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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004691
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両用表示システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20250107BHJP
   B60R 1/23 20220101ALI20250107BHJP
【FI】
B60R11/02 C
B60R1/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104550
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本崎 正規
【テーマコード(参考)】
3D020
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BA20
3D020BB01
3D020BC04
3D020BD08
3D020BE03
(57)【要約】
【課題】後席乗員用のディスプレイを備えた構造において、後席乗員の快適性を向上できる車両用表示システムを得る。
【解決手段】車両用表示システムは、車室内に設けられて情報を表示可能な表示面を備えたディスプレイと、前記ディスプレイを、前記表示面が後席側へ向く使用位置と、後席の上方で天井部に沿って配置されて前記表示面が下方へ向く格納位置との間で移動させる移動機構と、車両の上方を撮影するカメラと、前記ディスプレイが前記格納位置にある状態で、前記カメラで撮影された映像を取得して前記ディスプレイに表示させる制御部と、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられて情報を表示可能な表示面を備えたディスプレイと、
前記ディスプレイを、前記表示面が後席側へ向く使用位置と、後席の上方で天井部に沿って配置されて前記表示面が下方へ向く格納位置との間で移動させる移動機構と、
車両の上方を撮影する上方カメラと、
前記ディスプレイが前記格納位置にある状態で、前記上方カメラで撮影された映像を取得して前記ディスプレイに表示させる制御部と、
を有する車両用表示システム。
【請求項2】
前記天井部は、前記ディスプレイが前記格納位置にある状態で、少なくとも前記ディスプレイと隣接する部分が透明材料によって形成されている、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項3】
前記ディスプレイは、車室内の車両幅方向一端部から他端部まで延在されている、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記ディスプレイが前記使用位置にある状態で、車両前方を撮影した映像を前記ディスプレイに表示可能に構成されている、請求項1に記載の車両用表示システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記ディスプレイが前記格納位置にある状態で後席シートが所定の角度以上後傾した場合、映像の表示を停止する、請求項1に記載の車両用表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室内の天井部に後席用ディスプレイが設置された構造が開示されている。特許文献1に記載の後席用ディスプレイは、使用時に表示面を後席の乗員へ向けた状態とし、使用しない場合には、天井部に沿った位置に回動させて収納する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-82835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された後席用ディスプレイでは、収納された状態であっても後席の乗員から視認されるため、見栄えが悪い。また、頭上にディスプレイが配置されるため、乗員が圧迫感を覚える可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、後席乗員用のディスプレイを備えた構造において、後席乗員の快適性を向上できる車両用表示システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る車両用表示システムは、車室内に設けられて情報を表示可能な表示面を備えたディスプレイと、前記ディスプレイを、前記表示面が後席側へ向く使用位置と、後席の上方で天井部に沿って配置されて前記表示面が下方へ向く格納位置との間で移動させる移動機構と、車両の上方を撮影する上方カメラと、前記ディスプレイが前記格納位置にある状態で、前記上方カメラで撮影された映像を取得して前記ディスプレイに表示させる制御部と、を有する。
【0007】
請求項1に係る車両用表示システムでは、ディスプレイは、車室内に設けられて情報を表示可能な表示面を備えている。また、移動機構は、ディスプレイを、表示面が後席側へ向く使用位置と、後席の上方で天井部に沿って配置されて表示面が下方へ向く格納位置との間で移動させる。これにより、乗員がディスプレイを使用しない場合には、ディスプレイを格納位置まで移動させることで、乗員の視界が遮られるのを抑制できる。
【0008】
また、車両用表示システムは、車両の上方を撮影する上方カメラを備えており、ディスプレイが格納位置にある状態で、カメラで撮影された映像を取得してディスプレイに表示させる。これにより、車室内の乗員がディスプレイを通じて車室外の景色を視認することができ、視界を広く確保できる。
【0009】
請求項2に係る車両用表示システムは、請求項1において、前記天井部は、前記ディスプレイが前記格納位置にある状態で、少なくとも前記ディスプレイと隣接する部分が透明材料によって形成されている。
【0010】
請求項2に係る車両用表示システムでは、透明材料で形成された天井部と格納位置のディスプレイとが隣接しているため、ディスプレイと天井部を含む広範囲で車室外の景色を視認できる。
【0011】
請求項3に係る車両用表示システムは、請求項2において、前記ディスプレイは、車室内の車両幅方向一端部から他端部まで延在されている。
【0012】
請求項3に係る車両用表示システムでは、ディスプレイが車室内の一端部から他端部まで延在された大型のディスプレイであるため、使用時には、映像の臨場感を得ることができる。また、格納時であっても、ディスプレイの表示面の全域に車両上方の景色を映すことで、ディスプレイの圧迫感を覚えずに済む。
【0013】
請求項4に係る車両用表示システムは、請求項1において、前記制御部は、前記ディスプレイが前記使用位置にある状態で、車両前方を撮影した映像を前記ディスプレイに表示可能に構成されている。
【0014】
請求項4に係る車両用表示システムでは、ディスプレイが使用位置にある状態であっても、使用していない場合に、車両前方の景色を映すことで、車両前方の障害物や走行経路を把握でき、運転席の圧迫感を覚えずに済む。
【0015】
請求項5に係る車両用表示システムは、請求項1において、前記制御部は、前記ディスプレイが前記格納位置にある状態で後席シートが所定の角度以上後傾した場合、映像の表示を停止する。
【0016】
請求項5に係る車両用表示システムでは、後席シートが所定の角度以上後傾した場合に映像の表示を停止することで、ディスプレイによって視界を遮ることができ、乗員の入眠を妨げるのを抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る車両用表示システムによれば、後席乗員用のディスプレイを備えた構造において、後席乗員の快適性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る車両用表示システムが適用された車両の車両幅方向外側から見た概略図であり、ディスプレイが使用位置にある状態を示す図である。
図2】実施形態に係る車両用表示システムが適用された車両の車両幅方向外側から見た概略図であり、ディスプレイが格納位置にある状態を示す図である。
図3】実施形態に係る車両用表示システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る車両用表示システムの機能構成を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る車両用表示システムによる表示処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態に係る車両用表示システム10が適用された車両Vについて、図面を参照して説明する。なお、各図の矢印FR及び矢印UPはそれぞれ、車両前側及び車両上側を示している。前後左右上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両幅方向の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0020】
図1は、実施形態に係る車両用表示システム10(以下、適宜「表示システム10」と称する。)が適用された車両の車両幅方向外側から見た概略図であり、ディスプレイ12が使用位置にある状態を示す図である。図1に示されるように、車両Vは、一例として、前席シート14と後席シート16を備えている。
【0021】
前席シート14は、左右に並んで配置されており、前席シート14の一方が運転席となっており、前席シート14の他方が助手席となっている。また、左右の前席シート14はそれぞれ、シートクッションに対するシートバックの角度を変更できるように構成されている。後席シート16は、左右に繋がって配置されている。なお、後席は、車両幅方向に3つのシートが配置された構造としてもよい。
【0022】
ここで、車両Vの天井部18には、ディスプレイ12が設けられている。天井部18は、主として、前側透明部18Aと、後側透明部18Bと、クロスメンバ20とを含んで構成されている。
【0023】
前側透明部18Aは、天井部18の前側に配置されており、強化ガラスや強化樹脂などの透明材料によって形成されている。また、前側透明部18Aは、車両上部を車両前後方向に延在された左右一対のルーフサイドレールの間に架設されている。車室外部の景色を視認可能に構成されている。
【0024】
後側透明部18Bは、クロスメンバ20を介して前側透明部18Aの後方側に配置されており、強化ガラスや強化樹脂などの透明材料によって形成されている。また、後側透明部18Bは、前側透明部18Aと同様に左右一対のルーフサイドレールの間に架設されている。また、クロスメンバ20は、前側透明部18Aと後側透明部18Bとの間に配置されており、左右のルーフサイドレールを車両幅方向に繋いだ骨格部材となっている。なお、前側透明部18A及び後側透明部18Bは、少なくとも一部が遮光できるように構成されてもよい。例えば、通電することで遮光する調光部材などを備えていてもよい。
【0025】
ディスプレイ12は、車室内に設けられて情報を表示可能な表示面12Aを備えている。また、図1では、ディスプレイ12は使用位置に配置されており、この状態では、表示面12Aが後席シート16へ向けられている。
【0026】
本実施形態のディスプレイ12は、車室内の車両幅方向一端部から他端部まで延在されている。また、ディスプレイ12は、後側透明部18Bと隣接して配置されており、移動機構46(図3参照)によって後側透明部18Bの下面に沿って前後に移動できるように構成されている。
【0027】
具体的には、ディスプレイ12は、図1に示される使用位置と、図2に示される格納位置との間で移動可能に構成されている。例えば、ディスプレイ12の上端部は、車室上部の左右に設けられて前後方向に延在されたスライド溝22にスライド可能に係合されており、図示しないモータの動力によってスライド溝22に沿って所定の位置まで前後にスライド可能となっている。
【0028】
図1の状態から、ディスプレイ12の下端部を車両前方へ回動させることで、図2に示されるように表示面12Aが下方へ向く。そして、この状態でディスプレイ12を天井部18に沿ってスライドさせることで、格納位置まで移動するように構成されている。なお、ディスプレイ12の移動は、移動機構46によって自動的に行われてもよく、移動機構46を構成するスライド溝22に沿って手動でディスプレイ12を移動させる構成でもよい。
【0029】
また、本実施形態では一例として、ディスプレイ12が格納位置にある状態では、ディスプレイ12の前後が透明の後側透明部18Bとなっており、後席シート16の真上よりもやや前側前方に位置している。
【0030】
(車両用表示システム10のハードウェア構成)
図3に示されるように、表示システム10は、制御部30を備えている。制御部30は、CPU32、ROM34、RAM36、ストレージ38、通信インターフェース(通信I/F)40及び入出力インターフェース(入出力I/F)42を含んで構成されている。各構成は、内部バス44を介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU32は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU32は、ROM34又はストレージ38からプログラムを読み出し、RAM36を作業領域としてプログラムを実行する。また、CPU32は、ROM34又はストレージ38に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0032】
ROM34は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM36は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ38は、HDD又はSSDにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する非一時的記録媒体である。
【0033】
通信I/F40は、サーバ及び他の機器と通信するためのーフェースであり、たとえば、CAN(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0034】
入出力I/F42には、ディスプレイ12、移動機構46、上方カメラ48及び前方カメラ50が電気的に接続されている。例えば、乗員が図示しない入力部を通じて制御部30へ映像の表示に関する信号を入力することで、制御部30からディスプレイ12へ映像を表示する信号が送信される。
【0035】
移動機構46は、例えば、図示しないモータなどを含んで構成されており、制御部30から駆動モータに対して電力を供給する信号を送信することで、モータが作動してディスプレイ12を移動させる。また、移動機構46は、ディスプレイ12の位置を検知可能に構成されており、ディスプレイ12の位置に関する信号を制御部30へ送信する。
【0036】
さらに、移動機構46は、ディスプレイ12を所定の位置でロックさせるロック装置を備えており、ディスプレイ12が使用位置に移動した後、ロック装置によってディスプレイ12の移動がロックされる。同様に、ディスプレイ12が格納位置に移動した後、ロック装置によってディスプレイ12の移動がロックされる。
【0037】
上方カメラ48は、例えば、車両Vの上面に設けられており、上方を撮影するカメラである。上方カメラ48によって撮影された画像は、制御部30のストレージ38又は外部のサーバなどに格納される。なお、上方カメラ48は、常時車両Vの上方を撮影してもよく、所定のタイミングで撮影してもよい。
【0038】
前方カメラ50は、例えば、車両Vの前部に設けられており、車両前方を撮影するカメラである。前方カメラ50によって撮影された画像は、制御部30のストレージ38又は外部のサーバなどに格納される。なお、前方カメラ50は、車両前方の障害物や先行車両との車間距離を検出するためのカメラを用いてもよい。
【0039】
(車両用表示システム10の機能構成)
車両用表示システム10の制御部30は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。制御部30が実現する機能構成について図4を参照して説明する。
【0040】
図4に示されるように、制御部30は、機能構成として、上方画像取得部52、前方画像取得部54、ディスプレイ位置取部56、ディスプレイ移動部58及び画像出力部60を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU32がROM34又はストレージ38に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0041】
上方画像取得部52は、車両上方を撮影した画像を取得する。具体的には、上方画像取得部52は、上方カメラ48によって撮影された画像を取得する。前方画像取得部54は、車両前方を撮影した画像を取得する。具体的には、前方画像取得部54は、前方カメラ50によって撮影された画像を取得する。
【0042】
ディスプレイ位置取部56は、ディスプレイ12の現在位置に関する情報を取得する。具体的には、ディスプレイ位置取部56は、移動機構46によって検知されたディスプレイ12の位置情報を取得する。特に、本実施形態のディスプレイ位置取部56は、ディスプレイ12位置が使用位置であるか格納位置であるかについての情報を取得してもよい。
【0043】
ディスプレイ移動部58は、乗員によってディスプレイ12を所定の位置へ移動させる内容の信号を取得した際に、移動機構46によってディスプレイ12を所定の位置まで移動させる。例えば、ディスプレイ12が使用位置にある状態において、乗員が図示しない入力装置を介してディスプレイ12を格納させる旨の指示を行った場合、ディスプレイ移動部58は、移動機構46によってディスプレイ12を使用位置から格納位置まで移動させる。
【0044】
画像出力部60は、ディスプレイ12に所定の画像を出力する。具体的には、画像出力部60は、通常の使用時には、使用位置にある状態で、乗員が選択した映像を出力する。また、画像出力部60は、ディスプレイ12が格納位置にある状態で、乗員から特別な指示を受けていない場合、上方画像取得部52によって取得した映像をディスプレイ12に表示させる。なお、本実施形態では一例として、ディスプレイ12の表示面12Aは、縁が無い、又は縁が殆ど無いため、下方へ向けたディスプレイ12の全体に車両上方の画像が表示される。
【0045】
さらに、画像出力部60は、ディスプレイ12が使用位置にある状態で、他の映像が表示されていない非使用時には、車両前方を撮影した映像をディスプレイ12に表示する。すなわち、画像出力部60は、前方画像取得部54によって取得された画像をディスプレイ12に表示する。
【0046】
さらにまた、画像出力部60は、ディスプレイ12が格納位置にある状態で後席シート16が所定の角度以上後傾した場合、映像の表示を停止してもよい。他に、後席シート16に着座した乗員を撮影するカメラを備えている場合、カメラで撮影された画像に基づいて乗員の覚醒度が所定の閾値以下になった場合に映像の表示を停止してもよい。
【0047】
(作用)
次に、本実施形態に係る表示システム10の作用を説明する。
【0048】
本実施形態の表示システム10による表示処理の流れの一例について、図5に示されるフローチャートを用いて説明する。これらの表示処理は、CPU32がROM34又はストレージ38から表示プログラムを読み出して、RAM36に展開して実行することによって実行される。
【0049】
(表示処理の一例)
CPU32は、ステップS102でディスプレイ12の位置情報を取得する。具体的には、CPU32は、ディスプレイ位置取部56の機能によって移動機構46が検出したディスプレイ12の位置情報を取得する。
【0050】
CPU32は、ステップS104でディスプレイ12が格納位置にあるか否かについて判定する。具体的には、CPU32は、ディスプレイ位置取部56が取得した位置情報に基づいてディスプレイ12が格納位置にあると判定した場合、ステップS106の処理へ移行する。また、CPU32は、ディスプレイ12が格納位置とは異なる位置にあると判定した場合、ステップS110の処理へ移行する。
【0051】
CPU32は、ステップS106で車両Vの上方の画像を取得する。具体的には、CPU32は、上方画像取得部52の機能によって上方カメラ48が撮影した画像を取得する。
【0052】
続いて、CPU32は、ステップS108で取得した画像をディスプレイ12に出力する。具体的には、CPU32は、画像出力部60の機能によってディスプレイ12に車両上方の画像を出力する。そして、表示処理を終了する。これにより、乗員が天井部18を見上げると、後側透明部18B及びディスプレイ12を介して空が見える。
【0053】
一方、CPU32は、ステップS104が否定判定された場合、ステップS110でディスプレイ12が非使用中であるか否かについて判定する。具体的には、CPU32は、ディスプレイ12に映像が映されていない場合、使用されていない非使用状態であると判定してステップS112の処理へ移行する。また、CPU32は、ディスプレイ12に映像が映されている場合、この状態を維持したまま表示処理を終了する。
【0054】
ディスプレイ12が非使用中の場合、CPU32は、ステップS112で車両前方の画像を取得する。具体的には、CPU32は、前方画像取得部54の機能によって前方カメラ50が撮影した画像を取得する。
【0055】
続いて、CPU32は、ステップS114で取得した画像をディスプレイ12に出力する。具体的には、CPU32は、画像出力部60の機能によってディスプレイ12に車両前方の画像を出力する。そして、表示処理を終了する。これにより、乗員の前方には、車両前方の景色が映される。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る表示システム10では、移動機構46は、ディスプレイ12を、表示面12Aが後席側へ向く使用位置と、後席の上方で天井部18に沿って配置されて表示面12Aが下方へ向く格納位置との間で移動させる。これにより、乗員がディスプレイ12を使用しない場合には、ディスプレイ12を格納位置まで移動させることで、乗員の視界が遮られるのを抑制できる。
【0057】
また、本実施形態に係る車両用表示システム10では、ディスプレイ12が格納位置にある状態で、上方カメラ48で撮影された映像がディスプレイ12に表示される。これにより、車室内の乗員がディスプレイ12を通じて車室外の景色を視認することができ、視界を広く確保できる。
【0058】
特に、本実施形態では、格納位置のディスプレイ12と後側透明部18Bとが隣り合って配置されているため、ディスプレイ12と天井部18を含む広範囲で車室外の景色を視認できる。
【0059】
また、本実施形態では、ディスプレイ12が車室内の一端部から他端部まで延在された大型のディスプレイであるため、使用時には、映像の臨場感を得ることができる。また、格納時であっても、ディスプレイの表示面の全域に車両上方の景色を映すことで、大型のディスプレイであっても圧迫感を覚えずに済む。
【0060】
さらに、本実施形態では、ディスプレイ12が使用位置にある状態であっても、使用していない場合に、車両前方の景色を映すことで、車両前方の障害物や走行経路を把握でき、運転席の圧迫感を覚えずに済む。
【0061】
さらにまた、本実施形態では、後席シート16が所定の角度以上後傾した場合に映像の表示を停止することで、ディスプレイ12によって視界を遮ることができ、乗員の入眠を妨げるのを抑制できる。
【0062】
以上、本実施形態に係る車両用表示システム10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、図1及び図2に示されるように、前側透明部18A、後側透明部18B及びクロスメンバ20を含んで天井部18を構成したが、これに限定されず、クロスメンバ20を備えない構成としてもよい。この場合、ディスプレイ12を除いて天井部の全体が透明材料で形成されることとなり、より解放感が得られる。
【0063】
また、上記実施形態では、移動機構46を構成するモータの動力によってディスプレイ12を使用位置と格納位置との間で移動させる構成としたが、これに限定されない。例えば、スライド溝22に沿ってディスプレイ12を手動で移動可能な構成を採用してもよい。この場合、スライド溝22と、スライド溝22と係合してディスプレイ12を支持するシャフトと、スライド溝22の内側に配置されたベアリングなどを含んで本発明の移動機構が構成される。
【0064】
さらに、上記実施形態では、上方カメラ48によって車両上方を撮影し、前方カメラ50によって車両前方を撮影したが、これに限定されず、1台のカメラで車両Vの上方及び前方を撮影してもよい。例えば、ディスプレイ12が使用位置にある状態ではカメラを車両前方へ向け、ディスプレイ12が格納位置へ移動した場合にカメラを車両上方へ向けても良い。
【0065】
上記実施形態に関して、以下の付記を開示する。
【0066】
(付記1)
車室内に設けられて情報を表示可能な表示面を備えたディスプレイと、
前記ディスプレイを、前記表示面が後席側へ向く使用位置と、後席の上方で天井部に沿って配置されて前記表示面が下方へ向く格納位置との間で移動させる移動機構と、
車両の上方を撮影する上方カメラと、
前記ディスプレイが前記格納位置にある状態で、前記上方カメラで撮影された映像を取得して前記ディスプレイに表示させる制御部と、
を有する車両用表示システム。
(付記2)
前記天井部は、前記ディスプレイが前記格納位置にある状態で、少なくとも前記ディスプレイと隣接する部分が透明材料によって形成されている、付記1に記載の車両用表示システム。
(付記3)
前記ディスプレイは、車室内の車両幅方向一端部から他端部まで延在されている、付記1又は付記2に記載の車両用表示システム。
(付記4)
前記制御部は、前記ディスプレイが前記使用位置にある状態で、車両前方を撮影した映像を前記ディスプレイに表示可能に構成されている、付記1~付記3の何れか1に記載の車両用表示システム。
(付記5)
前記制御部は、前記ディスプレイが前記格納位置にある状態で後席シートが所定の角度以上後傾した場合、映像の表示を停止する、付記1~付記4の何れか1に記載の車両用表示システム。
【符号の説明】
【0067】
10 車両用表示システム
12 ディスプレイ
12A 表示面
16 後席シート
18 天井部
30 制御部
46 移動機構
48 上方カメラ
図1
図2
図3
図4
図5