(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004517
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/404 20060101AFI20250107BHJP
B23Q 15/12 20060101ALI20250107BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20250107BHJP
B23Q 17/10 20060101ALI20250107BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G05B19/404 K
B23Q15/12 Z
B23Q17/09 H
B23Q17/10
B23Q17/09 A
B23Q17/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104249
(22)【出願日】2023-06-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】520466308
【氏名又は名称】アルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 京幸
【テーマコード(参考)】
3C001
3C029
3C269
【Fターム(参考)】
3C001KB04
3C001TA03
3C001TA04
3C001TA05
3C001TA06
3C001TB03
3C029CC03
3C029CC05
3C029EE12
3C269AB05
3C269BB07
3C269CC02
3C269CC07
3C269CC17
3C269EF02
3C269KK08
3C269MN07
3C269MN09
3C269MN23
3C269QB03
3C269QC01
3C269QC02
3C269QC03
3C269QD02
3C269QD03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】物性値の変化を踏まえた工具の回転数を設定できる工作機械制御装置等を提供する。
【解決手段】ワークを工具を用いて切削加工を行う工作機械を制御する情報処理装置であって、過去の前記切削加工に関する物性値を示す物性値情報を、前記ワークの材質を示す材質情報および前記工具の種別を示す工具種別情報と対応付けて記憶する記憶部と、前記材質情報、前記工具種別情報、前記工具の工具径を示す工具径情報および前記ワークの切削速度情報を取得する取得部と、前記工具径情報および前記切削速度情報に基づき、前記工具の回転数を算出する回転数算出部と、前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回および前回の物性値情報を用いて前記回転数の補正値を算出する補正値算出部と、前記工具の回転数を前記回転数の補正値で補正する補正部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して工具を用いて切削加工を行う工作機械を制御する情報処理装置であって、
前記ワークに対して行われた過去の前記切削加工に関する物性値を示す物性値情報を、前記ワークの材質を示す材質情報および前記工具の種別を示す工具種別情報と対応付けて記憶する記憶部から、前記材質情報、前記工具種別情報、前記工具の工具径を示す工具径情報および前記ワークを切削加工する際の切削速度を示す切削速度情報を取得する取得部と、
前記工具径情報および前記切削速度情報に基づき、前記工具の回転数を算出する回転数算出部と、
前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記回転数の回転数補正値を算出する補正値算出部と、
前記工具の回転数を前記回転数補正値で補正する補正部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記物性値情報は、前記工作機械の機械的コンプライアンスを示す第1情報と、前記工作機械の主軸に対する負荷率を示す第2情報と、前記工具の硬度を示す第3情報と、前記工具の靭性を示す第4情報と、前記ワークの硬度を示す第5情報と、前記ワークの靭性を示す第6情報と、前記ワークの温度を示す第7情報と、前記工作機械のクーラントを示す第8情報とのうち1つの情報または複数の情報の組み合わせである、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記工具径と前記回転数とに基づき前記工具の送り速度を算出する送り速度算出部、をさらに備え、
前記補正値算出部は、前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記送り速度の送り速度補正値を算出し、
前記補正部は、前記工具の送り速度を前記送り速度補正値で補正する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記回転数に基づき前記工具の切込み量を算出する切込み量算出部、をさらに備え、
前記補正値算出部は、前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記切込み量の切込み量補正値を算出し、
前記補正部は、前記工具の切込み量を前記切込み量補正値で補正する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記工具径の経時的変化に基づき前記工具の摩耗量を算出する摩耗量算出部、をさらに備え、
前記補正値算出部は、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量よりも大きい場合には前記回転数補正値を正の値として算出し、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量以下の場合には前記回転数補正値を負の値として算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記工具径の経時的変化に基づき前記工具の摩耗量を算出する摩耗量算出部、をさらに備え、
前記補正値算出部は、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量よりも大きい場合には前記送り速度補正値を負の値として算出し、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量以下の場合には前記送り速度補正値を正の値として算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記工具径の経時的変化に基づき前記工具の摩耗量を算出する摩耗量算出部、をさらに備え、
前記補正値算出部は、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量よりも大きい場合には前記送り切込み量補正値を負の値として算出し、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量以下の場合には前記送り切込み量補正値を正の値として算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記新たに取得された前記材質情報と同じ材質情報が前記記憶部に記憶されていない場合には前記新たに取得された前記材質情報が前記物性値情報と対応付けて前記記憶部に記憶され、前記新たに取得された前記工具種別情報と同じ工具種別情報が前記記憶部に記憶されていない場合には前記新たに取得された前記工具種別情報が前記物性値情報と対応付けて前記記憶部に記憶される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記補正値算出部は、前記前回の前記物性値情報が示す値を前記前々回の物性値情報を示す値で除算した値にロジスティック関数を適用し、当該ロジスティック関数が適用された値を前記回転数の回転数補正値として算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
ワークに対して工具を用いて切削加工を行う工作機械を制御する加工制御方法であって、
前記ワークに対して行われた過去の前記切削加工に関する物性値を示す物性値情報を、前記ワークの材質を示す材質情報および前記工具の種別を示す工具種別情報と対応付けて記憶する記憶部から、前記材質情報、前記工具種別情報、前記工具の工具径を示す工具径情報および前記ワークを切削加工する際の切削速度を示す切削速度情報を取得し、
新たに取得された前記工具径情報および前記切削速度情報に基づき、前記工具の回転数を算出し、
前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記回転数の回転数補正値を算出し、
前記工具の回転数を前記回転数補正値で補正する、
情報処理方法。
【請求項11】
ワークに対して工具を用いて切削加工を行う工作機械を制御する情報処理装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、前記プログラムは、前記コンピュータに、
前記ワークに対して行われた過去の前記切削加工に関する物性値を示す物性値情報を、前記ワークの材質を示す材質情報および前記工具の種別を示す工具種別情報と対応付けて記憶する記憶部から、前記材質情報、前記工具種別情報、前記工具の工具径を示す工具径情報および前記ワークを切削加工する際の切削速度を示す切削速度情報を取得させ、
新たに取得された前記工具径情報および前記切削速度情報に基づき、前記工具の回転数を算出させ、
前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記回転数の回転数補正値を算出させ、
前記工具の回転数を前記回転数補正値で補正させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
NCプログラムによるNC演算を実行するCNC(Computerized Numerical Control)装置を有する制御システムを設けた工作機械が、加工中に異常が発生した場合において工具を工作物から退避させる技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工作機械を用いてワークを切削加工する際には、予め計算された工具の回転数が設定される。当該設定された回転数は計算上の理想値である。一方、ワークに対する切削加工が行われていくと、工具等の切削加工に関する物性値が経時的に変化する。このため、実際の物性値に応じた工具の回転数と、回転数の理想値との間にずれが生じてくる。その結果、ワークに対して実際の物性値に応じた工具の回転数で切削加工行うことができなくなる。特許文献1は、加工中の異常に対処する技術であり、上述した問題を解決するものではない。
【0005】
1つの側面として、本発明は、物性値の変化を踏まえた工具の回転数を設定できる情報処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、ワークに対して工具を用いて切削加工を行う工作機械を制御する情報処理装置であって、前記ワークに対して行われた過去の前記切削加工に関する物性値を示す物性値情報を、前記ワークの材質を示す材質情報および前記工具の種別を示す工具種別情報と対応付けて記憶する記憶部から、前記材質情報、前記工具種別情報、前記工具の工具径を示す工具径情報および前記ワークを切削加工する際の切削速度を示す切削速度情報を取得する取得部と、前記工具径情報および前記切削速度情報に基づき、前記工具の回転数を算出する回転数算出部と、前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記回転数の回転数補正値を算出する補正値算出部と、前記工具の回転数を前記回転数補正値で補正する補正部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る加工制御方法は、ワークに対して工具を用いて切削加工を行う工作機械を制御する加工制御方法であって、前記ワークに対して行われた過去の前記切削加工に関する物性値を示す物性値情報を、前記ワークの材質を示す材質情報および前記工具の種別を示す工具種別情報と対応付けて記憶する記憶部から、前記材質情報、前記工具種別情報、前記工具の工具径を示す工具径情報および前記ワークを切削加工する際の切削速度を示す切削速度情報を取得し、新たに取得された前記工具径情報および前記切削速度情報に基づき、前記工具の回転数を算出し、前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記回転数の回転数補正値を算出し、前記工具の回転数を前記回転数補正値で補正する。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、ワークに対して工具を用いて切削加工を行う工作機械を制御する情報処理装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、前記プログラムは、前記コンピュータに、前記ワークに対して行われた過去の前記切削加工に関する物性値を示す物性値情報を、前記ワークの材質を示す材質情報および前記工具の種別を示す工具種別情報と対応付けて記憶する記憶部から、前記材質情報、前記工具種別情報、前記工具の工具径を示す工具径情報および前記ワークを切削加工する際の切削速度を示す切削速度情報を取得させ、新たに取得された前記工具径情報および前記切削速度情報に基づき、前記工具の回転数を算出させ、前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記回転数の回転数補正値を算出させ、前記工具の回転数を前記回転数補正値で補正させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】工作機械制御装置の一例を示すブロック図である。
【
図7】図面データの付帯情報の一例を示す図である。
【
図8】工具データに関する処理の流れの一例について説明する。
【
図9】工具テーブルの変化の一例を示す図である。。
【
図10】物性値情報に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】物性値記憶処理の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】物性値テーブルの変化の一例を示す図である。
【
図13】補正処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図14】回転数制御値の算出の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面については、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
図1は、加工制御システム100の一例を示す図である。加工制御システム100は、サーバ101、複数の発注元コンピュータ102(102A、102B、102C、・・・)、複数の工作機械制御装置103(103A、103B、103C、・・・)および複数の工作機械104(104A、104B、104C、・・・)を含む。発注元コンピュータ102、工作機械制御装置103および工作機械104は1つであってもよい。
【0012】
サーバ101と各発注元コンピュータ102と各工作機械制御装置103とは、インターネット等のネットワークNWを介して接続されている。各工作機械制御装置103は、それぞれ工作機械104に接続されている。複数の工作機械104が1つの工作機械制御装置103に接続されていてもよい。
【0013】
サーバ101は、工作機械104がワークに対して切削加工を行う際の加工制御を行う情報処理装置である。サーバ101は、例えば、クラウドサーバである。サーバ101は、ネットワークNWを介して、各工作機械制御装置103を制御する。以下、切削加工を単に加工と称する。
【0014】
発注元コンピュータ102は、ワークの加工を発注する発注元の企業に所属するコンピュータである。発注元コンピュータ102は、例えば、パーソナルコンピュータである。発注元コンピュータ102A~102Cは、例えば、それぞれ異なる企業に所属するコンピュータである。複数の発注元コンピュータ102が1つの企業に所属していてもよい。
【0015】
発注元コンピュータ102は、加工を行う対象(ワーク)の図面データをサーバ101に送信する。図面データは、例えば、発注元企業のオペレータが発注元コンピュータ102を操作して編集することにより生成される。図面データは、STL(Standard Triangulated Language)データやOBJデータ、CADデータ等のワークの形状を表すデータである。当該図面データは、ワークの材質を表す情報等も含み得る。
【0016】
工作機械制御装置103は、工作機械104を制御するコンピュータである。本実施形態の工作機械104は、工作機械制御装置103の制御に従って、ワークに対して所定の加工を施すNC(Numerical Control)工作機である。工作機械制御装置103は、サーバ101と通信を行い、サーバ101からの加工制御に基づき、工作機械104を制御する。
【0017】
工作機械104には工具が設けられており、当該工具を用いて、ワークに対して所定の加工を施す。以下、所定の加工は切削加工であるものとして説明するが、切削加工以外の加工にも本実施形態は適用可能である。
【0018】
図2は、サーバ101の一例を示すブロック図である。サーバ101は、制御部201、通信部202、記憶部203、操作部204および表示部205を含む。サーバ101は、
図2の構成に限定されず、他の要素を含んでもよいし、一部の要素が省略されてもよい。
【0019】
制御部201は、プロセッサおよびメモリを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。メモリに記憶されたプログラム(複数の命令セット)をプロセッサが実行することにより、制御部201が行う各種の制御が実現される。プロセッサは、GPU(Graphics Processing Unit)等であってもよい。
【0020】
通信部202は、ネットワークNWに接続されるネットワークインターフェースであって、制御部201からの指示に応じて、ネットワークNWを介して、データの送受信を行う。
【0021】
記憶部203は、例えば、ハードディスクやROM、RAM等の情報記録媒体で構成される。記憶部203には、ワークに対して行われた過去の切削加工に関する物性値を示す物性値テーブル(物性値情報)が、ワークの材質を示す材質情報および工具の種別を示す工具種別情報と対応付けられて記憶されている。また、記憶部203には、工具に関する工具テーブルが記憶されている。各テーブルの詳細は、後述する。
【0022】
操作部204は、例えば、キーボード、マウス、ボタン等のインターフェースで構成され、ユーザの指示操作に応じて、当該指示操作の内容を制御部201に出力する。表示部205は、例えば、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、または有機ELディスプレイである。表示部205は、制御部201からの指示に従い、情報を表示する。
【0023】
制御部201は、取得部211、回転数算出部212、送り速度算出部213、切り込み量算出部214、摩耗量算出部215、補正値算出部216および補正部217を含む。制御部201の機能は、上述したプロセッサが、メモリに記憶された複数の命令セットを実行することにより実現されるソフトウェア的な機能である。
【0024】
取得部211は、ワークの材質情報、工具の工具種別情報、工具の工具径を示す工具径情報およびワークを切削加工する際の切削速度を示す切削速度情報を含む各種の情報を取得する。例えば、取得部211は、図面データに付帯する付帯情報からワークの材質情報を取得する。図面データのファイル名に付帯情報としてワークの名称が含まれる場合、取得部211は、図面データのファイル名からワークの材質情報を取得してもよい。また、例えば、工作機械104に新たに工具が導入された際に、サーバ101は、工具種別情報、工具径情報および切削速度情報を工作機械制御装置103から受信し、受信した各情報を記憶部203の工具テーブル(後述)に記憶する。取得部211は、記憶部203の工具テーブルから工具種別情報、工具径情報および切削速度情報を取得してもよい。各情報の取得の詳細は後述する。
【0025】
回転数算出部212は、取得部211が取得した工具径情報および切削速度情報に基づき、工具の回転数を算出する。送り速度算出部213は、上記の工具径情報が示す工具径と算出された回転数とに基づき、工具の送り速度を算出する。切り込み量算出部214は、算出された回転数に基づき工具のZ軸切込み量(以下、単に切り込み量とする)を算出する。
【0026】
摩耗量算出部215は、工具径の経時的変化に基づき工具の摩耗量を算出する。補正値算出部216は、取得部211が新たに取得した工具径情報および工具種別情報と、記憶部203に記憶されている前回の物性値情報および前々回の物性値情報とを用いて、回転数、送り速度および切り込み量の補正値を算出する。補正部217は、算出された回転数、送り速度および切り込み量を補正値で補正する。
【0027】
図3は、工作機械制御装置103の一例を示すブロック図である。工作機械制御装置103は、制御部301、通信部302、記憶部303、操作部304、表示部305、出力部206、マシン情報取得部307、マシン情報取得部307および画像取得部308を含む。工作機械制御装置103は、
図2の構成に限定されず、他の要素を含んでもよいし、一部の要素が省略されてもよい。
【0028】
制御部301は、プロセッサおよびメモリを含む。メモリに記憶されたプログラム(複数の命令セット)をプロセッサが実行することで、制御部301の各種の制御が実現される。プロセッサはGPU等であってもよい。通信部302は、ネットワークNWに接続されるネットワークインターフェースであって、制御部301からの指示に応じて、ネットワークNWを介して、データの送受信を行う。
【0029】
記憶部303は、例えば、ハードディスクやROM、RAM等の情報記録媒体で構成される。記憶部303は、制御部301のプロセッサによって実行されるプログラムを保持する情報記録媒体である。
【0030】
操作部304は、例えば、キーボード、マウス、ボタン等のインターフェースで構成され、ユーザの指示操作に応じて、当該指示操作の内容を制御部301に出力する。表示部305は、例えば、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、または有機ELディスプレイである。表示部305は、制御部301からの指示に従い、情報を表示する。出力部306は、工作機械104を制御する制御情報を工作機械104に出力する。
【0031】
マシン情報取得部307は、工作機械104(マシン)に関するマシン情報を工作機械104から取得する。工作機械104には、工具の座標位置を計測するエンコーダが設けられている。マシン情報取得部307は、エンコーダから工具の座標位置を示す座標情報を取得する。
【0032】
工作機械104には、ワークに対して工具の主軸が接触したときの主軸電流値(付加電流値)を計測する電流計が設けられている。マシン情報取得部307は、当該電流計から主軸電流値を取得する。工作機械104には、ワークの硬度を計測する硬度計(例えば、ロックウェル式硬度計)が設けられている。マシン情報取得部307は、当該硬度計からワークの硬度を示すワーク硬度情報を取得する。
【0033】
また、工作機械104には、ワークの温度を計測する温度計(例えば、非接触温度計)が設けられている。マシン情報取得部307は、当該温度計からワークの温度を示すワーク温度情報を取得する。工作機械104には、クーラント液の温度を示す温度計(例えば、チラー温度計)が設けられている。マシン情報取得部307は、当該温度計からクーラント液の温度を示すクーラント温度情報を取得する。
【0034】
後述するように、工作機械104には、工具(特に、ワークを加工する部位)を撮影するカメラが設けられている。画像取得部308は、当該カメラから工具の加工部位を撮影した画像を取得する。
【0035】
図4は、工作機械104の一例を示す図である。工作機械104は、工具401、ワーク載置台402、X軸駆動機構403、Y軸駆動機構404、Z軸駆動機構405およびB軸駆動機構406を有する。工作機械104の構成は
図4の例には限定されない。
【0036】
工具401は、ワークWに切削加工を施すために用いられる工具である。工具401は、例えば、スクエアエンドミルやセンタードリル等である。工具401は、他の工具であってもよい。
【0037】
ワーク載置台402は、ワークWを載置するための台である。ワーク載置台402は、不図示の回転駆動機構およびB軸駆動機構406の駆動制御により、回転駆動する。また、工具401は、X軸駆動機構403、Y軸駆動機構404およびZ軸駆動機構405の駆動制御により、X軸、Y軸およびZ軸の直交3軸に移動する。工具401がZ軸に沿って下降することで、ワークWと接触し、ワークWの切削加工が行われる。
【0038】
図4は、直線3軸および回転2軸の5軸の駆動により、ワークWに対して工具401を用いて加工を行う一例を示している。工作機械104は5軸加工以外の駆動軸による加工を行ってもよい。例えば、工作機械104は、直線3軸の駆動により、工具401を用いてワークWに対して切削加工を行ってもよい。
【0039】
カメラ407は、工具401(特に、ワークWを切削加工する加工部位)を撮影する。撮影した画像は、
図3の画像取得部308に出力される。当該工具401の画像から、工具401の工具径が取得される。
【0040】
図5は、工具テーブルの一例を示す図である。工具テーブルは、工具ID、工具情報、工具径、メーカ、回転数、送り速度、切り込み量、切削速度、前々回の摩耗量および前回の摩耗量の項目を含む。工具テーブルは他の項目を含んでいてもよい。また、工具テーブルは記憶部203に記憶されている。工具テーブルは、工作機械104に新たな工具401が導入された際、或いはワークWに対して加工が行われた際に更新される。工具テーブルの更新の詳細については、
図9を用いて後述する。
【0041】
工具IDは、工作機械104の工具種別を識別するIDである。工具情報は、工具IDにより識別される工具種別を示す情報である。工具IDと工具情報とは一体化された情報であってもよい。工具径は、工具の径を示す情報である。メーカは、工具を製造したメーカを表す情報である。
【0042】
工具IDが「001」および「002」の工具は、両者ともスクエアエンドミルを表す。一方、工具ID「001」のスクエアエンドミルと工具ID「002」のスクエアエンドミルとはメーカが異なる。同じ工具種別の工具であっても、メーカによって、工具径等が異なる場合がある。従って、同じ工具種別の工具に対して、工具IDが「001」および「002」が割り当てられる。
【0043】
回転数Nは、工具の回転数を表す情報である。回転数Nは、以下の式1により求められる。
「回転数N=(1000×切削速度VC)/(3.14×工具径DC)」・・・(式1)
【0044】
切削速度VCを示す切削速度情報および工具径DCを示す工具径情報は、上述したように、例えば、工作機械制御装置103から取得される。回転数算出部212は、取得した切削速度VCおよび工具径DCの情報を上記式1に当て嵌めて、回転数Nを算出する。
【0045】
送り速度VFは、工具の送り速度を表す情報である。送り速度VFは、以下の式2により求められる。
「送り速度VF=一刃あたりの送り量FZ×回転数N×工具歯数ZN」・・・(式2)
【0046】
上記式2のうち、一刃あたりの送り量(送り量)FZは、例えば、以下の式3により求められる。以下の式3のうちaおよびbは予め定められた値であり、例えば、記憶部203に記憶されている。aおよびbは、例えば、工具型式および工具径ごとに職人が経験等に基づいて入力した値を線形回帰分析して求められたものであってもよい。
「一刃あたりの送り量FZ=a*Dc+b」・・・(式3)
【0047】
また、上記式2のうち、工具歯数ZNは、例えば、工具径DCの半分の値として取得される。送り速度算出部213は、上記式3を用いて送り量FZを算出する。上記式1により、回転数Nが得られる。送り速度算出部213は、工具径DCの半分の値を工具歯数ZNとして、送り量FZ、回転数Nおよび工具歯数ZNを上記式3に当て嵌めて、送り速度VFを算出する。
【0048】
切り込み量Fは、工具のZ軸切り込み量を表す情報である。切り込み量Fは、以下の式4により求められる。
「切り込み量F=工具径DC」・・・(式4)
【0049】
切り込み量算出部214は、取得された工具径DCの情報を上記式4に当て嵌めて、切り込み量Fを算出する。以上のようにして得られた工具についての工具径、メーカ、回転数、送り速度、切り込み量および切削速度の各情報は、例えば、工作機械104に新たに工具が導入された際に、新たな工具IDに対応付けられて工具テーブルに記憶される。詳細は後述する。
【0050】
次に、摩耗量について説明する。工具401は、ワークWを加工するごとに、摩耗していく。前々回の摩耗量は、ワークWに対して行った前々回の加工によって生じた工具401の摩耗量を表す。前回の摩耗量は、ワークWに対して行った前回の加工によって生じた工具401の摩耗量を表す。
【0051】
摩耗量算出部215は、工具401の工具径の経時的変化に基づき、工具401の工具径の摩耗量を算出する。
図4の例に示されるように、カメラ407は、工具401のうちワークWを加工する加工部位を撮影する。画像取得部308は、工具401の画像をカメラ407から取得する。工作機械制御装置103は、ワークWに対する加工が行われるごとに、取得した工具401の画像をサーバ101に送信する。
【0052】
摩耗量算出部215は、取得された工具401の画像を画像解析し、工具401の工具径の値DC(i-1)を算出し、算出された工具径の値DC(i-1)を、記憶部203に記憶する。工作機械104が工具401を用いてワークWを加工すると、工作機械制御装置103は、加工後の工具401の画像をサーバ101に送信する。これにより、サーバ101は、加工後の工具401の画像を取得する。
【0053】
摩耗量算出部215は、取得された加工後の工具401の画像を画像解析し、加工後の工具401の工具径の値DC(i-2)を算出し、算出された工具径の値DC(i-2)を記憶部203に記憶する。摩耗量算出部215は、記憶部203に記憶されていた加工前の工具径の値DC(i-1)と算出された加工後の工具径の値DC(i-2)を用いて、以下の式5により、摩耗量を算出する。
「摩耗量Wdia=DC(i-1)―DC(i-2)」・・・(式5)
【0054】
摩耗量算出部215は、前回にワークWの加工を行った際に算出した摩耗量Wdia2(Wdia2A、2B、2C・・・)を工具テーブルの前回の摩耗量の項目に記憶する。この場合、前回の摩耗量Wdia2は、前回にワークWの加工を行った際の加工前後の工具径DCを上記式5に当て嵌めることで得ることができる。
【0055】
前回の摩耗量が工具テーブルに記憶された後に、新たにワークWの加工が行われたとする。この場合、サーバ101は新たな加工後の工具401の画像を取得する。そして、摩耗量算出部215は、工具テーブルのうち、工具IDに対応する前回の摩耗量の項目に記憶されていたWdia2をWdia1として前々回の摩耗量の項目に記憶する。
【0056】
摩耗量算出部215は、新たにワークWの加工を行った際の加工前後の工具径DCを上記式5に当て嵌めて摩耗量Wdia2を算出する。摩耗量算出部215は、算出された摩耗量Wdia2を工具テーブルの工具IDに対応する前回の摩耗量の項目に記憶する。以上のように、ワークWの加工が行われるごとに、工具テーブルの前々回の摩耗量および前回の摩耗量が更新されていく。
【0057】
図6は、物性値テーブルの一例を示す図である。物性値テーブルは、材質ID、工具ID、コンプライアンス値、主軸負荷率、工具硬度、工具靭性、ワーク硬度、ワーク靭性、ワーク温度およびクーラント温度の項目を含む。物性値テーブルのうち、コンプライアンス値、主軸負荷率、工具硬度、工具靭性、ワーク硬度、ワーク靭性、ワーク温度およびクーラント温度は物性値に対応する。物性値テーブルは他の項目を含んでいてもよい。また、物性値テーブルは記憶部203に記憶されている。物性値テーブルの更新の詳細は、
図12を用いて後述する。
【0058】
材質IDは、ワークWの材質を特定する情報である。材質ID「001」はワークWの材質がアルミであることを表す。材質ID「002」はワークWの材質が銅であることを表す。材質ID「003」はワークWの材質がステンレスであることを表す。物性値テーブルにおいて、
図5の工具テーブルのように、材質IDと材質を表す材質情報とは別の項目として設けられてもよい。
【0059】
工具IDは、工具テーブルの工具IDに対応する。コンプライアンス値、主軸負荷率、工具硬度、工具靭性、ワーク硬度、ワーク靭性、ワーク温度およびクーラント温度は、ワークWに対して行われた過去の加工に関する物性値を示す。物性値テーブルにおいて、各物性値を示す情報は、ワークWの材質を示す材質IDおよび工具の種別を示す工具IDと対応付けられて記憶されている。
【0060】
各物性値の項目は、それぞれ前回および前々回の項目を含む。前回の項目には、ワークWに対して行った前回の加工に関する物性値が記憶される。前々回の項目には、ワークWに対して行った前々回の加工に関する物性値が記憶される。
【0061】
各物性値について説明する。コンプライアンス値は、工作機械104の機械的コンプライアンス値を示す第1情報である。工作機械104の機械的コンプライアンス値Cpは、以下の式6により得ることができる。式6において、xは変位量を表し、fは加えた力を表す。
「Cp=x/f」・・・(式6)
【0062】
変位量xは、工具401の主軸がワークWに接触したときの座標位置と指定の座標位置との間の差分から得られる。上述したように、工作機械制御装置103のマシン情報取得部307は、工作機械104に設けられるエンコーダから工具401の座標位置を取得する。
【0063】
工作機械制御装置103は、工作機械104をCNCデータに基づき制御する。当該CNCデータには、工具401が位置する指定の座標位置が含まれる。工作機械制御装置103の制御部301は、エンコーダから取得された工具401の座標位置とCNCデータに含まれる指定の座標位置との差分を変位量xとして算出する。変位量xは、工具401の指定の座標位置から工具401の位置のずれ量でもある。
【0064】
加えた力fは、工具401の主軸がワークWに接触したときの主軸電流計に基づいて算出できる。上述したように、工作機械制御装置103のマシン情報取得部307は、工作機械104に設けられる主軸電流計から主軸電流値を取得する。また、上記のCNCデータには、主軸の定格電流値が含まれる。
【0065】
工作機械制御装置103の制御部301は、主軸電流計から取得された主軸電流値を定格電流値で除算することにより、加えた力fを算出する。工作機械制御装置103の制御部301は、以上の変位量xおよび加えた力fを式6に当て嵌めることで、コンプライアンス値Cpを算出する。工作機械制御装置103は、算出したコンプライアンス値Cpを、サーバ101に送信する。これにより、サーバ101の取得部211は、コンプライアンス値Cpを取得する。
【0066】
コンプライアンス値Cpの算出は、サーバ101が行ってもよい。この場合、サーバ101の取得部211は、エンコーダから取得した工具401の座標位置、主軸電流値およびCNCデータを工作機械制御装置103から取得する。そして、サーバ101の制御部201は、上述した変位量xおよび加えた力fを式6に当て嵌めて、コンプライアンス値Cpを算出する。
【0067】
主軸負荷率は、工作機械104の主軸に対する負荷率を示す第2情報である。工作機械104の主軸負荷率LMは、上述した主軸電流計から取得された主軸電流値を定格電流値で除算することにより、得ることができる。この場合、工作機械104の主軸負荷率LMは、上述した加えた力fと同じ値になる。主軸負荷率LMの算出は、サーバ101が行ってもよい。この場合、サーバ101の取得部211は、主軸電流値およびCNCデータを工作機械制御装置103から取得する。
【0068】
工具硬度は、工具401の硬度を示す第3情報である。また、工具靭性は、工具401の靭性を示す第4情報である。工具硬度THの情報および工具靭性TTの情報は、例えば、工具のカタログデータに含まれる。当該カタログデータは、例えば、工具を製造する企業のサーバに保存されていてもよい。この場合、サーバ101は当該企業のサーバから、工具硬度THおよび工具靭性TTを含むカタログデータを取得する。
【0069】
ワーク硬度は、ワークWの硬度を示す第5情報である。上述したように、工作機械104には、ワークWの硬度を計測する硬度計が設けられている。マシン情報取得部307は、当該硬度計からワークの硬度を示すワーク硬度情報を取得する。工作機械制御装置103は、取得したワーク硬度情報をサーバ101に送信する。これにより、サーバ101の取得部211は、ワークWの硬度を示すワーク硬度情報を取得する。
【0070】
ワーク靭性はワークWの靭性を示す第6情報である。ワーク靭性の情報は、例えば、サーバ101が発注元コンピュータ102から取得する図面データに付帯する付帯情報に含まれている。付帯情報は、図面データのメタデータに含まれていてもよいし、図面データのファイル名に含まれていてもよい。
【0071】
サーバ101の取得部211は、上記の図面データの付帯情報からワークWのワーク靭性の情報を取得する。上記の図面データの付帯情報にワーク硬度情報が含まれている場合、取得部211は、図面データの付帯情報からワーク硬度情報を取得してもよい。
【0072】
ワーク温度は、ワークWの温度を示す第7情報である。上述したように、工作機械104には、ワークの温度を計測する温度計が設けられている。マシン情報取得部307は、当該温度計からワークの温度を示すワーク温度情報を取得する。工作機械制御装置103は、取得したワーク温度情報をサーバ101に送信する。これにより、サーバ101の取得部211は、ワーク温度情報を取得する。
【0073】
クーラント温度は、工作機械104のクーラント液の温度を示す第8情報である。上述したように、工作機械104には、クーラント液の温度を示す温度計が設けられている。マシン情報取得部307は、当該温度計からクーラント液の温度を示すクーラント温度情報を取得する。工作機械制御装置103は、取得したクーラント温度情報をサーバ101に送信する。これにより、サーバ101の取得部211は、クーラント温度情報を取得する。
【0074】
工作機械制御装置103は、ワークWの加工を行うごとに、上述した各物性値の情報をサーバ101に送信する。サーバ101の制御部201は、ワークWの加工が行われるごとに、受信した各物性値の情報を物性値テーブルに記憶していく。
【0075】
各物性値の情報は、工作機械104がワークWの加工を行う際の情報である。ワークWの加工を行った後には各物性値の情報を不要になる。このため、従来の工作機械制御装置103は、各物性値の情報を保存或いは利用していなかった。
【0076】
本実施形態では、サーバ101は、工作機械制御装置103から、ワークWの加工が行われるごとに、各物性値の情報を取得し、物性値テーブルに記憶する。
図6の例に示されるように、制御部201は、前々回に行われた加工の際の物性値情報および前回に行われた加工の際の物性値情報を物性値テーブルに記憶する。
【0077】
そして、補正部217は、前々回に行われた加工の際の物性値情報および前回に行われた加工の際の物性値情報を用いて、工具401の回転数を補正する。また、補正部217は、上記の前々回の物性値情報および前回の物性値情報を用いて、送り速度および切り込み量を補正する。
【0078】
本実施形態では、補正値算出部216は、前々回の加工に関する物性値情報および前回の加工に関する物性値情報を用いて、工具401の回転数の補正値を算出する。そして、補正部217は、算出された補正値で工具401の回転数を補正する。これにより、現況の加工に関する物性値に基づいて、適正な工具401の回転数を設定できる。
【0079】
また、本実施形態では、補正値算出部216は、前々回の加工に関する物性値情報および前回の加工に関する物性値情報を用いて工具401の回転数の補正を行うが、前々回よりも前の加工に関する物性値情報を使用しない。
【0080】
前々回よりも前の加工に関する物性値情報は、現況の加工に関する物性値との相関性が薄くなる。このため、今回の加工から多くの回数を遡ったときの加工に関する物性値情報を用いて上記の補正を行うと、現況の物性値を反映できなくなる。その結果、工具401の回転数の補正の精度が低下する。
【0081】
そこで、本実施形態では、前々回の加工に関する物性値情報および前回の加工に関する物性値情報が用いられる。このため、制御部201は、前々回の加工より前の加工の物性値情報を工具テーブルに記憶しない。記憶部203には、前々回よりも前の加工に関する物性値情報を記憶する必要がないため、記憶部203に記憶されるデータ量の低減を図ることもできる。
【0082】
図7は、図面データの付帯情報の一例を示す図である。図面データは、上述したように、ワークの形状を表すデータである。図面データの付帯情報は、例えば、ファイル名である。図面データのファイル名には、ファイル名の命名規則が定められている。
【0083】
図7のファイル名「XXX-SUS1000.STL」のうち「SUS」は、図面データが示すワークWの材質がステンレスであることを示す。例えば、図面データのファイル名のうち「SUS」に対応する部分が「AL」である場合、図面データが示すワークWの材質はアルミニウムであることを示す。制御部201は、当該図面データのファイル名に基づいて、図面データが表すワークの材質を認識してもよい。
【0084】
次に、本実施形態の工具データに関する処理の流れの一例について説明する。
図8は、工具データに関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。例えば、工作機械104に新たな工具401が導入されたとする。サーバ101の取得部211は、工具401の工具径初期値を取得する(ステップS101)。
【0085】
例えば、工作機械104に新たな工具が導入されたとする。作業者は、導入した新たな工具に関する情報を工作機械制御装置103に入力する。当該新たな工具に関する情報には、新たな工具の種別を示す工具種別情報、新たな工具の工具径を示す工具径情報(工具径初期値)および新たな工具の切削速度を示す切削速度情報が含まれる。上記の新たな工具に関する情報が工作機械制御装置103に入力されると、工作機械制御装置103は新たな工具に関する情報をサーバ101に送信する。サーバ101が受信した新たな工具に関する情報は工具テーブルに記憶される。新たな工具種別情報は工具IDとして、新たな工具径情報および新たな切削速度情報に対応付けられて工具テーブルに記憶される。取得部211は、新たな工具の工具種別情報、工具径情報および切削速度情報を工具テーブルから取得する。
【0086】
また、工作機械制御装置103は、工作機械401に新たな工具が導入されたことを認識した場合、当該新たな工具を製造した企業のコンピュータに新たな工具に関する情報を要求してもよい。この場合、工作機械制御装置103は、要求に応じて取得された新たな工具に関する情報をサーバ101に送信してもよい。或いは、サーバ101は、工作機械104に新たな工具が導入されたことを検出した場合、新たな工具を製造した企業のコンピュータから、新たな工具に関する情報を直接的に取得してもよい。サーバ101が取得した新たな工具に関する情報は工具テーブルに記憶される。新たな工具種別情報は工具IDとして、新たな工具径情報および新たな切削速度情報に対応付けられて工具テーブルに記憶される。取得部211は、新たな工具の工具種別情報、工具径情報および切削速度情報を工具テーブルから取得してもよい。また、取得部211は、複数の工具に関する情報を記憶する外部サーバから新たな工具に関する情報を取得してもよい。取得部211は、新たな工具に関する情報を他の手法を用いて取得してもよい。
【0087】
上記の新たな工具に関する情報には、新たな工具を製造したメーカを示すメーカ情報が含まれる。メーカ情報も、工具テーブルに記憶される。取得部211は、工具テーブルに記憶された情報から工具401のメーカ情報を取得する(ステップS102)。取得部211は、工具テーブルに記憶された情報から工具401の切削速度情報を取得する(ステップS103)。
【0088】
回転数算出部212は、取得された切削速度情報および工具径初期値を、上述した式1に当て嵌めて、回転数理想値を算出する(ステップS104)。送り速度算出部213は、取得された工具径初期値およびステップS104で算出された回転数初期値を、上述した式2に当て嵌めて、送り速度理想値を算出する(ステップS105)。
【0089】
切り込み量算出部214は、取得された工具径初期値を、上述した式4に当て嵌めて、切り込み量理想値を算出する(ステップS106)。制御部201は、ステップ106~S107の処理により得られた各値に新たな工具IDを対応付けて、工具IDおよび各値を工具テーブルに記憶する(ステップS107)。
【0090】
制御部201は、ワークWに対する加工が行われたかを判定する(ステップS108)。例えば、工作機械104がワークWに対する加工を行うごとに、工作機械制御装置103が加工を行ったことを示す情報(加工実施情報)をサーバ101に送信する。制御部201は、加工実施情報をサーバ101が受信した場合に、ワークWに対する加工が行われたと判定してもよい。
【0091】
ワークWに対する加工が行われていない場合、制御部201は、ステップS108でNoと判定し、処理をステップS108に戻す。この場合、制御部201は、ワークWに対する加工が行われるまで待機する。
【0092】
ワークWに対する加工が行われた場合、制御部201は、ステップS108でYesと判定し、処理をステップS109に進める。この場合、取得部211は、工具401の画像を取得する(ステップS109)。
【0093】
上述したように、工作機械104の中のカメラ407が加工後の工具401の加工部位を撮影する。工作機械制御装置103は、カメラ407が撮影した加工後の工具401の画像をサーバ101に送信する。これにより、取得部211は、工具401の画像を取得する。制御部201は、取得された工具401の画像を記憶部203に記憶する。
【0094】
摩耗量算出部215は、取得された工具401の画像を画像解析して、工具401の加工後の工具径の情報を取得する(ステップS110)。摩耗量算出部215は、ワークWに対する加工が行われるごとに、加工後の工具401の工具径の情報を記憶部203に記憶する。従って、ワークWに対する新たな加工が行われる際には、加工前の工具401の工具径の情報を記憶部203に記憶されている。
【0095】
摩耗量算出部215は、記憶部203に記憶されている加工前の工具401の工具径の情報を取得する。そして、摩耗量算出部215は、ステップS110で取得された工具径を加工後の工具径として、加工前の工具径と加工後の工具径との差分を工具401の摩耗量として算出する(ステップS111)。
【0096】
摩耗量算出部215は、算出した摩耗量の情報を工具テーブルの前回の摩耗量の項目に記憶することで、工具テーブルの摩耗量の情報を更新する(ステップS112)。工具テーブルの前回の摩耗量の項目に摩耗量の情報が記憶されている場合、摩耗量算出部215は、前回の摩耗量の項目に記憶されていた摩耗量の情報を前々回の摩耗量の項目に記憶する。
【0097】
これにより、ワークWに対する加工が行われるごとに、工具テーブルのうち工具401の過去2回分の摩耗量の情報が更新されていく。ステップS112が実行された後、制御部201は、処理をステップS108に戻す。以上のステップS108~S112の処理が繰り返し行われる。これにより、工具401を用いたワークWに対する加工が行われるごとに、工具テーブルの前々回の摩耗量の情報および前回の摩耗量の情報が更新されていく。つまり、
図8のフローチャートのステップS108~S112の処理、
図10のフローチャートの各処理は、繰り返し行われる。このため、工具テーブルは半永久的に更新されていく。
【0098】
図9は、工具テーブルの変化の一例を示す図である。例えば、工作機械104に新たな工具401が導入されたとする。上述したように、工作機械制御装置103は、新たに導入された工具401の工具情報、工具径、メーカおよび切削速度の情報をサーバ101に送信する。これにより、新たに工具401が工作機械104に導入された際に、取得部211は各情報を工作機械制御装置103から取得する。例えば、工具情報が「センタードリル」であり、工具径が「6」であり、メーカが「A社」であり、切削速度が「20」であるとする。この場合、ステップS101~S103において、取得部211は、これらの情報を取得する。
【0099】
また、ステップS104~S106の処理が行われることにより、回転数理想値、送り速度理想値および切り込み量理想値が算出される。算出された回転数理想値が「2387」であり、算出された送り速度が「383」であり、算出された切り込み量が「6」であるとする。制御部201は、新たな工具ID(
図9の例では工具ID「10」)を生成し、ステップS101~S103で取得された情報、およびステップS014~S106で算出された各値を新たな工具IDに対応付けて、工具テーブルに記憶する。これにより、
図9のテーブル例に示されるように、工具テーブルのうち、工具径、メーカ、回転数、送り速度、切り込み量および切削速度の各項目に情報が記憶されて、工具テーブルが更新される。
【0100】
工具ID「010」の工具401が初めて使用された際、摩耗量算出部215は、加工前後の工具401の画像に基づき、加工前後の工具401の工具径の差分を工具401の摩耗量として算出する。算出された摩耗量が「0.01」であるとする。摩耗量算出部215は、算出した摩耗量「0.01」を工具テーブルの前回の摩耗量の項目に記憶する。
【0101】
工具ID「010」の工具401が次に使用された際、摩耗量算出部215は、加工前後の工具401の工具径の差分を工具401の摩耗量として算出する。算出された摩耗量が「0.02」であるとする。摩耗量算出部215は、算出した摩耗量「0.02」を工具テーブルの前回の摩耗量の項目に記憶する。このとき、摩耗量算出部215は、前回の摩耗量「0.01」を工具テーブルの前々回の摩耗量の項目に記憶する。工具ID「010」の工具401が次に使用された際、摩耗量算出部215は、摩耗量「0.02」を工具テーブルの前々回の摩耗量の項目に記憶するとともに、新たに算出された摩耗量を前回の摩耗量の項目に記憶する。以降、摩耗量算出部215は、工具401を用いたワークWの加工が行われるごとに、工具テーブルの前々回の摩耗量の情報および前回の摩耗量の情報を更新していく。
【0102】
次に、本実施形態の物性値情報に関する処理の流れの一例について説明する。
図10は、物性値に関する処理の流れの一例を示すフローチャートである。制御部201は、ワークWに対する加工が行われたかを判定する(ステップS201)。ステップS201の判定は、例えば、上述した加工実施情報に基づき行われてもよい。ステップS201の判定は、上述したステップS108の判定と同様の処理であってもよいし、異なる判定処理であってもよい。
【0103】
取得部211は、今回の加工で使用する工具401の工具の工具IDを取得する(ステップS202)。工具IDは、例えば、上述した加工実施情報に含まれてもよい。この場合、取得部211は、加工実施情報から工具IDを取得する。
【0104】
取得部211は、今回の加工の対象であるワークWの材質を特定する材質IDを取得する(ステップS203)。材質IDは、例えば、上述した図面データの付帯情報に含まれる。材質IDは、図面データのファイル名の一部に含まれていてもよい。この場合、取得部211は、図面データのファイル名から材質IDを取得する。
【0105】
制御部201は、
図6の物性値テーブルを参照して、ステップS203で取得された工具IDと同じ工具IDに対応する前々回の物性値が記憶されているかを判定する(ステップS204)。本実施形態では、物性値は、コンプライアンス値、主軸負荷率、工具硬度、工具靭性、ワーク硬度、ワーク靭性、ワーク温度およびクーラント温度である。
【0106】
ステップS203で取得された工具IDと同じ工具IDに対応する前々回の物性値が物性値テーブルに記憶されている場合、制御部201は、処理をステップS204でYesと判定し、処理をステップS205に進める。一方、上記の前々回の物性値が物性値テーブルに記憶されていない場合、制御部201は、処理をステップS204でNoと判定し、処理をステップS206に進める。
【0107】
制御部201は、
図6の物性値テーブルを参照して、ステップS204で取得された材質IDと同じ材質IDに対応する前回の物性値が記憶されているかを判定する(ステップS205)。
【0108】
ステップS204で取得された材質IDと同じ材質IDに対応する前回の物性値が物性値テーブルに記憶されている場合、制御部201は、ステップS205でYesと判定し、処理をステップS208に進める。一方、上記の前回の物性値が物性値テーブルに記憶されていない場合、制御部201は、処理をステップS205でNoと判定し、処理をステップS206に進める。
【0109】
ステップS204でNoと判定された場合、またはステップS205でNoと判定された場合、取得された工具IDおよび材質IDに対応する物性値情報の蓄積量が少ない。この場合、工具IDおよび材質IDに対応する過去2回分の物性値情報が蓄積されるまで、物性値を物性値テーブルに記憶する処理が行われる。
【0110】
取得部211は、工具テーブルを参照して、ステップS202で取得された工具IDに対応する回転数理想値、送り速度理想値および切り込み量理想値を取得する。そして、制御部201は、ネットワークNWを介して、取得された各理想値を工作機械制御装置103に出力する(ステップS206)。各理想値は補正されていない値である。
【0111】
工作機械制御装置103は、サーバ101から受信した各理想値に基づき、ワークWの加工を行うように工作機械104を制御する。工作機械104は、工作機械制御装置103からの制御に基づき、工具401を用いてワークWの加工を行う。
【0112】
制御部201は、物性値記憶処理を行う(ステップS207)。上記のワークWの加工が行われた後、工作機械制御装置103は、物性値記憶処理で使用される各種の情報をサーバ101に送信する。制御部201は、サーバ101が当該各種の情報を受信した後に、物性値を物性値テーブルに記憶する物性値記憶処理を行う。
【0113】
物性値記憶処理について説明する。物性値記憶処理を実行した際の物性値テーブルの変化については後述する。
図11は、物性値記憶処理の処理の流れの一例を示すフローチャートである。制御部201は、変位量および加えた力に基づき、コンプライアンス値を算出する(ステップS301)。
【0114】
制御部201は、ワークWに対する加工が行われた際の工具401の変位量および工具401の主軸がワークWに接触したときに加えた力を、上述した式6に当て嵌めて、コンプライアンス値を算出する。変位量は、例えば、工作機械104のエンコーダに基づき算出される。また、加えた力は、例えば、工作機械104の主軸電流計の電流値に基づき算出される。
【0115】
制御部201は、電流値に基づき、主軸負荷率を算出する(ステップS302)。制御部201は、ワークWに対する加工が行われた際の工作機械104の主軸電流計から取得された主軸電流値を定格電流値で除算することにより、主軸負荷率を算出できる。
【0116】
制御部201は、カタログデータに基づき、工具硬度を取得する(ステップS303)。制御部201は、カタログデータに基づき、工具靭性を取得する(ステップS304)。
【0117】
制御部201は、ワーク硬度値に基づき、ワーク硬度を算出する(ステップS305)。ワーク硬度値は、例えば、工作機械104に設けられるワークWの硬度を計測する硬度計から取得される。
【0118】
制御部201は、材料特性データに基づき、ワーク靭性を取得する(ステップS306)。ワーク靭性は、例えば、サーバ101が発注元コンピュータ102から取得する図面データに付帯する付帯情報から取得される。
【0119】
制御部201は、ワークの計測温度に基づき、ワーク温度を取得する(ステップS307)。ワーク温度は、例えば、工作機械104に設けられるワークの温度を計測する温度計から取得される。
【0120】
制御部201は、クーラント液の計測温度に基づき、クーラント温度を取得する(ステップS308)。クーラント温度は、例えば、工作機械104に設けられるクーラント液の温度を示す温度計から取得される。
【0121】
以上のステップS301~S308により、制御部201は、工作機械104がワークWに加工を行った際の各物性値を取得する。制御部201は、ステップS202で取得された工具IDおよびステップS203で取得された材質IDに対応付けて、取得した各物性値を物性値テーブルに記憶する(ステップS309)。以上により、物性値記憶処理は終了する。
【0122】
図12は、物性値テーブルの変化の一例を示す図である。
図12は、物性値としてコンプライアンス値を示しているが、他の物性値についても同様である。例えば、工作機械104が、材質ID「003」のワークWに対して、工具ID「001」の工具401を用いて加工を行ったとする。
【0123】
また、材質ID「003」のワークWに対して、工具ID「001」の工具401を用いて行った加工が2回目であったとする。1回目の加工におけるコンプライアンス値は「521」であり、当該コンプライアンス値が物性値テーブルに記憶されている。
【0124】
制御部201は、ステップS301~S308を実行することにより、今回の材質ID「003」のワークWに対する工具ID「001」の工具401を用いた加工の際の各物性値を取得する。取得した各物性値のうちコンプライアンス値が「221」であったとする。
【0125】
制御部201は、コンプライアンス値の前回の項目に記憶されていた値「521」を同じコンプライアンス値のうち前々回の項目に記憶する。これとともに、制御部201は、取得されたコンプライアンス値「221」を前回の項目に記憶する。これにより、材質ID「003」および工具ID「001」に対応する前々回の物性値および前回の物性値が物性値テーブルに記憶される。
【0126】
次に、ステップS207以降の処理について説明する。
図10に示されるように、制御部201は、ステップS207の物性値記憶処理が終了した後、処理をステップS201に戻す。上述したように、制御部201は、ステップS205でYesと判定した場合、処理をステップS208に進める。制御部201は、補正処理を行う(ステップS208)。
【0127】
図13は、補正処理の流れの一例を示すフローチャートである。取得部211は、ステップS202で取得された工具IDおよびステップS203で取得された材質IDに対応する前々回および前回の各物性値を物性値テーブルから取得する(ステップS401)。本実施形態で取得される各物性値は、コンプライアンス値、主軸負荷率、工具硬度、工具靭性、ワーク硬度、ワーク靭性、ワーク温度およびクーラント温度の数値である。
【0128】
補正値算出部216は、取得された前回の各物性値をそれぞれ対応する前々回の各物性値で除算して、各物性値のそれぞれの除算値を得る(ステップS402)。
【0129】
補正値算出部216は、各除算値にロジスティック関数を適用した値(影響度指数)を算出する(ステップS403)。このとき、補正値算出部216は、以下の式7を用いて、各除算値にロジスティック関数を適用する。以下の式7において、X1は影響度指数を表し、Y1は除算値を表す。
「X1=1/(1+exp(―Y1))」・・・(式7)
【0130】
影響度指数X1は、前々回の加工に関する物性値および前回の加工に関する物性値が、回転数、送り速度および切り込み量に与える実際の影響度を表す。ロジスティック関数が適用されることで、影響度指数X1は、0から1の範囲内の数値に収束する。影響度指数X1は、回転数、送り速度および切り込み量に影響を与える物性値の尤度を表す。
【0131】
補正値算出部216は、各物性値のそれぞれについて、影響度指数X1を算出する。影響度指数X1が1に近いほど、回転数、送り速度および切り込み量に与える実際の物性値の影響度は大きい。一方、影響度指数X1が0に近いほど、回転数、送り速度および切り込み量に与える実際の物性値の影響度は小さい。
【0132】
影響度指数X1は、各物性値のそれぞれについて算出される。補正値算出部216は、各物性値のそれぞれの影響度指数X1を加算して加算値を得る(ステップS404)。
【0133】
次に、補正値算出部216は、工具テーブルを参照して、ステップS202で取得された工具IDに対応する前々回の摩耗量および前回の摩耗量を取得する(ステップS405)。
図13のフローチャートは、
図10のステップS205でYesと判定された場合に実行される。従って、工具テーブルには上記の前々回の摩耗量および前回の摩耗量が記憶されている。
【0134】
補正値算出部216は、前々回の摩耗量が前回の摩耗量より大きいかを判定する(ステップS406)。前々回の摩耗量が前回の摩耗量より大きい場合、補正値算出部216は、ステップS406でYesと判定し、処理をステップS407に進める。この場合、補正値算出部216は、第1補正係数を正の値として設定する(ステップS407)。
【0135】
前々回の摩耗量が前回の摩耗量以下である場合、補正値算出部216は、ステップS406でNoと判定し、処理をステップS408に進める。この場合、補正値算出部216は、第1補正係数を負の値として設定する(ステップS408)。
【0136】
第1補正係数について説明する。第1補正係数は回転数を補正する際に用いられる係数であり、予め記憶部203に記憶されている。例えば、第1補正係数は、ワークWの材質に応じた値として設定されてもよい。第1補正係数を含む各補正係数は変更可能である。
【0137】
第1補正係数が正の値である場合、回転数理想値に正の値の回転数補正値が加算される。前々回の摩耗量が前回の摩耗量より大きい場合、前回の加工における工具401の回転数は、前々回の加工における工具401の回転数よりも小さくなっている。このため、工具401の回転数を大きくする補正を行う必要がある。そこで、補正値算出部216は、第1補正係数を正の値として設定する。これにより、今回の加工における工具401の回転数が大きくなる。
【0138】
第1補正係数が負の値である場合、回転数理想値から回転数補正値が減算される。前々回の摩耗量が前回の摩耗量以下である場合、前回の加工における工具401の回転数は、前々回の加工における工具401の回転数よりも大きくなっている。このため、工具401の回転数を小さくする補正を行う必要がある。そこで、補正値算出部216は、第1補正係数を負の値として設定する。これにより、今回の加工における工具401の回転数が小さくなる
【0139】
補正値算出部216は、ステップS404で算出された各影響度指数の加算値に第1補正係数を乗算して、回転数補正値を算出する(ステップS409)。第1補正係数が正の値である場合、回転数補正値は正の値となる。第1補正係数が負の値である場合、回転数補正値は負の値となる。
【0140】
補正値算出部216は、工具テーブルを参照して、ステップS202で取得された工具IDに対応する回転数理想値を取得する(ステップS410)。補正部217は、回転数理想値に回転数補正値を加算することで、回転数の補正を行う(ステップS411)。補正された回転数は、回転数制御値である。
【0141】
図14は、工具テーブルを用いた回転数制御値の算出の一例を示す図である。例えば、工作機械104が工具ID「001」の工具401を用いて、材質ID「001」のワークWを加工したとする。この場合、制御部201は、ステップS202で取得された工具ID「001」およびステップS203で取得された材質ID「001」に対応する各物性値を物性値テーブルから取得する。
【0142】
ステップS402で、補正値算出部216は、取得された前回の各物性値をそれぞれ対応する前々回の各物性値で除算する。
図14の例では、制御部201は、工具ID「001」および材質ID「001」に対応する前々回のコンプライアンス値「586」および前回のコンプライアンス値「278」を取得する。そして、補正値算出部216は、前回のコンプライアンス値「278」を前々回コンプライアンス値「586」で除算した値(除算値)を算出する。コンプライアンス値についての除算値は「0.4744」である。
【0143】
主軸負荷率および工具硬度についても同様の算出が行われる。主軸負荷率についての除算値は「0.846」であり、工具硬度についての除算値は「1.01」である。他の物性値についても同様に除算値の算出が行われる。以上により、各物性値のそれぞれの除算値が得られる。
【0144】
ステップS403で、補正値算出部216は、各除算値にロジスティック関数を適用して各影響度指数を算出する。
図14の例では、コンプライアンス値の影響度指数は「0.6154」であり、主軸負荷率の影響度指数は「0.6997」であり、工具硬度の影響度指数は「0.733」である。他の影響度指数も同様に算出される。全ての影響度指数は0から1の範囲内の数値に収束する。
【0145】
ステップS404で、補正値算出部216は、各影響度指数を加算して加算値を得る。
図14の例では、加算値は「34.372」である。
【0146】
補正値算出部216は、工具テーブルを参照して、工具ID「001」に対応する前々回の摩耗量および前回の摩耗量を取得する。取得された前々回の摩耗量が前回の摩耗量以下であったとする。この場合、補正値算出部216は、ステップS408の処理を実行するため、第1補正係数を負の値として設定する。記憶部203に記憶されている第1補正係数の値が「14.8」であるとする。この場合、第1補正係数は「―14.8」になる。
【0147】
ステップS409で、補正値算出部216は、上記の加算値「34.372」に第1補正係数「―14.8」を乗算して、回転数補正値「―508.71」を算出する。このとき、補正値算出部216は、回転数補正値の小数点以下を切り捨て、切り上げまたは四捨五入する。
【0148】
ステップS410で、補正値算出部216は、工具テーブルを参照して、工具IDに対応する回転数理想値を取得する。当該回転数理想値は「17650」であるとする。ステップS411で、補正値算出部216は、回転数理想値「17650」に回転数補正値「―508」を加算して、回転数制御値「17142」を算出する。
【0149】
工具401やワークW等の切削加工に関する物性値は経時的に変化していく。このため、初期段階で設定される工具401の回転数理想値と、実際の物性値に応じた工具401の回転数との間にずれが生じてくる。
【0150】
本実施形態では、補正値算出部216は、コンプライアンス値等の各物性値について、前々回の加工の際の物性値および前回の加工の際の物性値を反映した回転数補正値を算出する。補正値算出部216は、回転数理想値に対して、当該回転数補正値を用いて補正する。これにより、工具401の回転数を実際の物性値に応じた適正な回転数に補正できるため、物性値の経時的変化を踏まえた工具401の回転数を設定できる。
【0151】
図13のステップS411の処理が終了すると、処理は、「A」から
図15のステップS412に進む。
図15は、
図13から続くフローチャートである。補正値算出部216は、前々回の摩耗量が前回の摩耗量より大きいかを判定する(ステップS412)。前々回の摩耗量が前回の摩耗量より大きい場合、補正値算出部216は、ステップS412でYesと判定し、処理をステップS413に進める。この場合、補正値算出部216は、第2補正係数を負の値として設定する(ステップS413)。
【0152】
前々回の摩耗量が前回の摩耗量以下である場合、補正値算出部216は、ステップS412でNoと判定し、処理をステップS414に進める。この場合、補正値算出部216は、第2補正係数を正の値として設定する(ステップS414)。
【0153】
第2補正係数は、送り速度を補正する際に用いられる係数であり、予め記憶部203に記憶されている。例えば、第2補正係数は、ワークWの材質に応じた値として設定されてもよい。第2補正係数は、第1補正係数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2補正係数は変更可能である。
【0154】
第2補正係数が正の値である場合、送り速度理想値に送り速度補正値が加算される。上述したように、前々回の摩耗量が前回の摩耗量よりも大きい場合、補正値算出部216は、回転数についての第1補正係数を正の値として設定する。つまり、回転数を大きく補正が行われる。回転数が上がると、ワークWが過剰に切削されるおそれがある。このため、本実施形態では、回転数を大きくする補正が行われる場合、補正値算出部216は、送り速度を遅くする補正を行う。このため、補正値算出部216は、第2補正係数を負の値として設定する。
【0155】
一方、前々回の摩耗量が前回の摩耗量以下である場合、補正値算出部216は、上述したように、回転数についての第1補正係数を負の値として設定する。この場合、回転数を小さくする補正が行われるため、送り速度を速くすることが好ましい。そこで、補正値算出部216は、今回の加工における工具401の送り速度を速くするために、第2補正係数を正の値として設定する。
【0156】
補正値算出部216は、ステップS404で算出された各影響度指数の加算値に第2補正係数を乗算して、送り速度補正値を算出する(ステップS415)。補正値算出部216は、工具テーブルを参照して、ステップS202で取得された工具IDに対応する送り速度理想値を取得する(ステップS416)。
【0157】
補正部217は、送り速度理想値に送り速度補正値を加算することで、送り速度の補正を行う(ステップS417)。補正された送り速度は、送り速度制御値である。送り速度についての第2補正係数の正負の設定は、回転数についての第1補正係数の正負の設定とは逆の関係になる。その他の送り速度補正値の算出方法は、回転数補正値の算出方法と同様である。
【0158】
次に、切り込み量の補正について説明する。補正値算出部216は、前々回の摩耗量が前回の摩耗量より大きいかを判定する(ステップS418)。前々回の摩耗量が前回の摩耗量より大きい場合、補正値算出部216は、ステップS418でYesと判定し、処理をステップS419に進める。この場合、補正値算出部216は、第3補正係数を負の値として設定する(ステップS419)。
【0159】
前々回の摩耗量が前回の摩耗量以下である場合、補正値算出部216は、ステップS418でNoと判定し、処理をステップS420に進める。この場合、補正値算出部216は、第3補正係数を正の値として設定する(ステップS420)。
【0160】
第3補正係数は、切り込み量を補正する際に用いられる係数であり、予め記憶部203に記憶されている。例えば、第3補正係数は、ワークWの材質に応じた値として設定されてもよい。第3補正係数は、第1補正係数および第2補正係数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第3補正係数は変更可能である。
【0161】
上述したように、前々回の摩耗量が前回の摩耗量よりも大きい場合、回転数を大きくする補正がされる。回転数が大きくなると、ワークWが過剰に切削されるおそれがあるため、切り込み量を小さくする補正を行うことが好ましい。このため、補正値算出部216は、第3補正係数を負の値として設定する。
【0162】
一方、前々回の摩耗量が前回の摩耗量以下である場合、回転数を小さくする補正がされるため、切り込み量を大きくする補正を行うことが好ましい。そこで、補正値算出部216は、今回の加工における工具401の切り込み量を大きくするために、第3補正係数を正の値として設定する。
【0163】
補正値算出部216は、ステップS404で算出された各影響度指数の加算値に第3補正係数を乗算して、切り込み量補正値を算出する(ステップS421)。補正値算出部216は、工具テーブルを参照して、ステップS202で取得された工具IDに対応する切り込み量理想値を取得する(ステップS422)。
【0164】
補正部217は、切り込み量理想値に切り込み量補正値を加算することで、切り込み量の補正を行う(ステップS423)。補正された切り込み量は、切り込み量制御値である。切り込み量についての第3補正係数の正負の設定は、送り速度についての第2補正係数と同様、回転数についての第1補正係数の正負の設定とは逆の関係になる。その他の切り込み量補正値の算出方法は、回転数補正値の算出方法と同様である。
【0165】
上述した回転数補正値と同様、本実施形態では、コンプライアンス値等の各物性値について、前々回の加工の際の物性値と前回の加工の際の物性値とを反映した送り速度補正値および切り込み量補正値が算出される。補正値算出部216は、送り速度理想値および切り込み量理想値に対して、送り速度補正値および切り込み量補正値を用いて補正する。これにより、工具401の送り速度および切り込み量を実際の物性値に応じた適正な送り速度および切り込み量に補正できる。その結果、物性値の経時的変化を踏まえた工具401の送り速度および切り込み量を設定できる。
【0166】
以上により、
図10におけるステップS208の補正処理が終了する。補正処理が終了すると、補正された回転数、送り速度および切り込み量の制御値が得られる。制御部201は、通信部202を介して、補正された各制御値を工作機械制御装置103に出力する(ステップS209)。工作機械制御装置103は、受信した各制御値に基づき、工具401の回転数、送り速度および切り込み量を制御する。これにより、実際の物性値の変化を踏まえた条件で、ワークWの加工を行うことができる。
【0167】
その後、制御部201は、物性値記憶処理を行う(ステップS210)。ステップS210の物性値記憶処理は、ステップS207の物性値記憶処理と同様であるため、説明を省略する。ステップS207またはステップS210の物性値記憶処理が終了すると、制御部201は、処理をステップS201に戻す。
【0168】
制御部201は、工作機械104がワークWに対して加工を行うごとに、上述した各処理を行う。つまり、
図8のフローチャートのステップS108~S112の処理、
図10のフローチャートの各処理は、繰り返し行われる。換言すれば、工具テーブルおよび物性値テーブルは半永久的に更新されて、補正処理も半永久的に行われる。
【0169】
上述したように、本実施形態では、コンプライアンス値等の各物性値について、前々回の加工の際の物性値と前回の加工の際の物性値とを反映した回転数補正値が算出される。そして、回転数理想値に対して回転数補正値を用いて補正がされて、補正された制御値が工作機械制御装置103に出力される。かかる処理が繰り返し行われるため、工具401の回転数、送り速度および切り込み量を、物性値の変化を踏まえた適正な値となるように制御し続けることができる。
【0170】
なお、上述した各処理は、途中で終了してもよい。例えば、工作機械制御装置103や工作機械104、工具401等に何らかの障害が発生した場合には、制御部201は、上述した各処理を終了させてもよい。
【0171】
以上に説明したように、補正値算出部216は、物性値テーブルを参照して、新たに取得された材質IDおよび工具IDに対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を用いて、回転数補正値を算出する。これにより、前々回の加工の際の物性値と前回の加工の際の物性値とを反映した回転数補正値が算出される。そして、補正部217は、回転数理想値に対して回転数補正値を用いて補正する。従って、工具401の回転数を、物性値の変化を踏まえた適正な値となるように制御することができる。
【0172】
工具401の送り速度および切り込み量についても、同様に、物性値の変化を踏まえた適正な値となるように補正することができる。その結果、工具401の送り速度および切り込み量を物性値の変化を踏まえた適正な値となるように制御することができる。
<変形例>
【0173】
上述した実施形態では、補正部217は、回転数、送り速度および切り込み量の3つを補正しているが、回転数、送り速度および切り込み量の3つのうち何れか1つ、または2つの補正を行ってもよい。
【0174】
上述したように、物性値は、コンプライアンス値、主軸負荷率、工具硬度、工具靭性、ワーク硬度、ワーク靭性、ワーク温度およびクーラント温度の8つであるものとして説明したが、物性値はワークWの加工に関する他の物性に関する値が用いられてもよい。
【0175】
工具テーブルおよび物性値テーブルを記憶する記憶部203(記憶装置)は、サーバ101の外部に配置されてもよい。工具テーブルおよび物性値テーブルを記憶する記憶装置は、例えば、サーバ101と通信可能なデータベースサーバに記憶されてもよい。また、工具テーブルおよび物性値テーブルを記憶する記憶装置は、工作機械制御装置103の中に設けられてもよい。
【0176】
上述した例では、各物性値のそれぞれが均等な影響度を有しているが、物性値によって異なる影響度を有していてもよい。例えば、コンプライアンス値と主軸負荷率とで異なる影響度を有していてもよい。この場合、
図14のロジスティック関数が適用された値に対して、コンプライアンス値と主軸負荷率とで異なる値の重み付けがされてもよい。これにより、物性値に応じた影響度を踏まえた補正値を算出することができる。
【0177】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、各種の変形はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態および変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0178】
100 加工制御システム、101 サーバ、102 発注元コンピュータ、103 工作機械制御装置、104 工作機械、201 制御部、202 通信部、203 記憶部、204 操作部、205 表示部、211 取得部、212 回転数算出部、213 送り速度算出部、214 切り込み量算出部、215 摩耗量算出部、216 補正値算出部、217 補正部、301 制御部、302 通信部、303 記憶部、304 操作部、305 表示部、306 出力部、307 マシン情報取得部、308 画像取得部、401 工具、402 ワーク載置台、403 X軸駆動機構、404 Y軸駆動機構、405 Z軸駆動機構、406 B軸駆動機構
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して工具を用いて切削加工を行う工作機械を制御する情報処理装置であって、
前記ワークに対して行われた過去の前記切削加工に関する物性値を示す物性値情報を、前記ワークの材質を示す材質情報および前記工具の種別を示す工具種別情報と対応付けて記憶する記憶部から、前記材質情報、前記工具種別情報、前記工具の工具径を示す工具径情報および前記ワークを切削加工する際の切削速度を示す切削速度情報を取得する取得部と、
前記工具径情報および前記切削速度情報に基づき、前記工具の回転数を算出する回転数算出部と、
前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記回転数の回転数補正値を算出する補正値算出部と、
前記工具の回転数を前記回転数補正値で補正する補正部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記物性値情報は、前記工作機械の機械的コンプライアンスを示す第1情報と、前記工作機械の主軸に対する負荷率を示す第2情報と、前記工具の硬度を示す第3情報と、前記工具の靭性を示す第4情報と、前記ワークの硬度を示す第5情報と、前記ワークの靭性を示す第6情報と、前記ワークの温度を示す第7情報と、前記工作機械のクーラントを示す第8情報とのうち1つの情報または複数の情報の組み合わせである、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記工具径と前記回転数とに基づき前記工具の送り速度を算出する送り速度算出部、をさらに備え、
前記補正値算出部は、前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記送り速度の送り速度補正値を算出し、
前記補正部は、前記工具の送り速度を前記送り速度補正値で補正する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記回転数に基づき前記工具の切込み量を算出する切込み量算出部、をさらに備え、
前記補正値算出部は、前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記切込み量の切込み量補正値を算出し、
前記補正部は、前記工具の切込み量を前記切込み量補正値で補正する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記工具径の経時的変化に基づき前記工具の摩耗量を算出する摩耗量算出部、をさらに備え、
前記補正値算出部は、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量よりも大きい場合には前記回転数補正値を正の値として算出し、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量以下の場合には前記回転数補正値を負の値として算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記工具径の経時的変化に基づき前記工具の摩耗量を算出する摩耗量算出部、をさらに備え、
前記補正値算出部は、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量よりも大きい場合には前記送り速度補正値を負の値として算出し、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量以下の場合には前記送り速度補正値を正の値として算出する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記工具径の経時的変化に基づき前記工具の摩耗量を算出する摩耗量算出部、をさらに備え、
前記補正値算出部は、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量よりも大きい場合には前記切込み量補正値を負の値として算出し、前回の前記摩耗量が前々回の前記摩耗量以下の場合には前記切込み量補正値を正の値として算出する、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記新たに取得された前記材質情報と同じ材質情報が前記記憶部に記憶されていない場合には前記新たに取得された前記材質情報が前記物性値情報と対応付けて前記記憶部に記憶され、前記新たに取得された前記工具種別情報と同じ工具種別情報が前記記憶部に記憶されていない場合には前記新たに取得された前記工具種別情報が前記物性値情報と対応付けて前記記憶部に記憶される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記補正値算出部は、前記前回の前記物性値情報が示す値を前記前々回の物性値情報を示す値で除算した値にロジスティック関数を適用し、当該ロジスティック関数が適用された値を前記回転数の回転数補正値として算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
ワークに対して工具を用いて切削加工を行う工作機械を制御する加工制御方法であって、
前記ワークに対して行われた過去の前記切削加工に関する物性値を示す物性値情報を、前記ワークの材質を示す材質情報および前記工具の種別を示す工具種別情報と対応付けて記憶する記憶部から、前記材質情報、前記工具種別情報、前記工具の工具径を示す工具径情報および前記ワークを切削加工する際の切削速度を示す切削速度情報を取得し、
新たに取得された前記工具径情報および前記切削速度情報に基づき、前記工具の回転数を算出し、
前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記回転数の回転数補正値を算出し、
前記工具の回転数を前記回転数補正値で補正する、
情報処理方法。
【請求項11】
ワークに対して工具を用いて切削加工を行う工作機械を制御する情報処理装置のコンピュータに実行させるプログラムであって、前記プログラムは、前記コンピュータに、
前記ワークに対して行われた過去の前記切削加工に関する物性値を示す物性値情報を、前記ワークの材質を示す材質情報および前記工具の種別を示す工具種別情報と対応付けて記憶する記憶部から、前記材質情報、前記工具種別情報、前記工具の工具径を示す工具径情報および前記ワークを切削加工する際の切削速度を示す切削速度情報を取得させ、
新たに取得された前記工具径情報および前記切削速度情報に基づき、前記工具の回転数を算出させ、
前記記憶部を参照して、新たに取得された前記材質情報および前記工具種別情報と同じ材質情報および工具種別情報に対応する前々回の前記物性値情報および前回の物性値情報を読み出し、読み出した前記前々回の前記物性値情報および前記前回の物性値情報を用いて前記回転数の回転数補正値を算出させ、
前記工具の回転数を前記回転数補正値で補正させる、
プログラム。