(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004558
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】施工器具
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20250107BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
E04F13/08 101L
H01F7/02 F
E04F13/08 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104316
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000110893
【氏名又は名称】ニチレイマグネット株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前橋 清
(72)【発明者】
【氏名】前橋 義幸
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雅治
(72)【発明者】
【氏名】笠原 修
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA42
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB05
2E110AB23
2E110CA30
2E110DC23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軟磁性体に非磁性体を押し圧接着する「スマートJG工法」(登録商標)において、非磁性体の厚さが12.5mm以下に適用する為の、握り易い把持部を有し、軽くてハンドリング性に優れ、且つより安全な施工器具を提供する。
【解決手段】2個の永久磁石4それぞれが必要に応じてヨーク3を介して棒状の結合ヨーク2の両端に装着されていて、該2個の永久磁石の結合ヨーク側の磁極が異なり、且つ永久磁石に比較的近い軟磁性体10を通る磁気回路12が構成されると共に、結合ヨークを握る為の空間13を設ける。更に、装着する2個の永久磁石の形状を特定し、磁気回路を構成するヨークと結合ヨークの形状も制限して、軽量でハンドリング性を改善するとともに、不要な部分に磁束が漏れない磁気回路を構成しているので、磁気作用面14以外の部分の磁気吸着が弱く、取り扱い時の安全性が増している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性体に非磁性体を固定する為の施工器具であって、磁力を発生する第一の永久磁石が、必要に応じてヨークを介して、結合ヨークの1端に接すると共に、一定以上の間隔を空けて結合ヨークの他の端に、必要に応じてヨークを介して第二の永久磁石が配置されている施工器具において、該第一磁石、第二磁石の結合ヨーク側の磁極が異なると共に、第一磁石又は第二磁石とそれぞれに対し必要に応じて付随したヨークの厚さとの合計が、非磁性体の厚さより大きいことを特徴とする施工器具。
【請求項2】
施工時には、永久磁石から発出した磁束が、ヨーク、結合ヨーク、他のヨーク、他の永久磁石、軟磁性体、最初の永久磁石へと順次回る、磁気回路が構成されることを特徴とする、請求項1に記載の施工器具。
【請求項3】
結合ヨークに装着された第一永久磁石と第二永久磁石との間の部分の結合ヨーク部分を、把手部として人手で握ることが出来る空間を有することを特徴とする、請求項1に記載の施工器具。
【請求項4】
ヨーク相当部分の形状が、永久磁石に対向する平面は永久磁石の磁極表面と同等の面積であり且つ、結合ヨークに近づくにつれてその断面積が小さくなることを特徴とする、請求項1に記載の施工器具。
【請求項5】
結合ヨークの断面積が900平方mm以下300平方mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の施工器具。
【請求項6】
永久磁石の1つの磁極表面の面積が、1000平方mm以上、より好ましくは1200平方mm以上であり、1900平方mm以下であるとともに、厚さが9mm以上15mm以下であるNd磁石を採用することを特徴とする、請求項1に記載の施工器具。
【請求項7】
総重量が2kg以下であることを特徴とする、請求項1乃至6に記載の施工器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力によって軟磁性体に非磁性体を押圧する為の施工器具に係わり、特に厚さが12.5mm程度以下の非磁性体の施工に好適で、ハンドリング性に優れる施工器具に係わる。
【背景技術】
【0002】
建築物の内装工事において、下地鋼鈑(軟磁性体)或いは木材に例えば石膏ボード(非磁性体)をネジ留めするのが一般的だった。この場合、コードで電力を引いて電気ドリルで施工するので、それらを準備する手間がかかり、且つ騒音と粉塵が発生していた。
【0003】
他方で、固形接着剤を用いて下張り(例えば軟磁性体)に上張り(例えば非磁性体)を重ねる場合等では、人力で体重を掛けて且つ一定時間を掛けて圧締作業を行うことが必要だった。この場合は各個人間の作業むら(バラツキ)があり、一作業内においても作業むらがあり、信頼性に欠ける面があった。
【0004】
以上に鑑み吉野石膏株式会社は、軟磁性体に非磁性体を押し圧接着する「スマートJG工法」(登録商標)を開発した。該工法は、電気やドリルが不要で、人手による作業時間と労力を軽減出来ると共に、作業者の熟練度や作業むらを排除して、正確かつ確実な施工を可能にする。本発明者らは、該工法用に特化した、磁力に依って押圧力を発生させる新規な施工器具を提案した。(出願番号 PCT/JP2022/048374)
【0005】
一方で、下記特許文献1は、ホットメルト接着剤が冷却固化するまでの間、内装材を金属製の下地に押し付ける為の施工補助器具を含み、その施工方法を提案している。この文献に開示の施工補助器具は、下地材に対する磁石の吸引力を利用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上述した本発明者らが提案した施工器具は、40mmを超える厚さの非磁性体をも対象としているので、重量が4kgを超えて、ハンドリング性に難があった。また、その強力な磁気吸引力故に取扱い時の安全性確保に細心の注意が必要だった。
また、特許文献1に開示の施工補助器具は、本発明者らが提案する施工器具とは目的や作用効果及び構成が異なる。
【0008】
そこで、本発明は、施工数が多い非磁性ボードの厚さが9.5mmの場合、及び、12.5mm厚の天井板を貼り付ける場合等に特化した施工器具において、軽量化を図り、持ち易い形状とし、且つ磁気的により安全性を増す構造・構成を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、軟磁性体に非磁性体を固定する為の施工器具であって、磁力を発生する第一の永久磁石が、必要に応じてヨークを介して、棒状の結合ヨークの1端に接すると共に、一定以上の間隔を空けて結合ヨークの他の端に、必要に応じてヨークを介して第二の永久磁石が配置されている施工器具において、該第一磁石、第二磁石の結合ヨーク側の磁極が異なると共に、第一磁石又は第二磁石とそれぞれに対し必要に応じて付随したヨークの厚さとの合計が、非磁性体の厚さより大きいことを特徴とする。
【0010】
施工時には、永久磁石から発出した磁束が、ヨーク、結合ヨーク、他のヨーク、他の永久磁石、軟磁性体、最初の永久磁石へと順次回る、磁気回路が構成される。
【0011】
そして、結合ヨークに装着された第一永久磁石と第二永久磁石との間の部分の結合ヨーク部分を、把手部として人手で握ることが出来る空間を有する。
【0012】
ヨーク相当部分の形状は、永久磁石に対向する平面は永久磁石の磁極表面と同等の面積であり且つ、結合ヨークに近づくにつれてその断面積が小さくなることを特徴とする。
【0013】
更に、結合ヨークの断面積が300平方mm以上900平方mm以下である。
【0014】
永久磁石の形状は、1つの磁極表面の面積が、1000平方mm以上、より好ましくは1200平方mm以上であり、1900平方mm以下であるとともに、厚さが9mm以上15mm以下とする。
【0015】
そして、総重量を2kg以下に抑える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、軽量且つ握り易い把手部を有するのでハンドリング性に優れ、施工器具として有効な磁力を有し、更に、必要の無い部分に磁束を漏らさない磁気回路を構成するので、予期せぬ磁気吸着の危険性が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の施工器具1の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の施工器具1の形状を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)図のA-A線段面図、(c)は(a)図のB-B線断面図、(d)は側面図を示す。
【
図3】本発明の施工器具1による施工時の状態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面から見た一部断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、添付図面に図示した部材などの縮尺や角度は、必ずしも実物と一致するものではなく、適宜明示しやすい大きさに調整している。
【0019】
図1は本発明の施工器具1の外観を示す斜視図である。
図2は本発明の施工器具1の形状を表す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)図のA-A線断面図、(c)は(a)図のB-B線断面図、(d)は側面図を示す。また、
図3は本発明の施工器具1による施工時の状態を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面から見た一部断面図を示す。
【0020】
本発明の施工器具1は、磁力によって軟磁性体に非磁性体を押圧する為の施工器具であり、
図1のように、ケーシングCSと把手HTと永久磁石4を有する。
【0021】
〔ケーシング〕
ケーシングCSは、アルミニウムなどの非磁性材からなる直方体形状の箱体であり、アルミケース6とアルミカバー5を備える。
アルミケース6は、直方体形状の有孔中密体であり、
図2(b)のように、長手方向両側に永久磁石4を内蔵する為の有底穴62を備える。またアルミケース6の周縁部には複数のネジ孔61(
図2(c)参照)を備える。
アルミカバー5は、アルミケース6の上面を覆う長方形状の蓋体であり、アルミケース6の複数のネジ孔61に対応した位置に皿ネジ8用の座繰り孔51を備えるとともに、長手方向両側で短手方向中央の位置に皿ネジ7用の座繰り孔52を有する。
【0022】
〔永久磁石〕
永久磁石4は、ブロック型のNd(ネオジム)磁石からなり、一方の面にN極、反対の面にS極を有する。永久磁石4は、アルミケース6内における有底穴62に互いに間隔をあけて内蔵される。一方の永久磁石4は、N極を底部側に向けて内蔵され、他方の永久磁石4は、S極を底部側に向けて内蔵される。
【0023】
〔把手〕
把手HTは、施工作業者が施工時に握る握り部としての機能と、施工時に磁気回路を生成する機能とを併せ持ち、2つのヨーク3,3を結合ヨーク2で架橋する形で連結した構成とされる。
ヨーク3は略四角錐台状の中密体であり、厚み方向に貫通するネジ挿通孔32を中心に備える。結合ヨーク2は直方体形状の中密体であり、長手方向両側に厚み方向に貫通するネジ孔22を備える。ヨーク3と結合ヨーク2は、いずれも磁性金属、例えばフェライト系ステンレス鋼やスチールを材質とする。
【0024】
〔組立体〕
以上に示した各構成品は、次のようにして組立てられる。
まず、アルミケース6の2つの有底穴62に永久磁石4を内蔵する。ここで一方の永久磁石4は、N極を底部側に向けて内蔵し、他方の永久磁石4は、S極を底部側に向けて内蔵する。次いで、アルミカバー5、左右のヨーク3及び結合ヨーク2を、アルミカバー5の座繰り孔52、ヨーク3の挿通孔32、及び結合ヨーク2のネジ孔22の各孔が同軸となるように下から順に配置した後、皿ボルト7を挿通させ、結合ヨーク2のネジ孔22で締結する。
次いで、永久磁石4を内蔵したアルミケース6、及び左右のヨーク3と結合ヨーク2とにより把手HTの形成されたアルミカバー5を、ネジ孔61と座繰り孔51が同軸となるように配置した後、皿ネジ8を挿通させ締結する。
【0025】
このようにして組み立てられた施工器具1は、ケーシングCS内の永久磁石4と把手HT(ヨーク体)とにより、ケーシングCSの底面が強力な磁気作用面14となる。
施工器具1は、
図3のように、固形接着剤11を用いて軟磁性体10(下張り)に非磁性体9(上張り)を重ねる場合、磁気作用面14を非磁性体9に対面配置することで、磁気回路12を形成し磁力による強力な押圧力を得ることができる構成になっている。
【0026】
つまり、一方の永久磁石4を、一方のヨーク3、結合ヨーク2、次いで他方のヨーク3、他方の永久磁石4の順で磁気的に結合して、磁束が抵抗なく1方向へ通過する構成となっている。それと共に、永久磁石4のヨーク3側で無い磁極表面41から結合ヨーク2までの距離L1が、該磁極表面から施工時の軟磁性体10までの距離L2より大きく設定されている。これにより、磁極表面から出入りする磁束は、磁気的な抵抗が大きい、すなわち距離が遠い結合ヨーク2より、距離が近い、すなわち抵抗が小さい軟磁性体10との間で発生するようになる。
【0027】
上述した構成により、施工時に必要な磁気吸着力発生に必要な磁束が、本発明の施工器具1と軟磁性体10との間で往復して、磁気回路12が完成する。
施工器具1により得られる磁気回路12の途中、特にヨーク3や結合ヨーク2から外部へ漏れる磁束は少ないので、該部分での磁気吸着力が弱く、鉄製の工具等を不意に吸引して事故が発生する等の危険性が殆ど無くなるのである。
【0028】
また施工器具1は、施工作業時に握る為の把手部をわざわざ製作する必要が無い。即ち、手で握る部分として結合ヨーク2があり、指を揃えて入れることが可能な空間13が存在しているのである。
【0029】
ここで、ヨーク3は磁束を導く通路なので、永久磁石4の磁極表面と対向する部分は該永久磁石4の磁極表面と同等な面形状が必要であるが、本発明では、該ヨーク3の結合ヨーク2側はその断面積が小さくなっている。
本発明に必要な磁気吸着力を確保する為の永久磁石形状は後述するが、その永久磁石4を採用した際の磁束を導く回路構造として、断面積を小さくしても十分可能なことが判ったので、施工器具1の自重の軽量化の目的で不必要なヨーク体積を削除した。
【0030】
同様に、結合ヨーク2の断面積も必要最小限として、不必要な結合ヨーク2の体積を削減することで自重の軽量化を達成した。
結合ヨーク2の断面は、四辺形状が握りやすく、その断面積は900平方mm以下で十分であり、300平方mm以上が必要である。
【0031】
本発明の施工器具1は、厚さ12.5mmの非磁性ボード9を厚さ0.44mm、幅が略40mmの軟磁性体10に貼り付ける、いわゆる「スマートJG工法」(登録商標)で採用する仕様を満たすことを目的としている。
本発明者らの実験に依れば、Nd磁石を採用する場合は、磁極表面の面積が1000平方mm以上、より好ましくは1200平方mm以上、且つ1900平方mm以下であると共に、磁化方向の厚さは9mm以上15mm以下が良い。
【0032】
磁気的能力が有ればNd磁石以外でも差し支えないが、例えば安価なフェライト焼結磁石を採用すると、磁気的機能を確保するために、磁石の形状を大きくする必要があり、施工器具の大型化、重量化が避けられないので好ましくない。
前記Nd磁石を採用すれば、ヨーク3や結合ヨーク2の形状が前記構造であれば、必要な機能を発揮することが出来る。
【0033】
上述した本発明の施工器具1は、自重を2kg以下に抑えることが出来る。1.5kg程度も可能で、しっかり把持することが出来るのでハンドリングが容易であり、例えば天井材の施工時にも往生することは無い。
【実施例0034】
図1に示した施工器具1を製作した。
永久磁石4は最大エネルギー積が294.5KJ/m
3のNd磁石で形状が46mm×30mm×10mm(10mm方向に着磁)のNiメッキ済を2個使用した。
【0035】
ヨーク3は、永久磁石4と対向する面は二辺が46mm×30mmの四辺形とし、高さ25mmで結合ヨーク2に当接する構造とし、該当接する部分は二辺が25mm×20mmの四辺形とした。
なお、ヨーク3及び結合ヨーク2の材質はSUS416を採用した。
【0036】
結合ヨーク2の幅は25mm、厚さは15mm、全長120mmとし、その長さ方向の両端に、ヨーク3の25mm幅を結合ヨーク2の幅に合わせて装着し、永久磁石4の46mm方向を結合ヨーク2の幅方向に一致させた。
永久磁石4を内蔵させるアルミ製ケース6を固定する為のアルミカバー5と、ヨークとは非磁性の皿ネジ7でもって結合ヨーク2に固定されている。
【0037】
永久磁石4を装着した状態でボックス6を非磁性の皿ネジ8でカバー5に固定している。
【0038】
手を入れて結合ヨーク2を把持する為の空間13は縦横が25mm×80mmあり、指を差し込み、断面が15mm×25mmの結合ヨーク2をしっかりと握ることが出来た。
更に、結合ヨーク2の該把手部の断面の4角は略R3で丸みが施されているので、手に痛みは無かった。
【0039】
実測厚さが0.44の軟磁性鋼鈑(スタッド;4045UKSC KIRII)表面に、スマートJG工法(登録商標)で採用する、テープ状固形接着剤JG02の粘着面の露出側を押し当て、専用のローラーを転がして圧縮したあと、他の側(表面に出た側)の離型紙を剥がした。
【0040】
ついで、実測厚さが12.6mmの石膏ボード9を軽く押し当て、その上から本実施例で示している施工器具1を石膏ボード9に当接すると、軟磁性鋼鈑10に吸引されるので容易に該スタッドの真上に施工器具1を持ってくることが出来た。そして、施工器具1の2個の永久磁石4が共にスタッド10の上に来る方向を保ちながら(磁気的に吸引されているのでおのずと方向は保たれる)、固定すべき位置を比較的ゆっくりと一往復させ、施工を終えた。
【0041】
施工器具1の総重量は略1.5kgと軽量であり、自在に動かすことが出来てハンドリング性は良かった。
また磁気作用面14側は、装着した永久磁石4なりの磁気吸引力の危険性はあるものの、従来の半分未満となり、特に、磁気作用面14の周辺以外は著しく弱く、鉄製のドライバーを近づけても危険と感じることは殆どなかった。
【0042】
本施工直後に石膏ボード9が剥がれたり動いたりすることは無かった。更に、放置略一時間後、石膏ボード9をスタッド10から剥がそうとして石膏ボード9の端を掴んで力を加えたが、剥がれることは無く、むしろ石膏ボード9そのものが破壊されてしまうほど強固に接着していた。
(比較例1)
【0043】
実施例1の2個ある永久磁石4の内、片方とそれに連なっていたヨーク3とを取り除いたところ、永久磁石4からの距離が12.6mmの位置における最大磁束密度は、実施例1の約96パーセントの強さを示すものの、0.44mm厚のスタッドとの磁気吸引力は50パーセントを切り、著しく弱く、更に磁気作用面14で無い位置での磁気吸引力が強く、危険を感じた。
(比較例2)
【0044】
実施例1の片方の永久磁石4の表裏を逆に装着し、磁気作用面14に面している永久磁石4の磁極を同じ極性とした。
永久磁石4からの距離が12.6mmの位置における最大磁束密度は、実施例1の約94パーセントの強さを示すとともに、0.44mm厚のスタッドとの磁気吸引力は約80パーセントに低下した。
さらに、実施例1では結合ヨーク2として、外部へ漏れ出る磁束は少なく、磁気吸引力の危険性は無視出来たが、本比較例2における結合ヨーク2は「磁極」としての性質、すなわち磁気吸引力が強く、取扱いが危険であった。
【0045】
本発明で採用される永久磁石4は、例えばNd磁石、サマ鉄窒素と称する磁石、その他の焼結体が採用される。但し、吉野石膏(株)が開発した「スマートJG工法」(登録商標)に適した磁気吸着力が必要である。
【0046】
本発明のヨーク3や結合ヨーク2は、軟磁性鋼が採用される。SUS416は錆にも比較的強く最適である。もちろん他の鋼材でも構わない。
【0047】
アルミカバー5やアルミケース6は非磁性材であれば、アルミでなくても構わない。
また、皿ネジ7や他の皿ネジ8は、非磁性材が好ましい。
【0048】
棒状の結合ヨーク2は、いずれの断面であってもその面積が300平方mm以上900平方mm以下であれば形状は問わない。握り易くする為に凹凸を施してもよい。製作の容易さでは四辺形が良いが、その場合は、4カ所の角に例えば3Rの丸みを施せば、握った際痛みが無く、しっかりと握ることが出来る。
磁力によって軟磁性体に非磁性体を押圧する為の施工器具、特に厚さが12.5mm程度以下の非磁性体の施工に好適で、ハンドリング性に優れる施工器具として幅広く活用できる。