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特開2025-47368ガラス物品の製造装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025047368
(43)【公開日】2025-04-03
(54)【発明の名称】ガラス物品の製造装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/43 20060101AFI20250326BHJP
   C03B 5/435 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
C03B5/43
C03B5/435
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155823
(22)【出願日】2023-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】天山 和幸
(57)【要約】
【課題】移送管内でガラス詰まりが生じるのを確実に抑制する。
【解決手段】ガラス物品の製造装置1は、溶融ガラスGmを移送する第一冷却管10と、第一冷却管10の外周側に配置されて第一冷却管10を保持する保持レンガ14と、保持レンガ14の外側に配置され、保持レンガ14を介して第一冷却管10を加熱する加熱装置18とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを移送する移送管と、前記移送管の外周側に配置されて前記移送管を保持する保持レンガとを備えるガラス物品の製造装置であって、
前記保持レンガの外側に配置され、前記保持レンガを介して前記移送管を加熱する加熱装置を備えることを特徴とするガラス物品の製造装置。
【請求項2】
前記移送管及び前記保持レンガが内部に収容されて前記保持レンガとの間に空間が介在されるケーシングを備え、
前記加熱装置は、前記ケーシング内の雰囲気を加熱する請求項1に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項3】
前記加熱装置は、バーナーである請求項2に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項4】
前記バーナーは、前記ケーシング内の下部で火炎を形成する請求項3に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項5】
前記ケーシングの壁部は、耐火物からなる請求項2又は3に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項6】
前記保持レンガは、電鋳レンガからなる請求項1又は2に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項7】
前記加熱装置は、バーナーである請求項1に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項8】
前記保持レンガの外側に配置され、前記保持レンガを介して前記移送管を冷却する冷却装置を備える請求項1又は2に記載のガラス物品の製造装置。
【請求項9】
溶融ガラスを移送する移送管と、前記移送管の外周側に配置されて前記移送管を保持する保持レンガとを備えるガラス物品の製造装置を用いて、前記溶融ガラスからガラス物品を生産する生産工程を含むガラス物品の製造方法であって、
前記生産工程の前工程として、前記移送管内の前記溶融ガラスの深さを増加させる立ち上げ工程を含み、
前記立ち上げ工程では、前記保持レンガの外側に加熱装置を配置するとともに、前記加熱装置により、前記保持レンガを介して前記移送管を加熱することを特徴とするガラス物品の製造方法。
【請求項10】
溶融ガラスを移送する移送管と、前記移送管の外周側に配置されて前記移送管を保持する保持レンガとを備えるガラス物品の製造装置を用いて、前記溶融ガラスからガラス物品を生産する生産工程を含むガラス物品の製造方法であって、
前記生産工程で停電が生じた場合に、前記保持レンガの外側に加熱装置を配置するとともに、前記加熱装置により、前記保持レンガを介して前記移送管を加熱することを特徴とするガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品の製造装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板やガラス管などのガラス物品を製造する際には、移送装置によって溶融炉から成形装置に溶融ガラスを移送することが行われる。この移送装置における溶融ガラスの移送経路には、移送管が配置される。
【0003】
特許文献1(同文献の図4参照)には、移送管の周辺設備の具体例が開示されている。この設備は、移送管の外周側を保持レンガ(電鋳レンガ)で取り囲み、この保持レンガの外周側に空間を介してケーシング(外包囲体)を配置したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-88754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移送管内の溶融ガラスの温度が低下すると、溶融ガラスの流動性が低下する。そして、溶融ガラスの流動性が著しく低下すると、移送管内でガラス詰まりが生じ、移送管を用いた溶融ガラスの移送に支障を来すおそれがある。したがって、移送管内の溶融ガラスの温度を適正に管理する必要があるが、従来の移送管の周辺設備には、移送管内のガラス詰まりを抑制する上で依然として改良の余地がある。
【0006】
本発明は、移送管内でガラス詰まりが生じるのを確実に抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、溶融ガラスを移送する移送管と、移送管の外周側に配置されて移送管を保持する保持レンガとを備えるガラス物品の製造装置であって、保持レンガの外側に配置され、保持レンガを介して移送管を加熱する加熱装置を備えることを特徴とする。
【0008】
このようにすれば、加熱装置によって、保持レンガを介して移送管を加熱することにより、移送管内の溶融ガラスも加熱できる。したがって、移送管内でガラス詰まりが生じるのを確実に抑制できる。また、加熱装置が保持レンガの外側に配置されるため、加熱装置の配置や保守を容易に行うことができるという利点がある。換言すれば、加熱装置を保持レンガの内側に配置したり、保持レンガの内部に埋め込んで配置したりする場合、加熱装置の配置や保守に煩雑な作業が強いられるという欠点がある。
【0009】
(2) 上記(1)の構成において、移送管及び保持レンガが内部に収容されて保持レンガとの間に空間が介在されるケーシングを備え、加熱装置は、ケーシング内の雰囲気を加熱することが好ましい。
【0010】
このようにすれば、移送管全体を均一に加熱できる。
【0011】
(3) 上記(1)又は(2)の構成において、加熱装置は、バーナーであることが好ましい。
【0012】
このようにすれば、燃焼ガスがケーシング内を対流し、ケーシング内の雰囲気全体を加熱できるので、加熱装置の設置場所の自由度を高めることができる。
【0013】
(4) 上記(3)の構成において、バーナーは、ケーシング内の下部で火炎を形成することが好ましい。
【0014】
このようにすれば、ケーシング内の下部で温められた雰囲気は、ケーシング内の上部に上昇するため、ケーシング内が均一に加熱される。したがって、移送管全体をより均一に加熱し、移送管内の溶融ガラスを効率よく加熱できる。
【0015】
(5) 上記(2)~(4)のいずれかの構成において、ケーシングの壁部は、耐火物からなることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、ケーシングの耐熱性が向上するため、ケーシング内を高温にしやすくなる。
【0017】
(6) 上記(1)~(5)のいずれかの構成において、保持レンガは、電鋳レンガからなることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、保持レンガの熱伝導率が向上し、移送管に熱が伝わりやすくなる。
【0019】
(7) 上記(1)~(6)の構成において、保持レンガの外側に配置され、保持レンガを介して移送管を冷却する冷却装置を備えていてもよい。
【0020】
このようにすれば、移送管内の溶融ガラスの温度が高すぎる場合でも、移送管内の溶融ガラスの温度を適正に管理できる。
【0021】
(8) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、溶融ガラスを移送する移送管と、移送管の外周側に配置されて移送管を保持する保持レンガとを備えるガラス物品の製造装置を用いて、溶融ガラスからガラス物品を生産する生産工程を含むガラス物品の製造方法であって、生産工程の前工程として、移送管内の溶融ガラスの深さを増加させる立ち上げ工程を含み、立ち上げ工程では、保持レンガの外側に加熱装置を配置するとともに、加熱装置により、保持レンガを介して移送管を加熱することを特徴とする。
【0022】
立ち上げ工程の初期などでは、生産工程時に比べて、移送管内の溶融ガラスの流量が少ないため、移送管内の溶融ガラスの温度が低下しやすい。したがって、立ち上げ工程では、加熱装置により、保持レンガを介して移送管を加熱することが好ましい。このようにすれば、移送管内の溶融ガラスも加熱できるため、移送管内でガラス詰まりが生じるのを確実に抑制できる。また、加熱装置が保持レンガの外側に配置されるため、加熱装置の配置や保守を容易に行うことができるという利点もある。
【0023】
(9) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、溶融ガラスを移送する移送管と、移送管の外周側に配置されて移送管を保持する保持レンガとを備えるガラス物品の製造装置を用いて、溶融ガラスからガラス物品を生産する生産工程を含むガラス物品の製造方法であって、生産工程で停電が生じた場合に、保持レンガの外側に加熱装置を配置するとともに、加熱装置により、保持レンガを介して移送管を加熱することを特徴とする。
【0024】
生産工程で停電が生じた場合、移送管内の溶融ガラスの温度が低下しやすい。したがって、停電時には、加熱装置により、保持レンガを介して移送管を加熱することが好ましい。このようにすれば、移送管内の溶融ガラスも加熱できるため、移送管内でガラス詰まりが生じるのを確実に抑制できる。また、加熱装置が保持レンガの外側に配置されるため、加熱装置の配置や保守を容易に行うことができるという利点もある。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、移送管内でガラス詰まりが生じるのを確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第一実施形態に係るガラス物品の製造装置を示す側面図である。
図2図1の製造装置に含まれる第一冷却管の周辺設備の縦断面図である(加熱装置及び冷却装置が稼働していない状態)。
図3】本発明の第一実施形態に係るガラス物品の製造方法のフロー図である。
図4図1の製造装置に含まれる第一冷却管の周辺設備の縦断面図であって、立ち上げ工程時の状態を示す(加熱装置が稼働している状態)。
図5図1の製造装置に含まれる第一冷却管の周辺設備の縦断面図であって、生産工程時の状態を示す(冷却装置が稼働している状態)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0028】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係るガラス物品の製造装置を例示している。同図に示すように、この製造装置1は、上流端に配置されてガラス原料Grを加熱して溶融ガラスGmを生成する溶融炉2と、溶融炉2から流出した溶融ガラスGmを下流側に向かって移送する移送装置3と、移送装置3から供給される溶融ガラスGmから、ガラス物品としてのガラス管を成形する成形装置4とを備える。
【0029】
溶融炉2は、ガラス原料Grを投入可能な投入口2aと、投入口2aから炉内に投入されたガラス原料Grを加熱して生成された溶融ガラスGmを次工程へと流出させる流出口2bとを有する。
【0030】
溶融炉2の投入口2aには、ガラス原料Grを溶融炉2内に投入するための投入装置5が設けられている。投入装置5は、ガラス原料Grが貯留された原料ホッパー6と、原料ホッパー6の下端部から排出されたガラス原料Grを溶融炉2まで搬送するコンベア7とを備える。投入装置5は、これに限定されるものではなく、例えばスクリューフィーダなどの他の投入装置であってもよい。
【0031】
溶融炉2内には、図示しないが、溶融炉2内に投入されたガラス原料Gr及び/又は溶融ガラスGmを加熱する加熱部が設けられている。加熱部としては、バーナー、電極などが用いられる。バーナーは、例えば、溶融ガラスGmの液面よりも上方で燃料を燃焼して火炎を形成し、対象領域を加熱する。電極は、例えば、溶融ガラスGm中に浸漬された状態で、対象領域を通電加熱する。加熱部は、バーナーのみであってもよいし、電極のみであってもよい。あるいは、加熱部は、バーナー及び電極を併用するものであってもよい。
【0032】
移送装置3は、上流側から順に、スロート8と、清澄槽9と、第一冷却管10と、第二冷却管11とを備える。
【0033】
スロート8は、溶融炉2の流出口2bと、清澄槽9の流入口9aとを連結する移送路である。溶融炉2で生成された溶融ガラスGmは、スロート8を介して清澄槽9に供給される。
【0034】
清澄槽9は、溶融炉2で生成された溶融ガラスGmに清澄処理を施すものである。清澄槽9には、図示しないが、溶融ガラスGmを加熱する加熱部が設けられている。加熱部としては、バーナー、電極などが用いられる。
【0035】
第一冷却管10及び第二冷却管11は、溶融ガラスGmを冷却してその粘度や流量などを成形に適した状態に調整するものである。第一冷却管10及び第二冷却管11は、例えば、白金、白金合金、強化白金、強化白金合金などから形成される。
【0036】
第一冷却管10の上流側端部10aは、清澄槽9の流出口9bから清澄槽9の内部に挿入されている。第一冷却管10の下流側端部10bは、清澄槽9の外部で、第二冷却管11の上流側端部11aと連結されている。清澄槽9で清澄処理がされた溶融ガラスGmは、第一冷却管10及び第二冷却管11の内部を移送された後、第二冷却管11の下流側端部11bから成形装置4に供給される。なお、本実施形態では、第一冷却管10及び第二冷却管11のうち、第二冷却管11のみが通電加熱可能となっている。換言すれば、図示はしないが、第一冷却管10は、通電加熱するための設備を備えず、第二冷却管11は、通電加熱するための設備を備える。第二冷却管11を通電加熱するための設備としては、第二冷却管11の長手方向の両端部11a,11bに設けられたフランジ部の間に通電する構成が挙げられる。
【0037】
成形装置4は、ダンナー法により、第二冷却管11の下流側端部11bから供給された溶融ガラスGmを管状に成形するものである。成形装置4は、円筒状のスリーブ12と、スリーブ12を回転駆動する駆動装置13とを備える。
【0038】
第二冷却管11の下流側端部11bから供給された溶融ガラスGmは、駆動装置13によって回転駆動されるスリーブ12の外周面に連続的に巻き取られるとともに、スリーブ12内に吹き込まれる空気によって所定形状の長尺ガラス管Gpに成形される。この長尺ガラス管Gpを下流側に搬送しながら所定長さで切断することにより、ガラス物品としてのガラス管が製造される。なお、成形装置4は、ベロー法などの他の方法により、溶融ガラスGmからガラス管を成形するものであってもよい。
【0039】
移送装置3の第一冷却管10及び第二冷却管11は、いずれも移送管により構成される。移送装置3の移送管の周辺設備を、第一冷却管10の周辺設備を例にとって説明する。なお、以下に説明する第一冷却管10の周辺設備は、第二冷却管11の周辺設備としても適用可能である。
【0040】
図2に示すように、第一冷却管10の周辺設備は、移送管としての第一冷却管10の外周側に配置されて第一冷却管10を保持する保持レンガ14と、保持レンガ14の外側に空間15を介して配置されたケーシング16とを備える。つまり、第一冷却管10及び保持レンガ14は、保持レンガ14との間に空間15を介在させた状態でケーシング16に収容されている。
【0041】
ケーシング16は、図示の断面で、矩形を呈している。以下の説明では、ケーシング16の幅方向を単に幅方向といい、ケーシング16の長手方向を単に長手方向という。保持レンガ14は、図示の断面で、その内面14aが円形を呈して第一冷却管10の外面10cに接触し、その外面14bが矩形を呈している。また、保持レンガ14は、第一冷却管10の外周側を全周に亘って包囲している。
【0042】
保持レンガ14は、ケーシング16の底壁16aの内面16aaに複数個(図例では二個)の支持部材17を介して支持されている。二個の支持部材17は、保持レンガ14の下面14cにおける幅方向の両端部を下方から支持している。これら支持部材17は、長手方向についても間隔を空けて複数個が設置されている。したがって、保持レンガ14の下方では、空間15が連通しており、これにより保持レンガ14の外周側全周に空間15が存在している。なお、保持レンガ14は、ケーシング16の両側壁16bの内面16ba及び/又は上壁16cの内面16caに図外の支持部材を介して支持されていてもよい。本実施形態では、保持レンガ14は、第一冷却管10の上下方向中央部の高さ位置H1で分割されている。
【0043】
保持レンガ14は、例えば、電鋳レンガなどの耐火物から形成される。支持部材17は、例えば、焼成レンガなどの耐火物から形成される。ケーシング16は、例えば、耐熱ボード、耐熱ブランケット、焼成レンガ、キャスタブルなどの耐火物から形成される。また、ケーシング16は、耐熱鋼などの鋼材から形成されてもよく、耐火物と鋼材とで形成されてもよい。
【0044】
本実施形態では、第一冷却管10の周辺設備は、加熱装置18と、冷却装置19とをさらに備える。
【0045】
加熱装置18は、保持レンガ14を介して第一冷却管10を加熱し、第一冷却管10内の溶融ガラスGmを加熱するものである。加熱装置18は、保持レンガ14の外側に配置されている。そのため、加熱装置18の配置や保守を容易に行うことができる。本実施形態では、加熱装置18は、ケーシング16の側壁16bからケーシング16内に挿入されており、ケーシング16内の空間15の雰囲気を加熱するように構成されている。
【0046】
加熱装置18としては、例えば、バーナー、電気ヒータ、熱風ヒータなどが利用できる。本実施形態では、加熱装置18が、バーナーである場合を例示する。
【0047】
冷却装置19は、保持レンガ14を介して第一冷却管10を冷却し、第一冷却管10内の溶融ガラスGmを冷却するものである。冷却装置19は、保持レンガ14の外側に配置されている。そのため、冷却装置19の配置や保守を容易に行うことができる。本実施形態では、冷却装置19は、ケーシング16の側壁16bからケーシング16内に挿入されており、ケーシング16内の空間15の雰囲気を冷却するように構成されている。
【0048】
冷却装置19としては、例えば、冷風機、エアコン、送風機などが利用できる。本実施形態では、冷却装置19が、冷風機である場合を例示する。
【0049】
ケーシング16は、上壁16cに、排気口又は給気口として機能する通気口20を有する。通気口20の形成位置は、上壁16cに限定されず、底壁16aや側壁16bなどであってもよい。
【0050】
次に、以上のように構成された製造装置1を用いたガラス物品の製造方法を説明する。
【0051】
図3に示すように、本製造方法は、立ち上げ工程S1と、生産工程S2とを備える。
【0052】
立ち上げ工程S1は、生産工程S2を実行可能な状態まで溶融炉2を立ち上げる工程である。立ち上げ工程S1では、溶融炉2内の溶融ガラスGmの深さを、生産工程S2が実行可能なレベルまで順次増加させる。
【0053】
立ち上げ工程S1では、溶融炉2内の溶融ガラスGmの深さを増加させるために、投入装置5を用いて投入口2aから溶融炉2内にガラス原料Grを供給する。ガラス原料Gr及び溶融ガラスGmは、溶融炉2に設けられた加熱部によって加熱される。
【0054】
立ち上げ工程S1では、溶融炉2内の溶融ガラスGmの深さの増加に伴って、スロート8、清澄槽9、第一冷却管10(図4の矢印Xを参照)及び第二冷却管11における溶融ガラスGmの深さも徐々に増加する。
【0055】
このように溶融ガラスGmの深さを増加させる過程で、第二冷却管11は、通電加熱することができるが、第一冷却管10は、通電加熱をするための設備を備えていないため、通電加熱することができない。一方、立ち上げ工程S1(特に、立ち上げ工程S1の初期)において、第一冷却管10内の溶融ガラスGmの深さが浅く、溶融ガラスGmの流量が少ない状態では、溶融ガラスGmによって第一冷却管10内に単位時間当たりに持ち込まれる熱量は少ない。その結果、通電加熱されない第一冷却管10内の溶融ガラスGmの温度は低下しやすい。したがって、図4に示すように、立ち上げ工程S1では、加熱装置18により、保持レンガ14を介して第一冷却管10を加熱する。このようにすれば、第一冷却管10内の溶融ガラスGmを確実に加熱できるため、第一冷却管10内でガラス詰まりが生じるのを確実に抑制できる。特に、保持レンガ14を電鋳レンガで形成した場合、保持レンガ14の熱伝導率が良好となるため、保持レンガ14を介して第一冷却管10を効率よく加熱できる。
【0056】
本実施形態では、加熱装置18は、バーナーで構成されており、ケーシング16内の空間15の下部で、燃料を燃焼して火炎Fを形成する。このように火炎Fを用いれば、発生熱量が大きくなるため、高温での加熱が可能となる。具体的には、ケーシング16内の空間15の温度は、例えば、1000~1400℃であることが好ましい。
【0057】
ケーシング16内の空間15の下部で、火炎Fにより温められた雰囲気は、空間15の上部に移動するため、空間15が均一に加熱される。したがって、第一冷却管10全体を均一に加熱し、第一冷却管10内の溶融ガラスGmを効率よく加熱できる。なお、火炎Fの形成位置は、空間15内であれば、いずれの位置でもよい。例えば、火炎Fの形成位置は、空間15の上部などであってもよい。
【0058】
バーナーの排ガスYは、ケーシング16の通気口20からケーシング16外に排気される。これにより、ケーシング16内の空間15の圧力が適正に維持される。
【0059】
図1に示すように、生産工程S2は、溶融炉2でガラス原料Grから溶融ガラスGmを生成する溶融工程と、溶融工程で生成された溶融ガラスGmを清澄槽9で清澄する清澄工程と、清澄工程で清澄された溶融ガラスGmを第一冷却管10及び第二冷却管11で成形に適した状態に調整する状態調整工程と、状態調整工程で調整された溶融ガラスGmから成形装置4を用いてガラス管を成形する成形工程とを含む。なお、本実施形態では、生産工程S2に含まれる溶融工程では、投入装置5を用いて投入口2aから溶融炉2内にガラス原料Grを連続的に供給し、溶融ガラスGmを連続的に生成する。
【0060】
図5に示すように、生産工程S2では、第一冷却管10内の溶融ガラスGmの深さは深く(図例では、第一冷却管10の流路断面が溶融ガラスGmで満たされている)、立ち上げ工程S1時よりも溶融ガラスGmの流量が多い状態である。そのため、溶融ガラスGmによって第一冷却管10内に単位時間当たりに持ち込まれる熱量は多く、通電加熱されない第一冷却管10内の溶融ガラスGmの温度も低下しにくい。そこで、生産工程S2では、第一冷却管10及び第二冷却管11内の溶融ガラスGmの粘度などを成形に適した状態に調整するために、冷却装置19により、保持レンガ14を介して第一冷却管10を冷却する。なお、この際、第二冷却管11の周辺設備にも同様の冷却装置を設け、第二冷却管11を冷却するようにしてもよい。
【0061】
本実施形態では、冷却装置19は、冷風機で構成されており、ケーシング16内の空間15の上部で冷風Cを供給する。ケーシング16内の空間15の上部で、冷風Cにより冷やされた雰囲気は、空間15の下部に移動するため、空間15が均一に冷却される。したがって、第一冷却管10全体をより均一に冷却し、第一冷却管10内の溶融ガラスGmを効率よく冷却できる。なお、冷風Cの供給位置は、空間15内であれば、いずれの位置でもよい。例えば、冷風Cの供給位置は、空間15の下部などであってもよい。また、冷却装置19は省略してもよい。冷却装置19を省略した場合、ケーシング16の下部から空間15に外気を導入し、第一冷却管10を冷却することもできる。
【0062】
(第二実施形態)
第二実施形態に係るガラス物品の製造方法では、生産工程S2で停電が生じた場合に、図4に示した同様の態様で、保持レンガ14の外側に配置された加熱装置(好ましくはバーナー)18により、保持レンガ14を介して第一冷却管10を加熱する。
【0063】
生産工程S2で停電が生じた場合、溶融炉2や清澄槽9で電極による加熱ができなくなったり、電極による加熱量が減少したりする。また、移送管を通電加熱できなくなったり、移送管での加熱量が減少したりする。その結果、移送管内の溶融ガラスGmの温度が低下しやすい。したがって、停電時には、加熱装置18により、保持レンガ14を介して第一冷却管10を加熱することが好ましい。このようにすれば、第一冷却管10内の溶融ガラスGmも加熱できるため、第一冷却管10内でガラス詰まりが生じるのを確実に抑制できる。
【0064】
生産工程S2で停電が生じた場合には、第一冷却管10と同様に、第二冷却管11の保持レンガの外側にも加熱装置を配置することにより、第二冷却管11も保持レンガを介して加熱することが好ましい。
【0065】
なお、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を施すことが可能である。
【0066】
上記の第一及び第二実施形態において、ケーシング16は省略してもよい。ただし、加熱装置18の加熱効果や、冷却装置19の冷却効果を効率よく作用させるとともに外気温の変動に伴う溶融ガラスGmの温度変動を抑制する観点からは、空間15を区画形成するケーシング16を配置することが好ましい。
【0067】
上記の第二実施形態では、通電加熱のための設備を備えるが、停電により通電加熱を行うことができない移送管(例えば、第二冷却管11)に対して、本発明に係る加熱装置を適用する場合を説明したが、通電加熱を行っている移送管を本発明に係る加熱装置で補助的に加熱するようにしてもよい。
【0068】
上記の実施形態では、ガラス物品がガラス管である場合を説明したが、これに限定されない。ガラス物品は、例えば、板ガラス、帯状のガラスリボンをロール状に巻き取ったガラスロール、光学ガラス部品、ガラスブロック、ガラス繊維などであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 製造装置
2 溶融炉
3 移送装置
4 成形装置
5 投入装置
6 原料ホッパー
7 コンベア
8 スロート
9 清澄槽
10 第一冷却管
11 第二冷却管
12 スリーブ
13 駆動装置
14 保持レンガ
15 空間
16 ケーシング
17 支持部材
18 加熱装置
19 冷却装置
20 通気口
C 冷風
F 火炎
Gm 溶融ガラス
Gp 長尺ガラス管
Gr ガラス原料
S1 立ち上げ工程
S2 生産工程
図1
図2
図3
図4
図5