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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004453
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20250107BHJP
【FI】
B60W50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104146
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 伸
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA60
3D241BB24
3D241CC14
3D241CC15
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA22Z
3D241DA39Z
3D241DB01Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB10Z
3D241DB32Z
3D241DC46Z
3D241DD11Z
(57)【要約】
【課題】ユーザによる選択操作時における操作性や即応性を改善することができる車両制御装置を提供すること。
【解決手段】車両制御装置10は、走行環境検出部11と、コントローラとしてのECU12と、を備えている。そして、ECU12は、走行環境検出部11によって検出された走行環境を表す走行環境情報を取得する。又、ECU12は、走行環境情報に基づいて車両1が悪路を走行するオフロード走行状態であるか否かを判定する。又、ECU12は、オフロード走行状態である場合、車両1が悪路を走行する際に適用可能な走行支援機能を判定する。更に、ECU12は、オフロード走行状態でない場合に比べて、判定した走行支援機能を選択操作されるまでに要する操作回数が少なくなるように表示態様を変更する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪のそれぞれに対して駆動力源が発生させる駆動力を分配すると共に前記駆動輪の各々の回転速度の差分を吸収できる差動装置と、
前記駆動輪のそれぞれに対して制動力を発生させると共に前記駆動輪の各々の前記制動力の大きさを互いに相違させることができる制動装置と、を備える車両に適用される車両制御装置であって、
前記車両の走行環境を検出する走行環境検出部と、
前記走行環境に応じて前記駆動力源、前記制動装置及び前記差動装置の作動状態を変更することができる走行支援機能が選択操作される操作パネルの表示態様を制御すると共に、選択された前記走行支援機能に対応して前記作動状態を変更して制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
検出された前記走行環境を表す走行環境情報を取得し、前記走行環境情報に基づいて前記車両が悪路を走行するオフロード走行状態であるか否かを判定し、前記オフロード走行状態である場合、前記車両が前記悪路を走行する際に適用可能な前記走行支援機能を判定し、前記オフロード走行状態でない場合に比べて、判定した前記走行支援機能を選択操作されるまでに要する操作回数が少なくなるように前記表示態様を変更する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記操作パネルは、複数の表示階層のうち任意の前記表示階層において前記走行支援機能を選択するためのソフトスイッチを任意の表示サイズにより表示するものであり、
前記コントローラは、
複数の前記表示階層のうち前記オフロード走行状態でない場合に前記ソフトスイッチを表示する変更前表示階層よりも上位の階層位置になる変更後表示階層にて前記ソフトスイッチを表示する前記表示態様、及び、前記オフロード走行状態でない場合よりも前記表示サイズが大きくなるように前記ソフトスイッチを表示する前記表示態様のうちの少なくとも一方に変更する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記走行支援機能の判定に関する判定要素に予め付与されている判定精度の信頼度に応じて、前記信頼度が高いほど上位となるように前記変更後表示階層の前記階層位置を変更する、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
判定した前記走行支援機能が選択操作されることが予測されるときに、前記表示態様を変更する、
請求項1-3の何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記オフロード走行状態である場合において、前記表示態様の変更に関して予め変更するように指示された場合に前記表示態様を変更する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示された車両制御装置が知られている。従来の車両制御装置は、駆動モード切替用の第一操作部と、オフロードモード切替用の第二操作部と、を備えている。又、従来の車両制御装置は、トランスファー装置のポジションを検出する検出部と、検出されたポジションと第一操作部及び第二操作部に対する各入力操作とに基づいて走行モードを設定する設定部と、駆動モード及び走行モードと多重表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-153272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両には、悪路を走行する際に運転者を支援する走行支援機能が搭載されるようになっている。ところで、走行支援機能のオンオフ等の選択は、急勾配や凹凸の大きな路面等、悪路走行中に操作される機会が多い。このため、前後左右に車両が傾いた状況や車両が振動し体が揺すられる状況でも正確に選択操作できるような操作性が求められる。又、悪路走行中の急な路面変化に対応するための即応性も求められる。
【0005】
一方で、近年の車両コックピットの多機能化やコネクテッドサービスの拡大等により、ソフトスイッチの設定可能なデバイスに多数の機能が集約される傾向がある。この場合、使用頻度の低い走行支援機能のソフトスイッチをデバイス内の上位の表示階層に配置することや、ソフトスイッチを操作しやすい大きな表示サイズによって表示することは、より使用頻度の高い他の機能の利用に影響を及ぼすことになる。従って、走行支援機能のソフトスイッチは、デバイス内の下位の表示階層に配置され、又、小さな表示サイズで表示される場合が多く、走行支援機能を利用する際の操作性や即応性が損なわれてしまう。
【0006】
本発明の目的は、運転者による選択操作時における操作性や即応性を改善することができる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両制御装置は、駆動輪のそれぞれに対して駆動力源が発生させる駆動力を分配すると共に駆動輪の各々の回転速度の差分を吸収できる差動装置と、駆動輪のそれぞれに対して制動力を発生させると共に駆動輪の各々の制動力の大きさを互いに相違させることができる制動装置と、を備える車両に適用される。本発明の車両制御装置は、走行環境検出部と、コントローラと、を備えている。走行環境検出部は、車両の走行環境を検出する。コントローラは、走行環境に応じて駆動力源、制動装置及び差動装置の作動状態を変更することができる走行支援機能が選択操作される操作パネルの表示態様を制御すると共に、選択された走行支援機能に対応して作動状態を変更して制御する。そして、コントローラは、検出された走行環境を表す走行環境情報を取得する。又、コントローラは、走行環境情報に基づいて車両が悪路を走行するオフロード走行状態であるか否かを判定する。又、コントローラは、オフロード走行状態である場合、車両が悪路を走行する際に適用可能な走行支援機能を判定する。更に、コントローラは、オフロード走行状態でない場合に比べて、判定した走行支援機能を選択操作されるまでに要する操作回数が少なくなるように表示態様を変更する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コントローラは、車両がオフロード走行状態である場合、判定した走行支援機能を選択操作されるまでの操作回数が少なるように、操作パネルの表示態様変更することができる。これにより、走行支援機能の選択操作時において、運転者は、正確な操作性と即応性とを満たして選択操作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の車両及び車両制御装置の概略的な構成図である。
図2】表示態様変更プログラムのフローチャートである。
図3】走行支援機能の判定要素を示す表である。
図4】表示態様の変更前のソフトスイッチの表示及び操作を説明する図である。
図5】表示態様の変更後のソフトスイッチの表示及び操作を説明する図である。
図6】第二変形例に係る表示態様変更プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態である車両制御装置10を、図面を参照しながら詳しく説明する。尚、本発明は、以下に説明する実施形態の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の形態で実施することができる。
【0011】
車両制御装置10は、図1に示す車両1に適用される。車両1は、車輪2を備えている。車輪2は、右前輪21、左前輪22、右後輪23及び左後輪24から構成される。又、車両1は、車輪2のそれぞれに駆動力、詳しくは、駆動トルクを伝達するため、エンジン3と、トランスミッション4と、差動装置としてのセンターデフ5、フロントデフ6及びリアデフ7と、を備えている。
【0012】
エンジン3は、車両1の駆動力源である。エンジン3が発生させる駆動トルクは、トランスミッション4に伝達される。トランスミッション4の入力軸はエンジン3と接続されている。トランスミッション4の出力軸はセンターデフ5と接続されている。これにより、トランスミッション4の出力軸から各々の車輪2に対して駆動トルクが分配される。
【0013】
具体的に、右前輪21及び左前輪22は、センターデフ5及びフロントデフ6を介してトランスミッション4から駆動トルクが分配される。又、右後輪23及び左後輪24は、センターデフ5及びリアデフ7を介してトランスミッション4から駆動トルクが分配される。つまり、車両1は、右前輪21、左前輪22、右後輪23及び左後輪24が駆動輪になることができる四輪駆動車である。
【0014】
ここで、車両1は、車室内に配置されたトランスファースイッチ8を備えている。これにより、運転者は、通常走行時の「HIレンジ」と悪路走行時の「LOWレンジ」とを切り替えることができる。そして、車両1においては、例えばセンターデフ5が「HIレンジ」又は「LOWレンジ」のトランスファーの機能を発揮するようになっている。
【0015】
フロントデフ6は、右前輪21及び左前輪22の各々の回転速度の差分を吸収することができる。リアデフ7は、右後輪23及び左後輪24の各々の回転速度の差分を吸収することができる。そして、センターデフ5は、右前輪21及び左前輪22と右後輪23及び左後輪24との間の回転速度の差分を吸収することができる。
【0016】
更に、車両1は駆動輪である車輪2のそれぞれに制動力を発生させるための制動装置9を備えている。制動装置9は、右前輪ブレーキ91、左前輪ブレーキ92、右後輪ブレーキ93、左後輪ブレーキ94、作動油加圧装置95及びブレーキ配管96を備えている。
【0017】
作動油加圧装置95は、作動油を貯留するリザーバタンク及び作動油を加圧するマスタシリンダを含んで構成される。尚、リザーバタンク及びマスタシリンダは図示を省略する。作動油加圧装置95は、例えば後述のECU12やその他のECU等からの指示に応じてブレーキ配管96のそれぞれに付加される作動油の圧力(作動油圧)を調整する。これにより、作動油加圧装置95は、右前輪ブレーキ91、左前輪ブレーキ92、右後輪ブレーキ93及び左後輪ブレーキ94の各々に大きさを互いに相違させる制動力を発生させることができる。
【0018】
車両制御装置10は、図1に示すように、車両1に搭載される。車両制御装置10は、走行環境検出部11と、コントローラとしてのECU12と、を含んで構成される。
【0019】
走行環境検出部11は、車両1の走行環境を検出し、検出した走行環境を表す走行環境情報をECU12に出力する。走行環境検出部11は、車輪速センサ111、車輪速センサ112、車輪速センサ113及び車輪速センサ114を含んで構成される。
【0020】
車輪速センサ111は、右前輪21の回転速度である車輪速を検出する。車輪速センサ112は、左前輪22の回転速度である車輪速を検出する。車輪速センサ113は、右後輪23の回転速度である車輪速を検出する。車輪速センサ114は、左後輪24の回転速度である車輪速を検出する。
【0021】
又、走行環境検出部11は、加速度センサ115、現在位置検出センサ116、路面状態検出センサ117及びトランスファーセレクトセンサ118を含んで構成される。加速度センサ115は、車両1の加速度を検出する。ここで、加速度センサ115は、車両1の前後左右方向に加え、車両1の上下方向の加速度も検出できるようになっている。
【0022】
現在位置検出センサ116は、例えばGNSS(全球測位衛星システム)の受信機を備えており、受信した信号に基づいて車両1の現在位置を検出する。路面状態検出センサ117は、例えばステレオカメラやライダー(LiDAR)を備えており、車両1の進行方向の路面の状態を検出する。ここで、路面状態検出センサ117は、路面の状態として路面の凹凸やうねり、轍、急降坂等を検出する。又、路面状態検出センサ117は、路面が岩石路や砂地、泥濘(ぬかるみ)、深雪、ガレ場等を検出することができる。
【0023】
トランスファーセレクトセンサ118は、トランスファースイッチ8の操作状態を検出する。具体的に、トランスファーセレクトセンサ118は、トランスファースイッチ8の「HIレンジ」及び「LOWレンジ」を検出する。
【0024】
又、走行環境検出部11は、エンジンセンサ3a、ブレーキセンサ95aを含むことができる。エンジンセンサ3aは、スロットル弁開度センサ、機関回転速度センサ及び吸入空気量センサ等を含む。ブレーキセンサ95aは、作動油加圧装置95のマスタシリンダの作動油圧及びブレーキ配管96のそれぞれの作動油圧等を検出するセンサである。
【0025】
更に、走行環境検出部11は、車両1が悪路を走行するための自機能以外のオフロード関連機能の作動状態も検出することができる。ここで、自機能以外のオフロード関連機能としては、別途搭載されたウィンチ機能を例示することができる。走行環境検出部11は、例えば車両1が泥濘からの脱出するためにウィンチ機能が作動している場合、ウィンチ機能作動状態をECU12に出力する。
【0026】
ECU12は、CPU、ROM、RAM及び各種インターフェースを備えたマイクロコンピュータを主要素として含む電子制御ユニットである。CPUは、所定のプログラムを逐次実行することによってデータの読み込み、数値演算及び演算結果の出力等を行う。ROMは、CPUが実行するプログラムやマップ等を記憶する。RAMは、データ等を一時的に記憶する。各種インターフェースは、走行環境検出部11と接続される。
【0027】
更に、ECU12は、操作パネルとしての表示装置30と接続されている。表示装置30は、タッチパネル式ディスプレイを例示することができる。表示装置30は、複数の表示階層のうち任意の表示階層において、地図や画像、映像(マルチメディア)等を表示し、後述する走行支援機能を選択するタッチ操作可能なソフトスイッチ31を表示する。
【0028】
表示装置30は、運転者及び乗員(以下、「ユーザ」と称呼する。)のタッチ操作を検出する。表示装置30は、ユーザの指による接触を検出すると、接触位置及び接触範囲等を表す検出信号をECU12に対して出力する。ECU12は、表示装置30からの検出信号に含まれる情報に基づいて、表示装置30に対する指の接触位置、指の移動方向、指の移動距離及び指の接触時間等を演算するようになっている。
【0029】
尚、操作パネルとしては、タッチパネル式ディスプレイ以外のディスプレイ(デバイス)を採用することができる。この場合、ユーザ、特に、運転者は、例えば車両1に搭載されたタッチパッドやステアリングスイッチ等を用いてカーソルを移動させ、表示された走行支援機能を選択する表示ボタン等を選択操作(クリック操作等)することができる。
【0030】
本実施形態において、ECU12は、車両1のエンジン3及び制動装置9を制御することができる。具体的に、ECU12は、アクセル操作量や、加速度及び車速等に基づいて要求駆動トルクを決定する。更に、ECU12は、実際の駆動トルクが要求駆動トルクと一致するようにエンジン3の機関出力及びトランスミッション4のギヤ比を制御する。
【0031】
ここで、ECU12は、原則として、トランスファースイッチ8の操作状態に応じて、ギヤ比を設定する。つまり、ECU12は、「LOレンジ」が選択されて車両1が悪路を走行するオフロード走行状態である場合には、「HIレンジ」が選択されて車両1が良路(舗装路)を走行するオンロード走行状態である場合に比べてギヤ比を大きな値に設定する。
【0032】
又、ECU12は、ブレーキ操作量、各々の車輪速及び加速度等に基づいて要求減速度を決定する。更に、ECU12は、実際の減速度が要求減速度と一致するように、車輪2の各々に制動力を発生させる。即ち、ECU12は、制動装置9のそれぞれに付加されるべき作動油圧の目標値(目標作動油圧)を決定し、更に、制動装置9のそれぞれに付加される実際の作動油圧が目標作動油圧と一致するように作動油加圧装置95を制御する。
【0033】
又、ECU12は、車両1が悪路を走行する走行環境である場合、つまり、オフロード走行状態である場合、悪路を走行する際に適用可能な走行支援機能を実行する。具体的に、ECU12は、エンジン3、トランスミッション4、センターデフ5、フロントデフ6、リアデフ7、及び、制動装置9の作動状態を制御(変更)することにより、適用可能な走行支援機能を実行する。この場合、ECU12は、表示装置30に表示されたソフトスイッチ31がユーザ、特に、運転者によって選択操作された走行支援機能を実行する。
【0034】
ここで、走行支援機能は、車両1がオフロードの急降坂を走行する際に一定速度を維持して安定性を確保する「DAC(Downhill Assist Control)」を例示することができる。又、走行支援機能は、車両1が凹凸の大きな岩石路やオフロードの急降坂を走行する際に一定の速度で走行して安定性と走破性を両立させる「CRAWL」を例示することができる。又、走行支援機能は、車両1が岩石路や砂地、泥濘、深雪、ガレ場等を走行する際に路面に応じて駆動力やトラクションコントロール等の特性を最適化して走破性を担保する「MTS(Multi Terrain Select)」を例示することができる。更に、走行支援機能は、車両1がつづら折りの山道で何度も切り返しが必要な場所を走行する際に回頭性を向上させて切り返し操作を低減させる「TA(Turn Assist)」を例示することができる。
【0035】
具体的に、「DAC」及び「CRAWL」を実行する場合、ECU12は、エンジン3及び制動装置9を協調させて車両1を一定の低速に維持する。この場合、ECU12は、例えばセンターデフ5等を必要に応じてデフロック状態(差動禁止状態)とし、適切な駆動力及び制動力を発生させながら車両1が走行するように制御する。尚、センターデフ5等のデフロック状態への変更については、例えばユーザが車室内に設置されたデフロック切換スイッチを操作することによっても実現することができる。
【0036】
又、「MTS」を実行する場合、ECU12は、路面の状態に応じてエンジン3及び制動装置9を協調させて車両1を走行させる。この場合、ECU12は、例えば車両1が砂地や泥濘を走行する場合には走行抵抗が大きくなって車輪2が空転する可能性があるため、トラクションコントロールによる介入頻度を抑えるように制御する。
【0037】
更に、「TA」を実行する場合、ECU12は、カーブの大きさ等の路面の形状に応じて制動装置9を介して各々の車輪2に制動力を付与しながら車両1を走行させる。この場合、ECU12は、例えば切り返しなしでは通過困難なタイトコーナを車両1が走行する場合、車両1の回頭性を向上させるため、旋回内側の右後輪23又は左後輪24に大きな制動力を付与するように制動装置9を制御する。尚、「DAC」、「CRAWL」、「MTS」及び「TA」は周知の機能であり、これらの詳細な説明を省略する。
【0038】
次に、ECU12が実行する表示態様変更プログラムを説明する。ECU12は、図2のフローチャートによって示される表示態様変更プログラムを実行する。
【0039】
ECU12(より詳しくは、ECU12を構成するマイクロコンピュータのCPU)は、ステップS10にて表示態様変更プログラムの実行を開始する。続くステップS11において、ECU12は、走行環境検出部11から取得した走行環境情報に基づいて、車両1がオフロード走行状態であるか否かを判定する。ECU12は、例えばトランスファースイッチ8が「LOWレンジ」に操作されている場合、車両1が悪路を走行するオフロード走行状態である可能性が高いと判定(推定)し、ステップS12の処理を実行する。
【0040】
一方、ECU12は、オフロード走行状態でなければ「No」と判定し、ステップS16にてソフトスイッチ31の表示態様を変更しない。そして、ECU12は、ステップS17にてプログラムの実行を一旦終了する。
【0041】
続くステップS12においては、ECU12は、表示態様変更機能が「ON」即ちオフロード走行状態においてソフトスイッチ31の表示態様を変更するように指示されているか否かを判定する。そして、ECU12は、表示態様変更機能が「ON」になっていれば「Yes」と判定してステップS13の処理を実行する。ここで、表示態様変更機能については、例えば初期値として「ON」に設定されており、ユーザが表示装置30をタッチ操作することによって「OFF」に変更することができる。
【0042】
一方、ECU12は、表示態様変更機能が「ON」ではない即ち「OFF」に設定されていれば、「No」と判定し、ステップS16にてソフトスイッチ31の表示態様を変更しない。そして、ECU12は、ステップS17にてプログラムの実行を一旦終了する。
【0043】
ステップS13においては、ECU12は、前記ステップS11にて取得した走行環境情報によって表される走行環境と、図3に示す走行支援機能を判定するための複数の判定要素と、を対比する。そして、ECU12は、現在の車両1の走行環境と判定要素とが合致するか否か、即ち、車両1が走行環境によって表される悪路を走行する際に適用可能な走行支援機能か否かを判定する。具体的に、ECU12は、図3に示すNo.1からNo.10までの各々の判定要素について、走行環境が合致するか否かを判定する。そして、ECU12は、例えば十個の判定要素のうち複数の判定要素と走行環境とが合致する場合、「Yes」と判定してステップS14の処理を実行する。
【0044】
一方、走行環境情報と複数の判定要素とを対比した結果、現在の車両1の走行環境に合致しない場合は、前記ステップS11にてオフロード走行状態として判定(推定)されたものの、走行支援機能は不要である。このため、ECU12は、ステップS13にて「No」と判定し、ステップS16にてソフトスイッチ31の表示態様を変更しない。そして、ECU12は、ステップS17にてプログラムの実行を一旦終了し、所定の短い時間の経過に伴って再び前記ステップS10にてプログラムの実行を開始する。
【0045】
ステップS14においては、ECU12は、適用可能と判定した走行支援機能を選択操作するためのソフトスイッチ31を表示する表示態様を変更する。具体的に、ECU12は、ソフトスイッチ31を表示する変更後表示階層として、表示装置30の最上位の表示階層、即ち、最前面(トップ画面)を階層位置とする表示態様に変更する。以下、表示態様を変更しない場合と比較して説明する。
【0046】
ECU12がソフトスイッチ31の表示態様として階層位置を変更しない場合、図4において表示装置30の画面遷移を示すように、ソフトスイッチ31は階層位置として下位の表示階層(第三表示階層)に表示される。この場合、運転者は、先ず、表示装置30の最前面(トップ画面)に表示された操作用アイコンをタッチする第一操作T1を行う。
【0047】
図4にて太実線の矢印で示す下向きの矢印に従い、第一操作T1を行うことにより、画面が最前面よりも下位の階層位置である第二表示階層に遷移し、画面右側に設定メニュー一覧がスクロール操作可能に表示される。ここで、オフロード走行状態における走行支援機能については、一般に使用頻度が低い。このため、運転者は、設定メニュー一覧の近傍において指を上方に移動させる(スワイプする)第二操作T2を行う。
【0048】
そして、運転者は、スクロールすることによって表示された「走行支援機能」をタッチする第三操作T3を行う。これにより、画面が第二階層よりも下位の表示階層である第三表示階層に遷移し、画面右側に「走行支援機能」の機能一覧が表示される。従って、運転者は、表示された機能一覧のうち、例えば「CRAWL」をタッチ操作する第四操作T4を行う。つまり、本実施形態においては、ECU12が表示態様を変更しない場合には、ソフトスイッチ31は変更前表示階層として第三表示階層に表示される。
【0049】
このように、ECU12が表示態様を変更しない場合においては、運転者は表示装置30の最前面から下位の第三表示階層まで四回の選択操作によって遷移させる必要がある。そして、操作回数が多い場合、特に、オフロード走行状態において運転者が揺すられる状況下では、誤タッチ操作(誤選択操作)の回数が増加する可能性が高くなる。その結果、運転者が走行支援機能を選択操作するまでに要する操作回数が更に増加してしまう。
【0050】
これに対し、ソフトスイッチ31の表示態様を変更する場合、図5に示すように、ECU12は、判定した走行支援機能を選択操作するソフトスイッチ31を変更後表示階層である最前面に表示するように表示態様を変更する。これにより、運転者は、表示装置30の表示階層を遷移させることなく、最前面に表示されたソフトスイッチ31を一回タッチ操作すれば良い。
【0051】
又、図5に示すように、ECU12は、表示装置30の表示画面下部にソフトスイッチ31を配置して表示するように表示態様を変更する。これにより、例えば表示装置30の表示画面を保持するフレーム部材(図示省略)や表示装置30を支持する支持部材(図示省略のダッシュパネル等)によって運転者の手や指を安定させることが可能となる。このように、ソフトスイッチ31を最適位置に配置する表示態様に変更することにより、タッチ操作する際に運転者がソフトスイッチ31を誤タッチ操作する回数を低減させることができる。そして、ECU12は、ソフトスイッチ31を、表示装置30の最前面を変更後表示階層にして表示する表示態様に変更すると、図2に示すステップS15に進む。
【0052】
ステップS15においては、ECU12は、最前面に表示されるソフトスイッチ31の表示サイズを拡大して表示する表示態様に変更する。即ち、ECU12は、図5に示すように、ソフトスイッチ31の表示サイズを拡大して表示する。この場合、ECU12は、図4に示す機能一覧の表示サイズよりも大きくソフトスイッチ31を表示する。
【0053】
これにより、運転者は、大きく表示されるソフトスイッチ31を容易にタッチ操作することができる。従って、運転者がタッチ操作する際の誤タッチ操作の回数を低減させることができる。そして、ECU12は、ソフトスイッチ31の表示サイズを拡大して表示する表示態様に変更すると、ステップS17に進む。
【0054】
ステップS17においては、ECU12は、プログラムの実行を一旦終了する。そして、ECU17は、所定の短い時間の経過に伴って再び前記ステップS10にてプログラムの実行を開始する。尚、本実施形態においては、前記ステップS14及び前記ステップS15の両ステップ処理を実行する場合を例示したが、前記ステップS14及び前記ステップS15の一方のステップ処理のみを実行することも可能である。
【0055】
以上の説明からも理解できるように、車両制御装置10は、駆動輪である車輪2のそれぞれに対してエンジン3が発生させる駆動力を分配すると共に車輪2の各々の回転速度の差分を吸収できるセンターデフ5、フロントデフ6及びリアデフ7と、車輪2のそれぞれに対して制動力を発生させると共に車輪2の各々の制動力の大きさを互いに相違させることができる制動装置9と、を備える車両1に適用される。車両制御装置10は、走行環境検出部11と、コントローラであるECU12と、を備える。走行環境検出部11は、車両1の走行環境を検出する。ECU12は、走行環境に応じてエンジン3と、制動装置9と、センターデフ5、フロントデフ6及びリアデフ7との作動状態を変更することができる走行支援機能が選択操作される操作パネルである表示装置30の表示態様を制御すると共に、選択された走行支援機能に対応して作動状態を変更して制御する。そして、ECU12は、検出された走行環境を表す走行環境情報を取得する。又、ECU12は、走行環境情報に基づいて車両1が悪路を走行するオフロード走行状態であるか否かを判定(推定)する。又、ECU12は、オフロード走行状態である場合、車両1が悪路を走行する際に適用可能な走行支援機能を判定する。更に、ECU12は、オフロード走行状態でない場合に比べて、判定した走行支援機能を選択操作されるまでに要する操作回数が少なくなるように表示態様を変更する。
【0056】
これによれば、ECU12は、車両1がオフロード走行状態である場合、判定した走行支援機能を選択操作されるまでの操作回数が少なるように、表示装置30の表示態様変更することができる。これにより、オフロード走行状態でない場合には良好な操作性及び即応性を満たして選択しにくい表示態様であっても、オフロード走行状態において、運転者が走行支援機能を選択操作する場合には、操作回数が少なくなるように表示態様が変更される。従って、走行支援機能の選択操作時において、運転者は、正確な操作性と即応性とを満たして選択操作することができる。
【0057】
次に、第一変形例を説明する。第一変形例においては、ECU12は、運転者によってソフトスイッチ31が選択操作されることが予測されるときに、ソフトスイッチ31を選択操作できるように表示態様を変更する。このため、ECU12は、走行環境情報と各々の走行支援機能を特定するための判定要素とを対比し、適切なタイミングでユーザが望む走行支援機能を選択操作するためのソフトスイッチ31を最前面に表示する。
【0058】
オフロード走行状態において、ユーザが「DAC」を選択する状況を適切に判定する判定要素は、図3に示した判定要素のうちNO.2及びNo.8の判定要素が省略される。一方、走行支援機能としてユーザが「DAC」を選択する状況を適切に判定する判定要素は、新たに「オフロード急勾配の路面を登坂不可での後退時」が信頼度「高」として追加されると共に図3に示したNO.5の信頼度が「高」に変更される。
【0059】
これにより、図2に示したプログラムの前記ステップS13の判定処理において、ECU12は、「DAC」を判定する判定要素について走行環境情報と対比して合致するか否かを判定する。そして、ECU12は、判定要素と走行環境情報とが合致すると判定した場合、図5の「CRAWL」と同様に、前記ステップS14,S15において表示装置30の最前面に「DAC」を選択操作するためのソフトスイッチ31を拡大して表示する。
【0060】
オフロード走行状態において、ユーザが「MTS」を選択する状況を適切に判定する判定要素は、図3に示した判定要素に対し、新たに「走行抵抗が大きく砂地走行中と推測される状態」が信頼度「中」として追加される。更に、上述した図3に示した判定要素に対し、新たに「四輪の空気圧を下げて走行する状態」が信頼度「中」として追加される。
【0061】
これにより、図2に示したプログラムの前記ステップS13の判定処理において、ECU12は、「MTS」を判定する判定要素について走行環境情報と対比して合致するか否かを判定する。そして、ECU12は、判定要素と走行環境情報とが合致すると判定した場合、図5の「CRAWL」と同様に、前記ステップS14,S15において、表示装置30の最前面に「MTS」を選択操作するためのソフトスイッチ31を拡大して表示する。
【0062】
オフロード走行状態において、ユーザが「TA」を選択する状況を適切に判定する判定要素は、図3に示した判定要素のNO.2からNo.8までの判定要素が省略される。一方、走行支援機能としてユーザが「TA」を選択する状況を適切に判定する判定要素は、新たに「低速且つ大舵角の切り返しを繰り返す状態」が信頼度「高」として追加される。
【0063】
これにより、図2に示したプログラムの前記ステップS13の判定処理において、ECU12は、「TA」を判定する判定要素について、走行環境情報と対比して合致するか否かを判定する。そして、ECU12は、判定要素と走行環境情報とが合致すると判定した場合、図5の「CRAWL」と同様に、前記ステップS14,S15において、表示装置30の最前面に「TA」を選択操作するためのソフトスイッチ31を拡大して表示する。従って、第一変形例においては、上記実施形態と同様の効果に加え、適切なタイミングで運転者に提示することができる。
【0064】
次に、第二変形例を説明する。第二変形例においては、ECU12は、上述した図3に示す判定要素の各々に予め付与された判定精度の信頼度に基づいて、ソフトスイッチ31の表示態様を変更することができる。以下、この第二変形例を説明するが、上記実施形態の表示態様変更プログラムと実質的に同一部分については詳細な説明を省略する。
【0065】
第二変形例においては、ECU12は、図6に示す表示態様変更プログラムを実行する。第二変形例のプログラムは、判定要素の各々に予め付与された判定精度の信頼度に応じて表示態様を変更する。このため、上記実施形態のプログラムの前記ステップS13,S14,S15に対応する部分が変更される。
【0066】
具体的に、表示態様変更プログラムは、図6に示すように、ステップS100にて実行が開始され、ステップS101にてECU12はオフロード走行状態を判定する。そして、ECU12は、続くステップS102にて、表示態様変更機能が「ON」である場合には「Yes」と判定してステップS103以降の各ステップ処理を実行する
【0067】
ステップS103においては、ECU12は、判定要素と走行環境情報とを対比し、合致する判定要素の信頼度が「高」であるか否かを判定する。即ち、ECU12は、例えばフロントデフ6及びリアデフ7がデフロック状態であれば、図3に示した信頼度が「高」のNo.2の判定要素と合致する。これにより、ECU12は、ステップS103にて「Yes」と判定し、ステップS104にてソフトスイッチ31の変更後表示階層の階層位置を最前面に変更し、ステップS105にてソフトスイッチ31の表示サイズを最大化する。そして、ECU12はステップS113にてプログラムの実行を一旦終了する。
【0068】
一方、ECU12は、ステップS103にて合致する判定要素の信頼度が「高」でなければ、「No」と判定してステップS106の処理を実行する。ステップS106においては、ECU12は、判定要素と走行環境情報とを対比し、合致する判定要素の信頼度が「中」であるか否かを判定する。即ち、ECU12は、例えばセンターデフ5がデフロック状態であれば、図3に示した信頼度が「中」のNo.4の判定要素と合致する。これにより、ECU12は、ステップS106にて「Yes」と判定し、ステップS107にてソフトスイッチ31の変更後表示階層の階層位置を第二表示階層に変更し、ステップS108にてソフトスイッチ31の表示サイズを最大よりも小さい中サイズ化する。そして、ECU12はステップS113にてプログラムの実行を一旦終了する。
【0069】
一方、ECU12は、ステップS106にて合致する判定要素の信頼度が「中」でなければ、「No」と判定してステップS109の処理を実行する。ステップS109においては、ECU12は、判定要素と走行環境情報とを対比し、合致する判定要素の信頼度が「低」であるか否かを判定する。即ち、ECU12は、例えば路面状態検出センサ117による検出路面状態に基づいてオフロード走行が想定される状態であれば、図3に示した信頼度が「低」のNo.9の判定要素と合致する。
【0070】
従って、ECU12は、ステップS109にて「Yes」と判定し、ステップS110にてソフトスイッチ31の変更後表示階層の階層位置を第三表示階層で維持し、ステップS111にてソフトスイッチ31の表示サイズを中サイズよりも小さい小サイズ化する。そして、ECU12はステップS113にてプログラムの実行を一旦終了する。尚、信頼度が「低」の場合は、車両1がオフロード走行状態であるとする確度は低くなる。従って、走行支援機能が選択されない可能性が高いため、第二変形例では、ECU12は、オフロード走行状態でない場合と同様に、ソフトスイッチ31を第三表示階層に表示する。
【0071】
一方、ECU12は、ステップS109にて合致する判定要素の信頼度が「低」でなければ、「No」と判定する。そして、ECU12は、ステップS112にてソフトスイッチ31の表示態様を変更せず、ステップS113にてプログラムの実行を一旦終了する。従って、この第二変形例においても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0072】
1…車両、2…車輪(駆動輪)、3…エンジン(駆動力源)、4…トランスミッション、5…センターデフ(差動装置)、6…フロントデフ(差動装置)、7…リアデフ(差動装置)、8…トランスファースイッチ、9…制動装置、10…車両制御装置、11…走行環境検出部、12…ECU(コントローラ)、30…表示装置(操作パネル)、31…ソフトスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6