(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004519
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250107BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20250107BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20250107BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B69/00 303A
B60W30/10
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104251
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】朝田 諒
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】作田 建
(72)【発明者】
【氏名】奥平 淳人
【テーマコード(参考)】
2B043
3D241
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB07
2B043BA02
2B043BA05
2B043BA09
2B043BB06
2B043BB07
2B043BB14
2B043DA01
2B043DA05
2B043DC01
2B043EA06
2B043EA26
2B043EA32
2B043EB05
2B043EB15
2B043EC12
2B043EC13
2B043ED12
3D241BA15
3D241CA20
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301FF11
5H301HH01
5H301HH02
(57)【要約】
【課題】作業車が作業走行するための走行経路を適切なものにする手段を提供する。
【解決手段】作業車1の走行を管理するシステムであって、作業車1が作業走行するための作業領域WAを取得する作業領域取得部と、停車した作業車1の位置を基準位置RPとして取得する基準位置取得部と、作業車1が作業走行するための走行経路LIを作業領域WAの内部に設定する経路設定部と、を備える。経路設定部は、基準位置RPを通る開始走行経路SR又は延長線が基準位置RPを通る開始走行経路SRを設定すると共に開始走行経路SRに平行な他走行経路OR1、OR2を設定する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車の走行を管理するシステムであって、
前記作業車が作業走行するための作業領域を取得する作業領域取得部と、
停車した前記作業車の位置を基準位置として取得する基準位置取得部と、
前記作業車が作業走行するための走行経路を前記作業領域の内部に設定する経路設定部と、を備え、
前記経路設定部は、前記基準位置を通る開始走行経路又は延長線が前記基準位置を通る開始走行経路を設定すると共に前記開始走行経路に平行な他走行経路を設定するシステム。
【請求項2】
前記基準位置取得部は、オペレータが前記作業車を手動走行させて停車させた後に、前記基準位置を取得する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記基準位置取得部は、オペレータから人為操作を受け付けたことに応じて、前記基準位置を取得する請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
畝間隔を取得する畝間隔取得部と、
前記畝間隔に基づいて前記走行経路の経路間隔を決定する経路間隔決定部と、を備え、
前記経路設定部は、前記経路間隔に基づいて前記他走行経路を設定する請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記経路設定部は、
前記基準位置の取得の前に、前記作業車が作業走行するための仮走行経路を前記作業領域の内部に設定し、
前記基準位置の取得の後に、前記基準位置を通るようにする前記仮走行経路の補正、又は延長線が前記基準位置を通るようにする前記仮走行経路の補正を実行すると共に、補正された前記仮走行経路を前記開始走行経路として設定する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記経路設定部は、前記作業領域の境界線に沿って延びるように前記開始走行経路及び前記他走行経路を設定する請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
過去に同一の圃場で作業走行した先行作業車の走行基準である先行走行基準を取得する先行走行基準取得部と、
前記先行走行基準に基づいて経路方位を決定する経路方位決定部と、を備え、
前記経路設定部は、前記経路方位に沿って延びるように前記開始走行経路及び前記他走行経路を設定する請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記作業車が圃場の最外周を走行する最外周走行における前記作業車の走行軌跡を取得する走行軌跡取得部を更に備え、
前記作業領域取得部は、前記走行軌跡に基づいて前記作業領域を生成する請求項1から7のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業車自動走行システムが開示されている。このシステムでは、作業対象領域を分割する走行経路要素群が設定され、その走行経路要素群が順次選択されて、作業車の自動走行が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシステムでは、作業対象領域の辺に対して収穫機の作業幅の半分の距離をあけた位置から、その辺と平行に走行経路要素が設定される。この方式で設定される走行経路は、圃場の作物の位置によっては、最適なものとならない可能性がある。
【0005】
例えば、圃場の作物の列の間隔が大きい場合、作業対象領域の辺と作物の列との間隔が大きくなる可能性がある。この場合に、作業対象領域の辺に対して収穫機の作業幅の半分の距離をあけた位置に走行経路が設定され、その走行経路を収穫機が走行すると、収穫部の端部が作業対象領域の辺の近傍を通る。従って、収穫部に作物が入ってこない領域(作業対象領域の辺と作物の列との空隙に対応)が生じる。すなわち、収穫作業の効率が低下する。
【0006】
本発明の目的は、作業車が作業走行するための走行経路を適切なものにする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決する手段として、本発明のシステムは、作業車の走行を管理するシステムであって、前記作業車が作業走行するための作業領域を取得する作業領域取得部と、停車した前記作業車の位置を基準位置として取得する基準位置取得部と、前記作業車が作業走行するための走行経路を前記作業領域の内部に設定する経路設定部と、を備え、前記経路設定部は、前記基準位置を通る開始走行経路又は延長線が前記基準位置を通る開始走行経路を設定すると共に前記開始走行経路に平行な他走行経路を設定することを特徴とする。
【0008】
上記の特徴によれば、停車した作業車の位置が基準位置として取得され、その基準位置を通る開始走行経路(又は延長線が基準位置を通る開始走行経路)が設定される。すなわち停車位置が、開始走行経路及び他走行経路の位置に反映される。従って、停車位置が適切なものであれば、設定される走行経路が適切なものとなる。例えば、作業対象領域の辺から作物の列が大きく離れている場合に、作物の列の位置に収穫部が合致するように停車すれば、その停車位置を通るように開始走行経路が設定される。そうすると、開始走行経路を収穫機が走行したときに、収穫部の全体に作物が入ってくるので、収穫作業の効率が向上する。
【0009】
本発明において、前記基準位置取得部は、オペレータが前記作業車を手動走行させて停車させた後に、前記基準位置を取得すると好ましい。
【0010】
上記の特徴によれば、オペレータが停車させた位置が基準位置となるので、基準位置が適切なものになりやすい。例えば、作業車の作業装置が適切な位置になるように、オペレータが作業車を手動走行させて停車させる。例えば、圃場の作物の列に収穫部が合致するように、オペレータが作業車を手動走行させて停車させる。そうすると、取得された基準位置が適切なものとなり、設定される走行経路が適切なものとなる。
【0011】
本発明において、前記基準位置取得部は、オペレータから人為操作を受け付けたことに応じて、前記基準位置を取得すると好ましい。
【0012】
上記の特徴によれば、オペレータから人為操作を受けたときの停車位置が基準位置となるので、基準位置が適切なものになりやすい。例えば、作業車の作業装置が適切な位置になったことをオペレータが確認して、人為操作を行う。例えば、圃場の作物の列に収穫部が合致したことをオペレータが確認して、人為操作を行う。そうすると、取得された基準位置が適切なものとなり、設定される走行経路が適切なものとなる。
【0013】
本発明において、畝間隔を取得する畝間隔取得部と、前記畝間隔に基づいて前記走行経路の経路間隔を決定する経路間隔決定部と、を備え、前記経路設定部は、前記経路間隔に基づいて前記他走行経路を設定すると好ましい。
【0014】
上記の特徴によれば、取得された畝間隔に基づいて経路間隔が設定されて、その経路間隔に基づいて他走行経路が設定されるので、設定される他走行経路の間隔が、畝間隔に基づく適切なものとなる。
【0015】
本発明において、前記経路設定部は、前記基準位置の取得の前に、前記作業車が作業走行するための仮走行経路を前記作業領域の内部に設定し、前記基準位置の取得の後に、前記基準位置を通るようにする前記仮走行経路の補正、又は延長線が前記基準位置を通るようにする前記仮走行経路の補正を実行すると共に、補正された前記仮走行経路を前記開始走行経路として設定すると好ましい。
【0016】
上記の特徴によれば、まず仮走行経路が設定され、その仮走行経路が補正されて開始走行経路として設定されるので、設定される開始走行経路が適切なものになりやすい。
【0017】
本発明において、前記経路設定部は、前記作業領域の境界線に沿って延びるように前記開始走行経路及び前記他走行経路を設定すると好ましい。
【0018】
上記の特徴によれば、開始走行経路及び他走行経路が作業領域の境界線に沿って延びるので、設定される走行経路によって作業領域の内部での作業を適切に実行することができる。
【0019】
本発明において、過去に同一の圃場で作業走行した先行作業車の走行基準である先行走行基準を取得する先行走行基準取得部と、前記先行走行基準に基づいて経路方位を決定する経路方位決定部と、を備え、前記経路設定部は、前記経路方位に沿って延びるように前記開始走行経路及び前記他走行経路を設定すると好ましい。
【0020】
圃場において作物を育成する場合、複数の作業車により種々の作業が行われる。例えば、トラクタによる畝立てや播種、田植機による田植え、管理機による施肥や薬剤散布等が行われる。上記の特徴によれば、先行作業車の先行走行基準が取得され、その先行走行基準に基づいて経路方位が決定され、その経路方位に沿って延びるように開始走行経路及び他走行経路が設定される。従って、これらの走行経路は、先行作業車の作業走行の経路に沿ったもの、例えば、作物の条列や畝に沿った適切なものとなる。すなわち、設定される走行経路が更に適切なものとなる。
【0021】
本発明において、前記作業車が圃場の最外周を走行する最外周走行における前記作業車の走行軌跡を取得する走行軌跡取得部を更に備え、前記作業領域取得部は、前記走行軌跡に基づいて前記作業領域を生成すると好ましい。
【0022】
上記の特徴によれば、最外周走行における走行軌跡に基づいて作業領域が算出され、その内部に開始走行経路及び他走行経路が設定される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】制御部に関する構成を示すブロック図である。
【
図3】最外周走行の走行軌跡、未作業地、及び主要走行方位を示す図である。
【
図4】主要走行方位、仮想直線、外縁直線、及び作業領域を示す図である。
【
図6】最外周走行の走行軌跡の一部を示す図である。
【
図7】方位毎の走行の頻度の分布を示すグラフである。
【
図8】最外周走行の走行軌跡の一部を示す図である。
【
図9】取得された基準位置に基づく仮走行経路の補正を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のシステムの実施形態としての走行管理システムAについて、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0025】
〔コンバインの全体構成〕
図1に、作業車の一例として、普通型のコンバイン1が示されている。コンバイン1は、収穫部H、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0026】
コンバイン1の前進する方向を「前」、後進する方向を「後」と定義する。コンバイン1の前進する方向を向いたときの右側を「右」、左側を「左」と定義する。図面において「前」が矢印F、「後」が矢印B、「上」が矢印U、「下」が矢印Dにより、それぞれ示されている。
【0027】
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、コンバイン1に搭載されたエンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって走行可能である。
【0028】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11より上側に備えられている。運転部12に、オペレータが着座する運転座席12aが備えられている。運転部12に、オペレータからの人為操作を受け付ける操作具OT(
図2)としての、複数の操作レバー及び操作スイッチが設けられている。
【0029】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0030】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、左右の分草具10、刈刃15、リール17を含んでいる。左右の分草具10は、収穫部Hの前端部における左端部及び右端部に設けられている。
【0031】
刈刃15は、植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら植立穀稈を掻き込む。刈刃15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0032】
この構成により、収穫部Hは、圃場の穀物を収穫する。そして、コンバイン1は、刈刃15によって圃場の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。尚、刈取走行が、本発明の「作業走行」の具体例である。刈取走行を「作業走行」と記載する場合がある。
【0033】
収穫部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0034】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0035】
また、
図1に示すように、運転部12には、端末装置4が配置されている。端末装置4は、タッチパネル式表示装置を備えており、オペレータからの人為操作を受け付ける操作具OT(
図2)として機能する。本実施形態において、端末装置4は、運転部12に固定されている。なお、端末装置4が、運転部12に対して着脱可能に構成されていてもよいし、コンバイン1の機外に位置していてもよい。
【0036】
〔走行管理システム〕
コンバイン1の走行は、
図2に示される走行管理システムAにより制御される。走行管理システムAは、制御部40及び衛星測位モジュール80を備えている。
【0037】
制御部40は、後述する機能モジュールに対応するプログラムを記憶するメモリ(HDDや不揮発性RAMなど。図示省略)と、当該プログラムを実行するCPU(図示省略)と、を備えている。プログラムがCPUにより実行されることにより、各機能部の機能が実現される。すなわち、制御部40は、プログラムを記憶した一次的ではない(non-transitory)記録媒体を備える。
【0038】
制御部40は、コンバイン1に搭載された1つ又は複数のECUにより構成されてもよい。制御部40の一部又は全部が、端末装置4に設けられてもよいし、コンバイン1の外部のコンピュータやサーバ等に設けられてもよい。
【0039】
制御部40は、機能モジュールとして、走行軌跡取得部41、未作業領域算出部42、直線算出部43、作業領域取得部44、経路設定部45、畝間隔取得部46、経路間隔決定部47、先行走行基準取得部48、経路方位決定部49、基準位置取得部50、及び走行制御部58を備えている。これら機能モジュールの機能・動作については後述する。
【0040】
なお、制御部40は、各機能モジュールの動作に必要なデータや、各機能モジュールの動作により生成されるデータ等を記憶する記憶装置59を備えている。
【0041】
衛星測位モジュール80は、人工衛星GS(
図1)からGNSS(Global Navigation Satellite System)の信号を受信して、受信した信号に基づいてコンバイン1の自車位置を示す測位データを生成する。GNSSとしては、GPS、QZSS、Galileo、GLONASS、BeiDou、等を利用可能である。
【0042】
〔走行管理システムによる収穫作業〕
本実施形態では、作物が一面に植えられた圃場FIでの収穫作業が走行管理システムAにより制御される。この収穫作業について、
図3-5を参照しながら説明する。
【0043】
本実施形態では、圃場FIの外形が矩形である例が説明される。図示例では、圃場FIの長辺が東西方向に平行であり、圃場FIの短辺が南北方向である。図面において東西南北の方位が「E」「W」「S」「N」の略語で示される。以下の説明では、方位が、北を0°、東を90°とする角度で示される場合がある。
【0044】
〔最外周走行〕
まず、
図3に示されるように、作物を収穫しながら、コンバイン1が圃場FIの最外周を走行する。この走行を「最外周走行」と称する。
【0045】
図示例では、コンバイン1が、圃場FIの北東の角から出発し、圃場FIの境界に沿って西へ直進する。コンバイン1が圃場FIの西の端へ到達すると、北西角の隅刈りが実行される。隅刈りでは、後進、僅かな左旋回、及び前進を繰り返して、作物を収穫しながら南への方向転換が行われる。
【0046】
続いて、圃場FIの境界に沿った南への直進が行われる。以下、南西角の隅刈り、東への直進、南東角の隅刈り、北への直進、及び北東角の隅刈りが実行される。
【0047】
最外周走行は、その全てが人為操作により行われてもよい。人為操作による走行とは、オペレータからの人為操作(操縦)に従ったコンバイン1の走行である。オペレータからの人為操作は、オペレータが運転部12に搭乗した状態で行われる操作であってもよいし、コンバイン1の外にいるオペレータからの遠隔操作であってもよい。
【0048】
最外周走行の一部又は全部が、人為操作によらない走行であってもよい。人為操作に寄らない走行とは、例えば、自動走行や、自動操舵走行などである。自動走行は、速度制御(前進、後進、及び停止を含む制御)及び操舵制御を自動で行う走行である。自動走行が、設定された走行経路に沿った自動的な走行であってもよいし、センサによる周囲環境の走査結果に基づく自動的な走行であってもよい。自動操舵走行とは、走行基準(方位や経路等)に沿った自動的な操舵を伴う走行である。
【0049】
〔作業領域の算出〕
最外周走行におけるコンバイン1の走行軌跡TRに基づいて、作業領域WAの算出が行われる。作業領域WAの算出は、最外周走行が終了した後に行われると好ましい。以下、作業領域WAの算出の具体的手順について説明する。
【0050】
〔走行軌跡の取得〕
走行軌跡取得部41が、コンバイン1が圃場FIの最外周を走行する最外周走行におけるコンバイン1の走行軌跡TRを取得する。
【0051】
具体的には、走行軌跡取得部41は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。走行軌跡取得部41は、最外周走行の間のコンバイン1の位置座標を示すデータの集合を、走行軌跡TRを示す走行軌跡データTDとして取得し、記憶装置59に記憶させる。
【0052】
詳しくは、走行軌跡取得部41は、衛星測位モジュール80により出力された測位データから、コンバイン1における所定の点の地理的位置を「コンバイン1の位置座標」として算出する。「所定の点」は、本実施形態では、収穫部Hの中央の点(以下「中央基準点」と称する。)である。すなわち、走行軌跡TRは、「所定の点」の移動の軌跡であり、中央基準点の移動の軌跡である。
【0053】
「コンバイン1の位置座標」の基準となる「所定の点」は、走行装置11の左右のクローラに対して左右方向の中央かつ前後方向の中央となる点であってもよいし、衛星測位モジュール80の中央の点であってもよいし、右または左の分草具10の中央の点であってもよい。
【0054】
なお、走行軌跡TRはコンバイン1が走行した道程を示す概念的な図形である。走行軌跡データTDは記憶装置59に記憶されるデータである。
図3には、走行軌跡TRと走行軌跡データTDとが同一の実線で示されている。このように、実空間での物体や概念と、仮想的なデータとが図面において同一の図形等で示される場合がある。また、実空間での物体や概念(走行軌跡TRなど)に対して機能モジュールが処理を行う旨の記載は、対応するデータに対して機能モジュールが処理を行うことを意味する場合がある。
【0055】
〔未作業領域の算出〕
未作業領域算出部42が、走行軌跡TRに基づいて未作業地UAに対応する未作業領域データUDを算出する。
【0056】
圃場FIにおいて、コンバイン1が走行していない領域は、作物が刈られていない領域であり、未作業地UAである。未作業領域算出部42は、走行軌跡TRに基づいて、コンバイン1が刈取走行していない領域を算出し、当該領域を示すデータを未作業領域データUDとして記憶装置59に記憶させる。未作業領域データUDは、換言すれば、未作業地UAを示す未作業領域マップである。
【0057】
具体的には、未作業領域算出部42は、走行軌跡TRに基づいて、左右の分草具10のうち内側に位置する分草具10の移動軌跡を算出する。未作業領域算出部42は、算出された移動軌跡の内側の領域を未作業地UAと見なして、当該領域を示す未作業領域データUDを算出し、記憶装置59へ記憶させる。
【0058】
なお、未作業領域算出部42は、最外周走行が右回りと左回りの何れであるかを走行軌跡データTDに基づいて判定する。右回りの場合、右の分草具10の移動軌跡から未作業領域データUDが算出される。左回りの場合、左の分草具10の移動軌跡から未作業領域データUDが算出される。なお、分草具10の移動軌跡は、衛星測位モジュール80と分草具10との位置関係に基づいて、走行軌跡TRから算出可能である。
【0059】
〔外縁直線の算出〕
直線算出部43が、走行軌跡TRに基づいて圃場FIにおける未作業地UAに外接しかつ最外周走行における主要走行方位MBに沿って延びる3つ以上の外縁直線OLを算出する。
【0060】
主要走行方位MBは、最外周走行の間のコンバイン1の走行の方位のうち、走行の頻度の高いものである。
図3に示されるように、コンバイン1は最外周走行を実行する間に様々な方位に向かって走行する。特に、圃場FIの角の領域においては複数回の方向転換が行われるので、走行の方位が様々に変化する。しかし、最外周走行の全体を考慮すれば、西向き、南向き、東向き、及び北向きの走行の頻度が高い。「走行の頻度が高い」とは、走行距離や走行時間が大きいことを意味する。図示例では、主要走行方位MBは、西、南、東、北である。換言すれば、主要走行方位MBは、270°、180°、90°、0°である。
【0061】
直線算出部43は、走行軌跡データTDに基づいて、3つ以上の主要走行方位MBを特定し、主要走行方位MBを示す方位データMD生成して記憶装置59へ記憶させる。走行軌跡TRに基づく主要走行方位MBの特定は、走行時間や走行距離等、様々な手法により可能である。直線算出部43による主要走行方位MBの特定の具体的手法については、後述する。
【0062】
直線算出部43による外縁直線OLの算出は、具体的には次のようにして行われる。
【0063】
直線算出部43は、主要走行方位MBに沿って延びる仮想直線ILを未作業地UAの外に仮想的に配置する。換言すれば、仮想的な空間内で、未作業領域データUDが示す未作業地UAから十分に離れた位置(例えば、無限遠)に仮想直線ILを配置する。そして、直線算出部43は、仮想直線ILを示す仮想直線データIDを生成して記憶装置59へ記憶させる。
図4の例では、未作業地UAの外に直交する4本の仮想直線ILが配置されている。
【0064】
直線算出部43は、仮想直線ILを未作業地UAに近づくように平行移動させ、未作業地UAに接触する状態となった仮想直線ILを外縁直線OLとして算出する。具体的には、直線算出部43は、仮想直線ILを微少距離だけ平行移動させ、未作業地UAとの交点の有無を判定する。交点が無い場合、直線算出部43は平行移動と交点の有無の判定とを繰り返す。交点がある場合、その位置の仮想直線ILを外縁直線OLとして決定し、外縁直線OLを示す直線データODを生成して記憶装置59に記憶させる。
図4の例では、直交する4本の外縁直線OLが算出されている。
【0065】
〔作業領域の算出〕
作業領域取得部44は、外縁直線OLに囲まれる領域をコンバイン1のための作業領域WAとして算出する。具体的には、作業領域取得部44は、外縁直線OLに囲まれる多角形状の領域を作業領域WAとして決定し、作業領域WAを示す作業領域データWDを記憶装置59に記憶させる。作業領域データWDは、換言すれば、作業領域WAを示す作業領域マップである。
【0066】
図4の例では、直交する4本の外縁直線OLに囲まれた、長方形の作業領域WAが算出されている。作業領域WAの内側に未作業地UAが位置している。換言すれば、作業領域WAは未作業地UAを包含している。
【0067】
以上述べたとおり、作業領域取得部44は、走行軌跡TRに基づいて作業領域WAを生成する。
【0068】
〔主要走行方位の特定の手法〕
本実施形態では、主要走行方位MBは、最外周走行における各方位の走行の頻度に基づいて特定される。すなわち、直線算出部43は、走行軌跡TRにおける方位毎の走行の頻度を算出し、算出された頻度に基づいて3つ以上の主要走行方位MBを特定する。
【0069】
以下、
図6、
図7に基づいて詳しく説明する。
図6に、走行軌跡取得部41が取得した、最外周走行でのコンバイン1の走行軌跡TRの一部が示されている。図示された点P1~点P7は、コンバイン1が西向きに走行している時に取得された位置座標に対応する点である。
【0070】
点P1から点P7までの走行は、概ね西向きの走行である。しかし、圃場の凹凸や傾斜等によりコンバイン1の走行の方位は細かく変化しうる。以下述べる手法により。走行軌跡TRにおける走行の方位の数値化、方位毎の走行の頻度の算出、及び主要走行方位MBの特定が可能である。
【0071】
点P1から点P7までの走行を、走行T1~走行T6の6つの短い走行に区切る。走行T1の方位は、点1及び点2の位置座標から算出することができる。図示例では、走行T1の方位は270°である。
【0072】
同様にして、走行T2~走行T6の方位が算出可能である。図示例では、走行T2の方位は270°である。走行T3の方位は272°である。走行T4の方位は268°である。走行T5の方位は272°である。走行T6の方位は268°である。
【0073】
走行軌跡TRの全体を短い走行に細分化し、それぞれの走行の方位を算出する。最外周走行の間に取得されるコンバイン1の位置座標は数千個に上る。従って、走行軌跡TRを数千個の走行に分割し、数千個の走行の方位を取得可能である。
【0074】
取得された走行の方位の度数分布を算出可能である。例えば、全方位(0°から360°)を1°毎に区分し、区分された各方位毎に、方位がその区分に属する走行の数(度数)を計上する。なお、区分の幅は任意であり、1°未満でもよいし2°、5°などでもよい。
【0075】
図7に、度数分布を示すグラフの一例が示されている。このグラフは、
図2に示される走行軌跡TRに対応して描かれている。
【0076】
このグラフでは、0°(北)、90°(東)、180°(南)、及び270°(西)に頻度のピークが生じている。これは、
図2の圃場FIが長方形であり、4つの辺が東西方向及び南北方向に延びていることに対応している。最外周走行では、圃場FIの各辺に沿う走行の距離が長い。換言すれば、圃場FIの各辺に沿って長時間走行する。従って、各辺に沿う方位の走行の頻度が高くなる。
【0077】
また、0°及び180°のピークの高さは、90°及び270°のピークの高さの半分程度である。これは、
図2の圃場FIの短辺(東の辺及び西の辺)の長さが、長辺(北の辺及び南の辺)の長さの半分程度であることに対応している。各辺に沿う走行の距離及び時間は、各辺の長さに応じて長くなる。
【0078】
従って、方位毎の走行の頻度の分布において、頻度の高い方位は、走行軌跡TRにおける主要な移動の方位であり、圃場FIの概形に対応する方位である可能性が高い。頻度の低い方位は、走行軌跡TRにおける主要ではない移動の方位であり、圃場FIの概形に対応する方位ではない可能性が高い。頻度の低い方位は、例えば、圃場FIの角での隅刈り中の走行方位に対応する。
【0079】
本実施形態では、直線算出部43は、走行軌跡TRにおける方位毎の走行の頻度を算出し、算出された頻度に基づいて3つ以上の主要走行方位MBを特定する。例えば、直線算出部43は、度数分布のピークの頂点に対応する方位を、主要走行方位MBとして特定する。例えば、直線算出部43は、度数分布のピークの中央値に対応する方位を、主要走行方位MBとして特定する。
【0080】
図7に示される度数分布であれば、直線算出部43は、0°(北)、90°(東)、180°(南)、及び270°(西)の4つの方位を、主要走行方位MBとして特定する。
【0081】
直線算出部43が、算出された走行軌跡TRにおける方位毎の走行の頻度の分布において、1つのピークに1つの主要走行方位MBが対応するように、主要走行方位MBを特定するように構成されると好ましい。コンバイン1が圃場FIの辺に沿って走行しているとき、
図6に示されるように、走行の方位は細かく変動する。そうすると、方位毎の走行の頻度の分布において、ピークの幅はある程度広くなる。1つのピークから複数の主要走行方位MBが特定されると、仮想直線ILや外縁直線OL、作業領域WAを算出する際の演算量が過度に大きくなる可能性がある。すなわち、直線算出部43が上掲のように構成されると、制御部40での演算量を低減でき好ましい。
【0082】
なお、圃場FIが三角形である場合には、3つの辺に対応する3つのピークが、方位毎の走行の頻度の分布に現れる。圃場FIが多角形の場合には、圃場FIの辺の数と同数のピークが、方位毎の走行の頻度の分布に現れる。
【0083】
直線算出部43が、特定される主要走行方位MBの間の角度が所定の閾値よりも大きくなるように、主要走行方位MBを特定するよう構成されると好ましい。この場合、算出される複数の外縁直線OLの間の角度が所定の閾値よりも大きくなるので、作業領域WAが単純な形状となる。従って、制御部40での演算量を低減でき好ましい。所定の角度は、例えば15°である。
【0084】
〔コンバインの自動走行〕
生成された作業領域データWDを用いて、作業領域WAの内部でのコンバイン1の自動走行が行われる。
【0085】
具体的には、経路設定部45が、コンバイン1が刈取走行するための複数の走行経路LIを作業領域WAの内部に設定する。詳しくは、経路設定部45は、作業領域WAの全体が網羅されるように複数の走行経路LIを設定し、走行経路LIを示す走行経路データLDを生成して記憶装置59へ記憶させる。
【0086】
図5の例では、走行経路LIは東西方向及び南北方向に延びる複数のメッシュ状の直線である。走行経路LIは、互いに平行な複数の平行線であってもよい。走行経路LIが曲線であってもよい。
【0087】
走行制御部58は、設定された走行経路LIに沿ってコンバイン1に刈取走行を行なわせる。具体的には、走行制御部58は、走行装置11を制御することによりコンバイン1の走行を制御する。
【0088】
走行制御部58は、複数の走行経路LIのうちから次に走行する走行経路LIを選択し、コンバイン1が選択された走行経路LIに沿って走行するように、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて走行装置11を制御する。
【0089】
次に走行する走行経路LIの選択は、予め設定されたルールに従って行われる。例えば、走行制御部58は、渦巻き走行のルールに従って、コンバイン1が渦巻き状に走行するように走行装置11を制御する。例えば、走行制御部58は、Uターン走行のルールに従って、互いに平行な走行経路LIをUターンで接続しながら作業領域WAの内部を往復走行するように、走行装置11を制御する。
【0090】
走行のルールが、作業領域WAの内部での作業の途中で切り替えられてもよい。例えば、走行制御部58が、まず渦巻き走行のルールに従ってコンバイン1を刈取走行させ、続いてUターン走行のルールに従ってコンバイン1を刈取走行させてもよい。
【0091】
〔走行経路の設定の詳細〕
図9を参照しながら、作業領域WAの内部における走行経路LIの設定について詳細を説明する。作業領域WAが算出されると、作業領域WAの内部に仮走行経路が生成される。仮走行経路は、予め決定された経路方位に沿って延び、且つ、予め決定された経路間隔を隔てて配置される。図示例では、作業領域WAの境界線に沿って延び3つの仮走行経路RI1、RI2、RI3が生成されている。最も東に位置する仮走行経路RI1と、作業領域WAの東の外縁との間隔は、経路間隔の半分である。
【0092】
自動走行による刈取走行の開始の前に、畝Rの上の作物Cが適切に収穫できる位置に収穫部Hを配置した状態で、オペレータがコンバイン1を停車させる。停車は、図示例のようにコンバイン1が作業領域WAの内部に進入した状態(作物Cの収穫が開始された状態)で行われてもよいし、作業領域WAの外部で行われてもよい。
【0093】
オペレータが操作具OTを操作すると、衛星測位モジュール80から出力された測位データに基づいて算出されるコンバイン1の自車位置が、基準位置RPとして取得される。すなわち、基準位置RPは、停車しているコンバイン1における中央基準点の位置である。
【0094】
仮走行経路が、基準位置RPを通るように補正されて、補正された仮走行経路が開始走行経路として設定される。図示例では、仮走行経路RI1が、基準位置RPを通るように西へ平行移動されて、開始走行経路SRとして設定される。仮走行経路RI1の移動距離は、基準位置RPと仮走行経路RI1との距離に等しい。仮走行経路RI1の移動方向は、仮走行経路RI1と直交する方向である。
【0095】
仮走行経路RI2は、仮走行経路RI1と同じ距離だけ西へ平行移動されて、他走行経路OR1として設定される。仮走行経路RI3は、仮走行経路RI1と同じ距離だけ西へ平行移動されて、他走行経路OR2として設定される。
【0096】
設定された開始走行経路SR、他走行経路OR1、OR2が、以降は走行経路LIとして取り扱われる。そして、走行制御部58が走行経路LIに沿ってコンバイン1に刈取走行を行なわせる。
【0097】
以上述べた、基準位置RPに基づく走行経路LIの設定の手法は、走行経路LIが互いに平行な複数の平行線として設定する形態に好適に適用できる。その形態の走行管理システムAは、畝Rが形成され畝Rの上に作物Cが植えられた、
図9に示す形態の圃場に好適に適用できる。しかし、上述の設定手法は走行経路LIをメッシュ状の直線として設定する形態にも適用可能である。
【0098】
図9の例では、開始走行経路SRが、基準位置RPを通り作業領域WAの端(南端)まで延びるように設定されている。開始走行経路SRが、基準位置RPを開始点として延びるように設定されてもよい。基準位置RPが作業領域WAの外部に位置してもよい。その場合、開始走行経路SRの延長線が基準位置RPを通るように、開始走行経路SRが設定されてもよい。また、開始走行経路SRが作業領域WAの外部まで延びて基準位置RPを通るように、開始走行経路SRが設定されてもよい。
【0099】
仮走行経路の生成に用いられる経路間隔は、様々な形態で決定可能である。経路間隔が、コンバイン1のスペック(収穫部Hの収穫幅など)に基づいて決定されてもよい。経路間隔が、作物Cの間隔に基づいて決定されてもよい。経路間隔が、畝Rの間隔に基づいて決定されてもよい。これら経路間隔の決定のための情報(コンバイン1のスペック、作物Cの間隔、畝Rの間隔)の取得は、操作具OTを通じたオペレータからの入力により行われてもよいし、営農管理システム等からのダウンロードにより行われてもよい。
【0100】
仮走行経路の生成に用いられる経路方位は、様々な形態で決定可能である。経路方位が、作業領域WAの境界線と平行な方位に決定されてもよい。経路方位が、過去に同一の圃場で作業走行した先行作業車の走行基準である先行走行基準に基づいて決定されてもよい。先行走行基準の取得は、操作具OTを通じたオペレータからの入力により行われてもよいし、営農管理システム等からのダウンロードにより行われてもよい。
【0101】
以下、上述した走行経路LIの設定に係る制御部40の動作について説明する。
【0102】
経路設定部45は、基準位置RPを通る開始走行経路SR又は延長線が基準位置RPを通る開始走行経路SRを設定すると共に開始走行経路SRに平行な他走行経路OR1、OR2を設定する。経路設定部45は、基準位置RPの取得の前に、コンバイン1が作業走行するための仮走行経路RI1を作業領域WAの内部に設定する。経路設定部45は、基準位置RPの取得の後に、基準位置RPを通るようにする仮走行経路RI1の補正、又は延長線が基準位置RPを通るようにする仮走行経路RI1の補正を実行すると共に、補正された仮走行経路RI1を開始走行経路SRとして設定する。
【0103】
経路設定部45が、作業領域WAの境界線に沿って延びるように、開始走行経路SR及び他走行経路OR1、OR2を設定してもよい。
【0104】
経路設定部45が、先行走行基準(後述)に基づいて決定された経路方位に沿って延びるように、開始走行経路SR及び他走行経路OR1、OR2を設定してもよい。
【0105】
経路設定部45が、経路間隔決定部47が決定した経路間隔に基づいて他走行経路OR1、OR2を設定してもよい。詳しくは、経路設定部45は、開始走行経路SRとの間隔が、決定された経路間隔となるように、他走行経路OR1を設定する。経路設定部45は、他走行経路OR1との間隔が、決定された経路間隔となるように、他走行経路OR2を設定する。
【0106】
畝間隔取得部46は、畝間隔を取得する。例えば、畝間隔取得部46は、操作具OTを通じたオペレータからの入力に基づいて、作業を行う圃場FIの畝間隔を取得する。畝間隔取得部46が、内部のデータベースや外部の営農管理システムから、圃場FIの畝間隔を取得してもよい。
【0107】
経路間隔決定部47は、畝間隔取得部46が取得した畝間隔に基づいて走行経路の経路間隔を決定する。例えば、経路間隔決定部47は、畝間隔の整数倍となるように経路間隔を決定する。例えば、経路間隔決定部47は、収穫部Hの収穫幅と畝間隔とに基づいて、一度に収穫可能な畝の本数を求め、当該本数に畝間隔を乗じた値を経路間隔として決定する。
【0108】
先行走行基準取得部48は、過去に同一の圃場FIで作業走行した先行作業車の走行基準である先行走行基準を取得する。先行作業車は、例えば、トラクタ、田植機、圃場管理機などである。先行走行基準は、経路方位を決定する為の情報であり、例えば、方位角や、2点の位置座標である。例えば、先行走行基準取得部48は、内部のデータベースや外部の営農管理システムから先行走行基準を取得する。例えば、先行走行基準取得部48は、操作具OTを通じたオペレータからの入力に基づいて、先行走行基準を取得する。
【0109】
経路方位決定部49は、先行走行基準取得部48が取得した先行走行基準に基づいて、経路方位を決定する。経路方位は、例えば、方位角や地図上のベクトル等である。決定された経路方位は、経路設定部45による走行経路(仮走行経路、開始走行経路、他走行経路)の設定に用いられる。
【0110】
基準位置取得部50は、停車したコンバイン1の位置を基準位置RPとして取得する。取得された基準位置RPは、経路設定部45による開始走行経路の設定に用いられる。基準位置取得部50が、オペレータがコンバイン1を手動走行させて停車させた後に、基準位置RPを取得すると好ましい。例えば、基準位置取得部50が、オペレータがコンバイン1を手動走行させて停車させたか否かを判定するよう構成されてもよい。判定は、操作具OTの入力及びコンバイン1の走行状態を監視することにより実現可能である。基準位置取得部50が、オペレータから人為操作を受け付けたことに応じて、基準位置RPを取得すると好ましい。
【0111】
基準位置取得部50が、コンバイン1が作業領域WAの近傍に停車した場合に基準位置RPを取得するよう構成されてもよい。基準位置取得部50が、コンバイン1が作業領域WAの境界線の近傍に停車した場合に基準位置RPを取得するよう構成されてもよい。基準位置取得部50が、コンバイン1が作業領域WAの内部に進入して停車した場合に基準位置RPを取得するよう構成されてもよい。
【0112】
〔走行制御フロー〕
走行管理システムAの制御部40は、
図10に示される走行制御フローに従って、コンバイン1の走行を制御するように構成されている。この走行制御フローは、最外周走行の開始前に開始される。
【0113】
まず、走行軌跡取得部41が、コンバイン1が圃場FIの最外周を走行する最外周走行におけるコンバイン1の走行軌跡TRを取得する(ステップS101)。走行軌跡TRの取得は、最外周走行の実行中にリアルタイムに行われてもよいし、一定の時間間隔で断続的に行われてもよいし、最外周走行の終了後に行われてもよい。
【0114】
ステップS101の終了後、未作業領域算出部42が、走行軌跡TRに基づいて未作業地UAに対応する未作業領域データUDを算出する(ステップS102)。
【0115】
ステップS102の終了後、直線算出部43は、走行軌跡TRにおける方位毎の走行の頻度を算出する(ステップS103)。
【0116】
ステップS103の終了後、直線算出部43は、ステップS102で算出された頻度に基づいて3つ以上の主要走行方位MBを特定する(ステップS104)。
【0117】
ステップS102(未作業領域の算出)は、ステップS103(頻度の算出)及びステップS104(主要走行方位MBの特定)と同時並行で行われてもよいし、ステップS103及びステップS104の後で行われてもよい。
【0118】
ステップS104の終了後、直線算出部43が、外縁直線OLを算出する(ステップS105)。
【0119】
ステップS105の終了後、作業領域取得部44は、作業領域WAを算出する(ステップS106)。
【0120】
畝間隔取得部46が、畝間隔を取得する(ステップS107)。
【0121】
ステップS107の終了後、経路間隔決定部47は、取得された畝間隔に基づいて経路間隔を決定する(ステップS108)。
【0122】
ステップS106及びステップS107は、仮走行経路の設定(ステップS111)の前であれば、任意のタイミングで行われてもよい。
【0123】
先行走行基準取得部48が、先行走行基準を取得する(ステップS109)。
【0124】
ステップS109の終了後、経路方位決定部49は、取得された先行走行基準に基づいて経路方位を決定する(ステップS110)。
【0125】
ステップS109及びステップS110は、仮走行経路の設定(ステップS111)の前であれば、任意のタイミングで行われてもよい。
【0126】
経路設定部45が、仮走行経路を設定する(ステップS111)。
【0127】
基準位置取得部50は、コンバイン1が停車するまで待機する(ステップS112:No)。
【0128】
コンバイン1が停車すると(ステップS112:Yes)、基準位置取得部50は、操作具OTがオペレータから基準位置取得を指示する人為操作を受け付けるまで待機する(ステップS113:No)。
【0129】
操作具OTがオペレータから基準位置取得を指示する人為操作を受け付けると(ステップS113:Yes)、基準位置取得部50は、現在のコンバイン1の位置を基準位置RPとして取得する(ステップS114)。
【0130】
ステップS114の終了後、経路設定部45は、ステップS111で設定された仮走行経路を補正する(ステップS115)。
【0131】
ステップS115の終了後、経路設定部45は、ステップS111で補正された仮走行経路を、開始走行経路及び他走行経路として設定する(ステップS116)。
【0132】
ステップS116の終了後、走行制御部58は、ステップS116で設定された開始走行経路及び他走行経路に沿ってコンバイン1に刈取走行を行わせる(ステップS108)。
【0133】
作業領域WAを網羅する刈取走行の終了後、走行制御フローは終了する。
【0134】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではない。以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0135】
(1)上述した実施形態では、基準位置取得部50が、オペレータから人為操作を受け付けたことに応じて基準位置RPを取得する。基準位置RPの取得が、オペレータからの人為操作と無関係に行われてもよい。例えば、基準位置取得部50が、コンバイン1が所定の時間(例えば、5秒)停車したことに応じて、基準位置RPを取得するように構成されてもよい。
【0136】
(2)上述した実施形態では、畝間隔取得部46が圃場FIの畝間隔を取得する。経路間隔決定部47が、取得された畝間隔に基づいて経路間隔を決定する。経路間隔が、畝間隔に基づかずに決定されてもよい。例えば、経路間隔が、収穫部Hの収穫幅に基づいて決定されてもよい。すなわち、制御部40が、畝間隔取得部46及び経路間隔決定部47を備えない形態も可能である。この場合、走行制御フロー(
図10)においてステップS107及びステップS108が省略される。
【0137】
(3)経路設定部45が、オペレータからの人為操作に基づいて、仮走行経路の補正を行うか否かを切り換え可能に構成されてもよい。仮走行経路の補正を行わない場合、経路設定部45は、仮走行経路を走行経路として設定する。または、経路設定部45は、仮走行経路の設定を行わず、走行経路の設定を行う。
【0138】
(4)走行制御部58が、オペレータからの人為操作に基づいて、(a)補正された仮走行経路(すなわち、開始走行経路及び他走行経路)を走行経路とする自動走行の実行、(b)補正前の仮走行経路を走行経路とする自動走行の実行、の何れかを選択的に実行するよう構成されてもよい。
【0139】
(5)上述した実施形態では、経路設定部45が仮走行経路を設定する。仮走行経路の設定が省略されてもよい。すなわち、経路設定部45が、仮走行経路の生成を行わずに、基準位置RPに基づいて開始走行経路及び他走行経路を設定するよう構成されてもよい。この場合、走行制御フロー(
図10)においてステップS111が省略される。
【0140】
(6)上述した実施形態では、経路設定部45が、(a)取得された先行走行基準に基づいて決定された経路方位に基づく仮走行経路(又は開始走行経路、走行経路)の設定、を実行する。経路設定部45が、(b)作業領域WAの境界線に沿う経路方位に基づく仮走行経路(又は開始走行経路、走行経路)の設定、を実行するように構成されてもよい。この場合、走行制御フロー(
図10)においてステップS109が省略される。また、経路設定部45が、オペレータからの人為操作に基づいて、上記の(a)及び(b)の何れかを選択的に実行するよう構成されてもよい。
【0141】
(7)上述した実施形態では、作業領域取得部44が作業領域WAを算出する。作業領域取得部44が、内部のデータベースや外部の営農管理システムから作業領域WA(作業領域データWD)を取得するよう構成されてもよい。
【0142】
(8)操作具OTによる人為操作の受付は、手による物理的な操作に限られない。操作具OTが、音声認識によりオペレータからの人為操作を受け付けるように構成されてもよい。
【0143】
(9)「最外周走行」は、圃場の外端を厳密になぞる走行でなくてもよい。例えば、圃場の外端に凹部が存在する場合や、圃場の外端が曲線状である場合に、それらを無視した直線状の走行が、最外周走行の概念に含まれてもよい。換言すれば、最外周走行が終了したときに、走行軌跡TRの外側に未作業の領域が残っていてもよい。
【0144】
(10)走行軌跡TRの取得、未作業領域データUDの算出、主要走行方位MBの特定、及び外縁直線OLの算出等の処理が、2周目以降の周回走行(圃場の外周部での周回状の走行)における走行軌跡に基づいて実行されてもよい。すなわち、走行軌跡取得部41が、コンバイン1が圃場FIの外周部を走行する周回走行におけるコンバイン1の走行軌跡を取得するように構成されてもよい。直線算出部43が、走行軌跡に基づいて圃場FIにおける未作業地UAに外接しかつ周回走行における主要走行方位MBに沿って延びる3つ以上の外縁直線OLを算出するように構成されてもよい。
【0145】
本発明は、作業車の走行の管理に利用可能である。作業車は、普通型のコンバインだけでなく、自脱型のコンバイン、各種の収穫機(トウモロコシ収穫機、ジャガイモ収穫機、ニンジン収穫機など)、田植機、圃場管理機、建設作業機等であってもよい。
【符号の説明】
【0146】
1 :コンバイン(作業車)
41 :走行軌跡取得部
44 :作業領域取得部
45 :経路設定部
46 :畝間隔取得部
47 :経路間隔決定部
48 :先行走行基準取得部
49 :経路方位決定部
50 :基準位置取得部
FI :圃場
LI :走行経路
OR1 :他走行経路
OR2 :他走行経路
R :畝
RI1 :仮走行経路
RI2 :仮走行経路
RI3 :仮走行経路
RP :基準位置
SR :開始走行経路
TR :走行軌跡
WA :作業領域