(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004697
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両のパネル構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20250107BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20250107BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B60R13/08
B62D29/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104558
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 裕介
【テーマコード(参考)】
3D023
3D203
【Fターム(参考)】
3D023BA03
3D023BB21
3D023BC01
3D023BD12
3D023BE02
3D203BB04
3D203BB35
3D203CA07
3D203CB09
3D203CB24
3D203DA12
3D203DA32
3D203DA70
(57)【要約】
【課題】部品係合部の周辺からの車室内側への騒音の侵入を抑制する。
【解決手段】車両のパネル構造は、樹脂材料を用いて形成されていると共に車室外と車室内との間に設けられたダッシュパネル10と、部品固定部20と、騒音低減部34と、を備えている。部品固定部20は、ダッシュパネル10に設けられ、車両を構成する部品18が係合する。騒音低減部34は、ダッシュパネル10と一体に形成されていると共に部品固定部20に沿って設けられ、パワーユニットルーム12側から車室内14側への騒音を遮る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を用いて形成されていると共に車室外と車室内との間に設けられたパネルと、
前記パネルに設けられ、車両を構成する部品が係合する部品係合部と、
前記パネルと一体に形成されていると共に前記部品係合部に沿って設けられ、車室外側から車室内側への騒音を遮る騒音低減部と、
を備えた車両のパネル構造。
【請求項2】
車室外側から車室内側への騒音を消音する消音部材が前記パネルにおける車室内側の面に沿って設けられ、
前記消音部材において前記部品係合部と対応する箇所には、前記消音部材を貫通する貫通孔が形成され、
前記騒音低減部が、前記貫通孔における車室内側を閉止している請求項1に記載の車両のパネル構造。
【請求項3】
前記部品係合部は、前記パネルを貫通すると共に前記車両を構成する部品が挿入される挿入孔とされ、
前記騒音低減部は、前記挿入孔に沿って形成された厚肉部とされ、
前記厚肉部の厚み寸法が、前記パネルにおける前記厚肉部のまわりの部位の厚み寸法に対して大きな寸法に設定されている請求項1に記載の車両のパネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ペダルユニットサブアッシーがダッシュパネルに取付けられた構造が開示されている。この文献に記載されたダッシュパネルにおける車室内側の面には、ダッシュインナサイレンサが貼付けられている。これにより、車室外側から車室内側への騒音をダッシュインナサイレンサによって消音させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダッシュパネルのように車室外と車室内との間に設けられるパネルには、ペダルユニットサブアッシー等の車両を構成する部品が係合する部品係合部が設けられる場合がある。この場合、部品係合部の周辺からの騒音の侵入を抑制できることが望ましいが、上記特許文献1に記載された構造にはこの点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、部品係合部の周辺からの車室内側への騒音の侵入を抑制することができる車両のパネル構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両のパネル構造は、樹脂材料を用いて形成されていると共に車室外と車室内との間に設けられたパネルと、前記パネルに設けられ、車両を構成する部品が係合する部品係合部と、前記パネルと一体に形成されていると共に前記部品係合部に沿って設けられ、車室外側から車室内側への騒音を遮る騒音低減部と、を備えている。
【0007】
第1の態様の車両のパネル構造によれば、車室外と車室内との間に設けられたパネルが樹脂材料を用いて形成されている。このパネルには、車両を構成する部品が係合する部品係合部が設けられている。また、パネルには、当該パネルと一体に形成された騒音低減部が部品係合部に沿って設けられている。これにより、部品係合部の周辺からの車室内側への騒音を騒音低減部によって遮ることができる。このように、第1の態様の車両のパネル構造によれば、部品係合部の周辺からの車室内側への騒音の侵入を抑制することができる。
【0008】
第2の態様の車両のパネル構造は、第1の態様の車両のパネル構造において、車室外側から車室内側への騒音を消音する消音部材が前記パネルにおける車室内側の面に沿って設けられ、前記消音部材において前記部品係合部と対応する箇所には、前記消音部材を貫通する貫通孔が形成され、前記騒音低減部が、前記貫通孔における車室内側を閉止している。
【0009】
第2の態様の車両のパネル構造によれば、消音部材に形成された貫通孔における車室内側が、騒音低減部によって閉止されている。これにより、消音部材に形成された貫通孔から車室内側への騒音の侵入を効果的に抑制することができる。
【0010】
第3の態様の車両のパネル構造は、第1の態様の車両のパネル構造において、前記部品係合部は、前記パネルを貫通すると共に前記車両を構成する部品が挿入される挿入孔とされ、前記騒音低減部は、前記挿入孔に沿って形成された厚肉部とされ、前記厚肉部の厚み寸法が、前記パネルにおける前記厚肉部のまわりの部位の厚み寸法に対して大きな寸法に設定されている。
【0011】
第3の態様の車両のパネル構造によれば、車両を構成する部品がパネルに形成された挿入孔に挿入されている。また、パネルにおける挿入孔のまわりには、騒音低減部である厚肉部が設けられている。この厚肉部の厚み寸法が、パネルにおける厚肉部のまわりの部位の厚み寸法に対して大きな寸法に設定されている。これにより、パネルにおける挿入孔のまわりから車室内側への騒音の侵入を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る車両のパネル構造は、部品係合部の周辺からの車室内側への騒音の侵入を抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の車両のパネル構造が適用されたダッシュパネル等を模式的に示す側断面図である。
【
図2】第2実施形態の車両のパネル構造が適用されたダッシュパネル等を模式的に示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態の車両のパネル構造)
図1を用いて、本発明の第1実施形態の車両のパネル構造について説明する。なお、各図において適宜示される矢印FRは、車両前後方向前側を示しており、矢印UPは、車両上下方向上側を示している。また以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0015】
図1には、第1実施形態の車両のパネル構造が適用されたダッシュパネル10等が示されている。ダッシュパネル10は、パワーユニット等が収容されたパワーユニットルーム12(車室外)と車室内14とを隔てる部材であり、樹脂材料を用いて形成されている。詳述すると、ダッシュパネル10は、上下方向及び左右方向に延在する前壁部16と、車両を構成する部品18(一例としてブレーキペダル等)が固定される部品係合部としての部品固定部20と、を備えている。
【0016】
部品固定部20は、前後方向を軸方向とする円筒状に形成されていると共に前壁部16から後方側へ向けて突出する筒状部22を備えている。この筒状部22の前方側は、前壁部16の一部分24によって閉止されている。
【0017】
筒状部22には、スタッドボルト26が挿入されている。このスタッドボルト26の前端部は、前壁部16の一部分24の中央部に固定されている。また、スタッドボルト26の後方側の部位は、筒状部22から後方側へ向けて突出している。そして、ナット28をスタッドボルト26に螺合させることで、車両を構成する部品18が部品固定部20に固定されるようになっている。
【0018】
ダッシュパネル10に対して車室内14側には、パワーユニットルーム12側から車室内14側への騒音を消音する消音部材30が設けられている。この消音部材30は、ダッシュパネル10における車室内14側の面に沿う形状に形成されており、ダッシュパネル10における車室内14側の面に取付けられている。また、消音部材30において部品固定部20と対応する箇所には、消音部材30を貫通する貫通孔32が形成されている。この貫通孔32を前後方向から見た形状は円形状に形成されている。また、貫通孔32の内径D1は、筒状部22の外径D2よりも大きな内径に設定されている。この貫通孔32の内側には、筒状部22が配置されている。
【0019】
また、ダッシュパネル10は、筒状部22の後端部から当該筒状部22の径方向外側へ向けて突出する騒音低減部34を備えている。この騒音低減部34は、前後方向から見て環状に形成されている。また、騒音低減部34の外径D3は、消音部材30に形成された貫通孔32の内径D1よりも大きな外径に設定されている。さらに、騒音低減部34と前壁部16との間の間隔Cは、消音部材30の厚み寸法T1とほぼ同じ寸法に設定されている。これにより、騒音低減部34が消音部材30に形成された貫通孔32の車室内14側を閉止した状態となっている。
【0020】
以上説明した本実施形態では、騒音低減部34が消音部材30に形成された貫通孔32の車室内14側を閉止している。換言すると、ダッシュパネル10において消音部材30で覆われていない箇所が空気層を挟んだ樹脂の二重構造(前壁部16と騒音低減部34とによる二重構造)となっている。これにより、消音部材30に形成された貫通孔32から車室内14側への騒音の侵入を効果的に抑制することができる。
【0021】
また、本実施形態では、ダッシュパネル10が樹脂材料を用いて形成されている。これにより、前壁部16から筒状部22及び騒音低減部34までの範囲を一体に形成することができる。
【0022】
(第2実施形態の車両のパネル構造)
次に、
図2を用いて、本発明の第2実施形態の車両のパネル構造について説明する。
【0023】
図2には、第2実施形態の車両のパネル構造が適用されたダッシュパネル10等が示されている。ダッシュパネル10は、前述の第1実施形態と同様に樹脂材料を用いて形成されている。詳述すると、ダッシュパネル10は、上下方向及び左右方向に延在する前壁部16と、車両を構成する部品36(一例としてステアリングシャフト、配線及び配管等)が挿入される部品係合部としての挿入孔38を有する傾斜壁部40と、を備えている。
【0024】
傾斜壁部40は、上方側へ向かうにつれて前方側へ傾斜している。この傾斜壁部40は、接続部42を介して前壁部16とつながっている。また、傾斜壁部40には、円形の挿入孔38が形成されている。この挿入孔38の縁部には、筒状のシール部材44が取り付けられている。そして、車両を構成する部品36がシール部材44に挿入された状態で、車両を構成する部品36が挿入孔38に挿入されている。なお、車両を構成する部品36の外周面には、シール部材44の第1リップ部46及び第2リップ部48が全周にわたって接触している。
【0025】
ダッシュパネル10に対して車室内14側には、第1実施形態と同様の消音部材30が設けられている。この消音部材30において傾斜壁部40と対応する箇所は切り欠かれている。すなわち、消音部材30において傾斜壁部40と対応する箇所には、切り欠き孔50が形成されている。
【0026】
また、傾斜壁部40には、騒音低減部34として機能する厚肉部52が形成されている。この厚肉部52は、挿入孔38を囲む環状に形成されている。また、厚肉部52の厚み寸法T2は、接続部42の厚み寸法T3に対して大きな寸法に設定されている。
【0027】
以上説明した本実施形態では、傾斜壁部40における挿入孔38のまわりには、騒音低減部34として機能する厚肉部52が設けられている。この厚肉部52の厚み寸法T2が、ダッシュパネル10における厚肉部52のまわりの部位の厚み寸法(接続部42の厚み寸法T3)に対して大きな寸法に設定されている。これにより、ダッシュパネル10における挿入孔38のまわりから車室内14側への騒音の侵入を効果的に抑制することができる。
【0028】
なお、以上説明した第1実施形態及び第2実施形態では、本発明の構造をダッシュパネル10に適用した例について説明したが、本発明は他のパネルにも適用することができる。例えば、本発明の構造をフロアパネルやドアパネルに適用することもできる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
10 ダッシュパネル(パネル)
18 車両を構成する部品
20 部品固定部(部品係合部)
30 消音部材
32 貫通孔
34 騒音低減部
36 車両を構成する部品
38 挿入孔(部品係合部)
52 厚肉部(騒音低減部)