IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人横浜国立大学の特許一覧

特開2025-47234光変調器、通信システム、および処理方法
<>
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図1
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図2
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図3
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図4
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図5
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図6
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図7
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図8
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図9
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図10
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図11
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図12
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図13
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図14
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図15
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図16
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図17
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図18
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図19
  • 特開-光変調器、通信システム、および処理方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025047234
(43)【公開日】2025-04-03
(54)【発明の名称】光変調器、通信システム、および処理方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20250326BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20250326BHJP
   H04B 10/516 20130101ALI20250326BHJP
   H04B 10/2575 20130101ALI20250326BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20250326BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
G02F1/01 C
H01Q13/08
H04B10/516
H04B10/2575 120
G02B6/12 361
G02B6/125
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155610
(22)【出願日】2023-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】中澤 遼太郎
【テーマコード(参考)】
2H147
2K102
5J045
5K102
【Fターム(参考)】
2H147AB02
2H147AB11
2H147AB15
2H147AC01
2H147BA15
2H147BD01
2H147BD02
2H147BD03
2H147BE03
2H147DA08
2H147EA12A
2H147EA12B
2H147EA12C
2K102AA21
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102DA04
2K102DB02
2K102DB04
2K102DD03
2K102EA01
5J045AA05
5J045DA10
5J045NA03
5K102AA51
5K102AB13
5K102AH02
5K102AH27
5K102PH01
5K102PH41
(57)【要約】
【課題】光変調器における導波路の光を効率よく適切に変調することのできる光変調器を提供する。
【解決手段】光変調器は、ギャップを設けた円形パッチアンテナと、前記ギャップに沿って設けられた導波路と、を備える。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギャップを設けた円形パッチアンテナと、
前記ギャップに沿って設けられた導波路と、
を備える光変調器。
【請求項2】
前記円形パッチアンテナの外形は、
真円である、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記円形パッチアンテナの外形は、
楕円である、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項4】
前記円形パッチアンテナの外形部の径方向の長さは、
前記円形パッチアンテナが受信する電波の周波数で共振させる長さである、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項5】
前記導波路の長さは、
前記円形パッチアンテナが電波と受信した際に発生させる電界の位相と、前記導波路が受ける光の位相とを整合させる長さである、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項6】
前記導波路に隣接するように設けられ、上部に前記円形パッチアンテナが設けられる微小リング共振器、
を備える請求項1に記載の光変調器。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の光変調器と、
光を電気に変調する光学電気変調器と、
前記光変調器と、前記光学電気変調器とを接続する光ファイバー網と、
を備える通信システム。
【請求項8】
ギャップを設けた円形パッチアンテナと、前記ギャップに沿って設けられた導波路と、 を備える光変調器は、
前記円形パッチアンテナが受信した電波によって発生する共振電界により、前記導波路に入射された入射光を変調する、
処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光変調器、通信システム、および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな分野で無線通信が用いられている。特許文献1には、関連する技術として、矩形パッチアンテナを用いた光変調器を備える通信システムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“Proposal of InGaAs/InAlAs multiple quantum well Mach-Zehnder modulator integrated with array of planar antennas,”Yusuke Miyazeki and Taro Arakawa 2019 Jpn. J. Appl. Phys. 58 SJJE05.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、非特許文献1に関連する通信システムでは、受信した電波によって発生する共振電界で光変調器における導波路の光を変調する際に、電波の到来方向によって電界の振動方向(偏波)が異なるため、その共振電界の大きさが大きく減衰する場合がある。そのため、偏波に依らず光変調器における導波路の光を効率よく適切に変調することのできる技術が求められている。
【0005】
本開示の各態様は、上記の課題を解決することのできる光変調器、通信システム、および処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一態様によれば、光変調器は、ギャップを設けた円形パッチアンテナと、前記ギャップに沿って設けられた導波路と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の別の態様によれば、通信システムは、上記の光変調器と、光信号を電気信号に復調する復調器と、前記光変調器と、前記復調器とを接続する光ファイバー網と、を備える。
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の別の態様によれば、処理方法は、ギャップを設けた円形パッチアンテナと、前記ギャップに沿って設けられた導波路と、を備える光変調器は、前記円形パッチアンテナが受信した電波によって発生する共振電界により、前記導波路に入射された入射光を変調する。
【0009】
本開示の各態様によれば、光変調器における導波路の光を効率よく適切に変調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態による通信システムの構成の一例を示す図である。
図2】矩形パッチアンテナを集積した光変調器の構成の一例を示す第1の図である。
図3】矩形パッチアンテナを集積した光変調器の構成の一例を示す第2の図である。
図4】光変調器100における導波路100bの構成の一例を示す図である。
図5】導波路100bの真性コアFACQWの電界屈折率変化量の一例を示す図である。
図6】矩形パッチアンテナの中央にギャップを設けた場合と設けない場合とにおいて発生する電界の違いを説明するための第1の図である。
図7】矩形パッチアンテナの中央にギャップを設けた場合と設けない場合とにおいて発生する電界の違いを説明するための第2の図である。
図8】ギャップを設けた矩形パッチアンテナおよびギャップを設けた円形パッチアンテナそれぞれで発生する共振電界の一例を示す図である。
図9】ギャップを設けた矩形パッチアンテナおよびギャップを設けた円形パッチアンテナそれぞれにおける偏波度に対する光の位相変化量の一例を示す図である。
図10】矩形パッチアンテナにおける電界と光の位相整合の考え方を説明するための図である。
図11】ギャップを設けない円形パッチアンテナにおける電界と光の位相整合の考え方を説明するための第1の図である。
図12】ギャップを設けない円形パッチアンテナにおける電界と光の位相整合の考え方を説明するための第2の図である。
図13】ギャップを設けた円形パッチアンテナにおける電界と光の位相整合の考え方を説明するための図である。
図14】ギャップを設けた円形パッチアンテナにおいて発生する電界を説明するための図である。
図15】本開示の一実施形態による円形パッチアンテナ集積型光変調器の構成の一例を示す図である。
図16】本開示の一実施形態によるギャップを設けた円形パッチアンテナの最適な寸法の一例を示す図である。
図17】円形パッチアンテナに微小リング共振器を組み合わせた場合の円形パッチアンテナ集積型光変調器の構成の一部を示す第1の図である。
図18】円形パッチアンテナに微小リング共振器を組み合わせた場合の円形パッチアンテナ集積型光変調器の構成の一部を示す第2の図である。
図19】円形パッチアンテナに微小リング共振器を組み合わせた場合の円形パッチアンテナ集積型光変調器による位相変化量の一例を示す図である。
図20】ギャップを設けた、楕円形の外形を有する円形パッチアンテナにおける共振電界の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。なお、以下の説明では、具体例として量子井戸(Five-layer Asymmetric Coupled Quantum Well、以下「FACQW」と記載)を用いた光変調器を挙げて説明する。しかしながら、本開示の実施形態による光変調器は、量子井戸(FACQW)を用いた光変調器に限定されない。本開示の実施形態による光変調器は、例えば、電気光学効果を起こすほかの材料で作られた光導波路であってもよい。
<実施形態>
(通信システムの構成)
本開示の一実施形態による通信システム1について図面を参照して説明する。通信システム1は、ギャップを設けた円形パッチアンテナで電波(例えば、ミリ波信号)を受信して生じた電界を導波路へ直接印加し、量子井戸(FACQW)構造による電界屈折率の変化により光を変調するアンテナを集積した光変調器を含むRadio over Fiber(RoF)である。図1は、本開示の一実施形態による通信システム1の構成の一例を示す図である。通信システム1は、図1に示すように、メトロネットワーク10、光変調器20、光ファイバー網30、復調器40、アンテナ50、光サーキュレーター90、および、送受信信号分離91を備える。図1には、通信機器60(例えば、携帯デバイス)が示されている。
【0012】
メトロネットワーク10は、コンシューマや法人向けの様々なサービスを収容している。光変調器20は、電気信号を光信号に変換する。光ファイバー網30は、光信号を伝送する。復調器40は、光信号を電気信号に変換する。復調器40の例としては、フォトディテクター、フォトダイオードなどが挙げられる。アンテナ50は、通信機器60との間で電波(例えば、ミリ波信号)を送受信する。アンテナ50は、ギャップを設けた円形パッチアンテナである。光サーキュレーター90は、送受信する光信号を分離する。送受信信号分離91は、送受信する電気信号を分離する。このような構成により、通信システム1は、メトロネットワーク10が収容している様々なサービスを通信機器60に提供する。そして、通信システム1における光変調器20およびアンテナ50が、円形パッチアンテナで電波(例えば、ミリ波信号)を受信して生じた電界を導波路へ直接印加し、量子井戸構造による電界屈折率の変化により光を変調するアンテナを集積した光変調器である。以下、ギャップを設けた円形パッチアンテナで電波(例えば、ミリ波信号)を受信して生じた電界を導波路へ直接印加し、量子井戸構造による電界屈折率の変化により光を変調するアンテナを集積した光変調器を、円形パッチアンテナ集積型光変調器70と呼び、この円形パッチアンテナ集積型光変調器70について主に説明する。
【0013】
(矩形パッチアンテナ)
本開示の一実施形態による円形パッチアンテナで電波(例えば、ミリ波信号)を受信して生じた電界を導波路へ直接印加し、量子井戸構造による電界屈折率の変化により光を変調するアンテナを集積した光変調器についての理解を容易にするために、まず、一般的に知られている矩形パッチアンテナについて説明する。
【0014】
図2は、矩形パッチアンテナを集積した光変調器100の構成の一例を示す第1の図である。図3は、矩形パッチアンテナを集積した光変調器100の構成の一例を示す第2の図である。光変調器100は、例えば、非特許文献1に記載されている光変調器である。光変調器100は、図2に示すように、アンテナ100a、および導波路100bを備える。アンテナ100aは、矩形パッチアンテナである。アンテナ100aは、図3に示すように、光導波路を介して、後述するFeドープ半絶縁性InP基板に接続される。光変調器100では、アンテナ100aでミリ波信号を受信して生じた電界を、その下の導波路100bへと直接印加して、導波路100bに採用している量子井戸構造による電界印加時の屈折率変化(電界屈折率変化)の効果によって光を電波で直接変調している。
【0015】
図4は、光変調器100における導波路100bの構成の一例を示す図である。図4は、導波路100bの断面を示している。導波路100bは、図4に示すように、Fe-InP基板上にn形InP、真性InGaAlAs、真性コア五層非対称結合量子井戸(Five-layer Asymmetric Coupled Quantum Well、FACQW)、真性InGaAlAs、真性InP、p形InPを順に積層した構造となっている。
【0016】
図5は、導波路100bの真性コアFACQWの電界屈折率変化量Δnの一例を示す図である。導波路100bは、真性コアFACQWにおいて、図5に示すような非常に大きな電界屈折率変化量Δnが得られるよう、図4に示すような量子井戸構造となっている。
【0017】
その結果、光変調器100は、真性コアFACQWに、アンテナ100aによって生じた共振電界を印加することによって真性コアFACQWの屈折率が変化し、真性コアFACQWを通る光の位相を受信電波によって直接変調する。
【0018】
図6は、矩形パッチアンテナ100aの中央にギャップを設けた場合と設けない場合とにおいて発生する電界の違いを説明するための第1の図である。図7は、矩形パッチアンテナ100aの中央にギャップを設けた場合と設けない場合とにおいて発生する電界の違いを説明するための第2の図である。図6の(a)の部分は、矩形パッチアンテナ100aにギャップを設けない場合の矩形パッチアンテナ100aの構成と、発生する電界の一例を示している。図6の(b)の部分は、矩形パッチアンテナ100aの中央にギャップを設けた場合の矩形パッチアンテナ100aの構成と、発生する電界の一例を示している。また、図7の(b)の部分は、図7の(a)の部分に示すL1からL2までの断面上の位置に応じた電界増幅率(受信電界の大きさを1としたきの増倍率)を示している。
【0019】
ギャップを設けない矩形パッチアンテナ100aの場合、図6の(a)の部分に示すように、矩形パッチアンテナ100aの端においてのみ共振電界が発生する。その一方で、矩形パッチアンテナ100aの中央にギャップを設けた場合、図6の(b)の部分に示すように、矩形パッチアンテナ100aの外側の端に加えてギャップを設けた側の端にも共振電界が発生する。その結果、図7の(b)の部分に示すように、ギャップを設けた側の端における電界増幅率が高くなる。
【0020】
導波路100bは、図6の(b)の部分や図7の(a)の部分に示すように、ギャップに沿って設けられる。そのため、矩形パッチアンテナ100aの中央にギャップを設けた場合、ギャップを設けない矩形パッチアンテナ100aに比べて、そのギャップを設けたことにより発生する共振電界を導波路100bに印加させることが可能となる。その結果、矩形パッチアンテナ100aの中央にギャップを設けた場合、ギャップを設けない矩形パッチアンテナ100aに比べて、共振電界により、非常に大きく光を変調することが可能となる。
【0021】
(円形パッチアンテナ)
後述するように、中央にギャップを設けた矩形パッチアンテナ100aには、電界の振動方向(偏波)に対して特性が劣化する(具体的には、電界の振動方向の違いによって共振電界が小さくなる箇所がある)という欠点がある。そこで、本開示の一実施形態による通信システム1は、光変調器20およびアンテナ50として、ギャップを設けた円形パッチアンテナを含む円形パッチアンテナ集積型光変調器70を備える。
【0022】
図8は、ギャップを設けた矩形パッチアンテナ100aおよびギャップを設けた円形パッチアンテナ50それぞれで発生する共振電界の一例を示す図である。図8の(a)の部分は、ギャップを設けた矩形パッチアンテナ100aで発生する共振電界を示している。図8の(b)の部分は、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50で発生する共振電界を示している。図8の(c)の部分は、偏波面の角度θ(以下、偏波角θと記載)を示している。図8の(a)の部分に示すように、ギャップを設けた矩形パッチアンテナ100aでは、電波の偏波面(すなわち、共振電界の方向)によって共振長が変化するために、共振方向が変化すると共振電界の特性が劣化する(共振電界が小さくなる箇所がある)。それに対して、円形パッチアンテナ50では、電波の偏波面(すなわち、共振電界の方向)によって共振長が変化しない。そのため、図8の(b)の部分に示すように、円形パッチアンテナ50で発生する共振電界は、矩形パッチアンテナ100aで発生する共振電界に比べて、電界の振動方向(偏波)が変化した場合であっても大きいままでほぼ一定である。すなわち、円形パッチアンテナ50で発生する共振電界は、電界の振動方向(偏波)に対して特性が劣化しない。なお、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50では、そのギャップにより、上述した共振電界が大きくなるという効果に加えて、後述するような電界と光との位相を整合させることができるという効果が得られる。図8の(c)の部分に示すように、偏波度θは、アンテナの中央から左向きを基準(すなわち、0度)とする角度で表される。
【0023】
図9は、ギャップを設けた矩形パッチアンテナ100aおよびギャップを設けた円形パッチアンテナ50それぞれにおける偏波度θに対する光の位相変化量の一例を示す図である。ギャップを設けた矩形パッチアンテナ100aでは、図9に示すように、偏波度θが大きくなるにつれて位相変化量が低下する。一方、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50では、図9に示すように、偏波度θが大きくなっても光変調器20における光の位相変化量が大きいままほぼ一定である。
【0024】
ここで、ギャップを設けた矩形パッチアンテナ100aとギャップを設けた円形パッチアンテナ50による光の位相変化量に違いが生じる原因について説明する。図9に示す光の位相変化量は、変調時の位相変化量である。共振電界の大きさと光導波路における位相変化量は、屈折率変化量に概ね比例することが知られている。そのため、図9における縦軸は、光導波路に印加される共振電界の大きさを表していると考えることができる。電界の振動方向が矩形パッチアンテナ100aにとってベストな方向(θ=0)である場合、矩形パッチアンテナ100aの光の位相変化量は、円形パッチアンテナ50の光の位相変化量とほぼ同等である。また、偏波がベストな方向(θ=0)から傾くほど、矩形パッチアンテナ100aにおける共振電界の大きさが小さくなる。そのため、矩形パッチアンテナ100aの位相変化量が小さくなる。一方、円形パッチアンテナ50では、どの偏波の電波を受信した場合であっても、矩形パッチアンテナ100aにとってベストな方向(θ=0)の場合の共振電界と同じ程度の共振電界を発生させ光導波路に印加させることができる。従って、円形パッチアンテナ50では、どの偏波でも効率良く電波を受信できるため、さまざまな偏波の電波が到来する場合には、円形パッチアンテナ50は、矩形パッチアンテナ100aに比べて、トータルで効率の良い位相変化を得ることができる。このように、円形パッチアンテナ50では、電波の電界振動方向(偏波)にかかわらず光の位相変化特性をほぼ一定にできる。
【0025】
(電界と光の位相整合)
電界と光の位相整合の考え方について説明する。本開示の実施形態における「電界と光の位相整合」とは、「電波の振動周期と光がアンテナにおけるギャップ部分を通過する時間とを合わせる(一致させる)こと」である。図10は、矩形パッチアンテナ100aにおける電界と光の位相整合の考え方を説明するための図である。図10に示されているTRFは、電波の振動周期を表している。つまり、TRF/4は、電波の周期の4分の1の時間を表している。図10の(a)の部分は、電界と光の位相整合を考慮しない場合(すなわち、矩形パッチアンテナ100aのギャップに沿って設けられる導波路100bの長さが考慮されていない場合の一例であり、所望の長さに対して長い場合)の共振電界と光の進行とを示している。また、図10の(b)の部分は、電界と光の位相整合を考慮した場合(すなわち、矩形パッチアンテナ100aのギャップに沿って設けられる導波路100bの長さが考慮されており、所望の長さとなっている場合)の共振電界と光の進行とを示している。なお、所望の長さとは、時刻t=TRF/2でちょうど光が導波路100bを通過し終わる導波路100bの長さである。
【0026】
時刻t=0から時刻t=TRF/2までの間、図10の矩形パッチアンテナ100aの上方側の部分に正の共振電界が発生し、図10の矩形パッチアンテナ100aの下方側の部分に負の共振電界が発生する。時刻t=0に矩形パッチアンテナ100aのギャップ部分に侵入した光は、時刻t=0以降正の位相変化を受け始める。そして、導波路100bが所望の長さよりも長い場合、すなわち、図10の(a)の部分に示すように、時刻t=TRF/2以降に光が導波路100b内部を通過している場合、図10の(a)の部分に示すように、矩形パッチアンテナ100aの上方側の部分に負の共振電界が発生し、矩形パッチアンテナ100aの下方側の部分に正の共振電界が発生する。このように、導波路100bが所望の長さよりも長い場合、時刻t=TRF/2以降にも光が導波路100b内部を通過することとなり、時刻t=0から時刻t=TRF/2までの間に発生する共振電界とは逆の極性を有する共振電界が矩形パッチアンテナ100aに発生する。つまり、時刻t=TRF/2以降、光は、その逆の極性を有する共振電界により、負の位相変化を受け始める。その結果、時刻t=0から時刻t=TRF/2までの間に発生した共振電界による光の位相変化が、時刻t=TRF/2以降に発生したその逆の極性を有する共振電界による光の位相変化により打ち消されることになる。
【0027】
一方、導波路100bが所望の長さである場合、すなわち、図10の(b)の部分に示すように、時刻t=TRF/2に光が導波路100bからちょうど出る場合、時刻t=TRF/2以降に矩形パッチアンテナ100aに発生した逆の極性を有する共振電界による光の位相変化は生じない。その結果、時刻t=0から時刻t=TRF/2までの間に発生した共振電界による光の位相変化は、導波路100bが所望の長さよりも長い場合のように、時刻t=TRF/2以降に打ち消されることはない。つまり、矩形パッチアンテナ100aにおいてギャップに沿って設けられる導波路100bの長さは、時刻t=TRF/2でちょうど光がその導波路100bを通過し終わる長さにすることが望ましいことがわかる。
【0028】
次に、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50における電界と光の位相整合の考え方について説明する。矩形パッチアンテナ100aにおいてギャップに沿って設けられる導波路100bの長さは、時刻t=TRF/2でちょうど光がその導波路100bを通過し終わる長さにすることが望ましい、という考えは、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50にも適用することができる。
【0029】
なお、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50における電界と光の位相整合の考え方の理解を容易にするために、ここでは、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aにおける電界と光の位相整合の考え方についても説明する。図11は、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aにおける電界と光の位相整合の考え方を説明するための第1の図である。図12は、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aにおける電界と光の位相整合の考え方を説明するための第2の図である。図13は、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50における電界と光の位相整合の考え方を説明するための図である。まず、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aにおける電界と光の位相整合の考え方について、図11図12を参照して説明する。図11に示す導波路200bは、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aの外周の図11の上方側を左側から右側へ光が通過する構成となっている。それに対して、図12に示す導波路200bは、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aの外周の図12の上方側を左側から右側へ光が通過し、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aの外周の図12の下方側を通って左側に光が戻り出力される構成となっている。円形パッチアンテナ200aの外側の端部(すなわち、円形パッチアンテナ200aの外形部)は、円形パッチアンテナ200aが送受信する電波の周波数で共振するよう決定される。なお、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aは、所望の長さよりも長い導波路200bを有する円形パッチアンテナの一例である。なお、図11図13の説明において発生する共振電界は、一例であり、偏波角θ=90度の場合の共振電界を示している。
【0030】
まず、図11に示すギャップを設けない円形パッチアンテナ200aにおける電界と光の位相整合の考え方について説明する。光が時刻t=0にギャップを設けない円形パッチアンテナ200aに侵入すると、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aは、時刻t=0以降正の位相変化を受け始め、時刻t=0から時刻t=TRF/4までの間、図11のギャップを設けない円形パッチアンテナ200aの図11の上方側の部分に正の共振電界が発生し、図11のギャップを設けない円形パッチアンテナ200aの図11の下方側の部分に負の共振電界が発生する。時刻t=0にギャップを設けない円形パッチアンテナ200aに侵入した光は、時刻t=0以降正の位相変化を受け始める。ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aでは、導波路200bが所望の長さよりも長いため、図11に示すように、時刻t=TRF/2以降に光が導波路200b内部を通過する。この場合、図11に示すように、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aの図11の上方側の部分に負の共振電界が発生し、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aの図11の下方側の部分に正の共振電界が発生する。このように、導波路200bが所望の長さよりも長い場合、時刻t=TRF/2以降にも光が導波路200b内部を通過することとなり、時刻t=0から時刻t=TRF/2までの間に発生する共振電界とは逆の極性を有する共振電界がギャップを設けない円形パッチアンテナ200aに発生する。その結果、時刻t=0から時刻t=TRF/2までの間に発生した正の共振電界による光の位相変化が、時刻t=TRF/2以降に発生したその逆の極性を有する負の共振電界による光の位相変化により打ち消されることになる。
【0031】
次に、図12に示すギャップを設けない円形パッチアンテナ200aにおける電界と光の位相整合の考え方について説明する。時刻t=0から時刻t=TRF/4までの間、図12のギャップを設けない円形パッチアンテナ200aの上方側の部分に正の共振電界が発生し、図12のギャップを設けない円形パッチアンテナ200aの図12の下方側の部分に負の共振電界が発生する。時刻t=0にギャップを設けない円形パッチアンテナ200aに侵入した光は、時刻t=0以降正の位相変化を受け始める。ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aでは、導波路200bが所望の長さよりも長いため、図12に示すように、時刻t=TRF/2の時点で光はまだ導波路200bの図12の上側内部を通過する。時刻t=TRF/2以降、共振電界は逆の極性となり、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aの図12の上方側の部分に負の共振電界が発生し、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aの図12の下方側の部分に正の共振電界が発生する。そのため、この場合、時刻t=0から時刻t=TRF/2までの間に発生した正の共振電界による光の位相変化が、時刻t=TRF/2以降の負の共振電界による光の位相変化により打ち消されることになる。
【0032】
次に、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50における電界と光の位相整合の考え方について図13を参照して説明する。図13に示すように、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50では、導波路100bはギャップに沿って設けられる。そのため、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50の場合、ギャップの長さを調整することにより、導波路100bを所望の長さに調整することができる。この場合の所望の長さとは、光が時刻t=0にギャップを設けた円形パッチアンテナ50に侵入した場合、時刻t=TRF/2で円形パッチアンテナ50の図13の上方側の導波路100bをちょうど通過し終わり、その後、光が円形パッチアンテナ50の図13の下方側の導波路100bを通って時刻t=TRFで導波路100bを通過し終わる導波路100bの長さである。時刻t=0から時刻t=TRF/4までの間、図13のギャップを設けた円形パッチアンテナ50の図13の上方側のギャップの外側部分に正の共振電界、上方側のギャップの内側部分に負の共振電界が発生し、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50の図13の下方側のギャップの外側部分に負の共振電界、下方側のギャップの内側部分に正の共振電界が発生する。導波路100bが所望の長さに調整されたギャップを設けた円形パッチアンテナ50の場合、図13に示すように、時刻t=0にギャップを設けた円形パッチアンテナ50の外側導波路に侵入した光は、時刻t=0以降正の位相変化を受け始める。そして、時刻t=TRF/2まで、光は、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50の図13の上側の導波路100bの部分を通過する。また、時刻t=TRF/2以降、光は、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50の図13の下側の導波路100bの部分を通過する。なお、時刻t=TRF/2以降、共振電界の極性が逆になり、図13のギャップを設けた円形パッチアンテナ50の図13の上方側のギャップの外側部分に負の共振電界、上方側のギャップの内側部分に正の共振電界が発生し、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50の図13の下方側のギャップの外側部分に正の共振電界、下方側のギャップの内側部分に負の共振電界が発生する。つまり、時刻t=TRF/2以降も、光は、正の位相変化を受け続ける。その結果、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50の場合、逆の極性を有する共振電界による光の位相変化により変調の効果が打ち消されることはない。また、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50では、ギャップを設けた矩形パッチアンテナ100aや図11に示すギャップを設けない円形パッチアンテナ200aに比べて、光が正の位相変化を受ける時間を2倍にすることができる。そのため、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50では、ギャップを設けた矩形パッチアンテナ100aや図11に示すギャップを設けない円形パッチアンテナ200aに比べて、変調の効果が2倍に増大される(変調量が2倍になる)。
【0033】
図14は、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50において発生する電界を説明するための図である。図14の(b)の部分は、図14の(a)の部分に示すL1からL2までの断面上の位置に応じた電界増幅率を示している。
【0034】
円形パッチアンテナ50の中央にギャップを設けた場合、図14の(b)の部分に示すように、円形パッチアンテナ50の外側の端に加えてギャップを設けた円形パッチアンテナ50の端にも共振電界が発生する。その結果、図14の(b)の部分に示すように、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50の端における電界増幅率が高くなる。その結果、中央にギャップを設けた円形パッチアンテナ50では、ギャップを設けない円形パッチアンテナ200aに比べて、共振電界により、非常に大きく光を変調することが可能となる。なお、ギャップを設けていない円形パッチアンテナ200aの場合、アンテナの端に共振電界が発生しそれ以外のところでは共振電界が発生しない。
【0035】
(円形パッチアンテナ集積型光変調器)
図15は、本開示の一実施形態による円形パッチアンテナ集積型光変調器70の構成の一例を示す図である。円形パッチアンテナ集積型光変調器70は、図15に示すように、アンテナ50、および導波路100bを備える。アンテナ50は、中央にギャップを設けた円形パッチアンテナである。アンテナ50は、光導波路を介して、Feドープ半絶縁性InP基板に接続される。円形パッチアンテナ集積型光変調器70では、アンテナ50で電波(例えば、ミリ波信号)を受信して生じた電界を、その下の導波路100bへと直接印加して、導波路100bに採用している量子井戸構造による電界屈折率変化の効果によって光を電波で直接変調している。円形パッチアンテナ集積型光変調器70の構成は、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50の上述した利点を活かすために、図2に示す矩形パッチアンテナ100aの代わりに中央にギャップを設けた円形パッチアンテナ50に置き換えた構成である。マッハ・ツェンダー干渉系となっており、差動動作(プッシュ・プル動作)により、効率の良い光強度変調が行える。
【0036】
上述したように、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50では、円形パッチアンテナ50の外形部の径方向の長さを調整することにより、円形パッチアンテナ50が送受信する電波の周波数で共振させることができ、かつ、ギャップを設ける位置を考慮する(すなわち、光位相変調部の長さを考慮する)ことにより、電界と光の位相を整合させることができる。例えば、電波の周波数をf、電界と光の位相を整合させるためのアンテナにおける光位相変調部の長さをLとする。この場合、光がアンテナにおける光位相変調部の長さLに相当する導波路100bを通過する時間は、電波の1周期に等しい。そのため、アンテナにおける変調部の長さをLは、式(1)のように表すことができる。
【0037】
【数1】
【0038】
ただし、TRFは電波の周期、cは真空中の光速、nは導波路100bのコア層の群屈折率(例えば、図3における真性コアFACQWの群屈折率)である。電波の周波数fが60GHz(TRF=1/(60×10E-9)秒)とし、導波路100bのコア層の群屈折率nとして導波路100bの等価屈折率n=3.233を用いると、アンテナにおける変調部の長さLは、式(1)から、L=(3×10E+8)/3.233×1.667×10E-12≒1546.8マイクロメートルとなる。
【0039】
図16は、本開示の一実施形態によるギャップを設けた円形パッチアンテナ50の最適な寸法の一例を示す図である。図16に示すギャップ半径は、電波と光の位相整合がとれ、電波の偏波角に依らず位相変化量が一定となるギャップ半径246マイクロメートルである。なお、図16における円形パッチアンテナ50の外形部の径方向の長さ330マイクロメートルは、電波の周波数fが60GHzであり、導波路100bのコア層の群屈折率nが3.233の場合の寸法である。
【0040】
以上、本開示の一実施形態による通信システム1について説明した。通信システム1の円形パッチアンテナ集積型光変調器70(光変調器の一例)は、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50と、前記ギャップに沿って設けられた導波路100bと、を備える。
【0041】
この円形パッチアンテナ集積型光変調器70(光変調器の一例)により、円形パッチアンテナ50のギャップに沿って導波路100bが設けられることにより、ギャップを設けた円形パッチアンテナ50が受信する電波により発生する共振電界が電波の振動方向によらず強くほぼ一定の大きさとなる。また、その強くほぼ一定の大きさの共振電界により、導波路100bにおける光を直接変調することができる。その結果、光変調器における導波路の光を効率よく適切に変調することができる。
【0042】
なお、本開示の別の実施形態による通信システム1の円形パッチアンテナ集積型光変調器70は、円形パッチアンテナ50に微小リング共振器80を組み合わせるものであってもよい。図17は、円形パッチアンテナ50に微小リング共振器80を組み合わせた場合の円形パッチアンテナ集積型光変調器70の構成の一部を示す第1の図である。図18は、円形パッチアンテナ50に微小リング共振器80を組み合わせた場合の円形パッチアンテナ集積型光変調器70の構成の一部を示す第2の図である。
【0043】
微小リング共振器80は、図17に示すように、導波路100bに隣接するように設けられる。微小リング共振器80は、マイクロリング共振器である。図18に示すように、その微小リング共振器80の上部に、円形パッチアンテナ50が設けられる。円形パッチアンテナ50により、微小リング共振器80のリング部に電界屈折率の変化が生じ位相変調が行われる。円形パッチアンテナ50に微小リング共振器80を組み合わせた場合の円形パッチアンテナ集積型光変調器70は、微小リング共振器80のリング部に導波路100bから光が閉じ込められて、そのリング部を光が何回も繰り返し通過することにより共振するような構造となっている。リング部を光が何回も繰り返し通過することにより、共振時に光がリング部を通過する際に得られる位相変化量が増大する。そのため、リング部を光が1回通過することによる位相変化量が不十分な場合であっても、リング部を光が何回も繰り返し通過することにより、円形パッチアンテナ50に微小リング共振器80を組み合わせた場合の円形パッチアンテナ集積型光変調器70では、大きな位相変化量となって光を取り出すことができる。微小リング共振器80は円形である。そのため、円形パッチアンテナ50を用いることにより、微小リング共振器80全体に対して電界を印加することができる。また、円形パッチアンテナ50においてギャップ位置(すなわち、アンテナにおける変調部の長さ)を調整することにより電界と光の位相を整合させることができる。その結果、円形パッチアンテナ50に微小リング共振器80を組み合わせた場合の円形パッチアンテナ集積型光変調器70では、微小リング共振器80を用いない場合に比べて、位相変化量を大きくすることができる。なお、位相整合しない場合、光がほとんど変調されなくなる。そのため、微小リング共振器を用いる場合に、位相整合がとれることは極めて重要である。
【0044】
図19は、円形パッチアンテナ50に微小リング共振器80を組み合わせた場合の円形パッチアンテナ集積型光変調器70による位相変化量φの一例を示す図である。αは導波路100bの損失である。また、Kは導波路100bと微小リング共振器80の結合効率である。ギャップを設けた円形パッチアンテナ50に微小リング共振器80を組み合わせた場合の円形パッチアンテナ集積型光変調器70では、図19に示すように、微小リング共振器80を用いないギャップを設けた円形パッチアンテナ50を備える円形パッチアンテナ集積型光変調器70や、微小リング共振器80を用いないギャップを設けた矩形パッチアンテナ100aを備える光学電気変調器100に比べて、大きな位相変化量φを得ることができる。
【0045】
また、本開示の別の実施形態による通信システム1の円形パッチアンテナ集積型光変調器70は、ギャップを設けた、楕円形の外形を有する円形パッチアンテナ50を備えるものであってもよい。図20は、ギャップを設けた、楕円形の外形を有する円形パッチアンテナ50における共振電界の一例を示す図である。ギャップを設けた、楕円形の外形を有する円形パッチアンテナ50では、偏波面によってアンテナ長が変化するため共振周波数が変化する。よって、ギャップを設けた、楕円形の外形を有する円形パッチアンテナ50を備える円形パッチアンテナ集積型光変調器70では、偏波による共振周波数の選択性を持たせることができる。
【0046】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、開示の範囲を限定しない。これらの実施形態は、開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、省略、置き換え、変更を行ってよい。
【0047】
なお、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0048】
(付記1)
ギャップを設けた円形パッチアンテナと、
前記ギャップに沿って設けられた導波路と、
を備える光変調器。
【0049】
(付記2)
前記円形パッチアンテナの外形は、
真円である、
付記1に記載の光変調器。
【0050】
(付記3)
前記円形パッチアンテナの外形は、
楕円である、
付記1に記載の光変調器。
【0051】
(付記4)
前記円形パッチアンテナの外形部の径方向の長さは、
前記円形パッチアンテナが受信する電波の周波数で共振させる長さである、
付記1から付記3の何れか1つに記載の光変調器。
【0052】
(付記5)
前記導波路の長さは、
前記円形パッチアンテナが電波と受信した際に発生させる電界の位相と、前記導波路が受ける光の位相とを整合させる長さである、
付記1から付記4の何れか1つに記載の光変調器。
【0053】
(付記6)
前記導波路に隣接するように設けられ、上部に前記円形パッチアンテナが設けられる微小リング共振器、
を備える付記1から付記5の何れか1つに記載の光変調器。
【0054】
(付記7)
付記1から付記6の何れか1つに記載の光変調器と、
光を電気に変調する光学電気変調器と、
前記光変調器と、前記光学電気変調器とを接続する光ファイバー網と、
を備える通信システム。
【0055】
(付記8)
ギャップを設けた円形パッチアンテナと、前記ギャップに沿って設けられた導波路と、 を備える光変調器は、
前記円形パッチアンテナが受信した電波によって発生する共振電界により、前記導波路に入射された入射光を変調する、
処理方法。
【符号の説明】
【0056】
1・・・通信システム
5・・・コンピュータ
6、205・・・CPU
7・・・メインメモリ
8・・・ストレージ
9・・・インターフェース
10・・・メトロネットワーク
20、100・・・光変調器
30・・・光ファイバー網
40・・・復調器
50・・・アンテナ(ギャップを設けた円形パッチアンテナ)
60・・・通信機器
70・・・円形パッチアンテナ集積型光変調器
100a・・・アンテナ(ギャップを設けた矩形パッチアンテナ)
100b・・・光導波路
200a・・・アンテナ(ギャップを設けない円形パッチアンテナ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20