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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004722
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】次世代電気自動車向けの駐車場
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/10 20060101AFI20250107BHJP
   E04H 6/42 20060101ALI20250107BHJP
   E04H 6/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
E04H6/10 A
E04H6/42 Z
E04H6/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023114081
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】599014910
【氏名又は名称】富永 淳
(72)【発明者】
【氏名】小田 駿太郎
(72)【発明者】
【氏名】富永 優斗
(72)【発明者】
【氏名】富永 淳
(72)【発明者】
【氏名】富永 聡
(72)【発明者】
【氏名】小田 浩一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】今後開発される電気自動車は車内の広い居住空間を活用して、車を「人や物を運ぶ道具」ではなく、車内で寝食が可能な「移動できる居住空間」としての利用が期待される。しかしこのタイプの電気自動車を現有の駐車場で駐車するには安全面で問題が多く、安心して駐車できない。
【解決手段】車両本体に蓄電池、上水タンク、下水タンク及び空気圧縮機を搭載して車内で飲食、トイレ、シャワー、睡眠等の日常生活が可能な次世代電気自動車(=EV車と称す)が駐車する駐車場であって、EV車単位当たりの駐車スペースが隣接するEV車との距離で2m以上離れた専用の用地を有し、駐車するEV車毎に個別又は共通で、電力及び上水を供給する設備とEV車で発生する下水を受け入れる設備を備え、予め駐車場に登録されたEV車へ電力と上水を供給し、更にEV車で発生した下水を下水処理設備に受け入れることが可能な次世代EV車向けの駐車場。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に蓄電池、上水タンク、下水タンク及び空気圧縮機を搭載して車内で飲食、トイレ、シャワー、睡眠等の日常生活が可能な次世代電気自動車(=EV車と称す)が駐車する駐車場であって、EV車単位当たりの駐車スペースが隣接するEV車との距離で2m以上離れた専用の用地を有し、駐車するEV車毎に個別又は共通で、電力及び上水を供給する設備とEV車で発生する下水を受け入れる設備を備え、予め駐車場に登録されたEV車へ電力と上水を供給し、更にEV車で発生した下水を下水処理設備に受け入れることが可能な次世代EV車向けの駐車場。
【請求項2】
前記駐車場におけるEV車の電気、上水の使用量については、駐車スペース毎に個別又は共通でその使用量を計測する計量器を備え、供給したEV車に対して個別にその使用量を計量し記録することを特徴とする請求項1に記載の次世代EV車向けの駐車場。
【請求項3】
前記駐車場におけるEV車の利用時間については駐車スペース毎にその地表面又は近傍に圧力を感知して車の存在を判断する複数の検知器を取り付け、各々の検知器が感知した時刻により、入車か、又は出車かを判断し、その時間差によりEV車の利用時間を算出することを特徴とする請求項1に記載の次世代EV車向けの駐車場。
【請求項4】
上記EV車については車両の所有者が駐車場で事故や犯罪等の危険を察知した際に、その危険を発信又は受信できる警報器を取り付け、警報器に設置された警報発信ボタンを押すことにより、所有者が予め登録した駐車場内に駐車する他のEV車に対して警報を発信すると共に、同じ警報器を通して相手方のEV車からの警報を受信できることを特徴とする請求項1に記載の次世代EV車向けの駐車場。
【請求項5】
上記駐車場の設置場所については現有の大学が自らの大学で所有する敷地に設置して、在学する大学生に駐車場として利用させると共に、同様な駐車場を全国の大学に設置し、複数の大学間で駐車場を相互に共有して利用することを特徴とする請求項1に記載の次世代EV車向けの駐車場。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は次世代の乗用車として期待される電気自動車(以下EV車と称す)を安全に駐車するための駐車場の建設に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、わが国では地震に伴う津波に加え、大雨による洪水災害が多発している。これに対する国の呼びかけは「災害発生前の早期避難」である。しかし、この警報が発せられたとしても、老人や幼子を抱える家庭では移動の方策がなく、家に留まらざるを得ず、被災するケースが多数、散見される。
【0003】
上記の緊急時に消費者が求めるものは家族の命を守る身近な用具の確保である。この目的に叶う用具として洪水時に使用できる水陸両用の車両が検討されている。この車に求められる必須条件は万一、洪水時に車内に浸水しても、絶対に沈没しない車両を提供することである。
【0004】
一方、世界の自動車業界では現在、大きな変革が起きつつある。それは地球温暖化防止の一環として化石燃料を使うガソリン車から電気自動車(=EV車)への転換である。この変革に向けて世界の主要な自動車メーカーは遅くとも21世紀半ばまでにガソリン車の生産を中止すると発表している。
【0005】
EV車は環境面の利点に加え、居住性、静粛性に優れ、現状ではこの流れは止めることのできない潮流となっている。自動車メーカー各社はこの競争に打ち勝つには「動力源となる蓄電池の改良にある」とし、高性能で劣化しにくい蓄電池の開発に莫大な投資を計画している。
【0006】
一方でEV車は「電気屋と板金工がいれば誰にでも作れる」と言われる程、個性の出し難い商品である。各社とも蓄電池の性能強化だけでは市場を独占できないことを十分に認識しており、蓄電池の開発と並行して「如何にして他社にない独自の特徴を有するEV車を提供するか」を懸命に模索している。
【0007】
この独自の特徴を有するEV車として、発明者等は本年5月に次の特許を取得した。
特許番号特許第7282322号、 特許名称「トイレ付き水陸両用の電気自動車」。
この特許は先ず車を水陸両用とし、更に水陸両用向けに車内に設置した機器を用いて車内を居間、キッチン、トイレ、洗面等として使える機能を付加した。この結果、この発明によるEV車は通常時は移動可能な居住空間として、水害時には救命ボートとして、更に避難時は退避先での仮設住宅として使えるようになった。
【0008】
このEV車は車内の床面積6m2程度で、4名が搭乗できる小型車で、家族が災害時の避難用に使う外に日常生活では家事室、勉強室等、住居の一部として利用できる。このEV車であれば、既存の駐車場に駐車する際、何ら問題は発生しない。
【0009】
更に上記の小型車の車内面積を拡大して中型車として、機能の充実を計ることは容易に可能で、時を経ずして実用されると予想される。例えば車内の床面積を9m2とすれば、車内にシャワー、寝室等の機能を付加して、車を住居の一部ではなく、住居本体としての活用が可能となる。この大きさであれば、4名程度の小家族ならば数泊の小旅行用に、大学生や単身赴任者ならば、長期間例えば1年以上に渡たって生活できる住居としての利用が可能となる。
【0010】
上記の活用例は「広く、静かで、無臭」というEV車の長所を活かした活用である。今後開発されるEV車をこのような多目的な乗用車に活用できれば、従来、移動目的が主体であった自動車の用途は大きく転換される。しかしこの転換には大きな課題が存在する。それはこの車で郊外へ出かけて既存の駐車場で駐車し宿泊することを想定した場合、安心して駐車する駐車場が非常に少ないことである。
【0011】
例えばこの車で地方に出かけ、車内で宿泊するケースを想定して見よう。現状の駐車場では搭乗者が車内でシャワーを希望しても、周囲には不特定な多数の一般車が駐車しており、個人のプライバシーの確保ができず、実行は困難である。このEV車が利用できる駐車場としては、現状ではオート・キャンピング場や道の駅の一部しかなく、その数は全国で両方を合わせても僅か3,000箇所に満たない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記の駐車場の不足を解決するため、新たな駐車場(以降EV Villageと称す)の建設を提案する。本発明の最終目標は全国の市町村の全てに隈なく公的なEV Villageを建設することであるが、本発明ではその開発の橋頭保として全国に現存する約800の大学を対象にその具体策を提供する。
【0013】
EV Villageの対象場所として大学を選んだ理由は第一にEV Villageを利用する主体が当該大学の学生であり、設備を所有する大学側とそれを活用する学生側との連携で、安全面で管理が最も確実なことである。第二にはこの構想は大学、学生更に車両を提供する自動車メーカーの何れにとってもメリットが期待でき、実用化へのスピード・アップが図れることである。
【0014】
先ず、大学側は駐車場の敷地と駐車に必要な設備を提供する。更にEV車の購入の費用が必要となるが、その費用の一部を車両メーカー側と交渉し大学側の負担を軽減を図ることが可能である。例えばEV Villageの使用の実績データをメーカー側に提供することを条件に、メーカー側に対して車の購入費用の一部または全部を負担させる。更に大学側にはEV Village建設の先陣を切ることにより。世界に先駆けて、そのパイオニアとしての知名度を高める効果も期待できる。
【0015】
EV villageを使用する学生にとっては住居と車両を同時に無償で提供を受けられる。その経済メリットは非常に大きい。EV Villageを使用する際の住居費や光熱費等の負担額については、通常は学生側の負担となろうが、その割合は大学側と学生側で適宜協議して決めれば良い。
【0016】
更にメーカー側にとってもEV VillageにおけるEV車の使用実績を大学側から一括して入手できれば、技術面で他社に先行して次の改善に繋げることが可能となる。加えて車両を入手した学生は休暇中にEV車を使って全国へ出向き、その長所を各地で無償でPRしてくれる。その宣伝効果は極めて大きい。
【0017】
以上、本発明が解決する課題は現状の地球温暖化に伴う気候変動の元で進められている自動車業界での改革、即ち「ガソリン車から電気自動車への急速な転換」に合わせて、次世代のEV車向けに既存の駐車場とは全く異なるタイプの駐車場EV Villageをタイムリーに建設することである。この発明の目指す最終目標は全国の市町村に隈なく、本発明と同様なEV車専用の駐車場を建設することである。しかしその完成には長期間を覚悟しなければならない。本発明ではその設置場所の対象として全国の約800の大学を指定し、その具体策を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
最初に本発明で対象とする次世代のEV車の概要を[図1]に示す。車の大きさは概略で車幅=2m、車長=4.5m、車高=2mで、内部の床面積は約9m2である。これは現有の大型クルーザ並みの大きさである。この車は車内に蓄電池と上水タンク、下水タンク及び空気圧縮機を搭載している。蓄電池と2基のタンクは車内の用役に空気圧縮機はタンク内の上水と下水を空気で圧送するために設置する。
【0019】
EV車は上記の機器を設置することにより、車内に電力、上水、下水及び空気を保有することが可能となり、車内で日常生活を送るための用役を全て確保できる。更に上水、電力はEV Village内の供給口より任意に補給できるので、供給が中断されることはない。
【0020】
EV車の内装について学生を対象とする代表例を同じ[図1]に示す。車内面積9m2の内、車の前半部3m2は運転席とテーブルを、中央部2m2にはキッチン、シャワー、トイレを、車の後半部4m2はベットと警報器を配置する。各設備の配置は学生向けの一例である。その仕様は使用実績により適宜変更すれば良い。
【0021】
次にこのEV車を30台駐車するEV Villageを説明する。EV車1台当たりの駐車スペースは車の周囲境界線から1.0m離すとすれば、駐車スペースの面積は車1台当たり約30m2となる。この車を30台駐車させるには幅5mの通路を含めて、約2,000m2の敷地が必要となる。EV Villageのコーナー毎に駐車場全体を監視する防犯カメラを、駐車場の入口にEV車から発生した各種のゴミを分別して回収するゴミ収集場を設置する。大学側はこの用地を確保する。駐車場内の配置の一例を[図2]に示す。
【0022】
次いでこの敷地を駐車スペースと通路とに区分けし、次の設備を配備する。第一に駐車スペースにEV車に必要な上水と電力の供給口を取り付ける。第二にはEV車で発生した下水の受入れ口を配備する。これらの設備は駐車スペース毎に独立して設置することが望ましいが、共同でも良い。上記供給口のうち、上水と電力についてはEV車への供給量を把握するため、各々計量器を取り付け、使用者は専用カードやスマホを使って使用量を計量して記録する。
【0023】
EV車と上水供給口及び出水受入れ口との接続にはEV車に備えたフレキシブホースを使用する。この際、両者が誤って接続されないよう接続口は異なるサイズとする。またの同ホースを接続したままEV車を発車する危険を防ぐため、フレキシブルホースを接続された状態でEV車が発車できないよう安全装置をEV車側に取り付ける。
【0024】
EV Villageの各駐車スペースの入口と奥には、EV車が出入りしたことを検知する検知器を取り付ける。この検知器の形式としては車の重量を検知する圧電方式の検知器を駐車スペースの地表近くに設置する。この検知器を入口と奥側の二か所に取り付ければ、検知器の検知順序により、入車か出車かを判断して駐車場の利用時間を知ることができる。これ等の設備の概要を[図3]に示す。
【0025】
更にEV Villageでは新たな異常警報システムを導入して保安面の強化を図る。通常は車の搭乗者が、何らかの危険に遭遇した場合は、スマホを通して当人が警察署、消防署に警報を発信する。本発明ではこの方式に加えて、新たな警報システムを導入する。これはEV Villageでの利用者が全て個人で単独というEV Village特有の環境下では必須の対策である。
【0026】
具体的には居住者がEV Village内で、何らかの異常を察知した際に同じEV Villageを利用している他のEV車の中から予め指定したEV車を選び、EV車に取り付けられた警報器を通して、危険警報をこの指定先に発信する。同じ相手からの警報を受信する際もこのシステムを活用する。このシステムの導入によりEV Village内に駐車する利用者は相互に身の安全を確保することが可能となる。何よりも異常を察知したら警察や消防に先駆けて、即座に仲間に助けを呼ぶことが出来るので安心である。次世代のEV車には予めこの警報器を搭載させておく。
【本発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以上、EV Villageを単独で大学構内に設置する具体策について記載した。しかし、本発明を単独の大学で実施するだけではこの方式に大きな発展は期待できない。次の展開はこのEV Villageを全国の大学に拡張して実施することである。
【0028】
次のステップはこのEV Villageを全国にある約800の大学に設置して、大学間で共通のルールを作成し、相互に利用できるシステムを構築する。これが完成すれば、学生たちは休暇を利用して都心から地方へ、又は地方から都会へ安価な費用で新たな体験をすることが出来る。EV Villageを単独の大学ではなく、全国の大学に設置して本発明の安全性と経済性を実証することが、実施に向けての最良の形態である。
【0029】
更に本発明の効果を最大限に発揮するには、自動車メーカーと学生を含む大学側の一体となった協力関係が不可欠である。大学間のEV Villageの構築はその内容が類似しているのでその完成は比較的容易である。しかしこの構想はあくまで本発明を全国の市町村規模に拡張する一里塚に過ぎない。使用する車両もスター時は学生専用向けである。ここで得られた実績を基に、一般市民を対象に次世代の電気自動車の使途がどこまで広がるか否かはこれからの重要な課題である。
【発明の効果】
【0030】
本発明は次世代のEV車が実用化され、人々がこのEV車を日常生活の一部として活用することが前提である。本発明ではこのEV車の普及を目指し、全国の大学を対象に専用駐車場を設置することを提案する。物資の溢れる現代の飽食時代にあって人々の生活趣向は大きく変わる可能性がある。僅か9m2程度の居住空間が「規律ある安全な機能空間」となるか、あるいは「飲酒運転や犯罪の温床」となるか、この成否は大学での試行に掛かっている。
【0031】
この試行は今後のEV車の販売に大きな影響を与える。試行は限られた居住空間で最小の装備と備品を用いて如何に衣食住をエンジョイできるかを検証する絶好の機会となる。試行が成功すれば、本発明はそのまま次の全国の自治体におけるEV Village建設のお手本となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の最終目標は今後10年以内に、全国の市町村の自治体で隈なく公的なEV Villageを建設することである。一方で全国の自治体の全てにEV Villageを建設するにはかなりの期間を覚悟しなければならない。この間の繋ぎとして、現状で活用できる駐車場は既に記述したようにオート・キャンプ場と一部の道の駅の駐車場に依存せざるを得ない。しかしEV車の普及状況により新たな需要が増えれば、現存の一般駐車場の一部を一時的にEV車専用に転換することは難しいことではない。
【0033】
一般の駐車場をEV向けに転換するには現状の車両一台当たりの駐車スペースを拡張すること、及び駐車場内に上水の供給設備と下水の受入れ設備を付加する。用役設備の内EV車への充電設備については現存する市街の充電設備を利用すれば良いので、EV Village内には設置が不要であり、転換時の負担増にはならない。無論この駐車場における安全面の保証は使用する側の個人責任となりかつ駐車料金は現状と同じく有償となるので、あくまでこの活用は一時的な対応である。
【0034】
更に公共のEV Village建設までの繋ぎとして、現存するホテルや旅館の専用駐車場を利用する方法も考えられる。例えばホテル側が自前のホテルに宿泊することを条件にその前後日に自前の駐車場をEV車専用の駐車場として宿泊者に提供する。利用者は安くて安全な駐車場を希望し、ホテル側も自前の駐車場を活用して集客できる効果が期待できるので、このタイプの駐車場は将来的にも残存する可能性が高い。このケースであれば、全国の観光地や温泉地にある既存の駐車場を新たなEV Villageとして、直ちに活用できる。
【0035】
以上、次世代のEV車を対象とした新たな駐車場EV Village建設について、その普及への手順と構想を記述した。車内にキッチンやトイレ、ベット等を搭載した車として、既にキャンピングカーが市販されている。しかしこの車では水害時の走行で転覆や水没の危険性があり、使用できない。既に私たちが特許を取得したEV車はこの危険度を回避して水害時にも対処できる構造としている。今、人々が求めている車は空飛ぶ車ではない。水に浮く車である。
【0036】
一方でこのEV車が売り出されても安心して駐車できる駐車場がなければその普及は困難である。今般のEV Villageの建設はこの要望に応えるため、新車の販売に合わせて専用の駐車場を提供するという謂わば車の両輪とも言える必須の提言である。以上を纏めて、本発明では5項の請求項とした。
【0037】
最後に本発明の請求範囲ではないが、このEV villageを全国の市町村に展開する構想について記載する。駐車場の数や広さは市町村毎に異なるが、個々のEV車に対して個人のプライバシーを配慮したスペースを設けること、日常生活に必要な用役をEV Village内で供給することは大学でのケースと共通である。更に駐車場の運用面で使用料金は無料とし、使用した用役コストは個人負担とすることも同ケースと同様である。この施設の利用者として、幅広い年代層が期待できる。
【0038】
まず期待できるのは子供を持つ一般家族である。今までキャンピングカーを持てなかった年代層がこの車で気軽に地方に出かけ家族ぐるみで休暇を楽しむことができる。このプランでは従来の一泊二食付き小旅行や旅行社主催の団体ツアーに満足しない幅広い世代に向けて、新たな需要が期待される。
【0039】
次いでシニア層である。子育てを終えたシニア層がこの車で地方に出かけ、数泊程度なら車内に宿泊して余暇を楽しむことができる。もし車内での生活に飽きなら、近くのホテルや温泉旅館と組み合わせて、任意なプランで行動できる。現在急速に進展中の車の自動運転化も運転が苦手のシニアにとって心強い味方になる。この傾向は移住、断捨離、卒婚等の現代のシニア季語とも合致する。大学生を対象にスタートしたEV Village構想が次に若い家族世代に受け継がれ、更にはシニア層に繋がることが、本発明が求める理想の姿である。
【0040】
一方でこの構想を全国的に展開するには解決すべき課題は残る。将来手軽な価格のEV車を購入して、全国へ自由に移住できることは、一方で住所不定の移動住民が各地に増加して、治安面での悪化が懸念される。しかし解決策は困難ではない。例えばこのEV Villageで地方に出向きその土地が気に入って数か月以上の滞在を希望する利用者には、地方自治体が当該EV Villageを公的な現住所と認めて住民票を交付し、地域住民と同等な待遇と責務を課す等の対応が考えられる。
【0041】
EV Villageの設置を検討する地方自治体側の対応は重要である。設置場所に魅力がなければ、将来への発展は期待できない。使用する側にとって魅力のないEV Villageはいずれ淘汰される。自治体はこの事態を招かぬよう慎重に計画を進める必要がある。具体的な場所の選定に当たっては、近隣に交番や消防署が存在し、外来の使用者にとって安全な場所を選ぶこと。例えば、候補地として役場の駐車場、統合により廃校となった校庭、移転した公共施設の跡地、道の駅の隣接地、等が挙げられる。いずれのケースも、駐車場の使用料は無料を前提とする。
【0042】
本発明を全国的に展開するには地方自治体のご苦労は多いが、他方で地方の魅力を全国に紹介する絶好のチャンスでもある。地方の魅力は名所旧跡だけではない。地方には都会人の知らない魅力が今だ無数に存在する。例えば、手入れの行届いた棚田、蛍の舞う清流、カエル大合唱の水田、人工衛星も見える満天の星空、野鳥が飛来する湿原、お花畑・昆虫ランド、いちご・サクランボの里、若鮎・落ち鮎の跳ねるヤナ等枚挙の暇がない。
【0043】
更に人々の旅への志向にも変化がみられる。グルメを求め、名物を買うことだけが旅の目的ではない。終戦からの復興、高度経済成長そして飽食の時代を迎え、私たちはもう一度過去の歴史を見直すことが大切である。多くの家族が自決したガマ、爆弾を抱えた若者が飛び立った基地跡、大津波に襲われたリアス海岸。これ等への鎮魂の旅にもEV Villageは十分に活用できる。
【0044】
以上繰り返しとなるが、本発明の大学向けのEV Villageの建設はあくまで全国展開へ向けた試金石である。この大学での試行で成功すれば本提案のEV Villageが全国の市町村において短期間だけの駐車空間としての利用ではなく、長期にわたる滞在を経て、延いては移住にまで繋がる可能性を示す。この変化は大学でのEV Villageとしてスタートした駐車場が本来の意味の「村(=Village)」として定着し、地方創生に寄与する可能性を示す。この移行こそが地方の活性化を目指す真の意味での「ふるさと納税」になることを心から期待したい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】 次世代EV車の大きさと車内の設備の配置を示す概略図である。
図2】 大学でのEV Village内の駐車場の配置を示す概略図である。
図3】 EV Villageでの駐車スペース内の設備の配置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0046】
1 次世代 電気自動車(平面図)
2 次世代 電気自動車(側面図)
3 帯状 衝撃緩衝器(=空気ダンパー)
4 EV車 内部 前半部(=運転席、テーブル)
5 EV車 内部 中央部(=キッチン、トイレ付きシャワー)
6 EV車 内部 後半部(=ベット、警報器)
7 フロア
8 蓄電池
9 上水タンク
10 下水タンク
11 分別ゴミ集積場
12 圧電方式 検知器
13 上水 供給口
14 下水 受入口
15 電力 供給口
16 空気圧縮機
17 警報器(=受信・発信機能 付き)
18 防犯カメラ
19 駐車スペース
20 通路
図1
図2
図3