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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004461
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/265 20180101AFI20250107BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20250107BHJP
   F21S 41/153 20180101ALI20250107BHJP
   F21W 102/14 20180101ALN20250107BHJP
   F21W 102/17 20180101ALN20250107BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20250107BHJP
【FI】
F21S41/265
F21S41/143
F21S41/153
F21W102:14
F21W102:17
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104164
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浜本 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 駿太
(72)【発明者】
【氏名】スンダル サウラブ
(57)【要約】
【課題】全体の配光の崩れを抑えつつ、照射範囲を部分的に拡張することが可能な車両用灯具を提供する。
【解決手段】本開示に係る車両用灯具10Rは、複数の発光素子を有する光源20と、光源20からの光を所定の照射方向へメイン配光として配光制御する複数のメインレンズ40と、複数のメインレンズ40を支持するレンズホルダ30と、レンズホルダ30の外側に配置され、光源20からの光をメイン配光に付加する付加配光として上記照射方向へ配光制御する付加光学系50と、を備え、付加配光は、メイン配光に隣接し、又はメイン配光に一部が重なる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光部を有する光源と、
前記光源からの光を所定の照射方向へメイン配光として配光制御する複数のメインレンズと、
前記複数のメインレンズを支持するレンズホルダと、
前記レンズホルダの外側に配置され、前記光源からの光を前記メイン配光に付加する付加配光として前記照射方向へ配光制御する付加光学系と、を備え、
前記付加配光は、前記メイン配光に隣接し、又は前記メイン配光に一部が重なる
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記付加光学系は、前記光源側に位置する第1付加レンズと、前記第1付加レンズよりも前記照射方向側に配置されて前記第1付加レンズからの光を前記照射方向へ出射する第2付加レンズとを含み、
前記第1付加レンズは、前記複数のメインレンズのうち前記光源に最も近い位置に配置される入射レンズの側方に配置され、
前記第2付加レンズは、前記入射レンズよりも前記照射方向側に配置され、
前記付加光学系は、前記光源からの光のうち前記入射レンズに入射しない光を受けて前記付加配光として前記照射方向へ配光制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記付加光学系は、前記レンズホルダの水平方向の一方側に配置され、
前記第1付加レンズの入射面は、水平方向断面の形状が凹形状であり、鉛直方向断面の形状が凸形状であり、
前記第2付加レンズの入射面は、鉛直方向断面の形状が凸形状であり、前記第1付加レンズよりも水平方向の前記一方側へ突出している
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記複数のメインレンズの径は、前記照射方向の後側のレンズよりも前記照射方向の前側のレンズの方が大きく、
前記第2付加レンズは、前記第1付加レンズよりも大きい
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用灯具としてヘッドランプが開示されている。ヘッドランプのランプユニットは、ランプハウジング内に内装されている。このランプユニットは、内面が光反射面として形成されたユニットケーシングに内装かつ支持された光源と投影レンズを有しており、光源から出射した光を投影レンズにより自動車の前方領域に照射して所望の配光を得るように構成されている。光源は、ヒートシンクに支持されている基板に複数個の発光素子が水平方向に配列された状態で搭載されている。複数個の発光素子が発光したときに、それぞれから出射される光は、直接、あるいはユニットケーシングの内面で反射されて投影レンズに向けられる。投影レンズは、トリプレットレンズで構成されており、ランプ前側から順に、正の屈折力を有する凸レンズからなる第1レンズと、負の屈折力を有する凹レンズからなる第2レンズと、正の屈折力を有する凸レンズからなる第3レンズとで構成されている。これら第1レンズ~第3レンズは、それぞれの光軸を一致させて同軸配置されており、この投影レンズのランプ後側の焦点の近傍に光源が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-145372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用灯具には、ピクセル化された小さな複数のLEDを1つのパッケージにしたLEDユニットを搭載するものがある。このような車両用灯具を車両のヘッドランプ用前照灯ユニットに使用することで、前照灯の照射範囲を高分解能にて制御することができる。
【0005】
LEDユニットは、LEDの前に少なくとも2枚以上のレンズを重ねて光を制御する単焦点レンズを設けることで、各LEDの点消灯や調光によって表現されるイメージをそのまま拡大して配光として出力することができる。
【0006】
しかし、出力される配光の照射範囲は、光学系の性質上、LEDの発光部のサイズや形状に依存する。このため、例えば、照射範囲を部分的に拡張したい場合、単焦点レンズの配光面でそれを実現しようとすると、照射範囲全体での均一な解像度を維持することができなくなるのに加え、全体の配光が崩れてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、本開示は、全体の配光の崩れを抑えつつ、照射範囲を部分的に拡張することが可能な車両用灯具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様の車両用灯具は、複数の発光部を有する光源と、前記光源からの光を所定の照射方向へメイン配光として配光制御する複数のメインレンズと、前記複数のメインレンズを支持するレンズホルダと、前記レンズホルダの外側に配置され、前記光源からの光を前記メイン配光に付加する付加配光として前記照射方向へ配光制御する付加光学系と、を備え、前記付加配光は、前記メイン配光に隣接し、又は前記メイン配光に一部が重なる。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の車両用灯具であって、前記付加光学系は、前記光源側に位置する第1付加レンズと、前記第1付加レンズよりも前記照射方向側に配置されて前記第1付加レンズからの光を前記照射方向へ出射する第2付加レンズとを含み、前記第1付加レンズは、前記複数のメインレンズのうち前記光源に最も近い位置に配置される入射レンズの側方に配置され、前記第2付加レンズは、前記入射レンズよりも前記照射方向側に配置され、前記付加光学系は、前記光源からの光のうち前記入射レンズに入射しない光を受けて前記付加配光として前記照射方向へ配光制御する。
【0010】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様の車両用灯具であって、前記付加光学系は、前記レンズホルダの水平方向の一方側に配置され、前記第1付加レンズの入射面は、水平方向断面の形状が凹形状であり、鉛直方向断面の形状が凸形状であり、前記第2付加レンズの入射面は、鉛直方向断面の形状が凸形状であり、前記第1付加レンズよりも水平方向の前記一方側へ突出している。
【0011】
本発明の第4の態様は、上記第2の態様又は上記第3の態様の車両用灯具であって、前記複数のメインレンズの径は、前記照射方向の後側のレンズよりも前記照射方向の前側のレンズの方が大きく、前記第2付加レンズは、前記第1付加レンズよりも大きい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、全体の配光の崩れを抑えつつ、照射範囲を部分的に拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用灯具を装備した車両の平面図である。
図2】右側の車両用灯具を車両前方から視た概略的な正面図である。
図3図2のIII-III矢視断面図である。
図4】光源の説明図である。
図5図3のV-V矢視断面図である。
図6】スクリーン上に投影された右側の車両用灯具の配光パターンを示す図であって、(a)メイン配光と付加配光とを個別に表した状態を、(b)付加配光の一部をメイン配光に重ねた状態を、(c)は実際の配光パターンをそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。また、車幅方向内側は、車両の車幅方向の中央へ向かう方向を意味し、車幅方向外側は、車両の車幅方向の中央から離間する方向を意味する。図面においては、概略図であるため、主要部品を図示し、主要部品以外の部品の図示を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用灯具を装備した車両の平面図である。なお、図1の車両用前照灯から前方への矢印は、車両用前照灯からの出射光を示している。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る車両用灯具10L,10Rを装備した車両1は、左右の車両用前照灯100L,100Rを車両1の前部に備える。左側の車両用前照灯100Lは、車両1の前部の左側に配置され、右側の車両用前照灯100Rは、車両1の前部の右側に配置される。なお、本実施形態では、本開示に係る車両用灯具を、車両1の前部(車両用前照灯)に適用したが、これに限定されるものではなく、例えば、車両1の後部に配置される灯具に適用してもよい。
【0017】
(車両用前照灯)
図1に示すように、車両用前照灯100L,100Rは、前方へ開口したランプハウジング101L,101Rと、ランプハウジング101L,101Rの開口を覆うアウターレンズ102L,102Rと、ランプハウジング101L,101Rとアウターレンズ102L,102Rとによって区画される灯室103L,103R内に配置される車両用灯具10L,10Rとをそれぞれ備える。ランプハウジング101L,101Rは、光不透過性の樹脂部材から構成される。アウターレンズ102L,102Rは、光透過性の樹脂部材から構成される。なお、アウターレンズ102L,102Rは、光透過性の樹脂部材から構成されるアウターカバーであってもよい。
【0018】
(車両用灯具)
左側の車両用灯具10Lは、左側ハイビーム配光パターンを車両1の前方(所定の照射方向)へ照射する。一方、右側の車両用灯具10Rは、右側ハイビーム配光パターンを車両1の前方に照射する。左側ハイビーム配光パターンと右側ハイビーム配光パターンとは、互いに重畳されて1つの全体ハイビーム配光パターンを形成する。全体ハイビーム配光パターンは、例えば、車両1の前側の近辺から前側遠方までの広い範囲を照射し、かつ、高光度で照射するワイドハイビーム配光パターンである。
【0019】
車両用灯具10L,10Rは、配光可変タイプの灯具ユニットであって、いわゆる、ADB(Adaptive Driving Beam)タイプの灯具ユニットである。左右の車両用灯具10L,10Rは、対向車や先行車などの前方車両が存在しない時には、全体ハイビーム配光パターンを照射する。一方、左右の車両用灯具10L,10Rは、前方車両が存在する時には、前方車両が存在する領域をその周囲の領域よりも暗くなるように制御し、前方車両に対するグレア光を抑制する。すなわち、左右の車両用灯具10L,10Rは、後述する光源20の複数の発光素子22の点灯、消灯、増光、及び減光等を制御装置(図示省略)によって制御され、全体ハイビーム配光パターンを変化させる。
【0020】
本開示に係る車両用灯具は、例えば、車両1の右側の車両用前照灯100Rの車両用灯具10Rに適用される。以下では、右側の車両用前照灯100Rの車両用灯具10Rについて説明する。なお、本開示に係る車両用灯具を、左側の車両用前照灯100Lの車両用灯具10Lに適用してもよいし、或いは左右の車両用前照灯100L,100Rの双方の車両用灯具10L,10Rに適用してもよい。
【0021】
図2は、右側の車両用灯具を車両前方から視た概略的な正面図である。図3は、図2のIII-III矢視断面図である。図4は、光源の説明図である。図5は、図3のV-V矢視断面図である。なお、図3及び図5の二点鎖線aは、メイン配光の光軸aを示す。また、図3及び図5の二点鎖線T1,T2は、メインレンズに入射してメインレンズから出射される光の範囲の車幅方向の両端を模式的に示し、二点鎖線T3,T4は、付加光学系に入射して付加光学系から出射される光の範囲の車幅方向の両端を模式的に示している。また、図3では、複数のメインレンズ40の形状を概略的に図示している。
【0022】
図2図5に示すように、車両用灯具10Rは、光源20と、光源20の前方に配置されるレンズホルダ30と、レンズホルダ30に支持される複数のメインレンズ40と、レンズホルダ30の外側に配置される付加光学系50と、を備える。光源20、レンズホルダ30、複数のメインレンズ40、及び付加光学系50は、図示しないヒートシンク等の取り付け対象に対して取り付けられ、ユニット化された車両用灯具10Rを構成する。車両用灯具10Rは、ランプハウジング101Rに対して、フレーム部材やブラケット部材(図示せず)を介して取り付けられる。
【0023】
(ヒートシンク)
例えば、ヒートシンク(図示省略)は、光源20を冷却する部材であって、熱伝導性が高い部材(例えばアルミダイカスト製の部材)で構成される。ヒートシンクの前面には、光源20の後述する複数の発光素子22が基板21を介して取り付けられる。ヒートシンクの後面には放熱部として機能する複数のフィンが設けられる。ヒートシンクには、レンズホルダ30が固定されてもよい。複数のメインレンズ40及び付加光学系50は、レンズホルダ30を介してヒートシンクに取り付けられてもよい。また、ヒートシンクの放熱部の後方にファンユニットを配置してもよい。
【0024】
(光源)
図3図5に示すように、光源20は、基板21と、複数の発光素子(発光部)22とを有する。基板21の後面は、例えばヒートシンク(図示せず)に取り付けられる。複数の発光素子22は、ピクセル化された小さな複数のLED(Light Emitting Diode)アレイであって、基板21の前面上にマトリクス状(枡目状)に配列される。光源20は、ピクセル化された小さな複数の発光素子22を1つのパッケージにしたLEDを用いた光源20である。複数の発光素子22は、制御装置(図示省略)によって制御されて選択的に発光可能となっており、各発光素子22からの光によって配光パターンが形成される。このような光源20を使用した車両用灯具10Rを車両1の前照灯に使用することで、前照灯の照射範囲を高分解能にて制御することができる。
【0025】
本実施形態の光源20は、正面視で上下幅よりも左右幅が大きい矩形状をしている。複数の発光素子22の発光面から放射(放出)される光(放射光、放出光)は、ランバーシアン状をなす。この結果、複数の発光素子22から光は、車両1の前方に上下左右に広い範囲に亘って放射される。光源20の複数の発光素子22からの大部分の光は、後述するメインレンズ40に入射してメインレンズ40によってメイン配光MP(図6参照)として配光制御される。また、光源20の複数の発光素子22からの光のうち、メインレンズ40に入射しない一部の光は、後述する付加光学系50によって付加配光AP(図6参照)として配光制御される。
【0026】
(レンズホルダ)
図1図3及び図5に示すように、レンズホルダ30は、主として複数のメインレンズ40を支持するホルダであって、非透光性の部材によって成形され、光源20よりも前方に配置される。例えば、レンズホルダ30は、前後方向(所定方向)に延びる筒状に形成され、複数のメインレンズ40を配置する内部空間31を内側に区画する。本実施形態のレンズホルダ30の内周面は、断面円形状に形成され、後方(照射方向の後側)から前方(照射方向の前側)へ向かう程、徐々に拡径する。すなわち、レンズホルダ30の内部空間31は、後方から前方へ向かう程、徐々に拡径する。また、本実施形態のレンズホルダ30の外周面は、断面円形状に形成され、後方から前方へ向かう程、徐々に拡径する。レンズホルダ30の後端縁30aは、光源20よりも所定の距離Aだけ前方へ離間した前後位置に配置される。なお、レンズホルダ30は、後方から前方へ向かう程、段階的に拡径してもよいし、或いは滑らかに拡径してもよい。
【0027】
(メインレンズ)
図3及び図5に示すように、複数のメインレンズ40は、例えば非球面レンズであって、光源20の前方に配置され、光源20からの光を前方(照射方向)へメイン配光MP(図6参照)として配光制御する。複数のメインレンズ40は、レンズホルダ30の内部空間31に配置され、レンズホルダ30に支持される。
【0028】
複数のメインレンズ40は、例えば、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート樹脂(PCT)などの透明な(透光性の)樹脂材料を用いて無色又は有色に形成される。
【0029】
本実施形態の複数のメインレンズ40は、光源20に最も近い位置(最も後方)に配置される入射レンズ40aと、入射レンズ40aの前方に位置する第1中間レンズ40bと、第1中間レンズ40bの前方に位置する第2中間レンズ40cと、光源20から最も離間した位置(最も前方)に配置される出射レンズ40dとを含む。各メインレンズ40a~40dの光軸aは一致している。複数のメインレンズ40の径は、後側のレンズよりも前側のレンズの方が大きい。具体的には、複数のメインレンズ40の径は、入射レンズ40aよりも第1中間レンズ40bの方が大きく、第1中間レンズ40bよりも第2中間レンズ40cの方が大きく、第2中間レンズ40cよりも出射レンズ40dの方が大きい。なお、本実施形態では、4つのメインレンズ40を設けたが、これに限定されるものではなく、少なくとも入射レンズ40aと出射レンズ40dとを含んでいればよい。
【0030】
入射レンズ40aは、光源20からの光が入射する後側の入射面40aaと、入射面40aaから入射した光を出射する前側の出射面40abとを有する。入射レンズ40aは、レンズホルダ30の内部空間31のうちレンズホルダ30の後端部に配置される。入射レンズ40aの外周縁部は、レンズホルダ30に支持(例えば固定支持)される。入射レンズ40aの入射面40aaは、光源20から前方へ離間した位置に配置され、光源20に対向する。入射面40aaは、複数の発光素子22からの光を入射光として入射レンズ40a中に制御して入射させる。出射面40abは、入射面40aaに入射した入射光を、出射光として前方の第1中間レンズ40b側へ制御して出射させる。なお、図3では、入射レンズ40aの入射面40aaが平面状に、出射面40abが凸レンズ状に図示されているが、これに限定されるものではなく、入射面40aa及び出射面40abの一方が凸レンズ状で、他方が平面状であってもよく、又は一方が凸レンズ状で、他方が凹レンズ状でもよく、凸レンズ状、凹レンズ状及び平面状を適宜組み合わせることができる。
【0031】
第1中間レンズ40bは、入射レンズ40aからの光が入射する後側の入射面40baと、入射面40baから入射した光を出射する前側の出射面40bbとを有する。第1中間レンズ40bは、レンズホルダ30の内部空間31のうち入射レンズ40aから前方へ離間した位置に配置される。第1中間レンズ40bの外周縁部は、レンズホルダ30に支持(例えば固定支持)される。第1中間レンズ40bの入射面40baは、入射レンズ40aの出射面40abから前方へ離間した位置に配置され、入射レンズ40aの出射面40abに対向する。入射面40baは、入射レンズ40aからの光を入射光として第1中間レンズ40b中に制御して入射させる。出射面40bbは、入射面40baに入射した入射光を、出射光として前方の第2中間レンズ40c側へ制御して出射させる。なお、図3では、第1中間レンズ40bの入射面40ba及び出射面40bbを概略的に図示しているが、入射面40ba及び出射面40bbには、凸レンズ状、凹レンズ状及び平面状を適宜組み合わせることができる。
【0032】
第2中間レンズ40cは、第1中間レンズ40bからの光が入射する後側の入射面40caと、入射面40caから入射した光を出射する前側の出射面40cbとを有する。第2中間レンズ40cは、レンズホルダ30の内部空間31のうち第1中間レンズ40bから前方へ離間した位置に配置される。第2中間レンズ40cの外周縁部は、レンズホルダ30に支持(例えば固定支持)される。第2中間レンズ40cの入射面40caは、第1中間レンズ40bの出射面40bbから前方へ離間した位置に配置され、第1中間レンズ40bの出射面40bbに対向する。入射面40caは、第1中間レンズ40bからの光を入射光として第2中間レンズ40c中に制御して入射させる。出射面40cbは、入射面40caに入射した入射光を、出射光として前方の出射レンズ40d側へ制御して出射させる。なお、図3では、第2中間レンズ40cの入射面40ca及び出射面40cbを概略的に図示しているが、入射面40ca及び出射面40cbには、凸レンズ状、凹レンズ状及び平面状を適宜組み合わせることができる。
【0033】
出射レンズ40dは、第2中間レンズ40cからの光が入射する後側の入射面40daと、入射面40daから入射した光を出射する前側の出射面40dbとを有する。出射レンズ40dは、レンズホルダ30の内部空間31のうちレンズホルダ30の前端部に配置される。出射レンズ40dの外周縁部は、レンズホルダ30に支持(例えば固定支持)される。出射レンズ40dの入射面40daは、第2中間レンズ40cの出射面40cbから前方へ離間した位置に配置され、第2中間レンズ40cの出射面40cbに対向する。入射面40daは、第2中間レンズ40cからの光を入射光として出射レンズ40d中に制御して入射させる。出射面40dbは、入射面40daに入射した入射光を、出射光として車両1の前方へ制御して出射させる。なお、図3では、出射レンズ40dの入射面40daが平面状に、出射面40dbが凸レンズ状に図示されているが、これに限定されるものではなく、入射面40da及び出射面40dbの一方が凸レンズ状で、他方が平面状であってもよく、又は一方が凸レンズ状で、他方が凹レンズ状でもよく、凸レンズ状、凹レンズ状及び平面状を適宜組み合わせることができる。
【0034】
このように、複数のメインレンズ40は、複数の発光素子22から入射した光を制御して、メイン配光MP(図6参照)として車両1の前方に照射する。
【0035】
(付加光学系)
付加光学系50は、光源20からの光をメイン配光MPに付加する付加配光AP(図6参照)として前方へ配光制御する光学系であって、レンズホルダ30の外側(光軸aから離間する方向)に配置される。付加配光APは、メイン配光MPに隣接し、又はメイン配光MPに一部が重なることによって、車両用灯具10Rによる照射範囲をメイン配光MPに対して部分的に拡張する(図6参照)。本実施形態の付加配光APは、その車幅方向内側の領域(一部)がメイン配光MPの車幅方向外側の領域に重なることによって、車両用灯具10Rによる照射範囲を車幅方向外側へ部分的に拡張する(図6(b)、及び図6(c)参照)。付加光学系50としては、レンズ、リフレクタ、導光体等が挙げられる。
【0036】
付加光学系50は、光源20の長手方向(本実施形態では車幅方向)に沿った側方(本実施形態では外側)に配置される。本実施形態では、付加光学系50は、レンズホルダ30に支持され、レンズホルダ30を介して、図示しないヒートシンク等の取り付け対象に対して取り付けられる。なお、付加光学系50を、レンズホルダ30を介することなく、他の取付部材を介して取り付け対象に取り付けてもよい。
【0037】
付加光学系50は、レンズホルダ30の外側のうち、光源20よりも前方、かつ出射レンズ40dの入射面40daよりも後方の領域Bに配置されることが好ましい。これにより、前方への突出量を抑えつつ、光源20からの光を受けて、付加配光APとして前方へ配光制御することができる。
【0038】
図3及び図5に示すように、本実施形態の付加光学系50は、レンズであって、光源側(後側)に位置する第1付加レンズ51と、第1付加レンズ51よりも前方に配置されて第1付加レンズ51からの光を前方へ出射する第2付加レンズ52とを含む。本実施形態の付加光学系50は、レンズホルダ30の車幅方向外側(水平方向の一方側)に配置され、光源20からの光のうち入射レンズ40aに入射しない光を受けて、付加配光APとして前方へ配光制御する。なお、付加光学系50は、第1付加レンズ51及び第2付加レンズ52に加えて他の付加レンズを含んでいてもよい。
【0039】
(第1付加レンズ)
第1付加レンズ51は、例えばシリンドリカルレンズであって、レンズホルダ30を挟んで、入射レンズ40aの車幅方向外側に配置される。すなわち、第1付加レンズ51は、光源20の長手方向に沿った側方(車幅方向外側)に配置され、入射レンズ40aと略同じ前後位置に位置する。第1付加レンズ51は、光源20からの光が入射する入射面51aと、入射面51aから入射した光を出射させる出射面51bとを有する。本実施形態の第1付加レンズ51の入射面51aには、光源20からの光のうち入射レンズ40aに入射しない光が、光源20の発光面(前面)とレンズホルダ30の後端縁30aとの間の隙間を介して入射する。
【0040】
図3に示すように、第1付加レンズ51の入射面51aの水平方向断面の形状は、凹形状であることが好ましい。また、図5に示すように、第1付加レンズ51の入射面51aの鉛直方向断面の形状は、凸形状であることが好ましい。図5に示すように、第1付加レンズ51の入射面51aの光軸a(メインレンズ40の光軸a)に対して垂直な上下方向の長さL1は、少なくとも光源20の発光面(前面)の光軸aに対して垂直な上下方向の長さL2よりも長い。なお、第1付加レンズ51の入射面51aの水平方向断面の形状は、少なくとも車幅方向の外端部の断面形状が凹形状であればよく、例えば、メインレンズ40の光軸aに近い側(本実施形態では車幅方向内側)の領域の水平方向断面の形状が凸形状であってもよい。
【0041】
図3に示すように、第1付加レンズ51の出射面51bの水平方向断面の形状は、凸形状であることが好ましい。また、図5に示すように、第1付加レンズ51の出射面51bの鉛直方向断面の形状は、凸形状であることが好ましい。
【0042】
第1付加レンズ51の入射面51a及び出射面51bの断面形状を上記形状にすることによって、車両用灯具10Rによる照射範囲を車幅方向外側へ部分的に拡張するように、付加配光APを適切に配光制御することができる。
【0043】
(第2付加レンズ)
第2付加レンズ52は、例えばシリンドリカルレンズであって、第1付加レンズ51の前方に位置し、入射レンズ40aよりも前方に配置される。第2付加レンズ52は、第1付加レンズ51からの光が入射する入射面52aと、入射面52aから入射した光を出射させる出射面52bとを有する。
【0044】
図3に示すように、第2付加レンズ52の入射面52aの水平方向断面の形状は、凸形状であることが好ましい。また、図5に示すように、第2付加レンズ52の入射面52aの鉛直方向断面の形状は、凸形状であることが好ましい。第2付加レンズ52の入射面52aの車幅方向の外端は、第1付加レンズ51よりも車幅方向外側に位置する。すなわち、第2付加レンズ52の入射面52aは、第1付加レンズ51よりも車幅方向外側(水平方向の一方側)へ突出している。なお、本実施形態では、第2付加レンズ52の入射面52aの水平方向断面の形状を凸形状としたが、これに限定されるものではなく、入射面52aの水平方向断面の形状を平面状としてもよい。図5に示すように、第2付加レンズ52の入射面52aの光軸a(メインレンズ40の光軸a)に対して垂直な上下方向の長さL3は、第1付加レンズ51の入射面51aの上下方向の長さL1以上の長さを有していればよい。
【0045】
図3に示すように、第2付加レンズ52の出射面52bの水平方向断面の形状は、平面状であることが好ましい。また、図5に示すように、第2付加レンズ52の出射面52bの鉛直方向断面の形状は、平面状であることが好ましい。
【0046】
第2付加レンズ52の入射面52a及び出射面52bの断面形状を上記形状にすることによって、車両用灯具10Rによる照射範囲を車幅方向外側へ部分的に拡張するように、付加配光APを適切に配光制御することができる。
【0047】
なお、レンズ(第1付加レンズ51及び第2付加レンズ52)に代えてリフレクタや導光体を付加光学系50として使用する場合には、光源20からの光を入射させる付加光学系50の入射面の形状を、光源20からの光を集光し易い形状に形成することが好ましく、また、付加光学系50の入射面の面積を、光源20の発光面(前面)の面積よりも大きくすることが好ましい。
【0048】
(配光パターン)
次に、配光パターンについて、図6に基づいて説明する。
【0049】
図6は、スクリーン上に投影された右側の車両用灯具の配光パターンを示す図であって、(a)メイン配光と付加配光とを個別に表した状態を、(b)付加配光の一部をメイン配光に重ねた状態を、(c)は実際の配光パターンをそれぞれ示す。なお、図6では、配光パターンを等光度線で示しており、中央の等光度線の光度の値は高く、外側(外周)に行くに従って等光度線の光度の値は低くなる。
【0050】
図6(a)に示すように、本開示では、車両用灯具10Rによる全体の配光の崩れを抑えつつ、照射範囲を部分的に拡張するために、複数のメインレンズ40によって配光制御されたメイン配光MPに対して、付加光学系50によって配光制御された付加配光APを付加する。付加配光APは、メイン配光MPに隣接する態様で、又はメイン配光MPに一部が重なる態様で、メイン配光MPに対して付加される。本実施形態では、図6(b)に示すように、付加配光APの一部(車幅方向内側の領域)がメイン配光MPの車幅方向外側の領域に重なる態様で、付加配光APをメイン配光MPに対して付加する。これにより、図6(c)に示すように、メイン配光MPと付加配光APとは互いに重畳されて1つの配光パターンPを形成し、車両用灯具10Rの照射範囲は、メイン配光MPの照射範囲に対して車幅方向外側へ部分的に拡張される。
【0051】
上記のように構成された車両用灯具10Rでは、複数の発光素子22を有するLEDを用いた光源20の前方に複数のメインレンズ40を配置するので、光源20の各発光素子22の点消灯や調光によって表現されるイメージをそのまま拡大してメイン配光MPとして出力することができる。
【0052】
また、光源20からの光をメイン配光MPに付加する付加配光APとして前方へ配光制御する付加光学系50を、レンズホルダ30の外側に配置する。すなわち、付加光学系50は、複数のメインレンズ40とは独立して配光制御し、付加配光APをメイン配光MPに付加するので、メイン配光MPを崩すことなく、車両用灯具10Rの照射範囲をメイン配光MPの照射範囲に対して部分的に拡張することができる。
【0053】
また、付加配光APをメイン配光MPに一部が重なるように配向制御することによって、メイン配光MPと付加配光APとの繋がりを適切に設定することができる。
【0054】
このように、本実施形態によれば、全体の配光の崩れを抑えつつ、照射範囲を部分的に拡張することができる。
【0055】
また、第1付加レンズ51を、入射レンズ40aの側方に配置することによって、光源20からの光のうちメインレンズ40(入射レンズ40a)に入射しない光を第1付加レンズ51に入射させることができる。このため、光源20からの光のうちメインレンズ40に入射しない光を利用して付加配光APを配光制御することができる。
【0056】
また、第2付加レンズ52を、入射レンズ40aよりも前方に配置することによって、第1付加レンズ51側からの光を車両1の前方へ照射することができる。
【0057】
また、複数のメインレンズ40の径は、後側のレンズよりも前側のレンズの方が大きいので、レンズホルダ30の外周面を、後方から前方へ向かう程、徐々に拡径する形状にすることができる。このため、付加光学系50によってレンズホルダ30の外周面を添わせるような光路を通すことができ、省スペースで付加配光APをメイン配光MPの周縁部に配光制御することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、光源20からの光を、光源20の発光面とレンズホルダ30の後端縁30aとの間の隙間を介して付加光学系50(第1付加レンズ51)に入射させたが、これに限定されるものではない。例えば、レンズホルダ30の側面に開口を設け、当該開口よりも前方に付加光学系50の入射面を配置し、上記開口から漏れた光を付加光学系50に入射させてもよい。
【0059】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1:車両
10L,10R:車両用灯具
20:光源
22:複数の発光素子(発光部)
30:レンズホルダ
40:複数のメインレンズ
40a:入射レンズ
40b:第1中間レンズ
40c:第2中間レンズ
40d:出射レンズ
50:付加光学系
51:第1付加レンズ
51a:第1付加レンズの入射面
51b:第1付加レンズの出射面
52:第2付加レンズ
52a:第2付加レンズの入射面
52b:第2付加レンズの出射面
図1
図2
図3
図4
図5
図6