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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004715
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】丸鋸の歪みの特定方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 63/18 20060101AFI20250107BHJP
   B27B 31/06 20060101ALI20250107BHJP
   B27B 33/08 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B23D63/18
B27B31/06
B27B33/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104584
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】519354234
【氏名又は名称】丸北研磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(74)【代理人】
【識別番号】100224661
【弁理士】
【氏名又は名称】牧内 直征
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】水谷 敏史
(57)【要約】
【課題】丸鋸を再利用する際などにおいて、丸鋸の歪みの箇所の特定を精度良く行える丸鋸の歪みの特性方法を提供する。
【解決手段】本方法は、基板と該基板の外周縁に形成された複数の刃とを有する丸鋸の歪みを特定する方法であり、丸鋸1の基板2の上面2aに対して、レーザ照射部を相対的に移動させて、X軸方向に沿った互いに平行な複数の走査線x~x上で基板2の表面形状を取得する第1取得工程と、X軸方向とは交差するY軸方向に沿った互いに平行な複数の走査線y~y上で基板2の表面形状を取得する第2取得工程と、X軸方向の複数の走査線x~xにおける表面形状と、Y軸方向の複数の走査線y~yにおける表面形状とを用いて、歪みの箇所を特定する特定工程とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と該基板の外周縁に形成された複数の刃とを有する丸鋸の歪みの箇所を特定する方法であり、
前記方法は、前記丸鋸の基板の一方側の平面に対して、レーザ照射部を相対的に移動させて、第1方向に沿った互いに平行な複数の走査線上で前記基板の表面形状を取得する第1取得工程と、前記第1方向とは交差する第2方向に沿った互いに平行な複数の走査線上で前記基板の表面形状を取得する第2取得工程と、前記第1方向の複数の走査線における表面形状と、前記第2方向の複数の走査線における表面形状とを用いて、歪みの箇所を特定する特定工程とを有することを特徴とする丸鋸の歪みの特定方法。
【請求項2】
前記第1取得工程および前記第2取得工程において、水平に載置した前記丸鋸の前記基板の一方側の平面に対して、前記レーザ照射部を向けながら水平方向に移動させることを特徴とする請求項1記載の丸鋸の歪みの特定方法。
【請求項3】
前記第1方向と前記第2方向とが直交していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の丸鋸の歪みの特定方法。
【請求項4】
前記方法は、前記第1方向の複数の走査線と前記第2方向の複数の走査線との交点を通り、かつ、前記第1方向および前記第2方向とは異なる第3方向に沿った走査線上で前記基板の表面形状を取得する第3取得工程をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の丸鋸の歪みの特定方法。
【請求項5】
前記第1方向の複数の走査線および前記第2方向の複数の走査線の各々において、隣接する走査線間の間隔は等間隔でなく、前記基板の内周寄りの任意の一組の間隔が、それよりも外周側に位置する任意の一組の間隔に比べて小さくなっていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の丸鋸の歪みの特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップソーやメタルソーなどの丸鋸の歪みを特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材や木材などの被加工材の切断には、チップソーやメタルソーといった丸鋸を有する切断装置が用いられている。丸鋸は、略円板状の基板と、基板の外周縁部に形成された複数の刃とを有する。近年では、加工品の高品質化の要求に伴い、切断加工にも高精度な仕様が求められている。
【0003】
例えば、丸鋸の加工厚みを管理する技術として、特許文献1の技術が提案されている。特許文献1には、丸鋸の刃の先端部がレーザの照射部と受光部の間のレーザ照射領域に位置するように載置して、レーザを照射しながら丸鋸を回転させて丸鋸の加工厚みを測定することで、丸鋸の加工厚みを迅速に、かつ精度良く測定できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-53771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、加工品の高品質化などに加えて、丸鋸を研磨(再利用)することによるコスト削減の要求が高まっている。丸鋸は、使用するにつれて切れ味の低下や、略円板状の基板に歪みが生じる場合がある。そして、基板に歪みが生じると、丸鋸を回転させたときの先端部の刃振れが大きくなり、結果として丸鋸の加工厚みに影響を及ぼすことになる。そのため、丸鋸を再利用する際には、丸鋸の歪みの矯正が必要となる。
【0006】
従来、丸鋸の歪みの矯正(丸鋸の歪直し作業)は、以下のような手順で行われている。
1.定規でおおよそ全体を確認し、凸部や鎚打ちするべき部分を探す。具体的には、作業者が丸鋸の基板に対して水平に定規を複数回当てて歪みの箇所を特定する。
2.鎚打ちの強さや回数を決める。
3.丸鋸を計測機にのせ適切な数値になるまで、上記1および上記2の作業を繰り返す。
ここで、熟練者であれば、上記1および上記2の作業回数は少なくて済む。しかしながら、特に上記1の作業(歪みの箇所を特定する作業)は難易度が高く、習得するまでに多くの時間が必要となる。また、技量に依るところが大きく、作業結果に個人差が生じやすい。その結果、歪みの矯正にバラつきが生じ、ひいては加工品質に影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、丸鋸を再利用する際などにおいて、丸鋸の歪みの箇所の特定を精度良く行える丸鋸の歪みの特性方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の丸鋸の歪みの特定方法は、基板と該基板の外周縁に形成された複数の刃とを有する丸鋸の歪みの箇所を特定する方法であり、上記方法は、上記丸鋸の基板の一方側の平面に対して、レーザ照射部を相対的に移動させて、第1方向に沿った互いに平行な複数の走査線上で上記基板の表面形状を取得する第1取得工程と、上記第1方向とは交差する第2方向に沿った互いに平行な複数の走査線上で上記基板の表面形状を取得する第2取得工程と、上記第1方向の複数の走査線における表面形状と、上記第2方向の複数の走査線における表面形状とを用いて、歪みの箇所を特定する特定工程とを有することを特徴とする。
【0009】
上記第1取得工程および上記第2取得工程において、水平に載置した上記丸鋸の上記基板の一方側の平面に対して、上記レーザ照射部を向けながら水平方向に移動させることを特徴とする。
【0010】
上記第1方向と上記第2方向とが直交していることを特徴とする。
【0011】
上記方法は、上記第1方向の複数の走査線と上記第2方向の複数の走査線との交点を通り、かつ、上記第1方向および上記第2方向とは異なる第3方向に沿った走査線上で上記基板の表面形状を取得する第3取得工程をさらに有することを特徴とする。
【0012】
上記第1方向の複数の走査線および上記第2方向の複数の走査線の各々において、隣接する走査線間の間隔は等間隔でなく、上記基板の内周寄りの任意の一組の間隔が、それよりも外周側に位置する任意の一組の間隔に比べて小さくなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の丸鋸の歪みの特定方法は、丸鋸の基板の一方側の平面に対して、レーザ照射部を相対的に移動させて、第1方向に沿った互いに平行な複数の走査線上で基板の表面形状を取得する第1取得工程と、第1方向とは交差する第2方向に沿った互いに平行な複数の走査線上で基板の表面形状を取得する第2取得工程と、第1方向の複数の走査線における表面形状と、第2方向の複数の走査線における表面形状とを用いて、歪みの箇所を特定する特定工程とを有するので、例えば作業者による定規を用いた方法に比べて個人の技量に依るところが少なく、熟練の技量がなくても、丸鋸の歪みの箇所の特定を精度良く行うことができる。さらに、丸鋸の歪みの矯正作業全体における作業性の向上にも繋がる。
【0014】
上記方法は、第1方向の複数の走査線と第2方向の複数の走査線との交点を通り、かつ、第1方向および第2方向とは異なる第3方向に沿った走査線上で基板の表面形状を取得する第3取得工程をさらに有するので、例えば、盛り上がりや凹みの箇所や形状などをより詳細に把握でき、歪みの箇所の特定をより高精度に行いやすくなる。
【0015】
基板の歪みは内周側(円中心側)でより発生しやすく、また、内周側で生じた歪みは刃振れにより大きく影響しやすい傾向がある。この観点より、例えば、第1方向の複数の走査線および第2方向の複数の走査線の各々において、隣接する走査線間の間隔は等間隔でなく、基板の内周寄りの任意の一組の間隔が、それよりも外周側に位置する任意の一組の間隔に比べて小さくなっているので、加工品質により影響するような歪みの箇所の特定を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の方法の対象物である丸鋸の平面図などである。
図2】本発明の丸鋸の歪みの特定方法を示すフローチャートである。
図3】本発明に用いるレーザ装置の構成概略図である。
図4】第1取得工程および第2取得工程において表面形状を取得する手法の一例を示す図である。
図5】特定工程の概要を説明するための図である。
図6】第1取得工程および第2取得工程において表面形状を取得する手法の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法の対象物である丸鋸の一例を、図1に基づいて説明する。図1(a)は丸鋸全体の平面図を示し、図1(b)は丸鋸の刃周辺の拡大図を示す。図1(a)に示すように、丸鋸1は、略円板状の基板2と、基板2の外周縁部に形成された複数の刃4とを有する。丸鋸1(基板2)の中心部には取付孔3が形成されており、この取付孔3に切断装置の丸鋸軸(図示省略)が挿入される。丸鋸1の外径Dは特に限定されず、例えば100mm~800mmであり、好ましくは100mm~400mmである。
【0018】
丸鋸1において、複数の刃4は周方向に所定ピッチで設けられている。図1の丸鋸1は、刃4に硬質チップを採用したチップソーである。硬質チップは、耐摩耗性に優れており、例えば、サーメットや、炭化タングステンとコバルトとを焼結した超硬合金などが用いられる。なお、本発明の測定対象はチップソーに限らず、メタルソーであってもよい。
【0019】
図1(b)に示すように、各刃4は、切削時に切りくずが流れ出る面であるすくい面4aと、該すくい面4aに略垂直な逃げ面4bとを有している。各刃4は基板2の外周縁部の刃室に、銀ロウなどによって固着されている。
【0020】
次に、図2を用いて本発明の特定方法について説明する。図2に示すように、本発明の特定方法は、(1)第1取得工程と、(2)第2取得工程と、(3)特定工程とを有している。そして、これらの工程で特定された歪みを、(4)たたき工程で矯正するという流れで、丸鋸の歪みの矯正が行われる。
【0021】
本発明の特定方法が適用される丸鋸は、例えば使用済みの丸鋸である。使用済みの丸鋸は、長年の使用による負荷や切断時の発熱などによって、基板の表面が波打つように歪む場合がある。例えば、一方側の平面では部分的に盛り上がりが生じ、他方側の平面では対応する箇所で凹みなどが生じる。そのような歪みが生じた箇所を含む領域を固定して丸鋸を回転させると、歪みの影響によって刃先が大きく振れやすくなる。そのため、丸鋸を再利用する際には、このような事象を防ぐために歪みの矯正が必要となり、またそれに先立って、歪みの箇所を特定することが重要となる。
【0022】
以下には、図2に示す工程(1)~工程(4)について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
(1)第1取得工程
この工程は、丸鋸の基板の一方側の平面に対して、レーザを照射するレーザ照射部を相対的に移動させて、当該平面の表面形状を取得する工程である。図3には、レーザ照射部を備えるレーザ装置の構成概略図を示す。レーザ装置11は、走査波としてのレーザを照射するレーザ照射部12と、レーザ照射部12を移動させる移動機構13とを有する。移動機構13は、例えば複数のレールと駆動部とを有している。
【0024】
図3において、丸鋸1が水平となるように載置台14の上に載置される。レーザ照射部12は、水平に載置した丸鋸1の基板2の上面2a(一方側の平面)に対して、レーザを照射するように配置され、図3では、移動機構13によって、レーザ照射部12を下方へ向けながら水平方向に移動可能となっている。なお、表面形状を取得する工程では、丸鋸1は回転させずに行われる。この場合、丸鋸1が回転しないように固定してもよい。
【0025】
レーザ装置11は、レーザ照射部12から出射されて上面2aで反射されたレーザに基づいて上面2aの表面形状を測定する。レーザを用いて表面形状を取得する原理は、共焦点方式や光干渉方式などの公知の原理を用いることができる。レーザ照射部12を含んだ測定にかかる装置構成には、既存の表面形状測定装置を用いることができる。この場合、既存の表面形状測定装置を水平方向に移動可能に構成することで、図3のようなレーザ装置11が構成される。
【0026】
第1取得工程では、第1方向に沿った互いに平行な複数の走査線上で基板2の表面形状を取得する。すなわち、レーザ照射部12を複数の走査線上に沿って移動させることで、対応する表面形状を取得する。この取得手法の一例について図4を用いて説明する。
【0027】
図4は、丸鋸の平面図として、一方側の平面から見た図を示している。なお、図4図5および図6も同様)では、X軸方向が第1方向に相当し、Y軸方向が第2方向に相当する。
【0028】
図4の例では、X軸方向に沿った5つの走査線x~x上で基板2の上面2aの表面形状を取得する。取得に際しては、レーザ照射部をxに沿って移動させて、その走査線における表面形状を取得した後、レーザ照射部をxに沿って移動させて、その走査線における表面形状を取得する。このように、各走査線に沿って表面形状を順次取得していく。図4において、5つの走査線x~xは互いに平行であり、また、隣接する走査線間の4つの間隔は等間隔となっている。また、5つの走査線x~xのうち、xは円中心点Oを通過するように設定されている。
【0029】
(2)第2取得工程
この工程は、第1方向とは交差する第2方向に沿って基板の表面形状を取得する。この工程では、第1取得工程と同じ装置(レーザ装置など)を用いる。この工程での取得手法についても図4を用いて説明する。
【0030】
図4の例では、Y軸方向に沿った5つの走査線y~y上で基板2の上面2aの表面形状を取得する。取得に際しては、レーザ照射部をyに沿って移動させて、その走査線における表面形状を取得した後、レーザ照射部をyに沿って移動させて、その走査線における表面形状を取得する。このように、各走査線に沿って表面形状を順次取得していく。図4において、5つの走査線y~yは互いに平行であり、また、隣接する走査線間の4つの間隔は等間隔となっている。また、5つの走査線y~yのうち、yは円中心点Oを通過するように設定されている。
【0031】
上記第1取得工程および第2取得工程によって、基板2の一方側の平面の表面形状の概要を全体的に把握することができる。なお、図4では、第1方向と第2方向とが直交する関係(90°の関係)となっているが、これに限らず、交差していればよい。
【0032】
また、第1方向に沿った走査線の数、第2方向に沿った走査線の数はそれぞれ5に限らず、例えば3~15の範囲で適宜設定できる。なお、円中心点Oを通る走査線を対称に設定しやすいことから、走査線の数を奇数とすることが好ましい。また、第1方向と第2方向との間の走査線の数は同じでも異なっていてもよい。
【0033】
(3)特定工程
この工程は、第1方向の複数の走査線における表面形状と第2方向の複数の走査線における表面形状とを用いて、歪みの箇所を特定する工程である。この特定の一例について、図5を用いて説明する。
【0034】
図5には、走査線xにおける表面形状および走査線yにおける表面形状の各イメージ図と、丸鋸との対応関係を示している。各イメージ図において、L1は、基準線L0に対する上面2aの変位を表している。なお、他の走査線(図4参照)でも表面形状はそれぞれ取得されるが、図5では説明上、それらを省略している。また、図5の各表面形状において、+(プラス)側は上方へ盛り上がっていることを示している。
【0035】
図5に示すように、例えば走査線xの表面形状と走査線yの表面形状とを用いることで、基板2の上面2aにおいて、走査線xと走査線yとの交点Pの箇所(交点Pを含む周辺部)で盛り上がりが生じていることが分かる。これにより、歪みの箇所を交点Pの箇所と特定することができる。なお、歪みの箇所の特定は、ピンポイントの位置の特定である必要はなく、ある程度の領域として特定できればよい。
【0036】
このように、異なる方向で取得した複数列の表面形状を組み合わせることで、歪みの箇所、更にはその歪みの程度(例えば盛り上がりの程度)を特定することができる。なお、図5では盛り上がりの箇所の特定について述べたが、凹みの箇所についても同様に特定することができる。
【0037】
(4)たたき工程
この工程は、上述した工程で特定した歪みの箇所をたたくことで矯正する工程である。例えば、図5で言えば、交点Pの箇所付近をたたくことで、平面状にならし、歪みを矯正することができる。たたき工程の具体的な手法は、通常行われている手法を採用でき、手作業によるたたきや機械によるたたきなどが行われる。なお、たたき工程では、鎚打ちの強さや回数を決めてたたくことになるが、習得するまでの時間は、上記1の作業に比べるとあまりかからない。
【0038】
上記図2図5を用いて本発明の特定方法について説明したが、本発明の特定方法は、上述した方法に限定されるものではない。
【0039】
例えば、図3では、第1取得工程および第2取得工程において、レーザ照射部12を丸鋸1に対して移動させるようにしたが、これとは逆に、レーザ照射部を固定して丸鋸をX軸方向、Y軸方向に沿って移動させるようにしてもよい。なお、移動機構の構築や移動時の振動などを考慮すると、フレームに固定しやすいレーザ照射部を移動させる構成の方が好ましい。
【0040】
また、図4では、X軸方向の複数の走査線およびY軸方向の複数の走査線の各々において、隣接する走査線間の間隔を等間隔としたが、これに限らず、少なくとも1以上の間隔が他の間隔と異なるようにしてもよい。その場合の取得手法の例を図6に示す。
【0041】
図6の例では、図4と異なり、走査線間の間隔が異なっている。具体的には、X軸方向の複数の走査線x~xにおいて、隣接する走査線間の間隔は等間隔でなく、基板2の内周寄りにおける間隔Ciiが、それよりも外周側に位置する間隔Cに比べて小さくなっている(Cii<C)。また、Y軸方向の複数の走査線y~yにおいて、隣接する走査線間の間隔は等間隔でなく、基板2の内周寄りにおける間隔Civが、それよりも外周側に位置する間隔Ciiiに比べて小さくなっている(Civ<Ciii)。なお、ここでの内周寄りとは、一方向に沿った複数の走査線間の間隔の間で相対的に見た内周寄り(円中心寄り)を指す。なお、外周側から内周側に向かって、連続的または段階的に間隔が小さくなるようにしてもよい。
【0042】
例えば、図6に示すように、走査線の間隔を内周側で密となり、外周側で粗となるように設定することで、走査回数を抑えつつも、刃振れにより影響するような歪みを効率的に特定することができる。
【0043】
また、歪みの箇所の特定をより高精度に行いやすくするため、X軸方向およびY軸方向に加えて、これらの方向とは異なる方向に沿った走査線上でも表面形状を取得してもよい。この取得工程は、第3取得工程ともいえる。この場合、当該走査線は、X軸方向の複数の走査線とY軸方向の複数の走査線との交点を通ることが好ましい。例えば、図5に示すように、交点Pを通り、かつ、X軸方向およびY軸方向とは異なる方向に沿った走査線z上で基板2の表面形状を取得することができる。なお、この第3取得工程は、第1取得工程と第2取得工程の結果を踏まえて、1本の走査線でのみ表面形状を取得するようにしてもよい。
【0044】
また、本発明の方法によって得られる各走査線の表面形状を、丸鋸の歪みデータとして管理、活用することができる。例えば、その歪みデータを活用することで、顧客の信用度の向上などに繋がる。丸鋸の歪みの矯正は、ユーザー(顧客)からすれば、矯正前後において丸鋸の外観はほとんど変わらないため、信用での加工で成り立っている場合が多い。これに対して、本発明の方法で得られる丸鋸の歪みデータを顧客に提供することなどによって、加工の信憑性も上がり、また加工費も請求しやすくなるといった利点が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の特定方法は、丸鋸を再利用する際などにおいて、丸鋸の歪みの箇所の特定を精度良く行えるので、丸鋸の分野において広く利用でき、省資源化にも大きく寄与するものである。更には、顧客への信用度の向上にも寄与できるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 丸鋸
2 基板
3 取付孔
4 刃
11 レーザ装置
12 照射部
13 移動機構
14 載置台
O 円中心点
P 交点
走査線 x~x、y~y
図1
図2
図3
図4
図5
図6