IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センクシア株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-箱桁防錆用部材、箱桁防錆構造 図1
  • 特開-箱桁防錆用部材、箱桁防錆構造 図2
  • 特開-箱桁防錆用部材、箱桁防錆構造 図3
  • 特開-箱桁防錆用部材、箱桁防錆構造 図4
  • 特開-箱桁防錆用部材、箱桁防錆構造 図5
  • 特開-箱桁防錆用部材、箱桁防錆構造 図6
  • 特開-箱桁防錆用部材、箱桁防錆構造 図7
  • 特開-箱桁防錆用部材、箱桁防錆構造 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004682
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】箱桁防錆用部材、箱桁防錆構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/08 20060101AFI20250107BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
E01D19/08
E01D22/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104530
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 将希
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀宣
(72)【発明者】
【氏名】山口 大希
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA08
2D059GG21
(57)【要約】
【課題】 箱桁の強度を維持しつつ、内部への水の浸入を抑制することが可能な箱桁防錆用部材及びこれを用いた箱桁防錆構造を提供する。
【解決手段】 箱桁3の側面には、通気孔9が形成される。通気孔9によって、箱桁3の内部空間と外部とが連通する。通気孔9には、箱桁防錆用部材11が固定される。箱桁防錆用部材11の本体部19は、箱桁3の表面に溶接によって接合される。本体部9の開口部を覆うように遮水部材13が配置され、遮水部材13は固定部材21によって本体部19へ固定される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱桁に固定される箱桁防錆用部材であって、
中央部が開口する略リング状の本体部と、
前記本体部の開口部を覆うように配置される遮水部材と、
前記遮水部材を前記本体部へ固定する固定構造と、
を具備し、
前記遮水部材は、通気性を有し、水の浸入を抑制可能であることを特徴とする箱桁防錆用部材。
【請求項2】
前記遮水部材は、撥水処理が施されていることを特徴とする請求項1記載の箱桁防錆用部材。
【請求項3】
前記遮水部材は不織布であることを特徴とする請求項1記載の箱桁防錆用部材。
【請求項4】
前記固定構造は、磁石で構成された固定部材であり、前記固定部材と前記本体部とで前記遮水部材を挟み込んで固定可能であることを特徴とする請求項1記載の箱桁防錆用部材。
【請求項5】
前記固定構造は、孔を有する板状部材の固定部材であり、前記固定部材と前記本体部とで前記遮水部材を挟み込んでボルトで固定可能であることを特徴とする請求項1記載の箱桁防錆用部材。
【請求項6】
前記固定構造は、複数の孔を有する板状部材の固定部材であり、前記孔は、大径部と前記大径部よりも幅の狭い幅狭部とからなり、前記本体部には、前記孔に対応する部位にボルト状突起が設けられ、前記大径部の径が、前記ボルト状突起の頭部の径よりも大きく、前記幅狭部の幅が、前記ボルト状突起の頭部の径よりも狭く、前記ボルト状突起の軸の径よりも広く、
前記ボルト状突起の頭部を前記大径部に挿通した後に前記固定部材を移動させて、前記ボルト状突起の頭部を前記幅狭部に相対移動させることで、前記固定部材と前記本体部とで前記遮水部材を挟み込んで固定可能であることを特徴とする請求項1記載の箱桁防錆用部材。
【請求項7】
前記固定構造は、固定部材と、前記固定部材を前記本体部へ取り付けるための複数の取り付け部であり、前記取り付け部は、前記本体部の一端側から突出して、先端側が前記本体部の中心方向に向けて屈曲した形態であり、複数の前記取り付け部と前記本体部との間に前記固定部材と前記遮水部材を挿入することで、前記固定部材と前記本体部とで前記遮水部材を挟み込んで固定可能であることを特徴とする請求項1記載の箱桁防錆用部材。
【請求項8】
前記本体部は、相対的に径の大きなフランジ部と、前記フランジ部の一方の側に突出し、相対的に径の小さい突部とを有することを特徴とする請求項1記載の箱桁防錆用部材。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の箱桁防錆用部材を用いた箱桁防錆構造であって、
箱桁の少なくとも一部に通気孔が設けられ、
前記通気孔の外周部に前記箱桁防錆用部材が固定され、前記遮水部材によって前記通気孔からの水の浸入が抑制されることを特徴とする箱桁防錆構造。
【請求項10】
前記本体部は、相対的に径の大きなフランジ部と、前記フランジ部の一方の側に突出し、相対的に径の小さい突部とを有し、
前記フランジ部は、前記通気孔よりも径が大きく、前記突部が箱桁の内側から前記通気孔に挿入されて固定されることを特徴とする請求項9記載の箱桁防錆構造。
【請求項11】
前記突部の先端が、前記箱桁の外面から所定の長さ突出することを特徴とする請求項10記載の箱桁防錆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の鋼製の箱桁に固定され、箱桁内部の防錆のために用いられる箱桁防錆用部材及びこれを用いた箱桁防錆構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
箱桁は、温度変化によって内部に結露が生じ、腐食の要因となる。このため、箱桁内部の防錆が必要となる。鋼製箱桁内面の防錆方法としては、一般に塗装が行われている。しかし、揮発性有機化合物による人体の影響や環境への懸念から問題視されている。
【0003】
これに対し、他の解決方法として、箱桁の内部空間に除湿剤を設置し、湿度を制御する方法があるが、箱桁を構成する継ぎ手部のシーリング等により密閉性を確保する必要がある。また、箱桁内面の防錆に使用する除湿剤のシリカゲルは、吸湿と放出を半永久的に繰り返し、湿度を一定に保つとされているが、化学的な作用によるもので、効果は時間と共に低下する。
【0004】
また、除湿剤は、通常、各ダイヤフラム間に6~7kgが設置されるため、橋長50mでは、合計120kgが使用される(土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)資料)。しかし、箱桁の内部は空間が狭く、多量の除湿剤の設置や撤去(取替え)を手作業で行わなければならないため、作業性が悪い。
【0005】
これに対し、箱桁に対して、構造上力学上欠陥とならない位置に通気孔を設ける方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-161513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、通気孔を設けることによる強度低下の影響が出にくい部位に通気孔を設けるものであるため、位置の自由度が低い。また、通気孔から鳥などの侵入を防ぐために金網を配置することができるが、台風などのように強風を伴う雨の場合には、通気孔から水が浸入するおそれがある。また、特許文献1では、フードを設け、センサーとモーターとで蓋を閉じる構造も提案されているが、構造が複雑であり、その動作を保つためのメンテナンスがさらに必要となる。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、箱桁の強度を維持しつつ、内部への水の浸入を抑制することが可能な箱桁防錆用部材及びこれを用いた箱桁防錆構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、箱桁に固定される箱桁防錆用部材であって、中央部が開口する略リング状の本体部と、前記本体部の開口部を覆うように配置される遮水部材と、前記遮水部材を前記本体部へ固定する固定構造と、を具備し、前記遮水部材は、通気性を有し、水の浸入を抑制可能であることを特徴とする箱桁防錆用部材である。
【0010】
前記遮水部材は、撥水処理が施されていてもよい。
【0011】
前記遮水部材は不織布であることが望ましい。
【0012】
前記固定構造は、磁石で構成された固定部材であり、前記固定部材と前記本体部とで前記遮水部材を挟み込んで固定可能であってもよい。
【0013】
前記固定構造は、孔を有する板状部材の固定部材であり、前記固定部材と前記本体部とで前記遮水部材を挟み込んでボルトで固定可能であってもよい。
【0014】
前記固定構造は、複数の孔を有する板状部材の固定部材であり、前記孔は、大径部と前記大径部よりも幅の狭い幅狭部とからなり、前記本体部には、前記孔に対応する部位にボルト状突起が設けられ、前記大径部の径が、前記ボルト状突起の頭部の径よりも大きく、前記幅狭部の幅が、前記ボルト状突起の頭部の径よりも狭く、前記ボルト状突起の軸の径よりも広く、前記ボルト状突起の頭部を前記大径部に挿通した後に前記固定部材を移動させて、前記ボルト状突起の頭部を前記幅狭部に相対移動させることで、前記固定部材と前記本体部とで前記遮水部材を挟み込んで固定可能であってもよい。
【0015】
前記固定構造は、固定部材と、前記固定部材を前記本体部へ取り付けるための複数の取り付け部であり、前記取り付け部は、前記本体部の一端側から突出して、先端側が前記本体部の中心方向に向けて屈曲した形態であり、複数の前記取り付け部と前記本体部との間に前記固定部材と前記遮水部材を挿入することで、前記固定部材と前記本体部とで前記遮水部材を挟み込んで固定可能であってもよい。
【0016】
前記本体部は、相対的に径の大きなフランジ部と、前記フランジ部の一方の側に突出し、相対的に径の小さい突部とを有してもよい。
【0017】
第1の発明によれば、箱桁に通気孔を設けた際に、通気孔にリング状の箱桁防錆用部材を固定し補強部材として機能するため、通気孔の形成による箱桁の強度低下を抑制することができる。また、遮水部材によって、箱桁の内部への水の浸入を防ぐことができる。この際、箱桁防錆用部材の本体部が、遮水部材の取り付け部としての機能を兼ねるため、箱桁へ遮水部材を直接固定するための構造を形成する必要がなく、取付作業も容易である。
【0018】
また、遮水部材が不織布であれば、通気性を確保しつつ水の浸入を効率よく防ぐことができる。また、遮水部材に撥水処理が施されていことで、水が不織布に染み込んで箱桁内部へ浸入することをより確実に防ぐことができる。
【0019】
また、遮水部材を固定する固定部材が磁石であれば、遮水部材の固定及び交換作業が容易である。
【0020】
また、遮水部材を固定する固定部材が孔を有する板状部材であれば、より確実に遮水部材を固定することができる。
【0021】
また、固定部材に大径部と幅狭部を有する孔を設け、大径部にボルト状の突起の頭部を挿入して、頭部の位置に幅狭部が位置するように固定部材を移動させることで、ボルト締結を行うことなく、容易に遮水部材を固定することができる。
【0022】
また、本体部に固定部材を取り付けるための先端が屈曲した取り付け部を配置して、複数の取り付け部の屈曲部と本体部との間に固定部材と遮水部材を挿入することで、ボルト締結を行うことなく、容易に遮水部材を固定することができる。
【0023】
また、本体部が、相対的に径の大きなフランジ部と、フランジ部の一方の側に突出し、相対的に径の小さい突部とを有すれば、突部によって、通気孔と本体部との軸芯の調整が容易であり、フランジ部によって箱桁への挿入方向(軸方向)の位置決めが容易である。
【0024】
第2の発明は、第1の発明にかかる箱桁防錆用部材を用いた箱桁防錆構造であって、箱桁の少なくとも一部に通気孔が設けられ、前記通気孔の外周部に前記箱桁防錆用部材が固定され、前記遮水部材によって前記通気孔からの水の浸入が抑制されることを特徴とする箱桁防錆構造である。
【0025】
前記本体部は、相対的に径の大きなフランジ部と、前記フランジ部の一方の側に突出し、相対的に径の小さい突部とを有し、前記フランジ部は、前記通気孔よりも径が大きく、前記突部が箱桁の内側から前記通気孔に挿入されて固定されることが望ましい。
【0026】
前記突部の先端が、前記箱桁の外面から所定の長さ突出することが望ましい。
【0027】
第2の発明によれば、箱桁の強度低下を抑制するとともに、箱桁内部の通気性を確保し、外部からの水の浸入を防ぐことができる。この際、本体部に遮水部材が固定されるため、本体部を箱桁に取り付けるだけで、作業を行うことができる。
【0028】
また、本体部が、相対的に径の大きなフランジ部と、フランジ部の一方の側に突出し、相対的に径の小さい突部とを有すれば、突部を通気孔に挿入することで、通気孔と本体部との軸芯の調整が容易であり、フランジ部を箱桁内面に当接させることで箱桁への挿入方向(軸方向)の位置決めが容易である。
【0029】
また、突部を箱桁の外面に突出させることで、箱桁側面を伝って流下する水滴が通気孔に浸入することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、箱桁の強度を維持しつつ、内部への水の浸入を抑制することが可能な箱桁防錆用部材及びこれを用いた箱桁防錆構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】箱桁防錆用部材11が取り付けられた箱桁3を示す図。
図2図1のA-A線断面図。
図3】(a)はB部拡大図、(b)は他の実施形態を示す図。
図4】(a)、(b)は、遮水部材13の固定方法について、他の実施形態を示す図。
図5】(a)~(c)は、遮水部材13の固定方法について、他の実施形態を示す図。
図6】遮水部材13の固定方法について、他の実施形態を示す図。
図7】(a)、(b)は、遮水部材13の固定方法について、他の実施形態を示す図。
図8】(a)、(b)は、本体部19の固定方法について、他の実施形態を示す図。
【0032】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、箱桁防錆用部材11が取り付けられた箱桁3を示す図であり、図2は、箱桁防錆構造10を示す図であり、図1のA-A線断面図である。本実施形態では、橋梁1における箱桁3に箱桁防錆用部材11が固定される。橋梁1は、所定の間隔で設置された橋脚7の上に所定長さの箱桁3が配置され、箱桁3上に、主桁5が配置されて構成される。なお、箱桁3は、橋梁1における図示した配置構造でなくてもよい。
【0033】
箱桁3は、例えば鋼製箱桁であり、少なくとも箱桁3の内部の空間には、鋼材が露出する。箱桁3の側面には、通気孔9が形成される。通気孔9によって、箱桁3の内部空間と外部とが連通する。なお、通気孔9は、箱桁3に少なくとも1か所配置されればよく、図示したように、複数個所に配置されていてもよい。また、図2に示すように、通気孔9は、箱桁3の対向する両側面の同一個所に配置されてもよく、それぞれの側面に形成される通気孔9の配置を、長手方向にずらしてもよい。また、通気孔9を箱桁3の底面側に形成してもよい。すなわち、通気孔9は、箱桁3の少なくとも一部に設けられればよい。
【0034】
箱桁3のそれぞれの通気孔9には、箱桁防錆用部材11が固定される。図3(a)は、図2のB部拡大図である。箱桁防錆用部材11は、本体部19、遮水部材13、固定部材21等から構成される。本体部19は、鋼製であり、中央部が開口する略リング状の部材である。本体部19は、相対的に径の大きなフランジ部17と、フランジ部17の一方の側に突出し、相対的に径の小さい突部15とを有する。
【0035】
フランジ部17の外径は、通気孔9の内径よりも大きく、突部15の外径は、通気孔9の内径よりもわずかに小さい。このため、突部15を通気孔9に挿入すると、フランジ部17の側面が箱桁3の表面に当接する。すなわち、突部15によって、箱桁3に対する位置決めが可能であり、フランジ部17によって、本体部19の通気孔9への挿入長さを規定することができる。
【0036】
本体部19は、箱桁3の表面に溶接によって接合される。図示した例では、フランジ部17の外周面が箱桁3に対して溶接される。すなわち、本体部19は、通気孔9の外周部に固定される。
【0037】
なお、図示したように、本体部19の突部15は、箱桁3の内側から通気孔9に挿入されて固定される。このようにすることで、箱桁3の内側から取付作業等を行うことができる。なお、箱桁3の外側から作業が可能であれば、本体部19の突部15を、箱桁3の外側から通気孔9に挿入して固定してもよい。
【0038】
ここで、突部15を箱桁3の内側から挿入した際、突部15の先端が、箱桁3の外面から所定の長さ突出することが望ましい。すなわち、フランジ部17から突部15の端部までの長さは、箱桁3の壁厚よりも長いことが望ましい。このようにすることで、箱桁3の外面側を水滴が流下する場合でも、突部15によって水滴が通気孔9の内部の流入することを抑制することができる。
【0039】
なお、本体部19の形状は円形でなくてもよく、通気孔9の形状に合わせて任意の形状とすることができる。
【0040】
本体部19の開口部を覆うように、箱桁3の内面側には遮水部材13が配置され、遮水部材13は固定部材21によって本体部19へ固定される。遮水部材13は、水の浸入を抑制可能である部材である。遮水部材13としては、例えば、不織布やシリコンゴム等の通気性を有する部材であることが望ましい。特に、不織布等に撥水処理が施されていれば、水滴が不織布等に染み込むことがなく、水を弾いて箱桁3内への流入を防ぐことができる。なお、通気性のない遮水部材13であっても、温度変化等の所定の条件の際に、容易に遮水部材13を通気孔9から着脱可能であれば、通気孔9を開放することができるため、箱桁内での結露を抑制することができる。しかし、通気性を有すれば、このような作業は不要である。
【0041】
固定部材21は孔(本体部19の開口部に対応する孔)を有する板状部材である。固定部材21と本体部19とで遮水部材13を挟み込んだ状態で、ボルト23によって遮水部材13を本体部19へ着脱可能に固定可能である。このようにすることで、遮水部材13を、箱桁3の外面よりも箱桁3の内部側に配置することができるため、箱桁3の外部の風等の影響を抑制することができる。
【0042】
なお、図3(b)に示すように、リング状の固定部材21に変えて、多数の孔を有する固定部材21aを用いてもよい。固定部材21aは、例えばパンチングメタルなどのように多数の小孔を有する板状部材や、網体などである。このような固定部材21aを用いることで、本体部19の開口部に位置する遮水部材13を内面側から支持することができる。また、一対の固定部材21aを用いて、遮水部材13を固定部材21aで挟み込んだ状態で本体部19へ固定してもよい。また、本体部19の開口部自体を複数の孔で形成してもよい。
【0043】
また、図4(a)に示すように、磁石で構成された固定部材21bを用いてもよい。前述したように、本体部19が鋼製であるため、固定部材21bで遮水部材13を挟み込んで固定することができる。このようにすることで、遮水部材13の設置作業や交換作業等の着脱が容易となる。
【0044】
また、図4(b)に示すように、爪25を用いてもよい。前述した各実施形態では、遮水部材13を固定する固定構造として、固定部材を用いたが、本体部19に設けられた爪25に遮水部材13を突き刺して、遮水部材13を固定してもよい。爪25の先端に返しがついていれば、遮水部材13が本体部19から外れることを抑制し、容易に遮水部材13の固定構造を形成することができる。
【0045】
また、図5(a)に示すように、孔29を有する固定部材21cを用いてもよい。略リング状(円形)の固定部材の周縁部近傍には、複数の孔29が形成される。孔29は、一端側が相対的にサイズの大きな大径部29aであり、他端側が相対的に幅の狭い幅狭部29bとなる。固定部材21cには、複数の孔29が、大径部29a側(幅狭部29b側)が同一の周方向に向くように、所定の間隔で配置される。
【0046】
図5(b)に示すように、本体部19には、固定部材21cの孔29に対応する部位に、ボルト23が配置される。この際、孔29の大径部29aの径は、ボルト23の頭部の径よりも大きい。また、孔29の幅狭部29bの幅は、ボルト23の頭部の径よりも狭く、軸の径よりも広い。このため、それぞれの孔29の大径部29aにボルト23を挿通することができる。
【0047】
この状態で、図5(c)に示すように、固定部材21cを本体部19に回転させることで、ボルト23の頭部が孔29の幅狭部29bに相対移動して、ボルト23の頭部によって固定部材21cが本体部19に固定される。なお、遮水部材13に対しても、固定部材21cと同様の孔を形成してもよく、又は、遮水部材13は、ボルト23が貫通する円形の孔だけ設けておいて、遮水部材13及び本体部19に対して、固定部材21cのみを相対的に回転させてもよい。
【0048】
このように、孔29にボルト23の頭部をひっかけるようにすることで、ボルト23を個々に締める必要がなく、固定部材21c等の脱着が容易となる。なお、本体部19に固定されるのはボルトでなくてもよく、ボルト状の形状を有した突起であればよい。すなわち、本体部19に孔29に対応する部位にボルト状突起が設けられ、大径部29aの径が、ボルト状突起の頭部の径よりも大きく、幅狭部29bの幅が、ボルト状突起の頭部の径よりも狭く、ボルト状突起の軸の径よりも広ければよい。
【0049】
なお、図6に示すように、孔29の向きを周方向に揃えるのではなく、一方の方向(図では上下方向)に揃えた固定部材21dを用いてもよい。例えば、図示したように、大径部29aが下方に向くように配置することで、本体部19のボルト23を大径部29aに挿通した後、自重で固定部材21dが下方にずれるため、この際に、ボルトの頭部が孔29の幅狭部29bに相対移動し、固定部材21dを本体部19へ容易に固定することができる。
【0050】
このように、ボルト状突起の頭部を大径部に挿通した後に、固定部材を本体部19に対して相対的に移動させ、ボルト状突起の頭部を幅狭部29bに移動させることができれば、移動方向は特に限定されない。
【0051】
また、図7(a)、図7(b)に示すように、遮水部材13の固定構造として、固定部材を取り付けるための取り付け部31を設けてもよい。取り付け部31は、例えば本体部19の一端側に(端面に対してほぼ垂直に)突出するように、所定の間隔で複数個所に配置され、それぞれの先端が、本体部19の中心方向に向かって屈曲した略L字型の形態である。
【0052】
複数の取り付け部31(の先端屈曲部)と本体部19との間に、ねじ孔等の構造を有しない板状の固定部材21eと遮水部材13とを重ねて挿入することで、本体部19に固定部材21eと遮水部材13とが固定される。なお、固定部材21eと遮水部材13を取り付け部31の屈曲部に挿入する際には、遮水部材13及び固定部材21eを撓ませればよい。または、取り付け部31を本体部19に対して着脱可能とするか、周方向に移動可能としてもよい。
【0053】
また、前述したように、2枚の固定部材21eの間に、遮水部材13を挟み込んでもよい。なお、本発明では、このような場合でも、遮水部材13は、一方の固定部材21eと本体部19とで(他方の固定部材21eを介して)挟み込まれて固定されるものとする。
【0054】
また、前述した各実施形態では、本体部19が箱桁3へ溶接によって固定される例を説明したが、図8(a)に示すように、ボルト27によって本体部19(フランジ部17)を箱桁3へ固定してもよい。このようにすることで、溶接ができない場所においても、取付作業を行うことができる。
【0055】
また、図8(b)に示すように、溶接によって本体部19を固定する場合でも、フランジ部17ではなく、突部15を箱桁3へ溶接してもよい。この場合には、突部15を先端に行くにつれて徐々に外径が小さくなるようにテーパ形状として、通気孔9の内面と突部15の外面との間で溶接を行うことができる。
【0056】
なお、箱桁防錆構造10は、既存の橋梁等の箱桁3へ施工することもできるし、新設の箱桁に対して適用することもできる。既存の箱桁3へ施工する場合には、まず、既存の箱桁3の一部に通気孔を形成し、箱桁防錆用部材11の本体部19を箱桁3へ固定する。その後、遮水部材13をそれぞれの本体部19へ固定すればよい。
【0057】
一方、新設の箱桁3へ適用する場合には、箱桁3を構成するパーツの一部にあらかじめ通気孔9を形成し、通気孔9へ本体部19を固定しておく。その後、現場にパーツを運搬して現場で箱桁3を組み立てて設置し、最後に、それぞれの本体部19へ遮水部材13を取り付ければよい。なお、遮水部材13の取り付けまでを箱桁の組み立て前に行っておいてもよい。
【0058】
以上、本実施の形態によれば、箱桁3に通気孔9を形成することで、箱桁内部での結露の発生を抑制し、結露による発錆を抑制することができる。また、通気孔9の外周部に本体部19が固定されるため、通気孔9を補強し、通気孔9の形成に伴う強度低下を抑制することができる。このため、通気孔9の形成位置の制約が少なく、任意の位置に、任意の個数の通気孔9を形成することができる。このため、例えば、長期密閉による炭酸ガス濃度の上昇等を抑制することができるとともに、箱桁3の内部作業時の明り取りとして利用することもできる。
【0059】
また、本体部19には遮水部材13を固定することができるため、外部から箱桁3の内部への水や小動物の浸入を防ぐことができる。この際、遮水部材13を本体部19へ固定するための固定部材(固定構造)を有するため、固定作業が容易であるとともに、遮水部材13を固定するための構造を箱桁3へ形成する必要がない。
【0060】
なお、遮水部材13としては、通気ができて水の浸入を防ぐことができればよく、例えばルーバー状の部材であってもよい。また、遮水部材13は、箱桁3の内側において本体に19に固定されたが、本体部19の内外(箱桁3の内外)に二重で設置してもよい。この際、内外の遮水部材13を異なるものとしてもよい。
【0061】
また、本体部19にフランジ部17と突部15を設けることで、本体部19の固定時の位置決めが容易である。また、突部15が箱桁3の外部の突出し、通気孔9の外周部に庇が形成されるため、より確実に通気孔9への水の浸入を抑制することができる。
【0062】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
例えば、各図で説明した実施形態は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1………橋梁
3………箱桁
5………主桁
7………橋脚
9………通気孔
10………箱桁防錆構造
11………箱桁防錆用部材
13………遮水部材
15………突部
17………フランジ部
19………本体部
21、21a、21b………固定部材
23………ボルト
25………爪
27………ボルト
29………孔
29a………大径部
29b………幅狭部
31………取り付け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8