(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004641
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】動物忌避樹脂組成物、動物忌避樹脂成形体、及び動物忌避樹脂成形体物品
(51)【国際特許分類】
A01N 25/10 20060101AFI20250107BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20250107BHJP
A01N 37/06 20060101ALI20250107BHJP
A01N 65/42 20090101ALI20250107BHJP
A01N 61/02 20060101ALI20250107BHJP
A01N 43/78 20060101ALI20250107BHJP
A01N 43/60 20060101ALI20250107BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A01N25/10
A01M29/12
A01N37/06
A01N65/42
A01N61/02
A01N43/78 B
A01N43/60
A01P17/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104465
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】591121513
【氏名又は名称】クラレトレーディング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501095473
【氏名又は名称】理研興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】秋庭 英治
(72)【発明者】
【氏名】八木 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】村井 悠
(72)【発明者】
【氏名】柴尾 幸弘
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121CA02
2B121CA52
2B121CA59
2B121CA61
2B121CA64
2B121CC22
2B121EA21
2B121FA01
2B121FA13
4H011AE02
4H011BB06
4H011BB09
4H011BB10
4H011BB22
4H011BB23
4H011BC18
4H011BC19
4H011DA03
4H011DA07
4H011DA10
4H011DH02
4H011DH18
4H011DH20
4H011DH27
(57)【要約】
【課題】環境に与える負荷が低く、取扱が容易で、有効寿命が長く、対象動物が馴化し難い動物忌避物品を実現することができる、動物忌避樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂中に分散された徐放性無機粒子及び動物忌避剤とを有する動物忌避樹脂組成物であって、該熱可塑性樹脂は50~120℃の軟化点を有し、該徐放性無機粒子は、フライアッシュ、活性白土、無機顔料、シリカ及びチャーから成る群から選択される少なくとも1種であり、該動物忌避剤は、木タール、2,6-ジメチルピラジン、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、2,4,5-トリメチルチアゾール、ガーリックオイル、カプサイシン含有オイルから成る群から選択される少なくとも1種である、動物忌避樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂中に分散された徐放性無機粒子及び動物忌避剤とを有する動物忌避樹脂組成物であって、
該熱可塑性樹脂は50~120℃の軟化点を有し、
該徐放性無機粒子は、フライアッシュ、活性白土、無機顔料、シリカ及びチャーから成る群から選択される少なくとも1種であり、
該動物忌避剤は、木タール、2,6-ジメチルピラジン、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、2,4,5-トリメチルチアゾール、ガーリックオイル、カプサイシン含有オイルから成る群から選択される少なくとも1種である、動物忌避樹脂組成物。
【請求項2】
前記徐放性無機粒子は、動物忌避樹脂組成物全体を基準にして0.5~30重量%の量で含有される請求項1に記載の動物忌避樹脂組成物。
【請求項3】
前記動物忌避剤は、動物忌避樹脂組成物全体を基準にして1~20重量%の量で含有される請求項1に記載の動物忌避樹脂組成物。
【請求項4】
前記動物忌避剤は、少なくとも2種類である、請求項1に記載の動物忌避樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂はポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、スチレン系熱可塑性エラストマーから成る群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の動物忌避樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる動物忌避樹脂成形体。
【請求項7】
格子板、立体網目シート、ロープ又はペレットの形態を有する請求項6に記載の動物忌避樹脂成形体。
【請求項8】
請求項6に記載の動物忌避樹脂成形体を有する動物忌避樹脂成形体物品であって、
該動物忌避樹脂成形体物品には、複数種類の動物忌避剤が含まれている、動物忌避樹脂成形体物品。
【請求項9】
それぞれ異なる種類の動物忌避剤を有する複数の請求項6に記載の動物忌避樹脂成形体を有する、請求項8に記載の動物忌避樹脂成形体物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物忌避樹脂組成物に関し、特に哺乳動物を対象とする忌避樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
古来より生息しているシカやイノシシ、クマなどに加え、外来種の動物の野生化も進み、人間の活動範囲に入り込んで害をもたらしている事例が近年増えてきている。例えば、野生のシカが道路や線路内に侵入し車両と衝突する、いわゆるロードキルは年々増加の傾向にある。また、農作物の被害や、植林した若木の食害の被害も深刻となっている。
【0003】
野生生物が特定エリアに入らないようにする対策として、これまで各種の忌避剤が用いられてきた。例えば、動物の味覚や嗅覚を刺激し、なおかつ環境にやさしい天然系の忌避剤として、カプサイシン、木タール、ハーブ、ニンニク、オオカミやクマなどの捕食動物の毛や血液や排泄物、酢などが知られており、用いられてきた(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-210791号公報
【特許文献2】特許第6224691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の動物忌避剤の多くは液状であるため、取り扱いにくく、液体を所定の場所に設置し難いという課題がある。例えば、液状忌避剤は、固体の基材に含浸又は保持させることで取扱易い物品に変換することができる。しかしながら、屋外暴露の条件下では、忌避剤は早期に流出又は蒸散し易く、忌避性能の持続期間を延長させることがかかる物品の課題となる。さらに、動物は忌避剤に馴化するために、忌避効果が経時的に低下する、という課題もある。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、環境に与える負荷が低く、取扱が容易で、有効寿命が長く、対象動物が馴化し難い動物忌避物品を実現することができる、動物忌避樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を提供する。
[態様1]熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂中に分散された徐放性無機粒子及び動物忌避剤とを有する動物忌避樹脂組成物であって、
該熱可塑性樹脂は50~120℃の軟化点を有し、
該徐放性無機粒子は、フライアッシュ、活性白土、無機顔料、シリカ及びチャーから成る群から選択される少なくとも1種であり、
該動物忌避剤は、木タール、2,6-ジメチルピラジン、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、2,4,5-トリメチルチアゾール、ガーリックオイル、カプサイシン含有オイルから成る群から選択される少なくとも1種である、動物忌避樹脂組成物。
【0008】
[態様2]前記徐放性無機粒子は、動物忌避樹脂組成物全体を基準にして0.5~30重量%の量で含有される態様1の動物忌避樹脂組成物。
【0009】
[態様3]前記動物忌避剤は、動物忌避樹脂組成物全体を基準にして1~20重量%の量で含有される態様1又は2の動物忌避樹脂組成物。
【0010】
[態様4]前記動物忌避剤は、少なくとも2種類である、態様1~3のいずれかに記載の動物忌避樹脂組成物。
【0011】
[態様5]前記熱可塑性樹脂はポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、スチレン系熱可塑性エラストマーから成る群から選択される少なくとも1種である、態様1~4のいずれかの動物忌避樹脂組成物。
【0012】
[態様6]態様1~5のいずれかの樹脂組成物からなる動物忌避樹脂成形体。
【0013】
[態様7]格子板、立体網目シート、ロープ又はペレットの形態を有する態様6の動物忌避樹脂成形体。
【0014】
[態様8]態様6の動物忌避樹脂成形体を有する動物忌避樹脂成形体物品であって、
該動物忌避樹脂成形体物品には、複数種類の動物忌避剤が含まれている、動物忌避樹脂成形体物品。
【0015】
[態様9]それぞれ異なる種類の動物忌避剤を有する複数の態様6の動物忌避樹脂成形体を有する、態様8の動物忌避樹脂成形体物品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、環境に与える負荷が低く、取扱が容易で、有効寿命が長く、対象動物が馴化し難い動物忌避物品を実現することができる、動物忌避樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。また、特定のパラメータについて、複数の上限値及び下限値が記載されている場合、これらの上限値及び下限値の内、任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。
【0018】
<動物忌避樹脂組成物>
本発明の動物忌避樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂と、該熱可塑性樹脂中に分散された(B)徐放性無機粒子及び(C)動物忌避剤とを有するものである。
【0019】
(A)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂は、常温で固体であり、加熱することで徐放性無機粒子及び動物忌避剤をその中に分散させることができる程度に軟化する高分子化合物である。熱可塑性樹脂を使用することで、液状の動物忌避剤を常温下において固体に変換することができ、所望の形状に賦形することができる。その結果、動物忌避剤の取扱性が向上する。
【0020】
熱可塑性樹脂の熱可塑性は、樹脂の軟化点によって表される。動物忌避剤を練り込む工程にて蒸散ロスを抑制するため、熱可塑性樹脂は、比較的低温で軟化する樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、50~120℃の軟化点を有することが好ましい。熱可塑性樹脂の軟化点が50℃未満であると、常温における硬度が低下して動物忌避剤の放出が促進されるために、動物忌避物品の有効寿命が低下し易くなる。また、前記軟化点が120℃を超えると、熱可塑性樹脂への練り込み時に動物忌避剤の蒸散ロスが発生したり、常温における硬度が上昇して動物忌避剤の放出が抑制されるために、動物忌避物品の忌避効果が低下し易くなる。
【0021】
熱可塑性樹脂は、1種類を使用してよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。その場合、熱可塑性樹脂の軟化点は、動物忌避樹脂組成物のマトリックスを形成する熱可塑性樹脂の軟化点を採用する。
【0022】
熱可塑性樹脂の種類としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、スチレン系熱可塑性エラストマー及びこれらの混合物(具体的には、ポリエチレンとエチレン酢酸ビニルコポリマーとの混合物、及びポリプロピレンとエチレン酢酸ビニルコポリマーとの混合物)などが挙げられる。中でも好ましい熱可塑性樹脂は、特許第3963941号公報に記載されている、液状化合物(C)を内部に取り込むことで液体イン固体ポリマーエマルジョンを形成する、熱可塑性樹脂である。尚、当該公報の記載事項は全て、ここに参照として援用する。
【0023】
前記熱可塑性樹脂は、マトリックスを形成する熱可塑性ポリマー(A)とドメインを形成するブロックコポリマー(B)を含む混合樹脂である。そして、(B)は、(A)に相溶性が高く、液体化合物(C)に相溶性が低いブロック(B1)と、(C)に相溶性が高く、(A)に相溶性の低いブロック(B2)からなり、(A)と相分離する。
【0024】
かかる熱可塑性樹脂は、ブロックコポリマー(B)が、界面活性剤的に働き熱可塑性ポリマー(A)と液状化合物(C)の界面を形成する。その結果、熱可塑性ポリマー(A)の内部に液状化合物(C)が高濃度で内在する液体イン固体ポリマーエマルジョンが形成される。
【0025】
熱可塑性樹脂の一形態は、熱可塑性ポリマー(A)がポリオレフィン系重合体であり、ブロックコポリマー(B)が、ブロック(B1)としてポリオレフィン系重合体[熱可塑性ポリマー(A)]と相溶性の高いポリオレフィンブロックを有し、ブロック(B2)として液状化合物(C)と相溶性の高いポリスチレンブロックを有する、ポリ(エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体(SEB)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)およびポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEEPS)から選ばれる少なくとも1種のスチレン系熱可塑性エラストマーである。
【0026】
また、熱可塑性樹脂の他の形態は、熱可塑性ポリマー(A)がポリスチレン系重合体であり、ブロックコポリマー(B)が、ブロック(B1)としてポリスチレン系重合体[熱可塑性ポリマー(A)]と相溶性が高いポリスチレンブロックを有し、ブロック(B2)として液状化合物(C)と相溶性が高いポリオレフィンブロックを有するブロックを有する、ポリ(エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体(SEB)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEBS)およびポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体(SEEPS)から選ばれる少なくとも1種である。
【0027】
また、環境への配慮の観点で、非石油由来のバイオプラスチックや、生分解性樹脂も用いることができる。
【0028】
(B)徐放性無機粒子
徐放性無機粒子は、高次表面に多数の細孔から成る多孔質構造を有する多孔質無機粒子をいう。多孔質無機粒子は粉体状であってよい。多孔質無機粒子の細孔は動物忌避剤を収納して保持し、マトリックス樹脂から早期に流出又は蒸散することを抑制する。その結果、動物忌避樹脂成形体物品は、長期間にわたって動物忌避剤を放出する徐放効果を発揮することができる。
【0029】
徐放性無機粒子の種類は特に限定されず、従来から同様の目的で使用されてきたものの中から、環境にやさしく安全性が高いものを選択して使用すればよい。好ましい徐放性無機粒子の具体例を以下に示す。
【0030】
(フライアッシュ)
ここでいうフライアッシュとは、木炭を燃焼させて得られる灰やシリカ・アルミナ複合粒子をいう。フライアッシュは、石炭を微粉炭燃焼方式で燃焼させる火力発電所などで生成される微粉末の石炭灰であってもよい。
【0031】
(活性白土)
活性白土は、モンモリロン石を主体とするいわゆるベントナイトや酸性白土などを硫酸などで酸処理を施して活性を強めたものである。活性白土は、アルミナ、MgO、酸化鉄及び酸化Caを主成分とする。
【0032】
(無機顔料)
無機顔料は、通常の樹脂コンパウンド着色に用いられるものを使用することができる。具体的には、亜酸化銅、酸化チタン及びベンガラなどが挙げられる。
【0033】
(シリカ)
ここでいうシリカとは、多孔質構造を持つケイ素酸化物を主成分とする物質をいう。多孔質シリカとしては、気相法シリカ、湿式シリカのどちらを使用してもよい。
【0034】
(チャー)
チャーは、バイオマス発電工程で副生する、炭素成分を80重量%以上含有する黒色粉体である。
【0035】
産業廃棄物を有効利用して環境に対する悪影響を低減する観点から、好ましい徐放性無機粒子は、チャーである。
【0036】
徐放性無機粒子は、1種類を使用してよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
徐放性無機粒子は、一次粒径として0.01から50μmの平均粒径D50を有することが好ましい。徐放性無機粒子の平均粒径が0.01μm未満であると、混錬工程や成形工程での熱凝集が起こりやすく均一分散性に欠ける状態となり、50μmを超えると流動性が悪く、また成形品としての強度低下の傾向となる。徐放性無機粒子の平均粒径は、より好ましくは0.1~10μmであり、更に好ましくは0.5~2μmである。
【0038】
徐放性無機粒子の含有量は、動物忌避樹脂組成物全体を基準にして0.5~30重量%であることが好ましい。徐放性無機粒子の前記含有量が0.5重量%未満であると、動物忌避樹脂成形体物品の徐放効果が低下し、また30重量%を超えると、コンパウンドの溶融時の流動性に乏しくなるため溶融成形の作業効率が悪化したり、動物忌避剤成形体の強度が低くなる。徐放性無機粒子の前記含有量は、より好ましくは1.0~20重量%、更に好ましくは5.0~10重量%である。
【0039】
(C)動物忌避剤
動物忌避剤は、揮発した場合に、悪臭、刺激臭及び異臭といった臭気を有して野生動物や害獣の嗅覚に作用し、その臭気によって設置場所から忌避させる、野生動物や害獣の忌避剤をいう。動物忌避剤の種類は特に限定されず、従来から同様の目的で使用されてきたものの中から、環境にやさしく安全性が高いものを選択して使用すればよい。好ましい動物忌避剤の具体例を以下に示す。
【0040】
(木タール)
木タールは、木を蒸し焼きした時に出る煙を液化したものである。木タールの臭いで、動物は危険な山火事を本能的に認識し、近寄らない習性を有している。
【0041】
(ピラジン誘導体)
オオカミの尿成分に含まれる化合物であり、害獣等の動物がその臭気を恐れて近付かなくなる。具体的には、2,6-ジメチルピラジン、3-エチル-2,5-ジメチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジンが挙げられる。
【0042】
(チアゾール誘導体)
先天的な恐怖情動を誘発する物質としては、WO2011/096575に動物用忌避剤の有効成分として記載された化合物、2,4,5-トリメチルチアゾールが例示される。
【0043】
(ガーリックオイル)
硫化物及びメルカプタン等の低分子量のイオウ含有物質を含み、これらが揮発して悪臭を発生する。
【0044】
(カプサイシン含有オイル)
成分であるカプサイシンが昇華して刺激臭を発生する。
【0045】
動物忌避剤は、徐放性無機粒子に保持させやすく、保持された状態から蒸散しやすいという観点から、室温で液状のものであることが好ましい。また、動物忌避剤は、1種類を使用してよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
動物忌避剤の含有量は、動物忌避樹脂組成物全体を基準にして1.0~20重量%であることが好ましい。動物忌避剤の前記含有量が1.0重量%未満であると、動物忌避樹脂成形体物品の忌避効果が低下し、また20重量%を超えると、成形品の表面にブリードアウトし、取り扱いが困難となる懸念がある。動物忌避剤の前記含有量は、より好ましくは、2.0~15重量%、更に好ましくは5.0~10重量%である。
【0047】
通常の加熱混錬装置を用いて熱可塑性樹脂に徐放性無機粒子及び動物忌避剤を配合し、熱可塑性樹脂を液化し、均一になるまで配合物を混錬し、冷却することにより、本発明の動物忌避樹脂組成物を製造することができる。その際、特許第3963941号公報及び特許第4576479号公報に記載されている、液状の忌避剤を練り込む方法を使用してもよい。
【0048】
例えば、一般的な2軸型樹脂混練押し出し機を用い、まず樹脂ペレットの供給ホッパーから熱可塑性樹脂を供給して樹脂の融点以上に加熱しながらスクリューで送る。そこへ下流の粉体供給ホッパーから、徐放性無機粒子を投入し、溶融状態の熱可塑性樹脂中へ練り込む。これらの混練物に、プランジャーポンプ等から動物忌避剤を添加し、更に混錬することで、均一に分散させる。その後、混錬物をダイヘッドから押出し、ストランドを水中に通して冷却し、カッターにて切断して、ペレットに成形する。
【0049】
<動物忌避樹脂成形体、動物忌避樹脂成形体物品>
得られたペレットを、押出機を使用して混練し、押出機の先端に取り付けた金型に流し込んで射出成形を行うことで、所望の形状を有する動物忌避樹脂成形体を製造することができる。ペレットに成形する代わりに、溶融した動物忌避樹脂組成物の押出し工程から直接金型に流し込んで、射出成形を行ってもよい。射出成形法によって製造される動物忌避樹脂成形体の形状は、例えば通気性を有するメッシュ板及び格子板等の形状が挙げられる。動物忌避樹脂成形体は、例えば、溶融した樹脂から高速で糸を引き出し、糸を交差させて立体網目を形成するランダム押し出し立体網目製造機を用い、ペレットまたは溶融動物忌避樹脂成形物を立体網目シートに成形したものでもよい。
【0050】
これらの動物忌避樹脂成形体は、それぞれ単独で、または複数組み合わせて、動物忌避樹脂成形体物品とすることができる。例えば、メッシュ板、格子板及び立体網目シートの動物忌避樹脂組成体は、異なる種類の動物忌避剤を含むものを複数積層することで、複数種類の動物忌避剤を含む動物忌避樹脂成形体物品とすることができる。この場合、動物忌避樹脂成形体物品を動物が踏みつけた場合、層自体および層の間の空間にこもっていた複数種類からなる忌避剤が、大気中に放出されるため、より一層の忌避効果を発揮することができる。
【0051】
動物忌避剤を2種類以上組み合わせたことにより、蒸散する混合忌避剤の組成内容を変更することができ、特定の組み合わせの忌避剤で野生動物が馴化したとしても、容易に別の組み合わせに変更することができ、馴化を抑制することができる。
【0052】
また、2種類以上の動物忌避剤を組み合わせることで、各々の忌避剤の蒸散速度が異なるために、動物忌避成形体物品から発生する臭いの質が経時的に変化する。このことにより、初期の臭いに馴化しつつある野生動物も、臭いの質が変化することで新たな刺激と受け止め、馴化を抑制することができる。
【0053】
本発明の動物忌避成形体物品は、悪臭や刺激臭、異臭といった臭気を有して嗅覚に作用し、その臭気で動物を忌避させる。本発明の動物忌避成形体物品は、前記動物忌避剤の臭気を好まずに忌避する性質の動物が適用対象となる。かかる動物の具体例としては、哺乳動物、例えば、サル、クマ、シカ、イノシシ、タヌキ、キツネ、アライグマ、ハクビシン、マウスやラットなどのネズミ、ウサギ、リスなどを挙げることができる。中でも本発明の動物忌避成形体物品が有効と考えられる哺乳動物は、シカ、イノシシ、タヌキ、キツネ、アライグマ及びハクビシン等である。
【実施例0054】
以下に、実施例を挙げて本実施形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
以下の材料を準備した。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
<コンパウンドの製造>
忌避剤1種類及び無機粒子を含む中間材料として、コンパウンドを製造した。製造方法を以下に示す。
【0060】
・コンパウンド(1):木タールA+シリカS
PE/SEPTON/シリカ=60/20/20(重量比)の混合物を2軸混錬機で溶融混錬し、その途中で樹脂混合物80部に対し木タール20部を液体添加して混錬し、冷却、ペレタイズし、木タールとシリカ入りペレットを得た。
【0061】
・コンパウンド(2):ガーリックオイルF+チャーT
PE/EVA=50/50(重量比)の混合物を2軸混錬機で溶融混錬し、その途中で樹脂混合物80部に対しガーリックオイル20部を液体添加して混錬し、冷却、ペレタイズし、ガーリック入りペレットを得た。さらに該ペレット/チャー=90/10の重量比で混合し、2軸混錬機で混錬し、冷却、ペレタイズし、ガーリックオイルとチャー入りのペレットを得た。
【0062】
・コンパウンド(3):ガーリックオイルF+フライアッシュP
チャーの代わりにフライアッシュを用いた他はコンパウンド(2)と同様にして、ガーリックオイルとフライアッシュ入りのペレットを得た。
【0063】
・コンパウンド(4):カプサイシン含有オイルG+チャーT
ガーリックオイルの代わりにカプサイシン含有オイルを用いた他はコンパウンド(2)と同様にして、カプサイシン含有オイルとチャー入りのペレットを得た。
【0064】
・コンパウンド(5):カプサイシン含有オイルG+活性白土Q
チャーの代わりに活性白土を用いた他はコンパウンド(4)と同様にして、カプサイシン含有オイルと活性白土入りのペレットを得た。
【0065】
・コンパウンド(6):2,6-ジメチルピラジンB+亜酸化銅R
40℃以上に加温し融解した2,6-ジメチルピラジン20部を、40℃の環境温度でEVA樹脂80部に配合し、撹拌して膨潤吸収させ、ペレットを得た。該ペレット/PE/亜酸化銅=44.5/44.5/1.0の重量比で混合し、2軸混錬機で混錬し、冷却、ペレタイズし、2,6-ジメチルピラジンと亜酸化銅入りのペレットを得た。
【0066】
・コンパウンド(7):3-エチル-2,5-ジメチルピラジンC+亜酸化銅R
3-エチル-2,5-ジメチルピラジン20部を、EVA樹脂80部に配合し、撹拌して膨潤吸収させ、ペレットを得た。該ペレット/PE/亜酸化銅=44.5/44.5/1.0の重量比で混合し、2軸混錬機で混錬し、冷却、ペレタイズし、3-エチル-2,5-ジメチルピラジンと亜酸化銅入りのペレットを得た。
【0067】
・コンパウンド(8):2,3,5-トリメチルピラジンD+亜酸化銅R
3-エチル-2,5-ジメチルピラジンの代わりに2,3,5-トリメチルピラジンを用いた他はコンパウンド(7)と同様にして、2,3,5-トリメチルピラジンと亜酸化銅入りのペレットを得た。
【0068】
・コンパウンド(9):2,4,5-トリメチルチアゾールE+亜酸化銅R
3-エチル-2,5-ジメチルピラジンの代わりに2,4,5-トリメチルチアゾールを用いた他はコンパウンド(7)と同様にして、2,4,5-トリメチルチアゾールと亜酸化銅入りのペレットを得た。
【0069】
<シカ忌避性能の評価方法>
・柵の設置
鹿牧場の敷地に、奥行き5.5m、幅5.2m及び高さ1.5mの金網製柵を設置した。その奥行き5.5m及び高さ1.5mの面の一方(以下「入口面」という。)に、幅0.7m及び高さ1.5mの入口を2か所設置した。柵の入口と反対側の奥行き5.5m及び高さ1.5mの面(以下「給餌面」という。)に、給餌台を設置した。
【0070】
・忌避構造体を設置する形態
(ケース1)忌避構造体を、柵部のうち、給餌面を除く、入口面及び両側面に取り付ける。
(ケース2)忌避構造体を、2か所の入口の手前の地面上に、入口面と同じ幅に載置する。
【0071】
・忌避試験の手順
柵から離れた場所に鹿を餌で引き寄せた。次いで、柵内の餌投入台に餌を投入した。その後、最初の餌を撤去し、鹿の挙動を観察して、柵内に入って給餌台から餌を食べた頭数を記録した。
【0072】
この手順を、まず、試験当日の最初に忌避構造体を設置していない柵を使用して行い、次いで、柵に忌避構造体を設置した後に、再度行った。
【0073】
・忌避率の決定
下記式に示す通りに忌避率を決定した。
【0074】
忌避率R(%)={(N-M)/M}×100
式中、Nは、忌避構造体を設置しない状態の柵内に餌を食べに入った鹿の頭数であり、Mは、忌避構造体を設置した状態の柵内に餌を食べに入った鹿の頭数である。
【0075】
<臭気の経時的変化、臭気の寿命の評価方法>
発明者が30日毎に、柵に設置された忌避構造体から5mの距離に立って感じられる匂いの質及び強さを官能評価して記録し、匂いの質が経時的に変化するかどうかを判定した。また、匂い自体を感じられなくなった時点の設置期間を決定した。
【0076】
<実施例1>
木タールA、ガーリックオイルF、カプサイシン含有オイルG、シリカS、チャーT、格子板
汎用の射出成形機及び成形型を使用して、コンパウンド(1)を縦30cm、横30cm及び厚さ0.5cmの格子板に成形した。同様にして、コンパウンド(2)及び(4)を重量比50/50で混合したものを格子板に成形した。得られた各成形物を重ね、結合して、幅30cmの帯状物とした。これを(ケース1)の形態にて柵に設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0077】
<実施例2>
木タールA、2,3,5-トリメチルピラジンD、2,4,5-トリメチルチアゾールE、シリカS、亜酸化銅R、格子板
コンパウンド(2)及び(4)の代わりにコンパウンド(8)及び(9)を使用すること以外は実施例1と同様にして幅30cmの帯状物を形成し、評価した。
【0078】
<実施例3>
木タールA、ガーリックオイルF、3-エチル-2,5-ジメチルピラジンC、2,4,5-トリメチルチアゾールE、シリカS、フライアッシュP、亜酸化銅R、格子板
汎用の射出成形機及び成形型を使用して、コンパウンド(1)及び(3)を重量比50/50で混合したものを縦30cm、横30cm及び厚さ0.5cmの格子板に成形した。同様にして、コンパウンド(7)及び(9)を重量比50/50で混合したものを格子板に成形した。得られた各成形物を市松状に並べ、結合して、幅60cmの帯状物とした。これを(ケース2)の形態にて地面に設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0079】
<実施例4>
カプサイシン含有オイルG、3-エチル-2,5-ジメチルピラジンC、2,3,5-トリメチルピラジンD、2,4,5-トリメチルチアゾールE、活性白土Q、亜酸化銅R、立体網目シート
ランダム押し出し立体網目製造機を使用して、コンパウンド(5)を幅1m、目付1500g/m2の立体網目シートに成形した。同様にして、コンパウンド(7)、(8)及び(9)を重量比1/3で混合したものを立体網目シートに成形した。得られた各成形物を重ね、結合して、幅1mの帯状物とした。これを(ケース2)の形態にて地面に設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0080】
<実施例5>
木タールA、ガーリックオイルF、カプサイシン含有オイルG、2,4,5-トリメチルチアゾールE、シリカS、チャーT、亜酸化銅R、立体網目シート
コンパウンド(5)の代わりにコンパウンド(1)、(2)及び(4)を重量比1/3で混合したものを使用し、コンパウンド(7)、(8)及び(9)の代わりにコンパウンド(9)を使用すること以外は実施例4と同様にして立体編み目シートから成る幅1mの帯状物を形成し、評価した。
【0081】
<実施例6>
木タールA、ガーリックオイルF、2,6-ジメチルピラジンB、シリカS、チャーT、亜酸化銅R、ロープ状物
コンパウンド(1)、(2)及び(6)のペレットを製造するための溶融混錬工程において、ペレットにカットする前の直径3mmの略円形のストランドを各々作製した。この3種類のストランドを、既存のワイヤーロープに巻き付けてロープ状物とした。これを、各面3段の高さ及び(ケース1)の形態にてケージに設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0082】
<実施例7>
ガーリックオイルF、カプサイシン含有オイルG、2,4,5-トリメチルチアゾールE、チャーT、亜酸化銅R、ロープ状物
コンパウンド(2)、(4)及び(9)のペレットを製造するための溶融混錬工程において、ペレットにカットする前の直径3mmの略円形のストランドを各々作製した。この3種類のストランドを、三つ撚りにしてロープ状物とした。これを、各面3段の高さ及び(ケース1)にて柵に設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0083】
<実施例8>
木タールA、ガーリックオイルF、2,4,5-トリメチルチアゾールE、シリカS、チャーT、亜酸化銅R、ペレット
上部に開口部を有し、内部が3部屋に仕切られている、底部直径9.5cm及び高さ23cmのボトルを準備した。コンパウンド(1)、(2)及び(9)のペレットを200gずつ、前記ボトルの3つに仕切られた各部屋に収納し、ペレット収納ボトルを得た。これを、1m間隔で1個ずつ及び(ケース1)の形態にて柵に設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0084】
<実施例9>
3-エチル-2,5-ジメチルピラジンC、2,3,5-トリメチルピラジンD、2,4,5-トリメチルチアゾールE、亜酸化銅R、ペレット
上部に開口部を有する底部直径9.5cm及び高さ23cmのボトルを準備した。コンパウンド(7)、(8)及び(9)のペレット200gずつよく混合し、前記ボトルに収納し、ペレット収納ボトルを得た。これを、1m間隔で1個ずつ及び(ケース1)の形態にて柵に設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0085】
<比較例1>
木タールA、格子板
PE/SEPTON=75/25(重量比)の混合物を2軸混錬機で溶融混錬し、その途中で樹脂混合物80部に対し木タール20部を液体添加して混錬し、冷却、ペレタイズし、木タール入りペレットを得た。汎用の射出成形機及び成形型を使用して、前記ペレットを縦30cm、横30cm及び厚さ0.5cmの格子板に成形した。
【0086】
得られた成形物2枚を重ね、結合して、幅30cmの帯状物とした。これを(ケース1)の形態にて柵に設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0087】
本例の樹脂混合物は無機粒子を含有しないために木タールの放出速度が早く、臭気が短期間のうちに消失した。
【0088】
<比較例2>
ガーリックオイルF、立体網目シート
PE/EVA=50/50(重量比)の混合物を2軸混錬機で溶融混錬し、その途中で樹脂混合物80部に対しガーリックオイル20部を液体添加して混錬し、冷却、ペレタイズし、ガーリックオイル入りペレットを得た。ランダム押し出し立体網目製造機を使用して、前記ペレットを幅1m、目付1500g/m2の立体網目シートに成形した。
【0089】
得られた成形物2枚を重ね、結合して、幅1mの帯状物とした。これを(ケース2)の形態にて地面に設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0090】
本例の樹脂混合物は無機粒子を含有しないためにガーリックオイルの放出速度が早く、臭気が短期間のうちに消失した。
【0091】
<比較例3>
木タールA、ガーリックオイルF、カプサイシン含有オイルG、格子板
木タールの代わりにカプサイシン含有オイル20部を使用すること以外は比較例1と同様にしてカプサイシン含有オイル入りペレットを得た。
【0092】
汎用の射出成形機及び成形型を使用して、比較例2で得たガーリックオイル入りペレット及び前記カプサイシン含有オイル入りペレットを重量比50/50で混合したものを格子板に成形した。比較例1の格子板及び前記格子板を重ね、結合して、幅30cmの帯状物とした。これを(ケース1)の形態にて柵に設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0093】
本例の樹脂混合物は無機粒子を含有しないために木タール、ガーリックオイル及びカプサイシン含有オイルの放出速度が早く、臭気が短期間のうちに消失した。
【0094】
<比較例4>
ペパーミントオイルH、チャーT、格子板
PE/SEPTON/チャー=70/20/10(重量比)の混合物を2軸混錬機で溶融混錬し、その途中で樹脂混合物80部に対しペパーミントオイル20部を液体添加して混錬し、冷却、ペレタイズし、ペパーミントオイル及びチャー入りペレットを得た。汎用の射出成形機及び成形型を使用して、前記ペレットを縦30cm、横30cm及び厚さ0.5cmの格子板に成形した。
【0095】
得られた成形物2枚を重ね、結合して、幅30cmの帯状物とした。これを(ケース1)の形態にて柵に設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0096】
ペパーミントオイルは比較的蒸散しやすいため、長期間の臭気の維持が難しく、本発明の忌避剤としては不適であることが確認された。
【0097】
<比較例5>
アリルイソチオシアネートI、チャーT、格子板
ペパーミントオイルの代わりにアリルチオイソシアネート10部を使用すること以外は比較例4と同様にして幅30cmの帯状物を形成し、評価した。
【0098】
アリルイソチオシアネートは比較的蒸散しやすいため、長期間の臭気の維持が難しく、本発明の忌避剤としては不適であることが確認された。
【0099】
<比較例6>
安息香酸デナトニウムJ、チャーT、格子板
ペパーミントオイルの代わりに安息香酸デナトニウム20部を使用すること以外は比較例4と同様にして幅30cmの帯状物を形成し、評価した。
【0100】
安息香酸デナトニウムは、味覚を刺激するものの臭気は感じられず、本発明に使用する忌避剤としては不適であることが確認された。
【0101】
<比較例7>
カプサイシン含有オイルG、活性炭U、立体網目シート
PE/EVA/活性炭=40/40/10(重量比)の混合物を2軸混錬機で溶融混錬し、その途中で樹脂混合物80部に対しカプサイシン含有オイル20部を液体添加して混錬し、冷却、ペレタイズし、カプサイシン含有オイル及び活性炭入りペレットを得た。ランダム押し出し立体網目製造機を使用して、前記ペレットを幅1m、目付1500g/m2の立体網目シートに成形した。
【0102】
得られた成形物2枚を重ね、結合して、幅1mの帯状物とした。これを(ケース2)の形態にて地面に設置した。次いで、鹿忌避性能、臭気の経時的変化及び臭気の寿命を評価した。
【0103】
活性炭は吸着性能が高いため、カプサイシン含有オイルの蒸散が阻害されており、活性炭は本発明に用いる無機粒子としては不適であることが確認された。
【0104】
<比較例8>
カプサイシン含有オイルG、ガラスビーズV、立体網目シート
活性炭の代わりに重量比で10部のガラスビーズを使用すること以外は比較例7と同様にして幅1mの帯状物を形成し、評価した。
【0105】
ガラスビーズは表面活性が低いため、カプサイシン含有オイルの徐放に寄与する効果が低く、本発明に用いる無機粒子としては不適であることが確認された。
【0106】
<比較例9>
カプサイシン含有オイルG、アルミパウダーW、立体網目シート
活性炭の代わりに重量比で10部のアルミパウダーを使用すること以外は比較例7と同様にして幅1mの帯状物を形成し、評価した。
【0107】
アルミパウダーは表面活性が低いため、カプサイシン含有オイルの徐放に寄与する効果が低く、本発明に用いる無機粒子としては不適であることが確認された。
【0108】
熱可塑性樹脂は、1種類を使用してよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。その場合、熱可塑性樹脂の軟化点は、動物忌避樹脂組成物のマトリックスを形成する熱可塑性ポリマーの軟化点を採用する。