(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004520
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】自動走行制御システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250107BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20250107BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
G05D1/02 N
G05D1/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104252
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】朝田 諒
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友彦
(72)【発明者】
【氏名】作田 建
(72)【発明者】
【氏名】奥平 淳人
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB14
2B043DC01
2B043EA06
2B043EB05
2B043EC18
2B043ED12
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC06
5H301QQ08
(57)【要約】
【課題】畝が設けられたり、作物が条列をなして植立したりしている圃場においても精度良く作業走行を行うことを目的とする。
【解決手段】先行作業車PRが自動走行により作業走行した圃場を作業走行する先行作業車PRとは異なる後行作業車POの自動走行を制御する自動走行制御システムであって、先行作業車PRが自動走行した際に生成される走行基準REを取得する取得部と、取得部が取得した走行基準REを記憶する記憶部と、記憶部が記憶する走行基準REに基づいて、後行作業車POが圃場を自動走行する際の自動走行経路LIである第1経路LI1を生成する経路生成部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行作業車が自動走行により作業走行した圃場を作業走行する前記先行作業車とは異なる後行作業車の自動走行を制御する自動走行制御システムであって、
前記先行作業車が自動走行した際に生成される走行基準を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記走行基準を記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶する前記走行基準に基づいて、前記後行作業車が前記圃場を自動走行する際の自動走行経路である第1経路を生成する経路生成部とを備える自動走行制御システム。
【請求項2】
前記走行基準は、前記先行作業車が自動走行した際の基準方位である請求項1に記載の自動走行制御システム。
【請求項3】
前記第1経路は、前記基準方位と平行である請求項2に記載の自動走行制御システム。
【請求項4】
1または複数の前記先行作業車が自動走行した際に、複数の自動走行のそれぞれについて生成された前記走行基準のうちの少なくとも一部の前記走行基準を取得して保持する基準格納部をさらに備え、
前記取得部は、前記基準格納部から最新の前記走行基準を取得する請求項1に記載の自動走行制御システム。
【請求項5】
1または複数の前記先行作業車が自動走行した際に、複数の自動走行のそれぞれについて生成された前記走行基準のうちの少なくとも一部の前記走行基準を取得して保持する基準格納部と、
前記走行基準を選択する人為的な操作を受け付ける基準選択部とをさらに備え、
前記取得部は、前記基準選択部を介して選択された前記走行基準を前記基準格納部から取得する請求項1に記載の自動走行制御システム。
【請求項6】
前記経路生成部は、前記先行作業車の作業走行が終了した後に前記第1経路を生成する請求項1に記載の自動走行制御システム。
【請求項7】
前記経路生成部は前記第1経路を前記記憶部に記憶させ、
前記経路生成部は、前記後行作業車の作業対象領域に基づいて前記自動走行経路である第2経路を生成して前記記憶部に記憶させ、
前記後行作業車は、前記第1経路または前記第2経路に沿って自動走行する請求項1に記載の自動走行制御システム。
【請求項8】
前記後行作業車が自動走行する前記自動走行経路を前記第1経路または前記第2経路から選択する選択操作を受け付ける経路選択部をさらに備え、
前記後行作業車は、前記経路選択部で選択された前記自動走行経路に沿って自動走行する請求項7に記載の自動走行制御システム。
【請求項9】
前記先行作業車は播種または植え付けを行い、前記後行作業車は収穫を行う請求項1から8のいずれか一項に記載の自動走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行経路に沿って圃場を作業走行する作業車の自動走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、収穫機(作業車)は、走行経路(自動走行経路)に沿って作業走行を行う。走行経路は、圃場を周回走行することにより取得される作業対象領域(内周領域)に基づいて生成される。例えば、走行経路は作業対象領域の1つの外周辺に平行に生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圃場に畝が設けられたり、作物が条列をなして植立したりしているにもかかわらず、自動走行経路が畝または条列に沿って形成されない場合がある。畝や条列に沿って自動走行経路が生成されないと、作業車が畝や条列を横切って作業走行することになり、適切に作業走行が行われない場合がある。
【0005】
本発明は、畝が設けられたり、作物が条列をなして植立したりしている圃場においても精度良く作業走行を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係る自動走行制御システムは、先行作業車が自動走行により作業走行した圃場を作業走行する前記先行作業車とは異なる後行作業車の自動走行を制御する自動走行制御システムであって、前記先行作業車が自動走行した際に生成される走行基準を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記走行基準を記憶する記憶部と、前記記憶部が記憶する前記走行基準に基づいて、前記後行作業車が前記圃場を自動走行する際の自動走行経路である第1経路を生成する経路生成部とを備える。
【0007】
圃場において作物を育成する場合、複数の作業車により種々の作業が行われる。例えば、畝立てが行われた後に播種が行われ、その後生育した作物が収穫される。また、条列を成して作物が植え付けられた後、生育した作物が収穫される。
【0008】
先行作業車は、畝を立てたり、畝に沿って播種を行ったり、条列状に作物を植え付けたりする。後行作業車は、畝に沿って播種を行ったり、畝上の作物を収穫したり、条列状の作物を収穫したりする。
【0009】
上記構成によると、先行作業車が自動走行した際の走行基準に基づいて後行作業車の自動走行経路を形成するため、後行作業車は畝または条列に沿って走行することができる。その結果、後行作業車は、畝や条列を横切って作業走行することが抑制され、精度良く作業走行を行うことができる。
【0010】
また、前記走行基準は、前記先行作業車が自動走行した際の基準方位であってもよい。
【0011】
基準方位は自動走行経路の方向を決定する基準である。そのため、先行作業車が自動走行した際の基準方位に基づいて、後行作業車の自動走行経路を生成することにより、後行作業車は、より精度良く畝または条列に沿って走行することができる。
【0012】
また、前記第1経路は、前記基準方位と平行であってもよい。
【0013】
このような構成により、後行作業車の自動走行経路は、先行作業車が形成した畝または条列に精度良く沿って形成される。その結果、後行作業車は、より精度良く畝または条列に沿って走行することができる。
【0014】
また、1または複数の前記先行作業車が自動走行した際に、複数の自動走行のそれぞれについて生成された前記走行基準のうちの少なくとも一部の前記走行基準を取得して保持する基準格納部をさらに備え、前記取得部は、前記基準格納部から最新の前記走行基準を取得してもよい。
【0015】
後行作業車は先行作業車の作業走行の後に作業走行を行う。また、後行作業車の作業走行の前に、その圃場において複数の作業走行が行われていることが多い。このような場合、後行作業車の作業走行に近い時期に行われた作業走行は、後行作業車が作業走行する際の畝または条列に近い形状(方向)に形成されていることが期待できる。
【0016】
そのため、上記構成によると、走行基準が保持されている作業走行の中で直近の作業走行における走行基準に基づいて後行作業車の自動走行経路を生成することができる。その結果、後行作業車は、より精度良く畝または条列に沿って走行することができる。
【0017】
また、1または複数の前記先行作業車が自動走行した際に、複数の自動走行のそれぞれについて生成された前記走行基準のうちの少なくとも一部の前記走行基準を取得して保持する基準格納部と、前記走行基準を選択する人為的な操作を受け付ける基準選択部とをさらに備え、前記取得部は、前記基準選択部を介して選択された前記走行基準を前記基準格納部から取得してもよい。
【0018】
後行作業車の作業走行の直前に行われた作業走行が畝または条列に沿う必要のない作業である場合もある。作業者は、それぞれの作業走行の内容を把握していることが期待でき、作業者は、過去の作業走行のうち、後行作業車が行う作業走行に最も適した作業走行を把握できる。
上記構成によると、後行作業車の作業走行に最も適した作業走行が行われたと思われる作業走行の走行基準を選択することができるため、後行作業車は、より精度良く畝または条列に沿って走行することができる。
【0019】
また、前記経路生成部は、前記先行作業車の作業走行が終了した後に前記第1経路を生成してもよい。
【0020】
このような構成により、後行作業車の自動走行経路は、先行作業車の作業走行が終了した後に生成されるので、先行作業車の作業走行が途中で変更されても、それに対応して精度良く生成される。
【0021】
また、前記経路生成部は前記第1経路を前記記憶部に記憶させ、前記経路生成部は、前記後行作業車の作業対象領域に基づいて前記自動走行経路である第2経路を生成して前記記憶部に記憶させ、前記後行作業車は、前記第1経路または前記第2経路に沿って自動走行してもよい。
【0022】
後行作業車の作業走行の内容によっては、圃場の作業対象領域(内周領域)に基づいて生成された自動走行経路に沿って作業走行を行うことが適切である場合がある。上記構成によると、後行作業車の作業走行を作業対象領域に基づいて生成された自動走行経路に沿って行うことが可能となる。
【0023】
また、前記後行作業車が自動走行する前記自動走行経路を前記第1経路または前記第2経路から選択する選択操作を受け付ける経路選択部をさらに備え、前記後行作業車は、前記経路選択部で選択された前記自動走行経路に沿って自動走行してもよい。
【0024】
このような構成により、圃場の作業対象領域に基づいて生成された自動走行経路に沿って作業走行を行うことが適切である場合には、後行作業車の作業走行を作業対象領域に基づいて生成された自動走行経路を選択して行うことができる。
【0025】
また、前記先行作業車は播種または植え付けを行い、前記後行作業車は収穫を行ってもよい。
【0026】
このような構成により、畝に播種された作物や条列に植え付けられた作物を精度良く収穫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】先行する作業走行に基づいて自動走行経路を生成する概略構成を説明する図である。
【
図3】自動走行制御システムの構成を例示する図である。
【
図4】後行作業車の自動走行経路を生成するフローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上述のように、圃場において作物を育成する場合、複数の作業車により種々の作業が行われる。例えば、圃場を耕耘し、畝立てが行われた後に播種が行われ、その後生育した作物が収穫される。また、圃場を耕耘し、条列を成して作物が植え付けられた後、生育した作物が収穫される。さらに、その間にも、薬剤や肥料の散布等の作業も行われる。
【0029】
図1に示すように、作業車は、自動走行経路LIに沿って自動走行する場合があり、自動走行経路LIは所定の走行基準REに基づいて生成される。畝立てが行われたり、作物が条列を成したりする場合、その後に行われる作業走行において、自動走行経路LIの方向が畝Mの方向や条列の方向と一致しないと、作業車が畝Mを横切ったり、畝Mに乗り上げたり、条列を横切ったりして、適切な作業走行を行えない場合がある。
【0030】
そこで、本実施形態に係る自動走行制御システムは、先行して作業を行う作業車(先行作業車PR)が作業走行(先行作業)を行った後に、異なる作業車(後行作業車PO)が作業走行(後行作業)を行う際に、先行作業車PRの自動走行経路LI(先行経路LIR)の生成に用いた走行基準REに基づいて、後行作業車POの自動走行経路LI(第1経路LI1)を生成する。
【0031】
先行作業車PRは、畝Mや条列に沿って作業走行が行われていることが期待でき、先行経路LIRは畝Mや条列に沿っている。少なくとも、作業者(オペレータ)は、先行作業車PRの作業走行が畝Mや条列に沿って行われているか否かを容易に知り得る。
【0032】
先行作業が畝Mや条列に沿って行われた場合、後行作業車POの自動走行経路LI(第1経路LI1)を先行経路LIRの生成に用いられた走行基準REに基づいて生成することにより、第1経路LI1は畝Mや条列に沿って形成される。その結果、後行作業車POは、畝Mや条列を横切って作業走行することが抑制され、精度良く作業走行を行うことができる。
【0033】
次に、先行作業車PRとしてトラクタTRが大豆の播種を行い、後行作業車POとしてコンバイン1が大豆の収穫を行う場合を例として、自動走行制御システムが第1経路LI1を生成する構成について図面を参照して説明する。
【0034】
なお、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、図中の矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0035】
〔先行作業〕
図1に示すように、先行作業車PRであるトラクタTRは、既に形成された畝Mに沿った自動走行経路LI(先行経路LIR)を生成し、先行経路LIRに沿って自動走行することにより播種作業(自動作業走行)を行う。
【0036】
トラクタTRは、圃場の内周領域CAを往復走行し、圃場の外周領域SAを圃場の外周辺に沿って周回走行しながら播種作業を行う。先行経路LIRは、内周領域CAを往復走行するための、内周領域CAを縦断する線状の経路要素の集合である。往復走行は、経路要素に沿った走行と経路要素を繋ぐ旋回走行とが繰り返し行われる走行である。外周領域SAの外周走行は手動走行または自動走行で行われる。内周領域CAの旋回走行は手動走行で行われ、先行経路LIRである各経路要素に沿った走行は主に自動走行で行われる。
【0037】
先行経路LIRは走行基準REに基づいて生成される。走行基準REは、先行経路LIRが伸びる方向を定める情報である。内周領域CAにおける作業走行は、まず、手動走行により、内周領域CAの端部から反対側の端部まで内周領域CAを縦断する方向に行われる。この走行は目視によって畝Mに沿って行われる。この手動走行の際に、2点の位置情報が取得される。2点の位置情報は、それぞれ、始点、終点と称される。
【0038】
走行基準REは、始点と終点とを結ぶ線分に平行な基準方位RDとして取得される。そして、先行経路LIRは走行基準REである基準方位RDと平行な経路として生成される。先行経路LIRの各経路要素は基準方位RDと平行に生成されるので、畝Mと平行となる。なお、走行基準REは基準方位RDに限らず、始点および終点そのもの(基準点RP
図3参照)としてもよく、始点および終点から生成される他の情報であってもよく、先行経路LIRそのものであってもよい。
【0039】
手動走行により内周領域CAを縦断した後、旋回走行を経て、先行経路LIRに沿った自動走行が行われる。先行経路LIRは畝Mと平行に生成されるため、内周領域CAにおける自動走行は、畝Mと平行に行われる。
【0040】
なお、畝立ての際にも、始点と終点に基づく走行基準REにより生成された自動走行経路LIに沿って自動作業走行が行われるため、圃場の畝Mは互いに平行に形成されている。そのため、1つの畝Mに沿って生成された走行基準REに基づいて先行経路LIRを生成することにより、先行経路LIR(全ての経路要素)は畝Mに平行に生成されることとなる。
【0041】
〔後行作業〕
図1に示すように、後行作業車POであるコンバイン1は、トラクタTRにより播種され、その後育成された作物を収穫する。以下、コンバイン1およびコンバイン1が行う作業走行について説明する。
【0042】
〔コンバイン〕
図2に示すように、後行作業車POである普通型のコンバイン1は、収穫部H、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備える。衛星測位モジュール80により出力される測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標が経時的に算出される。
【0043】
走行装置11は、コンバイン1における下部に設けられる。また、走行装置11は、コンバイン1に搭載されたエンジン(図示せず)から動力を受けて駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって走行する。
【0044】
運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11の上側に設けられる。運転部12には、コンバイン1の作業を監視するオペレータ(作業者)が搭乗可能である。なお、オペレータは、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していてもよい。
【0045】
運転部12は、運転座席12aおよびキャビン12bを有する。運転座席12aは、キャビン12bの内側に設けられる。運転座席12aには、オペレータが着座可能である。
【0046】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられる。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられる。
【0047】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられる。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられる。また、収穫部Hは、刈取装置15およびリール17を含む。
【0048】
刈取装置15は、圃場の作物である大豆を刈り取る。作物は、大豆に限らず、任意の作物であってもよい。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の大豆を掻き込む。刈取装置15により刈り取られた大豆は、搬送部16へ送られる。
【0049】
この構成により、収穫部Hは、圃場の大豆を収穫する。そして、コンバイン1は、刈取装置15によって圃場の大豆を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。
【0050】
収穫部Hにより収穫された大豆は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、大豆は脱穀装置13へ搬送される。
【0051】
脱穀装置13において、大豆は脱穀処理される。脱穀処理により得られた収穫物は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された収穫物は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0052】
〔コンバインの作業走行〕
コンバイン1は、圃場の畝Mで生育された大豆を収穫する。なお、コンバイン1が収穫する作物は大豆に限らず、稲等の任意の作物であってもよい。また、作物は畝Mで育成されるに限らず、条列を構成した状態で育成されてもよい。
【0053】
図1に示すように、コンバイン1は、圃場内の外周領域SAで作物を収穫しながら周回走行を行った後、圃場内の内周領域CAで作物を収穫しながら往復走行を行うことにより、圃場の作物を収穫する。
【0054】
本実施形態においては、周回走行は手動走行により行われる。なお、周回走行はこれに限定されず、周回走行のうちの一部または全てが自動走行により行われてもよい。内周領域CAでの往復走行は自動走行により行われるが、一部が手動走行で行われてもよい。
【0055】
外周走行は圃場の外周辺に沿って行われ、外周走行におけるコンバイン1の走行軌跡が取得される。この走行軌跡に基づいて内周領域CAが算出される。
【0056】
具体的には、まず、外周走行によって作業(収穫)が行われていない圃場の領域を、未作業地として、走行軌跡から算出する。
【0057】
次に、外周走行において、圃場の角の領域において複数回の方向転換が行われるので、走行軌跡のうちの方向転換における走行軌跡を除いた走行軌跡から、主要走行方位を算出する。主要走行方位は、圃場の主な外周辺の数だけ算出される。
【0058】
次に、主要走行方位に平行で未作業地と接する線分が、主要走行方位毎に算出される。そして、算出された線分に囲まれた領域が内周領域CAとされる。なお、内周領域CAは、上記のように算出される方法に限らず、任意の方法で算出されてもよい。例えば、主要走行方位を算出せず、外周走行によって形成される未作業地が内周領域CA(作業対象領域)として算出されてもよい。
【0059】
内周領域CAは、自動走行経路LIである第1経路LI1に沿って往復走行することにより作業走行される。往復走行における旋回走行は外周領域SAにおいて行われる。第1経路LI1は、トラクタTRの先行経路LIRを生成する際に用いた基準方位RD(走行基準RE)に基づいて生成される。
【0060】
先行経路LIRを生成する際に用いられた基準方位RDは、圃場の畝Mに平行な方向であるので、第1経路LI1(全ての経路要素)は畝Mに平行な方向に伸びる。そのため、コンバイン1は、畝Mを横切って作業走行することが抑制され、精度良く作業走行を行うことができる。
【0061】
〔自動走行制御システム〕
次に、
図1、
図2を参照しながら
図3、
図4を用いて、後行作業車POの自動走行経路LI(第1経路LI1)を生成する自動走行制御システムの構成と動作手順について説明する。
【0062】
自動走行制御システムは、取得部21と、経路生成部23と、作業走行制御部25と、記憶部27とを備える。自動走行制御システムは、CPU等のプロセッサ(コンピュータ)を備え、自動走行制御システムの各機能はプロセッサに制御されて動作する。
【0063】
後行作業車POであるコンバイン1の収穫作業(後行作業)に先立って、先行作業車PRであるトラクタTRにより播種作業(先行作業)が行われる。
【0064】
まず、トラクタTRの自動走行経路LIである先行経路LIRが、走行基準RE(基準方位RD)に基づいて生成される(
図4のステップ#1)。トラクタTRは、先行経路LIRに沿って圃場を走行しながら、播種作業(作業走行 先行作業)を行う(
図4のステップ#2)。
【0065】
取得部21は、外部に対する情報の送受信が可能であり、走行基準RE等の各種の情報を取得する(
図4のステップ#3)。取得部21は、取得した走行基準REを記憶部27に格納する。走行基準REは、トラクタTRの自動走行経路LI(先行経路LIR)を生成する際に用いられた基準方位RD等である。
【0066】
経路生成部23は、記憶部27に格納された基準方位RD(走行基準RE)に基づいて、コンバイン1の自動走行経路LI(第1経路LI1)を生成する(
図4のステップ#4)。具体的には、経路生成部23は、基準方位RDに平行となるように第1経路LI1を生成する。その結果、第1経路LI1は、それぞれの経路要素が基準方位RDに平行となる。経路生成部23は、生成された第1経路LI1を記憶部27に格納する。
【0067】
作業走行制御部25は、コンバイン1の作業走行(後行作業)を制御する。コンバイン1の作業走行は、記憶部27に格納された第1経路LI1に沿って圃場(内周領域CA)を走行しながら、収穫作業(作業走行 後行作業)を行う走行である(
図4のステップ#5)。
【0068】
先行経路LIRは、畝Mに沿うように走行基準REに基づいて生成される。第1経路LI1は、走行基準REに基づいて生成されるため、畝Mに沿うように生成される。特に、第1経路LI1は、基準方位RDに基づいて生成されると、畝Mに平行に生成される。これにより、先行経路LIRは畝Mに沿う方向に生成されるため、コンバイン1は、畝Mを横切って作業走行することが抑制され、精度良く作業走行を行うことができる。
【0069】
〔別実施形態〕
(1)後行作業に先立って行われる先行作業は複数の作業が行われる場合がある。これらの複数の先行作業は異なる作業車によって行われる場合もある。例えば、後行作業である収穫作業の前には、先行作業として、トラクタTRによって播種が行われ、さらに播種作業に先立って、トラクタTRによって畝立て作業が行われる。
【0070】
上記実施形態において、自動走行制御システムは、複数の先行作業の際に生成された先行経路LIRに用いられた走行基準REのうちのいずれかに基づいて、後行作業の第1経路LI1を生成してもよい。この際、先行作業の少なくとも一部は異なる先行作業車PRにより行われてもよい。
【0071】
自動走行制御システムは、基準格納部32および基準選択部34をさらに備えても良い。取得部21は、先行作業車PRが自動走行した際の走行基準REを取得する。基準格納部32は、1または複数の先行作業車PRが自動走行した際に、複数の自動走行のそれぞれについて生成された走行基準REのうちの少なくとも一部の走行基準REを取得して保持する。つまり、基準格納部32は、自動走行を行う先行作業車PRの自動走行経路LI(先行経路LIR)に係る走行基準REの少なくとも一部を取得して保持する。
【0072】
例えば、取得部21は、先行作業車PRが自動走行する度に先行経路LIRの走行基準REを取得して基準格納部32に保持させる。そして、基準選択部34は、基準格納部32に保持された複数の走行基準REから1つの走行基準REを選択し、経路生成部23は選択された走行基準REに基づいて第1経路LI1を生成する。
【0073】
収穫作業は作物が並ぶ方向に沿って走行することが好ましい。また、作物は必ずしも畝Mに平行に並んでいるとは限らない。また、作物の播種や植付は自動走行により行われない場合も考えられる。それぞれの作業走行の内容は作業者が把握している。このような場合、作業者は、収穫作業の際に自動走行経路LI(第1経路LI1)を生成するために用いる走行基準REとして、いずれの作業走行の際の走行基準RE用いるべきかを判断できる。
【0074】
したがって、複数の作業走行における走行基準REのうちから後行作業の際に用いる走行基準REを作業者が選択することにより、より精度良く後行作業を行うために用いるべき走行基準REを用いて第1経路LI1を生成することができる。その結果、精度良く作業走行を行うことができる。
【0075】
なお、基準格納部32は、走行基準REを、先行作業車PRが自動走行する度に保持してもよいが、基準選択部34により選択された走行基準REのみを保持してもよい。具体的には、基準選択部34は、複数の自動走行のそれぞれについて生成された走行基準REのうちから、基準格納部32に保持する走行基準REを選択する人為的な操作を受け付ける。つまり、作業者(オペレータ)は、基準選択部34を操作することにより、後行作業に適した走行基準REとして、基準格納部32に保持する走行基準REを選択することができる。そして、基準格納部32は選択された走行基準REを、取得部21を介して取得し、保持する。経路生成部23は、基準格納部32に保持された走行基準REに基づいて第1経路LI1を生成する。なお、基準格納部32は、取得部21を介さずに走行基準REを取得して保持してもよい。
【0076】
また、自動走行制御システムは基準選択部34を備えず、経路生成部23は後行作業の直前に行われた先行作業における走行基準REに基づいて第1経路LI1を生成してもよい。つまり、取得部21は先行作業車PRが自動走行する度に先行経路LIRの走行基準REを取得して基準格納部32に保持させ、経路生成部23は、基準格納部32に保持された最新の走行基準REを基準格納部32から取得して第1経路LI1を生成してもよい。この際、基準格納部32は、先に取得された走行基準REを残し、新たに取得された走行基準REを加えてもよいが、走行基準REが取得される度に、保持されている走行基準REを削除し、最新の走行基準REに更新してもよい。
【0077】
また、走行基準REは、基準格納部32に保持されてもよいが、記憶部27に保持されてもよい。この場合、基準格納部32は不要となる。
【0078】
(2)上記各実施形態において、経路生成部23は、先行作業車PRの作業走行(先行作業)が終了した後に第1経路LI1を生成してもよいが、先行作業中に走行基準REを取得すれば、先行して第1経路LI1を生成してもよい。
【0079】
(3)上記各実施形態において、経路生成部23は、第1経路LI1と共に、あるいは第1経路LI1とは別に、後行作業車POが外周走行を行うことにより生成された内周領域CA(作業対象領域)に基づいて自動走行経路LIである第2経路LI2を生成してもよい。
【0080】
第2経路LI2の各経路要素は、内周領域CAの1つの外周辺に平行に生成される。経路生成部23は、第2経路LI2を生成し、生成した第2経路LI2を記憶部27に記憶させる。作業走行制御部25は、記憶部27に記憶された第1経路LI1または第2経路LI2に沿って後行作業車POを自動走行させる。
【0081】
この際、自動走行制御システムは、経路選択部36をさらに備えてもよい。経路選択部36は、記憶部27に記憶された第1経路LI1および第2経路LI2のうちから、後行作業車POが自動走行する自動走行経路LIとしていずれを用いるかを選択する選択操作を受け付ける。すなわち、作業者は、経路選択部36を操作することにより、後行作業車POが自動走行する自動走行経路LIを第1経路LI1および第2経路LI2のうちから選択できる。
【0082】
そして、後行作業車POは、前記経路選択部36で選択された自動走行経路LIに沿って自動走行する。これにより、後行作業車POは、より自動走行に適した自動走行経路LIに沿って自動走行することができ、精度良く作業走行を行うことができる。
【0083】
なお、経路生成部23は、内周領域CAの1つの外周辺に基づいて第2経路LI2を生成してもよいが、上述のように、手動走行により始点および終点を取得し、取得した始点および終点(基準点RP 基準方位RD)に基づいて第2経路LI2を生成してもよい。
【0084】
(4)上記各実施形態において、先行作業車PRはトラクタTRに限らず、自動走行により作業走行を行うトラクタTRや田植機等の任意の作業車であってもよい。同様に、後行作業車POはコンバイン1に限らず、自動走行を行う先行作業車PRが作業走行を行った後に作業走行を行う任意の作業車であってもよい。
【0085】
また、先行作業車PRがコンバイン1等の収穫機で、後行作業車POがトラクタTRや田植機であってもよい。この場合、後行作業車POの行う後行作業は、先行作業である収穫作業が終わって作物の育成が終了した後に、同じ圃場で育成が開始された作物に対する播種や植え付け、あるいは同じ圃場に対して行われる耕耘や畝立て等である。
【0086】
つまり、後行作業を行う後行作業車POは、先行作業車PRが行った作物の育成・収穫が終わった後に行われる新たな作物の育成において作業を行う作業車であってもよい。なお、先行作業車PRと後行作業車POは、作物の作成を跨ぐ同じ作業車であってもよい。例えば、先行作業車PRはコンバイン1であり、後行作業車POは次年(次回)の作物の育成(収穫)に用いられるコンバイン1であってもよい。
【0087】
(5)上記各実施形態において、先行作業車PRが行う作業は播種に限らず、苗植付作業等の任意の作業であってもよい。同様に、後行作業車POが行う作業(後行作業)は収穫に限らず、先行作業車PRが行う作業(先行作業)の後に行われる任意の作業であってもよい。
【0088】
(6)上記各実施形態において、自動走行制御システムはコンバイン1(後行作業車PO)の機体に搭載されてもよいが、通信端末4に搭載されてもよく、機外に設けられる管理コンピュータ等に設けられてもよい。管理コンピュータは、機体(先行作業車PR・後行作業車PO)と通信可能で、作業走行の各種の制御・管理を行う。さらに、自動走行制御システムの機能が、機体、通信端末4、管理コンピュータ等に分散されて配置されてもよい。例えば、自動走行制御システムの作業走行制御部25は機体に設けられ、他の機能ブロックは通信端末4や管理コンピュータに設けられてもよい。
【0089】
(7)上記各実施形態において、自走走行制御システムは上記のような機能ブロックから構成されるものに限定されず、任意の機能ブロックから構成されてもよい。例えば、自走走行制御システムの各機能ブロックはさらに細分化されても良く、逆に、各機能ブロックの一部または全部がまとめられてもよい。また、自走走行制御システムの機能は、上記機能ブロックに限らず、任意の機能ブロックが実行する方法により実現されてもよい。また、自走走行制御システムの機能の一部または全部は、ソフトウエアで構成されてもよい。ソフトウエアに係るプログラムは、記憶部27等の任意の記憶装置に記憶され、自走走行制御システムが備えるCPU等のプロセッサ(コンピュータ)、あるいは別に設けられたプロセッサ(コンピュータ)により実行される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、圃場に対して複数の作業走行を行って作物を育成する作業車に適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
21 取得部
23 経路生成部
25 作業走行制御部
27 記憶部
32 基準格納部
34 基準選択部
36 経路選択部
CA 内周領域(作業対象領域)
LI 自動走行経路
LI1 第1経路
LI2 第2経路
LIR 先行経路
PO 後行作業車
PR 先行作業車
RD 基準方位
RE 走行基準