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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004579
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】ロータの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20250101AFI20250107BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20250107BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20250107BHJP
【FI】
H02K15/03 Z
B29C33/12
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104351
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅紀
【テーマコード(参考)】
4F202
5H622
【Fターム(参考)】
4F202AD03
4F202AD20
4F202AD35
4F202AE04
4F202AG13
4F202AH04
4F202AM24
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK90
4F202CQ07
5H622CA02
5H622CA07
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】ロータコアへの規制治具の取り付け作業を容易に行うことができるロータの製造装置を提供する。
【解決手段】治具本体51は、複数の分割体52によって周方向Cに分割して構成されている。複数の分割体52が筒状をなす規制状態において、互いに隣り合う分割体52同士の分割面53は、径方向Rに対して一定角度傾斜している。支持部材60は、複数の分割体52にそれぞれ対応して設けられ、軸線方向Aに沿って延在する複数の軸部62を有する。複数の分割体52は、複数の軸部62がそれぞれ挿入され、支持部材60に対する分割体52の相対移動を案内する複数の挿入部54を有する。複数の挿入部54は、規制状態において、周方向Cの一側ほど径方向Rの外側に位置するように傾斜して延びている。操作部70は、1つの分割体52Aに対して周方向Cに移動させる力を付与する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔及び複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂と、を備えるロータを製造する装置であって、
前記ロータコアの外周面に当接することで前記外周面の変形を規制する筒状の治具本体と、前記治具本体を支持する支持部材と、を有する規制治具を備え、
前記ロータコアの軸線方向、径方向、及び周方向を、それぞれ単に軸線方向、径方向、及び周方向とするとき、
前記治具本体は、複数の分割体によって前記周方向に分割して構成されており、
複数の前記分割体が筒状をなす規制状態において、互いに隣り合う前記分割体同士の分割面は、前記径方向に対して一定角度傾斜しており、
複数の前記分割体及び前記支持部材の一方及び他方は、複数の前記分割体にそれぞれ対応して設けられ、前記軸線方向に沿って延在する複数の軸部、及び複数の前記軸部がそれぞれ挿入され、前記支持部材に対する前記分割体の相対移動を案内する複数の挿入部をそれぞれ有しており、
複数の前記挿入部は、前記規制状態において、前記周方向の一側ほど前記径方向の外側に位置するように傾斜して延びており、
複数の前記分割体の1つ及び前記支持部材のいずれか一方に対して前記周方向に移動させる力を付与する操作部を備える、
ロータの製造装置。
【請求項2】
前記ロータコアの一方の端面に当接され、複数の前記磁石収容孔における一方の開口を塞ぐ第1部材と、
複数の前記磁石収容孔における前記一方の開口とは反対側の開口を塞ぐように配置され、前記反対側の開口に対して前記樹脂を供給する通路を有する第2部材と、を備え、
複数の前記分割体は、前記挿入部を有しており、
前記支持部材は、前記軸線方向において前記分割体の一方の端面に対向するベース部と、前記ベース部から突出する複数の前記軸部と、を有しており、
前記操作部は、前記1つの前記分割体に対して前記周方向に移動させる力を付与する、
請求項1に記載のロータの製造装置。
【請求項3】
前記ロータコアの一方の端面に当接され、複数の前記磁石収容孔における一方の開口を塞ぐ第1部材と、
複数の前記磁石収容孔における前記一方の開口とは反対側の開口を塞ぐように配置され、前記反対側の開口に対して前記樹脂を供給する通路を有する第2部材と、を備え、
複数の前記分割体は、前記挿入部を有しており、
前記支持部材は、前記軸線方向において前記分割体の一方の端面に対向するベース部と、前記ベース部から突出する複数の前記軸部と、を有しており、
前記操作部は、前記ベース部に対して前記周方向に移動させる力を付与する、
請求項1に記載のロータの製造装置。
【請求項4】
前記ロータコアの一方の端面に当接され、複数の前記磁石収容孔における一方の開口を塞ぐ第1部材と、
複数の前記磁石収容孔における前記一方の開口とは反対側の開口を塞ぐように配置され、前記反対側の開口に対して前記樹脂を供給する通路を有する第2部材と、を備え、
前記支持部材は、前記軸線方向において前記分割体の一方の端面に対向するベース部と、前記ベース部に設けられた複数の前記挿入部と、を有しており、
複数の前記分割体には、前記軸部が設けられている、
請求項1に記載のロータの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロータコアの磁石収容孔に熱可塑性樹脂を充填する樹脂充填装置が記載されている。特許文献1に記載の樹脂充填装置は、上型及び下型を有する。
上型は、ロータコアの上面に当接する当接面を有する上型本体部と、当接面から下方に突出するとともにロータコアの軸孔に挿入される固定用ブロックとを有する。
【0003】
下型は、下型本体部及びランナープレートを有する。ランナープレートは、下型本体部の上面に取り付けられる。ランナープレートは、ロータコアが載置される上面を有する。下型本体部は、射出成形機のノズルから供給される樹脂を導くスプルー通路を有する。ランナープレートは、分岐通路及びゲート通路を有する。分岐通路は、スプルー通路の下流端に接続され、各磁石収容孔に向かって放射状に延在している。ゲート通路は、各分岐通路の下流端からロータコアの端面に向かって延びており、磁石収容孔に接続可能に構成されている。
【0004】
こうした樹脂充填装置においては、溶融した熱可塑性樹脂が、射出成形機のノズルからスプルー通路へ流入した後、各分岐通路及びゲート通路を通じて各磁石収容孔に充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/147211号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、磁石収容孔に樹脂を充填する際に、磁石収容孔に充填される樹脂の充填圧によってロータコアが外周側へ変形するおそれがある。このため、ロータの製造装置においては、ロータコアの外周面全体に当接することで外周面の外周側への変形を規制する規制治具を設けることが好ましい。この場合、ロータコアへの規制治具の取り付け作業や取り外し作業を容易に行うことを目的として、上記の規制治具を、複数の分割体によってロータコアの周方向に分割して構成するとともに、連結部材によって分割体同士を連結することが好ましい。またこの場合、分割体の数を多くするほど、ロータコアの外径のばらつきに対して規制治具が追従し易くなる。
【0007】
しかしながら、分割体の数を多くするほど、分割体同士の連結部材が多くなるため、規制治具の取り付け作業や取り外し作業に手間がかかるという背反がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのロータの製造装置は、中心孔及び複数の磁石収容孔を有する筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に収容された磁石と、前記磁石収容孔に充填され、前記ロータコアに対して前記磁石を固定する樹脂と、を備えるロータを製造する装置であって、前記ロータコアの外周面に当接することで前記外周面の変形を規制する筒状の治具本体と、前記治具本体を支持する支持部材と、を有する規制治具を備え、前記ロータコアの軸線方向、径方向、及び周方向を、それぞれ単に軸線方向、径方向、及び周方向とするとき、前記治具本体は、複数の分割体によって前記周方向に分割して構成されており、複数の前記分割体が筒状をなす規制状態において、互いに隣り合う前記分割体同士の分割面は、前記径方向に対して一定角度傾斜しており、複数の前記分割体及び前記支持部材の一方及び他方は、複数の前記分割体にそれぞれ対応して設けられ、前記軸線方向に沿って延在する複数の軸部及び、複数の前記軸部がそれぞれ挿入され、前記支持部材に対する前記分割体の相対移動を案内する複数の挿入部、をそれぞれ有しており、複数の前記挿入部は、前記規制状態において、前記周方向の一側ほど前記径方向の外側に位置するように傾斜して延びており、複数の前記分割体の1つ及び前記支持部材のいずれか一方に対して前記周方向に移動させる力を付与する操作部を備える。
【0009】
同構成によれば、筒状の治具本体が、複数の分割体によって周方向に分割して構成されている。また、複数の分割体及びこれら分割体を支持する支持部材の一方及び他方が、複数の軸部及び複数の挿入部をそれぞれ有する。このため、操作部によって分割体の1つ及び支持部材のいずれか一方に対して周方向に移動させる力を付与すると、挿入部と軸部との係合によって、各分割体が周方向に移動するとともに径方向の内側に移動するようになる。ここで、互いに隣り合う分割体同士の分割面が、径方向に対して一定角度傾斜している。このため、分割体が上記のように移動する際に互いに隣り合う分割体同士が干渉することを抑制できる。このように、操作部によって1つの分割体または支持部材を周方向に移動させるだけで治具本体を拡縮させることができる。したがって、ロータコアへの規制治具の取り付け作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係るロータの製造装置を用いて製造されるロータの斜視図である。
図2図2は、図1のロータの断面図である。
図3図3は、一実施形態に係るロータの製造装置を示す断面図である。
図4図4は、規制状態の規制治具及び操作部を示す平面図である。
図5図5は、解除状態の規制治具及び操作部を示す平面図である。
図6図6は、ロータの製造装置の第1変更例を示す断面図である。
図7図7は、図6の支持部材及び操作部を示す平面図である。
図8図8は、ロータの製造装置の第2変更例を示す断面図である。
図9図9は、図8の支持部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図5を参照して、ロータの製造装置の一実施形態について説明する。
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態のロータの製造装置(以下、製造装置20)を用いて製造される磁石埋込型モータのロータ10について説明する。
【0012】
<ロータ10>
図1及び図2に示すように、ロータ10は、中心孔12及び複数の磁石収容孔14を有する筒状のロータコア11、磁石収容孔14に収容された磁石15、及び磁石収容孔14に充填され、ロータコア11に対して磁石15を固定する樹脂16を備える。
【0013】
なお、以降において、ロータコア11の軸線方向、径方向、及び周方向を、それぞれ単に軸線方向A、径方向R、及び周方向Cとして説明する。
ロータコア11は、複数枚の鉄心片13が積層された積層体により構成されている。鉄心片13は、電磁鋼板製である。
【0014】
中心孔12の内周面には、径方向Rにおいて互いに対向する一対のキー部12aが突設されている(図1参照)。
複数の磁石収容孔14は、周方向Cに互いに間隔をあけて設けられている。
【0015】
図2に示すように、中心孔12及び各磁石収容孔14は、軸線方向Aに沿ってロータコア11を貫通している。
磁石15は、軸線Lに沿って延在する直方体状である。
【0016】
樹脂16は、例えば熱可塑性樹脂である。樹脂16は、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer(LCP))であることが好ましい。
次に、図3図5を参照して、製造装置20について説明する。
【0017】
図3に示すように、製造装置20は、第1型21、第2型22、支持部材60、第1部材30、治具本体51、操作部70、及び第2部材40を備えている。
<第1型21及び第2型22>
図3に示すように、第1型21は、固定型である。第2型22は、可動型であり、第1型21の上方において昇降可能に設けられている。
【0018】
第2型22には、図示しない射出成形機のノズルに接続されるスプルー通路23が設けられている。
<支持部材60>
図3図5に示すように、第1型21の上面には、支持部材60が配置される。
【0019】
支持部材60は、第1型21の上面に配置される略正方形板状のベース部61、及びベース部61の上面の中央部から上方に突出する略円柱状のポスト部63を有する。
図4及び図5に示すように、ポスト部63の外周面には、ロータコア11の各キー部12aが挿入される一対のキー溝63aが軸線方向Aに沿って設けられている。ポスト部63のキー溝63aに対してロータコア11のキー部12aが挿入されることで、ベース部61に対するロータコア11の周方向Cの位置決めがなされる。
【0020】
図3図5に示すように、ベース部61の上面のうちロータコア11よりも径方向Rの外側には、上方に突出する複数の軸部62が設けられている。複数の軸部62は、軸線方向Aに沿って延在している。複数の軸部62は、ポスト部63の軸線、すなわちロータコア11の軸線Lを中心とする仮想円上において互いに等間隔にて配置されている。本実施形態では、8つの軸部62が設けられている。
【0021】
<第1部材30>
図3図5に示すように、支持部材60の上面には、中心孔32を有する円板状の第1部材30が配置される。中心孔32には、ポスト部63が挿通される。中心孔32の内周面には、径方向Rにおいて対向する一対のキー部32aが設けられている(図4及び図5参照)。一対のキー部32aは、ポスト部63の一対のキー溝63aに挿入される。
【0022】
第1部材30の外径は、ポスト部63の軸線と軸部62との距離よりも小さい。
図3に示すように、第1部材30の上面には、ロータコア11が載置される。ロータコア11の下側の端面11aが第1部材30に当接されている状態において、第1部材30の上面によって、複数の磁石収容孔14における下側の開口14aが塞がれる。
【0023】
図3図5に示すように、第1部材30の上面には、同上面から磁石15を浮かす複数の突起31が設けられている。複数の突起31は、複数の磁石収容孔14と軸線方向Aにおいて重なる位置にそれぞれ対応して設けられている。
【0024】
<治具本体51>
図4及び図5に示すように、第1部材30の上面には、複数の分割体52を有し、全体として筒状をなすとともにロータコア11の外周面11cに当接することで外周面11cの変形を規制する治具本体51が配置されている。すなわち、筒状の治具本体51は、複数の分割体52によって周方向Cに分割して構成されている。複数の分割体52は、ベース部61の複数の軸部62にそれぞれ対応して設けられている。
【0025】
以降において、複数の分割体52が筒状をなす状態を規制状態と称する。
規制状態において、互いに隣り合う分割体52同士の分割面53は、周方向Cの一側(図4及び図5における時計回り方向の前側)ほど径方向Rの外側に位置するように径方向Rに対して一定角度傾斜している。
【0026】
複数の分割体52には、複数の軸部62がそれぞれ挿入され、支持部材60に対する分割体52の相対移動を案内する複数の挿入部54がそれぞれ設けられている。
複数の挿入部54は、軸線方向Aに沿って分割体52を貫通している。すなわち、複数の分割体52は、支持部材60の複数の軸部62によってそれぞれ支持されている。
【0027】
複数の挿入部54は、規制状態において、周方向Cの一側(図4及び図5における時計回り方向の前側)ほど径方向Rの外側に位置するように傾斜して延びている。
複数の分割体52の下端面52aは、ベース部61の上面と対向している(図3参照)。
【0028】
複数の分割体52のうちの1つの分割体52Aの外周面には、突出部55が設けられている。
本実施形態では、複数の分割体52及び支持部材60によって、規制治具50が構成されている。
【0029】
<操作部70>
図3図5に示すように、操作部70は、ベース部61の上面のうち分割体52の径方向Rの外側において上方に突出する支持部71と、支持部71により支持された操作部材72とを備える。
【0030】
支持部71は、規制状態の治具本体51の外周面の接線方向に沿って延びる雌ねじ孔71aを有する。
操作部材72は、雌ねじ孔71aに螺入される雄ねじ部を有しており、上記接線方向に沿って延びている。操作部材72の先端面は、突出部55の周方向Cの一側(図4及び図5における時計回り方向の前側)の面と対向している。
【0031】
雌ねじ孔71aに対して操作部材72をねじ込むことにより突出部55を周方向Cの他側(図4及び図5における時計回り方向の後側)に押圧することで、分割体52Aに対して周方向Cに移動させる力が付与される。また、操作部材72は、分割体52Aの周方向Cの一側(図4及び図5における時計回り方向の前側)への移動を規制する。
【0032】
<第2部材40>
図3に示すように、第2部材40は、複数の磁石収容孔14における上側の開口、すなわち、複数の磁石収容孔14における一方の開口14aとは反対側の開口14bを塞ぐようにロータコア11の上側の端面11bに配置される。第2部材40は、上側の開口14bに対して樹脂16を供給する通路41を有する。
【0033】
通路41は、スプルー通路23に接続されるとともに径方向Rの外側に向かって放射状に延びる複数の分岐通路42と、分岐通路42の径方向Rの外側の端から、軸線Lに沿って第2部材40の下面に向かって延びる複数のゲート通路43とを有する。複数のゲート通路43は、複数の磁石収容孔14にそれぞれ対応して設けられている。
【0034】
次に、図4及び図5を参照して、ロータコア11への規制治具50の取付方法及び本実施形態の作用について説明する。
まず、図5に示すように、作業者は、ロータコア11への規制治具50の取り付けに先立ち、操作部材72を回転操作することで、操作部材72による突出部55の押圧状態が解除されている状態(以下、解除状態という)にする。作業者は、自らの手によって各分割体52に対して外周側に外力を作用させることで、各分割体52を挿入部54に沿って移動させるとともに各分割体52同士を離間させる。続いて、作業者は、ポスト部63が、図5に二点鎖線にて示すロータコア11の中心孔12に挿通されるように、第1部材30の上面にロータコア11を載置する。
【0035】
次に、図4に示すように、操作部材72を回転操作することによって、操作部材72の先端によって突出部55を押圧することで、突出部55が設けられている分割体52Aを図4の反時計回り方向の前側へと移動させる。このとき、操作部70によって分割体52Aに対して周方向Cに移動させる力を付与すると、挿入部54と軸部62との係合によって、各分割体52が周方向Cに移動するとともに径方向Rの内側に移動するようになる。ここで、互いに隣り合う分割体52同士の分割面53が、径方向Rに対して一定角度傾斜している。このため、分割体52が上記のように移動する際に互いに隣り合う分割体52同士が干渉することを抑制できる。このように、操作部70によって1つの分割体52Aを周方向Cに移動させるだけで治具本体51を縮径させるとともに、治具本体51をロータコア11の外周面11cに取り付けることができる。
【0036】
次に、図3に示すように、上側の開口14bから各磁石収容孔14内に磁石15を挿入する。続いて、ロータコア11の上側の端面11bに第2部材40を載置する。続いて、磁石15が収容されているロータコア11を、支持部材60、第1部材30、治具本体51、及び第2部材40とともに第1型21の上面に搬送する。続いて、第2型22を降下させることで第2型22の下面を第2部材40の上面に当接させる。
【0037】
次に、第2型22のスプルー通路23から各分岐通路42に対して溶融状態の樹脂が供給される。これにより、各ゲート通路43を通じて各磁石収容孔14に樹脂16が充填される。
【0038】
その後、樹脂16が冷却されることによって、ロータコア11に対して磁石15が固定される。
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0039】
(1)複数の分割体52が筒状をなす規制状態において、互いに隣り合う分割体52同士の分割面53は、径方向Rに対して一定角度傾斜している。複数の挿入部54は、規制状態において、周方向Cの一側(図4及び図5における時計回り方向の前側)ほど径方向Rの外側に位置するように傾斜して延びている。操作部70は、1つの分割体52Aに対して周方向Cに移動させる力を付与する。
【0040】
こうした構成によれば、上記作用を奏することから、ロータコア11への規制治具50の取り付け作業を容易に行うことができる。
(2)複数の分割体52は、挿入部54を有する。支持部材60は、ベース部61及びベース部61から突出する複数の軸部62を有する。操作部70は、1つの分割体52Aに対して周方向Cに移動させる力を付与する。
【0041】
こうした構成によれば、1つの分割体52Aに対して周方向Cに移動させる力を付与することによって、分割体52Aの動きに各分割体52の動きを連動させることができる。このため、各分割体52に対して周方向Cに移動させる力を付与するための操作部70の構成を簡潔にすることができる。
【0042】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0043】
・時計回り方向の前側に向けて分割体52Aを付勢する付勢部材を設けてもよい。この場合、操作部材72による突出部55の押圧状態が解除されると、付勢部材の付勢力によって突出部55が時計回り方向の前側に向けて付勢されることで、各分割体52が図5に示す解除状態へ移動するようになる。
【0044】
・例えば図6及び図7に示すように、製造装置120は、上記実施形態のベース部61及びポスト部63にそれぞれ対応する第1ベース部181及びポスト部182を有する第1支持部材180を備える。第1部材30の外周側には、第2支持部材160が設けられている。第2支持部材160は、軸線方向Aにおいて分割体52の下端面52aに対向する環状の第2ベース部161と、第2ベース部161の上面から突出する複数の軸部162とを有する。第2ベース部161の外周面には、外周側に突出する突出部165が設けられている。第2ベース部161は、ロータコア11の軸線Lを中心に回動可能に第1ベース部181の上面に配置されている。第2ベース部161の内周面は、第1部材30の外周面に摺接されている。操作部170は、ロータコア11の接線方向に沿って延びる駆動軸173を有するアクチュエータ172と、駆動軸173と突出部165とを連結するリンク機構171とを有する。アクチュエータ172は、ロータコア11の接線方向における駆動軸173の突出量を変更可能に構成されている。操作部170は、駆動軸173の突出量を変更することによって、リンク機構171を介して、周方向Cに回動させる力を第2ベース部161に対して付与する。このため、操作部170によって第2支持部材160に対して周方向Cに移動させる力を付与すると、挿入部54と軸部162との係合によって、各分割体52が周方向Cに移動するとともに径方向Rの内側に移動するようになる。これにより、操作部170によって第2支持部材160を周方向Cに移動させるだけで治具本体51を拡縮させることができる。したがって、ロータコア11への規制治具50の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0045】
・例えば図8及び図9に示すように、支持部材260は、上記実施形態のベース部61及びポスト部63にそれぞれ対応するベース部261及びポスト部263を有する。また、ベース部261の上面には、複数の軸部62が設けられておらず、その代わりに、複数の挿入部262が設けられている。軸部254は、各分割体252の下面から下方に突出している。複数の挿入部262は、周方向Cにおいて等間隔にて配置されている。複数の挿入部262は、周方向Cの一側(図9における時計回り方向の前側)ほど径方向Rの外側に位置するように傾斜して延びている。なお、操作部70の構成は、上記実施形態と同一である。このため、操作部70によって1つの分割体252Aに対して周方向Cに移動させる力を付与すると、挿入部262と軸部254との係合によって、各分割体252が周方向Cに移動するとともに径方向Rの内側に移動するようになる。このように、操作部70によって1つの分割体252Aを周方向Cに移動させるだけで治具本体251を拡縮させることができる。したがって、ロータコア11への規制治具250の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0046】
・本実施形態では、ベース部61に軸部62を一体に設けるようにしたが、第1部材30を、各分割体52の下端面52a全体に対向するように拡径させるとともに、第1部材30に軸部62を一体に設けるようにしてもよい。なお、この場合、第1部材30が支持部材として機能する。
【符号の説明】
【0047】
10…ロータ
11…ロータコア
11a,11b…端面
11c…外周面
12…中心孔
12a…キー部
13…鉄心片
14…磁石収容孔
14a,14b…開口
15…磁石
16…樹脂
20,120…製造装置
21…第1型
22…第2型
23…スプルー通路
30…第1部材
31…突起
32…中心孔
32a…キー部
40…第2部材
41…通路
42…分岐通路
43…ゲート通路
50,250…規制治具
51,251…治具本体
52,252…分割体
52a…下端面
52A,252A…分割体
53…分割面
54,262…挿入部
55…突出部
60,260…支持部材
61,261…ベース部
62,162,254…軸部
63,182,263…ポスト部
63a…キー溝
70,170…操作部
71…支持部
71a…雌ねじ孔
72…操作部材
160…第2支持部材
161…第2ベース部
165…突出部
171…リンク機構
172…アクチュエータ
173…駆動軸
180…第1支持部材
181…第1ベース部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9