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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004509
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】光学部材
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20250107BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20250107BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20250107BHJP
   G02B 6/34 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G02B5/00 B
G02B5/02 A
G02B5/04 A
G02B6/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104237
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】舘 鋼次郎
(72)【発明者】
【氏名】川内 正明
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆行
(72)【発明者】
【氏名】太田 龍佑
【テーマコード(参考)】
2H042
2H137
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA07
2H042AA21
2H137AA17
2H137BA42
2H137BA55
2H137BC16
2H137BC58
2H137BC61
2H137BC73
2H137CC01
2H137CC08
2H137DB07
(57)【要約】
【課題】鉛直方向に対して傾斜した部位を有する遮光体に取り付けられる光学部材に、死角領域の光を射出しない領域が生じることを抑制する。
【解決手段】光学部材1は、入射面2a、複数の突起状のプリズム部3および平坦部4によりなる射出部2b、射出部2bと対向する平滑面2c、入射面2aとは反対側に位置する終端面2e、およびこれらの面を繋ぐ2つの側面2fを有する複数の導光体2で構成される。射出部2bは、入射面2aから終端面2eに向かう方向に沿って、複数の平坦部4がプリズム部3と交互に配列され、複数のプリズム部3が互いに平行配置されてなる。複数の導光体2は、複数のプリズム部3および平坦部4が配列される配列方向D2において、入射面2aの位置を互いにずらした状態で、側面2f同士が対向して配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、
前記外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)および平坦面である複数の平坦部(4)を有し、前記入射面に交差する方向に延設される射出部(2b)と、前記射出部と対向する平滑面(2c)と、前記入射面とは反対側に位置し、前記射出部と前記平滑面とを繋ぐ終端面(2e)と、前記入射面、前記射出部、前記平滑面および前記終端面を繋ぐ2つの側面(2f)とを有してなり、光透過性材料により構成される複数の導光体(2)を備え、
前記射出部は、前記入射面の側から前記終端面の側に向かう方向に沿って、複数の前記平坦部が前記プリズム部と交互に配列されるとともに、複数の前記プリズム部が互いに平行配置されており、
複数の前記プリズム部および前記平坦部が配列される方向に沿った方向を配列方向(D2)として、複数の前記導光体は、前記配列方向における前記入射面の位置を互いにずらした状態で、前記側面が隣接する他の前記導光体の前記側面と対向して配置されている、光学部材。
【請求項2】
複数の前記導光体は、前記側面が隣接する他の前記導光体のうち対向する前記側面と溶着されている、請求項1に記載の光学部材。
【請求項3】
複数の前記導光体は、前記側面が隣接する他の前記導光体のうち対向する前記側面と接着層(6)により接着されている、請求項1に記載の光学部材。
【請求項4】
前記接着層は、屈折率が前記光透過性材料の屈折率と同一である、請求項3に記載の光学部材。
【請求項5】
複数の前記導光体は、前記側面のうち隣接する他の前記導光体に接続されていない部分に反射抑制部(5)が形成されている、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の光学部材。
【請求項6】
前記反射抑制部は、可視光を吸収する光吸収層である、請求項5に記載の光学部材。
【請求項7】
前記反射抑制部は、可視光を散乱させる光拡散層である、請求項5に記載の光学部材。
【請求項8】
前記反射抑制部は、可視光を散乱させるプリズムアレイである、請求項5に記載の光学部材。
【請求項9】
複数の前記導光体は、互いに距離を隔てて配置されている、請求項1に記載の光学部材。
【請求項10】
複数の前記導光体は、2つの前記側面を繋ぐ方向における前記入射面の幅(hf)が前記終端面の幅(hb)よりも大きい楔形状である、請求項1に記載の光学部材。
【請求項11】
前記外景光のうち前記入射面から前記導光体に入射した光を入射光(L2)として、複数の前記プリズム部のうち前記入射光を外部に射出する面である射出面(3a)は、前記入射面に対して平行である、請求項1に記載の光学部材。
【請求項12】
前記外景光のうち前記入射面から前記導光体に入射した光を入射光(L2)とし、前記光透過性材料の屈折率をnとし、前記平坦部および前記平滑面に対する前記入射光の入射角度をφとして、前記導光体は、sinφ>1/nを満たす、請求項1に記載の光学部材。
【請求項13】
前記外景光のうち前記入射面から前記導光体に入射した光を入射光(L2)とし、前記平坦部および前記平滑面に対する前記入射光の入射角度をφとし、前記平坦部に対する法線方向に沿った方向を厚み方向(D1)とし、前記厚み方向に対する前記入射面の傾斜角度をψとして、前記入射面は、ψ<φが成り立つ、請求項1に記載の光学部材。
【請求項14】
前記平坦部に対する法線方向に沿った方向を厚み方向(D1)とし、前記外景光のうち前記入射面から前記導光体に入射した光を入射光(L2)とし、前記平坦部および前記平滑面に対する前記入射光の入射角度をφとして、
複数の前記導光体は、前記入射面が前記厚み方向において前記平滑面よりも突き出すとともに、前記入射面と前記平滑面とを繋ぐ傾斜面(2d)を有し、
前記傾斜面は、前記厚み方向に対する傾斜角度をξとして、ξ<φが成り立つ、請求項1に記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入射面から入射した光の一部を内部で反射させ、入射した光およびその反射光を入射面とは異なる面から外部に射出する光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光学部材は、例えば、遮光体に取り付けられ、当該遮光体により生じる死角領域からの外景光を内部に入射させ、内部で反射させ、外景光の入射面とは異なる面から当該外景光から射出することで死角領域を視認させる死角補助装置とされる。このような光学部材としては、例えば特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1に記載の光学部材は、透光性の導光体で構成され、導光体の入射面から入射した外光の一部が内部で全反射により導光されるとともに、入射面とは異なる射出面から外部に射出されることで、射出面側にいるユーザに死角の外景を視認させる。これにより、射出面側に導光体とは異なる反射性材料で構成されたハーフミラーが不要なハーフミラーレス構造となり、導光体内部における導光での外光の吸収による損失が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-028532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の光学部材は、射出面が光を外部に射出する突起状の複数のプリズム部と複数の平坦部とを有し、入射面と終端面とを繋ぐ方向に沿ってプリズム部と平坦部とが交互に繰り返し配列されてなる。この光学部材は、例えば、複数のプリズム部および平坦部が配列された方向が鉛直方向に対して直交する状態で遮光体に取り付けられる。
【0005】
しかしながら、この光学部材は、射出面側から見て矩形とされており、遮光体が例えば車両のピラーのように鉛直方向に対して傾いている場合には、入射面の一部が遮光体からはみ出さない取付状態となり、射出面に死角領域の光を射出しない領域が生じてしまう。
【0006】
そこで、鉛直方向に対して傾いている遮光体の傾斜に合わせて、射出面側から見て、光学部材を例えば平行四辺形の形状とし、入射面の全域が遮光体からはみ出さない取付状態が可能な構成とすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、この場合、光学部材は、入射面が鉛直方向に対して傾いた構成とされることにより、入射面から入射した光が鉛直方向において屈曲してしまい、射出面の上部において死角領域の光を射出しない領域が生じてしまう。
【0008】
本開示は、上記の点に鑑み、鉛直方向に対して傾斜した部位を有する遮光体に取り付けた場合において、死角領域の光を射出しない領域が生じることが抑制された光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の1つの観点によれば、外景光(L1)を内部で反射させて導光する光学部材であって、外景光が入射する入射面(2a)と、複数の突起状のプリズム部(3)および平坦面である複数の平坦部(4)を有し、入射面に交差する方向に延設される射出部(2b)と、射出部と対向する平滑面(2c)と、入射面とは反対側に位置し、射出部と平滑面とを繋ぐ終端面(2e)と、入射面、射出部、平滑面および終端面を繋ぐ2つの側面(2f)とを有してなり、光透過性材料により構成される複数の導光体(2)を備え、射出部は、入射面の側から終端面の側に向かう方向に沿って、複数の平坦部がプリズム部と交互に配列されるとともに、複数のプリズム部が互いに平行配置されており、複数のプリズム部および平坦部が配列される方向に沿った方向を配列方向(D2)として、複数の導光体は、配列方向における入射面の位置を互いにずらした状態で、側面が隣接する他の導光体の側面と対向して配置されている。
【0010】
これにより、複数の導光体を有してなるとともに、複数の導光体がプリズム部と平坦部とが配列される配列方向における入射面の位置が互いにずらして配置された、いわば段々配置となった構成の光学部材となる。この光学部材は、遮光体が鉛直方向に対して傾いた部位を有していても、個々の導光体の入射面がずれた段々配置となっているため、入射面の全部が遮光体からはみ出した取付状態が可能であるとともに、取付状態において入射面が鉛直方向に沿って配置される。よって、入射面の全域に死角領域からの外景光を入射させることができ、かつ入射面から入射した光の鉛直方向における屈曲が抑制されるため、死角領域の光を射出しない領域が生じることが抑制された光学部材となる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の光学部材を示す斜視図である。
図2図1のII方向の矢視図である。
図3図1のIII-III線の断面図である。
図4】第1実施形態の光学部材を構成する導光体における導光の説明図である。
図5】第1実施形態の光学部材における導光体のはみ出し部の幅、高さおよびプリズム部のピッチの関係についての説明図である。
図6】複数の導光体の他の接着状態についての説明図である。
図7】導光体の側面におけるはみ出し部が外部に露出している比較例の光学部材におけるゴースト像の発生についての説明図である。
図8】はみ出し部を覆う反射抑制部の一例を示す図である。
図9】はみ出し部を覆う反射抑制部の他の一例を示す図である。
図10】はみ出し部を覆う反射抑制部の他の一例を示す図である。
図11】第1の比較例の光学部材および視認不可領域の説明図である。
図12】第2の比較例の光学部材および視認不可領域の説明図である。
図13】第1実施形態の光学部材を被取付部材に取り付けた状態における導光の説明図である。
図14】第1実施形態の光学部材の取り付け方法についての説明図である。
図15図3に相当する図であって、第2実施形態の光学部材を構成する導光体を示す断面図である。
図16】第3実施形態の光学部材を示す斜視図である。
図17】第3実施形態の光学部材における導光体のはみ出し部の幅および高さの関係についての説明図である。
図18】第3実施形態の光学部材の取り付け方法についての説明図である。
図19】第4実施形態の光学部材を導光体の射出部側から見た平面図である。
図20】第4実施形態の光学部材の取り付け方法についての説明図である。
図21】各導光体が平面視にて矩形である場合における視認不可領域の説明図である。
図22】第4実施形態の光学部材における視認不可領域の抑制についての説明図である。
図23】第5実施形態の光学部材を導光体の射出部側から見た平面図である。
図24】第5実施形態の光学部材の取り付け方法についての説明図であって、図23のXXIV方向から見た矢視図に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態の光学部材1について、図面を参照して説明する。
【0015】
図5図10では、後述する射出部2bの構成を分かり易くするため、断面を示すものではないが、後述する平坦部4にハッチングを施している。図7図10では、見易くするため、実施例の光学部材1および比較例の光学部材を構成する複数の導光体2のうち隣接する2つの導光体2のみを示し、他の導光体2については省略している。
【0016】
〔基本構成〕
本実施形態の光学部材1は、例えば、ユーザの視界を遮り、死角を生じさせる部材や障害物等に取り付けられ、当該死角の領域の光景を当該ユーザに視認させる死角補助装置として用いられうる。光学部材1は、例えば、車載用途の場合には、搭載される車両のピラーなどの鉛直方向に対して傾斜した部位を有する遮光体に取り付けられ、当該ピラーにより死角になる領域からの外景光をユーザの側に導光し、死角領域の光景をユーザに視認させる。
【0017】
本実施形態の光学部材1は、例えば図1に示すように、透光性材料によりなる複数の導光体2により構成され、隣接する導光体2同士が連結されてなる。複数の導光体2は、例えば図1図2に示すように、入射面2aと、射出部2bと、平滑面2cと、傾斜面2dと、終端面2eと、2つの側面2fとを備え、本実施形態では、それぞれの入射面2aおよび終端面2eの向きを揃えた状態で連結されている。複数の導光体2は、例えば、それぞれ同一の構成となっている。なお、図1などでは、光学部材1が5つの導光体2により構成された場合を代表例として示しているが、これに限定されるものではなく、導光体2の数については適宜変更されうる。
【0018】
以下、説明の便宜上、例えば図3に示すように、光学部材1のうち平滑面2cに対する法線方向に沿った方向であって、互いに対向する射出部2bと平滑面2cとを繋ぐ方向を「厚み方向D1」と称する。また、厚み方向D1に対して直交する方向であって、入射面2aから終端面2eに向かう方向、すなわち後述する複数のプリズム部3および平坦部4が繰り返し配列される方向を「配列方向D2」と称する。さらに、側面2fに対する法線方向に沿った方向、すなわち複数の導光体2を積層させる方向を「積層方向D3」と称する。各図に示す方向D1、D2、D3は、上記した3つの方向に対応したものである。
【0019】
なお、配列方向D2は、入射面2aから入射した光を導光体2の内部で反射させて導光する方向に沿った方向であり、導光方向ともいえる。また、配列方向D2は、プリズム部3および平坦部4の延設方向に対して直交する方向ともいえる。
【0020】
光学部材1は、例えば図4に示すように、複数の導光体2の平滑面2cが遮光体100と対向するように取り付けられ、入射面2aから外光を内部に入射させる。光学部材1は、導光体2それぞれの入射面2aから内部に入射した光の一部が射出部2bで反射され、射出部2bで反射した光が平滑面2cで反射され、射出部2b側に再度向かう構成となっている。光学部材1は、例えば、入射面2aから外光を導光体2の内部で導光させ、射出部2bから外部に射出することで、射出部2b側にいるユーザに遮光体100による死角領域の外景を視認させる。なお、遮光体100は、例えば、車載用途の場合、自動車のAピラーなどの死角領域を生じさせるものとされるが、これに限定されるものではなく、適宜変更されうる。
【0021】
以下、説明の便宜上、図4に示すように、入射面2aに入射する外光を「外景光L1」と称し、入射面2aから導光体2の内部に入射した光を「入射光L2」と称し、導光体2の内部から外部に射出される光を「射出光L3」と称する。
【0022】
導光体2は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等の樹脂材料やガラスなどの光透過性材料からなる略板状の単一部材である。導光体2は、例えば、図示しない金型等を用いた公知の樹脂成型方法により形成される。導光体2は、例えば図4に示すように、入射面2aからの入射光L2の一部が射出部2bの後述するプリズム部3に入射するとともに、入射光L2の残部が後述する平坦部4で反射し、この反射光が平滑面2cに向かう構成となっている。そして、導光体2は平坦部4で反射された入射光L2が平滑面2cや平坦部4で全反射し、内部で導光されるように設計されている。具体的には、導光体2は、その構成材料の屈折率をnとし、入射光L2の平滑面2cおよび平坦部4に対する入射角度、すなわち導光角をφとして、導光体2の外部媒質が屈折率=1の空気層である場合、以下の(1)式を満たす設計となっている。
【0023】
sinφ>1/n・・・(1)
これにより、導光体2は、導光体2とは異なる反射性材料で構成されたハーフミラーまたはミラーを有さずとも、入射光L2の一部が平坦部4と平滑面2cとの間で繰り返し反射され、入射光L2がプリズム部3の後述する射出面3aから外部に射出される。なお、導光角φとは、入射光L2の進む方向と厚み方向D1とのなす角度に相当する。
【0024】
複数の導光体2は、側面2fが隣接する他の導光体2の側面2fと対向するとともに、積層方向D3に沿って連結されている。複数の導光体2は、入射面2aが他の導光体2の入射面2aと配列方向D2における位置をずらして配列されており、例えば図1に示すように、個々の導光体2の入射面2aが階段状に配置された段々配置となっている。複数の導光体2は、例えば、積層方向D3の一方から他方に向かうほど、隣接する入射面2aが配列方向D2において突き出す、または引っ込む段々配置とされるが、その配置については遮光体100の傾斜部分の形状に応じて適宜変更されうる。これにより、遮光体100が鉛直方向に対して傾斜した部位を有した構成であっても、光学部材1は、複数の導光体2それぞれの入射面2aの全域を遮光体100からはみ出した状態で取り付けられることが可能となっている。また、このとき、光学部材1は、遮光体100への取付状態において、入射面2aの端面が鉛直方向に沿った状態となり、射出部2bにおいて後述する視認不可領域R1が生じることが抑制される。この詳細については、後述する。
【0025】
入射面2aは、図4に示すように、外景光L1を内部に入射させる面である。入射面2aは、射出部2bに隣接するとともに、射出部2bおよび平滑面2cに交差する方向に沿った面となっている。入射面2aは、例えば、平滑面2c側に向かうにつれて終端面2eに近づくように傾斜するとともに、厚み方向D1とのなす角度である傾斜角度がψで傾斜した平坦面となっている。入射面2aは、傾斜角度ψが導光角φよりも小さくなっている。このとき、外景光L1の厚み方向D1に対する角度をθとして、屈折の条件よりψ<π/2-φであれば、入射光L2は、導光角φが外景光L1の角度θよりも大きくなる方向に屈折し、射出部2bのより広い範囲に導光されることとなる。角度θは、外景光L1の導光体2に対する入射角ともいえる。導光体2は、例えば、φが全反射角になるため、通常の透光性樹脂材料の屈折率が1.4以上であることから、n・sinφ>1よりφ>45.3となり、φ>ψを満たす構造となっている。
【0026】
また、入射面2aは、例えば図5に示すように、積層方向D3における幅を高さhとして、高さhが所定以下であって、遮光体100の鉛直方向における傾斜に応じた設計とされている。これにより、複数の導光体2は、遮光体100からの入射面2aのはみ出し量を抑えつつ、それぞれの入射面2aの全域に外景光L1が入射する構成とされる。高さhの設計については、光学部材1の取り付け方法の説明にて後述する。
【0027】
射出部2bは、入射面2aと隣接し、かつ交差する位置に形成されるとともに、例えば、断面視にて、三角形状の突起である複数のプリズム部3と複数の平坦部4を有してなる。射出部2bは、例えば、入射面2aから終端面2eに向かって、プリズム部3と平坦部4とが交互に繰り返し配列されてなる。
【0028】
複数のプリズム部3は、平坦部4から突出する突起物であって、例えば、平行配置されるとともに、本実施形態では、厚み方向D1における高さおよび配列方向D2における幅が略同一となっている。本明細書における「略同一」とは、完全に同一である場合に加えて、加工誤差などの不可避の要因によりわずかに差があるが、ほぼ同一である場合を含む。複数のプリズム部3は、例えば、断面視にて、入射面2aと平行な面であって、入射光L2の一部を外部に射出する射出面3aと、射出面3aに隣接する隣接面3bとを有してなる。複数のプリズム部3は、例えば、射出面3aが入射面2aと平行、すなわち厚み方向D1に対する傾斜角度がψとされている。これにより、入射光L2のうち射出面3aに到達したものが、外景光L1と同じ角度θの射出光L3として外部に射出されることとなる。このため、射出部2b側に位置するユーザから見て、光学部材1を介しない外景と光学部材1により視認可能となった死角領域の外景との連続性が確保される。複数のプリズム部3は、例えば、配列方向D2において隣接するプリズム部3同士のピッチ間隔がPで一定となっている。
【0029】
複数の平坦部4は、例えば、平滑面2cと対向し、かつ平行に配置された平坦面である。複数の平坦部4は、例えば、同一平面上に配置され、1つの平面を構成する。複数の平坦部4は、入射面2aからの入射光L2が臨界角以上の角度で入射するため、全反射により入射光L2を平滑面2c側に反射する反射面として機能する。複数の平坦部4は、例えば、平滑面2cと略平行になっている。本明細書における「略平行」とは、完全に平行な場合に加えて、加工誤差などにより不可避のわずかな差があるものの、ほぼ平行である場合を含む。
【0030】
平滑面2cは、射出部2bと対向配置された面であって、1つの平坦な面である。平滑面2cは、入射光L2のうち平坦部4で反射した光を全反射により射出部2b側に反射する。平滑面2cは、平坦部4と対をなす面であり、入射光L2の一部を平滑面2cと平坦部4との間で繰り返し反射させ、入射光L2を射出部2bの全域に入射させる。つまり、平滑面2cは、平坦部4を第1の反射面として、第2の反射面となる部位であり、入射光L2の一部を配列方向D2に沿って導光する役割を果たす。
【0031】
傾斜面2dは、入射面2aと平滑面2cとを繋ぐ面であって、例えば、平滑面2cに近づくほど終端面2eに近くなるように傾斜するとともに、平滑面2cよりも突出した面となっている。言い換えると、入射面2aおよび傾斜面2dは、断面視にて、1つの大きな突起状のプリズム部を構成している。つまり、導光体2は、入射面2aと傾斜面2dとのなす1つのプリズム部の厚み方向D1における高さが、射出部2bから平滑面2cまでの高さTよりも大きい構成となっている。これにより、導光体2は、入射面2aからの入射光L2が最初に到達する射出部2bにおける領域を広くできる。傾斜面2dは、例えば、厚み方向D1に対して角度ξで傾斜した1つの平坦面となっている。入射面2aからの入射光L2のうち平滑面2cと傾斜面2dとの境界近傍を通る光と、平滑面2cのうち当該境界近傍で反射する光との間で隙間が生じないようにする観点から、導光体2は、ξ<φを満たす設計とされる。これにより、射出部2bにおいてユーザに視認させる外景に隙間が生じることが抑制され、表示の連続性を確保することができる。
【0032】
なお、傾斜面2dは、入射面2aのうち射出部2bとは反対側の端部と平滑面2cのうち入射面2a側の端部とを繋ぐ仮想直線の厚み方向D1に対する角度であるξが、ξ<φを満たす構成であればよく、1つの平坦面でなくてもよい。例えば、傾斜面2dは、2つ以上の平面を有する多角面であってもよいし、湾曲した1つの湾曲面であってもよく、その形状については任意である。
【0033】
終端面2eは、射出部2bと平滑面2cとを繋ぐ面である。終端面2eは、例えば、1つの平坦面とされる。終端面2eは、その傾斜については任意であるが、例えば、射出部2bのうち最も終端面2eに近いプリズム部3の射出面3aとともに1つの平坦面をなし、配列方向D2における最後の射出面として機能する構成であってもよい。
【0034】
側面2fは、例えば図1に示すように、配列方向D2に対して直交する方向の端部に位置する面である。側面2fは、入射面2a、射出部2b、平滑面2c、傾斜面2dおよび終端面2eを繋ぐ面であり、例えば、1つの平坦面とされる。側面2fは、隣接する他の導光体2の側面2fの一部との連結される面、すなわち積層面となっている。複数の導光体2の側面2fのうち他の導光体2に対向する側であって、外部に露出している部分をはみ出し部2faとして、はみ出し部2faは、反射抑制部5が形成されている。側面2fは、例えば図5に示すように、はみ出し部2fa以外の部分が接着層6を介して隣接する他の導光体2と接着されている。あるいは、側面2fは、例えば図6に示すように、隣接する他の導光体2の側面2fと直接溶着されていてもよい。
【0035】
接着層6は、例えば、OCAやOCRなどの光透過性のある光学接着剤とされる。OCA、OCRとは、それぞれOptical Clear Adhesive、Optical Clear Resinの略称である。接着層6は、導光体2同士の界面における意図しない反射や屈折を抑制する観点から、例えば、屈折率が導光体2と同一の材料が用いられることが好ましい。
【0036】
なお、複数の導光体2を導光体2と同じ屈折率の接着層6で接着する場合、および直接溶着する場合のいずれも、隣接する導光体2の界面における光の反射が抑制されるため、積層する界面を視認させることなく全体を一つの導光体として見ることが可能となる。
【0037】
また、例えば図5に示すように、はみ出し部2faの配列方向D2における幅を位置ずらし幅Deとして、光学部材1は、以下の(2)式を満たす構成となっている。
【0038】
De=N×P・・・(2)
(2)式におけるNは、正の整数である。これにより、光学部材1は、例えば図5図6に示すように、隣接する導光体2同士のプリズム部3の位置が配列方向D2において揃った状態となる。このため、光学部材1は、積層方向D3におけるプリズム部3の位置ズレに起因する意図しない反射が抑制され、外景の視認性がより向上する。
【0039】
反射抑制部5は、外景光L1がはみ出し部2faで反射し、隣接する他の導光体2の入射面2aに入射することを抑制し、ゴースト像が生じることを防ぐために設けられる。具体的には、例えば図7に示すように、はみ出し部2faがただの平坦面であり、外部に露出している構造の光学部材を比較例として、比較例は、入射面2aには、直接入射する光に加えて、隣接する導光体2のはみ出し部2faでの反射光も入射する。入射面2aに直接入射する光を「正規光Lc」として、正規光Lcは、視認者に遮光体100による死角領域の光景を視認させる。一方、はみ出し部2faでの反射光は、一回反射した光であるため、正規光Lcによる光景に対して反転した光景を視認者に視認させるため、ゴースト像の原因となるゴースト光Lgである。反射抑制部5は、はみ出し部2faにおける反射を抑制し、ゴースト光Lgが入射面2aに入射することを防ぐことで、ゴースト像が生じることを抑制する。
【0040】
反射抑制部5は、例えば図8に示すように、はみ出し部2faに入射する可視光を吸収する光吸収層とされうる。これにより、はみ出し部2faでの反射光の入射面2aへの入射が抑制され、ゴースト像の発生が抑制される。
【0041】
反射抑制部5は、例えば図9に示すように、プリズム部3と同様の三角形状の突起が連続して形成されてなるプリズムアレイとされ、はみ出し部2faへの入射光を入射面2aとは異なる方向に反射する構成とされてもよい。この場合であっても、反射抑制部5は、光吸収層とされる場合と同様に、ゴースト像の発生を抑制することができる。この場合、反射抑制部5は、例えば、限定するものではないが、プリズムの高さが1mm未満のマイクロメートルオーダーとされたマイクロプリズムアレイとされる。
【0042】
反射抑制部5は、例えば図10に示すように、はみ出し部2faへの入射光を散乱させる光拡散層とされてもよい。この場合、反射抑制部5は、入射面2aに入射するはみ出し部2faでの反射光の光量を低減することで、ゴースト像の発生を抑制することができる。
【0043】
なお、反射抑制部5は、光吸収層で構成される場合には、光を反射しない領域となるため、ゴースト像を抑制できるものの、視認者の視点からはみ出し部2faを見たときには黒色領域、すなわち視界のケラレとして認識される。また、反射抑制部5は、プリズムアレイまたは光拡散層で構成される場合、ゴースト像を抑制でき、視認者の視点からはみ出し部2faを見たときには、反射抑制部5での拡散光により反射抑制部5での光の反射率に応じたグレーの領域として認識される。このため、反射抑制部5による違和感を低減し、外景の視認性をより向上させる観点からは、反射抑制部5は、プリズムアレイまたは光拡散層で構成されることが好ましい。
【0044】
以上が、光学部材1の基本的な構成である。
【0045】
〔光学部材の効果および取り付け方法〕
次に、光学部材1の効果および遮光体100への取り付け方法について、図11図12に示す比較例の光学部材10と対比して説明する。
【0046】
比較例の光学部材10が例えば図11に示すように、1つの導光体のみで構成され、射出部10bから見て、入射面10aの幅が広い矩形形状であり、この光学部材10を鉛直方向Dvに対して傾いた部位を有する遮光体100に取り付けた場合について検討する。なお、比較例の光学部材10は、1つの導光体2に相当するもののみで構成され、導光体2と基本的に同じ構成であるが、導光体2の入射面2aの幅、すなわち高さhの寸法が大きくされたものである。この場合、比較例の光学部材10は、光学部材10自体が視界を遮らないように、遮光体100からのはみ出し量を抑えて取り付けられることが好ましい。しかしながら、この場合、比較例の光学部材10は、入射面10aの一部が遮光体100からはみ出さず、外景光L1を取り込めない状態となり、射出部10bの一部が射出光L3を射出しない領域、すなわち視認不可領域R1となってしまう。ここでいう視認不可領域R1とは、視認者が遮光体100による死角領域の光景を視認することができない領域を意味する。
【0047】
そこで、比較例の光学部材10を例えば図12に示すように、射出部10bから見て、遮光体100の傾斜に合わせた平行四辺形とし、遮光体100からのはみ出し量を抑えつつ、入射面10aの全域に外景光L1が入射する状態とすることが考えられる。
【0048】
しかしながら、この光学部材10は、入射面10aの端部が鉛直方向Dvに対して傾いた状態となるため、入射面10aから入射した入射光L2が鉛直方向Dvにおける屈曲が大きくなってしまう。このため、光学部材10は、射出部10bのうち鉛直方向Dvの上部における所定の領域から射出光L3が射出されなくなり、当該所定の領域が視認不可領域R1となってしまう。
【0049】
これに対し、本実施形態の光学部材1は、例えば図13に示すように、複数の導光体2それぞれの入射面2aの全域が遮光体100からはみ出すとともに、入射面2aの端部と鉛直方向Dvとが略平行な取付状態となる。この取付状態では、光学部材1は、入射面2aに外景光L1が入射しない領域が生じないとともに、入射光L2の鉛直方向Dvに沿った屈曲が生じないため、射出部2bに視認不可領域R1が生じない構成となる。また、光学部材1は、入射面2aの端部と鉛直方向Dvとが略平行となるように配置する場合には、遮光体100の鉛直方向Dvに対する傾斜角度にかかわらず、入射面2aの全域が遮光体100に隠されない状態での取り付けが可能となる。
【0050】
また、光学部材1は、例えば図14に示すように、遮光体100の傾斜部分の傾斜角度ωおよび視認者の視点Peに合わせて、鉛直方向Dvに対して傾けられた状態で取り付けられてもよい。ここでいう傾斜角度ωとは、射出部2b側から見た光学部材1の中心を中心Cとし、中心Cと視認者の視点Peとを繋ぐ仮想直線VLと配列方向D2とが平行になるように光学部材1を傾けた状態での積層方向D3と、遮光体100の傾斜部分とのなす角度である。なお、中心Cと視認者の視点Peとを繋ぐ仮想直線VLと配列方向D2とが平行になる状態では、光学部材1は、側面2fを積層面として、積層面が仮想直線VLに対して略平行となる。光学部材1は、鉛直方向Dvに対して傾けて取り付けられる場合には、以下の(3)式を満たすことが好ましい。
【0051】
De/h=tanω・・・(3)
これにより、光学部材1は、複数の導光体2それぞれが遮光体100の傾斜角度ωに合わせて配置され、かつ入射面2aが遮光体100により隠されることのない取付状態となる。このため、光学部材1は、すべての導光体2の全体を用いた入射光L2の導光が可能となり、射出部2bにおいて視認者に死角領域を視認させる領域を広く確保でき、視認者の視界を有効に確保することが可能となる。
【0052】
なお、光学部材1は、入射面2aの高さhが所定以下とされ、平坦部4に対する法線方向から射出部2bを見て、複数の導光体2それぞれが長細い矩形形状である。このため、光学部材1は、傾斜角度ωに合わせた取付状態であっても、鉛直方向Dvにおける入射光L2の屈曲が上記の比較例に比べて小さく、視認不可領域R1の発生が抑制される。
【0053】
本実施形態によれば、複数の導光体2それぞれの入射面2aの配列方向D2での位置が互いにずらして配置された段々状の構成であり、鉛直方向Dvに対する傾斜部位を有する遮光体100にも、入射面2aの全域が隠れない取付状態が可能な光学部材1となる。また、光学部材1は、取付状態において入射面2aが鉛直方向Dvに対して略平行とすることも可能であるとともに、入射面2aの幅が小さい細長い形状であるため、入射光L2の鉛直方向Dvにおける屈曲が抑制される配置される。よって、この光学部材1は、鉛直方向Dvに対する傾斜部位を有する遮光体100に取り付けられても、死角領域の光を射出しない視認不可領域R1の発生が抑制される効果が得られる。
【0054】
(第2実施形態)
第2実施形態の光学部材1について、図15を参照して説明する。
【0055】
本実施形態の光学部材1は、例えば図15に示すように、光学部材1を構成する複数の導光体2の射出部2bの構成が変更されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0056】
射出部2bは、本実施形態では、例えば図15に示すように、プリズム部3の配列方向D2におけるピッチ間隔が異なる第1領域2ba、第2領域2bbおよび第3領域2bcを有してなる。領域2ba~2bcは、プリズム部3および平坦部4の配列方向D2における幅の比率が異なる領域となっており、入射面2a側の領域ほど平坦部4の幅の比率が大きい構成となっている。第1領域2baおよび第2領域2bbは、プリズム部3と平坦部4とが交互に繰り返し配列されてなり、第1領域2baのプリズム部3のピッチ間隔P1が第2領域2bbのプリズム部3のピッチ間隔P2よりも大きくなっている。一方、第3領域2bcは、複数のプリズム部3のみが繰り返し配列されてなり、平坦部4を有していない。これにより、射出部2bは、領域2ba~2bcにおける内部の反射率を調整でき、領域ごとの射出光L3の光量が略同一とされ、輝度ムラが抑制される。
【0057】
具体的には、射出部2bでは、所定領域において、「配列方向D2における複数のプリズム部3および平坦部4の合計幅」に対する「所定領域の複数の平坦部4の配列方向D2における合計幅」の割合が入射光L2の反射率となる。このため、例えば、第1領域2baは、平坦部4の幅の割合が約67%となるように構成すると、第1領域2baに入射する入射光L2の全量を100%としたとき、約66%が平滑面2cに反射され、約34%が外部に射出光L3として射出される。また、第2領域2bbは、平坦部4の幅の割合が約50%となるように構成すると、約66%の入射光L2の約50%となる約33%が再び平滑面2cに反射され、残る約33%が外部に射出光L3として射出される。そして、第3領域2bcは、プリズム部3のみで構成されているため、入射する約33%の入射光L2がそのまま外部に射出光L3として射出される。これにより、領域2ba~2bcは、同程度の光量の射出光L3を射出することとなり、射出部2bにおいて視認者に視認させる外景の輝度ムラが抑制された状態となる。
【0058】
なお、上記では、射出部2bが3つの領域で構成された例について説明したが、これに限定されず、2つまたは4つ以上の領域で構成されてもよく、構成する領域数に応じて平坦部4の幅の比率を適宜変更することで、輝度ムラを抑制することができる。
【0059】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、この光学部材1は、射出部2bがプリズム部3および平坦部4の幅の比率が異なる複数の領域を有した構成とされることで、視認者に視認させる死角領域の外景の輝度ムラが低減される効果も得られる。
【0060】
(第3実施形態)
第3実施形態の光学部材1について、図16図18を参照して説明する。
【0061】
図16では、図1と同様に、断面を示すものではないが、側面2fを覆う反射抑制部5にハッチングを施している。図17図18では、図5と同様に、断面を示すものではないが、平坦部4にハッチングを施している。
【0062】
本実施形態の光学部材1は、例えば図16に示すように、複数の導光体2が所定の間隔を隔てて互いに離れて配置されている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0063】
複数の導光体2は、本実施形態では、例えば図16に示すように、側面2fの全域に反射抑制部5が形成されている。なお、反射抑制部5は、それぞれの導光体2の2つの側面2fの全域に形成されており、側面2fでの反射光が他の導光体2に入射することを防いでいる。複数の導光体2は、例えば、図示しない保持部材により略平行な状態で保持され、遮光体100に取り付けられる。
【0064】
以下、説明の便宜上、例えば図17に示すように、複数の導光体2について、積層方向D3の最も上側から下側に向かう順に、「第1導光体21」、「第2導光体22」、「第3導光体23」、「第4導光体24」、「第5導光体25」、とそれぞれ称する。
【0065】
また、隣接する導光体2同士の入射面2aの配列方向D2における間隔、すなわち位置ずらし幅Deについては、区別のため、導光体21、22間のものをDe1、導光体22、23間のものをDe2とする。導光体23、24間の位置ずらし幅をDe3、導光体24、25間の位置ずらし幅をDe4とする。さらに、隣接する導光体2同士の積層方向D3における配置のピッチ間隔をギャップとして、導光体21、22間、導光体22、23間、導光体23、24間、導光体24、25間のものをそれぞれ、g1、g2、g3、g4とする。
【0066】
複数の導光体2は、遮光体100の鉛直方向Dvに対する傾斜部分の角度が一定でない場合に、取り付ける箇所の傾斜角度ωに応じて、取付状態における位置ずらし幅Deとギャップgとの比率の調整が可能となっている。具体的には、例えば図18に示すように、遮光体100の傾斜角度ωがω1~ω4となっており、その一部または全部が異なっているような場合、導光体21~25は、位置ずらし幅Deとギャップgとの比率が傾斜角度ω1~ω4に合わせて調整される。例えば、傾斜角度ω1の箇所に取り付けられる第2導光体22が取り付けられる場合、第1導光体21および第2導光体22は、以下の(4)式を満たすように、位置ずらし幅Deとギャップgとの比率が調整される。
【0067】
De1/g1=tan(ω1)・・・(4)
これにより、第1導光体21および第2導光体22は、遮光体100の傾斜角度ω1に合わせてはみ出し量が最小限となるとともに、それぞれの入射面2aの全域に外景光L1が入射し、視認者に視認させる死角領域の視界を有効に確保することが可能となる。また、例えば図17に示すように、傾斜角度ω2、ω3、ω4の箇所に第3導光体23、第4導光体24、第5導光体25が取り付けられる場合、導光体22~25は、下記(5)~(7)式を満たすように、位置ずらし幅Deとギャップgとの比率が調整される。
【0068】
De2/g2=tan(ω2)・・・(5)
De3/g3=tan(ω3)・・・(6)
De4/g4=tan(ω4)・・・(7)
これにより、導光体22~25は、取付状態において、遮光体100からのはみ出し量が最小限とされつつ、それぞれの入射面2aの全域に外景光L1が入射し、死角領域の視界を有効に確保することが可能となる。また、光学部材1は、導光体21~25のギャップg1~g4を任意に設定可能であるため、遮光体100の形状に合わせて視認者に視認させる視界を適宜設計することが可能な構成である。
【0069】
上記では、光学部材1が5つの導光体2により構成される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、導光体2の数をn(n:2以上の整数)とし、積層方向D3の上側から数えてn-1番目の第(n-1)導光体とn番目の第n導光体との位置ずらし幅をDemとし、ギャップをgmとする。なお、mは、整数であり、最大でn-1である。そして、遮光体100のうち第n導光体が取り付けられる箇所の傾斜角度をωmとしたとき、第(n-1)導光体および第n導光体は、以下の(8)式を満たすように、位置ずらし幅とギャップとの比率が調整されていればよい。
【0070】
Dem/gm=tan(ωm)・・・(8)
なお、図18では、射出部2b側から見た光学部材1の中心位置である中心Cと視認者の視点Peとを繋ぐ仮想直線VLと、配列方向D2とが平行となるように、光学部材1を傾けた取付状態である場合を代表例として示してるが、これに限定されない。例えば、光学部材1は、入射面2aの端部が鉛直方向Dvに対して平行となるように取り付けられてもよい。
【0071】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、光学部材1は、隣接する導光体2同士が距離を隔てて配置されており、位置ずらし幅Deとギャップgとの比率を調整することが可能であるため、遮光体100の傾斜角度ωが一定でない場合にも、傾斜角度ωに応じた配置の調整が可能となっている。また、光学部材1は、導光体2の数が少ない場合であっても、複数の導光体2が離散的に配置されるため、広い範囲の視界を確保することも可能である。
【0072】
(第4実施形態)
第4実施形態の光学部材1について、図19図22を参照して説明する。
【0073】
図19図20図22では、図5と同様に、断面を示すものではないが、平坦部4にハッチングを施している。なお、図19図20図22に示す配列方向D21および積層方向D31は、第3導光体23に対応するものである。図21では、比較例の光学部材における視認不可領域R1を分かり易くするため、断面を示すものではないが、視認不可領域R1にハッチングを施している。
【0074】
本実施形態の光学部材1は、例えば図19に示すように、複数の導光体2を射出部2b側から見たとき、導光体2が配列方向D2における両端の幅が異なる楔形状となっている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0075】
複数の導光体2は、本実施形態では、2つの側面2fを繋ぐ方向における入射面2aの幅hfが、同方向における終端面2eの幅hbよりも大きく、配列方向D2に沿って入射面2a側から終端面2e側に向かうほど幅が小さくなる楔形状となっている。複数の導光体2は、例えば、自身の側面2fが隣接する他の導光体2の対向する側面2fと略平行となるように配置されている。
【0076】
複数の導光体2は、例えば図20に示すように、射出部2b側から見て、隣接する導光体2のうち対向する2つの側面2fの中間を通り、入射面2aから終端面2eに向かう方向を積層面方向Dfとして、積層面方向Dfが視点Peを通るように配置される。例えば、積層面方向Dfのうち導光体21、22間のものをDf1、導光体22、23間のものをDf2、導光体23、24間のものをDf3、導光体24、25間のものをDf4とする。このとき、光学部材1は、積層面方向Df1~Df4がすべて視点Peを通るように、遮光体100に取り付けられる。
【0077】
また、取付状態における第3導光体23と視認者の視点Peとの距離をLdとし、導光体21~25それぞれの配列方向D2における幅をWとして、光学部材1は、以下の(9)式を満たすように設計されている。なお、距離Ldとは、第3導光体23の射出部2bにおける中心Cと視点Peとを繋ぐ仮想直線VLに沿った、第3導光体23の終端面2eと視点Peとの距離である。
【0078】
hf/(W+Ld)≒hb/Ld・・・(9)
これにより、光学部材1は、視点Peから導光体21~25を見たとき、導光体21~25それぞれについて、自身の側面2fによって妨げられる入射光L2の量が最小限となる。なお、第1導光体21、第2導光体22、第4導光体24および第5導光体25についても、それぞれの導光体の終端面2eと視点Peとの各導光体における配列方向D2に沿った距離をLdとして、(9)式を満たす設計とされてもよい。
【0079】
例えば図21に示すように、射出部から見て矩形形状とされた導光体101~105で構成される比較例の場合、導光体101~105のうち端側に位置する導光体ほど視点Peに到達する射出光L3の量が少なくなってしまい、視認不可領域R1が生じる。具体的には、比較例の光学部材は、第3導光体103が視点Peの正面に位置する場合、第3導光体103には視認不可領域R1が生じない。しかしながら、入射面の幅が終端面の幅よりも小さいため、外景光L1が入射する領域が狭く、視点Peに対して鉛直方向Dvにおける位置が上下にずれた導光体ほど、視点Peに向かう光が側面2fで妨げられてしまう。このため、第3導光体103に隣接する導光体102、104には視認不可領域R1が生じるとともに、鉛直方向Dvにおける両端に位置する導光体101、105では、導光体102、104よりも視認不可領域R1の割合がさらに多くなってしまう。
【0080】
一方、本実施形態の光学部材1は、導光体21~25のいずれも入射面2aの幅が終端面2eの幅よりも広い楔形状であり、積層面方向Df1~Df4が視点Peに向かう構成となっている。これにより、光学部材1は、例えば図22に示すように、視点Peに向かう入射光L2が側面2fによりその導光を妨げられること、すなわち導光が側面2fによりケラレることが抑制される。その結果、光学部材1は、視認不可領域R1の発生が抑制され、より有効に視認者の視界を確保することができる。
【0081】
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる光学部材1となる。また、光学部材1は、射出部2b側から見て楔形状とされ、積層面方向Df1~Df4が視点Peに向かうように構成されているため、視認不可領域R1が生じることがより抑制され、死角領域の視界をより広く確保することが可能となる。
【0082】
(第5実施形態)
第5実施形態の光学部材1について、図23図24を参照して説明する。
【0083】
図23では、図5と同様に、断面を示すものではないが、平坦部4にハッチングを施している。図24では、遮光体100への光学部材1の取付状態を分かり易くするため、便宜上、光学部材1と遮光体100とが離れた状態で示している。また、図24では、導光体2を見易くするため、それぞれの射出部2bを簡略化して示している。
【0084】
本実施形態の光学部材1は、例えば図23図24に示すように、複数の導光体2の厚み方向D1における位置が異なる配置とされた構成である点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
【0085】
以下、説明の便宜上、例えば図24に示すように、積層方向D3において隣接する導光体2の平滑面2c同士の厚み方向D1における距離を位置ずらし幅bと称する。位置ずらし幅bのうち導光体21、22間のものをb1、導光体22、23間のものをb2、導光体23、24間のものをb3、導光体24、25間のものをb4とする。また、遮光体100の傾斜部分のうち厚み方向D1に沿った断面における鉛直方向Dvに対する傾斜角度をεとする。このとき、遮光体100のうち第2導光体22が取り付けられる部位の傾斜角度をε1、第3導光体23が取り付けられる部位の傾斜角度ε2とする。また、遮光体100のうち第4導光体24が取り付けられる部位の傾斜角度をε3、第5導光体25が取り付けられる部位の傾斜角度ε4とする。
【0086】
複数の導光体2は、本実施形態では、例えば図24に示すように、遮光体100の傾斜角度ε1~ε4に合わせて、厚み方向D1における位置をずらして配置される。複数の導光体2は、取付状態において、以下の(10)式~(13)式を満たすように、積層方向D3におけるギャップgと厚み方向D1における位置ずらし幅bとの比率が調整されている。これにより、複数の導光体2のうち隣接する導光体2の平滑面2c同士のなす傾斜が遮光体100の傾斜角度εと略同一となり、遮光体100の形状に合わせた適切な配置となる。
【0087】
b1/g1=tan(ε1)・・・(10)
b2/g2=tan(ε2)・・・(11)
b3/g3=tan(ε3)・・・(12)
b4/g4=tan(ε4)・・・(13)
なお、導光体2の数をn(n:2以上の整数)とし、積層方向D3の上側から数えて(n-1)番目の第(n-1)導光体とn番目の第n導光体とのギャップgおよび位置ずらし幅bをそれぞれgm、bmとする。このとき、光学部材1は、取付状態において、(14)式を満たすように、調整される。なお、mは、1以上の整数であり、最大でn-1である。
【0088】
bm/gm=tan(εm)・・・(14)
本実施形態によっても、上記第1実施形態の効果が得られる光学部材1となる。また、光学部材1は、隣接する導光体2同士が距離を隔てて配置されており、位置ずらし幅bとギャップgとの比率を調整することが可能であるため、遮光体100の傾斜角度εが一定でない場合にも、傾斜角度εに応じた配置の調整が可能となっている。
【0089】
(他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0090】
なお、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0091】
2…導光体、2a…入射面、2b…射出部、2c…平滑面、2d…傾斜面、2e…終端面
2f…側面、3…プリズム部、3a…射出面、4…プリズム部、5…反射抑制部
6…接着層、D1…厚み方向、D2…配列方向、hf…入射面の幅、hb…終端面の幅
L1…外景光、L2…入射光
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