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特開2025-4726樹脂組成物、それを用いたプリプレグおよび金属箔張積層板、ならびに樹脂組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004726
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物、それを用いたプリプレグおよび金属箔張積層板、ならびに樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20250107BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C08F290/06
C08J5/24 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148025
(22)【出願日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2023104471
(32)【優先日】2023-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100227008
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(72)【発明者】
【氏名】早川 祥一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥一
(72)【発明者】
【氏名】金城 浩太
【テーマコード(参考)】
4F072
4J127
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AD42
4F072AE01
4F072AF14
4F072AF15
4F072AF23
4F072AF29
4F072AG03
4F072AJ22
4F072AL13
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB161
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD231
4J127BG051
4J127BG05Y
4J127BG141
4J127BG14Y
4J127CB301
4J127CB352
4J127CC031
4J127CC111
4J127DA15
4J127DA24
4J127DA61
4J127FA01
4J127FA03
4J127FA38
(57)【要約】
【課題】ポリフェニレンエーテル化合物およびマレイミド化合物を含む均一な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】一実施形態によると、末端に炭素-炭素二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物100質量部と、マレイミド化合物30~300質量部と、芳香族系有機溶剤10~160質量部と、シクロケトン10~500質量部と、アミド系溶剤10~310質量部とを含む樹脂組成物が提供される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に炭素-炭素二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物100質量部と、
マレイミド化合物30~300質量部と、
芳香族系有機溶剤10~160質量部と、
シクロケトン10~500質量部と、
アミド系溶剤10~310質量部と
を含む樹脂組成物。
【請求項2】
(芳香族系有機溶剤+シクロケトン+アミド系溶剤の合計質量部)/(ポリフェニレンエーテル化合物+マレイミド化合物の合計質量部)=0.65~9.7を満たす、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
シクロケトン(質量部)/マレイミド化合物(質量部)=0.2~8.0であり、アミド系溶剤(質量部)/マレイミド化合物(質量部)=0.2~4.0である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリフェニレンエーテル化合物は下記一般式(1)で表される構造を有する、請求項1に記載の樹脂組成物:
【化1】

[式(1)において、
Xは芳香環を含む基を表し;
-(Y-O)n1-は、置換基を有していてもよいポリフェニレンエーテル構造を表し;
n1は1~100の整数を表し;
n2は1~4の整数を表し;
Rxは、以下の式(Rx-1)または式(Rx-2)で表される基であり;
【化2】

式(Rx-1)および式(Rx-2)において、
、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基からなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよく;
*は、酸素原子との結合部位であり;
Mcは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表し;
zは0~4の整数を表し;
rは1~4の整数を表す]。
【請求項5】
前記ポリフェニレンエーテル化合物は、500~5000の数平均分子量(Mn)を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記マレイミド化合物は、2つ以上のマレイミド基を有する化合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記マレイミド化合物は下記一般式(M-1)で表される構造を有する、請求項1に記載の樹脂組成物:
【化3】

[式(M-1)において、
Zは2価の連結基であり、該2価の連結基は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR21-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)NR21-、インダンに由来する2価の基、式(m1)で表される基およびこれらの組合せからなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよい(ここで、R21は、水素原子またはメチル基である)]。
【化4】
【請求項8】
前記マレイミド化合物は下記一般式(M-2)で表される構造を有する、請求項1に記載の樹脂組成物:
【化5】

[式(M-2)において、
Wは2価の連結基であり、該2価の連結基は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR21-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)NR21-、インダンに由来する2価の基、およびこれらの組合せからなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよく(ここで、R21は、水素原子またはメチル基である);
tは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基、マレイミド基、ヒドロキシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリルエーテル基、2-プロペニル基およびこれらの組合せからなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよく;
mは、それぞれ独立に、0~4の整数である]。
【請求項9】
前記シクロケトンは、シクロヘキサノン、シクロペンタノンおよびシクロヘプタノンからなる群より選択される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記アミド系溶剤は、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN-メチル-2-ピロリジノンからなる群より選択される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
架橋剤をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記架橋剤は、アルケニルイソシアヌレート化合物、(メタ)アリルイソシアヌレート化合物、シアヌル酸トリ(メタ)アリル化合物、多官能メタクリレート化合物、多官能アクリレート化合物、多官能ビニル化合物、多官能ビニルフェニル基化合物、スチレン誘導体、および多官能イソシアネート化合物からなる群より選択される、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
基材と、請求項1~12のいずれか一項に記載の樹脂組成物とを用いて作製されたプリプレグ。
【請求項14】
請求項13に記載のプリグレグから形成された少なくとも1つの層と、前記プリプレグから形成された層の片面または両面に配置された金属箔とを含む、金属箔張積層板。
【請求項15】
マレイミド化合物、シクロケトンおよびアミド系溶剤を混合して混合物を得ることと、
次いで、前記混合物に、末端に炭素-炭素二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物および芳香族系有機溶剤を加えて混合することと
を含み、
ポリフェニレンエーテル化合物100質量部に対して、マレイミド化合物は30~300質量部、芳香族系有機溶剤は10~160質量部、シクロケトンは10~500質量部、アミド系溶剤は10~310質量部添加される
樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、それを用いたプリプレグおよび金属箔張積層板、ならびに樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信の大容量化および高速化の進歩は著しく、電子機器や通信機器等に用いられる材料の開発や改良が求められている。特に、ポリフェニレンエーテル化合物は、優れた電気特性を有していることから、電子機器のプリント配線板用の材料として広く用いられている。中でも、ポリフェニレンエーテル化合物を用いた樹脂組成物が多く提案されている。情報通信のための信号伝達速度の高速化を実現するためには、材料の誘電率を低減することが望ましい。また、信号伝送時の信号損失を低減させるためには、誘電正接を低減することが望ましい。このような誘電率の低減および信号損失の低減のためには、ポリフェニレンエーテル化合物を含む樹脂組成物に、架橋性化合物として耐熱性に優れたマレイミド化合物を添加することが好ましいという知見がある。
【0003】
しかしながら、マレイミド化合物は、溶剤への溶解性が低いという課題を有している。電子機器や通信機器等に用いるための樹脂組成物の溶剤としては、電気特性が優れるエラストマー等の添加剤の溶解性が高いことから、芳香族系有機溶剤が選択されることが多い。上述したポリフェニレンエーテル化合物も、芳香族系有機溶剤への溶解性が高い。一方、マレイミド化合物は、一般的に芳香族系有機溶剤への溶解性が低く、ポリフェニレンエーテル化合物とマレイミド化合物とを含む樹脂組成物を調製した場合、マレイミド化合物が析出して均一な樹脂組成物を調製できないという課題がある。また電子機器や通信機器等に用いるための樹脂組成物の溶剤としてメチルエチルケトンに代表されるケトン溶媒が選択されることも多い。マレイミド化合物はケトン溶媒への溶解性が高い一方で、ポリフェニレンエーテル化合物はケトン溶媒への溶解性が低く、メチルエチルケトンを用いてポリフェニレンエーテル化合物とマレイミド化合物とを含む樹脂組成物を調製した場合、ポリフェニレンエーテル化合物が析出して均一な樹脂組成物を調製できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許2014/275377号明細書
【特許文献2】米国特許2014/322545号明細書
【特許文献3】米国特許2014/349090号明細書
【特許文献4】米国特許2015/44485号明細書
【特許文献5】米国特許2018/208765号明細書
【特許文献6】米国特許2020/71477号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような背景のもと、ポリフェニレンエーテル化合物およびマレイミド化合物を含む均一な樹脂組成物を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述したような課題を解決すべく、本発明者は鋭意研究した結果、ポリフェニレンエーテル化合物およびマレイミド化合物を、所定の割合で、所定の溶剤と混合した場合に、溶け残りや析出が抑制され、均一な樹脂組成物を得られることを見出した。
本発明は、例えば以下のとおりである。
[1] 末端に炭素-炭素二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物100質量部と、
マレイミド化合物30~300質量部と、
芳香族系有機溶剤10~160質量部と、
シクロケトン10~500質量部と、
アミド系溶剤10~310質量部と
を含む樹脂組成物。
[2] (芳香族系有機溶剤+シクロケトン+アミド系溶剤の合計質量部)/(ポリフェニレンエーテル化合物+マレイミド化合物の合計質量部)=0.65~9.7を満たす、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] シクロケトン(質量部)/マレイミド化合物(質量部)=0.2~8.0であり、アミド系溶剤(質量部)/マレイミド化合物(質量部)=0.2~4.0である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記ポリフェニレンエーテル化合物は下記一般式(1)で表される構造を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物:
【化1】

[式(1)において、
Xは芳香環を含む基を表し;
-(Y-O)n1-は、置換基を有していてもよいポリフェニレンエーテル構造を表し;
n1は1~100の整数を表し;
n2は1~4の整数を表し;
Rxは、以下の式(Rx-1)または式(Rx-2)で表される基であり;
【化2】

式(Rx-1)および式(Rx-2)において、
、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基からなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよく;
*は、酸素原子との結合部位であり;
Mcは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表し;
zは0~4の整数を表し;
rは1~4の整数を表す]。
[4-1] 前記式(1)で表される化合物において、Xは、下記式(X1)または(X2)で表される構造を有する[4]に記載の樹脂組成物:
【化3】

[式(X1)において、R11、R12、R13、R16、R17およびR18は、それぞれ独立に、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。これらの各々はさらに置換基を有していてもよい。]
【化4】

[式(X2)において、R19、R20、R25およびR26は、それぞれ独立に、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。R21、R22、R23、R24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。-A-は、炭素数20以下の直鎖、分岐または環状の炭化水素基である。これらの各々はさらに置換基を有していてもよい。]
[4-2] 前記式(1)において、Yは式(Y1)で表される構造を有する、[4]または[4-1]に記載の樹脂組成物:
【化5】

[式(Y1)において、R、R、R、およびR10は、それぞれ独立に、炭素数6以下のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、または水素原子を表す。これらの各々はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては、上述したR、R、R、R、R、R、およびMcが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。]
[4-3] 前記ポリフェニレンエーテル化合物は、下記式(3)または式(4)で表される化合物である、[4]~[4-2]に記載の樹脂組成物:
【化6】

【化7】

[式(3)および(4)において、Xは、上述した式(X1)または(X2)で表される構造を有し、Yは、上述した式(Y1)で表される構造を有する]。
[5] 前記ポリフェニレンエーテル化合物は、500~5000の数平均分子量(Mn)を有する、[1]~[4-3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 前記マレイミド化合物は、2つ以上のマレイミド基を有する化合物である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 前記マレイミド化合物は下記一般式(M-1)で表される構造を有する、[1]に記載の樹脂組成物:
【化8】

[式(M-1)において、
Zは2価の連結基であり、該2価の連結基は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR21-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)NR21-、インダンに由来する2価の基、式(m1)で表される基およびこれらの組合せからなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよい(ここで、R21は、水素原子またはメチル基である)]。
【化9】

[7-1] Zは、下記式(m2)で表される部分を含む[7]に記載の樹脂組成物:
【化10】

[式(m2)において、RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香環基およびこれらの組合せからなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよく;
Rcは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基、マレイミド基、ヒドロキシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリルエーテル基、2-プロペニル基およびこれらの組合せからなる群から選択され、これらの各々は置換基を有していてもよく;
pは、それぞれ独立に、0~4の整数である]。
[7-2] Zは置換基を有していてもよいフェニレン基である、[7]に記載の樹脂組成物。
[8] 前記マレイミド化合物は下記一般式(M-2)で表される構造を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物:
【化11】

[式(M-2)において、
Wは2価の連結基であり、該2価の連結基は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR21-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)NR21-、インダンに由来する2価の基、およびこれらの組合せからなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよく(ここで、R21は、水素原子またはメチル基である);
tは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基、マレイミド基、ヒドロキシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリルエーテル基、2-プロペニル基およびこれらの組合せからなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよく;
mは、それぞれ独立に、0~4の整数である]。
[8-1] 前記マレイミド化合物は、以下から選択される[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【化12】

[9] 前記シクロケトンは、シクロヘキサノン、シクロペンタノンおよびシクロヘプタノンからなる群より選択される、[1]~[8-1]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] 前記アミド系溶剤は、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドおよびN-メチル-2-ピロリジノンからなる群より選択される、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11] 架橋剤をさらに含む、[1]~[10]に記載の樹脂組成物。
[12] 前記架橋剤は、アルケニルイソシアヌレート化合物、(メタ)アリルイソシアヌレート化合物、シアヌル酸トリ(メタ)アリル化合物、多官能メタクリレート化合物、多官能アクリレート化合物、多官能ビニル化合物、多官能ビニルフェニル基化合物、スチレン誘導体、および多官能イソシアネート化合物からなる群より選択される、[11]に記載の樹脂組成物。
[13] 基材と、[1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物とを用いて作製されたプリプレグ。
[14] [13]に記載のプリグレグから形成された少なくとも1つの層と、前記プリプレグから形成された層の片面または両面に配置された金属箔とを含む、金属箔張積層板。[15] マレイミド化合物、シクロケトンおよびアミド系溶剤を混合して混合物を得ることと、
次いで、前記混合物に、末端に炭素-炭素二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物および芳香族系有機溶剤を加えて混合することと
を含み、
ポリフェニレンエーテル化合物100質量部に対して、マレイミド化合物は30~300質量部、芳香族系有機溶剤は10~160質量部、シクロケトンは10~500質量部、アミド系溶剤は10~310質量部添加される
樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリフェニレンエーテル化合物およびマレイミド化合物を含む均一な樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する材料、構成等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書における基(原子団)の表記おいて、置換または無置換を示していない表記は、置換基を有さない基(原子団)とともに置換基を有する基(原子団)をも包含する。
本明細書において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートおよび/またはアクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基および/またはアクリロイル基を意味する。その他の同様の記載も、上記のように解される。
【0009】
1.樹脂組成物
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、以下の成分を含む:
末端に炭素-炭素二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物100質量部;
マレイミド化合物30~300質量部;
芳香族系有機溶剤10~160質量部;
シクロケトン10~500質量部;および
アミド系溶剤10~310質量部。
【0010】
上述したように、ポリフェニレンエーテル化合物およびマレイミド化合物を含む樹脂組成物は、優れた電気特性および耐熱性を有する材料となり得る一方で、溶剤に対する溶解性に課題があった。そのような状況下、本発明者らは、上記組成を有する樹脂組成物が、溶剤に対する溶解性に優れ、その結果として均一な樹脂組成物を得られることを見出した。溶け残りや析出によって固形物を含む樹脂組成物は、成形性が悪く、成形体において外観上の不良を生じ得る。また、樹脂組成物中に固形物が存在する場合、当該樹脂組成物をガラス布に含浸させてプリプレグを作製すると、「ハジキ」と呼ばれる樹脂が均一に含侵されないことによる不良が生じ得る。それに対して、上記実施形態に係る発明によると、固形物を実質的に含まない均一な樹脂組成物を得ることができるため、そのような不良の発生を抑制することができる。このような樹脂組成物を用いた部材は、電子機器や通信機器等において好適に使用され得る。
【0011】
以下、実施形態に係る樹脂組成物に含まれる各成分について、順に説明する。
(1)ポリフェニレンエーテル化合物
実施形態に係る樹脂組成物は、末端に炭素-炭素二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物を含む。ポリフェニレンエーテル化合物は、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物(成形体)における、低誘電特性(Dkおよび/またはDf)、低吸水性等の特性に寄与する。
【0012】
末端に炭素-炭素二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物は、例えば下記式(1)で表される。特に、末端Rxとして、ビニルベンジル基等の下記式(Rx-1)で表される基および/または(メタ)アクリル基等の下記式(Rx-2)で表される基を有するポリフェニレンエーテル化合物であることが好ましい。
【化13】

式(1)において、Xは芳香環を含む基を表し、-(Y-O)n1-は置換基を有していてもよいポリフェニレンエーテル構造を表し、n1は1~100の整数を表し、n2は1~4の整数を表す。Rxは、以下の式(Rx-1)または式(Rx-2)で表される基である。
【化14】

式(Rx-1)および式(Rx-2)において、R、R、R、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基からなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよい。*は、酸素原子との結合部位である。Mcは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表す。zは0~4の整数を表す。rは1~4の整数を表す。
【0013】
、R、R、R、R、R、およびMcが有していてもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数5~20のシクロアルコキシル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基等が挙げられる。
【0014】
式(Rx-1)において、rは1~4の整数を表し、1~3の整数であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
式(Rx-1)において、Mcは、それぞれ独立に、炭素数1~12の炭化水素基を表し、炭素数1~8の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~4の直鎖または分岐のアルキル基であることがより好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基が例示される。式(Rx-1)において、zは0~4の整数を表し、0または1が好ましく、0がより好ましい。
【0015】
式(Rx-1)で表される基の具体例は、ビニルベンジル基であり、式(Rx-2)で表される基の具体例は、(メタ)アクリロイル基である。
【0016】
式(1)で表される化合物において、Xは、下記式(X1)または(X2)で表される構造を有することが好ましい。
【化15】

式(X1)において、R11、R12、R13、R16、R17およびR18は、それぞれ独立に、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。R14およびR15は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。これらの各々はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては、上述したR、R、R、R、R、R、およびMcが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【化16】

式(X2)において、R19、R20、R25およびR26は、それぞれ独立に、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。R21、R22、R23、R24は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基を表す。-A-は、炭素数20以下の直鎖、分岐または環状の炭化水素基である。これらの各々はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては、上述したR、R、R、R、R、R、およびMcが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
-A-としては、例えば、メチレン基、エチリデン基、1-メチルエチリデン基、1,1-プロピリデン基、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)基、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)基、シクロヘキシリデン基、フェニルメチレン基、ナフチルメチレン基、1-フェニルエチリデン基等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
式(1)において、Yは、式(Y1)で表される構造を有することが好ましい。
【化17】

式(Y1)において、R、R、R、およびR10は、それぞれ独立に、炭素数6以下のアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、または水素原子を表す。これらの各々はさらに置換基を有していてもよく、置換基としては、上述したR、R、R、R、R、R、およびMcが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0018】
n1および/またはn2が2以上の整数の場合、n1およびn2が修飾する構成単位は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。n1は、0~50の整数であることが好ましく、1~30の整数であることがより好ましく、1~10の整数であることが特に好ましい。n2は、好ましくは2~4の整数であり、より好ましくは2または3であり、特に好ましくは2である。
【0019】
ポリフェニレンエーテル化合物は、下記式(3)で表される化合物であることが好ましく、下記式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
【化18】

【化19】

式(3)および(4)において、Xは、上述した式(X1)または(X2)で表される構造を有することが好ましい。また、Yは、上述した式(Y1)で表される構造を有することが好ましい。
【0020】
式(3)および(4)において、aおよびbは、それぞれ独立に、0~100の整数を表し、aおよびbの少なくとも一方は、1~100の整数である。aおよびbは、それぞれ独立に、0~50の整数であることが好ましく、1~30の整数であることがより好ましく、1~10の整数であることが特に好ましい。aおよび/またはbが2以上の整数の場合、2以上の-(Y-O)-は、それぞれ独立に、1種の構造が配列したものであってよく、2種以上の構造がブロックまたはランダムに配列したものであってもよい。
また、式(3)または(4)で表される化合物を複数種含む場合、aの平均値は1<a<10であることが好ましく、bの平均値は1<b<10であることが好ましい。
式(3)におけるRxは、式(1)におけるRxと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0021】
ポリフェニレンエーテル化合物のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~4000、さらに好ましくは800~3000である。また、重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは500~8000であり、さらに好ましくは800~6000である。上記範囲内とすることで、樹脂組成物を塗膜にする際のべたつき防止とポリフェニレンエーテル化合物の溶剤への溶解性を両立できるため、好ましい。
【0022】
(2)マレイミド化合物
実施形態に係る樹脂組成物は、マレイミド化合物を含む。マレイミド化合物は、特に、樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物(成形体)における耐熱性に寄与する。
【0023】
前記マレイミド化合物は、好ましくは2つ以上のマレイミド基を有する化合物であり、より好ましくは2~12個、さらに好ましくは2~6個、特に好ましくは2~4個のマレイミド基を有する化合物である。
【0024】
マレイミド化合物は、好ましくは下記一般式(M-1)で表される構造を有する:
【化20】

[式(M-1)において、
Zは2価の連結基であり、該2価の連結基は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR21-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)NR21-、インダンに由来する2価の基、下記式(m1)で表される基およびこれらの組合せからなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよい(ここで、R21は、水素原子またはメチル基である)]。
【化21】
【0025】
Zは、アルキレン基、アリーレン基、-O-、インダンに由来する2価の基、上記式(3)で表される基のうちの2つ以上を組み合わせた基であることが好ましく、例えば、Zは、下記式(m2)で表される部分を含んでいることがより好ましい。
【化22】
【0026】
式(m2)において、RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香環基およびこれらの組合せからなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよい。RaおよびRbは、水素原子、炭素数1~3のアルキル基、または芳香環基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましい。
Rcは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基、マレイミド基、ヒドロキシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリルエーテル基、2-プロペニル基およびこれらの組合せからなる群から選択され、これらの各々は置換基を有していてもよい。Rcは、炭素数1~3のアルキル基、アリール基、マレイミド基またはこれらの組合せであることが好ましく、メチル基またはマレイミド基であることがより好ましい。
また、Zが置換基を有していてもよいフェニレン基である態様も好ましい。
【0027】
Z、Ra、RbおよびRcがさらに有していてもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数5~20のシクロアルコキシル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ハロゲン原子、マレイミド基、ヒドロキシル基、アミノ基等が挙げられる。
pは、それぞれ独立に、0~4の整数であり、0~3であることが好ましく、0~2であることがより好ましい。
【0028】
マレイミド化合物は、より好ましくは、下記一般式(M-2)で表される構造を有する:
【化23】

[式(M-2)において、
Wは2価の連結基であり、該2価の連結基は、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-NR21-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)NR21-、インダンに由来する2価の基およびこれらの組合せからなる群より選択され、これらの各々は置換基を有していてもよく(ここで、R21は、水素原子またはメチル基である);
tは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基、マレイミド基、ヒドロキシル基、アリール基、アリールオキシ基、アリルエーテル基、2-プロペニル基およびこれらの組合せからなる群から選択され、これらの各々は置換基を有していてもよく;
mは、それぞれ独立に、0~4の整数である]。
【0029】
Wの2価の連結基は、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、インダンに由来する2価の基またはこれらの組合せであり、より好ましくは、炭素数1~4のアルキレン基、フェニレン基、インダンに由来する基またはこれらの組合せであり、特に好ましくは、メチレン基、フェニレン基またはこれらの組合せである。Wの2価の連結基が有していてもよい置換基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数5~20のシクロアルコキシル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ハロゲン原子、マレイミド基、ヒドロキシル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~15のアリール基およびマレイミド基が好ましく、メチル基、エチル基、フェニル基およびマレイミド基がより好ましい。
【0030】
tは、好ましくは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシル基、マレイミド基、アリルエーテル基、2-プロペニル基およびこれらの組合せからなる群より選択され、より好ましくは炭素数1~10のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基またはエチル基である。tがさらに有していてもよい置換基は、上述したWの置換基と同様である。
mは、好ましくは0~3の整数であり、より好ましくは0~2の整数である。
【0031】
マレイミド化合物は、下記一般式(M-3)で表される構造を有していてもよい:
【化24】

[式(M-3)において、tおよびmは式(M-2)において定義したとおりである]。
【0032】
マレイミド化合物としては、例えば、(4,4’―メチレンジフェニル)ビスマレイミド[例えば、大和化成工業株式会社製のBMI-1000、BMI-1000H、BMI-1000S、BMI-1100またはBMI-1100H]、フェニルマレイミドオリゴマー[例えば、大和化成工業株式会社製のBMI-2000、BMI-2300]、m-フェニレンビスマレイミド[例えば、大和化成工業株式会社製のBMI-3000]、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン[例えば、ケイ・アイ化成株式会社製のBMI-80、大和化成工業株式会社製のBMI-4000]、3,3’-ジメチル5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルエタンビスマレイミド[例えば、ケイ・アイ化成株式会社製のBMI-70、大和化成工業株式会社製のBMI-5100]、(4-メチル-1,3’-フェニレン)ビスマレイミド[例えば、大和化成工業株式会社製のBMI-7000]、フェニルマレイミドオリゴマー[例えば、日本化薬株式会社製のMIR―3000―70MT]等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
特に好ましいマレイミド化合物を以下に示す。
【化25】
【0034】
樹脂組成物に含まれるマレイミド化合物の量は、ポリフェニレンエーテル化合物100質量部に対して30~300質量部であり、好ましくは30~150質量部であり、より好ましくは30~110質量部、特に好ましくは30~100質量部である。マレイミド化合物がこのような割合で含まれることにより、本来マレイミド化合物を添加することによって得られる耐熱性等の利点に加え、適切な種類および量の他の成分との組み合わせによって、均一な組成物を得ることができる。
【0035】
(3)芳香族系有機溶剤
実施形態に係る樹脂組成物は、芳香族系有機溶剤を含む。芳香族系有機溶剤の種類は特に限定されるものではなく、当該分野で通常使用される物の中から選択して使用することができる。具体的には、トルエン、ベンゼン、キシレンが挙げられ、トルエンまたはキシレンを使用することが好ましい。芳香族系有機溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物に含まれる芳香族系有機溶剤の量は、ポリフェニレンエーテル化合物100質量部に対して10~160質量部であり、好ましくは20~120質量部であり、より好ましくは50~120質量部であり、特に好ましくは50~90質量部である。芳香族系有機溶剤がこのような割合で含まれることにより、適切な種類および量の他の成分との組み合わせによって、均一な組成物を得ることができる。
【0036】
(4)シクロケトン
実施形態に係る樹脂組成物は、シクロケトンを含む。シクロケトンの種類は特に限定されるものではなく、当該分野で溶剤として通常使用される物の中から選択して使用することができる。具体的には、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン等が挙げられ、シクロヘキサノンまたはシクロペンタノンを使用することが好ましい。シクロケトンは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物に含まれるシクロケトンの量は、ポリフェニレンエーテル化合物100質量部に対して10~500質量部であり、好ましくは85~300質量部であり、より好ましくは85~200質量部であり、特に好ましくは90~130質量部である。シクロケトンがこのような割合で含まれることにより、適切な種類および量の他の成分との組み合わせによって、均一な組成物を得ることができる。
【0037】
(5)アミド系溶剤
実施形態に係る樹脂組成物は、アミド系溶剤を含む。アミド系溶剤の種類は特に限定されるものではなく、当該分野で溶剤として通常使用される物の中から選択して使用することができる。具体的には、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン等が挙げられ、N,N-ジメチルアセトアミドまたはN-メチル-2-ピロリジノンを使用することが好ましい。アミド系溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物に含まれるアミド系溶剤の量は、ポリフェニレンエーテル化合物100質量部に対して10~300質量部であり、好ましくは10~150質量部であり、より好ましくは10~80質量部である。アミド系溶剤がこのような割合で含まれることにより、適切な種類および量の他の成分との組み合わせによって、均一な組成物を得ることができる。
【0038】
一実施形態によると、(芳香族系有機溶剤+シクロケトン+アミド系溶剤の合計質量部)/(ポリフェニレンエーテル化合物+マレイミド化合物の合計質量部)=0.65~9.7である。上記値は、好ましくは1.0~4.0であり、より好ましくは1.1~3.1であり、特に好ましくは1.1~2.2である。このような範囲とすることにより、樹脂を溶解させて樹脂固形物のない組成物を製造できるという利点がある。
シクロケトン(質量部)/マレイミド化合物(質量部)=0.2~8.0であることが好ましく、0.5~7.0であることがより好ましく、0.7~6.6であることがさらに好ましく、0.9~3.7であることが特に好ましい。あるいは、上記数値は0.7~2.9であってもよい。また、アミド系溶剤(質量部)/マレイミド化合物(質量部)=0.2~4.0であることが好ましく、0.3~2.0であることがより好ましく、0.4~1.5であることがさらに好ましく、0.4~1.0であることが特に好ましい。このような範囲とすることにより、樹脂を溶解させて樹脂固形物のない組成物を製造できることができるという利点がある。
【0039】
(6)その他の成分
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、架橋剤、難燃剤、無機材料または有機材料の充填材、カップリング剤、エラストマー等の添加剤をさらに含んでいてもよい。また、プリント配線基板などの電子機器の製造に用いられる樹脂組成物に対する一般的な添加剤を添加してもよい。
【0040】
架橋剤は、架橋反応の観点から、炭素-炭素不飽和二重結合を分子中に平均2個以上有することが好ましい。架橋剤は1種類の化合物で構成されてもよく、2種類以上の化合物で構成されてもよい。架橋剤の例としては、アルケニルイソシアヌレート化合物、(メタ)アリルイソシアヌレート化合物、シアヌル酸トリ(メタ)アリル化合物、分子中にメタクリル基を2個以上有する多官能メタクリレート化合物、分子中にアクリル基を2個以上有する多官能アクリレート化合物、分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物、分子中にビニルフェニル基を2個以上有する多官能ビニルフェニル基化合物、スチレン誘導体、分子中にイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化合物等が挙げられる。
【0041】
架橋剤として、アルケニルイソシアヌレート化合物を使用してもよく、そのような化合物としては、イソシアヌレート構造およびアルケニル基を分子中に有する化合物が挙げられる。例えば、トリアリルイソシアヌレート(例えば、エボニックジャパン株式会社製TAICROS(登録商標))等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物を使用することができる。
【0042】
難燃剤としては、臭素化有機化合物、例えば芳香族臭素化合物を用いることができる。具体的には、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等を用いることができる。好ましくは、臭素の含有量が樹脂組成物全量に対して8質量%以上20質量%以下となる量の臭素化有機化合物を含有するとよい。
臭素の含有量が8質量%以上であると、プリプレグの難燃性が低下することなく、UL規格94V-0レベルの難燃性を維持することができる。一方、臭素の含有量が20質量%以下であると、プリプレグの加熱時に臭素が解離することがないため、耐熱性を有するプリプレグを得ることができる。
【0043】
また、環境問題の観点から、リン化合物の難燃剤を用いてもよい。一般的に難燃剤として使用されるもののうち、リン原子を含有するものであれば特に制限はなく、無機系のリン化合物であってもよいし、有機系のリン化合物であってもよい。
無機系のリン化合物としては、赤リン、リン酸アンモニウム、リン酸アミド、リン酸、ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
有機系のリン化合物としては、芳香族リン酸エステル、置換ホスフィン酸エステル、含窒素リン化合物、環状有機リン化合物などが挙げられる。
難燃剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0044】
充填材としては、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維等の繊維状充填材、炭化ケイ素、窒化珪素、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、アルミノボレート等の無機系ウィスカー、ウオラストナイト、ゾノライト、フォスフェートファイバー、セピオライト等の無機系針状充填材、粉砕シリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、チタン酸バリウム、雲母、ガラスビーズ等の球状無機系充填材、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等を架橋させて得られる微粒子ポリマー等の有機系充填材が挙げられる。
無機材料の充填材(以下、無機充填材という)を添加することで、プリプレグの熱膨張係数を低減したり、剛性を向上させることができる。無機充填材としては、シリカ、窒化ホウ素、ワラストナイト、タルク、カオリン、クレー、マイカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物、窒化物、珪化物、硼化物等を用いることができる。特に、シリカや窒化ホウ素のような低誘電率充填材を添加することで、樹脂組成物の低誘電率化が期待される。
【0045】
有機材料の充填材(以降、有機充填材という)を添加することで、プリプレグの誘電率を低下させることができる。有機充填材としては、フッ素系、ポリスチレン系、ジビニルベンゼン系、ポリイミド系等を用いることができる。フッ素系充填材(フッ素含有化合物の充填材)としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルコキシ樹脂、ポリフッ化エチレンプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン-ポリエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂等を用いることができる。
また、有機充填材としては、中空高分子微粒子を用いることができる。特に、中空体のシェルの材質がジビニルベンゼンやジビニルビフェニル等の低誘電率の材質である中空体を用いることで、プリプレグの低誘電率化を実現することができる。
無機充填材または有機充填材としては、平均粒径が10μm以下の微粒子を用いることができる。ここでいう平均粒径とは、添加する充填材のカタログ等の資料に記載された値であってもよく、ランダムに抽出された複数の充填材の平均値または中央値であってもよい。充填材の平均粒径を上記の条件とすることで、平滑性および信頼性が高いプリプレグを得ることができる。充填材は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
カップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β(3,4-エポキシシンクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、シリコーン系カップリング剤、フッ素系カップリング剤等が挙げられる。カップリング剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
エラストマーは、熱可塑性であっても、熱硬化性であっても、熱可塑性および熱硬化性のいずれも示さなくても良いが、熱可塑性が好ましい。エラストマーを含有することによってピール強度を向上させることができる。
使用できるエラストマーは、特に限定されないが、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンブタジエン、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンエチレン、スチレンブタジエンスチレン、スチレンイソプレンスチレン、スチレンエチレンブチレンスチレン、スチレンプロピレンスチレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、スチレンプロピレンスチレン、スチレンエチレンプロピレンスチレン、フッ素ゴム、シリコーンゴム、それらの水添化合物、それらのアルキル化合物、およびそれらの共重合体が挙げられる。エラストマーは、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0048】
2.樹脂組成物の製造方法
一実施形態によると、
マレイミド化合物、シクロケトンおよびアミド系溶剤を混合して混合物を得ることと、
次いで、前記混合物に、末端に炭素-炭素二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物および芳香族系有機溶剤を加えて混合することと
を含む樹脂組成物の製造方法が提供される。
上記製造方法において、ポリフェニレンエーテル化合物100質量部に対して、マレイミド化合物は30~300質量部、芳香族系有機溶剤は10~160質量部、シクロケトンは10~500質量部、アミド系溶剤は10~310質量部添加される。
【0049】
実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、全ての材料を混合して均一な樹脂組成物を調製できる限り、上記方法に限定されるものではない。しかし、上記方法を採用することにより、より短時間で樹脂組成物を得ることができるという利点がある。
【0050】
3.用途
(1)フィルム
実施形態に係る樹脂組成物は、硬化させて、樹脂フィルムとして使用することができる。フィルム状に加工する方法としては、例えば、実施形態に係る樹脂組成物を、離型フィルム、銅箔等の導体箔に塗布し、乾燥する方法などが挙げられる。
【0051】
溶剤を乾燥する際の乾燥条件は特に限定されないが、低温であるとフィルムに溶剤が残り易く、高温であるとフェニレンエーテル樹脂の硬化が進行してしまうことから、80℃~200℃の温度で1~90分間乾燥するのが好ましい。フィルムの厚みは樹脂組成物溶液の濃度と塗布厚みにより調整することができるが、塗布厚みが厚くなると乾燥時に溶剤が残り易くなることから、フィルムの厚さは0.1~500μmが好ましい。
【0052】
(2)プリプレグ
実施形態に係る樹脂組成物は、プリプレグとしても使用可能である。一実施形態によると、基材と、実施形態に係る樹脂組成物とを用いて作製されたプリプレグが提供される。実施形態に係る樹脂組成物を用いてプリプレグを作製した場合、マレイミド化合物の溶け残りや析出が実質的にないため、「ハジキ」と呼ばれる樹脂が均一に含侵されないことによる不良の発生を抑制することができる。
【0053】
プリプレグの作製においては、実施形態に係る樹脂組成物および必要に応じてその他の添加物を混合し、ワニスを形成する。メチルエチルケトンなどのケトン類、ジブチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチルなどのエステル類などの適当な有機溶媒をさらに追加してもよい。
ワニス中の樹脂固形分の濃度は、ワニスを基材に含浸する作業に応じて調整すればよく、例えば40質量%以上90質量%以下とすることができる。
上記のワニスを基材に含浸し、さらに加熱乾燥して有機溶媒を除去するとともに基材中の樹脂を半硬化させることによって、プリプレグを得ることができる。
【0054】
基材へのワニスの含浸量は、プリプレグ中の樹脂固形分の質量比率が35質量%以上になるようにするのが好ましい。基材の誘電率は樹脂の誘電率よりも大きいため、このプリプレグを用いて得られたプリント配線基板の誘電率を小さくするには、プリプレグ中の樹脂固形分の含有量を上記の質量比率より多くするとよい。ワニスを含浸させた基材は、80℃以上200℃以下の温度で1分~10分間加熱することができる。このとき、プリプレグ中の樹脂組成物の最低溶融粘度が10000Pa・s以下になるように加熱する。例えば、150℃の温度で加熱する場合には、加熱する時間は3~10分であることが望ましく、5~9分であることがさらに望ましい。ワニスを含浸させた基材の加熱条件は、上記の条件に限定されないが、プリプレグ中の樹脂組成物の最低溶融粘度が10000Pa・s以下になるように決定する。ここで、プリプレグ中の樹脂組成物の最低溶融粘度とは、室温から200℃の温度範囲における、プリプレグ中の樹脂組成物の溶融粘度の最低値のことである。
低温短時間の加熱では溶剤が残ることで溶融粘度は下がるが、積層板の誘電正接が悪くなることがある。また、高温長時間の加熱では、硬化が進行し溶融粘度が高くなり過ぎることがある。そのため、加熱による残溶剤量低減と溶融粘度の上昇抑制の観点からは、加熱前の樹脂組成物の最低溶融粘度が低いことが望ましい。
【0055】
基材としては、特に限定されず、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。基材を構成する繊維の具体例としては、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、NEガラス、Lガラス、Tガラスなどのガラス繊維;クォーツなどのガラス以外の無機繊維;ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ株式会社製)などの全芳香族ポリアミド;2,6-ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、株式会社クラレ製)、ゼクシオン(登録商標、KBセーレン株式会社製)などのポリエステル;ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)、ポリイミドなどの有機繊維が挙げられる。これらの中でも低熱膨張率が好ましいという観点から、Eガラス、Tガラス、Sガラス、Qガラス、および有機繊維が好ましい。基材は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01~0.3mm程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性との観点から、基材は、厚み200μm以下、質量250g/m以下のガラス織布が好ましく、Eガラス、Sガラス、およびTガラス等のガラス繊維からなるガラス織布がより好ましい。
【0057】
(3)積層板
上述したプリプレグを用いて、積層板を作製することができる。一実施形態によると、上述したプリグレグから形成された少なくとも1つの層と、プリプレグから形成された層の片面または両面に配置された金属箔とを含む、金属箔張積層板が提供される。
積層板の作製においては、まず、プリプレグを1枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面または片面に銅箔等の金属箔を重ねて、加熱加圧成形する。この成形によって、両面または片面に金属箔を有する積層板(例えば銅張積層板)を作製することができる。この積層板の金属箔をパターニングおよびエッチング加工して回路を形成することで、プリント配線基板を得ることができる。また、回路が形成された金属箔を間に挟んで複数枚のプリプレグを重ねて加熱加圧成形することで、多層化されたプリント配線基板を作製することができる。
【0058】
加熱加圧成形条件は、本発明に係る樹脂組成物の原料の含有比率により異なるが、一般的には170℃以上230℃以下、圧力1.0MPa以上6.0MPa以下(10kg/cm以上60kg/cm以下)の条件で適切な時間、加熱加圧するのが好ましい。
上記の積層板に用いられる金属箔としては、表面粗さ(十点平均粗さ:Rz)が10μm以下であり、プリプレグによって樹脂層が形成される側の表面(プリプレグと接触する側の表面)が、防錆や樹脂層との密着性向上のために亜鉛または亜鉛合金にて処理され、さらにビニル基含有シランカップリング剤などによるカップリング処理がなされた銅箔を用いることができる。このような銅箔は樹脂層(絶縁層)との密着がよく、高周波特性に優れたプリント配線基板が得られる。なお、銅箔を亜鉛または亜鉛合金にて処理する場合、銅箔の表面に亜鉛や亜鉛合金をめっき法により形成することができる。
このようにして得られた積層板やプリント配線基板は、低誘電率、低誘電正接等の好ましい特性を有する。また、成形性、耐水性、耐湿性、吸湿耐熱性等を有し、ガラス転移点が高い積層板やプリント配線基板を得ることができる。特に、プリプレグの最低溶融粘度が10000Pa・s以下であると、良好な成形性が得られる。
【実施例0059】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において使用した材料は以下のとおりである。
ポリフェニレンエーテル化合物(1):OPE-2St2200/トルエン溶液(三菱ガス化学社製、固形分濃度63%、数平均分子量(Mn):2,200)
ポリフェニレンエーテル化合物(2):Noryl(商標) SA9000(サビックイノベーティブプラスチックス社製)
マレイミド化合物(1):BMI-70(ケイ・アイ化成株式会社製)
マレイミド化合物(2):BMI-80(ケイ・アイ化成株式会社製)
マレイミド化合物(3):MIR-3000-70MT(日本化薬株式会社製)
マレイミド化合物(4):BMI-1000(大和化成工業株式会社)
(メタ)アリルイソシアヌレート化合物:TAICROS(登録商標)(エボニックジャパン株式会社製)
【0060】
(実施例1~3、6~14)
各実施例において使用した材料およびその量は、以下の表1および表2に示すとおりである。
容量100mLのガラスバイアルに、マレイミド化合物、シクロケトン系溶剤およびアミド系溶剤を仕込み、25℃、1,000rpmで30分間攪拌した。その後、ポリフェニレンエーテル化合物および芳香族系溶剤を投入し、25℃、1,000rpmで30分間攪拌して、樹脂組成物を得た。実施例3で使用したポリフェニレンエーテル化合物(1)は、溶媒を除去して粉体化したものを用いた。マレイミド化合物(3)(MIR-3000-70MT)については、溶媒を除去して粉体化したものを用いた。
【0061】
(実施例4および5)
容量100mLのガラスバイアルに、マレイミド化合物、シクロケトン系溶剤およびアミド系溶剤を仕込み、25℃、1,000rpmで30分間攪拌した。その後、ポリフェニレンエーテル化合物および芳香族系溶剤をガラスバイアルに投入し、25℃、1,000rpmで30分間攪拌した。さらに、(メタ)アリルイソシアヌレート化合物(TAICROS)をガラスバイアルに投入し、25℃、1,000rpmで30分間攪拌して、樹脂組成物を得た。
【0062】
(比較例1)
容量100mLのガラスバイアルに、マレイミド化合物、229質量部のトルエンを仕込み、25℃、1,000rpmで30分間攪拌した。その後、ポリフェニレンエーテル化合物および59質量部のトルエンを投入し、25℃、1,000rpmで30分間攪拌して、樹脂組成物を得た。
(比較例2~4、6)
容量100mLのガラスバイアルに、マレイミド化合物、メチルエチルケトンを仕込み、25℃、1,000rpmで30分間攪拌した。その後、ポリフェニレンエーテル化合物を投入し、25℃、1,000rpmで30分間攪拌して、樹脂組成物を得た。
また、ポリフェニレンエーテル化合物(1)およびマレイミド化合物(3)(MIR-3000-70MT)は溶媒を除去して粉体化したものを使用した。
【0063】
(比較例5)
以下の表に記載する材料を使用したことを除き、比較例1と同様に樹脂組成物を調製した。マレイミド化合物を仕込む際に461質量部のトルエンを仕込み、ポリフェニレンエーテル化合物(1)を投入する際に59質量部のトルエンを投入した。マレイミド化合物(3)(MIR-3000-70MT)は溶媒を除去して粉体化したものを使用した。
(比較例7~9)
溶剤として以下の表に記載するものを使用したことを除き、実施例1と同様に樹脂組成物を調製した。メチルエチルケトンを使用する場合、マレイミド化合物を投入するタイミングでメチルエチルケトンも投入した。
(比較例10~12)
溶剤として以下の表に記載するものを使用したことを除き、実施例4と同様に樹脂組成物を調製した。メチルエチルケトンを使用する場合、マレイミド化合物を投入するタイミングでメチルエチルケトンも投入した。
【0064】
実施例および比較例で得られた樹脂組成物について、攪拌終了後10分静置した後に目視で固形物の有無を確認した。
[評価基準]
固形物なし:A
固形物あり:B
結果を以下の表1~表4に示す。表1~4において、各成分の量に関する値は、「質量部」である。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0065】
表1~4の結果より、実施例では固形分のない均一な樹脂組成物が得られたことが分かる。よって、実施例に係る樹脂組成物を用いて成形体を形成すると、外観に優れた成形体を得ることができる、また、プリプレグを作製した場合にも、「ハジキ」と呼ばれる不良が抑制される。ポリフェニレンエーテル化合物およびマレイミド化合物を含む樹脂組成物は、優れた電気特性および耐熱性を有するため、実施例に係る樹脂組成物を用いた部材は、電子機器や通信機器等において好適に使用され得る。