(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004712
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】発泡ビーズおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/16 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
C08J9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104581
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】591080874
【氏名又は名称】日本ケミカル工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】上山 昇
(72)【発明者】
【氏名】中岫 弘
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA32
4F074BA31
4F074CA38
4F074DA33
4F074DA34
(57)【要約】
【課題】長時間または繰り返し使用した場合においても、クッション性の低下が抑制された発泡ビーズ、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】発泡ビーズは、有機発泡剤を含浸させた樹脂ビーズを発泡させてなり、平均粒径が0.5mm以上5.0mm以下であり、送粒時に機械的回転処理を受けておらず、発泡倍率が30倍~45倍であり、へたり率が8.0%以下であり、クッションや枕などに充填されるクッション用ビーズである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発泡剤を含浸させた樹脂ビーズを発泡させてなる発泡ビーズであって、
前記発泡ビーズは、平均粒径が0.5mm以上5.0mm以下であり、送粒時に機械的回転処理を受けていないことを特徴とする発泡ビーズ。
【請求項2】
前記発泡ビーズは発泡倍率が30倍~45倍であり、へたり率が8.0%以下であることを特徴とする請求項1記載の発泡ビーズ。
【請求項3】
前記発泡ビーズがクッション用ビーズであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発泡ビーズ。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の発泡ビーズを製造する製造方法であって、
前記製造方法は、前記有機発泡剤を含浸させた前記樹脂ビーズを発泡させて発泡粒子を形成する発泡工程と、前記発泡粒子をサイロへ送粒する送粒工程と、送粒された前記発泡粒子を前記サイロで熟成させて前記発泡ビーズを得る熟成工程とを有し、
前記送粒工程において、前記発泡粒子は前記サイロまでの送粒経路において回転体による機械的回転処理を受けずに送粒されることを特徴とする発泡ビーズの製造方法。
【請求項5】
前記サイロは、該サイロ内の空気を吸い込んで外部へ排出する排気装置を有し、前記排気装置で前記サイロ内の空気を吸い込みながら、前記発泡粒子が送粒されることを特徴とする請求項4記載の発泡ビーズの製造方法。
【請求項6】
前記発泡粒子は、前記サイロの側面に設けられた供給口から供給され、前記排気装置は前記サイロの前記側面に設けられることを特徴とする請求項5記載の発泡ビーズの製造方法。
【請求項7】
前記送粒工程において、前記発泡粒子は40℃~80℃の温度で送粒されることを特徴とする請求項4記載の発泡ビーズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ビーズおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡スチロールなどの樹脂発泡体は、軽量性、緩衝性、成形加工性などに優れており、農水産物などの収容容器や、各種商品の緩衝材、建築用建材など、様々な産業分野で利用されている。樹脂発泡体は、発泡ビーズを用いて型内成形することで得られる。また近年では、発泡ビーズ自体も、クッションや枕などのクッション用ビーズとして利用され、需要が高まっている。
【0003】
クッションとしては、縫製された袋体の内部に、発泡ビーズが充填されてなるビーズクッションが知られている。この種のクッションは、使用時において、内部に充填されている発泡ビーズが体圧によって流動し、体形に沿うように変形して体圧を分散させる。その結果、体を包み込むようなフィット感が生まれ、心地良さを与えるものとなっている。
【0004】
発泡ビーズは、一般に、原料ビーズ(発泡性粒子)を発泡させる発泡工程と、送粒工程と、熟成工程を経て製造される(例えば、特許文献1参照)。この製造方法の概略について、
図7に基づいて説明する。
【0005】
図7において、まず発泡工程は、予備発泡機21を用いて行われる。原料ビーズには、例えば、ペンタンやブタンなどの有機発泡剤が含浸された樹脂ビーズが用いられる。予備発泡機21は、投入ホッパー22と、予備発泡槽23と、撹拌翼24と、該撹拌翼24を回転させるモータ25とを有している。投入ホッパー22から予備発泡槽内に投入された原料ビーズは、撹拌翼24で撹拌されながら、大気圧または加圧下において蒸気によって加熱されるなどして、所定の発泡倍率に発泡する。得られた発泡粒子は、予備発泡槽23の下部に設けられた排出口23aから排出ホッパー26に排出される。
【0006】
続く送粒工程では、得られた発泡粒子をサイロ29へ送粒する。排出ホッパー26とサイロ29は送粒管27で接続されており、フィン付きの送粒ブロワ28によって、発泡粒子が配送される。送粒ブロワ28は送粒管27の途中に設けられ、フィンなどの回転体28aを有している。送粒管27に導入された発泡粒子は、送粒ブロワ28の回転体28aの回転によって機械的回転処理を受けてサイロ29へ配送され、縦型のサイロ29の天井部に設けられた供給口30からサイロ内へ供給される。
【0007】
サイロ29に供給される発泡粒子には、空気だけでなく、有機発泡剤由来の有機ガス(ブタンガスなど)が含まれている。そのため、サイロ29では、その有機ガスと空気を置換させるための熟成が行われる。熟成期間は1日~2日程度である。熟成後、サイロ29の底部に設けられた取出口31から発泡ビーズが取り出される。この発泡ビーズは、樹脂発泡体の原料や、クッションなどの充填材として用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、例えばクッション用ビーズは、体へのフィット感や内部での流動性の観点から、平均粒径は0.5mm以上5.0mm以下程度である。このようなクッション用ビーズが充填されたビーズクッションは、長時間または繰り返し使用されることで、内部の発泡ビーズにその都度、荷重がかかる。このように繰り返し荷重がかかる結果、発泡ビーズがへたり、クッション性の低下に繋がるおそれがある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、長時間または繰り返し使用した場合においても、クッション性の低下が抑制された発泡ビーズおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発泡ビーズは、有機発泡剤を含浸させた樹脂ビーズを発泡させてなる発泡ビーズであって、上記発泡ビーズは、平均粒径が0.5mm以上5.0mm以下であり、送粒時に機械的回転処理を受けていないことを特徴とする。
【0012】
本発明において、送粒時に機械的回転処理を受けていないとは、送粒時に当該発泡ビーズが回転状態の回転体を通過する際に回転体本体やその周囲の管壁面に激しく衝突し機械的せん断応力を受けるような処理を受けていないことをいう。当該処理を受けていないことは、例えば、電子顕微鏡によってビーズ表面のシワの有無を観察することなどで確認できる。
【0013】
上記発泡ビーズは発泡倍率が30倍~45倍であり、へたり率が8.0%以下であることを特徴とする。
【0014】
上記発泡ビーズがクッション用ビーズであることを特徴とする。
【0015】
本発明の発泡ビーズの製造方法は、本発明の発泡ビーズを製造する製造方法であって、上記製造方法は、上記有機発泡剤を含浸させた上記樹脂ビーズを発泡させて発泡粒子を形成する発泡工程と、上記発泡粒子をサイロへ送粒する送粒工程と、送粒された上記発泡粒子を上記サイロで熟成させて上記発泡ビーズを得る熟成工程とを有し、上記送粒工程において、上記発泡粒子は上記サイロまでの送粒経路において回転体による機械的回転処理を受けずに送粒されることを特徴とする。
【0016】
上記サイロは、該サイロ内の空気を吸い込んで外部へ排出する排気装置を有し、上記排気装置で上記サイロ内の空気を吸い込みながら、上記発泡粒子が送粒されることを特徴とする。
【0017】
上記発泡粒子は、上記サイロの側面に設けられた供給口から供給され、上記排気装置は上記サイロの上記側面に設けられることを特徴とする。
【0018】
上記送粒工程において、上記発泡粒子は40℃~80℃の温度で送粒されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の発泡ビーズは、有機発泡剤を含浸させた樹脂ビーズを発泡させてなり、平均粒径が0.5mm以上5.0mm以下であり、送粒時に機械的回転処理を受けていないので、当該処理時に機械的せん断応力を受けてビーズ表面に傷などが付くことを抑制できる。これにより、その傷などに起因してビーズがへたりやすくなることを抑制でき、長時間または繰り返し使用した場合においても、クッション性の低下が抑制された発泡ビーズになる。この発泡ビーズは、特にクッション用ビーズに好適である。
【0020】
上記発泡ビーズは発泡倍率が30倍~45倍であり、へたり率が8.0%以下であるので、後述の実施例に示すように、繰り返し使用時のへたりを好適に抑えることができる。
【0021】
本発明の発泡ビーズの製造方法は、発泡工程と送粒工程と熟成工程とを有し、送粒工程において、発泡粒子はサイロまでの送粒経路において回転体による機械的回転処理を受けずに送粒されるので、当該処理時に機械的せん断応力を受けてビーズ表面に傷などが付くことを抑制できる。これにより、その傷などに起因してビーズがへたりやすくなることを抑制でき、長時間または繰り返し使用した場合においても、クッション性の低下が抑制された発泡ビーズが得られる。
【0022】
上記サイロは、該サイロ内の空気を吸い込んで外部へ排出する排気装置を有し、排気装置によってサイロ内の空気を吸い込みながら、発泡粒子が送粒されるので、発泡粒子の送粒時の流動性を維持しやすい。また、発泡粒子は、サイロの側面に設けられた供給口から供給され、排気装置はサイロの同じ側面に設けられるので、排気装置の吸い込み力を発泡粒子に作用させやすく、発泡粒子をサイロへ送粒しやすくなる。
【0023】
上記送粒工程において、発泡粒子は40℃~80℃の温度で送粒されるので、発泡ビーズの臭いを低減しやすくなる。また、高温で送粒を行うことで、送粒時の衝撃などによって発泡粒子が傷や変形などを受けやすいが、本発明の製造方法によれば、そのような事象も抑制しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の発泡ビーズの製造方法の一例を示す工程概略図である。
【
図2】本発明の発泡ビーズの製造方法の一例を示す全体概略図である。
【
図5】発泡ビーズのへたり試験を示す概略図である。
【
図6】実施例1および比較例1の発泡ビーズの電子顕微鏡写真を示す図である。
【
図7】従来の発泡ビーズの製造方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の発泡ビーズは、有機発泡剤を含浸させた樹脂ビーズを発泡させてなる発泡ビーズである。この発泡ビーズの平均粒径は、0.5mm以上5.0mm以下であり、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。なお、平均粒径は、粒子径分布を体積基準で累積分布としたとき、累積値が50%となる点の粒子径であり、レーザー回析・散乱法で測定される値である。
【0026】
本発明の発泡ビーズは、クッション用ビーズとして特に好適である。クッション用ビーズは、大別して、平均粒径が0.5mm以上1.0mm未満の小粒子タイプと、平均粒径が1.0mm以上3.0mm以下の大粒子タイプがある。大粒子タイプは、小粒子タイプに比べて、その大きさから、送粒時に表面に傷などが付きやすいところ、本発明の発泡ビーズは、送粒時に機械的回転処理を受けていないことから、このような大粒子タイプの発泡ビーズであってもへたりを抑制しやすくなる。
【0027】
発泡ビーズが送粒時に機械的回転処理を受けていないことは、例えば、発泡ビーズを電子顕微鏡で観察することなどで確認できる。例えば、発泡ビーズを電子顕微鏡で80倍で拡大した際にビーズ表面にシワが見られないことをもって、機械的回転処理を受けていないと判断できる。このシワは、発泡ビーズの表面に形成される一定以上の深さを有する溝をいう。
【0028】
本発明の発泡ビーズの発泡倍率は、例えば30倍~70倍である。発泡倍率が高いほど、へたりに対する耐性が低下することから、発泡倍率は30倍~50倍が好ましく、30倍~45倍がより好ましく、30倍~40倍であってもよく、35倍~40倍であってもよい。
【0029】
また、発泡ビーズのへたり率は、例えば8.5%未満であり、8.0%以下がより好ましい。へたり率の下限は、例えば4.0%であり、好ましくは5.0%である。なお、へたり率は、後述の実施例の方法によって測定される。
【0030】
発泡ビーズの好ましい形態としては、発泡倍率が30倍~45倍であり、かつ、へたり率は8.0%以下である。
【0031】
図1は、本発明の発泡ビーズの製造方法の一例を示す工程概略図である。
図1の製造方法は、(1)有機発泡剤を含浸させた樹脂ビーズを発泡させて発泡粒子を形成する発泡工程と、(2)ブロッキングした発泡粒子を解粒する解粒工程と、(3)発泡粒子をサイロへ送粒する送粒工程と、(4)送粒された発泡粒子をサイロで熟成させて発泡ビーズを得る熟成工程とを有する。なお、解粒工程は、必要に応じて省略してもよい。
【0032】
上記製造方法の原料となる樹脂ビーズ(発泡性粒子)は、周知の方法で、熱可塑性樹脂に有機発泡剤を含浸させることで得られる。例えば、スチレンモノマーを水中で撹拌して重合させ、そこへ有機発泡剤を加えることで、有機発泡剤が含浸されたポリスチレン樹脂ビーズが得られる。
【0033】
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂;ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;これらの共重合体などを用いることができる。また、熱可塑性樹脂として、複数の樹脂を組み合わせて用いることができる。例えば、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂を組み合わせて用いることができる。
【0034】
有機発泡剤としては、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素類や、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、エチルクロライド、メチレンクロライドなどのハロゲン化炭化水素類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類などが挙げられる。
【0035】
樹脂ビーズは、熱可塑性樹脂および有機発泡剤以外の添加剤として、気泡調整剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤などをさらに含有してもよい。本発明に用いる樹脂ビーズとしては、市販品を用いることもできる。
【0036】
以下、各工程について、
図2を参照しながら説明する。
【0037】
(1)発泡工程
この工程では、上述した樹脂ビーズを発泡させて発泡粒子を形成する。本発明で用いる発泡方法は特に限定されず、周知の方法を採用することができる。例えば、水蒸気などによって加熱し、樹脂ビーズ内に溶解している有機発泡剤を膨張させ発泡させる方法(加熱発泡)や、高圧雰囲気下から低圧雰囲気下に一気に開放し、樹脂ビーズ内に溶解している有機発泡剤を膨張させ発泡させる方法などが挙げられる。
【0038】
なお、発泡条件は、上述した所定範囲の発泡倍率まで発泡させることができる条件であればよく、加圧条件や加熱条件などは特に限定されない。発泡倍率は、樹脂ビーズの投入量と加熱時間などで確定される。
【0039】
図2に示す発泡工程では、予備発泡機1を用いて加熱発泡を行う。予備発泡機1は、投入ホッパー2と、予備発泡槽3と、撹拌翼4と、該撹拌翼4を回転させるモータ5とを有している。投入ホッパー2から予備発泡槽内に樹脂ビーズAを投入した後、撹拌翼4で撹拌しながら、予備発泡槽3に蒸気または蒸気と空気の混合体を導入して一定の条件で加熱し続け、樹脂ビーズAが所定の発泡倍率に達した後、加熱を停止する。例えば、蒸気圧で80℃~95℃で加熱させる。そして、発泡粒子Bを、予備発泡槽3の下部に設けられた排出口3aから排出ホッパー6に排出する。排出直後は、発泡粒子Bはブロッキングしている。
【0040】
(2)解粒工程
この工程は、ブロッキングした発泡粒子Bを解粒する工程である。解粒の手法は特に限定されないが、例えば、排出ホッパー6内に設けられた撹拌機6aで撹拌することで解粒する。なお、発泡粒子Bの粒子温度は、予備発泡槽3内では80℃程度であるが、排出直後には常温撹拌などによって例えば50℃~60℃程度に低下し、その後、送粒管7に導入される。
【0041】
(3)送粒工程
この工程は、発泡粒子をサイロへ送粒する工程である。
図2に示すように、排出ホッパー6とサイロ9は送粒管7で接続されている。送粒管7の排出ホッパー側の端部には圧縮空気を送る送風機8が設けられている。送粒管7に導入された発泡粒子Bは、エアーのみによって浮遊させつつ空送される。
【0042】
図2において、送風機8は送粒管7の端部に設けられており、発泡粒子が通過する送粒管7の送粒経路の途中には、回転体(例えばフィン)は設けられていない。そのため、
図7に示す従来技術とは異なり、この製造方法は、送粒時に発泡粒子が機械的回転処理を受けない構成となっている。また、従来では、供給口10に回転体(例えばフィン)が設けられる場合もあるが、この製造方法では設けられていない。そのため、送粒時に発泡粒子Bが受ける衝突回数や衝撃が軽減され、傷などが付きにくい。
【0043】
また、サイロに設けられる排気装置12でサイロ内の空気を吸い込みながら、発泡粒子を送粒することで、発泡粒子の送粒をスムーズに行いやすくなる。なお、排気装置12はそれによる気流などを考慮して、供給口10の近傍に設けられることが好ましい。
【0044】
送粒工程において、発泡粒子Bは、常温の3~4倍の温度で送粒されることが好ましい。具体的には、40℃~80℃(より好ましくは50℃~60℃)でサイロ9に送粒されることが好ましい。排出ホッパー6から送粒管7へ移動させる時点での発泡粒子Bの粒子温度は50℃~60℃程度であり、この温度を維持するようにしてサイロ9へ供給される。排出ホッパー6から送粒管7へ移動させる時点では発泡粒子Bは、蒸気の水分で湿潤の状態である。湿潤の状態のまま、サイロで常温乾燥されれば、水分中に含まれている有機発泡剤に由来する臭いの成分が粒子の表面に付着しやすくなる。そのため、常温よりも高い温度で送粒することで、サイロ9へ投入されるまでに(例えばサイロ9へ投入直前までに)完全脱水させやすくなり、発泡ビーズの臭いの低減を図りやすい。
【0045】
上記のように、高温で送粒を行う目的は、湿潤の状態の発泡粒子を一挙に気化・乾燥させるためである。例えば、後述するように、サイロ9の供給口10の近傍に換気扇などの排気装置12を設けることで、外部へ空気の流れをつくり、サイロ9の投入直前で、発泡粒子Bの脱水と脱臭を同時に行うことができる。送粒してきた発泡粒子は高温であり、常温の空気の流れによって気化が促進されることから、排気装置12を設ける構成は、スムーズな送粒に加えて、脱水と脱臭の面でも好ましい。
【0046】
送粒管7は、供給口10まで断熱構造であることが好ましい。例えば、送粒管7として断熱層を有する断熱管を用いてもよく、また、送粒管7の外周を断熱材で覆うなどしてもよい。また、送風機8は、ヒータ機能を備えるなどして、40℃~80℃程度の温風を送風可能であることが好ましい。
【0047】
(4)熟成工程
この工程では、発泡粒子Bをサイロ9で熟成させながら乾燥して発泡ビーズCを得る。
図2では、サイロ9は、水平方向に延在する横型であり、X方向に延在した略直方体形状である。
図2のX方向が延在方向である。サイロ9において、延在方向の一端側には供給口10が設けられており、延在方向の他端側には取出口11が設けられている。この熟成工程では、一端側の供給口10から発泡粒子Bが供給され、他端側の取出口11から発泡ビーズCが取り出される。発泡粒子Bは、上述したように、高温で送粒することにより、高い温度状態でかつ脱水した状態でサイロ9へ投入されることが好ましい。なお、熟成工程では発泡粒子Bの冷却や更なる乾燥も行われる。
【0048】
熟成工程の運転例としては、サイロ9に、その内容積に対して10~50%程度の空間を残して発泡粒子Bが供給される。その後、発泡粒子Bは、サイロ内で24時間~48時間程度、熟成される。この熟成工程は、後述する排気装置12でサイロ内の空気を排気しながら行うことが好ましい。なお、熟成工程は、バッチ式に限らず、連続式で行ってもよい。例えば、一定時間サイクルで、発泡粒子の一部投入と発泡ビーズの一部取り出しを繰り返して、連続的に行ってもよい。連続式の場合、サイロ内の発泡粒子は一端側から他端側に向かって略水平方向に徐々に移動していく。連続式の場合も、投入された発泡粒子はサイロ内において24時間~48時間程度、熟成されるようにすることが好ましい。
【0049】
サイロの構成について、
図3を用いて更に説明する。
図3は、
図2のサイロの断面概略図であり、熟成期間中の状態を示している。サイロ9の材質には金属材や樹脂材などを用いることができる。サイロ9の内容積は、特に限定されないが、例えば100m
3~500m
3である。
【0050】
図3に示すように、供給口10は、サイロ9の延在方向の一端部である側面9aに設けられている。この場合、発泡粒子はサイロ9に対して横から供給される。一方、取出口11は、サイロ9の延在方向の他端側に設けられおり、具体的には、側面9aとは反対側の端部である側面9b寄りの底部9cに設けられている。取出口11には、開閉可能な蓋などが設けられている。
【0051】
サイロ9の内部の底面13の一部は、取出口11に向けて下向きに傾斜している。このように傾斜していることにより、横型のサイロ9としながらも、発泡粒子が取出口11に向かって移動しやすくなる。
【0052】
また、サイロ9は、内部の空気を外部へ排出する排気装置12を有することが好ましい。
図2では、排気装置12は、側面9aにおいて供給口10の直下に設けられている。これにより、外部へ空気の流れをつくり、例えば発泡粒子がサイロ9に投入される直前で、該発泡粒子の脱水と脱臭を同時に行うことができる。また、気化した有機ガスは比重が重いので、供給口10の直下の排気装置12によって、その有機ガスを効率的に排出することができる。
【0053】
サイロ9において、排気装置12が設置される高さは、特に限定されないが、例えば、サイロ内で空気の流れを生じやすいことから、発泡粒子が堆積しない高さ領域に設けられることが好ましい。例えば、サイロ9の一端側の側面9aの高さに対して1/3以上の高さ領域に設けられる。この高さ領域は、側面9aの高さに対して1/2以上の高さ領域であってもよく、2/3以上の高さ領域であってもよい。排気装置12によって、発泡粒子が冷めないうち(高い温度状態のうち)に風を当てることで、有機ガスを除去しやすくなる。
【0054】
なお、排気装置12が、発泡粒子が堆積する高さ領域に設けられる場合であっても、発泡粒子の間をぬって空気が排出されることになるため、発泡粒子に空気を多く接触させることができる。その結果、発泡粒子に残存する有機ガスを除去しやすくなると考えられる。
【0055】
排気装置12としては、例えばプロペラファンやシロッコファンなどの排気ファン(換気扇)を用いることができる。
【0056】
サイロ9の横寸法L(延在方向に沿った長さ)は、例えば5m~30mであり、好ましくは10m~30mである。また、横寸法Lは、縦寸法(鉛直方向に沿った長さ)よりも大きく、縦寸法と横寸法Lとの比は、例えば(1:2)~(1:6)であり、好ましくは(1:2.5)~(1:5)である。
【0057】
図4には、サイロの他の形態の断面概略図を示す。
図4(a)に示すサイロ9Aは直方体状であり、サイロ内に底部材14が設けられている。これにより、サイロ内の底面の一部が、取出口11に向けて下向きに傾斜した構成になっている。なお、
図4(a)では、サイロ内の底面13は平面と傾斜面で構成される。
【0058】
また、
図4(b)に示すサイロ9Bは、供給口10および取出口11の位置が、
図3に示したサイロ9の位置とは異なっている。サイロ9Bにおいて、供給口10は、延在方向の一端側に設けられており、具体的には、側面9a寄りの天井部9dに設けられている。また、側面9aの上部の供給口10の近傍に排気装置12が設けられている。また、取出口11は、延在方向の他端部である側面9bに設けられている。サイロ9Bでは、サイロ内の底面13が傾斜面のみで形成されており、底面13の全部が一端側から他端側に向かって下向きに傾斜し、取り出し性に優れる。なお、サイロ内の底面13を傾斜角度が異なる複数の傾斜面で形成してもよい。
【0059】
熟成工程で用いるサイロの形態について、上記
図3~
図4で示したが、これらの形態における各構成(供給口や取出口の配置など)は、互いに組み合わせることができる。また、サイロは、上記
図3~
図4の形態に限定されず、例えば、サイロに、該サイロの内外を貫通する通気孔を設けるなどしてもよい。この場合、例えば、排気装置が設けられる位置とは反対側の位置(例えば
図3では側面9b)に通気孔を設けてもよい。
【0060】
また、サイロの形態は、
図7に示すように鉛直方向に延在する縦型であってもよい。サイロ内において発泡粒子が空気と接触する面積を増大させ、発泡粒子に残存する有機ガスと空気との置換が促進し、発泡ビーズの臭いの低減を図るという観点では横型が好ましく、例えば敷地面積に対する省スペース化という観点では縦型が好ましい。
【0061】
なお、本発明の発泡ビーズの製造方法は、上記で図示した形態に限定されるものではない。
【実施例0062】
実施例1
予備発泡槽にてポリスチレン系樹脂ビーズを発泡倍率38倍で発泡させた後、
図2で図示した構成で発泡粒子を送粒し、サイロにて24時間~48時間熟成して、送粒時に機械的回転処理を受けていない発泡ビーズを得た。この発泡ビーズの平均粒径は0.5mm~3.0mmであった。
【0063】
比較例1
予備発泡槽にてポリスチレン系樹脂ビーズを発泡倍率38倍で発泡させた後、
図7で図示した構成で発泡粒子を送粒し、サイロにて24時間~48時間熟成して、送粒時に機械的回転処理を受けた発泡ビーズを得た。この発泡ビーズの平均粒径は0.5mm~3.0mmであった。
【0064】
[へたり試験]
上記で得た発泡ビーズを用いて、下記の手順でへたり試験を行った。また、試験の概要を
図5に示す。
1:円筒形容器(φ78mm)内に発泡ビーズ330mlを投入した。
2:円筒形容器15の上部から発泡ビーズ16に対し、圧縮速度10mm/minで650N(66.3kgf)の圧縮荷重をかけた。
3:上記2の操作を100回繰り返した。
4:上記3の終了後、発泡ビーズをメスシリンダーに移し、体積を測定した。下記の式より、へたり率を求めた。求めたへたり率を表1に示す。
へたり率(%)=(体積減少量/試験前体積)×100
【0065】
【0066】
上記へたり試験の結果、発泡倍率は同じであるものの、比較例1に比べて、実施例1ではへたり率が低減された。すなわち、実施例1の発泡ビーズでは、繰り返し荷重に対するへたりが改善された。
【0067】
[電子顕微鏡による外観観察]
実施例1および比較例1の発泡ビーズについて、上記へたり試験の試験前後の外観観察を行った。電子顕微鏡を用い80倍で観察した写真を
図6に示す。
図6より、比較例1では、へたり試験前の発泡ビーズにへたり試験後のようなシワが見られた。また、写真からもへたり試験後の発泡ビーズのシワおよび潰れが大きいことが分かった。一方、実施例1では、へたり試験前の発泡ビーズにおいてシワが見られず、また、へたり試験後の発泡ビーズのシワおよび潰れが抑えられていた。へたり試験前の発泡ビーズの状態の違いが、へたり率などの結果に影響を与えたと考えられる。
本発明の発泡ビーズは、長時間または繰り返し使用した場合においても、クッション性の低下が抑制されるので、発泡ビーズとして広く用いることができる。特に、ビーズクッションなどの製品の充填材として用いられる発泡ビーズに好適である。