(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004473
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】生菓子及び生菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 3/48 20060101AFI20250107BHJP
A23G 3/00 20060101ALI20250107BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20250107BHJP
A23G 3/54 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A23G3/48
A23G3/00
A23G3/34 106
A23G3/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104186
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】512056186
【氏名又は名称】株式会社 岩谷
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 要美
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GG06
4B014GG09
4B014GG18
4B014GK03
4B014GK08
4B014GK12
4B014GL01
4B014GL03
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP01
4B014GP14
4B014GP27
4B014GQ12
(57)【要約】
【課題】常温で梅肉の味を楽しむことができる生菓子及び生菓子の製造方法を提供する。
【解決手段】塩及び甘味料を含有する甘梅の内部に、豆類及び甘味料を用いた餡が包み込まれている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩及び甘味料を含有する甘梅の内部に、豆類及び甘味料を用いた餡が包み込まれていることを特徴とする生菓子。
【請求項2】
前記甘梅は、前記甘味料の濃度が19.8質量%以上24.8質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の生菓子。
【請求項3】
前記甘梅及び前記餡は、ビタミンB1を含有し、
前記甘梅は、前記ビタミンB1を0.8質量%以上1.2質量%以下含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の生菓子。
【請求項4】
前記餡は、寒天を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の生菓子。
【請求項5】
前記餡は、前記甘味料の質量の0.003倍以上0.032倍以下の質量のビタミンB1を含有することを特徴とする請求項4に記載の生菓子。
【請求項6】
塩漬け梅を甘味料水溶液に浸漬させて甘梅を作り、かつ、豆類及び甘味料を用いて餡を作る工程と、
前記甘梅の種を除去し、前記種を除去した前記甘梅の内部に前記餡を入れる工程と、
を有することを特徴とする生菓子の製造方法。
【請求項7】
前記塩漬け梅は、4質量%~8質量%の塩分を含み、
前記甘味料水溶液の質量パーセント濃度は、19.8質量%以上24.8質量%以下であり、
前記塩漬け梅を前記甘味料水溶液に2日~12日浸漬させて前記甘梅を作る
ことを特徴とする請求項6に記載の生菓子の製造方法。
【請求項8】
前記餡を作る工程は、
乾燥豆類を茹でて餡下地を作る工程と、
寒天を水に入れて溶かし、前記寒天が溶けた水に前記餡下地、前記甘味料及びビタミンB1を入れる工程と、を含む
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の生菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生菓子及び生菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、(1)生梅果実を糖類を含む調味液に浸漬して調味する調味工程と、(2)調味した梅果実を瞬間冷凍する瞬間冷凍工程と、(3)瞬間冷凍した生梅果実に開口部を設けて種を取り出し、被充填空間を形成する種抜き工程と、(4)被充填空間に食品を充填する充填工程とを含む冷凍梅菓子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、冷凍菓子であり、生菓子に適用することはできない。一般的に、味を楽しむには、体温(35℃~37℃)を中心として±25℃~±30℃の範囲がよく、その温度帯を下回ると味よりも冷たさを楽しむ面が強くなるといわれている。したがって、梅の味を楽しむためには、冷凍菓子より、常温で食すことができる菓子であることが望ましい。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、常温で梅の味を楽しむことができる生菓子及び生菓子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る生菓子は、例えば、塩及び甘味料を含有する甘梅の内部に、豆類及び甘味料を用いた餡が包み込まれていることを特徴とする。これにより、常温で梅の味を楽しむことができる新しい生菓子を提供することができる。さらに、梅の塩分と餡の甘さを調和させることができる。
【0007】
前記甘梅は、前記甘味料の濃度が19.8質量%以上24.8質量%以下であってもよい。これにより、塩味がある梅肉の味と甘味がある餡の味を調和させることができる。また、甘梅の保存性を向上させることができる。
【0008】
前記甘梅及び前記餡は、ビタミンB1を含有し、前記甘梅は、前記ビタミンB1を0.8質量%以上1.2質量%以下含有してもよい。また、前記餡は、前記甘味料の質量の0.003倍以上0.016倍以下の質量のビタミンB1を含有してもよい。これにより、常温で甘みと塩味を調和させつつ、日持ちを向上させることができる。
【0009】
前記餡は、寒天を含有してもよい。これにより、甘梅の中に餡を詰めてから時間が経過したとしても、餡に甘梅の梅果肉汁や塩分が浸透することを防ぐことができる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る生菓子の製造方法は、例えば、塩漬け梅を甘味料水溶液に浸漬させて甘梅を作り、かつ、豆類及び甘味料を用いて餡を作る工程と、前記甘梅の種を除去し、前記種を除去した前記甘梅の内部に前記餡を入れる工程と、を有することを特徴とする。これにより、常温で梅肉の味を楽しむことができる生菓子wo
製造することができる。
【0011】
前記塩漬け梅は、4質量%~8質量%の塩分を含み、前記甘味料水溶液の質量パーセント濃度は、19.8質量%以上24.8質量%以下であり、前記塩漬け梅を前記甘味料水溶液に2日~12日浸漬させて前記甘梅を作ってもよい。これにより、塩漬け梅の果肉に甘味料を浸透させ、甘味料の濃度が25質量%~30質量%である甘梅を作ることができる。
【0012】
前記餡を作る工程は、乾燥豆類を茹でて餡下地を作る工程と、寒天を水に入れて溶かし、前記寒天が溶けた水に前記餡下地、前記甘味料及びビタミンB1を入れる工程と、を含んでもよい。これにより、寒天を餡に均一に混ぜ、甘梅の塩分が餡に浸透しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、常温で梅の味を楽しむことができる生菓子及び生菓子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】生菓子の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図2】塩及び甘味料を含有する甘梅を作る(ステップS10)工程の詳細を示すフローチャートである。
【
図3】甘梅の中に包む餡を作る(ステップS20)工程の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一の実施形態に係る生菓子及び生菓子の製造方法について説明する。
【0016】
[概要]
本実施の形態に係る生菓子は、塩及び甘味料を含有する甘梅の内部に、豆類及び甘味料を用いた餡が包み込まれている菓子である。
【0017】
甘味料は、糖質系甘味料と非糖質系甘味料を含む。また、甘味料水溶液は、甘味料を水に溶かした水溶液である。
【0018】
糖質系甘味料は、ショ糖、でん粉由来の糖、その他の糖、糖アルコール、はちみつを含む。でん粉由来の糖は、ブドウ糖、麦芽糖、果糖、水飴、異性化糖を含む。その他の糖は、乳糖、オリゴ糖を含む。糖アルコールは、糖質に水素を添加して化学的に安定させたものであり、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元水飴を含む。また、白砂糖、黒糖、きび砂糖、甜菜糖等は、ショ糖を主成分とする甘味料である。
【0019】
非糖質系甘味料は、天然甘味料と合成甘味料を含む。天然甘味料は、植物の葉や果実などに含まれている甘味成分を抽出した甘味料であり、ステビア、甘草、羅漢果を含む。合成甘味料は、化学合成により作られる甘味料であり、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKを含む。
【0020】
甘梅は、塩分濃度が1質量%~4質量%であり、甘味料の濃度が19.8質量パーセント以上24.8質量パーセント以下である。餡は、甘味料及び寒天を含有する。寒天は必須ではないが、餡が寒天を含有することで、甘梅の中に餡を詰めてから時間が経過したとしても、餡に甘梅の梅果肉汁や塩分が浸透しない。また、甘梅及び餡は、ビタミンB1を含有する。
【0021】
餡は、小豆、赤インゲン豆、白インゲン豆、大豆等の豆類を原料とする。本実施の形態では、豆類を乾燥させた乾燥豆類を餡の原料とするが、餡の原料は乾燥豆類には限定されない。
【0022】
[生菓子の製造方法]
図1は、生菓子の製造方法の流れを示すフローチャートである。まず、塩及び甘味料を含有する甘梅を作る(ステップS10)。また、甘梅の中に包む餡を作る(ステップS20)。なお、ステップS10とステップS20とは、ステップS10を先に行いステップS20を後で行ってもよいし、ステップS20を先に行いステップS10を後で行ってもよいし、ステップS10とステップS20とを同時に行ってもよい。
【0023】
甘梅及び餡を作る工程(ステップS10、S20)の後で、甘梅の種を除去し、種を除去した甘梅の内部に餡を入れる(ステップS30)。
【0024】
図2は、塩及び甘味料を含有する甘梅を作る(ステップS10)工程の詳細を示すフローチャートである。まず、甘味料を水に溶かした甘味料水溶液を作る(ステップS11)。ここでは、甘味料として砂糖を使用するため、甘味料水溶液は砂糖水である。また、砂糖水には、ビタミンB1が微量(後に詳述)添加されている。ビタミンB1は、粉末状や液体状のものを使用できる。
【0025】
ここで、甘味料水溶液の作り方を説明する。まず、甘味料と水を混ぜて火にかけて、水に甘味料を溶かす。その後、甘味料が溶けた水(湯)の火を止めて人肌程度(36~40℃)まで冷ましてから、ビタミンB1を加えてよく混ぜる。ビタミンB1添加後、そのまま常温まで冷ますと、甘味料水溶液が完成する。
【0026】
表1は、甘味料水溶液の実施例を示す。甘味料水溶液は、水3000g~4000gの水に、1000g(水の1/4~1/3の重さ)の甘味料(ここでは、砂糖)及び40g~48g(水の1/100~1/62.5の重さ)のビタミンB1を加えたものである。したがって、甘味料水溶液は、19.8質量パーセント以上24.8質量パーセント以下の甘味料(ここでは、砂糖)と、0.8質量パーセント以上1.2質量パーセント以下のビタミンB1を含む。ただし、水の量は表1の実施例に限定されず、例えば3000g~6000gであってもよい。
【0027】
【0028】
次に、ステップS11で作った常温の甘味料水溶液に塩漬け梅を浸漬させる(ステップS12)。ここで、本実施の形態で使用する塩漬け梅について説明する。塩漬け梅は、梅を塩漬けにした梅漬け又は梅干しを塩抜きし、塩分を抜いたものである。通常、梅漬け又は梅干し塩分濃度は20%程度と塩分濃度が高いため、塩分濃度の高い梅漬け又は梅干しを1日程度水に浸漬させることで、梅漬け又は梅干しの塩を抜き塩分濃度を低くする。塩抜き後の塩漬け梅の塩分濃度は略4%~略8%であり、本実施の形態では略4%のものを使用する。このとき、水を取り換えて2回ほど水に浸漬させることが好ましい。なお、梅漬け又は梅干しを塩抜きするときに、果糖ぶどう糖液糖、水飴、はちみつ等の甘味料、黒酢等を塩抜き用の水に加えてもよい。なお、塩漬け梅は、甘味料水溶液に浸漬させる前に水分を切っておくことが望ましい。
【0029】
次に、ステップS12の具体的な方法について説明する。例えば、表1の実施例で示す砂糖水に、1000gの塩漬け梅を2日~12日浸漬させる。
【0030】
なお、塩漬け梅を砂糖水に浸漬させる工程は、2回行ってもよい。例えば、塩漬け梅を砂糖水に2日程度浸漬させ(1回目の浸漬)、1回目の浸漬後の塩漬け梅を更にもう一度新しい砂糖水に7日~10日程度浸漬させる(2回目の浸漬)。なお、2回目の浸漬は、1回目の浸漬で用いる砂糖水の濃度より濃い濃度の砂糖水を用いてもよい。
【0031】
これにより、塩漬け梅に甘味料(砂糖)が浸透し、塩漬け梅が甘味料を含有する甘梅となる。また、塩漬け梅から水分を抜くことができる。塩漬け梅を長時間砂糖水に浸漬させることで、甘梅の甘味料の濃度(糖度)は砂糖水と同様の糖度となる。すなわち、甘梅の甘味料の濃度は、19.8質量%以上24.8質量%以下である。また、甘梅は、特に2回の浸漬を行うことで塩漬け梅からさらに塩抜きがされ、塩分濃度は略1%以上略4%以下となる。
【0032】
また、塩漬け梅を砂糖水に浸漬させることで、塩漬け梅にビタミンB1が浸透し、その結果甘梅がビタミンB1を含有する。甘梅のビタミンB1の濃度は、砂糖水と同様、0.8質量%以上1.2質量%以下である。
【0033】
なお、塩漬け梅を浸漬させる甘味料水溶液の濃度が濃くなると、梅から水分が過剰に抜けてしまい、皮が硬くなってしわが入ったり、餡を包む工程で不具合(皮の破れ等)が発生したりするおそれがあるため、甘味料水溶液の濃度を24.8質量%以下とすることが望ましい。また、梅の保存性を向上させるため、塩漬け梅を浸漬させる甘味料水溶液の濃度を19.8質量%以上とすることが望ましい。
【0034】
塩漬け梅を砂糖水に2日~12日浸漬させたら、塩漬け梅を砂糖水から引き揚げて水分を切る(ステップS13)。これにより、甘梅を作る(ステップS10)工程が終了する。
【0035】
図3は、甘梅の中に包む餡を作る(ステップS20)工程の詳細を示すフローチャートである。まず、乾燥豆類を茹でて餡下地を作る(ステップS21)。本実施の形態では、乾燥豆類として乾燥小豆又は乾燥白いんげん豆を使用する。具体的には、黒餡は乾燥小豆を用い、白餡は乾燥白いんげん豆を用いる。
【0036】
ステップS21の処理の一例について具体的に説明する。まず乾燥豆類を洗い、次いで大量の水で乾燥豆類を茹でて柔らかくする。例えば、乾燥豆類の略1.5倍の水に乾燥豆類を入れて火にかけ、2回ほど沸騰させて煮立たせたのち、茹で汁を捨てる(茹でこぼし)。その後、乾燥豆類の略1.5倍の水(新しい水)に乾燥豆類を入れて、強火にかけて沸騰させたのち、弱火にかけ、水の量が少なくなったら別途用意した水(差し水)を適宜加え、常に豆が水を被っている状態を保つ。差し水を2回~3回行い、乾燥豆類が柔らかくなるまで茹でる。なお、豆が茹で上がるまでに必要な時間は、沸騰後に弱火にしてから40~70分程度である。この工程において、乾燥豆の4倍~5倍の水を使用する。
【0037】
表2は、ステップS21により出来上がった餡下地の実施例を示す。餡下地の質量は、乾燥豆類の質量の略2倍となる。本発明において、略2倍とは、2倍に1割程度の増減を含む概念である。餡下地の形態としては、こしあん及び粒あんがある。なお、こしあんは粒あんを裏ごしして作るため、こしあんは粒あんよりも柔らかく(水分を多めに含む)なり、餡下地の出来上がり量もこしあんは粒あんよりも少し多くなる。
【0038】
【0039】
次に、ステップS21でできた餡下地に、水、甘味料、寒天及びビタミンB1を加えて餡を作る(ステップS22)。ここで、ステップS22の処理の一例について具体的に説明する。
【0040】
まず、水に寒天を入れてしっかり寒天を溶かしたあとで、これを火にかける。これにより、寒天がダマにならない。この寒天が溶けた水(液体A)は温めすぎないことが好ましく、例えば、液体Aの温度は略50℃~略60℃である。なお、ステップS22では、寒天として粉寒天を用いるが、寒天は粉寒天に限られない。
【0041】
次に、液体AにビタミンB1、甘味料及び餡下地を加える。ここでは、甘味料は、ショ糖を主成分とする白砂糖、黒糖、きび砂糖のうちの少なくとも1つである。例えば、液体AにビタミンB1及び甘味料を加えた液体(液体B)を火にかけて沸騰させ、ビタミンB1及び甘味料を溶かす。ビタミンB1及び甘味料が溶けた液体Bは、寒天及びビタミンB1を含む甘味料水溶液である。
【0042】
そして、寒天及びビタミンB1を含む甘味料水溶液に餡下地を入れてよくかき混ぜる。これにより、餡が完成する。最初に寒天を水に溶かすことで、寒天が餡下地に均一に混ざる。寒天、ビタミンB1及び甘味料の量については後に詳述する。
【0043】
なお、ステップSP22では、まず寒天を溶かした液体Aを作り、そこにビタミンB1、甘味料及び餡下地を加えるが、ビタミンB1、甘味料及び餡下地を加える順番は任意である。例えば、液体AにビタミンB1及び甘味料を加えて溶かし、これに餡下地を入れてよくかき混ぜて餡を作ってもよいし、液体Aに甘味料及び餡下地を加えて混ぜ、ここにビタミンB1を入れてもよい。
【0044】
図1の説明に戻る。ステップS30では、ステップS10で作成した甘梅の種を除去し、種を除去した甘梅の内部にステップS20で作成した餡をつめる。甘梅は塩分濃度が略1質量%~略4質量%と低く、餡に寒天が含まれているため、餡に塩味が浸透することを防ぎ、餡の味を生かすことができる。
【0045】
なお、甘梅の内部に餡をつめた後で、2~6度以下に保った状態で2週間以上保存する(乾燥工程)ことが好ましい。これにより、甘梅からさらに水分が抜け、味が良くなるとともに、保存性も向上する。
【0046】
ここで、餡における寒天、ビタミンB1及び甘味料の量について説明する。表3は、餡の実施例を示す。甘味料として、黒餡には白砂糖、黒糖、きび砂糖を等量ずつ用い、白餡には上白糖及びきび砂糖を等量ずつ用いている。表3における水の重さは、ステップSP22で最初に準備する水(寒天、ビタミンB1及び甘味料を溶かす前の水)の重さである。なお、作成途中で水が蒸発するため、表3では、出来上がりの餡の重さが、餡下地、水、砂糖、ビタミンB1及び寒天の重さの総和より軽くなっている。
【0047】
【0048】
甘味料の質量は餡下地の質量の略1倍以上略2倍以下である。餡下地の質量は乾燥豆類の質量の略2倍である(ステップSP21参照)ため、甘味料の質量は乾燥豆類の質量の略2倍以上略4倍以下である。これにより、餡があっさりとした甘さになり、梅の塩分と餡の甘さとが調和する。
【0049】
ビタミンB1の質量は、餡下地、水及び甘味料の質量の総和の0.002以上0.008倍以下である。言い換えれば、ビタミンB1の質量は、餡下地の質量の0.006倍以上0.032倍以下であり、乾燥豆類の質量の略0.012倍以上略0.064倍以下である。また、ビタミンB1の質量は、甘味料の質量の略0.003倍以上略0.032倍以下である。ビタミンB1の質量をこのようにすることで、感応評価の結果、ビタミンB1の酸味を感じることなく、梅及び餡の甘みと塩味を美味しく味わうことができた。また、感応評価の結果、ビタミンB1の質量を餡下地、水及び甘味料の質量の総和の0.004倍としたときに、梅及び餡の甘みと塩味とが最も調和した。
【0050】
なお、黒餡のこしあんの場合を例にすると、ビタミンB1の質量の餡下地の質量に対する割合は、3.72g/620g=0.006倍、19.84g/620g=0.032倍と算出される。また、ビタミンB1の乾燥豆類の質量に対する割合は、例えば、3.72g/310g=0.012倍、19.84g/310g=0.064倍と算出される。さらに、ビタミンB1の質量の甘味料の質量に対する割合は、例えば、3.72g/1240g=0.003倍、19.84g/620g=0.032倍と算出される。
【0051】
ただし、ビタミンB1の質量はこれに限られない。例えば、ビタミンB1の質量を餡下地、水及び甘味料の質量の総和の0.008倍より多く0.011倍以下とした場合には、ビタミンB1の酸味を少し感じるが、梅の味にカバーされて梅及び餡の甘みと塩味を味わうことができた。ただし、ビタミンB1の質量を餡下地、水及び甘味料の質量の総和の0.011倍より多くした場合には、ビタミンB1の含有量が増すごとにビタミンB1の酸味を感じ、美味しく味わえなくなった。
【0052】
寒天の質量は、餡下地、水及び甘味料の質量の総和の0.002倍以上0.007倍以下である。言い換えれば、寒天の質量は、餡下地の質量の0.006倍以上0.028倍以下であり、乾燥豆類の質量の略0.012倍以上略0.056倍以下である。また、寒天の質量は、甘味料の質量の略0.003倍以上略0.028倍以下である。寒天の質量をこのようにすることで、感応評価の結果、餡が適切な硬さとなった。特に、寒天の質量が餡下地、水及び甘味料の質量の総和の0.004倍のときに餡の硬さが最も適切であった。
【0053】
なお、黒餡のこしあんの場合を例にすると、寒天の質量の餡下地の質量に対する割合は、例えば、3.72g/620g=0.006倍、17.36g/620g=0.028倍と算出される。また、寒天の乾燥豆類の質量に対する割合は、例えば、3.72g/310g=0.012倍、17.36g/310g=0.056倍と算出される。さらに、寒天の質量の甘味料の質量に対する割合は、例えば、3.72g/1240g=0.003倍、17.36g/620g=0.028倍と算出される。
【0054】
ただし、寒天の質量はこれに限られない。餡下地、水及び甘味料の質量の総和の0.002倍以上~0.01倍以下の寒天が含まれていれば、餡が硬くなりすぎず、甘梅の内部に餡を適切に入れることができた。
【0055】
図4、5は、このようにして製造された生菓子1、2の概略を示す断面図である。
図4、5は、それぞれ、生菓子1、2を半分に切断した状態を示す。
図4は、甘梅10の内部に黒餡11が包み込まれた生菓子1であり、
図5は、甘梅10の内部に白餡12が包み込まれた生菓子2である。
【0056】
甘味料により甘梅10の水分が抜け、更に乾燥工程により甘梅10の水分が抜けるため、薄い甘梅10の層の内側に黒餡11又は白餡12が多く封入された生菓子1、2となる。甘梅10の量に比べて黒餡11又は白餡12の量を多くすることで、梅及び餡の味を楽しむ生菓子1、2とすることができる。
【0057】
本実施の形態によれば、塩及び甘味料を含有する甘梅の内部に、豆類及び甘味料を用いた餡が包み込まれている生菓子を提供することができる。また、本実施の形態の生菓子の製造方法を用いることで、梅の内部に餡が包み込まれている生菓子を安定して製造することができる。この生菓子は、塩気のある梅の味と甘味のある餡の味が共に生かされた新しい菓子として消費者に提供できる。また、梅及び餡が甘味料を含むため、常温で保存が可能であり、かつ、常温で甘みと塩味が調和した梅及び餡の味を楽しむことができる。
【0058】
また、本実施の形態によれば、甘梅の甘味料の濃度(糖度)が25質量%~30質量%であるため、甘梅の保存性を向上させ、甘梅の塩分濃度を低くすることができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、甘梅及び餡がビタミンB1を含有するため、ビタミンB1の抗菌性により日持ちを向上させることができる。また、ビタミンB1を餡下地の質量の0.006倍以上0.032倍以下又は甘味料の質量の略0.003倍以上略0.016倍以下含有させることで、ビタミンB1の酸味を感じることなく、常温で甘みと塩味が調和させつつ、保存性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、餡に寒天を加えることで、甘梅の中に餡を詰めてから時間が経過したとしても、餡に甘梅の梅果肉汁や塩分が浸透することを防ぐことができる。特に、寒天を餡下地の質量の0.006倍以上0.028倍以下又は甘味料の質量の略0.003倍以上略0.028倍以下含有させることで餡を適切な固さとすることができる。
【0061】
なお、本実施の形態によれば、ステップSP21で甘味料が含まれていない餡下地を作り、ステップSP22で餡下地に甘味料を入れたが、甘味料を入れるタイミングはこれに限られない。例えば、ステップSP21で甘味料を入れてもよいし、ステップSP21、SP22の両方で甘味料を入れてもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は本実施の形態に限られず、その各種の実施形態で実施可能なものである。
【符号の説明】
【0063】
1、2 :生菓子
10 :甘梅
11 :黒餡
12 :白餡