(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004653
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04746 20160101AFI20250107BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20250107BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20250107BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20250107BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20250107BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20250107BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20250107BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20250107BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/04 J
H01M8/04014
H01M8/0432
H01M8/04858
H01M8/0606
C01B3/38
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104486
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】小林 和明
【テーマコード(参考)】
4G140
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB43
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB23
5H127AC15
5H127AC16
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA06
5H127BA13
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB19
5H127BB37
5H127DB47
5H127DB74
5H127DB79
5H127DC22
5H127DC76
5H127DC83
5H127DC90
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】燃料電池の過昇温を抑制しながら水の回収効率を向上させる。
【解決手段】燃料電池装置10はモジュール11と熱媒流路12と放熱部13と制御装置14とを有する。モジュール11は燃料電池及び排ガス処理部を有する。燃料電池は燃料ガス及び空気を用いて発電する。排ガス処理部は燃料電池から排出される排ガスを処理する燃焼触媒を収容する。熱媒流路12はモジュール11から排出される排ガスと熱交換させる熱媒を流動させる。放熱部13を熱媒流路12に設ける。放熱部13は熱媒の熱を放熱させるファンを有する。制御装置14は燃料電池の温度が第1の温度以上である場合又は燃焼触媒の温度が第2の温度以上である場合に燃料電池に供給する空気の量を増加させ且つファンの回転数を増大させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガス及び空気を用いて発電する燃料電池、及び前記燃料電池から排出される排ガスを処理する燃焼触媒を収容する排ガス処理部を有するモジュールと、
前記モジュールから排出される前記排ガスと熱交換させる熱媒の熱媒流路と、
前記熱媒流路に設けられ、前記熱媒の熱を放熱させるファンを有する放熱部と、
前記燃料電池の温度が第1の温度以上である場合、又は前記燃焼触媒の温度が第2の温度以上である場合、前記燃料電池に供給する空気の量を増加させ且つ前記ファンの回転数を増大させる制御装置と、を備える
燃料電池装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池装置において、
前記モジュールは、原燃料及び水を水蒸気改質することにより前記燃料ガスを生成する改質器を更に有し、
前記制御装置は、前記燃料電池の温度が、前記第1の温度より高い第3の温度以上である場合、前記改質器に供給する水の量を増加させる
燃料電池装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池装置において、
前記制御装置は、前記燃料電池の温度が前記第3の温度以上である場合、前記燃料電池に供給する空気の量を更に増加させる
燃料電池装置。
【請求項4】
請求項2に記載の燃料電池装置において、
前記制御装置は、前記燃料電池の温度が、前記第1の温度より高く且つ前記第3の温度より低い第4の温度未満に低下する場合、前記燃料電池に供給する水及び空気の量を減少させる
燃料電池装置。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池装置において、
前記制御装置は、前記燃料電池の温度が、前記第1の温度より低い第5の温度より低下する場合、前記ファンの回転数を低下させる
燃料電池装置。
【請求項6】
燃料ガス及び空気を用いて発電する燃料電池、及び原燃料及び水を水蒸気改質することにより前記燃料ガスを生成する改質器を有するモジュールと、
前記燃料電池の温度が第1の温度以上である場合、前記改質器に供給する水の量を増加させる制御装置と、を備える
燃料電池装置。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料電池装置において、
前記モジュールは、前記燃料電池から排出される排ガスを処理する燃焼触媒を収容する排ガス処理部を更に有し、
前記制御装置は、モジュールから排出される前記排ガスと熱交換させる熱媒の熱媒流路に設けられる放熱部が有する熱媒の熱を放熱させるファンの回転数を、前記燃料電池の温度が第1の温度以上である場合に増加させる
燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池等の燃料電池は、発電時に比較的高温に維持する必要がある。それゆえ、燃料電池は高温に維持する必要のある改質器とともに断熱材等によって覆われることが一般的である。定格運転において燃料電池は適切な温度範囲に維持されるように設計されている。しかし、定格運転において想定されている条件と異なる条件で運転されることにより断熱材内の温度が過度に上昇しえる。例えば、燃料電池を含む燃料電池装置に供給する原燃料が、バイオガスのように想定されている組成が変動する、特にメタン等の炭化水素濃度が想定されている組成より高い場合に、過昇温が生じることも考えられる。
【0003】
過昇温を防ぐために、燃料電池に供給する空気の流量及び水の量を増加させることが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、空気流量を増加させると、水蒸気を含む排ガスが外部に排出されるため、水の回収効率が低下する。
【0006】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、燃料電池の過昇温を抑制しながら、本開示の構成を用いない構成と比べ水の回収効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による燃料電池装置は、
燃料ガス及び空気を用いて発電する燃料電池、及び前記燃料電池から排出される排ガスを処理する燃焼触媒を収容する排ガス処理部を有するモジュールと、
前記モジュールから排出される前記排ガスと熱交換させる熱媒の熱媒流路と、
前記熱媒流路に設けられ、前記熱媒の熱を放熱させるファンを有する放熱部と、
前記燃料電池の温度が第1の温度以上である場合、又は前記燃焼触媒の温度が第2の温度以上である場合、前記燃料電池に供給する空気の量を増加させ且つ前記ファンの回転数を増大させる制御装置と、を備える。
【0008】
第2の観点による燃料電池装置は、
燃料ガス及び空気を用いて発電する燃料電池、及び原燃料及び水を水蒸気改質することにより前記燃料ガスを生成する改質器を有するモジュールと、
前記燃料電池の温度が第1の温度以上である場合、前記改質器に供給する水の量を増加させる制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、燃料電池の過昇温を抑制しながら水の回収効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る燃料電池装置の概略構成を示す構成図である。
【
図2】
図1のモジュールの内部構成を示す概略的な断面図である。
【
図3】
図1の制御装置が実行する第1の過昇温抑制処理を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図1の制御装置が実行する第2の過昇温抑制処理を説明するためのフローチャートである
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の図面に示す構成要素において、同じ構成要素には同じ符号を付す。
【0012】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る燃料電池装置10は、モジュール11、熱媒流路12、放熱部13、及び制御装置14を含んで構成される。燃料電池装置10は、更に、蓄熱タンク15、熱交換器16、気液分離器17、水タンク18、第1の温度センサ19、及び第2の温度センサ20を含んで構成されてよい。
【0013】
図2に示すように、モジュール11は、燃料電池21及び排ガス処理部22を含む。モジュール11は、更に改質器23、燃焼部24、第3の温度センサ25、第4の温度センサ26、第1の調整機構27、第2の調整機構28、及び第3の調整機構29を含んでよい。
【0014】
燃料電池21は、燃料電池セルを含んでよい。燃料電池21は、複数の燃料電池セルを含んでよい。燃料電池21において、複数の燃料電池セルは、セルスタックを構成してよい。燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であってよい。燃料電池21は、燃料ガス及び空気等の酸素含有ガスを用いて、電気化学反応により発電する。燃料電池21は、発電により生成する水、並びに未反応の燃料ガス及び酸素含有ガスを少なくとも含む排ガスを排出する。排ガスは、後述する改質器23において未反応の原燃料ガスを含んでよい。
【0015】
排ガス処理部22は、燃料電池21から排出される排ガスをモジュール11から排出するための排出路に位置してよい。排ガス処理部22は、燃焼触媒を収容する。燃焼触媒は排ガスを処理する。具体的には、燃焼触媒は、可燃性ガスを燃焼させる。可燃性ガスは、例えば、排ガスに含まれる未反応の燃料ガス、後述する燃焼部24における排ガスの不完全燃焼により生成する一酸化炭素である。排ガスは、排ガス処理部22を通過した後に、モジュール11外に排出される。
【0016】
改質器23は、原燃料及び水を水蒸気改質することにより、燃料電池21に供給する燃料ガスを生成してよい。原燃料は、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の軽質炭化水素を含む。原燃料は、例えば、ガス管網を介して供給されるガス、ボンベを介して供給されるガス、ガス製造装置を介して供給されるガスである。原燃料は、生分解性物質の発酵等により生成されるバイオガスであってよい。また、原燃料は、アンモニア、水素等であってよい。水は、改質水として改質器23に供給され、改質器23に設けられる気化部において水蒸気に気化されてよい。燃料ガスは、例えば、水素ガスを含む。
【0017】
燃焼部24は、燃料電池21における未反応の燃料ガスを、未反応の酸素含有ガスを用いて燃焼させてよい。燃焼部24は、改質器23において未反応の原燃料を、燃料電池21における未反応の酸素含有ガスを用いて燃焼させてよい。燃焼部24は、当該未反応の燃料ガス等を燃焼させた熱を用いて改質器23を加熱可能である。燃焼部24は、例えば、燃料電池装置10の設計上の設置姿勢において、改質器23の鉛直下方に位置してよい。燃焼部24は、改質器23を加熱することにより、改質器23における水蒸気改質反応を行わせるエネルギーを付与してよい。
【0018】
第3の温度センサ25は、燃料電池21に設けられてよい。第3の温度センサ25は燃料電池21の温度を検出してよい。第4の温度センサ26は、排ガス処理部22又は、排ガス処理部22の出口側に設けられてよい。第4の温度センサ26は、排ガス処理部22内の燃焼触媒の温度を、直接的もしくは間接的に検出してよい。第3の温度センサ25及び第4の温度センサ26は、例えば、熱電対である。第3の温度センサ25及び第4の温度センサ26は、検出したそれぞれの温度を情報として制御装置14に付与してよい。
【0019】
第1の調整機構27は、空気の燃料電池21への供給量を調整してよい。第1の調整機構27は、例えば、デューティー比を変更可能なブロワであってよい。第1の調整機構27は、制御装置14の制御に基づいて、空気の供給量を調整してよい。
【0020】
第2の調整機構28は、水の改質器23への供給量を調整してよい。第2の調整機構28は、例えば、デューティー比を変更可能なポンプであってよい。第2の調整機構28は、制御装置14の制御に基づいて、水の供給量を調整してよい。
【0021】
第3の調整機構29は、原燃料の改質器23への供給量を調整してよい。第3の調整機構29は、例えば、デューティー比を変更可能なポンプであってよい。第3の調整機構29は、制御装置14の制御に基づいて、原燃料の供給量を調整してよい。
【0022】
図1に示すように、第1の温度センサ19は、熱媒流路12全体の中で熱媒が比較的低温であると想定される個所に設けられてよい。第1の温度センサ19は、例えば、蓄熱タンク15における熱媒の排出口近傍に設けられてよい。第1の温度センサ19は、熱媒の温度を検出してよい。第2の温度センサ20は、燃料電池装置10全体の中で、モジュール11のように高温となる要素から離した位置に設けられる。第2の温度センサ20は、燃料電池装置10の外気温を検出してよい。第1の温度センサ19は、例えば、熱電対である。第2の温度センサ20は、例えば、サーミスタである。第1の温度センサ19及び第2の温度センサ20は、検出したそれぞれの温度を情報として制御装置14に付与してよい。
【0023】
図1に示すように、熱媒流路12は、モジュール11から排出される排ガスと熱交換させる熱媒の流路である。具体的には、熱媒流路12は、後述する蓄熱タンク15及び熱交換器16間で熱媒を循環させてよい。熱媒は、例えば、水、不凍液などの比熱の大きな流体である。本開示において、熱媒は水である。熱媒流路12には、熱媒を昇圧するためのポンプが設けられてよい。
【0024】
放熱部13は、熱媒流路12に設けられてよい。放熱部13は、放熱流路及びファンを有する。ファンは、熱媒の熱を放熱させる。具体的には、ファンは、放熱流路の外表面に送風可能であってよい。ファンが放熱流路の外表面に送風することにより、放熱流路内部を流動する熱媒が放熱されてよい。放熱流路は、例えば、ラジエータである。
【0025】
蓄熱タンク15は、熱媒を貯蔵してよい。蓄熱タンク15に貯蔵された熱媒は、熱媒流路12を介して、蓄熱タンク15及び熱交換器16の間で循環してよい。又、蓄熱タンク15には、熱媒の熱を用いて、例えば水を加熱してお湯を供給する機構が設けられてよい。
【0026】
熱交換器16は、モジュール11から排出される排ガスを、熱媒と熱交換してよい。熱交換により、モジュール11から排出される比較的高温の排ガスが冷却されることにより、水蒸気が凝縮される。
【0027】
気液分離器17は、熱交換器16において熱交換された排ガスを、ガス状の排ガスと、凝縮した液状の水に分離してよい。ガス状の排ガスは、燃料電池装置10の外部に排出されてよい。
【0028】
水タンク18は、気液分離器17において分離された水を貯蔵してよい。水タンク18に貯蔵された水は、水蒸気改質反応に用いる改質水として、モジュール11、具体的には上述の改質器23に送られてよい。
【0029】
制御装置14は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含んで構成される。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等であってもよい。制御装置14は、燃料電池装置10の動作を制御してよい。
【0030】
例えば、制御装置14は、燃料電池21の温度が第1の温度以上である場合、又は燃焼触媒の温度が第2の温度以上である場合、燃料電池21に供給する空気の量を増加させ且つファンの回転数を増大させる第1の制御を実行する。ファンの回転数を増大させるとは、ファンの停止状態から回転開始状態への遷移を含んでよい。ファンの回転数の増大は、最大回転数への増大であってよい。
【0031】
第1の温度は、燃料電池21の劣化を推定させる温度である。第1の温度は、例えば定格運転時における温度範囲の上限値、又はそれより高い温度に定めれられてよい。第2の温度は、燃焼部24において不完全燃焼が生じていることを推定させる温度である。具体的に説明すると、定格運転において燃焼部24では排ガスが完全燃焼しており、一酸化炭素の発生量は少ない。そのような状況下では、燃焼触媒において燃焼する一酸化化炭素が少なく、発生する熱量も小さい。一方で、不完全燃焼が発生している状況下では、完全燃焼時に比べて一酸化炭素の発生量が多く、燃焼触媒において発生する熱量が大きい。そこで、燃焼部24において不完全燃焼が発生していることを設計において認定する一酸化炭素の発生量の最低値に対して燃焼触媒が到達する温度が第2の温度に定められてよい。
【0032】
制御装置14は、第1の制御を、燃料電池21の温度が第1の温度以上であることが所定時間の間に継続されている場合に、行ってよい。又は、制御装置14は、第1の制御を、燃焼触媒の温度が第2の温度以上であることが所定時間の間に継続されている場合に行ってよい。所定時間は、温度情報が瞬間的でなく、燃料電池21における過昇温及び燃焼部24における不完全燃焼が発生していると認定し得る時間間隔に定められてよい。制御装置14は、第1の制御におけるファンの回転数の増大を、第1の温度センサ19が検出する温度が第2の温度センサ20が検出する温度より高い場合に、行ってよい。
【0033】
又、制御装置14は、燃料電池21の温度が第3の温度以上である場合、改質器23に供給する水の量を増加させる第2の制御を実行してよい。第3の温度は、第1の温度より高くてよい。第3の温度は、例えば、改質器23における改質触媒の劣化を推定させる温度に定められてよい。制御装置14は、燃料電池21の温度が第3の温度以上である場合、燃料電池21に供給する空気の量を更に増加させる第3の制御を実行してよい。制御装置14は、第2の制御及び第3の制御を、燃料電池21の温度が第3の温度以上であることが所定時間の間に継続されている場合に、行ってよい。
【0034】
又、制御装置14は、第1の制御、第2の制御、及び第3の制御の少なくとも1つの実行後に、燃料電池21の温度が第4の温度未満に低下する場合、燃料電池21に供給する水及び空気の量を減少させる第4の制御を実行してよい。具体的には、制御装置14は、第1の制御、第2の制御、及び第3の制御の少なくとも1つの実行中の制御において改質器23に供給している水及び燃料電池21に供給している空気の量よりも、それぞれ水及び空気の供給量を減少させる。第4の温度は、第1の温度より高く、且つ第3の温度より低くてよい。第4の温度は、例えば、第1の温度及び第3の温度の中間の温度であってよい。制御装置14は、第4の制御を、燃料電池21の温度が第4の温度未満であることが所定時間の間に継続されている場合に、行ってよい。
【0035】
又、制御装置14は、第4の制御の実行後に、燃料電池21の温度が第5の温度未満に低下する場合、ファンの回転数を低下させる第5の制御を実行してよい。第5の温度は、第1の温度より低くてよい。第5の温度は、例えば、定格運転時の上限温度であってよい。ファンの回転数の低下は、少なくとも第4の制御を実行中のファンの回転数よりも低下させればよく、第1の制御の実行直前の回転数に戻すことであってよい。第5の制御において、制御装置14は、更に、改質器23に供給する水及び燃料電池21に供給する空気の量を、第1の制御の実行直前の水及び空気の供給量に戻してよい。制御装置14は、第5の制御を、燃料電池21の温度が第5の温度未満であることが所定時間の間に継続されている場合に、行ってよい。制御装置14は、第4の制御の実行後に、燃料電池21の温度が第5の温度未満に低下していない場合、第1の制御の実行に戻ってよい。
【0036】
又、制御装置14は、第1の制御の実行後に、燃焼触媒の温度が第6の温度未満に低下する場合、燃料電池21に供給する空気の量を減少させる第6の制御を行ってよい。第6の温度は、第2の温度よりも低く設定されていればよく、定格運転時における失火が想定されない温度範囲で定められてよい。第6の制御における空気の減少量の絶対値は、第1の制御における空気の流量の増加量の絶対値未満であってよい。制御装置14は、第6の制御を、燃焼触媒の温度が第6の温度未満であることが所定時間の間に継続されている場合に、行ってよい。第6の制御の実行後に、制御装置14は、再び、燃焼触媒の温度が第6の温度未満に低下するか否かの判別を行ってよい。制御装置14は、燃焼触媒の温度が第6の温度未満に低下する場合、第1の制御の実行前の空気の供給量に到達するまで、第6の制御を繰返してよい。言換えると、制御装置14は、燃焼触媒の温度の確認を基に、燃料電池21に供給する空気の量を徐々に又は段階的に減少させてよい。又は、制御装置14は、燃料電池21に供給する空気の量を、第6の制御で定められる下限値まで一気に減少させてよい。制御装置14は、第6の制御によって燃料電池21に供給する空気の量が第1の制御の実行前の空気の供給量に戻っている場合、改質器23に供給する水の量及びファンの回転数を、第1の制御の実行前の水の供給量及びファンの回転数に戻してよい。
【0037】
次に、本実施形態において制御装置14が実行する第1の過昇温抑制処理について、
図3のフローチャートを用いて説明する。第1の過昇温抑制処理は、例えば、燃料電池装置10の稼働中に周期的に開始する。
【0038】
ステップS100において、制御装置14は、燃料電池21の温度が第1の温度以上の状態が所定時間継続しているか否かを判別する。継続している場合、プロセスはステップS101に進む。継続していない場合、第1の昇温抑制処理は終了する。
【0039】
ステップS101では、制御装置14は、外気温が第1の温度センサ19が検出する熱媒の温度以上であるか否かを判別する。外気温が熱媒の温度以上である場合、プロセスはステップS102に進む。外気温が熱媒の温度以上でない場合、プロセスはステップS103に進む。
【0040】
ステップS102では、制御装置14は、ファンの回転数を記憶する。又、制御装置14は、ファンの回転数を増大させる。増大後、プロセスはステップS103に進む。
【0041】
ステップS103では、制御装置14は、燃料電池21に供給する空気の流量を記憶する。記憶後、プロセスはステップS104に進む。
【0042】
ステップS104では、制御装置14、燃料電池21に供給する空気の流量を、ステップS103において記憶した流量から増加させる。増加後、プロセスはステップS105に進む。
【0043】
ステップS105では、制御装置14は、燃料電池21の温度が第3の温度以上の状態が所定時間継続しているか否かを判別する。継続している場合、プロセスはステップS106に進む。継続していない場合、プロセスはステップS107に進む。
【0044】
ステップS106では、制御装置14は、燃料電池21に供給する空気の流量を、ステップS104で調整した流量から更に増加させる。又、制御装置14は、改質器23に供給する水の流量を記憶する。又、制御装置14は、改質器23に供給する水の流量を、記憶した流量から増加させる。増加後、プロセスはステップS107に進む。
【0045】
ステップS107では、制御装置14は、燃料電池21の温度が第4の温度未満に低下している状態が所定時間継続しているか否かを判別する。継続している場合、プロセスはステップS108に進む。継続していない場合、プロセスはステップS107に戻る。
【0046】
ステップS108では、制御装置14は、燃料電池21に供給する空気の流量を減少させる。又、制御装置14は、改質器23に供給する水の流量を減少させる。減少後、プロセスはステップS109に進む。
【0047】
ステップS109では、制御装置14は、燃料電池21の温度が第5の温度未満に低下している状態が所定時間継続しているか否かを判別する。継続している場合、プロセスはステップS110に進む。継続していない場合、プロセスはステップS104に戻る。
【0048】
ステップS110では、制御装置14は、燃料電池21に供給する空気の流量を、ステップS103において記憶した流量に戻す。又、制御装置14は、改質器23に供給する水の流量を、ステップS106において記憶した流量に戻す。なお、第1の過昇温抑制処理において、ステップS106を経由していない場合、水の流量は戻されない。又、制御装置14は、ファンの回転数を、ステップS102において記憶した回転数に戻す。流量等を戻した後に、第1の過昇温抑制処理は終了する。
【0049】
次に、本実施形態において制御装置14が実行する第2の過昇温抑制処理について、
図4のフローチャートを用いて説明する。第2の過昇温抑制処理は、例えば、燃料電池装置10の稼働中に周期的に開始する。
【0050】
ステップS200において、制御装置14は、燃焼触媒の温度が第2の温度以上の状態が所定時間継続しているか否かを判別する。継続している場合、プロセスはステップS201に進む。継続していない場合、第2の昇温抑制処理は終了する。
【0051】
ステップS201からステップS204では、制御装置14は、第1の過昇温抑制処理のステップS101からステップS104と同じ制御を行う。ステップS104において、空気の流量の記憶後、プロセスはステップS205に進む。
【0052】
ステップS205では、制御装置14は、燃焼触媒の温度が第6の温度未満に低下している状態が所定時間継続しているか否かを判別する。継続している場合、プロセスはステップS206に進む。継続していない場合、プロセスはステップS207に進む。
【0053】
ステップS206では、制御装置14は、燃料電池21に供給する空気の流量を、ステップS204において増加させた変動量未満で減少させる。減少後、プロセスはステップS207に進む。
【0054】
ステップS207では、制御装置14は、燃料電池21に供給する空気の流量が、ステップS203において記憶した流量以下であるか否かを判別する。記憶した流量以下である場合、プロセスはステップS208に進む。記憶した流量以下でない場合、プロセスはステップS205に戻る。
【0055】
ステップS208では、制御装置14は、ファンの回転数を、ステップS202において記憶した回転数に戻す。回転数を戻した後、第2の過昇温抑制処理は終了する。
【0056】
以上のような構成の本実施形態の燃料電池装置10は、燃料ガス及び空気を用いて発電する燃料電池21及び燃料電池21から排出される排ガスを処理する燃焼触媒を収容する排ガス処理部22を有するモジュール11と、モジュール11から排出される排ガスと熱交換させる熱媒の熱媒流路12と、熱媒流路12に設けられ熱媒の熱を放熱させるファンを有する放熱部13と、燃料電池21の温度が第1の温度以上である場合又は燃焼触媒の温度が第2の温度以上である場合に燃料電池21に供給する空気の量を増加させ且つファンの回転数を増大させる制御装置14と、を備える。前述のように、原燃料中の炭化水素の組成の変動等により、燃料電池21に供給される燃料ガスを含む可燃性ガスの量が定格運転において想定されている量より増えることがあり得る。そのような状況下では、燃焼部24における燃焼で発生する熱が上昇するため、結果として燃料電池21の温度が適切な温度から外れる得る。又、燃焼触媒の温度上昇は燃料電池21の温度上昇より先に生じるため、燃焼触媒の温度上昇により、燃料電池21の温度上昇が予測される。このような事象に対して、上述の構成を有する燃料電池装置10は、燃料電池21に供給する空気の量を増加させることにより、燃料電池21の過昇温を抑制し得る。又、空気の量を増加させると、モジュール11から排出される排ガスの量も増加する。排ガスの量が増加すると、排ガスの単位量当たりの熱交換される熱量が低下する。そのため、モジュール11から排出される排ガスに含まれる水の中で、燃料電池装置10で回収されずに外部に排出される量が増加する。このような事象に対して、上述の構成を有する燃料電池装置10は、ファンの回転数を増大させることにより熱媒を冷却するので、水の回収効率を向上させ得る。なおここでいう水の回収効率には、水タンク18に戻る水の割合のほか、水タンク18に戻る水の絶対量が増えている場合を含む意味である。
【0057】
又、燃料電池装置10では、モジュール11は原燃料及び水を水蒸気改質することにより燃料ガスを生成する改質器23を更に有し、制御装置14は燃料電池21の温度が第1の温度より高い第3の温度以上である場合に改質器23に供給する水の量を増加させる。このような構成により、燃料電池装置10は、改質器23への水の供給量が増えることにより、改質器23において吸熱される気化熱が増加するので、燃料電池21の温度を間接的に低下させる。したがって、燃料電池装置10は、燃料電池21の温度を低下することにより、モジュール11から排出される排ガスの温度低下を引起こすので、空気の量の増加だけでは燃料電池21を温度低下させられない場合であっても水の回収効率を向上させ得る。
【0058】
又、燃料電池装置10は、燃料電池21の温度が第3の温度以上である場合に燃料電池21に供給する空気の量を更に増加させる。このような構成により、燃料電池装置10は、先に増加させた空気の量では燃料電池21を温度低下させられない場合であっても水の回収効率を向上させ得る。
【0059】
又、燃料電池装置10は、燃料電池21の温度が第1の温度より高く且つ第3の温度より低い第4の温度未満に低下する場合に燃料電池21に供給する水及び空気の量を減少させる。このような構成により、燃料電池装置10は、燃料電池21の過昇温がある程度抑制されていることが推定可能な状況で、空気及び水の量を減少させるので、燃料電池装置10の外部に排出される水の量を低減させ得る。その結果、燃料電池装置10は、水の回収効率を更に向上させる。
【0060】
又、燃料電池装置10は、燃料電池21の温度が第1の温度より低い第5の温度より低下する場合にファンの回転数を低下させる。このような構成により、燃料電池装置10は、水の回収効率が低下する虞が低くなる状況であると判別して、ファンの回転数を戻すことにより、ファンの負荷を低減させ得る。その結果、燃料電池装置10は、ファンにおける消費電力を低減させ得る。特に、燃料電池21が発電する電力を用いてファンが駆動する構成においては、燃料電池装置10は、発電効率の低下を抑制し得る。
【0061】
一実施形態において、(1)燃料電池装置は、
燃料ガス及び空気を用いて発電する燃料電池、及び前記燃料電池から排出される排ガスを処理する燃焼触媒を収容する排ガス処理部を有するモジュールと、
前記モジュールから排出される前記排ガスと熱交換させる熱媒の熱媒流路と、
前記熱媒流路に設けられ、前記熱媒の熱を放熱させるファンを有する放熱部と、
前記燃料電池の温度が第1の温度以上である場合、又は前記燃焼触媒の温度が第2の温度以上である場合、前記燃料電池に供給する空気の量を増加させ且つ前記ファンの回転数を増大させる制御装置と、を備える。
【0062】
(2)上記(1)の燃料電池装置では、
前記モジュールは、原燃料及び水を水蒸気改質することにより前記燃料ガスを生成する改質器を更に有し、
前記制御装置は、前記燃料電池の温度が、前記第1の温度より高い第3の温度以上である場合、前記改質器に供給する水の量を増加させる。
【0063】
(3)上記(2)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記燃料電池の温度が前記第3の温度以上である場合、前記燃料電池に供給する空気の量を更に増加させる。
【0064】
(4)上記(2)又は(3)の燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記燃料電池の温度が、前記第1の温度より高く且つ前記第3の温度より低い第4の温度未満に低下する場合、前記燃料電池に供給する水及び空気の量を減少させる。
【0065】
(5)上記(1)乃至(4)のいずれかの燃料電池装置では、
前記制御装置は、前記燃料電池の温度が、前記第1の温度より低い第5の温度より低下する場合、前記ファンの回転数を低下させる。
【0066】
一実施形態において(6)燃料電池装置は、
燃料ガス及び空気を用いて発電する燃料電池、及び原燃料及び水を水蒸気改質することにより前記燃料ガスを生成する改質器を有するモジュールと、
前記燃料電池の温度が第1の温度以上である場合、前記改質器に供給する水の量を増加させる制御装置と、を備える。
【0067】
(7)上記(6)の燃料電池装置では、
前記モジュールは、前記燃料電池から排出される排ガスを処理する燃焼触媒を収容する排ガス処理部を更に有し、
前記制御装置は、モジュールから排出される前記排ガスと熱交換させる熱媒の熱媒流路に設けられる放熱部が有する熱媒の熱を放熱させるファンの回転数を、前記燃料電池の温度が第1の温度以上である場合に増加させる。
【0068】
以上、燃料電池装置10の実施形態を説明してきたが、本開示の実施形態としては、装置を実施するための方法又はプログラムの他、プログラムが記録された記憶媒体(一例として、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、ハードディスク、又はメモリカード等)としての実施態様をとることも可能である。
【0069】
又、プログラムの実装形態としては、コンパイラによってコンパイルされるオブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード等のアプリケーションプログラムに限定されることはなく、オペレーティングシステムに組み込まれるプログラムモジュール等の形態であってもよい。さらに、プログラムは、制御基板上のCPUにおいてのみ全ての処理が実施されるように構成されてもされなくてもよい。プログラムは、必要に応じて基板に付加された拡張ボード又は拡張ユニットに実装された別の処理ユニットによってその一部又は全部が実施されるように構成されてもよい。
【0070】
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0071】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0072】
本開示に記載された構成要件の全て、及び/又は、開示された全ての方法、又は、処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。又、本開示に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、又は類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一、又は、均等となる特徴の一例にすぎない。
【0073】
さらに、本開示に係る実施形態は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本開示に係る実施形態は、本開示に記載された全ての新規な特徴、又は、それらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法、又は、処理のステップ、又は、それらの組合せに拡張することができる。
【0074】
例えば、本実施形態において、燃料電池21の温度が第1の温度以上である場合、燃料電池21に供給する空気の量を増加させることにより、燃料電池21の過昇温を抑制する構成であるが、空気の量を増加させる代わりに、改質器23に供給する水の量を増加させることによっても、燃料電池21の過昇温を抑制する効果が得られる。
【0075】
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1の温度センサは、第2の温度センサと識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0076】
10 燃料電池装置
11 モジュール
12 熱媒流路
13 放熱部
14 制御装置
15 蓄熱タンク
16 熱交換器
17 気液分離器
18 水タンク
19 第1の温度センサ
20 第2の温度センサ
21 燃料電池
22 排ガス処理部
23 改質器
24 燃焼部
25 第3の温度センサ
26 第4の温度センサ
27 第1の調整機構
28 第2の調整機構
29 第3の調整機構