(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004564
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】洪水要避難者数推計システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20250107BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104330
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南部 世紀夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 雅伸
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】洪水発生時の要避難者の人数を推計することができる洪水要避難者数推計システムを提供する。
【解決手段】浸水情報取得手段12と、個々の建物の位置および3次元形状を含む属性を示す建物属性情報と、建物に居住または滞在する人数を示す建物人数情報が登録されたデータ管理手段14と、浸水情報取得手段12により取得された浸水情報と、データ管理手段14に登録された個々の建物の建物属性情報および建物人数情報に基づいて、浸水想定区域に含まれる建物ごと、および建物の地点の浸水深に基づいて設定された避難形態ごとに、要避難者の人数を推計する要避難者数推計手段16と、要避難者数推計手段16により推計した要避難者の人数を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示する表示手段18とを備えるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洪水発生時の要避難者の人数を推計する洪水要避難者数推計システムであって、
洪水発生による浸水が想定される浸水想定区域および浸水深を含む浸水情報を取得する浸水情報取得手段と、
個々の建物の位置および3次元形状を含む属性を示す建物属性情報と、前記建物に居住または滞在する人数を示す建物人数情報が登録されたデータ管理手段と、
前記浸水情報取得手段により取得された前記浸水情報と、前記データ管理手段に登録された個々の建物の前記建物属性情報および前記建物人数情報に基づいて、前記浸水想定区域に含まれる前記建物ごと、および前記建物の地点の前記浸水深に基づいて設定された避難形態ごとに、要避難者の人数を推計する要避難者数推計手段と、
前記要避難者数推計手段により推計した要避難者の人数を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示する表示手段とを備えることを特徴とする洪水要避難者数推計システム。
【請求項2】
前記浸水情報取得手段は、洪水発生による所定の時間ごとの前記浸水情報を取得し、前記要避難者数推計手段は、所定の時間ごとの要避難者の人数を推計し、前記表示手段は、所定の時間ごとの要避難者の人数を表示することを特徴とする請求項1に記載の洪水要避難者数推計システム。
【請求項3】
前記表示手段は、要避難者の人数を示す円と、この円の外側に設けられ、避難形態ごとの要避難者の人数を示す同心円からなるパイチャートで表示することを特徴とする請求項1または2に記載の洪水要避難者数推計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水発生時に避難を要する要避難者の人数を推計することができる洪水要避難者数推計システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、線状降水帯などによる集中豪雨が各地で頻発しており、河川の氾濫などで洪水災害が発生するケースが増えている。洪水発生の直後は被災地の混乱などにより、被災地の実被害に関する情報の発信が大幅に遅れ、被災地内外の対応要員は迅速かつ効率的な避難支援等の対応行動をとることが困難であった。
【0003】
一方、従来の災害対応支援システムとして、地震発生時の震災対応行動を支援する震災対応支援システム(例えば、特許文献1を参照)や、浸水リスクを予測する浸水シミュレーション装置(例えば、特許文献2を参照)などが知られている。
【0004】
特許文献1に記載の震災対応支援システムは、地震発生直後の被災地域の地震動強さ分布情報から個々の建物の被害可能性を推定し、分割した領域毎に、被害可能性別に建物の数を集計して所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示するものである。
【0005】
特許文献2に記載の浸水シミュレーション装置は、河川水位を取得して、河川により浸水の影響を受ける氾濫原の地盤高との水位差を演算し、この水位差を浸水ポテンシャルとして氾濫原に対応させて表示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-91113号公報
【特許文献2】特開2022-14330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の特許文献1の震災対応支援システムは、地震災害に特化したシステムであるため、洪水災害にそのまま適用することはできない。また、上記の特許文献2の浸水シミュレーション装置は、予測した浸水リスクを避難行動の判断に利用できるが、要避難者の人数を得ることはできない。このため、洪水発生時の避難支援等の対応行動の迅速性および効率性を確保するために、要避難者の人数を推計することができる技術が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、洪水発生時の要避難者の人数を推計することができる洪水要避難者数推計システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る洪水要避難者数推計システムは、洪水発生時の要避難者の人数を推計する洪水要避難者数推計システムであって、洪水発生による浸水が想定される浸水想定区域および浸水深を含む浸水情報を取得する浸水情報取得手段と、個々の建物の位置および3次元形状を含む属性を示す建物属性情報と、前記建物に居住または滞在する人数を示す建物人数情報が登録されたデータ管理手段と、前記浸水情報取得手段により取得された前記浸水情報と、前記データ管理手段に登録された個々の建物の前記建物属性情報および前記建物人数情報に基づいて、前記浸水想定区域に含まれる前記建物ごと、および前記建物の地点の前記浸水深に基づいて設定された避難形態ごとに、要避難者の人数を推計する要避難者数推計手段と、前記要避難者数推計手段により推計した要避難者の人数を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の洪水要避難者数推計システムは、上述した発明において、前記浸水情報取得手段は、洪水発生による所定の時間ごとの前記浸水情報を取得し、前記要避難者数推計手段は、所定の時間ごとの要避難者の人数を推計し、前記表示手段は、所定の時間ごとの要避難者の人数を表示することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他の洪水要避難者数推計システムは、上述した発明において、前記表示手段は、要避難者の人数を示す円と、この円の外側に設けられ、避難形態ごとの要避難者の人数を示す同心円からなるパイチャートで表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る洪水要避難者数推計システムによれば、洪水発生時の要避難者の人数を推計する洪水要避難者数推計システムであって、洪水発生による浸水が想定される浸水想定区域および浸水深を含む浸水情報を取得する浸水情報取得手段と、個々の建物の位置および3次元形状を含む属性を示す建物属性情報と、前記建物に居住または滞在する人数を示す建物人数情報が登録されたデータ管理手段と、前記浸水情報取得手段により取得された前記浸水情報と、前記データ管理手段に登録された個々の建物の前記建物属性情報および前記建物人数情報に基づいて、前記浸水想定区域に含まれる前記建物ごと、および前記建物の地点の前記浸水深に基づいて設定された避難形態ごとに、要避難者の人数を推計する要避難者数推計手段と、前記要避難者数推計手段により推計した要避難者の人数を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示する表示手段とを備えるので、洪水発生時の要避難者の人数を推計し、表示することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他の洪水要避難者数推計システムによれば、前記浸水情報取得手段は、洪水発生による所定の時間ごとの前記浸水情報を取得し、前記要避難者数推計手段は、所定の時間ごとの要避難者の人数を推計し、前記表示手段は、所定の時間ごとの要避難者の人数を表示するので、洪水発生による時間ごとの要避難者の人数を推計し、表示することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の洪水要避難者数推計システムによれば、前記表示手段は、要避難者の人数を示す円と、この円の外側に設けられ、避難形態ごとの要避難者の人数を示す同心円からなるパイチャートで表示するので、避難形態ごとの要避難者の人数を容易に把握することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る洪水要避難者数推計システムの実施の形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、3次元都市モデルの一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、浸水深と避難形態の対応例を示すテーブル図である。
【
図4】
図4は、要避難者の人数の表示例を示す図である。
【
図5】
図5は、要避難者の人数の他の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る洪水要避難者数推計システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る洪水要避難者数推計システム10は、洪水発生時の要避難者の人数を推計するシステムであって、浸水情報取得手段12と、データ管理手段14と、要避難者数推計手段16と、表示手段18と、管理制御手段20とを備えており、例えば、洪水対応統制室に設置される。
【0018】
浸水情報取得手段12は、浸水に関する浸水情報を取得するものである。浸水情報は、洪水発生により浸水が想定される浸水想定区域および浸水深を含む情報である。浸水情報は、洪水発生による所定の時間ごとの浸水情報を取得する。浸水想定区域および浸水深は、例えば、国土数値情報として国土交通省から公開されている「洪水浸水想定区域データ」(インターネット<URL:https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-A31-v2_1.html>)、国土交通省から提供されている「浸水ナビ」(インターネット<URL:https://suiboumap.gsi.go.jp/>)、または、周知の浸水センサによる検知結果、浸水シミュレーション装置による予測結果などを用いて取得することができる。例えば、「浸水ナビ」を用いる場合には、河川の想定破堤点を1か所以上選定することで、浸水想定区域と浸水深の時系列データを求めることができる。
【0019】
データ管理手段14は、対象地域に存在する個々の建物の建物属性情報や建物人数情報などのデータの保持および登録管理を行うものである。このデータ管理手段14は、例えばデータベースなどにより構成することができる。
【0020】
建物属性情報は、個々の建物の位置および3次元形状を含む属性を示す情報である。建物人数情報は、建物に居住または滞在する人の数(人数)を示す情報である。建物属性情報には、例えば、建物の名称、位置(3次元座標)、形状、構造種別、階数、各階の床高さ、建物の高さ、築年等が含まれている。建物属性情報は、3次元マップデータに含まれる建物の属性データを利用してもよい。3次元マップデータとしては、例えば国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU」(インターネット<URL:https://www.mlit.go.jp/plateau/>)にて提供される3D都市モデルのデータを採用することができる。この3D都市モデルでは、建物全体と、建物をなす壁面や屋上などの各面(ポリゴン)に対して属性データが付与されている。
図2に、PLATEAUにて提供される3D都市モデルの一例を示す。
【0021】
要避難者数推計手段16は、浸水情報取得手段12により取得された浸水情報と、データ管理手段14に登録された個々の建物の建物属性情報および建物人数情報に基づいて、浸水想定区域に含まれる建物ごと、および避難形態ごとに、要避難者の人数を推計するものである。要避難者の人数は、浸水想定区域の建物に居住または滞在する人のうち、避難を要する人の数であり、洪水発生後の所定の時間ごとに推計する。なお、建物ごとの浸水深が決まった際に要避難者数推計手段16が建物ごとの要避難者の人数を推計するのは一度限りである。
【0022】
避難形態は、建物の地点の浸水深に基づいて予め設定することが好ましい。
図3に、浸水深と、浸水状況と、望ましい最低限の避難形態の対応関係の一例を示す。この例では、建物の地点の浸水深が0.5m未満の場合、床下浸水を想定して在宅避難という避難形態を設定する。また、建物の地点の浸水深が0.5m以上、最上階床高さ未満の場合、床上浸水を想定して垂直避難という避難形態を設定する。また、建物の地点の浸水深が最上階床高さ以上の場合、最上階浸水を想定して水平避難という避難形態を設定する。なお、
図3は、対応関係の一例であり、他の対応関係を設定してもよい。対応テーブルは、データ管理手段14に予め登録しておくことが好ましい。
【0023】
次に、要避難者数推計手段16の動作の一例を説明する。例えば、浸水情報として浸水想定区域Aと、この区域A内の各地点Pの浸水深h(P)が取得された場合、建物属性情報のうち建物の位置を参照して、浸水想定区域Aに位置する建物群Bを抽出する。
【0024】
一方、建物群Bに含まれる各建物の地点に対応する浸水深から、この浸水深に応じた建物ごとの避難形態を判定する。
図3の対応テーブルを用いて避難形態を判定する場合には、建物の建物属性情報のうち最上階床高さを参照して判定する。要避難者の内訳を避難形態ごとに求め、各区域A内の避難形態ごとの要避難者の人数として推計する。
【0025】
表示手段18は、背景地図を画面に表示するとともに、要避難者数推計手段16により推計した要避難者の人数を所定の時間ごとに所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示するものであり、例えばディスプレイなどで構成される。表示手段18は、位置の近い建物同士がまとまるよう浸水想定区域を複数の領域に分割し、分割した領域ごとに、避難形態ごとに要避難者の人数を集計する機能も有している。この場合、浸水想定区域を、相互に概ね同程度の大きさの複数の領域に分割することが望ましい。領域の分割と集計は地図の縮尺に応じて自動的に行うことが好ましい。
【0026】
背景地図は、例えばGISなどの地図情報を利用することができる。表示手段18を用いて、例えば、国土交通省ハザードマップポータルサイト(インターネット<URL:https://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/copyright/opendata.html)のように、背景地図上に、浸水想定区域浸水深、浸水状況などの浸水情報を重ねて表示してもよい。重ねて表示する浸水情報は、洪水発生後の任意時点のものを表示可能であることが好ましい。浸水想定区域は、浸水深のランクに応じた色分けを行って表示してもよい。浸水想定区域のランク「計画規模」、「最大想定規模」に応じて表示内容を切替可能としてもよい。また、任意地点の浸水深、浸水状況などの時間変化が分かるようなグラフを表示させてもよい。これらの表示/非表示を選択切替可能としてもよい。
【0027】
図4に、表示手段18によって表示された画面の一例を示す。この図に示すように、2次元の背景地図の上に、浸水想定区域が重ねて表示されており、浸水想定区域を分割した各領域においてパイチャート(グラフ)が表示されている。浸水想定区域は、予め設定した浸水深ランクに応じて色分け表示されている。パイチャートは、各領域の要避難者の人数を示す円と、この円の外側に設けられ、避難形態ごとの要避難者の人数を示す同心円からなる。パイチャートは、浸水状況と避難形態に応じて色分け表示されている。図の例では、床下浸水で在宅避難の場合が黄色、床上浸水で垂直避難の場合が橙色、最上階浸水で水平避難の場合が赤色で表示されている。これにより、各領域における避難形態ごとの要避難者の人数を容易に把握することができる。なお、本発明はパイチャートに限るものではなく、要避難者の人数と避難形態別の小計を併記した棒グラフや帯グラフで表示してもよい。
【0028】
管理制御手段20は、上記の各手段12~18の動作制御を行うものであり、例えばCPUと各種メモリからなるコンピュータ(情報端末)を含んで構成することができる。この管理制御手段20は、表示変更部22、建物リスト表示制御部24、選択建物表示制御部26、文字入力部28、文字検索部30、検索結果表示制御部32、車両道路表示制御部34などを有してもよい。
【0029】
表示変更部22は、背景地図を拡大、縮小または移動して、表示手段18による表示態様を変更するものである。また、浸水想定区域のランク「計画規模」、「最大想定規模」に応じて表示内容を切替可能としてもよい。表示変更部22は、例えばGISのユーザ・インターフェイスなどを用いて構成することができる。
図4の例では、表示画面内に拡大/縮小ボタン、計画規模/最大想定規模の切替スイッチを設けた場合を示している。表示態様は、背景地図の表示スケールおよび表示範囲の少なくとも一方である。なお、建物毎の浸水深が決まった際に要避難者数推計手段16が建物ごとの要避難者数を推計するのは一度限りであることから、それ以降は表示変更部22の変更に応じて表示手段18が領域の再分割と、領域ごとの要避難者の人数の再推計を繰り返すことにより、再表示を行う。
図5に、表示態様の変更後の表示例を示す。
【0030】
建物リスト表示制御部24は、表示中の背景地図上に存在する建物の建物属性情報のリストを、所定の順序で表示するものである。例えば、ユーザが表示変更部22で背景地図を一定縮尺以上に拡大すると、この背景地図の表示範囲内に存在する各建物の名称等の属性情報が、同じ表示画面内にリストとして表示される。同じ表示画面内にわかり易くコンパクトに表示すれば、これらの情報を容易に把握することができる。その際、リストの順番は浸水深ランクなどの大小関係をもつ属性の昇順(または降順)となるようにしてもよい。浸水深ランクの降順に表示すれば、対応行動の優先度が明確になり、効率的である。
図4の例では、建物の名称を浸水深ランクの降順に表示した場合を示している。現地の対応要員は、背景地図を大縮尺で表示することにより、たとえ現地の地理に不案内な者であっても、対象建物の位置や道順を容易に把握することができる。
【0031】
選択建物表示制御部26は、表示したリストから選択した建物を、標準形態より誇張または拡大した形態で、背景地図上の対応する位置等に表示するとともに、背景地図上の対応する位置等から当該建物の属性情報を吹き出し表示するものである。例えば、ユーザがリスト内の建物の名称等の建物属性情報を選択入力すると、背景地図上で当該建物が誇張または拡大表示され、併せて当該建物の建物属性情報が吹き出し表示される。
【0032】
文字入力部28は、文字検索用の文字情報を入力するためのものである。
図4の例では、表示画面内に設けられた入力欄と、この入力欄に文字情報を入力する図外のキーボード装置などで構成している。
【0033】
文字検索部30は、入力欄に入力された文字情報と建物の建物属性情報が部分一致している建物を、データ管理手段14から検索するものである。これによれば、被害の大小にかかわらず迅速な対応を要する重要な建物などの所定の建物を多数の建物の中から迅速に検索、抽出することができる。これにより、重要な建物の調査や復旧を、優先的に進めることが可能となる。
【0034】
検索結果表示制御部32は、検索して得られた建物の建物属性情報のリストを表示するものである。上記の検索によって、入力欄の文字列と部分一致しているものがヒットすると、検索結果表示制御部32は、それら建物の名称等をリストとして表示する。
図4のように表示してもよい。ユーザがリスト内の建物を選択入力すると、上記の選択建物表示制御部26は、選択入力した建物を、標準形態より誇張または拡大した形態で、背景地図上の対応する位置等に表示するとともに、背景地図上の対応する位置等から当該建物の建物属性情報を吹き出し表示する。
【0035】
車両道路表示制御部34は、背景地図上に、車両が通行可能な道路を表示するものである。洪水発生時は道路が浸水被害を受けて通行不能になる場合がある。そこで、例えば、浸水深および道路の路面高さなどに基づいて、車両が通行可能な道路と、通行不能な道路を推定する。推定した結果を背景地図上に重ねて表示すれば、通行可能な道路や通行不能な道路を容易に把握することができる。これにより、ユーザは車両の経路を迅速かつ効率的に設定可能である。
【0036】
次に、上記構成の動作および作用について説明する。
洪水発生前に、浸水情報取得手段12により、浸水想定区域および浸水深を含む浸水情報を取得する。要避難者数推計手段16は、浸水情報取得手段12により取得された浸水情報と、データ管理手段14に登録された建物属性情報および建物人数情報に基づいて、要避難者の人数を避難形態ごとに推計する。表示手段18は、推計した人数を避難形態ごとに背景地図上の対応する領域にパイチャートで表示する。
【0037】
このようにすれば、洪水発生前に、浸水想定区域に広く分布する多数の建物の要避難者の人数を領域ごと、避難形態ごとに把握することが可能となる。これにより、洪水発生時の対応行動の迅速性・効率性が向上する。
【0038】
また、洪水発生時に、上記の手順により要避難者の人数を推計し、表示させてもよい。このようにすれば、被災地域に広く分布する多数の建物内の要避難者の状況を短時間で推定し、その結果を関連する位置情報等とともに、情報端末へわかり易く表示することにより、迅速かつ効率的に避難者支援や建物の調査等を行うことができる。
【0039】
特に、同時多発的な洪水災害では広範囲にわたって多くの建物に浸水被害が発生するとともに、多数の要避難者が発生する。被害の迅速な調査や復旧のために、被害の大きい建物や要避難者はどの地域に多いのか、空間的分布の概略を素早く把握する必要がある。その際に本発明は極めて有効である。空間的分布を把握することにより、対応要員は何人程度必要なのか、地域外から対応要員を派遣する場合はどこからどこへ、どのルートを通って派遣するのか、どの地域・建物から避難支援するのか、調査や復旧を開始するのか等の、効率的な対応方策を立案・実施することができる。
【0040】
以上説明したように、本発明に係る洪水要避難者数推計システムによれば、洪水発生時の要避難者の人数を推計する洪水要避難者数推計システムであって、洪水発生による浸水が想定される浸水想定区域および浸水深を含む浸水情報を取得する浸水情報取得手段と、個々の建物の位置および3次元形状を含む属性を示す建物属性情報と、前記建物に居住または滞在する人数を示す建物人数情報が登録されたデータ管理手段と、前記浸水情報取得手段により取得された前記浸水情報と、前記データ管理手段に登録された個々の建物の前記建物属性情報および前記建物人数情報に基づいて、前記浸水想定区域に含まれる前記建物ごと、および前記建物の地点の前記浸水深に基づいて設定された避難形態ごとに、要避難者の人数を推計する要避難者数推計手段と、前記要避難者数推計手段により推計した要避難者の人数を所定のグラフで背景地図上の対応する領域に表示する表示手段とを備えるので、洪水発生時の要避難者の人数を推計し、表示することができる。
【0041】
また、本発明に係る他の洪水要避難者数推計システムによれば、前記浸水情報取得手段は、洪水発生による所定の時間ごとの前記浸水情報を取得し、前記要避難者数推計手段は、所定の時間ごとの要避難者の人数を推計し、前記表示手段は、所定の時間ごとの要避難者の人数を表示するので、洪水発生による時間ごとの要避難者の人数を推計し、表示することができる。
【0042】
また、本発明に係る他の洪水要避難者数推計システムによれば、前記表示手段は、要避難者の人数を示す円と、この円の外側に設けられ、避難形態ごとの要避難者の人数を示す同心円からなるパイチャートで表示するので、避難形態ごとの要避難者の人数を容易に把握することができる。
【0043】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施の形態に係る洪水要避難者数推計システムは、このSDGsの17の目標のうち、例えば「11.住み続けられるまちづくりを」の目標などの達成に貢献し得る。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係る洪水要避難者数推計システムは、洪水災害時の避難支援等に有用であり、特に、洪水発生時の要避難者の人数を推計するのに適している。
【符号の説明】
【0045】
10 洪水要避難者数推計システム
12 浸水情報取得手段
14 データ管理手段
16 要避難者数推計手段
18 表示手段
20 管理制御手段
22 表示変更部
24 建物リスト表示制御部
26 選択建物表示制御部
28 文字入力部
30 文字検索部
32 検索結果表示制御部
34 車両道路表示制御部