(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004521
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】作業車制御システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250107BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20250107BHJP
【FI】
A01B69/00 303J
G05D1/02 R
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104253
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】吉田 脩
(72)【発明者】
【氏名】朝田 諒
(72)【発明者】
【氏名】奥平 淳人
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
(72)【発明者】
【氏名】東 龍矢
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB19
2B043BA05
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB06
2B043BB14
2B043DA01
2B043DC01
2B043EA12
2B043EA26
2B043EA37
2B043EB05
2B043EB08
2B043EB10
2B043EB14
2B043EB15
2B043EB16
2B043EB18
2B043EC12
2B043ED12
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301LL07
5H301LL08
(57)【要約】
【課題】障害物が存在すると判定されたことによって作業車の走行が停止した後、その障害物が走行に対する妨げとはならないにもかかわらず自動走行を再開できない事態を回避しやすい作業車制御システムを提供する。
【解決手段】作業車が自動走行しているときにおいて、制御モードが第1モードであり、且つ、障害物判定部によって障害物が存在すると判定された場合、走行制御部は、作業車の走行を停止する制御である停止制御を実行し、停止制御が実行された後に受付部が所定操作入力を受け付けた場合、モード切替部が制御モードを第1モードから第2モードへ切り替えると共に、走行制御部により作業車の自動走行が再開され、作業車が自動走行しているときにおいて、制御モードが第2モードである場合、停止制御は実行されない。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行が可能な作業車の走行を制御する作業車制御システムであって、
前記作業車の周囲に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部と、
前記作業車の走行を制御する走行制御部と、
前記走行制御部の制御モードを第1モードと第2モードとの間で切り替えるモード切替部と、
人為的な操作入力を受け付ける受付部と、を備え、
前記作業車が自動走行しているときにおいて、前記制御モードが前記第1モードであり、且つ、前記障害物判定部によって前記障害物が存在すると判定された場合、前記走行制御部は、前記作業車の走行を停止する制御である停止制御を実行し、
前記停止制御が実行された後に前記受付部が所定操作入力を受け付けた場合、前記モード切替部が前記制御モードを前記第1モードから前記第2モードへ切り替えると共に、前記走行制御部により前記作業車の自動走行が再開され、
前記作業車が自動走行しているときにおいて、前記制御モードが前記第2モードである場合、前記停止制御は実行されない作業車制御システム。
【請求項2】
前記作業車は、前記作業車に人が搭乗していない状態での自動走行が可能であるように構成されており、
前記受付部は、前記作業車の自動走行に関する操作を遠隔で行うことが可能な遠隔操作装置である請求項1に記載の作業車制御システム。
【請求項3】
前記作業車が自動走行を行っていないときに、前記受付部の有する操作具が第1操作を受け付けた場合、前記走行制御部により前記作業車の自動走行が開始され、
前記所定操作入力は、前記操作具に対する第2操作であり、
前記第1操作と前記第2操作とは互いに異なる請求項1または2に記載の作業車制御システム。
【請求項4】
前記第2操作の少なくとも一部は、長押し操作である請求項3に記載の作業車制御システム。
【請求項5】
前記操作具は、複数のボタンにより構成されている請求項4に記載の作業車制御システム。
【請求項6】
前記モード切替部が前記制御モードを前記第1モードから前記第2モードへ切り替えた後、前記モード切替部は、前記受付部の有する操作具が操作されている間に亘って前記制御モードが前記第2モードであり、前記操作具が操作されていない状態となったことに応じて前記制御モードが前記第2モードから前記第1モードに切り替わるように、前記制御モードの切り替えを実行する請求項1または2に記載の作業車制御システム。
【請求項7】
前記走行制御部は、前記制御モードが前記第2モードである場合の前記作業車の自動走行中の走行速度が、前記制御モードが前記第1モードである場合の前記作業車の自動走行中の走行速度よりも遅くなるように、前記作業車の走行を制御する請求項1または2に記載の作業車制御システム。
【請求項8】
圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部と前記圃場との境界の周辺に設定された判定ラインを記憶する記憶部と、
前記作業車と前記判定ラインとの位置関係を検知する位置関係検知部と、を備え、
前記作業車が自動走行しており、且つ、前記制御モードが前記第1モードであるとき、前記走行制御部は、前記位置関係検知部による検知結果に応じて、前記作業車が前記判定ラインの外側へ出ることが抑制されるように前記作業車の車速を減少させる制御である減速制御を実行するように構成されており、
前記減速制御が実行された後に前記受付部が前記所定操作入力を受け付けた場合、前記モード切替部は、前記制御モードを前記第1モードから前記第2モードへ切り替え、
前記作業車が自動走行しているときにおいて、前記制御モードが前記第2モードである場合、前記減速制御は実行されない請求項1または2に記載の作業車制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行が可能な作業車の走行を制御する作業車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車制御システムとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この作業車制御システムは、自動走行が可能な作業車(特許文献1では「無人走行車」)の走行を制御する作業車制御システムであり、作業車の前方に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部(特許文献1では「CPU」)を備えている。
【0003】
そして、この作業車制御システムは、作業車の前方に障害物が存在すると判定した場合、作業車の走行を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動走行中の作業車の周囲に障害物が存在すると判定された場合であっても、実際には、その障害物は作業車の走行に対する妨げとはならないこともある。
【0006】
しかしながら、上述の作業車制御システムにおいては、障害物が存在すると判定されたことによって作業車の走行が停止した後、その障害物が走行に対する妨げとはならないにもかかわらず、障害物が存在すると判定され続けることにより、自動走行を再開できない事態が想定される。その結果、作業車による作業の効率が低下してしまう。
【0007】
本発明の目的は、障害物が存在すると判定されたことによって作業車の走行が停止した後、その障害物が走行に対する妨げとはならないにもかかわらず自動走行を再開できない事態を回避しやすい作業車制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、自動走行が可能な作業車の走行を制御する作業車制御システムであって、前記作業車の周囲に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部と、前記作業車の走行を制御する走行制御部と、前記走行制御部の制御モードを第1モードと第2モードとの間で切り替えるモード切替部と、人為的な操作入力を受け付ける受付部と、を備え、前記作業車が自動走行しているときにおいて、前記制御モードが前記第1モードであり、且つ、前記障害物判定部によって前記障害物が存在すると判定された場合、前記走行制御部は、前記作業車の走行を停止する制御である停止制御を実行し、前記停止制御が実行された後に前記受付部が所定操作入力を受け付けた場合、前記モード切替部が前記制御モードを前記第1モードから前記第2モードへ切り替えると共に、前記走行制御部により前記作業車の自動走行が再開され、前記作業車が自動走行しているときにおいて、前記制御モードが前記第2モードである場合、前記停止制御は実行されないことにある。
【0009】
本構成によれば、障害物が存在すると判定されることによって停止制御が実行された後、その障害物が作業車の走行に対する妨げとはならないとユーザーが判断した際には、ユーザーが所定操作入力を行えば、走行制御部が第2モードとなると共に、作業車の自動走行が再開される。そして、走行制御部が第2モードである場合、停止制御は実行されない。
【0010】
これにより、障害物が存在すると判定されたことによって作業車の走行が停止した後、その障害物が走行に対する妨げとはならないにもかかわらず自動走行を再開できない事態を回避しやすい作業車制御システムを実現できる。
【0011】
さらに、本発明において、前記作業車は、前記作業車に人が搭乗していない状態での自動走行が可能であるように構成されており、前記受付部は、前記作業車の自動走行に関する操作を遠隔で行うことが可能な遠隔操作装置であると好適である。
【0012】
受付部が、作業車のうち人が搭乗する部分(例えばキャビン)に、着脱不能な状態で固定されている場合においては、作業車の自動走行をユーザーが作業車の外から監視しているときに停止制御が実行されると、ユーザーは、所定操作入力を行うためには、作業車の停止している場所まで移動して、作業車に搭乗する必要がある。これにより、作業の効率が低くなりがちである。
【0013】
ここで、本構成によれば、作業車の自動走行をユーザーが作業車の外から監視しているときに停止制御が実行された場合、ユーザーは、作業車の停止している場所まで移動することなく、所定操作入力を行うことができる。そのため、上述のように作業の効率が低くなってしまう事態を回避しやすい。
【0014】
さらに、本発明において、前記作業車が自動走行を行っていないときに、前記受付部の有する操作具が第1操作を受け付けた場合、前記走行制御部により前記作業車の自動走行が開始され、前記所定操作入力は、前記操作具に対する第2操作であり、前記第1操作と前記第2操作とは互いに異なると好適である。
【0015】
本構成によれば、操作具に対する操作によって、作業車の自動走行の開始と、停止制御が実行された後の第2モードへの切り替え及び自動走行の再開と、の何れも行うことができる。これにより、作業車の自動走行の開始を行うための操作具と、停止制御が実行された後の第2モードへの切り替え及び自動走行の再開を行うための操作具と、が各別に設けられている構成に比べて、受付部の構成がシンプルになりやすい。
【0016】
さらに、本発明において、前記第2操作の少なくとも一部は、長押し操作であると好適である。
【0017】
本構成によれば、操作具に対して少なくとも長押し操作が行われない限り、第2モードへの切り替え及び自動走行の再開は実行されない。そのため、ユーザーの意思に反して、誤操作等により、第2モードへの切り替え及び自動走行の再開が実行されてしまう事態を回避しやすい。
【0018】
さらに、本発明において、前記操作具は、複数のボタンにより構成されていると好適である。
【0019】
本構成によれば、操作具を構成する複数のボタンに対して第2操作が行われない限り、第2モードへの切り替え及び自動走行の再開は実行されない。そのため、操作具が単一のボタンである場合に比べて、ユーザーの意思に反して誤操作等により第2モードへの切り替え及び自動走行の再開が実行されてしまう事態を回避しやすい。
【0020】
さらに、本発明において、前記モード切替部が前記制御モードを前記第1モードから前記第2モードへ切り替えた後、前記モード切替部は、前記受付部の有する操作具が操作されている間に亘って前記制御モードが前記第2モードであり、前記操作具が操作されていない状態となったことに応じて前記制御モードが前記第2モードから前記第1モードに切り替わるように、前記制御モードの切り替えを実行すると好適である。
【0021】
本構成によれば、走行制御部の制御モードを、第2モードから第1モードへ、ユーザーの意図に応じて切り替えることができる。
【0022】
さらに、本発明において、前記走行制御部は、前記制御モードが前記第2モードである場合の前記作業車の自動走行中の走行速度が、前記制御モードが前記第1モードである場合の前記作業車の自動走行中の走行速度よりも遅くなるように、前記作業車の走行を制御すると好適である。
【0023】
本構成によれば、制御モードが第2モードである状態で、作業車が障害物の近傍を通過していく際、作業車の走行速度が遅くなる。これにより、ユーザーは、制御モードが第2モードである状態で、作業車が障害物の近傍を通過していく際、作業車がその障害物に干渉しないことを目視で確認しやすい。
【0024】
さらに、本発明において、圃場を囲む状態で設けられた圃場外縁部と前記圃場との境界の周辺に設定された判定ラインを記憶する記憶部と、前記作業車と前記判定ラインとの位置関係を検知する位置関係検知部と、を備え、前記作業車が自動走行しており、且つ、前記制御モードが前記第1モードであるとき、前記走行制御部は、前記位置関係検知部による検知結果に応じて、前記作業車が前記判定ラインの外側へ出ることが抑制されるように前記作業車の車速を減少させる制御である減速制御を実行するように構成されており、前記減速制御が実行された後に前記受付部が前記所定操作入力を受け付けた場合、前記モード切替部は、前記制御モードを前記第1モードから前記第2モードへ切り替え、前記作業車が自動走行しているときにおいて、前記制御モードが前記第2モードである場合、前記減速制御は実行されないと好適である。
【0025】
本構成によれば、作業車と判定ラインとの位置関係に応じて減速制御が実行された後、当該減速制御が不要であるとユーザーが判断した場合には、ユーザーが所定操作入力を行えば、走行制御部が第2モードとなる。その結果、作業車は、減速制御が実行されない状態となる。これにより、不要な減速制御が継続されてしまう事態を回避しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図4】制御部に関する構成を示すブロック図である。
【
図6】第1別実施形態における越境制御フローのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0028】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、普通型のコンバイン1(本発明に係る「作業車」に相当)は、収穫部H、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14、搬送部16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。
【0029】
走行装置11は、コンバイン1における下部に備えられている。また、走行装置11は、コンバイン1に搭載されたエンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバイン1は、走行装置11によって走行可能である。
【0030】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11より上側に備えられている。運転部12は運転座席12aを有している。運転部12にはユーザー(オペレータ)が搭乗可能である。
【0031】
穀粒排出装置18は、穀粒タンク14の上側に設けられている。また、衛星測位モジュール80は、運転部12の上面に取り付けられている。
【0032】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられている。そして、搬送部16は、収穫部Hの後側に設けられている。また、収穫部Hは、左右の分草具10、刈刃15、リール17を含んでいる。
【0033】
左右の分草具10は、収穫部Hの前端部における左端部及び右端部に設けられている。左右の分草具10は、圃場5(
図2参照)の植立穀稈を、収穫対象と対象外とに分草する。左の分草具10よりも右側、且つ、右の分草具10よりも左側の植立穀稈は、収穫対象として分草される。左の分草具10よりも左側の植立穀稈、及び、右の分草具10よりも右側の植立穀稈は、対象外として分草される。
【0034】
刈刃15は、左右の分草具10により収穫対象として分草された植立穀稈を刈り取る。また、リール17は、機体左右方向に沿うリール軸芯17b周りに回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。刈刃15により刈り取られた刈取穀稈は、搬送部16へ送られる。
【0035】
この構成により、収穫部Hは、圃場5の穀物を収穫する。そして、コンバイン1は、収穫部Hによって圃場5の穀物を収穫しながら走行装置11によって走行する収穫走行が可能である。
【0036】
収穫部Hにより収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。
【0037】
脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0038】
また、コンバイン1は、障害物センサ30を備えている。障害物センサ30は、運転部12の上部における前端部に取り付けられている。障害物センサ30は、コンバイン1の前方へ向けられている。
【0039】
障害物センサ30は、コンバイン1の周囲(例えば前方)に存在する障害物を検出する。コンバイン1の周囲に存在する障害物とは、コンバイン1が自動走行を行う際に、支障となる物体(あるいは、支障となる可能性のある物体)である。障害物は、例えば樹木や岩や建物であっても良いし、人や鳥獣であっても良い。
【0040】
障害物センサ30は、例えばレーザーセンサやレーダーセンサを用いて構成することが可能であるし、あるいはカメラを用いて構成することも可能である。このような、レーザーセンサ、レーダーセンサ、カメラの何れかを用いて障害物を検出する方法については公知であるので説明は省略する。
【0041】
ここで、コンバイン1は、圃場5における収穫作業を行う場合、
図2に示すように外周走行を行った後、自動走行によって収穫走行を行うように構成されている。尚、外周走行とは、手動操作によって圃場5内の外周領域において行われる収穫走行である。ただし、本発明はこれに限定されず、外周領域において行われる収穫走行は、自動走行によって行われても良い。
【0042】
図2においては、外周走行でコンバイン1が走行する経路が矢印で示されている。この経路に沿った収穫走行が完了すると、圃場5は、
図3に示す状態となる。本実施形態における外周走行は、
図2に示すように、圃場5の最外周を一周する収穫走行である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、二周以上の周回走行が行われても良い。
【0043】
また、
図2及び
図3に示すように、圃場5は、圃場外縁部6の内側に位置している。圃場外縁部6は、圃場5を囲む状態で設けられている。圃場外縁部6には、例えば、畦畔や給排水ポンプ等が含まれている。
【0044】
また、本実施形態において、圃場5は長方形である。ただし、本発明はこれに限定されない。圃場5はいかなる形状であっても良い。
【0045】
コンバイン1の走行は、作業車制御システムA(
図4参照)によって制御される。即ち、作業車制御システムAは、自動走行が可能なコンバイン1の走行を制御する。尚、コンバイン1は、運転部12に人(ユーザー)が搭乗していない状態で、自動走行を行うことができる。即ち、コンバイン1は、コンバイン1に人が搭乗していない状態での自動走行が可能であるように構成されている。以下では、作業車制御システムAについて詳述する。
【0046】
〔自動走行に関する構成〕
図4に示すように、作業車制御システムAは、制御部20を備えている。制御部20は、位置算出部21、領域算出部22、経路生成部23、走行制御部24を有している。尚、制御部20は、コンバイン1に搭載されている。また、障害物センサ30及び衛星測位モジュール80は、作業車制御システムAに含まれている。
【0047】
衛星測位モジュール80は、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)で用いられる人工衛星GS(
図1参照)からのGPS信号を受信する。そして、
図4に示すように、衛星測位モジュール80は、受信したGPS信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを位置算出部21へ送る。
【0048】
尚、本発明はこれに限定されない。衛星測位モジュール80は、GPSを利用するものでなくても良い。例えば、衛星測位モジュール80は、GPS以外のGNSS(GLONASS、Galileo、みちびき、BeiDou等)を利用するものであっても良い。
【0049】
位置算出部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の位置座標を経時的に算出する。算出されたコンバイン1の経時的な位置座標は、領域算出部22及び走行制御部24へ送られる。
【0050】
領域算出部22は、位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、
図3に示すように、圃場外形EA及び作業対象領域WAを算出する。
【0051】
より具体的には、領域算出部22は、位置算出部21から受け取ったコンバイン1の経時的な位置座標に基づいて、圃場5における上述の外周走行でのコンバイン1の走行軌跡TR(
図2参照)を算出する。そして、領域算出部22は、算出されたコンバイン1の走行軌跡TRに基づいて、左右の分草具10のうち圃場外側に位置する分草具10の移動軌跡、及び、圃場内側に位置する分草具10の移動軌跡を算出する。
【0052】
さらに、領域算出部22は、外周走行における圃場外側に位置する分草具10の移動軌跡に基づいて、圃場外形EAを算出する。尚、
図3においては、算出された圃場外形EAが圃場5の実際の外形線に一致しているが、本発明はこれに限定されない。算出された圃場外形EAは、圃場5の実際の外形線に一致していなくても良い。例えば、圃場外形EAは、圃場5の実際の外形線よりも圃場内側に位置していても良い。
【0053】
また、領域算出部22は、外周走行における圃場内側に位置する分草具10の移動軌跡に基づいて、未作業領域UAを算出する。未作業領域UAは、外周走行における圃場内側に位置する分草具10の移動軌跡の内側の領域(言い換えれば、当該移動軌跡により囲まれた領域)である。さらに、領域算出部22は、未作業領域UAを矩形(長方形)に近似することにより、作業対象領域WAを算出する。
【0054】
これにより、領域算出部22は、圃場外形EA及び作業対象領域WAを示すマップ(情報)を生成する。
【0055】
図4に示すように、領域算出部22により生成されたマップは、経路生成部23へ送られる。
【0056】
経路生成部23は、領域算出部22から受け取ったマップに基づいて、
図3に示すように、コンバイン1が作業対象領域WAにおける収穫走行を行うための複数の走行経路LIを生成する。尚、特に限定されないが、
図3に示すように、本実施形態において、走行経路LIは、縦横方向に延びる複数のメッシュ線である。また、複数のメッシュ線は直線でなくても良く、湾曲していても良い。
【0057】
図4に示すように、経路生成部23により生成された複数の走行経路LIは、走行制御部24へ送られる。
【0058】
走行制御部24は、位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標に基づいて、複数の走行経路LIの中から、コンバイン1が走行するべき走行経路LIを選択する。
【0059】
走行制御部24は、
図1に示した走行装置11を制御することにより、コンバイン1の自動走行を制御するように構成されている。走行制御部24は、コンバイン1の位置座標と、走行制御部24により選択された走行経路LIを示す情報と、に基づいて、コンバイン1の自動走行を制御する。より具体的には、走行制御部24は、走行経路LIに沿った自動走行によって収穫走行が行われるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0060】
即ち、作業車制御システムAは、コンバイン1の走行を制御する走行制御部24を備えている。
【0061】
この自動走行において、走行制御部24は、例えば、コンバイン1が現在走行している走行経路LIの一つ後の走行経路LIを選択してもよい。即ち、走行制御部24は、新たな走行経路LIに沿った走行が始まるたびに、コンバイン1が現在走行している走行経路LIの次にコンバイン1が走行すべき一つの走行経路LIを選択するように構成されていても良い。
【0062】
ただし、本発明はこれに限定されない。走行制御部24は、コンバイン1が現在走行している走行経路LIに続けてコンバイン1が走行すべき複数(例えば二つまたは三つ)の走行経路LIを選択すると共に、当該複数の走行経路LIの走行順番を決定しても良い。
【0063】
尚、走行制御部24は、複数の走行経路LIのうち、まだ走行していない走行経路LIの中から、走行経路LIを選択する。走行制御部24は、位置算出部21から受け取ったコンバイン1の位置座標に基づいて、コンバイン1の走行が効率的になるように走行経路LIを選択すると好適である。
【0064】
尚、制御部20、及び、制御部20に含まれる位置算出部21等の各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおける機能部であっても良い。
【0065】
〔自動走行の開始及び終了〕
図4に示すように、作業車制御システムAは、受付部40を備えている。受付部40は、人為的な操作入力を受け付けるように構成されている。受付部40は、コンバイン1の自動走行に関する操作を遠隔で行うことが可能な遠隔操作装置である。
【0066】
即ち、作業車制御システムAは、人為的な操作入力を受け付ける受付部40を備えている。
【0067】
詳述すると、
図1及び
図4に示すように、受付部40は、操作具39及び終了ボタン43を有している。上述の複数の走行経路LIが生成された後、コンバイン1が自動走行を行っていないときに、操作具39が第1操作を受け付けた場合、受付部40は、所定の信号を走行制御部24へ送る。走行制御部24は、当該信号に応じて、コンバイン1の自動走行を開始する。
【0068】
即ち、コンバイン1が自動走行を行っていないときに、受付部40の有する操作具39が第1操作を受け付けた場合、走行制御部24によりコンバイン1の自動走行が開始される。
【0069】
本実施形態において、第1操作は、操作具39を1秒間長押し操作することである。ただし、第1操作の具体的な内容は、特に限定されない。第1操作は、いかなる操作であっても良い。
【0070】
図1及び
図4に示すように、操作具39は、互いに左右に隣接する第1ボタン41及び第2ボタン42により構成されている。第1ボタン41及び第2ボタン42は、何れも、ボタンである。即ち、操作具39は、複数のボタンにより構成されている。本実施形態において、第1操作は、第1ボタン41及び第2ボタン42を同時に1秒間長押し操作することである。
【0071】
ただし、本発明はこの構成に限定されない。操作具39は、三つ以上のボタンにより構成されていても良い。
【0072】
また、コンバイン1が自動走行を行っているときに、終了ボタン43が操作を受け付けた場合、受付部40は、所定の信号を走行制御部24へ送る。走行制御部24は、当該信号に応じて、コンバイン1の自動走行を終了する。その結果、コンバイン1の走行は停止する。
【0073】
コンバイン1が自動走行を行っている間、例えば、ユーザーは、受付部40を所持した状態で、コンバイン1の外部から、コンバイン1の自動走行を監視することができる。
【0074】
〔判定ラインに関する構成〕
図4に示すように、制御部20は、判定ライン設定部25(本発明に係る「記憶部」に相当)及び位置関係検知部26を有している。
【0075】
判定ライン設定部25は、領域算出部22から、圃場外形EAを示す情報を取得する。判定ライン設定部25は、当該情報に基づいて、判定ラインEBを設定すると共に、当該判定ラインEBを記憶する。判定ラインEBとは、圃場外縁部6と圃場5との境界の周辺に設定された線(より具体的には、例えば矩形状の線)である。
【0076】
即ち、作業車制御システムAは、圃場5を囲む状態で設けられた圃場外縁部6と圃場5との境界の周辺に設定された判定ラインEBを記憶する判定ライン設定部25を備えている。
【0077】
尚、
図3においては、設定された判定ラインEBが圃場外形EA及び圃場5の実際の外形線(言い換えれば、圃場外縁部6と圃場5との境界)に一致しているが、本発明はこれに限定されない。判定ラインEBは、圃場外形EAや圃場5の実際の外形線(言い換えれば、圃場外縁部6と圃場5との境界)に一致していなくても良い。例えば、判定ラインEBは、圃場外形EAよりも圃場内側の位置に設定されていても良い。
【0078】
図4に示すように、位置関係検知部26は、判定ライン設定部25から、判定ラインEBを示す情報を取得する。また、位置関係検知部26は、位置算出部21から、コンバイン1の経時的な位置座標(または、現在のコンバイン1の位置座標)を取得する。位置関係検知部26は、判定ラインEBを示す情報と、コンバイン1の位置座標と、に基づいて、コンバイン1と判定ラインEBとの位置関係を算出する。これにより、位置関係検知部26は、コンバイン1と判定ラインEBとの位置関係を検知する。
【0079】
即ち、作業車制御システムAは、コンバイン1と判定ラインEBとの位置関係を検知する位置関係検知部26を備えている。
【0080】
位置関係検知部26による検知結果は、走行制御部24へ送られる。コンバイン1が自動走行を行っているとき、走行制御部24は、当該検知結果に基づいて、コンバイン1が判定ラインEBの外側へ出ることが抑制されるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0081】
〔走行制御フロー〕
制御部20は、コンバイン1が自動走行を行っているとき、
図5に示す走行制御フローに従って、コンバイン1の走行を制御するように構成されている。
【0082】
この走行制御フローが開始されると、まず、ステップS01の処理が実行される。ステップS01では、制御部20に含まれる障害物判定部27(
図4参照)によって、コンバイン1の周囲に障害物が存在するか否かが判定される。
【0083】
詳述すると、障害物判定部27は、障害物センサ30からの信号に基づいて、コンバイン1の周囲(例えば前方)に障害物が存在するか否かを判定するように構成されている。即ち、作業車制御システムAは、コンバイン1の周囲に障害物が存在するか否かを判定する障害物判定部27を備えている。
【0084】
障害物判定部27によってコンバイン1の周囲に障害物が存在すると判定された場合(
図5のステップS01にて「Yes」)、処理はステップS02へ移行する。障害物判定部27によってコンバイン1の周囲に障害物が存在しないと判定された場合(
図5のステップS01にて「No」)、処理はステップS12へ移行する。
【0085】
ここで、
図4に示すように、制御部20は、モード切替部28を有している。モード切替部28は、受付部40に対する操作入力に応じて、走行制御部24の制御モードを第1モードと第2モードとの間で切り替えるように構成されている。
【0086】
即ち、作業車制御システムAは、走行制御部24の制御モードを第1モードと第2モードとの間で切り替えるモード切替部28を備えている。
【0087】
図5のステップS02では、走行制御部24の制御モードが第2モードであるか否かが制御部20によって判定される。走行制御部24の制御モードが第1モードである場合(
図5のステップS02にて「No」)、処理はステップS03へ移行する。
【0088】
ステップS03では、走行制御部24が、停止制御を実行する。停止制御とは、コンバイン1の走行を停止する制御である。
【0089】
このように、コンバイン1が自動走行しているときにおいて、制御モードが第1モードであり、且つ、障害物判定部27によって障害物が存在すると判定された場合、走行制御部24は、コンバイン1の走行を停止する制御である停止制御を実行する。
【0090】
ここで、
図5のステップS02において、走行制御部24の制御モードが第2モードである場合(
図5のステップS02にて「Yes」)、処理がステップS03へ移行することなく、この走行制御フローは一旦終了する。即ち、この場合、停止制御は実行されない。
【0091】
このように、コンバイン1が自動走行しているときにおいて、制御モードが第2モードである場合、停止制御は実行されない。
【0092】
ステップS03にて停止制御が実行されると、処理はステップS04へ移行する。ステップS04では、受付部40が所定操作入力を受け付けたか否かがモード切替部28によって判定される。ここで、本実施形態では、所定操作入力は、操作具39に対する第2操作である。即ち、ステップS04では、操作具39に対する第2操作が行われたか否かがモード切替部28によって判定される。
【0093】
本実施形態において、第2操作は、操作具39を3秒間長押し操作することである。より具体的には、第2操作は、第1ボタン41及び第2ボタン42を同時に3秒間長押し操作することである。
【0094】
即ち、第1操作と第2操作とは互いに異なっている。また、このように、第2操作の少なくとも一部は、長押し操作である。ただし、第2操作の具体的な内容は、特に限定されない。第2操作は、いかなる操作であっても良い。例えば、第2操作は、操作具39を所定回数押した後で所定時間に亘って長押し操作することであっても良い。
【0095】
尚、受付部40は、操作具39に対する第2操作が行われた場合、所定の信号をモード切替部28へ送るように構成されている。
【0096】
操作具39に対する第2操作が行われていない場合(
図5のステップS04にて「No」)、処理はステップS05へ移行する。ステップS05では、操作具39に対する第1操作が行われたか否かが走行制御部24によって判定される。
【0097】
操作具39に対する第1操作が行われていない場合(
図5のステップS05にて「No」)、処理はステップS04へ戻る。即ち、処理がステップS04へ移行した後、操作具39に対して第1操作または第2操作が行われるまで、処理はステップS04及びステップS05を繰り返すこととなる。
【0098】
操作具39に対する第2操作が行われた場合(
図5のステップS04にて「Yes」)、処理はステップS06へ移行する。また、操作具39に対する第1操作が行われた場合(
図5のステップS05にて「Yes」)、処理はステップS09へ移行する。
【0099】
ステップS06では、モード切替部28が、走行制御部24の制御モードを第1モードから第2モードへ切り替える。その後、処理はステップS07へ移行する。
【0100】
ステップS07では、走行制御部24により、コンバイン1の自動走行が再開される。その後、処理はステップS08へ移行する。
【0101】
このように、停止制御が実行された後に受付部40が所定操作入力を受け付けた場合、モード切替部28が制御モードを第1モードから第2モードへ切り替えると共に、走行制御部24によりコンバイン1の自動走行が再開される。
【0102】
ステップS08では、走行制御部24により、コンバイン1の低速走行が開始される。これにより、コンバイン1は、走行制御部24の制御モードが第2モードである場合、低速走行での自動走行を行うこととなる。尚、低速走行においては、走行制御部24の制御モードが第1モードである場合の自動走行中の走行速度よりも低い速度で走行するように、コンバイン1の走行が制御される。
【0103】
このように、走行制御部24は、制御モードが第2モードである場合のコンバイン1の自動走行中の走行速度が、制御モードが第1モードである場合のコンバイン1の自動走行中の走行速度よりも遅くなるように、コンバイン1の走行を制御する。
【0104】
ステップS08にてコンバイン1の低速走行が開始されると、この走行制御フローは一旦終了する。
【0105】
ステップS09では、障害物判定部27によって、コンバイン1の周囲に障害物が存在するか否かが判定される。障害物判定部27によってコンバイン1の周囲に障害物が存在すると判定された場合(
図5のステップS09にて「Yes」)、処理はステップS10へ移行する。障害物判定部27によってコンバイン1の周囲に障害物が存在しないと判定された場合(
図5のステップS09にて「No」)、処理はステップS11へ移行する。
【0106】
尚、ステップS03にて停止制御が実行された後、例えば障害物が除去された場合、
図5のステップS09にて「No」と判定されることとなる。
【0107】
ステップS10では、走行制御部24は、コンバイン1が停止している状態を維持する。即ち、ステップS10では、自動走行が再開されない。その後、処理はステップS04へ戻る。
【0108】
ステップS11では、走行制御部24により、コンバイン1の自動走行が再開される。その後、この走行制御フローは一旦終了する。
【0109】
ステップS12では、コンバイン1が低速走行中であるか否かが、走行制御部24によって判定される。コンバイン1が低速走行中である場合(
図5のステップS12にて「Yes」)、処理はステップS13へ移行する。コンバイン1が低速走行中でない場合(
図5のステップS12にて「No」)、この走行制御フローは一旦終了する。
【0110】
ここで、モード切替部28は、走行制御部24の制御モードが第1モードから第2モードへ切り替わった後、操作具39が操作されている間に亘って制御モードが第2モードであり、操作具39が操作されていない状態となったことに応じて制御モードが第2モードから第1モードに切り替わるように、制御モードの切り替えを実行するように構成されている。
【0111】
従って、本実施形態においては、操作具39を3秒間長押し操作することによって走行制御部24の制御モードが第1モードから第2モードへ切り替わった後、操作具39がそのまま押し操作され続けている間に亘って、制御モードは第2モードのままで維持される。そして、ユーザーが操作具39の押し操作をやめると、制御モードは第2モードから第1モードへ切り替わる。
【0112】
このように、モード切替部28が制御モードを第1モードから第2モードへ切り替えた後、モード切替部28は、受付部40の有する操作具39が操作されている間に亘って制御モードが第2モードであり、操作具39が操作されていない状態となったことに応じて制御モードが第2モードから第1モードに切り替わるように、制御モードの切り替えを実行する。
【0113】
図5のステップS13では、走行制御部24の制御モードが第2モードであるか否かが制御部20によって判定される。走行制御部24の制御モードが第2モードである場合(
図5のステップS13にて「Yes」)、この走行制御フローは一旦終了する。走行制御部24の制御モードが第1モードである場合(
図5のステップS13にて「No」)、処理はステップS14へ移行する。
【0114】
ステップS14では、走行制御部24が、コンバイン1の走行速度を、自動走行における通常の速度に戻す。これにより、コンバイン1は低速走行から通常速度走行に復帰する。その後、この走行制御フローは一旦終了する。
【0115】
尚、本実施形態において、自動走行における通常の速度は、走行制御部24の制御モードが第1モードである場合のコンバイン1の自動走行中の走行速度として予め設定された速度であって、低速走行での速度より高い。
【0116】
以上で説明した構成によれば、障害物が存在すると判定されることによって停止制御が実行された後、その障害物がコンバイン1の走行に対する妨げとはならないとユーザーが判断した際には、ユーザーが所定操作入力を行えば、走行制御部24が第2モードとなると共に、コンバイン1の自動走行が再開される。そして、走行制御部24が第2モードである場合、停止制御は実行されない。
【0117】
これにより、障害物が存在すると判定されたことによってコンバイン1の走行が停止した後、その障害物が走行に対する妨げとはならないにもかかわらず自動走行を再開できない事態を回避しやすい作業車制御システムAを実現できる。
【0118】
〔第1別実施形態〕
上記実施形態において、制御部20は、コンバイン1が自動走行を行っているとき、
図5に示す走行制御フローに従って、コンバイン1の走行を制御する。
【0119】
しかしながら、本発明はこれに限定されない。以下では、本発明に係る第1別実施形態について、上記実施形態とは異なる点を中心に説明する。以下で説明している部分以外の構成は、上記実施形態と同様である。また、上記実施形態と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0120】
第1別実施形態において、制御部20は、コンバイン1が自動走行を行っているとき、
図6に示す越境制御フローに従って、コンバイン1の走行を制御する。尚、
図5に示す走行制御フローに従った制御と、
図6に示す越境制御フローに従った制御と、の両方が同時並行で行われても良い。
【0121】
この越境制御フローが開始されると、まず、ステップS21の処理が実行される。ステップS21では、位置関係検知部26によって、コンバイン1が判定ラインEBの近傍に位置しているか否かが判定される。
【0122】
位置関係検知部26によってコンバイン1が判定ラインEBの近傍に位置していると判定された場合(
図6のステップS21にて「Yes」)、処理はステップS22へ移行する。位置関係検知部26によってコンバイン1が判定ラインEBの近傍に位置していないと判定された場合(
図6のステップS21にて「No」)、処理はステップS27へ移行する。
【0123】
尚、ステップS21での判定においては、平面視でのコンバイン1の外形が判定ラインEBの近傍に位置しているか否かが判定されても良い。
【0124】
また、ステップS21での判定においては、コンバイン1の所定部位(例えば収穫部H)が圃場外縁部6(例えば畦畔)のうち当該所定部位と同じ高さに位置する部分の近傍に位置しているか否かが判定されても良い。この場合、複数の高さに対応する複数の判定ラインEBが設定されていても良い。
【0125】
ステップS22では、走行制御部24の制御モードが第2モードであるか否かが制御部20によって判定される。走行制御部24の制御モードが第1モードである場合(
図6のステップS22にて「No」)、処理はステップS23へ移行する。
【0126】
ステップS23では、走行制御部24が、減速制御を実行する。減速制御とは、コンバイン1が判定ラインEBの外側へ出ることが抑制されるようにコンバイン1の車速を減少させる制御である。
【0127】
このように、コンバイン1が自動走行しており、且つ、制御モードが第1モードであるとき、走行制御部24は、位置関係検知部26による検知結果に応じて、コンバイン1が判定ラインEBの外側へ出ることが抑制されるようにコンバイン1の車速を減少させる制御である減速制御を実行するように構成されている。
【0128】
尚、減速制御は、コンバイン1の車速を0(ゼロ)にする制御であっても良い。即ち、減速制御は、コンバイン1の走行を停止する制御であっても良い。
【0129】
ここで、
図6のステップS22において、走行制御部24の制御モードが第2モードである場合(
図6のステップS22にて「Yes」)、処理がステップS23へ移行することなく、この越境制御フローは一旦終了する。即ち、この場合、減速制御は実行されない。
【0130】
このように、コンバイン1が自動走行しているときにおいて、制御モードが第2モードである場合、減速制御は実行されない。
【0131】
ステップS23にて減速制御が実行されると、処理はステップS24へ移行する。ステップS24では、受付部40が所定操作入力を受け付けたか否かがモード切替部28によって判定される。ここで、本実施形態では、所定操作入力は、操作具39に対する第2操作である。即ち、ステップS24では、操作具39に対する第2操作が行われたか否かがモード切替部28によって判定される。
【0132】
操作具39に対する第2操作が行われていない場合(
図6のステップS24にて「No」)、この越境制御フローは一旦終了する。即ち、この場合、減速制御の実行が維持される。
【0133】
操作具39に対する第2操作が行われた場合(
図6のステップS24にて「Yes」)、処理はステップS25へ移行する。ステップS25では、モード切替部28が、走行制御部24の制御モードを第1モードから第2モードへ切り替える。その後、処理はステップS26へ移行する。
【0134】
このように、減速制御が実行された後に受付部40が所定操作入力を受け付けた場合、モード切替部28は、制御モードを第1モードから第2モードへ切り替える。
【0135】
ステップS26では、走行制御部24が、減速制御を終了し、コンバイン1の走行速度を、自動走行における通常の速度に戻す。これにより、コンバイン1は通常速度走行に復帰する。その後、この走行制御フローは一旦終了する。
【0136】
ステップS27では、走行制御部24により減速制御が実行中であるか否かが、走行制御部24によって判定される。減速制御が実行中である場合(
図6のステップS27にて「Yes」)、処理はステップS28へ移行する。減速制御が実行中でない場合(
図6のステップS27にて「No」)、この越境制御フローは一旦終了する。
【0137】
ステップS28では、走行制御部24が、減速制御を終了し、コンバイン1の走行速度を、自動走行における通常の速度に戻す。これにより、コンバイン1は通常速度走行に復帰する。その後、この走行制御フローは一旦終了する。
【0138】
〔その他の実施形態〕
(1)位置関係検知部26は、LiDAR(Light Detection And Ranging)センサやカメラであっても良い。
【0139】
(2)走行制御部24の制御モードは、第1モード及び第2モードだけでなく、さらに別のモードにも切り替え可能であっても良い。
【0140】
(3)受付部40は、コンバイン1(具体的には、例えば運転部12)に、着脱不能な状態で固定されていても良い。
【0141】
(4)コンバイン1は、コンバイン1に人が搭乗している状態に限り、自動走行が可能であるように構成されていても良い。
【0142】
(5)コンバイン1の周囲に障害物が存在しない状態で自動走行を開始するための操作を受け付ける部材と、所定操作入力を受け付ける部材と、が互いに異なっていても良い。
【0143】
(6)受付部40は、声での操作入力を受け付けるように構成されていても良い。
【0144】
(7)第2操作が長押し操作を含んでいなくても良い。
【0145】
(8)操作具39は、単一の部材(例えば単一のボタン)により構成されていても良い。
【0146】
(9)複数の障害物センサ30が設けられていても良い。また、複数の障害物センサ30は、互いに異なる方向へ向けられていても良い。さらに、複数の障害物センサ30のうち一つの障害物センサ30によって障害物が検出されたことによって停止制御が実行された後、走行制御部24の制御モードが第1モードから第2モードへ切り替えられると共に自動走行が再開された場合において、当該障害物センサ30とは異なる障害物センサ30によって障害物が検出された場合には、走行制御部24の制御モードが第2モードであっても、停止制御が実行されても良い。
【0147】
(10)走行制御部24の制御モードが第2モードである場合に警告音を発する警告部(例えばブザー)が設けられていても良い。
【0148】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、普通型のコンバインだけではなく、自脱型のコンバイン、トラクタ、田植機、建設作業機等の種々の作業車に利用可能である。
【符号の説明】
【0150】
1 :コンバイン(作業車)
5 :圃場
6 :圃場外縁部
24 :走行制御部
25 :判定ライン設定部(記憶部)
26 :位置関係検知部
27 :障害物判定部
28 :モード切替部
39 :操作具
40 :受付部
A :作業車制御システム
EB :判定ライン