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  • 特開-牽引フック 図1
  • 特開-牽引フック 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004460
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】牽引フック
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20250107BHJP
   B60D 1/04 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B62D25/20 L
B60D1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104160
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 経雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 智雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 聡
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BA06
3D203BB24
3D203CA26
3D203CA73
3D203CB09
3D203DB03
(57)【要約】
【課題】バリアの衝突時にリヤサイドメンバの上方への変形を抑制可能な牽引フックの提供。
【解決手段】(i)下方延出部30の下端部30aの最も車両後方に位置する最後端32が、後端側締結点22よりも下方で該後端側締結点22と車両前後方向で同じ位置にある。その為、バリア200を最後端32と後端側締結点22の両方に同時に当てることができる。その為、リヤサイドメンバ100を上方へ曲げるモーメントが発生することを抑制できる。また、(ii)車幅方向視で下側エッジ部13を有しており、該下側エッジ部13にフック取付部31と前端側締結点21とを結んだ荷重線Lよりも上方にオフセットしたオフセット部13aが設けられている。その為、バリア200の衝突時、オフセット部13aが弱部となりフック10を変形もしくは破断させやすくできる。(i)、(ii)により、リヤサイドメンバ100の上方への変形を効果的に抑制できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤサイドメンバに締結される締結点と、
前記リヤサイドメンバより下方に位置する下方延出部と、
を有し、前記下方延出部の下端部にフック取付部が形成される牽引フックであって、
前記締結点は、車両前後方向に異ならせて複数設けられており、
前記下方延出部の下端部の最も車両後方に位置する最後端は、複数の前記締結点のうち最も車両後方に位置する後端側締結点よりも下方で該後端側締結点と車両前後方向で同じ位置にあり、
車幅方向視で、前記フック取付部から複数の前記締結点のうち最も車両前方に位置する前端側締結点に向って延びる方向と同方向に延びる下側エッジ部を有しており、該下側エッジ部に前記フック取付部と前記前端側締結点とを結んだ荷重線よりも上方にオフセットしたオフセット部が設けられている、牽引フック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引フックに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2023-032465号公報は、図2に示すように、リヤサイドメンバ100に締結される締結点2と、リヤサイドメンバ100より下方に位置する下方延出部3と、を有し、下方延出部3の下端部にフック取付部3aが形成される牽引フック1を開示している。
【0003】
ところで、車両の後面衝突時における室内空間の確保の為、車両後面衝突試験時におけるバリア(衝突バリア)200の衝突時、リヤサスペンションメンバ300を弾性支持する際に用いられるサスメンマウント400付近で、リヤサイドメンバ100を下方へ折りたいというニーズがある。
【0004】
しかし、上記公報開示の牽引フック1では、下方延出部3の下端部の最も車両後方に位置する最後端3bがリヤサイドメンバ100に締結される締結点2よりも車両後方に位置(オフセット)している。その為、バリア200の衝突時であってバリア200が最後端3bに当たったとき、リヤサイドメンバ100を上方へ曲げるモーメントMが発生してしまい、牽引フック1による上方への入力によりリヤサイドメンバ100の下方への変形を阻害してしまう。
【0005】
また、上記公報開示の牽引フック1では、車幅方向視で、フック取付部3aから複数の締結点2のうち最も車両前方に位置する前端側締結点2aに向って延びる方向と同方向に延びる下側エッジ部4に、フック取付部3aと前端側締結点2aとを結んだ荷重線L1よりも上方にオフセットしたオフセット部が設けられていない。その為、バリア200の衝突時に牽引フック1が突っ張ってしまい、フック1が座屈変形もしくは破断し難い。その結果、フック1からリヤサイドメンバ100への入力を低減させることができず、リヤサイドメンバ100の上方への変形を抑制することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2023-032465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、バリアの衝突時にリヤサイドメンバの上方への変形を抑制可能な牽引フックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) リヤサイドメンバに締結される締結点と、
前記リヤサイドメンバより下方に位置する下方延出部と、
を有し、前記下方延出部の下端部にフック取付部が形成される牽引フックであって、
前記締結点は、車両前後方向に異ならせて複数設けられており、
前記下方延出部の下端部の最も車両後方に位置する最後端は、複数の前記締結点のうち最も車両後方に位置する後端側締結点よりも下方で該後端側締結点と車両前後方向で同じ位置にあり、
車幅方向視で、前記フック取付部から複数の前記締結点のうち最も車両前方に位置する前端側締結点に向って延びる方向と同方向に延びる下側エッジ部を有しており、該下側エッジ部に前記フック取付部と前記前端側締結点とを結んだ荷重線よりも上方にオフセットしたオフセット部が設けられている、牽引フック。
(2) 前記オフセット部は、前記下方延出部の上端部に設けられている、(1)記載の牽引フック。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)の牽引フックでは、つぎの効果を得ることができる。
(i)下方延出部の下端部の最も車両後方に位置する最後端が、複数の締結点のうち最も車両後方に位置する後端側締結点よりも下方で該後端側締結点と車両前後方向で同じ位置にある為、バリアの衝突時であってバリアが牽引フックに当たるときに、バリアを最後端と後端側締結点の両方に同時に当てることができる。その為、リヤサイドメンバを上方へ曲げるモーメントが発生することを抑制できる。よって、バリアの衝突時、リヤサイドメンバには、牽引フックを介して、主に車両前方への荷重がかかり、上方へかかる荷重を小にできる。したがって、リヤサイドメンバの上方への変形を抑制できる。
【0010】
また、(ii)車幅方向視で、フック取付部から複数の締結点のうち最も車両前方に位置する前端側締結点に向って延びる方向と同方向に延びる下側エッジ部を有しており、該下側エッジ部にフック取付部と前端側締結点とを結んだ荷重線よりも上方にオフセットしたオフセット部が設けられている為、バリアの衝突時、オフセット部が弱部となり牽引フックが突っ張ってしまうことを抑制してフックを変形もしくは破断させやすくできる。よって、フックからリヤサイドメンバへの入力を低減させることができ、リヤサイドメンバの上方への変形を抑制することができる。
【0011】
以上(i)、(ii)により、リヤサイドメンバの上方への変形を効果的に抑制できる。
【0012】
上記(2)の牽引フックでは、つぎの効果を得ることができる。
オフセット部が、下方延出部の上端部に設けられている為、下方延出部の上下方向中間部など上端部以外に設けられている場合に比べて、バリアからの下方延出部の下端部への荷重入力点(最後端)からの距離を大とすることができ、オフセット部にかかるモーメントを大にできる。その為、バリアの衝突時にフックを変形もしくは破断させやすくする点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明実施例の牽引フックの側面図である。
図2】従来の牽引フックの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明実施例の牽引フック10を説明する。なお、図中UPは車両上方を示し、Rrは車両後方を示す。
【0015】
図1に示すように、牽引フック10は、たとえば板金製であり、板金をプレス打ち抜きして作製される。
【0016】
牽引フック10は、車幅方向視で、車両前後方向に延びる上側エッジ部11と、上側エッジ部11の車両後方側端部から下方に鉛直方向(略鉛直方向を含む)に延びる後側エッジ部12と、後側エッジ部12の下端部から上側エッジ部11の車両前方側端部に向って延びており後側エッジ部12の下端部と上側エッジ部11の車両前方側端部とを繋ぐ下側エッジ部13と、を有する。
【0017】
牽引フック10は、上側エッジ部11と後側エッジ部12と下側エッジ部13とを有する為、車幅方向視で、上側エッジ部11と後側エッジ部12とのなす角が直角(略直角を含む)で車両前方にいくにつれて上下方向長さが小となる直角三角形状(略直角三角形状を含む)となっている。牽引フック10は、牽引フック10の軽量化を図る為に、車幅方向視における中間部に貫通孔14が形成されていてもよい。
【0018】
牽引フック10は、リヤサイドメンバ100に締結される締結点20と、リヤサイドメンバ100より下方に位置する下方延出部30と、を有する。
【0019】
リヤサイドメンバ100は、車両ボデーの骨格部材であり、車両の幅方向の両側に一対設けられており、それぞれが車両前後方向に延びて設けられている。
【0020】
牽引フック10は、締結点20で、リヤサイドメンバ100の車幅方向外側面101にボルト40を用いて締結されている。締結点20は、牽引フック10の上端部またはその近傍に設けられており、車両前後方向に異ならせて複数設けられている。複数の締結点20は、全て同じ上下方向位置に設けられており、最も車両前方に位置する前端側締結点21と、最も車両後方に位置する後端側締結点22と、を少なくとも有している。図示はしないが、前端側締結点21と後端側締結点22との間に、前端側締結点21及び後端側締結点22とは異なる締結点を、さらに有していてもよい。
【0021】
下方延出部30には、下端部30aにフック取付部31が形成されている。なお、下方延出部30の下端部30aは、牽引フック10の下端部であり、フック取付部31の上端を含んで該上端より下方に位置する部分である。フック取付部31は、たとえば、車両前方かつ上方を長手方向とする長円形または楕円形の孔からなる。このフック取付部31に図示略のフック等の係合部材を係合させることで、当該車両で他車両を牽引したり、あるいは、当該車両を積載輸送する際に船舶などに固縛することが可能になっている。
【0022】
下方延出部30の下端部30aの最も車両後方に位置する最後端32は、図中の鉛直方向線HLにて示すように、複数の締結点20のうち最も車両後方に位置する後端側締結点22よりも下方で該後端側締結点22と車両前後方向で同じ(略同じを含む)位置にある。最後端32と後端側締結点22は、リヤサイドメンバ100の最後端102よりも車両前方にある。
【0023】
車幅方向視で、下側エッジ部13は、フック取付部31から複数の締結点20のうち最も車両前方に位置する前端側締結点21に向って延びる方向と同方向(略同方向を含む)に延びている。そして、この下側エッジ部13には、フック取付部31(の下端部)と前端側締結点21とを結んだ荷重線Lよりも上方にオフセットしたオフセット部13aが設けられている。
【0024】
オフセット部13aが設けられている為、牽引フック10は、荷重線L上に存在しない部分を有する。オフセット部13aは、下方延出部30の上下方向中間部など上端部以外に設けられていてもよいが、下方延出部30の上端部に設けられていることが望ましい。バリア200からの下方延出部30の下端部30aへの荷重入力点(最後端32)からの距離を大とすることができ、オフセット部13aにかかるモーメントを大にできるからである。
【0025】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
(A)(i)下方延出部30の下端部30aの最も車両後方に位置する最後端32が、複数の締結点20のうち最も車両後方に位置する後端側締結点22よりも下方で該後端側締結点22と車両前後方向で同じ位置にある為、バリア200の衝突時であってバリア200が牽引フック10に当たるときに、バリア200を最後端32と後端側締結点22の両方に同時(ほぼ同時を含む)に当てることができる。その為、リヤサイドメンバ100を上方へ曲げるモーメント(図2のモーメントM)が発生することを抑制できる。よって、バリア200の衝突時、リヤサイドメンバ100には、牽引フック10を介して、主に車両前方への荷重F1がかかり、上方へかかる荷重F2を小にできる。したがって、リヤサイドメンバ100の上方への変形を抑制できる。
【0026】
また、(ii)車幅方向視で、フック取付部31から複数の締結点20のうち最も車両前方に位置する前端側締結点21に向って延びる方向と同方向に延びる下側エッジ部13を有しており、該下側エッジ部13にフック取付部31と前端側締結点21とを結んだ荷重線Lよりも上方にオフセットしたオフセット部13aが設けられている為、バリア200の衝突時、オフセット部13aが弱部となり牽引フック10が突っ張ってしまうことを抑制してフック10を変形(座屈変形)もしくは破断させやすくできる。よって、フック10からリヤサイドメンバ100への入力を低減させることができ、リヤサイドメンバ100の上方への変形を抑制することができる。
【0027】
以上(i)、(ii)により、リヤサイドメンバ100の上方への変形を効果的に抑制できる。
【0028】
(B)オフセット部13aが、下方延出部30の上端部に設けられている為、下方延出部30の上下方向中間部など上端部以外に設けられている場合に比べて、バリア200からの下方延出部30の下端部30aへの荷重入力点(最後端32)からの距離を大とすることができ、オフセット部13aにかかるモーメントを大にできる。その為、バリア200の衝突時にフック10を変形もしくは破断させやすくする点で有利である。
【符号の説明】
【0029】
10 牽引フック
11 上側エッジ部
12 後側エッジ部
13 下側エッジ部
13a オフセット部
14 貫通孔
20 締結点
21 前端側締結点
22 後端側締結点
30 下方延出部
30a 下方延出部の下端部
31 フック取付部
32 最後端
40 ボルト
100 リヤサイドメンバ
101 リヤサイドメンバの車幅方向外側面
102 リヤサイドメンバ最後端
HL 鉛直方向線
L 荷重線
図1
図2