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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004633
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電気回路体及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
G01L5/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104454
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508282568
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 隆介
(72)【発明者】
【氏名】大里 毅
(72)【発明者】
【氏名】濱津 文哉
(72)【発明者】
【氏名】ジーアン ガオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン ディー ダブリュー マーデン
(72)【発明者】
【氏名】ショウルン イン
(72)【発明者】
【氏名】イージョン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ニシェイ ジョシー
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AB06
2F051BA07
(57)【要約】
【課題】汎用性を向上させることができる電気回路体及び回路ユニットを提供する。
【解決手段】電気回路体10は、一体に配列される複数のセンサセル13と、少なくとも1つの端子部15(第1端子部15a及び第2端子部15b)と、導線17(第1導線17a及び第2導線17b)とを備える。各端子部15は複数のセンサセル13に接続される複数の端子15tを備える。導線17は複数の端子15tと複数のセンサセル13とを接続する。複数のセンサセル13は、複数の導線17の適宜の位置が切断されることによって、所定の端子部15(例えば、第1端子部15a)に接続される第1セル群と、所定の端子部15から切断される第2セル群とに分離される。複数の導線17のうちセンサセル13から切断された導線17は基準電位に設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定機能を有するとともに一体に配列される複数のセルと、
前記複数のセルに接続される複数の端子を有する少なくとも1つの端子部と、
前記複数の端子と前記複数のセルとを接続する複数の導線と
を備え、
前記複数のセルは、前記複数の導線の適宜の位置が切断されることによって、前記少なくとも1つの端子部のうちのいずれかの端子部に接続される第1セル群と、前記いずれかの端子部から切断される第2セル群とに分離される
電気回路体。
【請求項2】
前記複数の導線のうち前記セルから切断された前記導線は基準電位に設定される
請求項1に記載の電気回路体。
【請求項3】
請求項2に記載の電気回路体と、
前記いずれかの端子部に接続されるとともに、前記セルから切断された前記導線を前記基準電位に設定する基準電位設定部と
を備える
電子機器。
【請求項4】
前記いずれかの端子部に接続されるとともに、前記いずれかの端子部に接続されている複数の前記導線のうちから順次に切り替えて選択するいずれか1つの前記導線との接続を行う接続切替部と、
前記セルから切断された前記導線が前記接続切替部によって選択されることを禁止し、前記接続切替部による選択が禁止された前記導線を前記基準電位設定部によって前記基準電位に設定する処理部と
を備える
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記複数のセルの各々は、相互に離れて配置される第1電極及び第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される誘電性又は導電性の弾性基材とを備え、
前記処理部は、
前記接続切替部を介して、前記いずれかの端子部に接続されている各前記導線に対応する各前記セルの前記第1電極と前記第2電極との間の静電容量又は電気抵抗を検出し、
前記静電容量が所定閾容量未満又は前記電気抵抗が所定閾抵抗よりも大きい場合、前記接続切替部によって選択されている前記導線は異常であると判定して、異常である前記導線を前記基準電位に設定する
請求項4に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路体及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性変形する誘電体を厚さ方向の両側から挟み込む一対の電極を備える柔軟性の静電容量型センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-105964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば人体又はロボットに装着又は着用されるセンサデバイス等のように、規則的に一体に配列される複数のセンサセルを備えるセンサアレイは、設置個所の形状及び必要とされるセンサセル数等の条件に応じて、個別に設計及び製作が行われる場合がある。しかしながら、個別の設計及び製作には煩雑な手間を要するとともに、費用が嵩むという問題が生じる。
【0005】
本発明は、汎用性を向上させることができる電気回路体及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1):本発明の一態様に係る電気回路体(例えば、実施形態での電気回路体10)は、所定機能を有するとともに一体に配列される複数のセル(例えば、実施形態でのセンサセル13)と、前記複数のセルに接続される複数の端子(例えば、実施形態での端子15t)を有する少なくとも1つの端子部(例えば、実施形態での第1端子部15a及び第2端子部15b)と、前記複数の端子と前記複数のセルとを接続する複数の導線(例えば、実施形態での導線17、第1導線17a、第2導線17b)とを備え、前記複数のセルは、前記複数の導線の適宜の位置が切断されることによって、前記少なくとも1つの端子部のうちのいずれかの端子部(例えば、実施形態での第1端子部15a)に接続される第1セル群と、前記いずれかの端子部から切断される第2セル群とに分離される。
【0007】
(2):上記(1)に記載の電気回路体では、前記複数の導線のうち前記セルから切断された前記導線は基準電位に設定されてもよい。
【0008】
(3):本発明の一態様に係る電子機器は、上記(2)に記載の電気回路体と、前記いずれかの端子部に接続されるとともに、前記セルから切断された前記導線を前記基準電位に設定する基準電位設定部(例えば、実施形態での接続切替部53、第1接続切替部53a、第2接続切替部53b)と備える。
【0009】
(4):上記(3)に記載の電子機器は、前記いずれかの端子部に接続されるとともに、前記いずれかの端子部に接続されている複数の前記導線のうちから順次に切り替えて選択するいずれか1つの前記導線との接続を行う接続切替部(例えば、実施形態での接続切替部53、第1接続切替部53a、第2接続切替部53bが兼ねる)と、前記セルから切断された前記導線が前記接続切替部によって選択されることを禁止し、前記接続切替部による選択が禁止された前記導線を前記基準電位設定部によって前記基準電位に設定する処理部(例えば、実施形態での制御部55)とを備えてもよい。
【0010】
(5):上記(4)に記載の電子機器では、前記複数のセルの各々は、相互に離れて配置される第1電極(例えば、実施形態での第1電極31、正極側電極93p)及び第2電極(例えば、実施形態での第2電極33、負極側電極93n)と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置される誘電性又は導電性の弾性基材(例えば、実施形態での基材11b,11c)とを備え、前記処理部は、前記接続切替部を介して、前記いずれかの端子部に接続されている各前記導線に対応する各前記セルの前記第1電極と前記第2電極との間の静電容量又は電気抵抗を検出し、前記静電容量が所定閾容量未満又は前記電気抵抗が所定閾抵抗よりも大きい場合、前記接続切替部によって選択されている前記導線は異常であると判定して、異常である前記導線を前記基準電位に設定してもよい。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)によれば、複数のセルは、所望の端子部に接続される第1セル群と、所望の端子部から切断される第2セル群とに分離されるので、第1セル群の形状及びセル数を必要に応じて容易に変更することができる。例えば、設置個所の形状及び必要とされるセル数等の各種条件に応じて個別の設計及び製作を行う場合に比べて、煩雑な手間を要すること及び費用が増大することを抑制し、汎用性を向上させることができる。
【0012】
上記(2)の場合、セルから切断された導線は基準電位に設定されるので、例えばいずれのセルにも接続されていない導線がアンテナになってノイズを受け易くなることを抑制することができる。
【0013】
上記(3)によれば、基準電位設定部を備えることによって、例えばいずれのセルにも接続されていない導線がアンテナになってノイズを受け易くなることを容易に抑制することができる。
【0014】
上記(4)の場合、接続切替部を備えることによって、複数の導線に対する接続及び切断を順次に切り替えることができるので、処理部は、接続切替部によって複数のセルの各々に対して導線との接続有無を検知することができる。処理部は、セルから切断された導線が接続切替部での接続の選択対象になることを禁止するので、不要な通電等が行われることを抑制することができる。処理部は、セルから切断された導線を基準電位設定部によって基準電位に設定するので、ノイズを受け易くなることを抑制することができる。
【0015】
上記(5)の場合、処理部は、例えば起動時及び動作時等において、各導線の異常有無を検知することができ、接続切替部での接続の選択対象を動的に更新することができるとともに、ノイズの増大を適正に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態での電気回路体を備える電子機器の構成図。
図2】本発明の実施形態での電気回路体のセンサセルの構成を示す断面図。
図3】本発明の実施形態での分離された電気回路体を備える電子機器の構成図。
図4】本発明の実施形態の変形例でのセンサセルの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る電気回路体及び電子機器について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態での電気回路体10を備える電子機器1の構成図である。図2は、実施形態の電気回路体10でのセンサセル13の構成を示す断面図である。図3は、実施形態での分離された電気回路体10を備える電子機器1の構成図である。
実施形態の電子機器1は、例えば、人体又はロボットに装着又は着用される柔軟性及び伸縮性を有する電気回路体10を備える柔軟回路装置(Flexible and Stretchable Circuit Device)である。
【0018】
図1に示すように、電気回路体10は、例えば、柔軟回路基板11と、複数のセンサセル13と、少なくとも1つの端子部15と、複数の導線17とを備える。
柔軟回路基板11は、例えば、基板11a及び基材11bを備える。
基板11aは、例えば、いわゆるフレキシブル基板等の柔軟な絶縁体によって形成される。
基材11bは、基板11aの表面上に接着等によって固定される。基材11bは、例えば、いわゆる熱硬化性のエラストマー等の柔軟な誘電体によって形成される。
柔軟回路基板11は、必要に応じて、後述する複数のセンサセル13と各端子部15との間の任意の位置で導線17とともに切断されることによって複数に分離される。
【0019】
複数のセンサセル13は、柔軟回路基板11にて一体に規則的に配列されている。複数のセンサセル13は、例えば、柔軟回路基板11の厚さ方向から見て行列状に配列される。複数のセンサセル13の各々は、例えば、静電容量型の1軸力センサである。
図2に示すように、複数のセンサセル13の各々は、例えば、相互に離れて配置される第1電極31及び第2電極33と、第1電極31と第2電極33との間の基材11bとによって構成される。
【0020】
第1電極31及び第2電極33は、例えば導電性の金属フィラーを含む樹脂等の柔軟性及び伸縮性を有する導電性の材料によって形成される。第1電極31及び第2電極33の外形は、例えば同一の大きさの矩形板状である。第1電極31は基材11bに支持され、第2電極33は基板11aに支持される。第1電極31及び第2電極33は、例えば、柔軟回路基板11の厚さ方向で基材11bの一部を介して向かい合うように配置される。
各センサセル13は、例えば、外力の作用に起因する第1電極31と第2電極33との間の基材11bの変形による静電容量の変化に関する信号を出力する。
【0021】
図1に示すように、少なくとも1つの端子部15は、例えば、2つの端子部15(つまり第1端子部15a及び第2端子部15b)である。各端子部15は、後述する処理装置50の接続部51に着脱されることで相互の接続及び切断が切り替えられる。各端子部15は、例えば、処理装置50の接続部51と対を成す雄型又は雌型のコネクタである。第1端子部15a及び第2端子部15bは、例えば、矩形板状の柔軟回路基板11の対角部に配置される。
各端子部15は、例えば、複数のセンサセル13の各々の第1電極31及び第2電極33に接続される複数の端子15tを備える。各端子部15の端子15tの数は、例えば、行列状に配列される複数のセンサセル13の行数及び列数の合計である。
【0022】
複数の導線17の各々は、例えば導電性の金属フィラーを含む樹脂等の柔軟性及び伸縮性を有する導電性の材料によって形成される。複数の導線17は、例えば、行列状に配列される複数のセンサセル13の行方向に沿って配置される複数の第1導線17a及び列方向に沿って配置される複数の第2導線17bである。複数の第1導線17aの数は、行列状に配列される複数のセンサセル13の行数である。複数の第2導線17bの数は、行列状に配列される複数のセンサセル13の列数である。
各第1導線17aは、例えば、各行の複数のセンサセル13の第1電極31と各端子部15の各端子15tとを接続する。各第2導線17bは、例えば、各列の複数のセンサセル13の第2電極33と各端子部15の各端子15tとを接続する。
【0023】
図3に示すように、各導線17は、必要に応じて、複数のセンサセル13と各端子部15との間の任意の位置で柔軟回路基板11とともに切断されることによって複数に分離される。各導線17において切断によっていずれのセンサセル13からも分離された部位は、後述する接続切替部53によって基準電位に設定される。
例えば図3に示す一例では、電気回路体10は、柔軟回路基板11及び複数の導線17の適宜の位置での切断によって、第1端子部15aに接続される複数のセンサセル13の第1セル群を備える第1電気回路体10aと、第2端子部15bに接続される複数のセンサセル13の第2セル群を備える第2電気回路体10bとに分離される。
【0024】
図1に示すように、電子機器1は、電気回路体10に接続される処理装置50を備える。
処理装置50は、例えば、接続部51と、2つの接続切替部53と、制御部55とを備える。
接続部51は、電気回路体10の端子部15に着脱されることで相互の接続及び切断が切り替えられる。接続部51は、例えば、電気回路体10の端子部15と対を成す雌型又は雄型のコネクタである。
接続部51は、例えば、複数の配線51aによって2つの接続切替部53に接続される複数の端子51tを備える。接続部51の端子51tの数は、例えば、電気回路体10の端子部15の端子15tの数と同一であり、行列状に配列される複数のセンサセル13の行数及び列数の合計である。
【0025】
2つの接続切替部53は、例えば、第1接続切替部53a及び第2接続切替部53bである。第1接続切替部53aは、行列状に配列される複数のセンサセル13の行に対応して設けられる。第2接続切替部53bは、行列状に配列される複数のセンサセル13の列に対応して設けられる。各接続切替部53は、例えば、択一的な選択が順次に切り替えられる複数の端子53tを備える。各接続切替部53は、例えば、選択対象とされる複数の端子53tのうちから順次に切り替えて選択するいずれか1つの端子53tを接続状態に設定し、他の端子53tを接地等によって基準電位に設定する。各接続切替部53は、例えば、接続状態の選択対象以外に選定された端子53tを、定常的に接地等によって基準電位に設定する。各接続切替部53の複数の端子53tのうち接続状態の選択対象とされる端子53t及び選択対象以外とされる端子53tは、例えば、後述の制御部55によって指示される。
第1接続切替部53aは、後述の制御部55の指示に応じて、行列状に配列される複数のセンサセル13の行、つまり複数の第1導線17aのうちのいずれか1つに対する接続を選択的に切り替える。第2接続切替部53bは、後述の制御部55の指示に応じて、行列状に配列される複数のセンサセル13の列、つまり複数の第2導線17bのうちのいずれか1つに対する接続を選択的に切り替える。
【0026】
制御部55は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、制御部55の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0027】
制御部55は、例えば、一対の第1信号線55a,55bと、一対の第2信号線55c,55dとによって、第1接続切替部53a及び第2接続切替部53bの各々に接続される。
一対の第1信号線55a,55bは、例えば、第1接続切替部53a及び第2接続切替部53bの各々に対して、複数の端子53tのうち接続状態に設定する1つの端子53tの選択切替と、接続状態とせずに基準電位に設定する端子53tの選定とを指示する信号を伝達する。各接続切替部53a,53bにて接続状態に設定する各1つの端子53tは、同一のセンサセル13の第1電極31及び第2電極33に接続される各端子53tである。接続状態とせずに基準電位に設定する端子53tは、例えば、接続状態の選択対象のうちタイミングによって択一的な選択から外れる端子53tと、接続状態の選択対象以外(つまり選択が禁止)であって定常的に基準電位に設定する端子53tとである。接続状態の選択対象以外の端子53tは、例えば、柔軟回路基板11及び導線17の必要に応じた切断によっていずれのセンサセル13からも分離された端子53tと、センサセル13との間の断線等の異常が検知された端子53tとなどである。
一対の第2信号線55c,55dは、例えば、第1接続切替部53a及び第2接続切替部53bの各々を介して、各センサセル13に対して静電容量を検知するための入力信号及び出力信号を伝達する。
【0028】
制御部55は、例えば、所定周期で択一的に接続状態に設定する各センサセル13に対する入力信号及び出力信号に基づいて、各センサセル13の静電容量を検出する。制御部55は、例えば、外力の作用に起因する各センサセル13の第1電極31と第2電極33との間の基材11bの変形による静電容量の変化を検知する。制御部55は、各センサセル13の静電容量の変化に基づいて、各センサセル13に作用する1軸方向の外力の大きさ及び分布等を検知する。
制御部55は、例えば、適宜のセンサセル13の静電容量が所定閾値未満である場合、このセンサセル13は接続部51に接続されている端子部15(所定の端子部15)から分離されている、又は、このセンサセル13と各接続切替部53a,53bとの間に断線等の異常が生じていると判定する。所定閾値は、例えば、外力が作用していない無負荷状態のセンサセル13の静電容量よりも小さい所定値等である。
【0029】
制御部55は、例えば、電子機器1の起動時等に静電容量が所定閾値未満であるセンサセル13の有無を検知することによって、切断等に起因するセンサセル13の分離有無を判定し、所定の端子部15に接続されているセンサセル13が存在する領域(接続領域)を把握する。制御部55は、例えば、接続領域に含まれるセンサセル13のみを接続切替部53での接続状態の選択対象とする。制御部55は、例えば、電子機器1の動作時等に静電容量が所定閾値未満であるセンサセル13の有無を検知することによって、起動時等に把握した接続領域での断線等の異常の発生有無を検知する。制御部55は、接続領域にて新たに異常なセンサセル13を検知した場合には、接続領域を更新する。
【0030】
上述したように、実施形態の電気回路体10によれば、複数のセンサセル13は、所望の端子部15に接続される第1セル群と、所望の端子部15から切断される第2セル群とに分離されるので、第1セル群の形状及びセル数を必要に応じて容易に変更することができる。例えば、設置個所の形状及び必要とされるセル数等の各種条件に応じて個別の設計及び製作を行う場合に比べて、煩雑な手間を要すること及び費用が増大することを抑制し、汎用性を向上させることができる。
いずれのセンサセル13からも切断された導線17は基準電位に設定されるので、例えばいずれのセンサセル13にも接続されていない導線17がアンテナになってノイズを受け易くなることを抑制することができる。
【0031】
実施形態の電子機器1によれば、接続切替部53を備えることによって、例えばいずれのセンサセル13にも接続されていない導線17がアンテナになってノイズを受け易くなることを容易に抑制することができる。
接続切替部53によって複数の導線17に対する接続及び切断を順次に切り替えることができるので、制御部55は、接続切替部53によって複数のセンサセル13の各々に対して導線17との接続有無を検知することができる。制御部55は、センサセル13から切断された導線17が接続切替部53での接続の選択対象になることを禁止するので、不要な通電等が行われることを抑制することができる。制御部55は、センサセル13から切断された導線17を接続切替部53で基準電位に設定するので、ノイズを受け易くなることを抑制することができる。
制御部55は、例えば起動時及び動作時等において、各センサセル13及び各導線17の異常有無を検知することができ、接続切替部53での接続状態の選択対象を動的に更新することができるとともに、ノイズの増大を適正に抑制することができる。
【0032】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
上述した実施形態では、複数のセンサセル13は、柔軟回路基板11の厚さ方向から見て行列状に配列されるとしたが、これに限定されない。例えば、複数のセンサセル13は、柔軟回路基板11の厚さ方向から見て、直交する行と列に限らず適宜に斜交する行と列に沿って配列、同心円の円周上に配列又は適宜の図形上に配列等のように、適宜に規則的に配列されてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、各センサセル13は静電容量型の1軸力センサであるとしたが、これに限定されない。例えば、各センサセル13は静電容量型の3軸力センサ等の多軸力センサであってもよい。
上述した実施形態では、各センサセル13は静電容量型の1軸力センサであるとしたが、これに限定されない。例えば、各センサセル13は電気抵抗型の力センサであってもよい。
図4は、実施形態の変形例でのセンサセル13Aの構成を示す断面図である。
図4に示すように、変形例のセンサセル13Aは、例えば、実施形態での基材11bの代わりに設けられる感圧抵抗性の基材11cと、基板11aに支持される正極側電極93p及び負極側電極93nとによって構成される。変形例のセンサセル13Aは、例えば、電気抵抗型の1軸力センサである。
【0034】
変形例の各センサセル13Aは、例えば、外力の作用に起因する正極側電極93pと負極側電極93nとの間での基材11cの電気抵抗の変化に関する信号を出力する。
変形例の制御部55は、各センサセル13Aの電気抵抗の変化に基づいて、各センサセル13Aに作用する1軸方向の外力の大きさ及び分布等を検知する。制御部55は、例えば、電気抵抗が所定閾値よりも大きいセンサセル13Aの有無を検知することによって、切断等に起因するセンサセル13Aの分離有無を判定し、所定の端子部15に接続されているセンサセル13Aが存在する領域(接続領域)を把握する。
【0035】
上述した実施形態では、電気回路体10は、複数のセンサセル13を備えるとしたが、これに限定されない。例えば、電気回路体10は、センサセル13の代わりに、電気等の触覚刺激セル又は振動等のアクチュエータセルなどのように、センサ以外の他の所定機能を有する複数のセルを備えてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、電気回路体10は、柔軟な基板11a及び柔軟な基材11bを有する柔軟回路基板11を備えるとしたが、これに限定されない。例えば、電気回路体10は、柔軟な基体(絶縁体及び誘電体等)に限らず、他の基体(絶縁体及び誘電体等)によって形成されてもよい。例えば、電気回路体10は、いわゆる、リジッド基板、フレキシブル基板、リジッドフレキシブル基板又は伸縮性を有する基板等の各種の回路基板を備えてもよい。例えば、リジッド基板は、柔軟性を有さない基体を備える。フレキシブル基板は、柔軟性を有する基体を備える。リジッドフレキシブル基板は、柔軟性を有さない基体及び柔軟性を有する基体の複合体を備える。伸縮性を有する基板は、例えばエラストマー等の伸縮性を有する基体を備える。上述のように、各種の回路基板は、リジッドな板状の基体に限定されず、例えば、柔軟性及び伸縮性の少なくともいずれかを有する薄膜状等の各種の基体を備えてもよい。電気回路体10は、例えば、各種の基体に直接に配線及び電子部品等が配置される電子部品であってもよい。
【0037】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
1…電子機器、10…電気回路体、11…柔軟回路基板、11a…基板、11b,11c…基材(弾性基材)、13,13A…センサセル、15…端子部、15a…第1端子部、15b…第2端子部、15t…端子、17…導線、17a…第1導線、17b…第2導線、31…第1電極、33…第2電極、50…処理装置、51…接続部、51a…配線、51t…端子、53…接続切替部(基準電位設定部)、53a…第1接続切替部(基準電位設定部)、53b…第2接続切替部(基準電位設定部)、53t…端子、55…制御部(処理部)、93p…正極側電極、93n…負極側電極。
図1
図2
図3
図4