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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004586
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/22 20060101AFI20250107BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20250107BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20250107BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20250107BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20250107BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B60C9/22 D
B60C5/00 H
B60C11/03 300D
B60C9/22 C
B60C9/18 K
B60C11/12 C
B60C11/13 B
B60C11/13 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104360
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 照平
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB11
3D131BC13
3D131BC18
3D131BC20
3D131CB06
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA54
3D131DA56
3D131EB22V
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB28V
3D131EB28X
3D131EB31W
3D131EB31X
3D131EB33W
3D131EB43V
3D131EB43W
3D131EB44V
3D131EB44W
3D131EB46V
3D131EB46W
3D131EB48W
3D131EB83V
3D131EB83W
3D131EB83X
3D131EB86W
3D131EB87V
3D131EB87W
3D131EC02V
3D131EC12W
3D131EC12X
3D131EC14W
(57)【要約】
【課題】操縦安定性を確保しつつ、氷雪路面での走行性能を向上することができるタイヤを提供する。
【解決手段】本発明の空気入りタイヤは、センター領域14Aに設けられた複数のセンタースリット16A1,16A2が、一端が外側センター主溝12Aに開口した第1センタースリット16A1と、一端が内側センター主溝12Bに開口する第2センタースリット16A2とを備え、第1センタースリット16A1と第2センタースリット16A2とがタイヤ周方向CDに交互に設けられ、ベルト補強層9はベルト層7のタイヤ軸方向外側ADoを覆うように外側ショルダー領域14D及び内側ショルダー領域14Eに設けられセンター領域14Aにベルト補強層9が設けられていない、または、外側ショルダー領域14D及び内側ショルダー領域14Eに設けられたベルト補強層9よりも薄いベルト補強層9がセンター領域14Aに設けられている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる3本以上の主溝がトレッドに形成されたトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側にベルトコードをタイヤ周方向に対して傾斜配列したベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側に補強コードをタイヤ周方向に沿って配列したベルト補強層とを備え、車両に対する装着の向きが指定された空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムが、タイヤ赤道面よりも車両外側に設けられた外側センター主溝と、タイヤ赤道面よりも車両内側に設けられた内側センター主溝と、前記外側センター主溝とタイヤ軸方向外側に隣接する外側ショルダー主溝と、前記内側センター主溝とタイヤ軸方向外側に隣接する内側ショルダー主溝と、前記外側センター主溝と前記内側センター主溝とで区画されたセンター領域と、前記外側センター主溝と前記外側ショルダー主溝とで区画された外側中間領域と、前記外側ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に区画された外側ショルダー領域と、前記内側ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に区画された内側ショルダー領域とを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記外側中間領域は、タイヤ周方向に並べて設けられた複数の外側中間ブロックと、前記外側中間ブロックの間に設けられた複数の外側中間スリットとを備え、複数の前記外側中間スリットが前記外側ショルダー主溝及び前記外側センター主溝に開口するようにタイヤ周方向に対して交差する方向へ延び、
前記センター領域は、センターリブと、前記センターリブにおける前記外側中間スリットの延長上に設けられた複数のセンタースリットを備え、
複数の前記センタースリットは、一端が前記外側センター主溝に開口し他端が前記センターリブ内で終端する第1センタースリットと、一端が前記内側センター主溝に開口し他端が前記センターリブ内で終端する第2センタースリットとを備え、前記第1センタースリットと前記第2センタースリットとがタイヤ周方向に交互に設けられ、
前記ベルト補強層は前記ベルト層のタイヤ軸方向外側を覆うように前記外側ショルダー領域及び前記内側ショルダー領域に設けられ前記センター領域に前記ベルト補強層が設けられていない、または、前記外側ショルダー領域及び前記内側ショルダー領域に設けられた前記ベルト補強層よりも薄い前記ベルト補強層が前記センター領域に設けられている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ベルトコードのタイヤ周方向に対する角度が23度以上29度以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記外側中間ブロックは、タイヤ周方向中央部にタイヤ周方向に対して交差する方向へ延びる第1サイプ及び第2サイプを備え、
前記第1サイプは、一端が前記外側ショルダー主溝に開口し他端が前記外側中間ブロックで終端し、
前記第2サイプは、一端が前記外側センター主溝に開口し他端が前記外側中間ブロックで終端する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
複数の前記外側中間スリットは、前記第1センタースリットの延長上に設けられた第1外側中間スリットと、前記第2センタースリットの延長上に設けられた第2外側中間スリットとを備え、
前記外側ショルダー主溝から前記内側センター主溝までのタイヤ軸方向の長さW、
前記第1外側中間スリットからタイヤ周方向一方側に隣接する前記第1外側中間スリットまでのタイヤ周方向の長さL、
前記第1外側中間スリットからタイヤ周方向一方側に隣接する前記第2外側中間スリットまでのタイヤ周方向の長さL1、
前記第2外側中間スリットからタイヤ周方向一方側に隣接する前記第1外側中間スリットまでのタイヤ周方向の長さL2、とすると、
前記長さWに対する前記長さLの比(L/W)が1.0以上2.0以下であり、
前記長さLに対する前記長さL1の比が0.4以上0.5以下であり、
前記長さLに対する前記長さL2の比が0.4以上0.5以下であり、
前記長さL2に対する前記長さL1の比が0.9以上1.1以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
複数の前記外側中間スリットは、前記第1センタースリットの延長上に設けられた第1外側中間スリットと、前記第2センタースリットの延長上に設けられた第2外側中間スリットとを備え、
前記第1外側中間スリットは、前記外側ショルダー主溝側の端部が前記外側センター主溝側の端部よりも深さが浅い、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記外側中間ブロックは、前記第1サイプ及び前記第2サイプのタイヤ周方向外側に、前記外側中間ブロックをタイヤ軸方向に貫通する第3サイプを備える、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記外側センター主溝は、前記内側センター主溝及び前記外側ショルダー主溝よりも幅が狭くかつ深さが浅い、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤでは、タイヤ周方向に延びる主溝やタイヤ軸方向に延びるスリットによって形成されるブロックにサイプが設けられたものが知られている(例えば、下記特許文献1、2)。このような空気入りタイヤでは、溝やサイプを多数設けることで排水効果やエッジ効果や吸水効果が高まり氷雪路面での走行性能が向上するが、ブロックの剛性が低下して操縦安定性が低下しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-105615号公報
【特許文献2】特開2013- 71647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、操縦安定性を確保しつつ、氷雪路面での走行性能を向上することができる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0006】
[1]タイヤ周方向に延びる3本以上の主溝がトレッドに形成されたトレッドゴムと、前記トレッドゴムのタイヤ径方向内側にベルトコードをタイヤ周方向に対して傾斜配列したベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側に補強コードをタイヤ周方向に沿って配列したベルト補強層とを備え、車両に対する装着の向きが指定された空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムが、タイヤ赤道面よりも車両外側に設けられた外側センター主溝と、タイヤ赤道面よりも車両内側に設けられた内側センター主溝と、前記外側センター主溝とタイヤ軸方向外側に隣接する外側ショルダー主溝と、前記内側センター主溝とタイヤ軸方向外側に隣接する内側ショルダー主溝と、前記外側センター主溝と前記内側センター主溝とで区画されたセンター領域と、前記外側センター主溝と前記外側ショルダー主溝とで区画された外側中間領域と、前記外側ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に区画された外側ショルダー領域と、前記内側ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側に区画された内側ショルダー領域とを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記外側中間領域は、タイヤ周方向に並べて設けられた複数の外側中間ブロックと、前記外側中間ブロックの間に設けられた複数の外側中間スリットとを備え、複数の前記外側中間スリットが前記外側ショルダー主溝及び前記外側センター主溝に開口するようにタイヤ周方向に対して交差する方向へ延び、
前記センター領域は、センターリブと、前記センターリブにおける前記外側中間スリットの延長上に設けられた複数のセンタースリットを備え、
複数の前記センタースリットは、一端が前記外側センター主溝に開口し他端が前記センターリブ内で終端する第1センタースリットと、一端が前記内側センター主溝に開口し他端が前記センターリブ内で終端する第2センタースリットとを備え、前記第1センタースリットと前記第2センタースリットとがタイヤ周方向に交互に設けられ、
前記ベルト補強層は前記ベルト層のタイヤ軸方向外側を覆うように前記外側ショルダー領域及び前記内側ショルダー領域に設けられ前記センター領域に前記ベルト補強層が設けられていない、または、前記外側ショルダー領域及び前記内側ショルダー領域に設けられた前記ベルト補強層よりも薄い前記ベルト補強層が前記センター領域に設けられている、空気入りタイヤ。
【0007】
[2]前記ベルトコードのタイヤ周方向に対する角度が23度以上29度以下である、上記[1]に記載の空気入りタイヤ。
【0008】
[3]前記外側中間ブロックは、タイヤ周方向中央部にタイヤ周方向に対して交差する方向へ延びる第1サイプ及び第2サイプを備え、
前記第1サイプは、一端が前記外側ショルダー主溝に開口し他端が前記外側中間ブロックで終端し、
前記第2サイプは、一端が前記外側センター主溝に開口し他端が前記外側中間ブロックで終端する、上記[1]又は[2]に記載の空気入りタイヤ。
【0009】
[4]複数の前記外側中間スリットは、前記第1センタースリットの延長上に設けられた第1外側中間スリットと、前記第2センタースリットの延長上に設けられた第2外側中間スリットとを備え、
前記外側ショルダー主溝から前記内側センター主溝までのタイヤ軸方向の長さW、
前記第1外側中間スリットからタイヤ周方向一方側に隣接する前記第1外側中間スリットまでのタイヤ周方向の長さL、
前記第1外側中間スリットからタイヤ周方向一方側に隣接する前記第2外側中間スリットまでのタイヤ周方向の長さL1、
前記第2外側中間スリットからタイヤ周方向一方側に隣接する前記第1外側中間スリットまでのタイヤ周方向の長さL2、とすると、
前記長さWに対する前記長さLの比が1.0以上2.0以下であり、
前記長さLに対する前記長さL1の比が0.4以上0.5以下であり、
前記長さLに対する前記長さL2の比が0.4以上0.5以下であり、
前記長さL2に対する前記長さL1の比が0.9以上1.1以下である、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0010】
[5]複数の前記外側中間スリットは、前記第1センタースリットの延長上に設けられた第1外側中間スリットと、前記第2センタースリットの延長上に設けられた第2外側中間スリットとを備え、
前記第1外側中間スリットは、前記外側ショルダー主溝側の端部が前記外側センター主溝側の端部よりも深さが浅い、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0011】
[6]前記外側中間ブロックは、前記第1サイプ及び前記第2サイプのタイヤ周方向外側に、前記外側中間ブロックをタイヤ軸方向に貫通する第3サイプを備える、上記[3]に記載の空気入りタイヤ。
【0012】
[7]前記外側センター主溝は、前記内側センター主溝及び前記外側ショルダー主溝よりも幅が狭くかつ深さが浅い、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、上記の特徴を備えることにより、操縦安定性を確保しつつ、氷雪路面での走行性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの断面図。
図2図1の空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図。
図3図2のトレッドパターンの要部拡大平面図。
図4】センター領域を拡大して示すトレッドパターンの要部拡大平面図。
図5】外側中間領域を拡大して示すトレッドパターンの要部拡大平面図。
図6】内側中間領域を拡大して示すトレッドパターンの要部拡大平面図。
図7図2のA-A線断面図。
図8図2のB-B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態の空気入りタイヤについて図面を参照して説明する。
【0016】
本明細書において、接地状態とは、空気入りタイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態で平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えた状態のことである。接地端Ei、Eoとは、接地状態において、路面に接地するトレッド面のタイヤ軸方向端のことである。また、サイプとは、接地状態において接地面への開口が閉じる溝のことであり、例えば、幅が2mm未満の狭い溝のことを意味する。周方向に延びる主溝及びスリットは、サイプより幅が広く、接地状態において接地面への開口が閉じない溝のことであり、例えば、幅が2mm以上の溝のことを意味する。
【0017】
正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムである。例えば、正規リムとは、JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、又はETRTO規格における「Measuring Rim」のことである。
【0018】
正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧である。例えば、正規内圧とは、JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」のことである。
【0019】
正規荷重とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重である。例えば、正規荷重とは、JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTO規格における「LOAD CAPACITY」のことである。
【0020】
また、図中、符号CLは、タイヤ軸方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。符号ADは、タイヤ軸方向(タイヤ幅方向とも称される)を示す。タイヤ軸方向内側ADiとはタイヤ赤道面CLに近づく方向をいい、タイヤ軸方向外側ADoとはタイヤ赤道面CLから離れる方向をいう。符号CDはタイヤ回転軸を中心とした円周上の方向であるタイヤ周方向を示す。また、タイヤ径方向内側RDiとはタイヤ回転軸に近づく方向であり、タイヤ径方向外側RDoとはタイヤ回転軸から離れる方向である。
【0021】
(1)空気入りタイヤ1の断面構造
図1に示す一実施形態に係る空気入りタイヤ1は、左右一対のビード2と、ビード2からタイヤ径方向外方に延びる左右一対のサイドウォール4と、サイドウォール4のタイヤ径方向外方端同士を繋いで接地面8aを構成するトレッド3とを備える。
【0022】
この空気入りタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたタイヤである。すなわち、車両に装着する際の車両内側に装着される面と車両外側に装着される面とが予め定められている。そのため、タイヤの例えばサイドウォール表面には、車両への装着向きを指定するための表示が設けられている。図1及び図2では、符号OUTで示すタイヤ赤道面CLの左側が車両装着姿勢において車両外側に配置され、符号INで示すタイヤ赤道面CLの右側が車両装着姿勢において車両内側に配置される。
【0023】
一対のビード2には、それぞれリング状のビードコア2aが埋設されている。ビードコア2aのタイヤ径方向外側RDoには、タイヤ径方向外側RDoに向かって先細り状をなす硬質ゴム製のビードフィラー2bが設けられている。
【0024】
空気入りタイヤは、一対のビード2間に跨がってトロイダル状に延びるカーカス層5を備える。カーカス層5は、トレッド3から両側のサイドウォール4を経てビード2に至り、ビード2においてビードコア2aの周りにタイヤ軸方向内側ADiから外側ADoに折り返されることにより、カーカス層5の両端が係止されている。
【0025】
カーカス層5は、少なくとも1枚のカーカスプライからなる。この例ではカーカス層5は1枚のカーカスプライで構成されているが、2枚以上のカーカスプライでカーカス層を構成してもよい。
【0026】
カーカス層5を構成するカーカスプライは、タイヤ周方向CDに対して実質上直角になるように配列した有機繊維コードからなるカーカスコードをゴムで被覆してしたゴム部材である。カーカス層5の内側には空気の透過性の低いゴムからなるシート状のインナーライナー6が貼り付けられている。
【0027】
トレッド3は、カーカス層5の外周側に設けられたベルト層7と、路面と接する接地面8aを有するトレッドゴム8と、ベルト層7とトレッドゴム8との間に設けられたベルト補強層9を備える。
【0028】
ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ周方向CDに対して23°以上29°以下の傾斜角度で配列した、少なくとも2枚の交差ベルトプライからなる。この例では、ベルト層7は、タイヤ径方向内側に配された第1ベルトプライ7Aと、その外周側に配された第2ベルトプライ7Bとの2層構造である。このうち第1ベルトプライ7Aが最も幅の広い最大幅ベルトプライである。第1ベルトプライ7Aのタイヤ軸方向外端がベルト層7のタイヤ軸方向端であるベルト端7Cに相当する。
【0029】
トレッドゴム8の表面には、図2に示すように、タイヤ周方向CDに延びる3本以上(本実施形態では、4本)の主溝12A,12B,12C,12Dと、タイヤ軸方向ADに延びるスリット16A1、16A2、16B1、16B2、16C、16D、16Eとが設けられ、トレッドパターンが形成されている。
【0030】
ベルト補強層9は、タイヤ周方向CDに対して実質的に平行に延びる有機繊維コード等の補強コードを有するキャッププライにより構成されている。本実施形態では、図1に示すように、ベルト補強層9は、ベルト層7のタイヤ軸方向外側ADoをタイヤ径方向外側RDoから覆うようにショルダー領域14D、14Eの少なくとも一部分に設けられているが、センター領域14A及び中間領域14B、14Cに設けられていない。
【0031】
(2)トレッドパターンの構成
図1及び図2に示すように、トレッドゴム8の表面には、タイヤ周方向CDに延びる主溝として、タイヤ赤道面CLよりも車両外側OUTに設けられた外側センター主溝12Aと、タイヤ赤道面CLよりも車両内側INに設けられた内側センター主溝12Bと、外側センター主溝12Aとタイヤ軸方向外側ADoに隣接する外側ショルダー主溝12Cと、内側センター主溝12Bとタイヤ軸方向外側ADoに隣接する内側ショルダー主溝12Dとが設けられている。
【0032】
内側センター主溝12Bはタイヤ周方向CDに略直線状に延びている。外側センター主溝12A、外側ショルダー主溝12C及び内側ショルダー主溝12Dは、タイヤ軸方向ADに屈曲しながらジグザグ状にタイヤ周方向CDへ延びている。外側センター主溝12Aは、他の主溝(内側センター主溝12B、外側ショルダー主溝12C及び内側ショルダー主溝12D)よりも溝幅が狭く、かつ、深さが浅い溝からなる。
【0033】
例えば、外側センター主溝12A、内側センター主溝12B、外側ショルダー主溝12C及び内側ショルダー主溝12Dの溝幅はそれぞれ、1.5mm~4.5mm、3.5mm~7.5mm、4.5mm~8.0mm、及び4.0mm~7.5mmであることが好ましく、2.0mm~3.9mm、3.8mm~7.2mm、4.7mm~7.5mm、及び4.5mm~6.8mmであることがより好ましい。外側センター主溝12A、内側センター主溝12B、外側ショルダー主溝12C及び内側ショルダー主溝12Dの溝深さはそれぞれ、6.0mm~7.5mm、8.0mm~9.5mm、8.0mm~9.5mm、及び8.0mm~9.5mmであることが好ましく、6.2mm~7.2mm、8.2mm~9.2mm、8.2mm~9.2mm、及び8.2mm~9.2mmであることがより好ましい。
【0034】
内側センター主溝12Bの溝幅に対する外側センター主溝12Aの溝幅の比率は、0.45~0.60であることが好ましく、0.50~0.55であることがより好ましい。内側センター主溝12Bの溝深さに対する外側センター主溝12Aの溝深さの比率は、0.70~0.85であることが好ましく、0.75~0.80であることがより好ましい。
【0035】
外側ショルダー主溝12Cの溝幅に対する外側センター主溝12Aの溝幅の比率は、0.35~0.65であることが好ましく、0.40~0.60であることがより好ましい。外側ショルダー主溝12Cの溝深さに対する外側センター主溝12Aの溝深さの比率は、0.70~0.85であることが好ましく、0.75~0.80であることがより好ましい。
【0036】
内側ショルダー主溝12Dの溝幅に対する外側センター主溝12Aの溝幅の比率は、0.35~0.65であることが好ましく、0.40~0.60であることがより好ましい。内側ショルダー主溝12Dの溝深さに対する外側センター主溝12Aの溝深さの比率は、0.70~0.85であることが好ましく、0.75~0.80であることがより好ましい。
【0037】
外側センター主溝12Aと内側センター主溝12Bの間にはセンター領域14Aが設けられ、外側センター主溝12Aと外側ショルダー主溝12Cとの間に外側中間領域14Bが設けられ、内側センター主溝12Bと内側ショルダー主溝12Dとの間に内側中間領域14Cが設けられている。
【0038】
また、外側ショルダー主溝12Cのタイヤ軸方向外側(即ち、外側ショルダー主溝12Cと車両外側の接地端Eoの間)に外側ショルダー領域14Dが設けられ、内側ショルダー主溝12Dのタイヤ軸方向外側(即ち、内側ショルダー主溝12Dと車両内側の接地端Eiの間)に内側ショルダー領域14Eが設けられている。
【0039】
(3)センター領域14A
図2図4に示すように、外側センター主溝12Aと内側センター主溝12Bの間に設けられたセンター領域14Aは、タイヤ周方向CDに連続するセンターリブ18Aと、タイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる複数の第1センタースリット16A1と、複数の第2センタースリット16A2とを備える。
【0040】
第1センタースリット16A1は、一端が外側センター主溝12Aに開口し、他端がセンターリブ18A内で終端するタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる凹溝である。第1センタースリット16A1の他端側(内側センター主溝12B側)には、第1センタースリット16A1よりも深さの浅い凹みからなる平面視三角形状のセンターノッチ16A3が設けられている。
【0041】
第2センタースリット16A2は、一端が内側センター主溝12Bに開口し、他端がセンターリブ18A内で終端するタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる凹溝である。本実施形態では、第2センタースリット16A2は、第1センタースリット16A1よりも深さの浅く(図7参照)、第1センタースリット16A1と平行な方向へ延びる凹溝で構成されている。センターリブ18Aには、第1センタースリット16A1と第2センタースリット16A2とがタイヤ周方向CDに交互に設けられている。
【0042】
また、センターリブ18Aには、タイヤ軸方向ADの中央部に設けられた中央サイプ31と、該中央サイプ31のタイヤ軸方向AD両側に設けられた左右一対の端部サイプ32とからなる複合サイプ30が、タイヤ周方向CDに複数並べて設けられている。本実施形態では、複合サイプ30がタイヤ周方向CDに間隔をあけて互いに平行に配置されている。
【0043】
第1センタースリット16A1及び第2センタースリット16A2の溝幅は、3.0mm~6.0mmであることが好ましく、3.3mm~5.4mmであることがより好ましい。第1センタースリット16A1及び第2センタースリット16A2の溝深さは、4.0mm~8.5mmであることが好ましく、4.4mm~8.2mmであることがより好ましい。センターノッチ16A3の最大幅(第1センタースリット16A1に接続された部分の長さは、2.0mm~5.0mmであることが好ましく、2.3mm~4.5mmであることがより好ましい。センターノッチ16A3の深さは、1.0mm~5.5mmであることが好ましく、1.3mm~5.2mmであることがより好ましい。また、中央サイプ31及び端部サイプ32の溝幅は、0.15mm~1.0mmであることが好ましく、0.3mm~0.6mmであることがより好ましい。中央サイプ31及び端部サイプ32の溝深さは、3.5mm~7.0mmであることが好ましく,4.0mm~6.5mmであることがより好ましい。
【0044】
(4)外側中間領域14B
図2図3及び図5に示すように、外側センター主溝12Aと外側ショルダー主溝12Cの間に設けられた外側中間領域14Bは、タイヤ周方向CDに並べて設けられた複数の外側中間ブロック18Bと、外側中間ブロック18Bの間に設けられた複数の外側中間スリット16B1、16B2とを備える。
【0045】
外側中間領域14Bは、第1センタースリット16A1の延長上に設けられた第1外側中間スリット16B1と、第2センタースリット16A2の延長上に設けられた第2外側中間スリット16B2とをそれぞれ複数備える。第1外側中間スリット16B1及び第2外側中間スリット16B2は、外側センター主溝12A及び外側ショルダー主溝12Cに開口するようにタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる凹溝であって、タイヤ周方向CDに交互に設けられている。
【0046】
具体的には、第1外側中間スリット16B1は、外側センター主溝12Aへ開口する開口部の少なくとも一部が、第1センタースリット16A1における外側センター主溝12Aへの開口部と、第1センタースリット16A1を延長する方向に対向するように設けられている。第1外側中間スリット16B1は、第1センタースリット16A1と繋がった一続きの凹溝を構成する。
【0047】
図3及び図5に示すように、第1外側中間スリット16B1は、外側中間ブロック18Bのタイヤ軸方向ADの中央部に屈曲部16B1aが設けられている。第1外側中間スリット16B1は、屈曲部16B1aよりも外側センター主溝12A側が第1センタースリット16A1と平行な方向に延び、屈曲部16B1aよりも外側ショルダー主溝12C側が、第1センタースリット16A1とタイヤ軸方向ADに対して逆向きに傾斜する。
【0048】
第1外側中間スリット16B1は、屈曲部16B1aよりも外側ショルダー主溝12C側における溝深さが、屈曲部16B1aよりも外側センター主溝12A側における溝深さや第2外側中間スリット16B2における溝深さと比較して浅く設定されている。
【0049】
本実施形態では、屈曲部16B1aよりも外側ショルダー主溝12C側における第1外側中間スリット16B1の溝深さは、第2センタースリット16A2の溝深さと同じ深さに設定されている。屈曲部16B1aよりも外側センター主溝12A側における第1外側中間スリット16B1の溝深さは、第1センタースリット16A1や第2外側中間スリット16B2の溝深さと同じ深さに設定されている。
【0050】
第2外側中間スリット16B2は第2センタースリット16A2と繋がっていないが、外側センター主溝12Aへ開口する開口部の少なくとも一部が第2センタースリット16A2を延長する延長線上に存在するように設けられている。
【0051】
第2外側中間スリット16B2は、第1外側中間スリット16B1の屈曲部16B1aとタイヤ軸方向ADに重なる位置に屈曲部16B2aが設けられている。第2外側中間スリット16B2は、屈曲部16B2aよりも外側センター主溝12A側が第2センタースリット16A2と平行な方向に延び、屈曲部16B2aよりも外側ショルダー主溝12C側が、第2センタースリット16A2とタイヤ軸方向ADに対して逆向きに傾斜する。本実施形態では、第2外側中間スリット16B2が第1外側中間スリット16B1と平行な方向の延びる凹溝で構成されている。
【0052】
第2外側中間ブロック18Bは、外側センター主溝12Aに面した側壁のタイヤ周方向CDにおける中央部に第1外側中間ノッチ33が設けられ、外側ショルダー主溝12Cに面した側壁のタイヤ周方向CDにおける中央部に第2外側中間ノッチ34が設けられている。外側中間ノッチ33,34は、ブロック上面から主溝12A、12Cの溝底に向かってブロック底部まで切り欠かれた凹みであり、外側中間ブロック18Bのタイヤ軸方向中央部に行くほど(ブロックの側壁から離れるほど)先細になる平面視三角形状をなしている。
【0053】
また、外側中間ブロック18Bには、タイヤ周方向CDの中央部に第1外側中間サイプ35及び第2外側中間サイプ36が設けられ、第1外側中間サイプ35及び第2外側中間サイプ36のタイヤ周方向CD外側に第3外側中間サイプ37、37が設けられている。
【0054】
第1外側中間サイプ35は、一端が第1外側中間ノッチ33に接続され第1外側中間ノッチ33を介して外側センター主溝に開口し、他端が外側中間ブロック18Bで終端するタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びるサイプである。第2外側中間サイプ36は、一端が第2外側中間ノッチ34に接続され第2外側中間ノッチ34を介して外側ショルダー主溝12Cに開口し、他端が外側中間ブロック18Bで終端するタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びるサイプである。
【0055】
第3外側中間サイプ37は、第1外側中間サイプ35よりも外側中間ブロック18Bにおけるタイヤ周方向CDの外側と、第2外側中間サイプ36よりも外側中間ブロック18Bにおけるタイヤ周方向CDの外側とにそれぞれ設けられている。つまり、外側中間ブロック18Bには、タイヤ周方向CDに間隔をあけて設けられた一対の第3外側中間サイプ37の間に、第1外側中間サイプ35及び第2外側中間サイプ36が設けられている。
【0056】
第3外側中間サイプ37は、一端が外側センター主溝12Aに開口し、他端が外側ショルダー主溝12Cに開口しており、外側中間ブロック18Bをタイヤ軸方向ADに貫通するように設けられたサイプである。
【0057】
本実施形態では、第1外側中間サイプ35、第2外側中間サイプ36、及び第3外側中間サイプ37は、平面視においてに湾曲または屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向に延び、トレッド表面に平行な断面形状がサイプ幅方向に振幅を持つ波形状をなしている。第1外側中間サイプ35、第2外側中間サイプ36、及び第3外側中間サイプ37の振幅中心線は、第1外側中間スリット16B1の屈曲部16B1aや第2外側中間スリット16B2の屈曲部16B2aとタイヤ軸方向ADに重なる位置に設けられた屈曲部35a、36a、37aにおいて折れ曲がり、第1外側中間スリット16B1及び第2外側中間スリット16B2と平行な方向へ延びている。
【0058】
なお、第1外側中間サイプ35、第2外側中間サイプ36、及び第3外側中間サイプ37は、図4に示すように屈曲部35a、36a、37aにおいて直線状に延びるサイプであってもよいが、屈曲部35a、36a、37aにおいても他の部分と同様、サイプ幅方向に振幅を持つ波形状をなしていてもよい。
【0059】
第1外側中間スリット16B1及び第2外側中間スリット16B2の溝幅は、2.5mm~5.5mmであることが好ましく、3.0mm~5.0mmであることがより好ましい。第1外側中間スリット16B1及び第2外側中間スリット16B2の溝深さは、7.0mm~8.5mmであることが好ましく、7.2mm~8.2mmであることがより好ましい。
【0060】
第1外側中間ノッチ33及び第2外側中間ノッチ34の溝幅は、2.5mm~5.0mmであることが好ましく、2.8mm~4.6mmであることがより好ましい。第1外側中間ノッチ33及び第2外側中間ノッチ34の溝深さは、1.0mm~5.5mmであることが好ましく、1.3mm~5.2mmであることがより好ましい。
第1外側中間サイプ35、第2外側中間サイプ36、及び第3外側中間サイプ37の溝幅は、0.15mm~1.0mmであることが好ましく,0.3mm~0.4mmであることがより好ましい。第1外側中間サイプ35、第2外側中間サイプ36、及び第3外側中間サイプ37の溝深さは、4.0mm~7.0mmであることが好ましく,6.0mm~6.5mmであることがより好ましい。
【0061】
また、図3に示すように、外側ショルダー主溝12Cから内側センター主溝12Bまでのタイヤ軸方向の長さW、第1外側中間スリット16B1からタイヤ周方向CD一方側に隣接する第1外側中間スリット16B1までのタイヤ周方向CDの長さL、第1外側中間スリット16B1からタイヤ周方向CD一方側に隣接する第2外側中間スリット16B2までのタイヤ周方向の長さL1、当該第2外側中間スリット16B2からタイヤ周方向CD一方側に隣接する第1外側中間スリット16B1までのタイヤ周方向CDの長さL2、とすると、各長さW、L、L1、L2が下記式(1)~(4)の関係を全て満たすことが好ましい。
【0062】
1.0≦L/W≦2.0 式(1)
0.4≦L1/L≦0.5 式(2)
0.4≦L2/L≦0.5 式(3)
0.9≦L1/L2≦1.1 式(4)
【0063】
(5)内側中間領域14C
図2図3及び図6に示すように、内側センター主溝12Bと内側ショルダー主溝12Dの間に設けられた内側中間領域14Cは、タイヤ周方向CDに並べて設けられた複数の内側中間ブロック18C1、18C2と、内側中間ブロック18C1、18C2の間に設けられた複数の内側中間スリット16Cとを備える。
【0064】
具体的には、内側中間領域14Cは、第1内側中間ノッチ40が設けられた第1内側中間ブロック18C1と、第2内側中間ノッチ41が設けられた第2内側中間ブロック18C2とを、それぞれ複数備える。第1内側中間ブロック18C1と第2内側中間ブロック18C2とはタイヤ周方向CDに交互に設けられている。
【0065】
第1内側中間ノッチ40は、その延在方向の一端が内側センター主溝12Bに開口し、他端が内側中間領域14C内で終端する横溝状の切れ込みであり、センターリブ18Aに設けられた第2センタースリット16A2と平行な方向へ延びるようにタイヤ軸方向ADに対して傾斜している。第1内側中間ノッチ40は、内側センター主溝12Bへ開口する開口部の少なくとも一部が、第2センタースリット16A2における内側センター主溝12Bへの開口部と、第2センタースリット16A2を延長する方向に対向するように設けられている。
【0066】
第2内側中間ノッチ41は、その延在方向の一端が内側ショルダー主溝12Dに開口し、他端が内側中間領域14C内で終端する横溝状の切れ込みであり、センターリブ18Aに設けられた第2センタースリット16A2や第1内側中間ノッチ40と平行な方向へ延びるようにタイヤ軸方向ADに対して傾斜している。
【0067】
内側中間領域14Cに設けられた複数の内側中間スリット16Cは、内側センター主溝12B及び内側ショルダー主溝12Dに開口するようにタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる凹溝である。内側中間スリット16Cは、内側センター主溝12B側に第1スリット屈曲部16C1が設けられるとともに、第1スリット屈曲部16C1からタイヤ軸方向外側AWoに間隔をあけて内側ショルダー主溝12D側に第2スリット屈曲部16C2が設けられている。内側中間スリット16Cは、第1スリット屈曲部16C1においてタイヤ周方向一方から他方へ向けて折れ曲がり、第2スリット屈曲部16C2においてタイヤ周方向他方から一方へ向けて折れ曲がっている。
【0068】
これにより、内側中間スリット16Cは、内側センター主溝12Bから第1スリット屈曲部16C1までの部分が、タイヤ軸方向ADに対して第2センタースリット16A2と同じ向きに傾斜し、第1スリット屈曲部16C1から第2スリット屈曲部16C2までの部分が、タイヤ軸方向ADに対して第2センタースリット16A2と逆向きに傾斜し、第2スリット屈曲部16C2から内側ショルダー主溝12Dまでの部分が、タイヤ軸方向ADに対して第2センタースリット16A2と同じ向きに傾斜している。
【0069】
また、第1内側中間ブロック18C1及び第2内側中間ブロック18C2には、一端が内側センター主溝12Bに開口し、他端が内側ショルダー主溝12Dに開口するようにタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる第1内側中間サイプ42及び第2内側中間サイプ43が設けられている。本実施形態では、第1内側中間サイプ42及び第2内側中間サイプ43は、平面視において図6に示すように湾曲または屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向に延び、トレッド表面に平行な断面形状がサイプ幅方向に振幅を持つ波形状をなしている。
【0070】
第1内側中間サイプ42の振幅中心線は、内側センター主溝12B側に第1屈曲部42Aが設けられるとともに、第1屈曲部42Aからタイヤ軸方向外側AWoに間隔をあけて内側ショルダー主溝12D側に第2屈曲部42Bが設けられており、第1屈曲部42Aにおいてタイヤ周方向一方から他方へ向けて折れ曲がり、第2屈曲部42Bにおいてタイヤ周方向他方から一方へ向けて折れ曲がっている。
【0071】
第1内側中間サイプ42は第2屈曲部42Bにおいて分断されている。つまり、第1内側中間サイプ42は、内側センター主溝12Bからタイヤ軸方向外側AWoへ延びる内側サイプ部分42Cと、内側ショルダー主溝12Dからタイヤ軸方向内側AWiへ延びる外側サイプ部分42Dからなる。内側サイプ部分42C及び外側サイプ部分42Dは、タイヤ周方向CDへ投影した投影図が少なくとも一部において互いに重なり合うように、第1内側中間ブロック18C1のタイヤ軸方向中央より内側ショルダー主溝12D側においてタイヤ軸方向ADに間隔をあけてタイヤ軸方向ADに対向して設けられている。
【0072】
第2内側中間サイプ43の振幅中心線は、内側センター主溝12B側に第1屈曲部43Aが設けられるとともに、第1屈曲部43Aからタイヤ軸方向外側AWoに間隔をあけて内側ショルダー主溝12D側に第2屈曲部43Bが設けられており、第1屈曲部43Aにおいてタイヤ周方向一方から他方へ向けて折れ曲がり、第2屈曲部43Bにおいてタイヤ周方向他方から一方へ向けて折れ曲がっている。
【0073】
第2内側中間サイプ43は第1屈曲部43Aにおいて分断されている。つまり、第2内側中間サイプ43は、内側センター主溝12Bからタイヤ軸方向外側AWoへ延びる内側サイプ部分43Cと、内側ショルダー主溝12Dからタイヤ軸方向内側AWiへ延びる外側サイプ部分43Dからなる。内側サイプ部分43C及び外側サイプ部分43Dは、タイヤ周方向CDへ投影した投影図が少なくとも一部において互いに重なり合うように、第1内側中間ブロック18C1のタイヤ軸方向中央より内側センター主溝12B側においてタイヤ軸方向ADに間隔をあけてタイヤ軸方向ADに対向して設けられている。
【0074】
また、第1内側中間ブロック18C1には、第1内側中間サイプ42のタイヤ周方向CDの両側に、タイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる第3内側中間サイプ44がタイヤ周方向CDに間隔をあけて複数設けられている。第3内側中間サイプ44は、平面視において図6に示すように湾曲または屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向に延び、トレッド表面に平行な断面形状がサイプ幅方向に振幅を持つ波形状をなしており、第3内側中間サイプ44の振幅中心線が第1内側中間サイプ42と平行な方向へ延びている。
【0075】
第2内側中間ブロック18C2には、第2内側中間サイプ43のタイヤ周方向CDの両側に、タイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる第4内側中間サイプ45がタイヤ周方向CDに間隔をあけて複数設けられている。第4内側中間サイプ45は、平面視において図6に示すように湾曲または屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向に延び、トレッド表面に平行な断面形状がサイプ幅方向に振幅を持つ波形状をなしており、第4内側中間サイプ45の振幅中心線が第2内側中間サイプ43と平行な方向へ延びている。
【0076】
内側中間スリット16Cの溝幅は、2.5mm~4.5mmであることが好ましく、2.5mm~4.2mmであることがより好ましい。内側中間スリット16Cの溝深さは、7.0mm~8.5mmであることが好ましく、7.2mm~8.2mmであることがより好ましい。第1内側中間ノッチ40及び第2内側中間ノッチ41の溝幅は、2.0mm~5.0mmであることが好ましく、2.6mm~4.5mmであることがより好ましい。第1内側中間ノッチ40及び第2内側中間ノッチ41の溝深さは、1.0mm~5.5mmであることが好ましく、1.3mm~5.2mmであることがより好ましい。第1内側中間サイプ42、第2内側中間サイプ43、第3内側中間サイプ44及び第4内側中間サイプ45の溝幅は、0.15mm~1.0mmであることが好ましく,0.3mm~0.4mmであることがより好ましい。第1内側中間サイプ42、第2内側中間サイプ43、第3内側中間サイプ44及び第4内側中間サイプ45の溝深さは、4.0mm~7.0mmであることが好ましく,6.0mm~6.5mmであることがより好ましい。
【0077】
(6)外側ショルダー領域14D
図2に示すように、外側ショルダー領域14Dには、タイヤ周方向CDに並べて設けられた複数の外側ショルダーブロック18Dと、外側ショルダーブロック18Dの間に設けられた複数の外側ショルダースリット16Dとを備える。
【0078】
外側ショルダースリット16Dは、外側ショルダー主溝12C及び接地端Eoに開口するようにタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる凹溝であって、タイヤ周方向CDに交互に設けられている。外側ショルダースリット16Dは、外側ショルダー主溝12Cに開口する開口部の少なくとも一部が、第1外側中間スリット16B1及び第2外側中間スリット16B2における外側ショルダー主溝12Cへの開口部とタイヤ軸方向ADに対向するように設けられている。
【0079】
外側ショルダーブロック18Dには、タイヤ周方向CDに間隔をあけて複数(例えば、3本)の外側ショルダーサイプ38が設けられている。外側ショルダーサイプ38は、一端が外側ショルダー主溝12Cに開口し、他端が接地端Eoに開口するタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる外側ショルダーサイプ38である。外側ショルダーサイプ38は、平面視において図2に示すように湾曲または屈曲を繰り返しながらサイプの長さ方向へ延び、トレッド表面に平行な断面形状がサイプ幅方向に振幅を持つ波形状をなしている。
【0080】
(7)内側ショルダー領域14E
図2に示すように、内側ショルダー領域14Eには、タイヤ周方向CDに並べて設けられた複数の内側ショルダーブロック18Eと、内側ショルダーブロック18Eの間に設けられた複数の内側ショルダースリット16Eとを備える。
【0081】
内側ショルダースリット16Eは、内側ショルダー主溝12D及び接地端Eiに開口するようにタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる凹溝であって、タイヤ周方向CDに交互に設けられている。内側ショルダースリット16Eは、内側ショルダー主溝12Dに開口する開口部の少なくとも一部が、内側中間スリット16Cにおける内側ショルダー主溝12Dへの開口部とタイヤ軸方向ADに対向するように設けられている。
【0082】
内側ショルダーブロック18Eには、タイヤ周方向CDに間隔をあけて複数(例えば、3本)の内側ショルダーサイプ39が設けられている。内側ショルダーサイプ39は、一端が内側ショルダー主溝12Dに開口し、他端が接地端Eiに開口するタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる内側ショルダーサイプ39である。内側ショルダーサイプ39は、平面視において図2に示すように湾曲または屈曲を繰り返しながらサイプの長さ方向へ延び、トレッド表面に平行な断面形状がサイプ幅方向に振幅を持つ波形状をなしている。なお、本実施形態では、内側ショルダーサイプ39は、外側ショルダーサイプ38に比べて湾曲または屈曲の繰り返し周期が長いサ波形状のイプからなる。
【0083】
(8)効果
本実施形態の空気入りタイヤ1では、タイヤ赤道面よりも車両外側に設けられた外側センター主溝12Aが、内側センター主溝12B、外側ショルダー主溝12C及び内側ショルダー主溝12D)よりも溝幅が狭く、かつ、深さが浅い溝であるため、空気入りタイヤ1の車両外側寄りのタイヤ軸方向中央部においてトレッドの剛性低下を抑えて操縦安定性を確保することができる。
【0084】
本実施形態の空気入りタイヤ1では、センター領域14Aにおける外側中間スリット16B1,16B2の延長上に、外側センター主溝12Aに開口するセンタースリット16A1と、内側センター主溝12Bに開口するセンタースリット16A2とが、タイヤ周方向CDに交互に設けられている。これにより、センター領域14Aの剛性を確保しつつ、センタースリット16A1、16A2による高いエッジ効果が得られ、操縦安定性と氷雪路面での走行性能とを両立することができる。
【0085】
本実施形態の空気入りタイヤ1では、外側中間ブロック18Bのタイヤ周方向CDの中央部に、第1外側中間サイプ35及び第2外側中間サイプ36が設けられているため、サイプ35,36による高いエッジ効果を得ることができるとともに、外側中間ブロック18Bのタイヤ周方向CDの中央部がサイプによって分断されずブロック剛性を確保することができ、操縦安定性と氷雪路面での走行性能とを両立することができる。
【0086】
本実施形態の空気入りタイヤ1では、外側中間ブロック18Bをタイヤ軸方向ADに貫通する第3外側中間サイプ37が設けられているため、高いエッジ効果が得られる。しかも、第3外側中間サイプ37は、第1外側中間サイプ35及び第2外側中間サイプ36よりも外側中間ブロック18Bにおけるタイヤ周方向外側に設けられているため、外側中間ブロック18Bの剛性低下を抑えることができる。
【0087】
本実施形態の空気入りタイヤ1が、上記の長さW、L、L1、L2が、上記式(1)~(4)の関係を全て満たす場合、タイヤ軸方向ADにおいて外側ショルダー主溝12Cと内側センター主溝12Bとで挟まれ、タイヤ周方向CDにおいて隣接する第1外側中間スリット16B1同士で挟まれた陸部分の接地面の形状が、タイヤ周方向CD及びタイヤ軸方向ADのいずれか一方に細長い形状になることがなく、略正方形状に近い形状となるため、スリットを設けても陸部剛性の低下を抑えることができる。
【0088】
つまり、本実施形態では、外側センター主溝12Aは他の主溝12B,12C,12Dよりも溝幅が狭く、かつ、深さが浅い溝からなり、また、第2センタースリット16A2が第2外側中間スリット16B2と繋がっていない。そのため、タイヤ軸方向ADにおいて外側ショルダー主溝12Cと内側センター主溝12Bとで挟まれ、タイヤ周方向CDにおいて隣接する第1外側中間スリット16B1同士で挟まれた陸部分が、擬似的に1つの陸部分として機能する。長さLが長さWに近い場合(L/Wが1に近い場合)、この陸部分が正方形に近い形状となり陸部剛性が低下しにくくなる。また、長さLが長さWより大きくL/Wが2に近い場合、外側中間ブロック18Bが正方形に近い形状となるため陸部剛性が低下しにくい。
【0089】
本実施形態では、ベルト補強層9がショルダー領域14D、14Eに設けられ、センター領域14Aにベルト補強層が設けられていないため、タイヤ赤道面CL付近において接地しやすくなり、操縦安定性を向上させることができる。また、本実施形態において、ベルト層7のベルトプライ7A、7Bを構成するベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度が23度以上29度以下とすることで、操縦安定性を向上することができる。
【0090】
本実施形態において、内側中間領域14Cには、内側センター主溝12Bへ開口する第1内側中間ノッチ40が設けられた第1内側中間ブロック18C1と、内側ショルダー主溝12Dへ開口する第2内側中間ノッチ41が設けられた第2内側中間ブロック18C2とが、タイヤ周方向に交互に設けられている。これにより、内側中間領域14Cにおいてノッチ40、41がタイヤ軸方向ADの両側に均等に配置されるため、ノッチ40、41によるエッジ効果を得つつ、ブロック剛性の均一化を図り接地圧を分散させることができる。
【0091】
内側中間ブロック18C1、18C2には、一端が内側センター主溝12Bに開口し他端が内側ショルダー主溝12Dに開口するようにタイヤ周方向CDに対して交差する方向へ延びる波形をなした内側中間サイプ42、43が設けられており、内側中間サイプ42、43が屈曲部42B、43Aにおいて分断されているため、内側中間サイプ42、43による内側中間ブロック18C1、18C2の剛性低下を抑えつつ、エッジ効果を向上することができる。
【0092】
また、第1内側中間ブロック18C1では、内側中間ノッチ40が内側センター主溝12B側に設けられ、サイプ42が分断された屈曲部42Bが内側ショルダー主溝12D側に設けられ、第2内側中間ブロック18C2では、内側中間ノッチ41が内側ショルダー主溝12D側に設けられ、サイプ43が分断された屈曲部43Aが内側センター主溝12B側に設けられている。これにより、内側中間ノッチ40,41及び内側中間サイプ42、43による内側中間ブロック18C1、18C2の剛性低下を抑えつつ、エッジ効果を向上することができる。
【0093】
また、本実施形態では、外側センター主溝12Aが内側センター主溝12Bよりも溝幅が狭く、深さが浅く設けられているが、外側センター主溝12Aに接続された第1センタースリット16A1が、内側センター主溝12Bに接続された第2センタースリット16A2よりも深い。そのため、センター領域14Aの車両外側及び車両内側における剛性の均一化を図ることができるとともに、センター領域14Aの車両外側における排水性を確保することができる。
【0094】
(9)変更例
次に変更例について説明する。以上の実施形態に対し、発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。以下では変更例について説明する。また、以下の変更例の他にも発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0095】
上記した実施形態では、ベルト補強層9がショルダー領域14D、14Eに設けられているが、センター領域14A及び中間領域14B、14Cに設けられていない場合について説明したが、ベルト補強層9がベルト層7全体を覆うようにセンター領域14A、中間領域14B、14C及びショルダー領域14D,14Eに設けられてもよい。ベルト補強層9がベルト層7全体を覆うように設けられている場合、ショルダー領域14D,14Eに設けられたベルト補強層9よりも薄いベルト補強層9がセンター領域14Aに設けられていることが好ましい。センター領域14Aにおけるベルト補強層9の厚みをショルダー領域14D,14Eより薄く設けることで、タイヤ赤道面CL付近において接地しやすくなり、操縦安定性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0096】
1…空気入りタイヤ、3…トレッド、4…サイドウォール、5…カーカス層、7…ベルト層、8…トレッドゴム、9…ベルト補強層、12A…外側センター主溝、12B…内側センター主溝、12C…外側ショルダー主溝、12D…内側ショルダー主溝、14A…センター領域、14B…外側中間領域、14C…内側中間領域、14D…外側ショルダー領域、14E…内側ショルダー領域、16A1…第1センタースリット、16A2…第2センタースリット、16B1…第1外側中間スリット、16B1a…屈曲部、16B2…第2外側中間スリット、16B2a…屈曲部、16C…内側中間スリット、16C1…第1スリット屈曲部、16C2…第2スリット屈曲部、18A…センターリブ、18B…第2外側中間ブロック、18C1…第1内側中間ブロック、18C2…第2内側中間ブロック、18D…外側ショルダーブロック、18E…内側ショルダーブロック、30…複合サイプ、33…第1外側中間ノッチ、34…第2外側中間ノッチ、35…第1外側中間サイプ、35a…屈曲部、36…第2外側中間サイプ、36a…屈曲部、37…第3外側中間サイプ、37a…屈曲部、38…外側ショルダーサイプ、39…内側ショルダーサイプ、40…第1内側中間ノッチ、41…第2内側中間ノッチ、42…第1内側中間サイプ、42A…第1屈曲部、42B…第2屈曲部、42C…内側サイプ部分、42D…外側サイプ部分、43…第2内側中間サイプ、43A…第1屈曲部、43B…第2屈曲部
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図8