣接された運搬ボートのバケットに沈殿物を吐出可能な位置に設置されていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明にかかる水中沈殿物回収方法の代表的な構成は、上記に記載の水中沈殿物回収システムを用いて、浸水したフロアの沈殿物を回収して集積する水中沈殿物回収方法であって、運搬ボートをロボットの吐出ノズルの下方に移動し、ロボットは、フロアを走行して沈殿物を吸引しつつ、吸引した沈殿物を運搬ボートのバケットに吐出し、運搬ボートを沈殿物の集積場所まで移動し、バケットの底面を開いてバケット内の沈殿物を集積場所に放出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ホースがロボットの移動を妨げることがなく、且つロボットがホースを引きながら移動する際の負荷を軽減することが可能な水中沈殿物回収システムおよび水中沈殿物回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本実施形態のロボットおよび運搬ボートの全体斜視図である。
【
図3】本実施形態の回収ロボットが水中を走行する様子を説明する模式図である。
【
図4】本実施形態にかかる水中沈殿物回収システムを説明する模式図である。
【
図5】比較例の水中沈殿物回収システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
(原子力発電所建屋10)
図1は、原子力発電所建屋10の概略図である。なお、本実施形態では沈殿物を回収する施設として原子力発電所建屋10を例示したが、これに限定するものではない。水中に沈殿物が堆積している施設であれば、他の施設であっても上述した本実施形態にかかる沈殿物回収ロボット(以下、ロボット100と称する)を好適に用いることが可能である。
【0016】
図1に示すように、原子力発電所建屋10は、地上複数階、地下複数階建ての建物(
図1では地上2階、地下2階建ての建物を例示)である。1Fは地上への出入り口であり、最地下のB2Fに滞留水が貯蔵されている。この滞留水の放射性物質を吸着するために、B2Fには袋に吸着材(例えばゼオライト等)を詰めた土嚢12が設置されている。本実施形態のロボット100は、水中に沈殿した吸着材を沈殿物として回収する。
【0017】
原子力発電所建屋10のB2Fには、ロボット100が配置される。ロボット100は、1Fの天井に設置されている天井クレーン14によってB2Fに搬入される。ロボット100はB2Fに到着するとフック16から外れて水中を自走する。ロボット100にはフロートケーブル18が接続されて、電源盤20からの電源が供給されると共に、カメラの画像データや各種センサーの信号が遠隔制御装置22に送信される。
【0018】
図1に示す天井クレーン14は、ロボット100を、水中に搬入し且つ水中から搬出する。詳細には、本実施形態では、ロボット100は、天井クレーン14に吊り下げられた状態で1FからB2Fに搬入される。ロボット100が、水中を走行しながら沈殿物を回収する。回収作業後のロボット100は、フロートケーブル18が巻取装置24によって巻き取られ、シャワー26によって洗浄された後に、クレーン14のフックに掛けて引き上げられて搬出される。
【0019】
(ロボット100)
図2は、本実施形態のロボット100および運搬ボート200の全体斜視図である。理解を容易にするために、本実施形態にかかる水中沈殿物回収システムにおいて用いられるロボット100について先に説明する。
【0020】
図2に示すロボット100は、浸水したフロア(本実施形態ではB2Fを例示)を走行し、フロアに沈殿している沈殿物を吸引する。ロボット100は、水中を走行可能なロボット本体110、フロート140、沈殿物吸込機構150、吐出ノズル156、離接機構160、スクリュー190およびロボット制御部102を備える。
【0021】
図2に示すようにロボット100は、枠体120およびクローラ130を含んで構成される。枠体120は、上部を構成する上部フレーム122、および下部を構成する下部フレーム124によって構成されている。上部フレーム122にフロート140が備えられ、下部フレーム124にロボット本体110が構成される。
【0022】
ロボット本体110は、下部フレーム124に沈殿物吸込機構150が搭載されている。沈殿物吸込機構150は、吸込口152および吸込ポンプ154を含んで構成され、水底の沈殿物を回収する。吸込口152は、例えば吸引ノズルであって、ロボット本体110の下方においてクローラ130の間に配置されている。吸込口152には吸込ポンプ154が連結ホース154aを介して接続されている。これにより、吸込ポンプ154を駆動すると、水底の沈殿物が吸込口152に吸い込まれて回収される。
【0023】
なお、沈殿物の内容物が土嚢12に収容された状況において土嚢12から内容物を取り出したい場合は、クローラ130により土嚢12を踏みにじり、土嚢12を破いた後に吸込口152より内容物を回収するようにしてもよい。または、ロボット本体110の下部の前方にチップソーのような切断部材を取り付けるようにしてもよい。この場合、チップソーを用いて土嚢12を破き、吸込口152より内容物を回収することができる。
【0024】
図2に示すように上部フレーム122の内部にはフロート140が配置されている。フロート140は、中空の筐体であり、内部に空気が密封されている。これにより、フロート140が浮力源となり、水中でロボット100を浮かせることが可能となる。
【0025】
フロート140の内部には、例えば回路基板や撮像装置等の電装品(不図示)を収容可能である。本実施形態では、遠隔制御装置22(
図1参照)と接続されて当該ロボット100の動作を制御するロボット制御部102がフロート140の内部に収容されている。これにより、浸水による電装品の故障を好適に防ぐことができる。
【0026】
またロボット100の上部、すなわち上部フレーム122には吐出ノズル156が配置されている。吐出ノズル156は、ロボット100(厳密には沈殿物吸込機構150)が吸引した沈殿物をロボット100の外部に吐出する。吐出ノズル156は、連結ホース158によって吸込ポンプ154に連結されている。これにより、上部フレーム122が下部フレーム124に対して離接(昇降)しても、吸込ポンプ154と吐出ノズル156の接続が維持される。
【0027】
上述したロボット本体110とフロート140とは、離接機構160によって離接可能に連結されている。また
図2に示すように本実施形態のロボット100は、ロボット本体110を水中で推進させるスクリュー190を有する。スクリュー190としては、例えばモータと一体型のものを好適に用いることができる。
図2ではスクリュー190が側部に2つ、後部に2つ(1つは見えていない)を配置されている構成を例示するが、これに限定するものではなく、スクリュー190の数は必要に応じて適宜変更してよい。
【0028】
図3は、本実施形態のロボット100が水中を走行する様子を説明する模式図である。
図3では、滞留水の(水面40aから水底40bまでの)水深は1.5m程度を想定している。本実施形態のロボット100では、通常走行時には離接機構160を伸長させて、
図3(a)に示すようにフロート140をロボット本体110から離間させる。これにより、ロボット100がクローラ130によって水底40bを走行する。
【0029】
前方における障害物12aの存在が検出されたら、ロボット制御部102は離接機構160を収縮させる。すると、フロート140がロボット本体110に近接して浮体が水没した状態となり、ロボット100全体がフロート140の浮力によって浮上する。
【0030】
そしてフロート140が近接した状態でスクリュー190によってロボット本体110を水中で推進させることにより、
図3(c)に示すように障害物12aを乗り越える。このように本実施形態のロボット100によれば、フロート140の浮力を利用することにより水中に存在する障害物12aを乗り越えることができるため、水中の沈殿物の回収作業を効率的に進めることが可能である。
【0031】
また本実施形態のロボット100のようにフロート140に浮力が作用することにより、ロボット100の姿勢が傾いた際でも倒れてしまうことがなく、正しい姿勢に復帰することができる。このため、ロボット100の姿勢を安定した状態で維持することが可能である。
【0032】
(水中沈殿物回収システム)
図4は、本実施形態にかかる水中沈殿物回収システム(以下、回収システム100aと称する)を説明する模式図である。なお本実施形態では、回収システム100aについて詳述しつつ、それを用いた水中沈殿物回収方法についても併せて説明する。
【0033】
図4に示す本実施形態の回収システム100aは、浸水したフロア(B2F)の沈殿物を回収して集積場所Pに集積する。本実施形態の回収システム100aは、上述したロボット100、ロボット100に設けられた吐出ノズル156、および運搬ボート200を含んで構成される。なお、ロボット100の詳細については説明を割愛し、吐出ノズル156の詳細については後述する。
【0034】
運搬ボート200は、浸水したフロアの水面40aを走行可能であり、ロボット100が吸引した沈殿物Sを積載し、それを集積場所Pに移送する。
図2および
図4に示すように運搬ボート200は、バケット210、浮体220およびスクリュー230を含んで構成される。
【0035】
バケット210は、上面が開口していて、且つ底面212が開閉可能であって、沈殿物Sを積載する。浮体220は、バケット210の側面214に取り付けられていて、バケット210に対して浮力を付与する。スクリュー230は、バケット210に取り付けられ、バケット210ひいては運搬ボート200を推進させる駆動源である。運搬ボート200は、浮体220によって水面40aに浮くことが可能となり、スクリュー230によって水面を走行可能となる。
【0036】
図5は、比較例の水中沈殿物回収システム(以下、回収システム80と称する)を説明する図である。なお、本実施形態の回収システム100aと比較例の回収システム80との共通要素については、同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0037】
図5に示すように比較例の回収システム80では、1つの回収穴52および移送穴60が床50に形成されていて、それらには、ホースリール30に支持された1本の移送ホース32が挿通されている。移送ホース32は、一端がロボット100に直結されていて、他端が集積場所Pに配置されている。
【0038】
図5に示す比較例の回収システム80では、ロボット100は、浸水したフロア全体において走行して沈殿物を回収するのと並行して、移送ホース32を通じて沈殿物を集積場所Pに移送する。移送ホース32は、浸水したフロア全体に届く必要があるため、その長さは、フロアの広さにもよるが最大で50m以上の長さになることがある。すると、移送ホース32を引きながら移動する際のロボット100の負荷が大きく、また移送ホース32がロボット100の移動を妨げるおそれがある。
【0039】
そこで本実施形態の回収システム100aでは、水中を走行して沈殿物Sを吸引するロボット100、および水面40aを走行して沈殿物Sを運搬する運搬ボート200を用いて沈殿物Sの回収を行う。本実施形態の特徴としてロボット100の吐出ノズル156の吐出口156aは、ロボット100に隣接した運搬ボート200のバケット210に沈殿物Sを吐出可能な位置に設置されている。
【0040】
浸水したフロアの沈殿物Sを回収する際には、
図4に示すように、運搬ボート200は、バケット210の上面がロボット100の吐出ノズル156の吐出口156aの下方に位置するように移動する。このとき、運搬ボート200がスクリュー230の推進力によってロボット100に付勢することにより、バケット210と吐出ノズル156の吐出口156aとが位置決めされる。
【0041】
ロボット100は、運搬ボート200が隣接した位置に配置されたら、フロアを走行して沈殿物Sを吸引しつつ、吸引した沈殿物Sを運搬ボート200のバケット210に吐出する。このとき、運搬ボート200はロボット100に付勢しているため、ロボット100が移動すると運搬ボート200もそれに追従して移動する。また運搬ボート200のバケット210の底面212は閉状態となっている。
【0042】
ロボット100からバケット210に吐出された沈殿物Sが所定量に到達したら、運搬ボート200はロボット100から離れて沈殿物Sの集積場所Pまで移動する。そして運搬ボート200はバケット210の底面212を開状態とし、バケット210内の沈殿物Sを集積場所Pに放出する。これにより、浸水したフロアの沈殿物が、ロボット100によって回収され、運搬ボート200によって移送(運搬)されて集積場所Pに集積される。
【0043】
上記説明したように本実施形態の回収システム100aおよびそれを用いた水中沈殿物回収方法によれば、ロボット100によって吸引した沈殿物Sを、移送ホース32を用いることなく集積場所Pに移送することができる。したがって、ロボット100に対してかかる移送ホース32の負荷が軽減され、且つ移送ホース32がロボット100の移動を妨げることがない。故に、ロボット100がフロアを好適に移動することができ、沈殿物Sを効率的に回収することが可能となる。
【0044】
なお本実施形態では、所定量の沈殿物Sがバケット210に積載されたら運搬ボート200が集積場所Pに移動する構成を例示したが、これに限定するものではない。例えばロボット100による沈殿物Sの吐出時間が所定時間を経過したら運搬ボート200の集積場所Pへの移動を開始する等、他の条件によって運搬ボート200の集積場所Pへの移動を開始する構成とすることも可能である。
【0045】
また本実施形態では、1つのロボット100に対して1つの運搬ボート200を用いる構成を例示しているが、これに限定するものではない。例えば1つのロボット100に対して複数の運搬ボート200を用いてもよく、ロボット100の数と運搬ボート200の数は必要に応じて適宜変更してよい。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、浸水したフロアの沈殿物を回収して集積する水中沈殿物回収システム、およびそれを用いた水中沈殿物回収方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10…原子力発電所建屋、12…土嚢、12a…障害物、14…天井クレーン、16…フック、18…フロートケーブル、20…電源盤、22…遠隔制御装置、24…巻取装置、26…シャワー、30…ホースリール、32…移送ホース、40a…水面、40b…水底、50…床、52…回収穴、60…移送穴、80…回収システム、100…ロボット、100a…回収システム、102…ロボット制御部、110…ロボット本体、120…枠体、122…上部フレーム、124…下部フレーム、130…クローラ、140…フロート、150…沈殿物吸込機構、152…吸込口、154…吸込ポンプ、154a…連結ホース、156…吐出ノズル、156a…吐出口、158…連結ホース、160…離接機構、190…スクリュー、200…運搬ボート、210…バケット、212…底面、214…側面、220…浮体、230…スクリュー、P…集積場所、S…沈殿物