(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004597
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 39/04 20060101AFI20250107BHJP
C08L 23/02 20250101ALI20250107BHJP
C08L 23/26 20250101ALI20250107BHJP
【FI】
C08L39/04
C08L23/02
C08L23/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104384
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】清水 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】宮野 淳次
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB041
4J002BB083
4J002BB093
4J002BB103
4J002BB121
4J002BB141
4J002BB151
4J002BB161
4J002BB171
4J002BB191
4J002BB203
4J002BB213
4J002BB263
4J002BB283
4J002BC041
4J002BJ002
4J002GK00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】 ポリオレフィン系樹脂に親水性を付与し、かつ、N-ビニルラクタム系重合体の分散性にも優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)と、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含む、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)と、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)は、無水カルボン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基及びこれらの塩並びに水酸基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記N-ビニルラクタム系重合体(A)は、N-ビニルラクタム単量体(A1)由来の構造単位(a)を有し、該構造単位(a)100モル%に対する、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)が有する親水性基の割合が、0.01~20モル%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の含有割合が、ポリオレフィン系樹脂(B)100質量%に対して、0.1~80質量%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記N-ビニルラクタム系重合体(A)の含有割合が、ポリオレフィン系樹脂(B)100質量%に対して、0.1~40質量%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂(B)が、ポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)を構成するポリオレフィン系樹脂(B)が、ポリプロピレンである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記N-ビニルラクタム系重合体(A)は、リン原子含有化合物由来の構造を有する、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記N-ビニルラクタム系重合体(A)は、N-ビニルラクタム単量体(A1)由来の構造単位(a)の含有割合が、全構造単位100モル%に対して50~100モル%である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)が酸変性ポリオレフィン系樹脂であり、
該酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸価が3~300mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
N-ビニルラクタム系重合体(A)を含む親水化剤であって、
該親水化剤は、ポリオレフィン系樹脂(B)と親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含む樹脂組成物に用いられる、親水化剤。
【請求項12】
N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)及び/又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含むマスターバッチであって、
N-ビニルラクタム系重合体(A)の含有割合が、ポリオレフィン系樹脂(B)と親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の総量に対して、20~150質量%である、マスターバッチ。
【請求項13】
N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)と、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含む樹脂組成物を製造する方法であって、
該製造方法は、N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)及び/又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを混合する工程(α)を含み、
該工程(α)においてポリオレフィン系樹脂(B)又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の一方を混合していない場合、工程(α)で得られた混合物と、ポリオレフィン系樹脂(B)又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)のうち工程(α)において混合していない一方とを混合する工程(β)を含む、樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。より詳しくは、繊維等に有用な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂は成形性、剛性、電気絶縁性等に優れるため、フィルム、繊維、その他種々の形状の成形品として幅広く汎用的に使用されている。
例えば、特許文献1には、所定量の(A)オレフィン系(コ)ポリマーと、所定量の(B)ポリビニルピロリドン(コ)ポリマーと、所定量の(C)酸化防止剤と、を含む、ポリオレフィンおよびポリビニルピロリドン配合物であり、但し、前記配合物が、帯電防止剤およびカーボンブラックを含まない、ポリオレフィンおよびポリビニルピロリドン配合物が開示されている。
【0003】
また、ポリオレフィン系樹脂等の合成樹脂は、繊維製品等に好適に用いられているが、衣料品や衛生材料等において、吸湿性を付与することが求められている。
例えば、熱可塑性樹脂に吸湿性を付与する技術に関して、特許文献2には、カルボキシル基、ヒドロキシル基、およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂が有する上記官能基と反応し得る官能基を有するビニルピロリドン共重合体とを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2021-516710号公報
【特許文献2】特開2002-003731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり従来、ビニルピロリドン共重合体を用いて熱可塑性樹脂に吸湿性を付与する技術が開発されているものの、本発明者らは、上記方法を適用して、ポリオレフィン系樹脂にN-ビニルラクタム系重合体を適用すると、N-ビニルラクタム系重合体が樹脂組成物中で充分に分散せずに凝集することを見出した。したがって、ポリオレフィン系樹脂に親水性を付与し、かつ、N-ビニルラクタム系重合体の分散性にも優れる樹脂組成物を開発する余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ポリオレフィン系樹脂に親水性を付与し、かつ、N-ビニルラクタム系重合体の分散性にも優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物について種々検討したところ、ポリオレフィン系樹脂に、親水変性ポリオレフィン系樹脂と、N-ビニルラクタム系重合体とを組み合わせることにより、ポリオレフィン系樹脂に親水性を付与し、かつ、N-ビニルラクタム系重合体の分散性にも優れるものとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
本発明は、以下の樹脂組成物等を包含する。
〔1〕N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)と、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含む、樹脂組成物。
〔2〕上記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)は、無水カルボン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基及びこれらの塩並びに水酸基からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有する、上記〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕上記N-ビニルラクタム系重合体(A)は、N-ビニルラクタム単量体(A1)由来の構造単位(a)を有し、該構造単位(a)100モル%に対する、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)が有する親水性基の割合が、0.01~20モル%である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕上記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の含有割合が、ポリオレフィン系樹脂(B)100質量%に対して、0.1~80質量%である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔5〕上記N-ビニルラクタム系重合体(A)の含有割合が、ポリオレフィン系樹脂(B)100質量%に対して、0.1~40質量%である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔6〕上記ポリオレフィン系樹脂(B)が、ポリプロピレンである、上記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔7〕上記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)を構成するポリオレフィン系樹脂(B)が、ポリプロピレンである、上記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔8〕上記N-ビニルラクタム系重合体(A)は、リン原子含有化合物由来の構造を有する、上記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔9〕上記N-ビニルラクタム系重合体(A)は、N-ビニルラクタム単量体(A1)由来の構造単位(a)の含有割合が、全構造単位100モル%に対して50~100モル%である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔10〕上記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)が酸変性ポリオレフィン系樹脂であり、該酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸価が3~300mgKOH/gである、上記〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔11〕N-ビニルラクタム系重合体(A)を含む親水化剤であって、該親水化剤は、ポリオレフィン系樹脂(B)と親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含む樹脂組成物に用いられる、親水化剤。
〔12〕N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)及び/又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含むマスターバッチであって、N-ビニルラクタム系重合体(A)の含有割合が、ポリオレフィン系樹脂(B)と親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の総量に対して、20~150質量%である、マスターバッチ。
〔13〕N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)と、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含む樹脂組成物を製造する方法であって、該製造方法は、N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)及び/又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを混合する工程(α)を含み、該工程(α)においてポリオレフィン系樹脂(B)又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の一方を混合していない場合、工程(α)で得られた混合物と、ポリオレフィン系樹脂(B)又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)のうち工程(α)において混合していない一方とを混合する工程(β)を含む、樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、上述の構成よりなり、ポリオレフィン系樹脂に親水性を付与し、N-ビニルラクタム系重合体の分散性にも優れるため、繊維製品等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0011】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)と、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含む。
本発明の樹脂組成物がN-ビニルラクタム系重合体(A)を含むことにより、ポリオレフィン系樹脂(B)に親水性を付与することができ、また、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)を含むことにより、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)が有する親水性基と、N-ビニルラクタム系重合体(A)中の極性を有するラクタム構造とが相互作用することで樹脂組成物中のN-ビニルラクタム系重合体(A)の分散性を向上させることができると考えられる。
また、本発明の樹脂組成物は、上記成分を含むことにより、樹脂組成物の成形した場合の成形体の強度にも優れる。
【0012】
上記樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂(B)の含有割合は特に制限されないが、樹脂組成物100質量%に対して、45~99質量%であることが好ましい。これにより成形体の強度がより向上する。ポリオレフィン系樹脂(B)の含有割合としてより好ましくは60~98質量%であり、更に好ましくは70~95質量%である。
【0013】
上記樹脂組成物中の親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の含有割合は特に制限されないが、ポリオレフィン系樹脂(B)100質量%に対して、0.1~80質量%であることが好ましい。これにより、樹脂組成物中のN-ビニルラクタム系重合体(A)の分散性をより向上させることができる。親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の含有割合としてより好ましくは 0.3~50質量%であり、更に好ましくは0.5~30質量%であり、特に好ましくは0.7~20質量%であり、最も好ましくは0.8~10質量%である。
【0014】
上記樹脂組成物中のN-ビニルラクタム系重合体(A)の含有割合は特に制限されないが、ポリオレフィン系樹脂(B)100質量%に対して、0.1~40質量%であることが好ましい。これにより、ポリオレフィン系樹脂(B)に対してより充分に親水性を付与することができる。N-ビニルラクタム系重合体(A)の含有割合としてより好ましくは1~30質量%であり、更に好ましくは3~25質量%であり、特に好ましくは5~20質量%である。
【0015】
(N-ビニルラクタム系重合体(A))
N-ビニルラクタム系重合体(A)は、N-ビニルラクタム単量体(A1)由来の構造単位(a)を有するものであれば特に制限されない。
上記N-ビニルラクタム単量体(A1)は、N-ビニルラクタム構造を有する単量体であれば特に制限されないが、下記式(1);
【0016】
【0017】
(式中、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。mは、0~4の整数を表す。nは、1~3の整数を表す。)で表される構造であることが好ましい。
上記R1~R4におけるアルキル基の炭素数としては、1~6が好ましく、より好ましくは1~4である。上記アルキル基として更に好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
上記R1~R4における置換基としては、特に制限されないが、エチレン性不飽和炭化水素基;カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらのエステルや塩;アミノ基、水酸基等が挙げられる。
R1~R3としては水素原子であることが好ましい。R4としては水素原子又はメチル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子である。
mとしては、0~2の整数であることが好ましく、より好ましくは0~1の整数であり、最も好ましくは0である。
nとしては、1又は2であることが好ましく、より好ましくは1である。
【0018】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-5-メチルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルカプロラクタム、1-(2-プロペニル)-2-ピロリドン等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。N-ビニルラクタムとしては、ピロリドン環を有する不飽和単量体が好ましい。より好ましくはN-ビニルピロリドンである。
【0019】
N-ビニルラクタム系重合体(A)は、N-ビニルラクタム単量体(A1)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。
その他の単量体(E)は、N-ビニルラクタム系単量体と共重合でき、ラクタム構造を有さず、エチレン性不飽和炭化水素基を有する化合物であれば、特に制限されないが、例えば、後述する親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)における親水性基を有する不飽和単量体や(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2―エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2―メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換(メタ)アクリルアミド;スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン類;ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルオキサゾリドン等のビニルアミド類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。
【0020】
上記N-ビニルラクタム系重合体(A)は、N-ビニルラクタム単量体(A1)に由来する構造単位(a)の割合が全構造単位100モル%に対して、50~100モル%であることが好ましい。より好ましくは60~100モル%であり、更に好ましくは70~100モル%であり、一層好ましくは80~100モル%であり、特に好ましくは90~100モル%であり、最も好ましくは100モル%である。
【0021】
上記N-ビニルラクタム系重合体(A)は、その他の単量体(E)に由来する構造単位の割合が全構造単位100モル%に対して、0~50モル%であることが好ましい。より好ましくは0~40モル%であり、更に好ましくは0~30モル%であり、一層好ましくは0~20モル%であり、特に好ましくは0~10モル%であり、最も好ましくは0モル%である。
【0022】
上記N-ビニルラクタム系重合体(A)は、リン原子含有化合物由来の構造(リン原子含有基)を有することが好ましい。これにより、樹脂組成物の耐熱性がより向上する。
上記N-ビニルラクタム系重合体(A)が、分子内にリン原子含有基を有することにより、重合体を加熱した際の重合体の分解を抑制することができ、樹脂組成物の耐熱性がより向上する。
上記N-ビニルラクタム系重合体(A)は、主鎖末端(分子末端)にリン原子含有基を有することがより好ましい。
リン原子を有する連鎖移動剤の存在下で、単量体成分を重合することにより、重合体の主鎖末端に、リン原子含有基を導入することができる。
N-ビニルラクタム系重合体(A)に含まれるリン原子含有基の分析は、例えば、31P-NMR測定等により可能である。
【0023】
上記リン原子含有基は、リン原子を含む基であれば特に制限されないが、還元性の基であることが好ましい。還元性を有するリン原子含有基としては、例えば、次亜リン酸(塩)基、亜リン酸(塩)基等が挙げられる。より好ましくは次亜リン酸(塩)基である。
なお、上記次亜リン酸(塩)基は、次亜リン酸基又はこの塩を意味し、上記亜リン酸(塩)基は、亜リン酸基又はこの塩を意味する。
【0024】
上記N-ビニルラクタム系重合体(A)は、重量平均分子量が、3,000~500,000であることが好ましい。より好ましくは5,000~300,000であり、更に好ましくは8,000~200,000であり、特に好ましくは10,000~100,000であり、最も好ましくは10,000~50,000である。重量平均分子量が上記範囲にあることで、樹脂組成物中のN-ビニルラクタム系重合体(A)の分散性をより向上させることができる。
N-ビニルラクタム系重合体(A)の重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0025】
N-ビニルラクタム系重合体(A)は、フィケンチャー法によるK値が、15~50であることが好ましい。より好ましくは20~40であり、更に好ましくは22~38であり、特に好ましくは23~35である。K値が上記範囲にあることで、樹脂組成物中のN-ビニルラクタム系重合体(A)の分散性をより向上させることができる。
N-ビニルラクタム系重合体(A)のフィケンチャー法によるK値は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
上記N-ビニルラクタム系重合体(A)の製造方法は特に制限されず、単量体成分を重合することにより製造することができる。
単量体成分の具体例、好ましい例及び好ましい割合は、上述のとおりである。
【0027】
上記重合工程における、単量体成分の重合を開始する方法としては、特に制限されないが、例えば、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光開始剤存在下に光を照射する方法等が挙げられる。
上記重合工程において、重合を行なう際には、重合開始剤を用いることが好ましい。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、t-ブチルヒドロパーオキシド等の過酸化物;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩水和物、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アスコルビン酸と過酸化水素、スルホキシル酸ナトリウムとt-ブチルヒドロパーオキシド、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物が最も好ましい。中でも、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩水和物、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)がより好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0028】
上記重合開始剤の使用量としては、単量体の使用量1モルに対して、0.1g以上、10g以下であることが好ましい。より好ましくは0.1g以上、7g以下であり、更に好ましくは0.1g以上、5g以下である。
【0029】
上記重合工程においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤として、具体的には、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン等のハロゲン化物;イソプロピルアルコール、グリセリン等の、第2級アルコール;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)(これらの水和物を含む);亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩);亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸(塩);亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸(塩);亜ジチオン酸ナトリウム等の亜ジチオン酸(塩);ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸(塩)、過酸化水素などが挙げられる。上記連鎖移動剤として好ましくは、次亜リン酸(塩)、重亜硫酸(塩)、過酸化水素、メルカプトプロピオン酸であり、更に好ましくは、次亜リン酸(塩)である。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量1モルに対して、0g以上、20g以下であることが好ましく、0g以上、15g以下であることがより好ましい。
【0030】
上記重合工程において、溶媒を使用する場合、溶媒としては水性溶媒が好ましい。水性溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、n-ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等が挙げられ、好ましくは水である。
単量体の溶媒への溶解性向上のため、必要に応じて、重合に悪影響を及ぼさない範囲で、任意の適切な有機溶媒を適宜加えてもよい。このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
溶媒の使用量としては、単量体100質量%に対して40~300質量%が好ましい。
【0031】
上記重合工程において、重合温度は、特に限定されるものではないが、20℃~110℃であることが好ましく、より好ましくは40~105℃であり、更に好ましくは50~105℃である。
また、反応時間は、上記重合反応が完結するように、反応温度や、単量体成分、重合開始剤、及び、溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、使用量等に応じて、適宜設定すればよい。
【0032】
上記重合体の製造方法は、重合反応後に、重合体を熟成する工程を含むことが好ましい。熟成工程を行うことにより、残存モノマー量を低減することができる。上記熟成工程における温度は特に制限されないが、50~105℃であることが好ましい。上記熟成工程における熟成時間は特に制限されないが、10分~5時間であることが好ましい。より好ましくは20分~3時間である。
【0033】
重合体の中和率を好適な範囲とするために、重合中、重合後に中和剤として、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物等を添加してもよい。
【0034】
(ポリオレフィン系樹脂(B))
上記ポリオレフィン系樹脂(B)は、オレフィンを含む単量体成分を重合して得られる重合体であればよく、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。
上記オレフィンは、二重結合を有する炭化水素であればよいが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-へキセン、3-エチル-1-ヘキセン、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等の炭素数2~20の直鎖状又は分岐状のオレフィンが挙げられる。
上記オレフィンの炭素数として好ましくは2~10であり、より好ましくは2~8であり、更に好ましくは2~6であり、特に好ましくは2~4である。
上記オレフィンとして好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセンであり、より好ましくはエチレン、プロピレンである。
【0035】
上記ポリオレフィン系樹脂(B)は、オレフィンと共重合可能なその他の単量体由来の構造単位を有していてもよい。
その他の単量体として、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸メチル等のアルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸等の不飽和カルボン酸系単量体、スチレン等の不飽和芳香族単量体、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0036】
上記ポリオレフィン系樹脂(B)におけるオレフィン由来の構造単位の含有割合は、特に制限されないが、全構造単位100質量%に対して50~100質量%であることが好ましい。より好ましくは 65~100質量%であり、更に好ましくは80~100質量%であり、最も好ましくは100質量%である。
【0037】
上記ポリオレフィン系樹脂(B)におけるオレフィン以外のその他の単量体由来の構造単位の含有割合は、特に制限されないが、全構造単位100質量%に対して0~50質量%であることが好ましい。より好ましくは0~35質量%であり、更に好ましくは0~20質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
【0038】
上記ポリオレフィン系樹脂(B)として、好ましくはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン等のホモポリマー、エチレンとプロピレンのコポリマー、スチレンとエチレンとブチレンのコポリマーであり、より好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマーであり、更に好ましくはポリプロピレンである。
【0039】
(親水変性ポリオレフィン系樹脂(C))
上記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)は、ポリオレフィンを、親水性基を有する化合物で変性させたものであれば特に制限されない。
親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の原料のポリオレフィン系樹脂は、オレフィンを含む単量体成分を重合して得られる重合体であればよく、具体例及び好ましい形態は、上述のポリオレフィン系樹脂(B)と同様である。親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の原料のポリオレフィン系樹脂は、上記樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂(B)と同一であっても異なっていてもよい。
親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)を構成するポリオレフィン系樹脂として好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンのコポリマー、スチレンとエチレンとブチレンのコポリマーであり、より好ましくはポリプロピレンである。
【0040】
上記ポリオレフィン系樹脂の変性に用いられる親水性基を有する化合物は、親水性基を有し、ポリオレフィン系樹脂と反応できる化合物である限り特に制限されない。
親水性基としては、例えば、無水カルボン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基及びこれらの塩、水酸基等が挙げられる。中でも好ましくは無水カルボン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基等の酸基及びこれらの塩であり、より好ましくは無水カルボン酸基、カルボキシル基であり、特に好ましくは無水カルボン酸基である。
【0041】
上記ポリオレフィン系樹脂の変性に用いられる化合物としては、上記親水性基を有し、ポリオレフィン系樹脂と反応できる無水カルボン酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基及びこれらの塩並びに水酸基 からなる群より選択される少なくとも1種の親水性基を有する化合物が好ましい。好ましくは酸基及び/又はその塩の基を有する化合物であり、より好ましくは無水カルボン酸基含有化合物、カルボキシル基又はその塩の基を有する化合物である。
【0042】
上記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)における親水性基の割合は、特に制限されないが、後述するN-ビニルラクタム系重合体(A)におけるN-ビニルラクタム単量体(A1)由来の構造単位(a)100モル%に対して、0.01~20モル%であることが好ましい。これにより、N-ビニルラクタム系重合体(A)と親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とがより充分に相互作用し、樹脂組成物中のN-ビニルラクタム系重合体(A)の分散性をより向上させることができる。
親水性基の割合としてより好ましくは、構造単位(a)100モル%に対して0.05~15モル%であり、更に好ましくは0.1~10モル%であり、特に好ましくは0.2~5モル%である。
【0043】
上記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)は、無水カルボン酸基、カルボキシル基又はその塩の基を有するものであることが好ましい。すなわち、上記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)は、酸変性ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
上記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)が酸変性ポリオレフィン系樹脂である場合も、酸基の割合は、上述の親水性基の好ましい割合と同様であるが、酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸価が3~300mgKOH/gであることが好ましい。より好ましくは5~100mgKOH/gであり、更に好ましくは7~70mgKOH/gであり、特に好ましくは10~60mgKOH/gである。
【0044】
(樹脂の酸価)
本発明における酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸価(mgKOH/g)の測定法は以下の通りである。
(1)酸変性ポリオレフィン系樹脂にキシレンを加えて加熱して溶解後、N/10水酸化カリウムメタノール溶液で滴定する。
(2)次式を用いて酸価を決定する。
酸価(mgKOH/g)=(A×f×5.61)/S
但し、Aは0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液のmL数、fは0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液の力価、Sは試料採取量(g)である。
【0045】
上記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の重量平均分子量は、特に制限されないが、5,000~2,000,000であることが好ましい。より好ましくは10,000~500,000であり、更に好ましくは15,000~300,000であり、特に好ましくは20,000~200,000である。親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の重量平均分子量が5,000以上であると、樹脂組成物の強度がより向上する傾向にある。また、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の重量平均分子量が2,000,000以下であると、N-ビニルラクタム系重合体(A)の分散性がより向上する傾向にある。
親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の重量平均分子量は、例えば下記の条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定することができる。
<親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の重量平均分子量の測定>
装置:東ソー製 HLC-8321GPC/HT
検出器:RI
カラム:東ソー製 TSK-GEL GMHHR-H(20)HT×3
カラム温度:140℃
流速:1ml/min
検量線:標準ポリスチレン
溶離液:1,2,4-トリクロロベンゼン
【0046】
上記親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の製造方法はポリオレフィン系樹脂に親水性基を結合させる限り特に制限されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂に親水性基を有する化合物(以下、親水性基含有化合物ともいう。)をグラフトさせる方法;ポリオレフィン系樹脂に加水分解等により親水性基になり得る基を有する化合物をグラフトさせた後に加水分解等をする方法;ポリオレフィン系樹脂を製造する際に、ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンの一部を、親水性基を有する不飽和単量体や、加水分解等により親水性基となり得る基を有する不飽和単量体に代えて共重合する方法等が挙げられる。
【0047】
上記ポリオレフィン系樹脂に親水性基や親水性基になり得る基を有する化合物(以下、親水性基含有化合物等ともいう)をグラフトさせる方法としては特に制限されないが、例えば、ラジカル開始剤等を用いて、有機溶媒中で、ポリオレフィン系樹脂に親水性基含有化合物等を反応させる方法や、押出機や二軸混練機等を用いて、無溶媒で、ポリオレフィン系樹脂と親水性基含有化合物等とを反応させる方法により得ることができる。
ポリオレフィン系樹脂と親水性基含有化合物等との反応温度は、特に制限されないが、好ましくは50~300℃であり、より好ましくは80℃~250℃であり、更に好ましくは100~200℃である。
【0048】
上記親水性基含有化合物としては、ポリオレフィン系樹脂と反応する限り特に制限されないが、親水性基とエチレン性不飽和炭化水素基とを有する化合物であることが好ましい。
親水性基とエチレン性不飽和炭化水素基とを有する化合物としては、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体、スルホン酸基含有単量体、アミノ基含有単量体、水酸基含有単量体等が挙げられる。
【0049】
不飽和モノカルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-メチル-2-ペンテン酸及びこれらの塩等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸系単量体としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、これらの塩及びこれらの無水物等が挙げられる。
【0050】
スルホン酸基含有単量体としては、例えば、3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、α-メチル-p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルファミン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、4-(アリルオキシ)ベンゼンスルホン酸、1-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、1,1-ジメチル-2-プロペン-1-スルホン酸、3-ブテン-1-スルホン酸、1-ブテン-3-スルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-n-ブタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-フェニルプロパンスルホン酸、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸及びこれらの塩等が挙げられる。
【0051】
アミノ基含有単量体としては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N-ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及び上記モノマーに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及び上記モノマーに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれらの塩酸等の酸による中和物;モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(tert-ブチルアミノ)エチル等のモノアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及びこれらの塩酸等の酸による中和物;モノメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のモノアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及びこれらの塩酸等の酸による中和物;(メタ)アクリル酸-2-アミノエチル等の(メタ)アクリル酸とアルカノールアミンとのエステル類及びこれらの塩酸等の酸による中和物;N,N-ジアリルメチルアミン及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸等の酸による中和物;アリルアミン及びこれの塩酸等の酸による中和物;1-アリルオキシ-3-ジブチルアミノ-2-オール、1-アリルオキシ-3-ジエタノールアミノ-2-オール等の炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1~24のアミン化合物との付加反応物及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸等の酸による中和物等が挙げられる。
【0052】
水酸基含有単量体としては、例えば、α-ヒドロキシメチルアクリレート、α-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコール及びこれらの水酸基にアルキレンオキシドを付加したアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。
【0053】
加水分解等により親水性基になり得る基を有する化合物としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルアルコールとカルボン酸とのエステル;(メタ)アクリルアミド、アセトニトリル;グリシジル(メタ)アクリレート及びβ-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の炭素数6~20のグリシジル基含有(メタ)アクリレート、4-ビニル-1,2-エポキシシクロヘキサン及び5-ビニル-2,3-エポキシノルボルナン等の炭素数6~20の脂環式エポキシ基含有ビニル系モノマー、N-(4-(2,3-エポキシプロポキシ)-3,5-ジメチルフェニルメチル)アクリルアミド等の炭素数6~20のグリシジル基含有アクリルアミド等のエポキシ基含有単量体等が挙げられる。
【0054】
上記親水性基を有する化合物として好ましくは不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体、スルホン酸基含有単量体であり、より好ましくは不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体であり、更に好ましくは不飽和ジカルボン酸系単量体であり、特に好ましくは不飽和ジカルボン酸の無水物である。
【0055】
ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィンの一部を、親水性基を有する不飽和単量体や、加水分解等により親水性基となり得る基を有する不飽和単量体に代えて共重合する方法において、用いられる親水性基を有する不飽和単量体や親水性基となり得る基を有する不飽和単量体は、親水性基等を有し、かつ、オレフィンと共重合できる限り特に制限されないが、例えば、上述のポリオレフィン系樹脂にグラフトさせる単量体等が挙げられる。
【0056】
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物は、N-ビニルラクタム系重合体(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)以外のその他の成分を含んでいてもよい。
上記その他の成分としては特に制限されないが、例えば、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、補強材、近赤外線吸収剤、帯電防止剤、着色剤、充填剤、樹脂改質剤等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物におけるその他の成分の含有割合は、特に制限されないが、本発明の樹脂組成物100質量%に対して0~3質量%であることが好ましい。より好ましくは0~1質量%である。
【0057】
<マスターバッチ>
本発明は、N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含み、N-ビニルラクタム系重合体(A)の含有割合が、ポリオレフィン系樹脂(B)と親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の総量に対して、20~150質量%である、マスターバッチでもある。
本明細書においてマスターバッチは、本発明の樹脂組成物に含まれるN-ビニルラクタム系重合体(A)を高濃度で含む、濃縮混合物を意味する。
上記マスターバッチを用いることにより、本発明の樹脂組成物やその成形体を効率的に製造することができる。
上記マスターバッチ中のN-ビニルラクタム系重合体(A)の含有割合は、ポリオレフィン系樹脂(B)と親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の総量に対して、22~130質量%であることが好ましい。より好ましくは25~120質量%である。
【0058】
<親水化剤>
本発明は、N-ビニルラクタム系重合体(A)を含む親水化剤であって、該親水化剤は、ポリオレフィン系樹脂(B)と親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含む樹脂組成物に用いられる、親水化剤でもある。
上記親水化剤におけるN-ビニルラクタム系重合体(A)の含有割合は特に制限されないが、親水化剤100質量%に対して50~100質量%であることが好ましい。より好ましくは80~100質量%である。
【0059】
上記親水化剤が用いられる樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂(B)の割合は、特に制限されないが、樹脂組成物100質量%に対して45~99質量%であることが好ましい。より好ましくは60~98質量%であり、特に好ましくは70~95質量%である。
【0060】
上記親水化剤が用いられる樹脂組成物中の親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の割合は、特に制限されないが、樹脂組成物100質量%に対して0.1~40質量%であることが好ましい。より好ましくは0.3~20質量%であり、更に好ましくは0.5~10質量%であり、特に好ましくは0.8~5質量%である。
【0061】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明は、N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)と、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを含む樹脂組成物を製造する方法であって、該製造方法は、N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)及び/又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを混合する工程(α)を含み、該工程(α)においてポリオレフィン系樹脂(B)又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の一方を混合していない場合、工程(α)で得られた混合物と、ポリオレフィン系樹脂(B)又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)のうち工程(α)において混合していない一方とを混合する工程(β)を含む、樹脂組成物の製造方法でもある。
【0062】
上記樹脂組成物の製造方法において、N-ビニルラクタム系重合体(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の具体例及び好ましい形態は、上述のとおりである。
【0063】
上記工程(α)は、N-ビニルラクタム系重合体(A)と、ポリオレフィン系樹脂(B)及び/又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを混合する限り特に制限されず、工程(α)において、N-ビニルラクタム系重合体(A)に対して、ポリオレフィン系樹脂(B)及び親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の両方を混合しても、これらの一方のみを混合してもよい。
上記工程(α)において、N-ビニルラクタム系重合体(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)を混合する場合、混合時間を短縮することができる。
また、工程(α)において、ポリオレフィン系樹脂(B)又は親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の一方をN-ビニルラクタム系重合体(A)と混合する場合、混合物における混ざりムラを充分に抑制することができる。
上記樹脂組成物の製造方法の工程(α)において、N-ビニルラクタム系重合体(A)と親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)とを混合し、工程(β)において、工程(α)で得られた混合物とポリオレフィン系樹脂(B)とを混合する形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0064】
上記樹脂組成物の製造方法において、混合するN-ビニルラクタム系重合体(A)、ポリオレフィン系樹脂(B)、親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の割合は特に制限されないが、工程(α)又は工程(β)において、N-ビニルラクタム系重合体(A)100質量%に対するポリオレフィン系樹脂(B)の使用量は、250~10,000質量%であることが好ましい。より好ましくは350~5,000質量%である。
【0065】
上記工程(α)又は工程(β)において、N-ビニルラクタム系重合体(A)100質量%に対する親水変性ポリオレフィン系樹脂(C)の使用量は、1~300質量%であることが好ましい。より好ましくは2~100質量%であり、更に好ましくは3~50質量%である。
【0066】
また、上記工程(α)又は工程(β)において、N-ビニルラクタム系重合体(A)におけるN-ビニルラクタム単量体(A1)由来の構造単位(a)100モル%に対して、親水性基の割合が0.01~20モル%となるように親水性ポリオレフィン系樹脂(C)を混合することが好ましい。親水性基の割合としてより好ましくは、構造単位(a)100モル%に対して0.05~15モル%であり、更に好ましくは0.1~10モル%であり、特に好ましくは0.2~5モル%である。
【0067】
上記工程(α)におけるN-ビニルラクタム系重合体(A)等の混合温度は特に制限されないが、180~300℃であることが好ましい。これにより、混合する成分をより充分に混合することができる。より好ましくは190~270℃であり、更に好ましくは200~250℃である。
【0068】
上記工程(α)におけるN-ビニルラクタム系重合体(A)等の混合時間は、1~180分であることが好ましい。より好ましくは2~120分であり、更に好ましくは3~60分である。
上記工程(α)の混合に用いられる装置は、特に制限されないが、例えば、ミキサー、ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロール等の混練機が挙げられる。
【0069】
上記樹脂組成物の製造方法において、工程(β)を行う場合にも、混合温度、混合時間、装置は、工程(α)におけるこれらと同様である。
【実施例0070】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0071】
<N-ビニルラクタム系重合体(A)の重量平均分子量の測定>
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により下記の条件で測定して求めた。
装置:東ソー製 HLC-8320GPC
検出器:RI
カラム:東ソー製 TSK-GEL ALPHA-M,ALPHA-2500
カラム温度:40℃
流速:0.8ml/min
検量線:TSKgel standard Poly(ethylene oxide)
溶離液:アセトニトリルと0.2M 硝酸ナトリウム水溶液とを1:4で混合した溶液。
【0072】
<固形分の測定>
底面の直径が約5cmの秤量缶(質量W1(g))に、約1gの粉体を量り取り(質量W2(g))、これを150℃の定温乾燥機中において1時間静置し、乾燥させた。乾燥後の秤量缶と粉体の合計質量(W3(g))を測定し、下記式より固形分を求めた。
固形分(質量%)=[(W3-W1)/W2]×100
【0073】
<K値>
重合体のK値は、固形分換算で1%の重合体水溶液を調製し、その25℃での粘度をLA UDA社製の毛細管粘度計(希釈型マイクロウベローデ粘度管I(K=0.01))を用いて測定し、下記のFikentscherの式に適用して算出した。
K=(1.5logηrel-1)/(0.15+0.003c)+(300clogη rel+(c+1.5clogηrel )2)1/2/(0.15c+0.003c2)
ここで、ηrelは、毛細管粘度計により測定される、N-ビニルラクタム系重合体水溶液の水に対する相対粘度(25℃)であり、cは、N-ビニルラクタム系重合体水溶液中のN-ビニルラクタム系重合体の濃度[質量%]である。
【0074】
<ポリプロピレン樹脂に対する分散性(AFM画像の評価)>
ミクロトームにて断面作製し、以下の測定条件にて画像処理を行い、表面の凹凸形状の評価を行った。不作為の3点で島構造の幅を測定し、平均値で判定した。
(測定条件)
装置:BRUKER Dimension Icon
測定モード:PeakForceTappingモード(Air)
プローブ:RTESPA-300(ばね定数=40N/m)
(判定基準)
◎:AFM画像の弾性率像で島部の幅が2μm未満
〇:AFM画像の弾性率像で島部の幅が2μm以上4μm未満
×:AFM画像の弾性率像で島部の幅が4μm以上
【0075】
<親水性の評価(水の接触角)>
未延伸フィルム表面の水の接触角を接触角測定器(協和界面科学株式会社製FACE接触角計CA-X型)で測定した。
(判定基準)
◎:水の接触角が85°未満
〇:水の接触角が85°以上90°未満
×:水の接触角が90°以上
【0076】
<樹脂の強度評価>
未延伸フィルム成型後、離型シートからフィルムを剥離時にフィルムの破損有無により判定した。
(判定基準)
◎:5枚製膜時に破損したフィルムが1枚以下。
〇:5枚製膜時に破損したフィルムが2枚以上3枚以下。
×:5枚製膜時に破損したフィルムが4枚以上。
【0077】
<製造例1>
マックスブレンド(住友重機械工業社の登録商標)型の攪拌翼、ガラス製の蓋、撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、還流冷却器、温度センサーを備えたSUS製反応容器に、イオン交換水373.9質量部、25%次亜燐酸ナトリウム一水和物水溶液(富士フイルム和光純薬社製)9.0質量部、48質量%水酸化ナトリウム水溶液0.14質量部を仕込み、反応容器内の溶液を撹拌しながら88~92℃まで昇温した。次いで90℃を維持し、N-ビニルピロリドン500質量部を360分かけて、10質量%2、2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩水溶液(富士フイルム和光純薬社製、以下「10%V-50」と称する)27.0質量部を390分かけて、それぞれ別々の供給経路を通じて滴下した。それぞれの成分の滴下は、一定の滴下速度で連続的に行った。更に、88質量%ギ酸水溶液8.5質量部を重合開始から420分後、48質量%水酸化ナトリウム水溶液3.6質量部を重合開始から480分後に一括で添加した。48質量%水酸化ナトリウム水溶液の添加終了後、さらに60分間温度を維持して熟成を行い、重合体組成物を得た。得られた重合体組成物を減圧条件下、90℃の真空乾燥機(ヤマト科学社製:角型真空定温乾燥機DP33)にて5時間乾燥させ、その後乾燥物をラボミルサーにて粉砕することで、重合体(1)を含む粉体を得た。得られた粉体の固形分は97.5%、K値は28、重量平均分子量は20,000であった。また、添加量及び得られた粉体の固形分値から、粉体に含まれるN-ビニルピロリドン由来の構造単位の成分量は8.55mmol/gと算出された。
【0078】
<実施例1>
製造例1で得られた重合体(1)を含む粉体15.0質量部、ポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製住友ノーブレンW101)83.3質量部、酸変性ポリプロピレン樹脂(三洋化成工業株式会社製ユーメックス1001、酸価:26mgKOH/g)1.7質量部を予め混合(即ち、N-ビニルピロリドン由来の構造単位100モル%に対して酸基が0.61モル%含有)した状態で、ミキサー(東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて240℃で5分間混練し、樹脂組成物(I-1)を得た。得られた樹脂組成物(I-1)を手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC-180C型)を用いて、10MPaで1分間溶融プレス成型して、厚さ100μmの未延伸フィルム(I-2)を作成した。
得られた樹脂組成物(I-1)をAFMにて観察することで、重合体(1)の分散性を評価した。島部の幅の平均は0.82μmだったため、「◎」判定とした。未延伸フィルム(I-2)を、成型時に使用した剥離シートから未延伸フィルム(I-2)を剥離する際に未延伸フィルム(I-2)が破損なく剥離できるかという観点で強度評価を実施した。また、取得した未延伸フィルム(I-2)に対して水接触角測定をすることにより親水性の評価を行った。結果を表1にまとめた。
【0079】
<実施例2>
製造例1で得られた重合体(1)を含む粉体15.0質量部、ポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製住友ノーブレンW101)72.3質量部、酸変性ポリプロピレン樹脂(三洋化成工業株式会社製ユーメックス1001、酸価:26mgKOH/g)12.7質量部を予め混合(即ち、N-ビニルピロリドン由来の構造単位100モル%に対して酸基が4.59モル%含有)した状態で、ミキサー(東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて240℃で5分間混練し、樹脂組成物(II-1)を得た。得られた樹脂組成物(II-1)を手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC-180C型)を用いて、10MPaで1分間溶融プレス成型して、厚さ100μmの未延伸フィルム(II-2)を作成した。
得られた樹脂組成物(II-1)、未延伸フィルム(II-2)を用いた以外は実施例1と同様の評価を行った。分散性評価における島部の平均は0.46μmだったため、「◎」判定とした。結果を表1にまとめた。
【0080】
<実施例3>
製造例1で得られた重合体(1)を含む粉体15.0質量部、ポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製住友ノーブレンW101)59.5質量部、酸変性ポリプロピレン樹脂(三洋化成工業株式会社製ユーメックス1001、酸価:26mgKOH/g)25.5質量部を予め混合(即ち、N-ビニルピロリドン由来の構造単位100モル%に対して酸基が9.21モル%含有)した状態で、ミキサー(東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて240℃で5分間混練し、樹脂組成物(III-1)を得た。得られた樹脂組成物(III-1)を手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC-180C型)を用いて、10MPaで1分間溶融プレス成型して、厚さ100μmの未延伸フィルム(III-2)を作成した。
得られた樹脂組成物(III-1)、未延伸フィルム(III-2)を用いた以外は実施例1と同様の評価を行った。分散性評価における島部の平均は0.29μmだったため、「◎」判定とした。結果を表1にまとめた。
【0081】
<実施例4>
製造例1で得られた重合体(1)を含む粉体3.0質量部、ポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製住友ノーブレンW101)91.9質量部、酸変性ポリプロピレン樹脂(三洋化成工業株式会社製ユーメックス1001、酸価:26mgKOH/g)5.1質量部を予め混合(即ち、N-ビニルピロリドン由来の構造単位100モル%に対して酸基が9.21モル%含有)した状態で、ミキサー(東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて240℃で5分間混練し、樹脂組成物(IV-1)を得た。得られた樹脂組成物(IV-1)を手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC-180C型)を用いて、10MPaで1分間溶融プレス成型して、厚さ100μmの未延伸フィルム(IV-2)を作成した。
得られた樹脂組成物(IV-1)、未延伸フィルム(IV-2)を用いた以外は実施例1と同様の評価を行った。分散性評価における島部の平均は0.26μmだったため、「◎」判定とした。結果を表1にまとめた。
【0082】
<実施例5>
製造例1で得られた重合体(1)を含む粉体30.0質量部、酸変性ポリプロピレン樹脂(三洋化成工業株式会社製ユーメックス1001、酸価:26mgKOH/g)25.4質量部を予め混合(即ち、N-ビニルピロリドン由来の構造単位100モル%に対して酸基が4.59モル%含有)した状態で、ミキサー(東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて240℃で5分間混練し、樹脂組成物(V-1)を得た。次いで、得られた樹脂組成物(V-1)27.7質量部とポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製住友ノーブレンW101)72.3質量部をミキサー(東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて240℃で5分間混練し、樹脂組成物(V-2)を得た。得られた樹脂組成物(V-2)を手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC-180C型)を用いて、10MPaで1分間溶融プレス成型して、厚さ100μmの未延伸フィルム(V-3)を作成した。
得られた樹脂組成物(V-2)、未延伸フィルム(V-3)を用いた以外は実施例1と同様の評価を行った。分散性評価における島部の平均は0.49μmだったため、「◎」判定とした。結果を表1にまとめた。
【0083】
<比較例1>
製造例1で得られた重合体(1)を含む粉体15.0質量部、ポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製住友ノーブレンW101)85.0質量部を予め混合した状態で、ミキサー(東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて240℃で5分間混練し、樹脂組成物(VI-1)を得た。得られた樹脂組成物(VI-1)を手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC-180C型)を用いて、10MPaで1分間溶融プレス成型して、厚さ100μmの未延伸フィルム(VI-2)を作成した。
得られた樹脂組成物(VI-1)、未延伸フィルム(VI-2)を用いた以外は実施例1と同様の評価を行った。分散性評価における島部の平均は4.9μmだったため、「×」判定とした。結果を表1にまとめた。
【0084】
<比較例2>
製造例1で得られた重合体(1)を含む粉体15.0質量部、酸変性ポリプロピレン樹脂(三洋化成工業株式会社製ユーメックス1001、酸価:26mgKOH/g)85.0質量部を予め混合(即ち、N-ビニルピロリドン由来の構造単位100モル%に対して酸基が30.70モル%含有)した状態で、ミキサー(東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて240℃で5分間混練し、樹脂組成物(VII-1)を得た。得られた樹脂組成物(VII-1)を手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC-180C型)を用いて、10MPaで1分間溶融プレス成型して、厚さ100μmの未延伸フィルム(VII-2)を作成した。
得られた樹脂組成物(VII-1)、未延伸フィルム(VII-2)を用いた以外は実施例1と同様の評価を行った。分散性評価における島部の平均は4.3μmだったため、「×」判定とした。結果を表1にまとめた。
【0085】
<比較例3>
ポリプロピレン樹脂(住友化学株式会社製住友ノーブレンW101)70.0質量部、酸変性ポリプロピレン樹脂(三洋化成工業株式会社製ユーメックス1001、酸価:26mgKOH/g)30.0質量部を予め混合した状態で、ミキサー(東洋精機製作所製、ラボプラストミル)を用いて240℃で5分間混練し、樹脂組成物(VIII-1)を得た。得られた樹脂組成物(VIII-1)を手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC-180C型)を用いて、10MPaで1分間溶融プレス成型して、厚さ100μmの未延伸フィルム(VIII-2)を作成した。
比較製造例3で得られた未延伸フィルム(VIII-2)を用いて実施例1と同様の強度評価、親水性の評価を行った。結果を表1にまとめた。
【0086】
【0087】
<樹脂の強度評価>
8cm×4cmの大きさに切り取りとった未延伸フィルム(I-1、II-1、III-1)の両端を持ち、フィルムが割れるまでゆっくりと曲げた。最も割れにくい(高強度)と感じたフィルムに3点、次に割れにくいと感じたフィルムに2点、最も割れやすい(低強度)と感じたフィルムに1点をつけた。評価は3人で行い、9点満点で樹脂の強度評価(相対評価)を実施した。結果を表2にまとめた。
【0088】
【0089】
以上の結果より、樹脂の強度はポリプロピレン樹脂の比率が高く、酸変性ポリプロピレン樹脂の比率が低いほど良好な傾向にあった。