(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004670
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】管内走行装置、管内走行装置の制御方法、及び管内走行装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G02B 23/24 20060101AFI20250107BHJP
B61B 13/10 20060101ALI20250107BHJP
B62D 12/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G02B23/24 A
B61B13/10
B62D12/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104508
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000182937
【氏名又は名称】日鉄パイプライン&エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】生野 康之
(72)【発明者】
【氏名】中澤 良太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 千晃
(72)【発明者】
【氏名】原田 肇
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和寿
(72)【発明者】
【氏名】馬 書根
(72)【発明者】
【氏名】加古川 篤
(72)【発明者】
【氏名】関谷 奏
(72)【発明者】
【氏名】村田 憲哉
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 千大
【テーマコード(参考)】
2H040
【Fターム(参考)】
2H040AA02
2H040DA11
2H040DA55
(57)【要約】
【課題】面外曲げの管路を走行可能な管内走行装置、管内走行装置の制御方法、及び管内走行装置の制御プログラムを提供する。
【解決手段】第1リンク10と、第1リンク10に連結される第2リンク20と、第1リンク10と第2リンク20とを連結する能動関節部60と、管内走行装置100を移動可能とするように回転する第1球状車輪41、第2球状車輪42、及び中央車輪43と、を備え、第1球状車輪41は、第1球状車輪41の回転軸41sについて、管路Pの管軸Psまわりの角度を制御可能であり、第2球状車輪42は、第2球状車輪42の回転軸42sについて、管路Pの管軸Psまわりの角度を制御可能であり、中央車輪43は、中央車輪43の回転軸43sに沿って、受動的に移動可能であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の内部を走行する管内走行装置であって、
前記管内走行装置の一方の側に設けられる第1リンクと、
前記管内走行装置の他方の側に設けられ、前記第1リンクに連結される第2リンクと、
前記第1リンクと前記第2リンクとを揺動可能に連結し、かつ、前記第1リンクと前記第2リンクとの角度を能動的に変更可能な能動関節部と、
前記管内走行装置を前記一方の側及び前記他方の側に移動可能とするように回転する車輪と、
を備え、
前記車輪は、
前記第1リンクの前記一方の側の端部に設けられ、回転軸まわりに回転可能な第1球状車輪と、
前記第2リンクの前記他方の側の端部に設けられ、回転軸まわりに回転可能な第2球状車輪と、
回転軸が前記能動関節部の回転軸に沿うように設けられる中央車輪と、
を含み、
前記能動関節部が、前記第1リンクおよび前記第2リンクとの角度を調整した状態で、
前記第1球状車輪および前記第2球状車輪は、前記管路の内壁面のうちの第1内壁面に接し、前記中央車輪は、前記管路の内壁面のうち、前記管路の管軸を間に挟んで、前記第1内壁面と径方向に対向する第2内壁面に接し、
前記第1球状車輪は、前記第1球状車輪の回転軸について、前記管路の管軸まわりの角度を制御可能であり、
前記第2球状車輪は、前記第2球状車輪の回転軸について、前記管路の管軸まわりの角度を制御可能であり、
前記中央車輪は、前記中央車輪の回転軸に沿って、受動的に移動可能である、
ことを特徴とする管内走行装置。
【請求項2】
前記能動関節部はトルク制御が可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の管内走行装置。
【請求項3】
前記能動関節部には、低摩擦ギアードモータが用いられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の管内走行装置。
【請求項4】
前記第1球状車輪及び前記第2球状車輪の前記管軸まわりの角度を検出するエンコーダを更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の管内走行装置。
【請求項5】
前記車輪の回転速度と、前記第1球状車輪及び前記第2球状車輪の前記管軸まわりの角度と、前記能動関節部のトルクと、を操作可能な操作部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の管内走行装置。
【請求項6】
請求項1に記載の管内走行装置の制御方法であって、
前記管路の屈曲部に進入する時、前記第1球状車輪及び前記第2球状車輪のそれぞれを、前記第1リンク及び前記第2リンクに対して、前記管路の管軸まわりに回転しないように制御する、
ことを特徴とする管内走行装置の制御方法。
【請求項7】
前記能動関節部のトルクを一定に制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載の管内走行装置の制御方法。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の管内走行装置を作動させるための制御手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする、
管内走行装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内走行装置、管内走行装置の制御方法、及び管内走行装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス管をはじめとする管路の内部を点検する点検装置として、カメラを備える管内走行装置を用いることがある。
例えば、特許文献1には、複雑な制御を不要とし、かつ、小型化を図ることを目的とした管内走行装置が開示されている。特許文献1の管内走行装置は、複数のリンクを連結部によって揺動可能に連結し、転動体によって管路の内部を走行可能にしつつ、付勢手段によって転動体を管の内壁面に当接させる。特許文献1の管内走行装置における転動体は、管内走行装置が進行方向に進む方向の回転と、管内走行装置が管軸まわりにロール回転する方向の回転と、が、1つのアクチュエータによって制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
管内走行装置が走行する管路には、エルボ等によって屈曲部が形成されたものがある。すなわち、管軸が曲線状となっているものがある。また、複数のエルボが連続して設けられ、かつ、前記複数のエルボにおいて、曲線状の管軸が含まれる平面が互いに異なっている(面外曲げ)ものがある。
特許文献1の管内走行装置において、リンクが3つ以上設けられた場合、前述の面外曲げの管路を走行することが幾何条件的に不可能となる。また、リンクが2つの場合、面外曲げの管路を走行する際には、面外曲げの管路内を走行中に、管内走行装置が管軸まわりにロール回転する必要がある。しかしながら、特許文献1の管内走行装置では、面外曲げの管路を走行しようとすると、転動体が管内走行装置のリンクに対して回転してしまい、管路内を進めなくなる課題がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、面外曲げの管路を走行可能な管内走行装置、管内走行装置の制御方法、及び管内走行装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係る管内走行装置は、管路の内部を走行する管内走行装置であって、前記管内走行装置の一方の側に設けられる第1リンクと、前記管内走行装置の他方の側に設けられ、前記第1リンクに連結される第2リンクと、前記第1リンクと前記第2リンクとを揺動可能に連結し、かつ、前記第1リンクと前記第2リンクとの角度を能動的に変更可能な能動関節部と、前記管内走行装置を前記一方の側及び前記他方の側に移動可能とするように回転する車輪と、を備え、前記車輪は、前記第1リンクの前記一方の側の端部に設けられ、回転軸まわりに回転可能な第1球状車輪と、前記第2リンクの前記他方の側の端部に設けられ、回転軸まわりに回転可能な第2球状車輪と、回転軸が前記能動関節部の回転軸に沿うように設けられる中央車輪と、を含み、前記能動関節部が、前記第1リンクおよび前記第2リンクとの角度を調整した状態で、前記第1球状車輪および前記第2球状車輪は、前記管路の内壁面のうちの第1内壁面に接し、前記中央車輪は、前記管路の内壁面のうち、前記管路の管軸を間に挟んで、前記第1内壁面と径方向に対向する第2内壁面に接し、前記第1球状車輪は、前記第1球状車輪の回転軸について、前記管路の管軸まわりの角度を制御可能であり、前記第2球状車輪は、前記第2球状車輪の回転軸について、前記管路の管軸まわりの角度を制御可能であり、前記中央車輪は、前記中央車輪の回転軸に沿って、受動的に移動可能であることを特徴とする。
【0007】
態様1によれば、第1球状車輪は、第1球状車輪の回転軸について、管路の管軸まわりの角度を制御可能であり、第2球状車輪は、第2球状車輪の回転軸について、管路の管軸まわりの角度を制御可能である。そして、中央車輪は、中央車輪の回転軸に沿って、受動的に移動可能である。すなわち、中央車輪は、管内走行装置を一方の側及び他方の側に移動可能とするように回転することに加えて、外からの力によって受動的に、管路の内壁面を周方向に滑るように移動可能である。
これらによって、例えば、管内走行装置が面内曲げの管路から管内走行装置が面外曲げの管路に進入し、第1球状車輪が管路の内壁面に接することで管軸まわりに回転する方向の力を受けた時、以下のように制御可能である。すなわち、第1球状車輪及び第2球状車輪が、それぞれの回転軸を、管内走行装置のリンクに対して管軸まわりに回転しないように制御する(回転軸を管軸に対して交差する方向に制御する)ことで、例えば、第1球状車輪のみなど、管内走行装置の一部が部分的に管軸まわりに回転するといったこと等が無く、管内走行装置の全体が管軸まわりに回転する。このことで、面外曲げの管路内で、管内走行装置を管軸まわりにロール回転させることができる。よって、特殊な操作等をすることなく、また、事前に管路の幾何学情報を調査することなく、面外曲げの管路を走行可能な管内走行装置とすることができる。
また、例えば、第1球状車輪及び第2球状車輪のそれぞれの回転軸を、管内走行装置のリンクに対して管軸まわりに回転するように制御することで、管内走行装置を、一方の側又は他方の側に移動させることなく、その場で管軸まわりにロール回転させることができる。このことで、例えば、管内走行装置が曲線状の管路に進入する前に、管内走行装置の管軸まわりの角度を最適に調整することができる。よって、より管路の内部を走行しやすくすることができる。
また、リンクが2つのみであることで、リンクが3つ以上設けられる場合と比較して、小型且つ軽量な管内走行装置とすることができる。
【0008】
<2>本発明の態様2に係る管内走行装置は、態様1に係る管内走行装置において、前記能動関節部はトルク制御が可能であることを特徴とする。
【0009】
ここで、管内走行装置において、複数の内径の管路に対応可能としたい旨の要望がある。この時、管路の内径を問わず、車輪が管路の内壁面に押し付けられる力を十分なものとする必要がある。すなわち、例えば、車輪が管路の内壁面に押し付けられる力が小さいと、管内走行装置が管路を走行する際に必要な摩擦力が十分に得られなくなり、管内走行装置が管路を走行できなくなる。
そこで、態様2によれば、第1リンクと第2リンクとの角度を能動的に変更可能な能動関節部は、トルク制御が可能である。このことで、能動関節部が、第1リンクと第2リンクとの角度を変更して車輪を管路の内壁面に当接させる際のトルクを制御することで、管路の内壁面に車輪を押し付ける力を、管路の内径を問わず十分なものにすることができる。よって、例えば、管路の内径が大きい場合に、車輪と管路の内壁面との間の摩擦力を十分にすることで、管内走行装置が管路を走行できなくなることを抑えることができる。
【0010】
<3>本発明の態様3に係る管内走行装置は、態様1又は態様2に係る管内走行装置において、前記能動関節部には、低摩擦ギアードモータが用いられることを特徴とする。
【0011】
態様3によれば、能動関節部には、低摩擦ギアードモータが用いられる。このことで、管内走行装置の電源が切れた時、能動関節部が脱力する。よって、管内走行装置が管路の内部で停止した時、管内走行装置を管路から回収しやすくすることができる。
【0012】
<4>本発明の態様4に係る管内走行装置は、態様1から態様3のいずれか1つに係る管内走行装置において、前記第1球状車輪及び前記第2球状車輪の前記管軸まわりの角度を検出するエンコーダを更に備えることを特徴とする。
【0013】
態様4によれば、第1球状車輪及び第2球状車輪の管軸まわりの角度を検出するエンコーダを更に備える。このことで、第1球状車輪及び第2球状車輪の角度を制御しやすくすることができる。
【0014】
<5>本発明の態様5に係る管内走行装置は、態様1から態様4のいずれか1つに係る管内走行装置において、前記車輪の回転速度と、前記第1球状車輪及び前記第2球状車輪の前記管軸まわりの角度と、前記能動関節部のトルクと、を操作可能な操作部を更に備えることを特徴とする。
【0015】
態様5によれば、車輪の回転速度と、第1球状車輪及び第2球状車輪の管軸まわりの角度と、能動関節部のトルクと、を操作可能な操作部を更に備える。これにより、より管内走行装置の操作を行いやすくすることができる。
【0016】
<6>本発明の態様6に係る管内走行装置の制御方法は、態様1から態様5のいずれか1つに係る管内走行装置の制御方法であって、前記管路の屈曲部に進入する時、前記第1球状車輪及び前記第2球状車輪のそれぞれを、前記第1リンク及び前記第2リンクに対して、前記管路の管軸まわりに回転しないように制御することを特徴とする。
【0017】
態様6によれば、管内走行装置が管路の屈曲部に進入する時、第1球状車輪及び第2球状車輪のそれぞれを、第1リンク及び第2リンクに対して、管路の管軸まわりに回転しないように制御する。これにより、例えば、管内走行装置が面内曲げの管路から管内走行装置が面外曲げの管路に進入し、第1球状車輪が管路の内壁面に接することで管軸まわりに回転する方向の力を受けた時、第1球状車輪のみなど、管内走行装置の一部が部分的に管軸まわりに回転するといったこと等が無く、管内走行装置の全体が管軸まわりに回転する。このことで、面外曲げの管路内で、管内走行装置を管軸まわりにロール回転させることができる。よって、特殊な操作等をすることなく、また、事前に管路の幾何学情報を調査することなく、面外曲げの管路を走行可能な管内走行装置とすることができる。
また、面外曲げの管路を走行中に細かな操作を作業者が行う必要がない為、管内走行装置の操作をより容易にすることができる。
【0018】
<7>本発明の態様7に係る管内走行装置の制御方法は、態様6に係る管内走行装置の制御方法において、前記能動関節部のトルクを一定に制御することを特徴とする。
【0019】
態様7によれば、能動関節部のトルクを一定に制御する。このことで、第1リンクと第2リンクとの角度を変更して車輪を管路の内壁面に当接させる際に、管路の内壁面に車輪を押し付ける力を、管路の内径を問わず十分なものにすることができる。よって、例えば、管路の内径が大きい場合に、車輪と管路の内壁面との間の摩擦力を十分にすることで、管内走行装置が管路を走行できなくなることを抑えることができる。
また、例えば、管路の走行中に管路の内径が変化した場合においても、管路の内壁面に車輪を押し付ける力が変化しないようにすることができる。
【0020】
<8>本発明の態様8に係る管内走行装置の制御プログラムは、態様1から態様5のいずれか1つに係る管内走行装置を作動させるための制御手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0021】
態様8によれば、管内走行装置を作動させるための制御手段としてコンピュータを機能させる。これにより、管内走行装置を随時操作しながら管路を走行させることができる。あるいは、管路を走行する管内走行装置の状況を随時把握することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、面外曲げの管路を走行可能な管内走行装置、管内走行装置の制御方法、及び管内走行装置の制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】管内走行装置の備える第1球状車輪周辺の拡大図である。
【
図3】管内走行装置が比較的小径の管路の内部に位置する状態を示す図である。
【
図4】管内走行装置が比較的大径の管路の内部に位置する状態を示す図である。
【
図5】管内走行装置が備える操作部の操作用画面である。
【
図6】管内走行装置が面外曲げの管路を走行する第1図である。
【
図7】管内走行装置が面外曲げの管路を走行する第2図である。
【
図8】管内走行装置が面外曲げの管路を走行する第3図である。
【
図9】管内走行装置が面外曲げの管路を走行する第4図である。
【
図10】管内走行装置が面外曲げの管路を走行する第5図である。
【
図11】管内走行装置が面外曲げの管路を走行する第6図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る管内走行装置を説明する。管内走行装置は、ガス管をはじめとする管路の内部を走行する。このことで、管内走行装置は、管路の内部の状態を検査するために用いられる。
図1は、管内走行装置の斜視図である。
図2は、管内走行装置の備える第1球状車輪周辺の拡大図である。
図3は、管内走行装置が比較的小径の管路の内部に位置する状態を示す図である。
図4は、管内走行装置が比較的大径の管路の内部に位置する状態を示す図である。
図5は、管内走行装置が備える操作部の操作用画面である。
【0025】
管内走行装置100は、
図1及び
図2に示すように、第1リンク10と、第2リンク20と、撮像手段30と、車輪40と、エンコーダ50と、能動関節部60と、操作部70と、を備える。
なお、以下の説明において、管内走行装置100が前進する側を一方の側、後退する側を他方の側という。また、管内走行装置100が走行する管路Pの中心軸を管軸Psという。
【0026】
第1リンク10は、管内走行装置100の一方の側に設けられる。第1リンク10において、一方の側の端部には、後述する第1球状車輪41が接続される。第1リンク10において、他方の側の端部は、能動関節部60を介して第2リンク20と揺動可能に連結される。
第1リンク10は、例えば、箱状の形状である。また、第1リンク10の他方の側の端部には、第2リンク20に対して揺動する際の回転軸JSが位置する。このため、第1リンク10の他方の側の端部は、第2リンク20に対して揺動する際に、第2リンク20と干渉しない形状とする。
箱型の形状である第1リンク10の内部には、例えば、不図示の処理装置やモータ等の部品を収容してもよい。処理装置とは、例えば、管内走行装置100を制御するためのCPU(Central Processing Unit)等である。また、モータ等とは、第1球状車輪41を駆動するためのモータや、能動関節部60を駆動するためのサーボモータ等である。
また、第1リンク10には、撮像手段30が取り付けられてもよい。
【0027】
第2リンク20は、管内走行装置100の他方の側に設けられる。第2リンク20において、他方の側の端部には、後述する第2球状車輪42が接続される。第2リンク20において、一方の側の端部は、能動関節部60を介して第1リンク10と揺動可能に連結される。
第2リンク20は、例えば、箱状の形状である。また、第2リンク20の一方の側の端部には、第1リンク10に対して揺動する際の回転軸JSが位置する。このため、第2リンク20の一方の側の端部は、第1リンク10に対して揺動する際に、第1リンク10と干渉しない形状とする。
箱型の形状である第2リンク20の内部には、例えば、不図示の処理装置やモータ等の部品を収容してもよい。処理装置とは、例えば、管内走行装置100を制御するためのCPU(Central Processing Unit)等である。また、モータ等とは、第2球状車輪42を駆動するためのモータや、能動関節部60を駆動するためのサーボモータ等である。
また、第2リンク20には、撮像手段30が取り付けられてもよい。
更に、第2リンク20には、
図1に示すように、管内走行装置100に電気供給する、あるいは管内走行装置100の制御情報を伝達するための各種ケーブルCが接続されてもよい。
【0028】
撮像手段30は、公知のカメラである。撮像手段30は、管内走行装置100が管路Pの内部を走行する際に、管路Pの内部を撮影する。撮像手段30が撮影した画像又は動画は、次のように用いられる。すなわち、作業者は、前記画像又は動画によって、管路Pの内壁面Sの状態を把握する。また、作業者は、前記画像又は動画によって管内走行装置100が管路Pの屈曲部に到達したことや、屈曲部に対する管内走行装置100の位置及び姿勢を把握する。
【0029】
撮像手段30によっては、管内走行装置100において一方の側と他方の側との両方を撮影可能であることが好ましい。すなわち、本実施形態において、撮像手段30は、例えば、
図1に示すように、第1リンク10及び第2リンク20のそれぞれに設けられる。
【0030】
車輪40は、管内走行装置100を一方の側及び他方の側に移動可能とするように回転する。あるいは、車輪40は、管内走行装置100を、管軸Psまわりにロール回転させるように回転する。
車輪40は、第1球状車輪41と、第2球状車輪42と、中央車輪43と、を含む。
【0031】
第1球状車輪41は、第1リンク10の一方の側の端部に設けられる。第1球状車輪41は、一対の半球状の車輪40を互いに向き合うように配置することによって形成される。第1球状車輪41は、回転軸41sを備える。回転軸41sは、前述の一対の半球状の車輪40の中心同士を接続する。第1球状車輪41は、
図2に示すように、第1球状車輪41の内部に設けられたモータ41mによって、回転軸41sまわりに回転可能である。すなわち、前述の構成を備える第1球状車輪41が回転軸41sまわりに回転することで、管内走行装置100を一方の側及び他方の側に移動可能とする。
【0032】
また、第1球状車輪41は、後述する第1エンコーダ51によって、第1球状車輪41の回転軸41sについて、管軸Psまわりの角度を制御可能である。なお、制御可能であるとは、作業者の指示や、プログラムの制御によって、第1球状車輪41の回転軸41sの、管軸Psまわりの角度を能動的に変更可能であることをいう。前述の制御によって、第1球状車輪41の回転軸41sが、管軸Psまわりに回転することで、管内走行装置100を、管軸Psまわりにロール回転できるようにする。
【0033】
第2球状車輪42は、第2リンク20の他方の側の端部に設けられる。第2球状車輪42は、一対の半球状の車輪40を互いに向き合うように配置することによって形成される。第2球状車輪42は、回転軸42sを備える。回転軸42sは、前述の一対の半球状の車輪40の中心同士を接続する。第2球状車輪42は、第1球状車輪41と同様に、
図1に示すように、第2球状車輪42の内部に設けられたモータ42mによって、回転軸42sまわりに回転可能である。すなわち、前述の構成を備える第2球状車輪42が回転軸42sまわりに回転することで、管内走行装置100を一方の側及び他方の側に移動可能とする。
【0034】
また、第2球状車輪42は、後述する第2エンコーダ52によって、第2球状車輪42の回転軸42sについて、管軸Psまわりの角度を制御可能である。なお、制御可能であるとは、作業者の指示や、プログラムの制御によって、第2球状車輪42の回転軸42sの、管軸Psまわりの角度を能動的に変更可能であることをいう。前述の制御によって、第2球状車輪42の回転軸42sが、管軸Psまわりに回転することで、管内走行装置100を、管軸Psまわりにロール回転できるようにする。
【0035】
中央車輪43は、第1リンク10と第2リンク20との連結部に設けられる。中央車輪43は、回転軸43sが、後述する能動関節部60の回転軸JSに沿うように設けられる。中央車輪43は、第1リンク10と第2リンク20との連結部を、中央車輪43の回転軸43sの両側から挟むように、一対に設けられる。また、中央車輪43は、第1リンク10又は第2リンク20あるいはその両方の内部に設けられた不図示のモータによって、回転軸43sまわりに回転可能である。このことで、管内走行装置100を一方の側及び他方の側に移動可能とする。
【0036】
更に、中央車輪43は、中央車輪43の回転軸43sに沿って、受動的に移動可能とするために、次の構成を備える。すなわち、中央車輪43は、本体部43aと、ローラ43bと、を備える。
本体部43aは、中央車輪43の回転軸43sまわりに回転する円盤状の部材である。中央車輪43は、本体部43aが回転することで、管内走行装置100を一方の側及び他方の側に移動可能とする。
ローラ43bは、本体部43aの外周縁に沿って複数設けられる。ローラ43bの回転軸は、本体部43aの外周の接線方向に沿う。ローラ43bは、外部からの力を受けて受動的に回転可能である。
上記各構成を備えることで、例えば、中央車輪43は、中央車輪43が床面等に接した状態において、中央車輪43の回転軸43sに沿う方向から力を受けると、回転軸43sに沿う方向に移動する。これにより、管内走行装置100が管路Pの内部にいる状態において、中央車輪43は、外からの力によって受動的に、管路Pの内壁面Sを周方向に滑るように移動可能である。
上述の構成を備える中央車輪43としては、例えば、オムニホイール(登録商標)が好適に用いられる。
【0037】
エンコーダ50は、第1球状車輪41及び第2球状車輪42の管軸Psまわりの角度を検出する。また、エンコーダ50は、第1球状車輪41及び第2球状車輪42を、それぞれ、第1リンク10及び第2リンク20に対して、管軸Psまわりに回転させる。
エンコーダ50は、第1エンコーダ51と、第2エンコーダ52と、を含む。
【0038】
第1エンコーダ51は、第1球状車輪41の管軸Psまわりの角度を検出する。また、第1エンコーダ51は、第1球状車輪41を、第1リンク10に対して管軸Psまわりに回転させる。第1エンコーダ51は、
図1、
図3、
図4に示すように、第1球状車輪41と第1リンク10との間に設けられる。
第1エンコーダ51には、例えば、磁気エンコーダが好適に設けられる。
第2エンコーダ52は、第2球状車輪42の管軸Psまわりの角度を検出する。また、第2エンコーダ52は、第2球状車輪42を、第2リンク20に対して管軸Psまわりに回転させる。第2エンコーダ52は、
図1、
図3、
図4に示すように、第2球状車輪42と第2リンク20との間に設けられる。
第2エンコーダ52には、例えば、磁気エンコーダが好適に設けられる。
【0039】
能動関節部60は、第1リンク10と第2リンク20とを揺動可能に連結する。能動関節部60は、第1リンク10と第2リンク20との角度(第1リンク10と第2リンク20とがなす角度)を能動的に変更可能である。すなわち、能動関節部60は、モータであり、回転軸60sが、第1リンク10と第2リンク20とが互いに揺動する際の回転軸JSと一致するように配置される。
【0040】
管内走行装置100が管路Pを走行する際は、
図3又は
図4に示すように、能動関節部60が、第1リンク10および第2リンク20との角度を調整した状態で、車輪40のそれぞれが、管路Pの内壁面Sに接する。すなわち、第1球状車輪41および第2球状車輪42は、管路Pの内壁面Sのうちの第1内壁面S1に接する。また、中央車輪43は、管路Pの内壁面Sのうち、管路Pの管軸Psを間に挟んで、第1内壁面S1と径方向に対向する第2内壁面S2に接する。
【0041】
この時、車輪40と管路Pの内壁面Sとの摩擦力が足りないことによる車輪40の空転を抑える為に、車輪40は、管路Pの内壁面Sに対して、管内走行装置100が管路Pを走行する際に必要な摩擦力を確保できる程度に押し付けられている必要がある。車輪40を管路Pの内壁面Sに押し付ける力は、第1リンク10と第2リンク20との角度を変化させる際の、能動関節部60のトルクによって生じる。
【0042】
そこで、本実施形態において、能動関節部60に用いられるモータは、トルク制御が可能である。また、管内走行装置100が管路Pの内部に位置する状態において、能動関節部60は、トルクが一定となるように制御される。このことで、例えば、
図3及び
図4に示すように、管路Pの内径が変化した場合においても、車輪40を管路Pの内壁面Sに押し付ける力を一定とすることができる。したがって、管路Pの内径を問わずに、車輪40と管路Pの内壁面Sとの間において、管内走行装置100が管路Pを走行する際に必要な摩擦力を確保することができる。
【0043】
本実施形態において、能動関節部60には、例えば、低摩擦ギアードモータが用いられる。本実施形態においては、出力軸に1Nm以下の増速起動トルク(逆起動トルク)で入力軸が回転し始めるギアードモータを、低摩擦ギアードモータと呼ぶ。能動関節部60に低摩擦ギアードモータを用いることで、管内走行装置100の電源が切れた時、能動関節部60が脱力する。よって、管内走行装置100が管路Pの内部で停止した時、管内走行装置100を管路Pから回収しやすくすることができる。
【0044】
操作部70は、車輪40の回転速度と、第1球状車輪41及び第2球状車輪42の管軸Psまわりの角度と、能動関節部60のトルクと、を操作可能とするものである。操作部70は、操作画面71と、操作画面71を表示する表示制御装置72と、を含む。
操作画面71は、作業者が管内走行装置100に対して指示を入力するための、いわゆるGUI(Graphical User Interface)である。操作画面71には、例えば、
図5に示すように、ロボット状態表示部71aと、カメラ画像表示部71bと、モータ状態表示部71cと、指示入力部71dと、を含む。
【0045】
ロボット状態表示部71aは、管内走行装置100の状態を示す領域である。すなわち、例えば、第1リンク10及び第2リンク20をそれぞれ直線によって表現し、車輪40のそれぞれを円によって表現する。そして、ロボット状態表示部71aでは、第1リンク10及び第2リンク20に相当するそれぞれの直線同士の角度を、第1リンク10と第2リンク20との実際の角度に合わせて表示する。このことで、作業者が第1リンク10と第2リンク20との角度を視覚的に把握できるようにする。
【0046】
カメラ画像表示部71bは、管内走行装置100に設けられた撮像手段30が撮影した画像を随時表示する領域である。このことで、作業者が、管内の状態や、管路Pの屈曲部に対する管内走行装置100の位置及び姿勢を把握できるようにする。
上述のように、本実施形態において、撮像手段30は、一方の側及び他方の側を撮影可能とするために、第1リンク10及び第2リンク20のそれぞれに設けられる。このため、カメラ画像表示部71bは、第1リンク10に設けられた撮像手段30が撮影した画像を表示する領域と、第2リンク20に設けられた撮像手段30が撮影した画像を表示する領域と、を有することが好ましい。
【0047】
モータ状態表示部71cは、管内走行装置100が備える各モータの状態(例えば電流や速度)を表示する領域である。モータ状態表示部71cには、例えば、横軸を時間(秒)、縦軸を回転数(rpm)とするグラフが表示される。そして、前記グラフは、管内走行装置100が備えるモータのそれぞれに設けられる。すなわち、
図5に示すように、本実施形態においては、以下の6つのモータに対応するグラフが表示される。
第1球状車輪41を回転軸41sまわりに回転させるモータ。
第2球状車輪42を回転軸42sまわりに回転させるモータ。
中央車輪43を回転軸43sまわりに回転させるモータ。
第1球状車輪41の回転軸41sを、管軸Psまわりに回転させるモータ(第1エンコーダ51)。
第2球状車輪42の回転軸42sを、管軸Psまわりに回転させるモータ(第1エンコーダ51)。
第1リンク10と第2リンク20とを揺動させるモータ(能動関節部60)。
【0048】
指示入力部71dは、作業者が管内走行装置100に対して指示を入力するために設けられる。例えば、指示入力部71dは、画面上に表示される複数のアイコンを備える。作業者は、前記複数のアイコンをクリック又はタップすることで、管内走行装置100に対して指示を入力する。
すなわち、例えば、
図5に示すように、以下のようなアイコンが挙げられる。
第1球状車輪41を回転軸41sまわりに回転させるモータの、電流や速度を操作する第1アイコンI1。
第2球状車輪42を回転軸42sまわりに回転させるモータの、電流や速度を変更する第2アイコンI2。
第1球状車輪41の回転軸41sの、第1リンク10に対する管軸Psまわりの角度を変更する第3アイコンI3。
第2球状車輪42の回転軸42sの、第2リンク20に対する管軸Psまわりの角度を変更する第4アイコンI4。
中央車輪43を回転軸43sまわりに回転させるモータの、電流や速度を変更する第5アイコンI5。
能動関節部60の電流やトルクを変更する第6アイコンI6。
管内走行装置100の姿勢や速度を直感的に変更する第7アイコンI7。すなわち、第7アイコンI7によっては、各モータの電流や速度を操作することなく、例えば、「管内走行装置100の速度を上げる」、「第1リンクと第2リンクの角度を大きく、又は小さくする」といった操作指示をする。
カメラ画像表示部71bに表示する画像の再生、停止、保存を指示する第8アイコンI8。
上記各構成を備える操作画面71によって、作業者は管内走行装置100を操作する。
【0049】
表示制御装置72は、例えば、操作画面71を表示する表示部を備える制御装置である。表示制御装置72には、例えば、公知のPCや、タブレットPCが好適に用いられる。なお、表示制御装置72は、操作画面71を表示することに加えて、管内走行装置100を制御するために必要な各種情報を処理したり、管内走行装置100を動作するプログラムを実行したりするためにするために機能してもよい。
本実施形態において、管内走行装置100の操作部70を除く各構成と、操作部70とは、ケーブルCによって有線接続される。有線接続には、例えば、CAN(Controller Area Network)が好適に用いられる。あるいは、例えば、USB(Universal Serial Bus)や、LAN(Local area network)を用いてもよい。
なお、表示制御装置72は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとメモリとを備え、予め構成された制御プログラムを実行することで、それぞれの機能を担保される。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、表示制御装置72を制御するプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0050】
コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、USBフラッシュメモリ等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0051】
(管内走行装置100の制御方法)
次に、本実施形態に係る管内走行装置100の制御方法を説明する。すなわち、管路Pの屈曲部に進入する時、第1球状車輪41及び第2球状車輪42のそれぞれを、第1リンク10及び第2リンク20に対して、管軸Psまわりに回転しないように制御する。また、能動関節部60のトルクを一定に制御する。上記制御方法によっては、本実施形態に係る管内走行装置100を、面外曲げの管路Pを走行できるようにする。
【0052】
以下、
図6~
図11を用いて、上記制御方法によって、管内走行装置100が面外曲げ管路Pを走行する過程について説明する。
図6は、管内走行装置100が面外曲げの管路Pを走行する第1図である。
図7は、管内走行装置100が面外曲げの管路Pを走行する第2図である。
図8は、管内走行装置100が面外曲げの管路Pを走行する第3図である。
図9は、管内走行装置100が面外曲げの管路Pを走行する第4図である。
図10は、管内走行装置100が面外曲げの管路Pを走行する第5図である。
図11は、管内走行装置100が面外曲げの管路Pを走行する第6図である。
【0053】
なお、本実施形態において、面外曲げの管路Pとは、管路Pにおいて複数のエルボEが連続して設けられ、かつ、前記複数のエルボEにおいて、曲線状の管軸Psが含まれる平面が互いに異なっている状態のものをいう。
また、以下の説明において、複数のエルボEのうち、
図6に示すように、管内走行装置100が最初に進入するするエルボEを、面内曲げの管路Pという。また、管内走行装置100が、面内曲げの管路Pの次に進入するエルボEを、面外曲げの管路Pという。
【0054】
まず、
図6に示すように、管内走行装置100が面内曲げの管路Pに進入する前の状態において、管内走行装置100の姿勢を面内曲げの管路Pに合わせて調整する。管内走行装置100の姿勢の調整は、管内走行装置100を、管軸Psまわりにロール回転させることにより行う。
図6に示す状態において、管内走行装置100は、面内曲げの管路Pに進入した時、第1球状車輪41の備える一対の半球状の車輪40の両方が、面内曲げの管路Pの内壁面Sに接する位置に調整される。
その後、第1球状車輪41及び第2球状車輪42のそれぞれを、第1リンク10及び第2リンク20に対して、管軸Psまわりに回転しないように制御する。また、能動関節部60のトルクを制御することによって、車輪40のそれぞれが、管路Pの内壁面Sに対し、管内走行装置100が管路Pを走行するために十分な力で押し付けられた状態とする。
【0055】
図6に示す状態から、車輪40を回転させると、
図7に示すように、管内走行装置100が、面内曲げの管路Pに向かって移動する。この時、管路Pの内壁面Sに対する車輪40の位置関係が変化した場合であっても、能動関節部60のトルクが一定に制御されることで、車輪40が管路Pの内壁面Sに押し付けられる力が一定に保たれる。
【0056】
図7に示す状態から、更に管内走行装置100が移動すると、
図8に示すように、第1球状車輪41が、面外曲げの管路Pに進入する。すると、第1球状車輪41の備える一対の半球状の車輪40のうち、片方だけが管路Pの内壁面Sに接する状態に変化する。管路Pへの進入が進むに伴い、内壁面Sに接する状態が片方の車輪40の側面にも亘って接するようになり、第1球状車輪41が、管軸Psまわりに回転する方向の力を受ける。
この時、上述したように、第1球状車輪41及び第2球状車輪42のそれぞれを、第1リンク10及び第2リンク20に対して、管軸Psまわりに回転しないように制御することで、第1球状車輪41が管軸Psまわりに回転する方向の力が、管内走行装置100の全体に伝達される。この力によって、上述した構成を備える中央車輪43が、管路Pの内部において、ローラ43bの回転により管路Pの内壁面Sを周方向に滑るように移動する。
【0057】
このことで、
図9及び
図10に示すように、第1球状車輪41のみなど、管内走行装置100の一部が部分的に管軸Psまわりに回転するといったこと等が無く、管内走行装置100の全体が管軸Psまわりに回転する。このことで、面外曲げの管路P内で、管内走行装置100を管軸Psまわりにロール回転させることができる。
そのまま管内走行装置100が移動を継続することで、
図11に示すように、管内走行装置100が、面外曲げの管路Pを通過する。
以上のようにして、本実施形態に係る管内走行装置100は、面外曲げの管路Pを走行可能とする。
【0058】
(管内走行装置100の制御プログラム)
次に、本実施形態に係る管内走行装置100の制御プログラムを説明する。すなわち、本実施形態に係る管内走行装置100を作動させるための制御手段としてコンピュータを機能させるプログラムである。
本実施形態に係る制御プログラムは、例えば、管内走行装置100において、第1リンク10又は第2リンク20に収容された制御装置によって実行される。あるいは、上述のように、本実施形態に係る制御プログラムは、操作部70の操作画面71を表示する表示制御装置72が実行してもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る管内走行装置100によれば、第1球状車輪41は、第1球状車輪41の回転軸41sについて、管軸Psまわりの角度を制御可能であり、第2球状車輪42は、第2球状車輪42の回転軸42sについて、管軸Psまわりの角度を制御可能である。そして、中央車輪43は、中央車輪43の回転軸43sに沿って、受動的に移動可能である。すなわち、中央車輪43は、管内走行装置100を一方の側及び他方の側に移動可能とするように回転することに加えて、外からの力によって受動的に、管路Pの内壁面Sを周方向に滑るように移動可能である。
これらによって、例えば、管内走行装置100が面内曲げの管路Pから管内走行装置100が面外曲げの管路Pに進入し、第1球状車輪41が管路Pの内壁面Sに接することで管軸Psまわりに回転する方向の力を受けた時、以下のように制御可能である。すなわち、第1球状車輪41及び第2球状車輪42が、それぞれの回転軸41s、42sを、管内走行装置100のリンクに対して管軸Psまわりに回転しないように制御する(回転軸41s、42sを管軸Psに対して交差する方向に制御する)ことで、例えば、第1球状車輪41のみなど、管内走行装置100の一部が部分的に管軸Psまわりに回転するといったこと等が無く、管内走行装置100の全体が管軸Psまわりに回転する。このことで、面外曲げの管路P内で、管内走行装置100を管軸Psまわりにロール回転させることができる。よって、特殊な操作等をすることなく、また、事前に管路Pの幾何学情報を調査することなく、面外曲げの管路Pを走行可能な管内走行装置100とすることができる。
また、例えば、第1球状車輪41及び第2球状車輪42のそれぞれの回転軸41s、42sを、管内走行装置100のリンクに対して管軸Psまわりに回転するように制御することで、管内走行装置100を、一方の側又は他方の側に移動させることなく、その場で管軸Psまわりにロール回転させることができる。このことで、例えば、管内走行装置100が曲線状の管路Pに進入する前に、管内走行装置100の管軸Psまわりの角度を最適に調整することができる。よって、より管路Pの内部を走行しやすくすることができる。
また、リンクが2つのみであることで、リンクが3つ以上設けられる場合と比較して、小型且つ軽量な管内走行装置100とすることができる。
【0060】
ここで、管内走行装置100において、複数の内径の管路Pに対応可能としたい旨の要望がある。この時、管路Pの内径を問わず、車輪40が管路Pの内壁面Sに押し付けられる力を十分なものとする必要がある。すなわち、例えば、車輪40が管路Pの内壁面Sに押し付けられる力が小さいと、管内走行装置100が管路Pを走行する際に必要な摩擦力が十分に得られなくなり、管内走行装置100が管路Pを走行できなくなる。
そこで、第1リンク10と第2リンク20との角度を能動的に変更可能な能動関節部60は、トルク制御が可能である。このことで、能動関節部60が、第1リンク10と第2リンク20との角度を変更して車輪40を管路Pの内壁面Sに当接させる際のトルクを制御することで、管路Pの内壁面Sに車輪40を押し付ける力を、管路Pの内径を問わず十分なものにすることができる。よって、例えば、管路Pの内径が大きい場合に、車輪40と管路Pの内壁面Sとの間の摩擦力を十分にすることで、管内走行装置100が管路Pを走行できなくなることを抑えることができる。
【0061】
また、能動関節部60には、低摩擦ギアードモータが用いられる。このことで、管内走行装置100の電源が切れた時、能動関節部60が脱力する。よって、管内走行装置100が管路Pの内部で停止した時、管内走行装置100を管路Pから回収しやすくすることができる。
【0062】
また、第1球状車輪41及び第2球状車輪42の管軸Psまわりの角度を検出するエンコーダ50を更に備える。このことで、第1球状車輪41及び第2球状車輪42の角度を制御しやすくすることができる。
【0063】
また、車輪40の回転速度と、第1球状車輪41及び第2球状車輪42の管軸Psまわりの角度と、能動関節部60のトルクと、を操作可能な操作部70を更に備える。これにより、より管内走行装置100の操作を行いやすくすることができる。
【0064】
また、本実施形態に係る管内走行装置100の制御方法によれば、管内走行装置100が管路Pの屈曲部に進入する時、第1球状車輪41及び第2球状車輪42のそれぞれを、第1リンク10及び第2リンク20に対して、管軸Psまわりに回転しないように制御する。これにより、例えば、管内走行装置100が面内曲げの管路Pから管内走行装置100が面外曲げの管路Pに進入し、第1球状車輪41が管路Pの内壁面Sに接することで管軸Psまわりに回転する方向の力を受けた時、第1球状車輪41のみなど、管内走行装置100の一部が部分的に管軸Psまわりに回転するといったこと等が無く、管内走行装置100の全体が管軸Psまわりに回転する。このことで、面外曲げの管路P内で、管内走行装置100を管軸Psまわりにロール回転させることができる。よって、特殊な操作等をすることなく、また、事前に管路Pの幾何学情報を調査することなく、面外曲げの管路Pを走行可能な管内走行装置100とすることができる。
また、面外曲げの管路Pを走行中に細かな操作を作業者が行う必要がない為、管内走行装置100の操作をより容易にすることができる。
【0065】
また、能動関節部60のトルクを一定に制御する。このことで、第1リンク10と第2リンク20との角度を変更して車輪40を管路Pの内壁面Sに当接させる際に、管路Pの内壁面Sに車輪40を押し付ける力を、管路Pの内径を問わず十分なものにすることができる。よって、例えば、管路Pの内径が大きい場合に、車輪40と管路Pの内壁面Sとの間の摩擦力を十分にすることで、管内走行装置100が管路Pを走行できなくなることを抑えることができる。
また、例えば、管路Pの走行中に管路Pの内径が変化した場合においても、管路Pの内壁面Sに車輪40を押し付ける力が変化しないようにすることができる。
【0066】
また、本実施形態に係る管内走行装置100の制御プログラムによれば、管内走行装置100を作動させるための制御手段としてコンピュータを機能させる。これにより、管内走行装置100を随時操作しながら管路Pを走行させることができる。あるいは、管路Pを走行する管内走行装置100の状況を随時把握することができる。
【0067】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、撮像手段30は、一方の側及び他方の側を撮影可能とすると説明したが、これに限らない。すなわち、第1リンク10及び第2リンク20のそれぞれに設けられた撮像手段30のレンズの向きを変更することで、管軸Psに直交する方向を撮影可能としてもよい。あるいは、撮像手段30に全方位撮影可能のカメラを用いて、第1リンク10又は第2リンク20のいずれかのみに設けることで、1つの撮像手段30によって全方位を撮影可能としてもよい。
また、例えば、第1リンク10に対する第1球状車輪41の管軸Ps回りの角度、及び、第2リンク20に対する第2球状車輪42の管軸Ps回りの角度を、上述の実施形態の角度から変更し、それぞれの球状車輪41、42の備える半球状の車輪40のいずれかのみを管路Pに接する状態として、第1球状車輪41及び第2球状車輪42を回転軸41s、42sまわりに回転させることで、管内走行装置100が螺旋回転しながら直線状の管路Pを進むようにしてもよい。
また、本実施形態に係る管内走行装置100及びその制御方法によって、いわゆる伏せ越しの管路Pを走行してもよい。
また、本実施形態に係る方法によって車輪40を管路Pの内壁面Sに十分に押し付けることで、管内走行装置100を、鉛直方向に延びる管路Pの内部を走行させてもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 第1リンク
20 第2リンク
30 撮像手段
40 車輪
41 第1球状車輪
41m モータ
41s 回転軸
42 第2球状車輪
42m モータ
42s 回転軸
43 中央車輪
43a 本体部
43b ローラ
43s 回転軸
50 エンコーダ
51 第1エンコーダ
52 第2エンコーダ
60 能動関節部
60s 回転軸
70 操作部
71 操作画面
71a ロボット状態表示部
71b カメラ画像表示部
71c モータ状態表示部
71d 指示入力部
72 表示制御装置
100 管内走行装置
C ケーブル
I1 第1アイコン
I2 第2アイコン
I3 第3アイコン
I4 第4アイコン
I5 第5アイコン
I6 第6アイコン
I7 第7アイコン
I8 第8アイコン
JS 回転軸
P 管路
Ps 管軸
S 内壁面
S1 第1内壁面
S2 第2内壁面