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<図1>
  • 特開-生地折り装置、及び生地折り方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004474
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】生地折り装置、及び生地折り方法
(51)【国際特許分類】
   A41H 43/02 20060101AFI20250107BHJP
   B25J 9/18 20060101ALI20250107BHJP
   D05B 33/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A41H43/02
B25J9/18
D05B33/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104187
(22)【出願日】2023-06-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、次世代人工知能・ロボットの中核となるインテグレート技術開発/人工知能技術の適用領域を広げる研究開発/モデル化難物体の操作知識抽出に基づく柔軟物製品の生産工程改善、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 元樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 公俊
(72)【発明者】
【氏名】シュ イクテツ
【テーマコード(参考)】
3B150
3C707
【Fターム(参考)】
3B150CE23
3B150EB06
3B150EB13
3B150EF01
3B150EF06
3B150EH03
3B150EH06
3B150EH08
3B150EH17
3C707AS05
3C707BS10
3C707DS01
3C707ES17
3C707JS02
3C707LV03
3C707NS10
3C707NS29
(57)【要約】
【課題】縫製前の布部品をピックアップして搬送に適した形態にまとめることが可能な生地折り装置を提供すること。
【解決手段】生地折り装置は、生地の一部を巻き付けて保持するピックアップ機構と、前記ピックアップ機構の下方の支持位置と前記支持位置から離れた退避位置とに支持板を進退移動させる支持機構と、を含むハンド部と、前記ハンド部を上下方向と、水平方向の少なくとも一方向とに沿って移動させ、前記ハンド部に保持した前記生地を折り重ねる移動機構と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地の一部を保持するピックアップ機構と、
前記ピックアップ機構の下方の支持位置と前記支持位置から離れた退避位置とに支持板を進退移動させる支持機構と、
を含むハンド部と、
前記ハンド部を上下方向と、水平方向の少なくとも一方向とに沿って移動させ、前記ハンド部に保持した前記生地を折り重ねる移動機構と、を備える、
生地折り装置。
【請求項2】
前記支持機構は、前記ピックアップ機構が前記生地の一端側を保持した状態で、前記支持板を前記支持位置に配置することにより、前記生地の保持部位よりも下側を支持し、
前記移動機構は、前記ピックアップ機構および前記支持板により前記生地を支持した前記ハンド部を載置面の上方で移動させ、持ち上げた前記生地を前記載置面上に折り重ねる、
請求項1に記載の生地折り装置。
【請求項3】
前記支持機構は、前記生地が折り重ねられた後、前記支持板を前記退避位置から前記支持位置へ移動させて前記生地と載置面との間に前記支持板を配置し、
前記移動機構は、折り重ねられた前記生地を前記支持板により下方から支持した状態の前記ハンド部を、搬送先へ移動させる、
請求項1に記載の生地折り装置。
【請求項4】
前記支持板は、前記支持位置側の先端部の上面に、下り傾斜となる傾斜面を有する、
請求項3に記載の生地折り装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記生地の一端側を保持した前記ハンド部を、前記一方向に沿った往復移動と上下方向の移動との組み合わせで移動させることにより、載置面上に載置された前記生地の他端部上に、前記生地をジグザグに折り重ねる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の生地折り装置。
【請求項6】
前記移動機構は、前記生地をジグザグに折り重ねる際に、前記載置面の上方の開始位置から、直線移動の組み合わせからなるジグザグ軌道により前記ハンド部を移動させる、
請求項5に記載の生地折り装置。
【請求項7】
前記ハンド部は、前記開始位置からのジグザグ移動中、前記ピックアップ機構および前記支持機構を停止させる、
請求項6に記載の生地折り装置。
【請求項8】
前記移動機構は、多関節型ロボットアームを含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の生地折り装置。
【請求項9】
載置面上の生地をハンド部のピックアップ機構により保持するステップと、
前記ピックアップ機構の下方の支持位置に前記ハンド部の支持板を移動させて前記生地を支持するステップと、
前記ハンド部を上下方向と、水平方向の少なくとも一方向とに沿って移動させ、前記ハンド部に保持した前記生地を前記載置面上に折り重ねるステップと、を備える、
生地折り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生地折り装置、及び生地折り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料製品の製造では、裁断機によって布生地を裁断して布部品を作製し、各種の布部品を一つずつピックアップして、一つの製品に必要な布部品群にまとめて縫製作業場所へ搬送し、ミシン等で各布部品を縫着する。特許文献1では、水平面内に移動する裁断ヘッドによって、裁断テーブル上の布生地を布部品毎に裁断する裁断機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-118988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
裁断された個々の布部品をピックアップして、それぞれ搬送に適した形態にまとめる作業は煩雑である。そのため、縫製前の布部品をピックアップする作業の一部または全部を自動化することが望まれている。しかし、布部品は大きさや形状が様々であり、柔軟で容易に変形するため、機械による取り扱いが困難であった。
【0005】
本発明の態様は、縫製前の布部品をピックアップして搬送に適した形態にまとめることが可能な生地折り装置及び生地折り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、生地の一部を巻き付けて保持するピックアップ機構と、前記ピックアップ機構の下方の支持位置と前記支持位置から離れた退避位置とに支持板を進退移動させる支持機構と、を含むハンド部と、前記ハンド部を上下方向と、水平方向の少なくとも一方向とに沿って移動させ、前記ハンド部に保持した前記生地を折り重ねる移動機構と、を備える、生地折り装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、載置面上の生地をハンド部のピックアップ機構により保持するステップと、前記ピックアップ機構の下方の支持位置に前記ハンド部の支持板を移動させて前記生地を支持するステップと、前記ハンド部を上下方向と、水平方向の少なくとも一方向とに沿って移動させ、前記ハンド部に保持した前記生地を前記載置面上に折り重ねるステップと、を備える、生地折り方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、縫製前の布部品をピックアップして搬送に適した形態にまとめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る生地折り装置を模式的に示す図である。
図2図2は、生地折り装置の制御に関わる構成を示すブロック図である。
図3図3は、ハンド部の構成を模式的に示す側面図である。
図4図4は、支持板の支持位置と退避位置との移動を説明するための支持機構の下面図である。
図5図5は、生地折り装置による折り重ね前と折り重ね後の生地の模式図である。
図6図6は、本実施形態に係る生地折り方法を説明するための第1の図である。
図7図7は、本実施形態に係る生地折り方法を説明するための第2の図である。
図8図8は、生地の折り重ねにおけるハンド部の軌道例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面のX軸と平行な方向をX軸方向とし、X軸と直交する水平面のY軸と平行な方向をY軸方向とし、水平面と直交するZ軸と平行な方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。
【0012】
本実施形態に係る生地折り装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る生地折り装置1を模式的に示す図である。図2は、生地折り装置の制御に関わる構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、生地折り装置1は、例えば衣類(布製品)の製造工場に用いられる。生地折り装置1は、例えば、裁断機2で裁断された生地6を縫製装置3へ搬送する際に、生地6を搬送に適した形状に折り重ねることができる。まず、図1により、生地折り装置1の利用態様の一例を説明する。
【0014】
裁断機2は、裁断前の布(原反4)を、予め設定されたパターン(型)に沿って裁断する装置である。図1の例では、裁断機2は、裁断テーブル2A上に広げられた原反4を、水平方向に移動する裁断ヘッド(図示せず)によって所望のパターンに切り抜くことで、布製品の部品となる生地6を作製する。裁断機2は、複数種類の生地6を、原反4から裁断できる。
【0015】
図1の例では、裁断機2で裁断された生地6は、製造すべき製品単位で、設置台5にまとめて配置される。例えば、1つの布製品の製造に必要な布部品(生地6)が部品F1、部品F2、部品F3であると仮定すると、部品F1、部品F2、部品F3が、1つの単位を構成するよう設置台5にまとめられる。部品F1、部品F2、部品F3は、裁断機2で裁断された生地6であって、それぞれ形状が異なる。
【0016】
縫製装置3は、例えばミシンであり、裁断された布部品(生地6)を互いに縫い付けることにより、布製品を作製する。例えば、縫製作業者が、1つの布製品の製造に必要な布部品(部品F1~F3)を設置台5から取得し、それらの布部品を縫製装置3により縫い合わせて布製品を作製する。
【0017】
図1に例示する利用態様においては、生地折り装置1は、裁断機2の裁断テーブル2A上の生地6を搬送に適した形状に折り重ねて(つまり、小さく折り畳んで)、裁断テーブル2Aから設置台5に搬送する、ピックアンドプレース作業を自動的に行う。
【0018】
(生地折り装置の概要)
生地折り装置1は、ハンド部10と、移動機構11とを含む。生地折り装置1は、制御装置12をさらに備える。
【0019】
ハンド部10は、裁断テーブル2Aに配置された生地6を把持したり把持解除したりする。ハンド部10は、移動機構11に取り付けられている。ハンド部10は、制御装置12と電気的に接続されている。ハンド部10は、制御装置12の制御の下、生地6の把持動作および把持解除動作などを行う。ハンド部10の構成については、後述する。
【0020】
移動機構11は、ハンド部10を移動させる。移動機構11は、制御装置12と電気的に接続されている。移動機構11は、制御装置12の制御の下、ハンド部10を移動させる動作を行う。移動機構11は、ハンド部10を上下方向(Z軸方向)と、水平方向(X、Y軸方向)の少なくとも一方向とに沿って移動させ、ハンド部10に保持した生地6を折り重ねる。また、移動機構11は、折り重ねた生地6をハンド部10により保持させて、保持した生地6を裁断テーブル2Aから設置台5へ搬送する。
【0021】
図1の例では、移動機構11は、多関節型ロボットアームである。多関節型ロボットアームの種類は、水平多関節型および垂直多関節型のいずれでもよい。移動機構11は、ベース部11Aと、ベース部11Aから立ち上がる多関節のアーム部11Bとを有する。図1では模式的に示しているが、アーム部11Bは、例えば複数の関節(回動軸)と、関節ごとに設けられたアクチュエータ11C(図2参照)と、関節同士を接続するリンク11Dとを有する。移動機構11は、アーム部11Bの先端に、エンドエフェクタとしてのハンド部10が装着されている。移動機構11は、各アクチュエータ11Cの駆動により、アーム部11Bの手先位置(ハンド部10の位置)を制御できる。移動機構11は、アーム部11BのX軸座標、Y軸座標、Z軸座標を可動範囲内で任意に制御できる。移動機構11は、アーム部11BのX軸周り、Y軸周り、Z軸周りの各回転位置(向き)を可動範囲内で任意に制御できる。ただし、後述する動作説明においては、X軸周り、Y軸周り、Z軸周りの回転位置制御は特に必要ではない。図1では、移動機構11は裁断機2(裁断テーブル2A)と設置台5との間に配置され、アーム部11Bの可動範囲は裁断テーブル2Aの少なくとも一部と設置台5の少なくとも一部とを含む。
【0022】
制御装置12は、ハンド部10および移動機構11の動作を制御する。制御装置12は、例えばロボットコントローラを含む。図2に示すように、制御装置12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサ12Aと、記憶部12Bと、入出力部12Cと、を備える。記憶部12Bは、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、またはハードディスク、ソリッドステートドライブなどの記憶装置を含む。プロセッサ12Aは、RAM等を作業領域として、記憶部12Bに記憶されたプログラムを実行することにより、ハンド部10および移動機構11の動作を制御する制御装置12の機能を実現する。入出力部12Cは、外部機器との信号の入出力を行うためのインターフェースである。入出力部12Cは、制御装置12と移動機構11との間で信号を入出力する。入出力部12Cは、制御装置12とハンド部10との間で信号を入出力する。制御装置12は、入出力部12Cを介して、移動機構11の各アクチュエータ11Cの動作を制御する。制御装置12は、入出力部12Cを介して、ハンド部10の後述する第1モータ22、第2モータ24およびモータ33の動作を制御する。制御装置12は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0023】
(ハンド部の構成)
次に、ハンド部10の構成について説明する。図3は、ハンド部の構成を模式的に示す側面図である。以下では、説明の便宜のため、ハンド部10の座標系として、図3のようにABC直交座標系を設定する。ハンド部10の使用態様において、C軸がハンド部10の上下方向、A軸およびB軸が水平面内の直交する2方向(ハンド部10の前後方向および幅方向)である。A方向の一方側をA1方向、他方側をA2方向とする。C方向の上側をC1方向、下側をC2方向とする。
【0024】
ハンド部10は、ピックアップ機構20と、支持機構30と、接続部40と、を備える。また、ハンド部10は、これらの各部が組付けられたフレーム50を備える。フレーム50の下部(C2側)に、ピックアップ機構20と、支持機構30とが設けられている。ピックアップ機構20と、支持機構30とは、A方向に直線状に並んでいる。フレーム50の上部(C1側)に、接続部40が設けられている。
【0025】
<ピックアップ機構>
ピックアップ機構20は、生地6(図1参照)の一部を保持する機構である。また、ピックアップ機構20は、第1モータ22と、スライド機構23と、第2モータ24と、を有する。
【0026】
ピックアップローラ21は、ピックアップ機構20の最下部(C2側)に配置されている。ピックアップローラ21は、円筒形状を有し、B方向に沿った回転軸を中心に、回転可能である。ピックアップローラ21は、外周面の全周に、脱着部材21Aが設けられている。脱着部材21Aは、斜めに起立した繊維が密に配置されたブラシ状の表面を有する。繊維は、例えば、長さ1mm以上3mm以下、直径0.1mm以下、傾き1度以上5度以下のポリオレフィン繊維からなる。ただし、繊維の形状や材料は、生地6の脱着に適していれば特に限定されない。脱着部材21Aは、生地6に対して繊維が起立している側に摺動すると、多数の繊維の先端が生地6に引っ掛かって付着する。脱着部材21Aは、生地6に対して繊維が起立している側とは反対側(繊維の先端から根本へ向う側)に摺動すると、繊維の先端が生地6に引っ掛からずに滑る。
【0027】
この構成により、ピックアップローラ21は、生地6に接触した状態で、図3の反時計方向に回転することで、脱着部材21Aに生地6を付着させてローラ外周面に巻き付け、生地6を保持できる。ピックアップローラ21は、生地6を巻き付けた状態で逆回転(図3の時計方向に回転)することで、脱着部材21Aと生地6とを分離させて、生地6の保持を解除できる。
【0028】
第1モータ22は、ピックアップローラ21を回転軸周りに回転させる。第1モータ22は、電動モータであり、ギヤ機構からなる動力伝達機構を介してピックアップローラ21と接続されている。第1モータ22は、制御装置12の制御により、ピックアップローラ21の時計方向回転、反時計方向回転、および回転停止を行う。
【0029】
スライド機構23は、ピックアップローラ21(および第1モータ22)を、A方向に沿って移動可能である。スライド機構23は、フレーム50に固定されたガイドレール23Aと、ガイドレール23Aに取り付けられたスライダ23Bと、動力伝達部材23Cとを有する。ガイドレール23Aは、A方向に沿って直線状に延びる。スライダ23Bは、ガイドレール23Aに沿ってA方向に摺動可能である。スライダ23Bは、サブフレーム25を介して、ピックアップローラ21、第1モータ22および動力伝達部材23Cを保持する。
【0030】
第2モータ24は、スライド機構23により、ピックアップローラ21をA方向に沿って移動させる。第2モータ24は、フレーム50に固定されていて、出力軸が動力伝達部材23Cに接続されている。図3の例では、動力伝達部材23Cは、ラックギヤであり、第2モータ24の出力軸に取り付けられたピニオンギヤと噛み合う。第2モータ24は、出力軸を回転させて動力伝達部材23CをA方向に移動させることにより、サブフレーム25に組付けられたピックアップローラ21、第1モータ22、動力伝達部材23Cおよびスライダ23Bを、A方向に移動させる。これにより、第2モータ24は、制御装置12の制御により、ピックアップローラ21を、A1方向(支持機構30から離れる側)へ移動、A2方向(支持機構30側)へ移動、および停止できる。
【0031】
<支持機構>
支持機構30は、支持板31と、支持板スライド機構32と、モータ33と、上下スライド機構34と、を有する。支持機構30は、ピックアップ機構20(ピックアップローラ21)の下方(C2側)の支持位置Q1(図4参照)と支持位置Q1から離れた退避位置Q2とに支持板31を進退移動させる。図3は、支持板31が退避位置Q2に位置する状態を示している。
【0032】
支持板31は、A方向およびB方向に沿う面内に延びる平板状部材である。支持板31は、例えば樹脂材料から構成されるが、金属材料により構成されてもよい。支持板31は、上下スライド機構34の下限位置において、ピックアップローラ21よりも下方(C2側)に配置されている。支持板31は、支持板スライド機構32によって、A方向に直線移動可能に設けられている。支持板31は、支持位置Q1(図4参照)では、ピックアップローラ21の下方に配置される。支持位置Q1において、支持板31の先端部(A1側端部)は、ピックアップローラ21を越えて、ピックアップローラ21よりもA1側の位置に配置される。支持板31は、A2方向側の退避位置Q2に移動すると、ピックアップローラ21よりもA2側に配置される。退避位置Q2において、支持板31の先端部は、ピックアップローラ21よりも所定距離だけA2側に離れる。
【0033】
支持板31は、支持位置Q1側(A1側)の先端部の上面に、下り傾斜となる傾斜面31Aを有する。支持板31は、傾斜面31Aの形成箇所で、A1側に向かうに従って厚みが小さくなり、厚みの減少分だけ上面が傾斜している。
【0034】
支持板スライド機構32は、支持板31を、A方向に沿って移動可能に保持している。支持板スライド機構32は、上下スライド機構34に取り付けられている。支持板スライド機構32は、A方向に沿って直線状に延びるガイドレール32Aと、ガイドレール32Aに取り付けられたスライダ32Bと、スライダ32Bに取り付けられた可動フレーム32Cとを有する。スライダ32Bは、ガイドレール32Aに沿ってA方向に摺動可能である。可動フレーム32Cは、一端部(A1側端部)からA2方向に直線状に延びた後、C2方向に屈曲している。可動フレーム32Cは、一端部においてスライダ32Bに対してA方向に摺動可能に取り付けられている。可動フレーム32Cは、C2側の他端部において支持板31のA2側端部を支持している。
【0035】
モータ33は、支持板31をA方向に沿って進退移動させる。モータ33は、出力軸をC2方向に向けた状態で、上下スライド機構34に取り付けられている。モータ33の出力軸には、回動アーム33Aが装着されている。回動アーム33Aは、AB面内で直線状に延びて、先端部33Bが支持板31に係合している。
【0036】
図4は、支持板31の支持位置Q1と退避位置Q2との移動を説明するための支持機構30の下面図である。図4に示すように、支持板31のA2側端部には、B方向に沿って直線状に延びる係合部31Bが設けられている。回動アーム33Aの先端部33Bは、係合部31Bに係合している。先端部33Bは、係合部31BとのA方向の相対位置が拘束され、かつ、B方向には係合部31Bに沿って自在に相対移動できる。図4の退避位置Q2から、モータ33が回動アーム33Aを所定方向(図4の反時計方向)に回動させると、回動アーム33Aの先端部33Bが円弧状軌跡で移動する。先端部33Bは、B方向位置を変化させながら係合部31Bとの係合状態を維持する。そのため、先端部33BのA1方向位置の変化に伴い、先端部33Bと係合する支持板31がA1側に移動する。回動アーム33Aが図4の反時計方向に約180度回動すると、支持板31が支持位置Q1に配置される。反対に、図4の支持位置Q1から、モータ33が回動アーム33Aを図4の時計方向に回動させると、支持板31がA2側に移動する。回動アーム33Aが図4の時計方向に約180度回動すると、支持板31が退避位置Q2に配置される。これにより、モータ33は、制御装置12の制御により、支持板31を、A1側の支持位置Q1と、A2側の退避位置Q2とに移動させる。なお、支持板31は、上記した可動フレーム32Cおよびスライダ32Bと一体でA方向に進退移動する。
【0037】
図3に示すように、上下スライド機構34は、フレーム50に固定され、支持板31と、支持板スライド機構32と、モータ33とを、C方向に沿って移動可能に保持する。上下スライド機構34は、C方向に沿って延びる複数のシャフト34Aと、複数のシャフト34Aの両端をそれぞれ保持する一対の固定板34Bと、複数のシャフト34Aに摺動可能に取り付けられた可動部材34Cとを有する。この可動部材34Cに、支持板31と、支持板スライド機構32と、モータ33とが設けられている。可動部材34Cは、シャフト34Aに沿って所定範囲St1だけC方向に移動可能である。支持板31が空中で保持されている場合、可動部材34Cは、所定範囲St1の下限位置(C2側端部)でC2側の固定板34Bに支持される。図4はこの下限位置の状態を示している。支持板31が裁断テーブル2A上に接触する場合の反力など、支持板31に上方(C1側)への外力が作用した時、支持板31が所定範囲St1分だけ上方へ変位できる。
【0038】
<接続部>
接続部40は、ホルダ41と、ホルダスライド機構42とを有する。ホルダ41は、移動機構11のアーム部11B(図1参照)の先端に装着されるアタッチメント部分である。ホルダ41は、ホルダスライド機構42によって、C方向に沿って所定範囲St2だけ移動可能である。
【0039】
ホルダスライド機構42は、C方向に延びる複数のシャフト42Aと、複数のシャフト42Aの両端をそれぞれ保持する一対の固定板42Bとを有する。複数のシャフト42Aは、ホルダ41のリニアブッシュ41A内に挿通されている。C方向下側の固定板42Bが、フレーム50に固定されている。
【0040】
ハンド部10は、アーム部11Bの先端によって吊り下げられ、ピックアップローラ21および支持板31が鉛直下側を向く姿勢で保持される。アーム部11Bに接続されたホルダ41は、所定範囲St2のうちの上限位置(図3に示す位置)で、スペーサ42Cを介してC1側の固定板42Bを支持する。C1側の固定板42Bは、シャフト42AとC2側の固定板42Bとを介してフレーム50以下の構造を支持する。生地6をピックアップする際、移動機構11は、ハンド部10を下方移動させてピックアップローラ21を生地6の上面側に当接させる。移動機構11がハンド部10をさらに下方移動させても、ホルダ41が所定範囲St2の分だけC2側へ変位できるため、移動機構11による押圧力が生地6へ作用することを回避できる。その結果、生地6をピックアップする際にピックアップローラ21から生地6に加わる押圧力を一定にできる。生地6に加わる押圧力は、実質的にハンド部10の重量に相当する。
【0041】
(生地折り方法)
次に、本実施形態に係る生地折り方法について説明する。生地折り装置1の動作は、本実施形態に係る生地折り方法を実施するものである。図5は、生地折り装置による折り重ね前と折り重ね後の生地の模式図である。図6は、本実施形態に係る生地折り方法を説明するための第1の図である。図7は、本実施形態に係る生地折り方法を説明するための第2の図である。生地折り装置1の動作制御は、制御装置12により実行される。
【0042】
折り畳みの例として、図5の上側に示す長尺の帯状の生地6を、図5の下側に示すように、一定の長さでジグザグに折り重ねて、コンパクトにまとめる場合を例に説明する。ジグザグに折り重ねるとは、(1)生地部分(重なり部分6A)の一方側を他方側へ折り返して上に重ね(谷折り)、(2)上に重ねた生地部分の他方側を一方側へ折り返して上に重ねる(山折り)、という作業を繰り返すことにより、生地6を複数層に折り重ねることを意味する。折り返されるUターン部分が、重なり部分6Aの一方側の位置と他方側の位置とに交互に形成されるため、生地6の全体としてジグザグ状断面の積層形状となる。折り重ねる回数は、生地6の全長(Lとする)と、重なり部分6Aの長さd(つまり、折り重ねた状態での長さ)とに依存するため、1回以上であれば何回でもよい。以下では、図5の下側に示したように、折り重ねられた状態の生地6を、便宜的に「積層体」と呼ぶ。
【0043】
図6に示すように、本実施形態に係る生地折り方法は、載置面PS上の生地6をハンド部10のピックアップ機構20により保持するステップS1と、ピックアップ機構20の下方の支持位置Q1にハンド部10の支持板31を移動させて生地6を支持するステップS2と、ハンド部10に保持した生地6を載置面PS上に折り重ねるステップS3と、を備える。
【0044】
以下では、図5に示したように、裁断テーブル2A(図1参照)の載置面PSにある生地6の長さ方向をY軸方向とする。
【0045】
図6のステップS1において、生地折り装置1は、ピックアップ機構20(ピックアップローラ21)に生地6の一端側を保持させる。まず、制御装置12は、移動機構11(図1参照)を制御して、ハンド部10のA方向をY軸方向に一致させ、ハンド部10のC方向をZ軸方向に一致させた姿勢で、生地6の上方位置からハンド部10を下方移動させる。これにより、移動機構11は、ピックアップローラ21の下部(C2側端部)を、載置面PS上の生地6の一端部6Bに接触させる。この時、支持板31は退避位置Q2に配置される。なお、支持板31は、ピックアップローラ21よりも先に載置面PSに接触するが、上下スライド機構34によってピックアップローラ21の下端とほぼ同じ位置までC1方向に変位する。
【0046】
制御装置12は、第1モータ22(図3参照)により、生地6の一端部6Bに接触させたピックアップローラ21を、巻き付け方向(図5の反時計方向)に回転させる。この際、制御装置12は、第2モータ24(図3参照)により、ピックアップローラ21をA1方向にスライド移動させる。ピックアップローラ21は、回転に伴って、生地6の一端部6Bを脱着部材21Aに付着させながら、ローラ外周面に巻き付けて保持する。制御装置12は、ピックアップローラ21を例えば180度回転させる。図6のステップS1は、ピックアップローラ21への生地6の巻き付けが完了した状態を示す。
【0047】
ステップS2において、支持機構30は、ピックアップ機構20(ピックアップローラ21)が生地6の一端側を保持した状態で、支持板31を支持位置Q1に配置することにより、生地6の保持部位よりも下側を支持する。まず、制御装置12は、移動機構11(図1参照)を制御して、ハンド部10を上方移動させて、ピックアップローラ21および支持板31を載置面PSから上側に離隔させる。そして、制御装置12は、支持機構30のモータ33(図4参照)を制御して、支持板31を退避位置Q2から支持位置Q1へ移動させる。これにより、支持板31は、ピックアップローラ21の下方に配置されることで、ピックアップローラ21から下方に垂れ下がる生地6の一部を上面上に支持する。この結果、ハンド部10に保持された生地6は、支持板31の先端部から下方に垂れ下がる形態で保持される。図6のステップS2は、支持板31が支持位置Q1に配置された状態を示す。
【0048】
ステップS3において、移動機構11は、ピックアップ機構20(ピックアップローラ21)および支持板31により生地6を支持したハンド部10を載置面PSの上方で移動させ、持ち上げた生地6を載置面PS上に折り重ねる。
【0049】
移動機構11は、生地6の一端側を保持したハンド部10を、水平方向の一方向(Y軸方向)に沿った往復移動と上下方向(Z軸方向)の移動との組み合わせで移動させることにより、載置面PS上に載置された生地6の他端部(つまり、重なり部分6A)上に、生地6をジグザグに折り重ねる。すなわち、図6に示すように、移動機構11は、ハンド部10をY軸方向の一方から他方へ移動させて生地6を折り返す動作と、ハンド部10をY軸方向の他方から一方へ移動させて生地6を逆方向へ折り返す動作と、を所定回数実行する。これにより、生地6がジグザグに折り重ねられる。
【0050】
図8は、生地6の折り重ねにおけるハンド部10の軌道例を示す図である。図8では、説明の便宜上、ハンド部10の軌道を、ピックアップローラ21の図中右端の点Pの位置変化として示している。制御装置12は、ハンド部10の点Pが、開始位置Pから、点P、点P、点P、点P、・・・、終了位置Pへと順番に移動するように、移動機構11を制御する。図8は、点Pまでの軌跡を模式的に示している。
【0051】
なお、ハンド部10は、開始位置Pからのジグザグ移動中、ピックアップ機構20(ピックアップローラ21)および支持機構30を停止させる。つまり、制御装置12は、ハンド部10の第1モータ22、第2モータ24およびモータ33を停止させた状態を維持する。そのため、生地6の折り重ねの動作中に、生地6の一端側がピックアップローラ21に更に巻き付けられたり、支持板31が支持位置Q1から退避位置Q2側へ移動したりすることはない。
【0052】
移動機構11は、生地6をジグザグに折り重ねる際に、載置面PSの上方の開始位置Pから、直線移動の組み合わせからなるジグザグ軌道によりハンド部10を移動させる。すなわち、ある点Pから次の点Pi+1までの軌道が、直線である。
【0053】
開始位置PのY座標およびZ座標は、式(1)により求められる。
【数1】

ここで、rはピックアップローラ21の半径、aは支持板31の先端部と点Pとの間のY軸方向距離、bは支持板31の上面から点PまでのZ軸方向距離である。eは生地6の重なり部分6AのY軸方向長さ、cは生地6の残る部分の長さ(折り重ねられない余りの長さ)、Lは生地6の全長(L=L+c)である。Eは、1回の折り重ねで形成される隙間(図5の雫型の空間6C)に起因する余裕長さである。余裕長さEは、重なり部分6Aの長さをdf(図5参照)とし、空間6Cを含めたn回の折り重ねに必要な実際の布の全長をLとして、E=(L-2nd)/nで表される。
【0054】
そして、第i回目の移動時の点Piの目標座標(Piy,Piz)(iは1~n)は、式(2)で求められる。
【数2】
【0055】
折り重ねる生地6の情報(重なり部分6Aの長さe、残る部分の長さc、全長L、余裕長さE、折り重ね回数n)は、布部品の種類毎に、制御装置12に予め設定される。ハンド部10の寸法の情報(半径r、Y軸方向距離a、Z軸方向距離b)は、ハンド部10の仕様により既知であり、制御装置12に予め設定される。
【0056】
制御装置12は、式(1)、式(2)に基づいて点Pの開始位置Pから終了位置Pまで各点Pの位置座標を算出し、算出した位置座標に基づいて移動機構11を制御する。その結果、載置面PSに広げられた生地6が、図5に示すジグザグ折りの積層体になる。なお、終了位置Pおよびその直前(Pn-1)の座標については、後述するステップS4以降の動作を考慮した別の位置座標としてよい。
【0057】
図7に示すように、本実施形態に係る生地折り方法は、生地6が折り重ねられた後(ステップS3の後)、支持板31を支持位置Q1から退避位置Q2へ移動させて支持を解除するステップS4を備える。制御装置12は、支持機構30のモータ33(図4参照)を制御して、支持板31を支持位置Q1から退避位置Q2へ移動させる。支持板31は、退避位置Q2への移動により、ピックアップローラ21に保持された生地6の一端部6Bと、一端部6Bの下側の生地部分との間から引き抜かれる。支持板31は、生地6の積層体からY軸方向に離れた位置に配置される。
【0058】
なお、ステップS4において、支持板31による生地6の支持を解除した後もハンド部10は、ピックアップローラ21による生地6の保持状態を維持する。制御装置12は、第1モータ22(図3参照)の回転停止状態を維持し、ピックアップローラ21のローラ外周面に生地6の一端部6Bを巻き付けたままにする。図7のステップS4は、ピックアップローラ21により生地6が保持されたまま、支持板31が退避位置Q2に配置された状態を示す。
【0059】
次に、本実施形態に係る生地折り方法は、生地6が折り重ねられた後、支持板31を退避位置Q2から支持位置Q1へ移動させて生地6と載置面PSとの間に支持板31を配置するステップS5を備える。ステップS5では、制御装置12は、支持板31を載置面PS上に接触させるように移動機構11を制御する。続いて、制御装置12は、支持機構30のモータ33(図4参照)を制御して、支持板31を退避位置Q2から支持位置Q1へ移動させる。支持板31は、支持位置Q1への移動により、積層体の下面(重なり部分6Aの下面)と、載置面PSとの間に差し込まれる。支持板31は、積層体を傾斜面31A上に乗り上げさせるようにして、積層体の下側に進入する。
【0060】
このように、ステップS5では、支持機構30は、生地6が折り重ねられた後、支持板31を退避位置Q2から支持位置Q1へ移動させて生地6と載置面PSとの間に支持板31を配置する。これにより、支持機構30は、生地6の積層体の全体を、支持板31によって下方から支持する。なお、制御装置12は、支持板31を支持位置Q1へ移動させることに加えて、移動機構11を制御して、ハンド部10の全体をY軸方向に移動させて支持板31を生地6の下側に差し込んでもよい。
【0061】
また、本実施形態に係る生地折り方法は、生地6の積層体を搬送先へ移動させるステップS6を備える。本実施形態では、搬送先は設置台5(図1参照)である。ステップS6では、図1に示すように、制御装置12は、移動機構11を制御して、積層体を下から支持した状態のハンド部10を、裁断テーブル2A上から、設置台5へ移動させる。ハンド部10の支持板31が、設置台5の上面上に載置される。このように、ステップS6では、移動機構11は、折り重ねられた生地6を支持板31により下方から支持した状態のハンド部10を、搬送先(設置台5)へ移動させる。
【0062】
続いて、ステップS7において、ハンド部10による生地6(積層体)の保持が解除される。まず、ハンド部10は、ピックアップローラ21による生地6の保持を解除させる。制御装置12は、第1モータ22(図3参照)を制御して、ピックアップローラ21を逆方向(図7の時計方向)に回転させる。この際、制御装置12は、第2モータ24(図3参照)により、ピックアップローラ21をA2方向にスライド移動させる。ピックアップローラ21は、生地6の一端部6Bを脱着部材21Aから離脱させながら、積層体の上面に沿ってY方向(A2方向)に移動する。これにより、ピックアップローラ21は、ローラ外周面に巻き付けていた生地6の一端部6Bを積層体上に重ねる。
【0063】
次に、制御装置12は、ハンド部10の支持板31が設置台5の上面上に載置した状態で、支持機構30のモータ33(図4参照)を制御して、支持板31を支持位置Q1から退避位置Q2へ移動させる。支持板31は、退避位置Q2への移動により、生地6の下面と設置台5の上面との間から引き抜かれる。これにより、生地6の積層体が、設置台5上に設置される。図7のステップS7は、ピックアップローラ21による生地6の保持が解除され、支持板31が生地6の下面から引き抜かれた状態を示す。
【0064】
これにより、1つの生地6(布部品)を搬送に適した形状に折り重ねて、裁断テーブル2Aから設置台5に搬送する、ピックアンドプレース作業が完了する。
【0065】
生地折り装置1は、裁断テーブル2A上の生地6の各々に対して、上記のステップS1~S7の動作を行うことにより、生地6を順番に設置台5へと搬送する。制御装置12は、予め設定された生地6(布部品)の種別に応じて、1つの布製品の製造に必要な布部品(部品F1、部品F2、部品F3)が1つの単位を構成するように、各生地6を設置台5にまとめて配置する。
【0066】
[効果]
以上説明したように、実施形態に係る生地折り装置1は、生地6の一部を巻き付けて保持するピックアップ機構20と、ピックアップ機構20の下方の支持位置Q1と支持位置Q1から離れた退避位置Q2とに支持板31を進退移動させる支持機構30と、を含むハンド部10と、ハンド部10を上下方向(Z軸方向)と、水平方向の少なくとも一方向(Y軸方向)とに沿って移動させ、ハンド部10に保持した生地6を折り重ねる移動機構11と、を備える。
【0067】
実施形態によれば、ピックアップ機構20によって保持した生地6の下側を、支持位置Q1に配置した支持板31によって支持できる。これにより、長尺の生地6や大面積の生地6でも、ハンド部10により生地6を持ち上げた際に支持板31が生地6を下から支えるので、ピックアップ機構20に作用する力を軽減して生地6の脱落を抑制できる。そして、ハンド部10によって生地6を保持しつつハンド部10を水平方向の少なくとも一方向(Y軸方向)に沿って移動させることにより、移動方向(Y軸方向)に沿って生地6をコンパクトに折り重ねることができる。この結果、縫製前の布部品(生地6)をピックアップして搬送に適した形態にまとめることができる。
【0068】
支持機構30は、ピックアップ機構20が生地6の一端側を保持した状態で、支持板31を支持位置Q1に配置することにより、生地6の保持部位よりも下側を支持する。移動機構11は、ピックアップ機構20および支持板31により生地6を支持したハンド部10を載置面PSの上方で移動させ、持ち上げた生地6を載置面PS上に折り重ねる。これにより、生地6の一端側をハンド部10によって上方から吊り下げて、載置面PS上にある生地6の他端部の上に折り重ねることができる。載置面PS上の生地6がその場で折り重ねられるので、生地6を引きずることなくコンパクトに折り重ねられる。そのため、長尺の生地6や大面積の生地6でも、生地6を折り重ねる際の引きずりに起因する生地6の汚損を防止できる。
【0069】
支持機構30は、生地6が折り重ねられた後、支持板31を退避位置Q2から支持位置Q1へ移動させて生地6と載置面PSとの間に支持板31を配置する。移動機構11は、折り重ねられた生地6を支持板31により下方から支持した状態のハンド部10を、搬送先(設置台5)へ移動させる。これにより、縫製前の布部品(生地6)を搬送に適した形態にまとめるだけでなく、まとめた布部品を搬送先まで搬送するピックアンドプレース作業を行える。この際、支持板31は、生地6を折り重ねる際にピックアップ機構20による保持部位の下方を支持する機能に加えて、生地6の搬送時に、コンパクトに折り重ねた生地6の全体を掬い上げて下方から支持する機能を発揮する。これにより、長尺の生地6や大面積の生地6でも、引きずりや落下を効果的に抑制しながら搬送先まで搬送できる。
【0070】
支持板31は、支持位置Q1側の先端部の上面に、下り傾斜となる傾斜面31Aを有する。これにより、折り重ねられた生地6と載置面PSとの間に支持板31を差し込む際に、生地6の下面側を傾斜面31A上に乗り上げさせつつ支持板31を差し込める。そのため、支持板31を差し込む際に折り重ねた生地6の形を崩すことなく、円滑に支持板31を差し込める。
【0071】
移動機構11は、生地6の一端側を保持したハンド部10を、一方向(Y軸方向)に沿った往復移動と上下方向(Z軸方向)の移動との組み合わせで移動させることにより、載置面PS上に載置された生地6の他端部上に、生地6をジグザグに折り重ねる。これにより、生地6の一端側を保持したままの状態で、速やかに生地6の全体を折り重ねることができる。例えば、生地6の一端側を保持して2つ折りにした後、折り返した中間部分を保持してさらに2つ折りにする、といった2つ折りを繰り返す方法と比べて、生地6の保持と保持解除とを繰り返す必要がないため、生地6の全体を短時間でコンパクトに折り重ねることができる。
【0072】
移動機構11は、生地6をジグザグに折り重ねる際に、載置面PSの上方の開始位置P0から、直線移動の組み合わせからなるジグザグ軌道によりハンド部10を移動させる。これにより、単純な直線移動を組み合わせるだけで、生地6をジグザグに折り重ねる動作を実現できる。そのため、移動機構11の制御を簡素化し、生地6を折り重ねるためのハンド部10の軌道を容易に設定できる。
【0073】
ハンド部10は、開始位置P0からのジグザグ移動中、ピックアップ機構20(ピックアップローラ21)および支持機構30を停止させる。言い換えると、移動機構11によるハンド部10のジグザグ移動だけで、生地6を折り重ねる。例えばピックアップローラ21の回転や支持板31の移動を組み合わせて生地6の折り重ねを実現する場合と比べて、生地折り装置1の制御を簡素化できる。
【0074】
移動機構11は、多関節型ロボットアームを含む。これにより、例えば天井吊り下げ型のガントリーロボットなどで移動機構11を構成する場合と比べて、移動機構11を小型化できる。
【0075】
また、実施形態に係る生地折り方法は、載置面PS上の生地6をハンド部10のピックアップ機構20により保持するステップ(S1)と、ピックアップ機構20の下方の支持位置Q1にハンド部10の支持板31を移動させて生地6を支持するステップ(S2)と、ハンド部10を上下方向(Z軸方向)と、水平方向の少なくとも一方向(Y軸方向)とに沿って移動させ、ハンド部10に保持した生地6を載置面PS上に折り重ねるステップ(S3)と、を備える。
【0076】
実施形態によれば、ピックアップ機構20によって保持した生地6の下側を、支持位置Q1に配置した支持板31によって支持できる。これにより、長尺の生地6や大面積の生地6でも、ハンド部10により生地6を持ち上げた際に支持板31が生地6を下から支えるので、ピックアップ機構20に作用する力を軽減して生地6の脱落を抑制できる。そして、ハンド部10によって生地6を保持しつつハンド部10を水平方向の少なくとも一方向(Y軸方向)に沿って移動させることにより、移動方向(Y軸方向)に沿って生地6をコンパクトに折り重ねることができる。この結果、縫製前の布部品(生地6)をピックアップして搬送に適した形態にまとめることができる。
【0077】
(その他の実施形態)
上述の実施形態において、ハンド部10をジグザグ軌道で移動させて、生地6をジグザグに折り重ねる例を示した。生地の折り重ねは、ジグザグ折り以外、例えば、生地6の一端側を保持して2つ折りにした後、折り返した中間部分を保持してさらに2つ折りにする、といった2つ折りを繰り返す方法でもよい。
【0078】
上述の実施形態において、生地6を折り重ねる際に、ハンド部10を上下方向(Z軸方向)と、水平方向の一方向(Y軸方向)とに沿って移動させる例を示した。生地6を折り重ねる際のハンド部10の移動方向は、Y軸方向ではなくX軸方向でもよいし、Y軸方向およびX軸方向の両方でもよい。
【0079】
上述の実施形態において、生地6を折り重ねる際に、直線移動の組み合わせからなるジグザグ軌道によりハンド部10を移動させる例を示した。生地6を折り重ねる際の軌道は、直線移動の組み合わせ以外でもよい。例えば、ハンド部10を、曲線状のジグザグ軌道で移動させてもよい。
【0080】
上述の実施形態において、生地6を折り重ねる際に、ピックアップローラ21および支持機構30を停止させる例を示したが、生地6を折り重ねる際に、ピックアップローラ21および支持機構30を作動させてもよい。この場合、生地折り装置1の制御が複雑化する代わりに、折り重ねの際のハンド部10の移動距離(点Pの軌道の合計長さ)を短縮できる可能性がある。
【0081】
上述の実施形態において、移動機構11が多関節型ロボットアームで構成された例を示した。移動機構は、ガントリーロボットなどでもよい。また、移動機構は、双腕ロボットなどの複数のアーム(マニピュレーター)を備えていてもよく、その場合は各アームにそれぞれハンド部10が設けられてもよい。
【0082】
上述の実施形態において、移動機構11が、生地6を折り重ねた後、折り重ねられた生地6を支持板31により下方から支持した状態のハンド部10を、搬送先(設置台5)へ移動させる例を示した。生地折り装置は、生地6を折り重ねるだけで、搬送先への生地6の搬送を行わなくてもよい。例えば、生地折り装置が裁断テーブル2A上で生地6の折り重ねのみを行い、折り重ねられた生地6の搬送を、別の搬送用ロボットにより実行してもよいし、縫製作業者が手作業で持ち運んでもよい。その場合でも、裁断テーブル2A上で生地6が広げられた状態では、一般的な搬送用ロボットで引きずることなく搬送しコンパクトにまとめることは困難であるし、縫製作業者が1つ1つの生地6の折り重ね作業を行うのは煩雑であるので、生地折り装置により生地6をコンパクトに折り重ねることが有用である。
【0083】
上述の実施形態において、ピックアップローラ21により生地6を巻き付けて保持するピックアップ機構20の例を示したが、ピックアップ機構は、エア(負圧)吸着、静電吸着、グリッパまたはニードルによる把持等により生地を保持する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…生地折り装置、2…裁断機、2A…裁断テーブル、3…縫製装置、4…原反、5…設置台、6…生地、6A…重なり部分、6B…一端部、6C…空間、10…ハンド部、11…移動機構、11A…ベース部、11B…アーム部、11C…アクチュエータ、11D…リンク、12…制御装置、12A…プロセッサ、12B…記憶部、12C…入出力部、20…ピックアップ機構、21…ピックアップローラ、21A…脱着部材、22…第1モータ、23…スライド機構、23A…ガイドレール、23B…スライダ、23C…動力伝達部材、24…第2モータ、30…支持機構、31…支持板、31A…傾斜面、31B…係合部、32…支持板スライド機構、32A…ガイドレール、32B…スライダ、32C…可動フレーム、33…モータ、33A…回動アーム、33B…先端部、34…上下スライド機構、34A…シャフト、34C…可動部材、34B…固定板、40…接続部、41…ホルダ、41A…リニアブッシュ、42…ホルダスライド機構、42A…シャフト、42B…固定板、42C…スペーサ、50…フレーム、PS…載置面、Q1…支持位置、Q2…退避位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8