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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025047442
(43)【公開日】2025-04-03
(54)【発明の名称】流路継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 25/01 20060101AFI20250326BHJP
   F16L 19/04 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
F16L25/01
F16L19/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155931
(22)【出願日】2023-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】株式会社PILLAR
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】福井 克彦
【テーマコード(参考)】
3H014
【Fターム(参考)】
3H014EA07
(57)【要約】
【課題】帯電した移送流体から効率よく放電することができる流路継手構造を提供する。
【解決手段】本開示の流路継手構造は、2つの流体デバイスにそれぞれ形成された流路孔同士をシールして接続する流路継手構造であって、前記流路孔同士を連通して移送流体が流れる連通孔が形成された導電性の筒体と、前記筒体の前記連通孔に配置され、前記移送流体が通過する導電性の多孔質体と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの流体デバイスにそれぞれ形成された流路孔同士をシールして接続する流路継手構造であって、
前記流路孔同士を連通して移送流体が流れる連通孔が形成された導電性の筒体と、
前記筒体の前記連通孔に配置され、前記移送流体が通過する導電性の多孔質体と、を備える流路継手構造。
【請求項2】
前記多孔質体が前記連通孔に配置された状態で前記多孔質体を保持する保持部をさらに備える、請求項1に記載の流路継手構造。
【請求項3】
外周に雄ねじが形成された前記筒体を有する継手部材と、
前記雄ねじに締め込まれる雌ねじを内周に有するユニオンナットと、を備え、
前記保持部は、前記筒体の内周に形成され、前記多孔質体が嵌め込まれる環状の凹溝である、請求項2に記載の流路継手構造。
【請求項4】
各前記流体デバイスおいて、前記流路孔の接続端部に形成された一対の環状のシール溝と、
各前記シール溝に挿入される一対の環状のシール部を軸方向両側に有する前記筒体としてのガスケットと、を備え、
前記ガスケットの前記連通孔の内周面は、各前記流体デバイスの前記流路孔の内周面よりも大径であり、
前記保持部は、各前記シール溝において前記連通孔の内周面と前記流路孔の内周面との間に形成された一対の環状の段差面を有し、
前記多孔質体は、前記連通孔に配置された状態で、一対の前記シール溝における前記段差面同士の間に挟み込まれる、請求項2に記載の流路継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造、医療・医薬品製造などの各種技術分野の製造装置において、チューブやダイアフラムポンプなどの各流体デバイスに形成された流路同士を接続する接続構造として、特許文献1に記載された管継手が知られている。特許文献1の管継手は、チューブの端部の内周に装着されるインナーリングと、チューブの端部の外周に装着される筒状の継手本体と、継手本体の外周に装着されるユニオンナットと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-168947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記管継手により接続された流体デバイス内において、帯電した移送流体が流れると、流体デバイスの薄肉部(例えばチューブの周壁部や、ダイアフラムポンプのダイアフラム膜など)に、ピンホールなどの絶縁破壊が発生する場合がある。このような絶縁破壊が発生すると、移送流体が外部に漏洩してしまう。
【0005】
そこで、継手本体を導電性材料により構成し、この継手本体の内周面に移送流体が接触することで、移送流体に帯電している電荷を継手本体に放電させることが考えられる。しかし、このような放電構造では、継手本体の内周面付近を流れる移送流体の一部分だけが継手本体に接触するため、移送流体が導電性の低い流体である場合、移送流体に帯電している電荷を継手本体に十分に放電させることができない。
【0006】
本開示は、帯電した移送流体から効率よく放電することができる流路継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の流路継手構造は、2つの流体デバイスにそれぞれ形成された流路孔同士をシールして接続する流路継手構造であって、前記流路孔同士を連通して移送流体が流れる連通孔が形成された導電性の筒体と、前記筒体の前記連通孔に配置され、前記移送流体が通過する導電性の多孔質体と、を備える。
【0008】
本開示の流路継手構造によれば、帯電した移送流体は、導電性の筒体の連通孔を流れるとき、連通孔に配置された導電性の多孔質体を通過するので、移送流体に帯電した電荷は、多孔質体を介して筒体に放電される。その際、多孔質体の内部では移送流体が多方向に流れるため、多孔質体に接触する移送流体が増加する。これにより、移送流体から多孔質体を介して筒体へ効率よく放電することができる。
【0009】
(2)前記(1)の流路継手構造において、前記多孔質体が前記連通孔に配置された状態で前記多孔質体を保持する保持部をさらに備えるのが好ましい。
この場合、保持部は、移送流体によって多孔質体が筒体の連通孔から押し流されるのを抑制することができる。
【0010】
(3)前記(2)の流路継手構造において、外周に雄ねじが形成された前記筒体を有する継手部材と、前記雄ねじに締め込まれる雌ねじを内周に有するユニオンナットと、を備え、前記保持部は、前記筒体の内周に形成され、前記多孔質体が嵌め込まれる環状の凹溝であるのが好ましい。
この場合、継手部材の筒体の内周に形成された凹溝に多孔質体が嵌め込まれるので、移送流体によって多孔質体が筒体の連通孔から押し流されるのを効果的に抑制することができる。
【0011】
(4)前記(2)の流路継手構造において、各前記流体デバイスおいて、前記流路孔の接続端部に形成された一対の環状のシール溝と、各前記シール溝に挿入される一対の環状のシール部を軸方向両側に有する前記筒体としてのガスケットと、を備え、前記ガスケットの前記連通孔の内周面は、各前記流体デバイスの前記流路孔の内周面よりも大径であり、前記保持部は、各前記シール溝において前記連通孔の内周面と前記流路孔の内周面との間に形成された一対の環状の段差面を有し、前記多孔質体は、前記連通孔に配置された状態で、一対の前記シール溝における前記段差面同士の間に挟み込まれるのが好ましい。
この場合、ガスケット(筒体)の連通孔に配置された多孔質体は、2つの流体デバイスにおけるシール溝の段差面同士の間に挟み込まれるので、多孔質体がガスケットの連通孔から押し流されるのを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、帯電した移送流体から効率よく放電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態に係る流路継手構造を示す断面図である。
図2図2は、多孔質体を示す斜視図である。
図3図3は、第2実施形態に係る流路継手構造を示す断面図である。
図4図4は、第3実施形態に係る流路継手構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本開示の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
<流路継手構造の全体構成>
図1は、第1実施形態に係る流路継手構造を示す断面図である。本実施形態の流路継手構造は、管継手1である。管継手1は、例えば、半導体製造装置で使用される薬液が移送流体として流れる配管経路において、2つの流体デバイスにそれぞれ形成された流路孔同士をシールして接続するために用いられる。本実施形態における各流体デバイスは、例えば合成樹脂製のチューブ10である。チューブ10の内部空間は、移送流体が流れる流路孔10aとされている。
【0015】
管継手1は、継手部材2と、一対のユニオンナット5と、を備える。以下、本実施形態では、管継手1の軸方向中央から軸方向両側へ向かう方向を軸方向外側といい、管継手1の軸方向両側から軸方向中央へ向かう方向を軸方向内側という。
【0016】
継手部材2は、円筒状の継手本体3と、継手本体3の軸方向両側に設けられた一対のインナーリング4と、を有する。継手本体3は、導電性を有する材料によって形成された筒体である。導電性を有する材料としては、例えば、金属、又は導電性樹脂などが挙げられる。本実施形態の継手本体3は、導電性と耐薬品性を有する充填剤が配合されたカーボン樹脂からなる。
【0017】
継手本体3は、本体部3aと、本体部3aから軸方向両側に延びる一対の受口部3bと、を有する。本体部3aには、移送流体が流れる連通孔3cが軸方向に貫通して形成されている。連通孔3cは、インナーリング4の連通孔4d(後述)を介して、両チューブ10の流路孔10a同士を連通している。本体部3aの外周には、アース線12が接続されている。各受口部3bは、円筒状に形成されている。各受口部3bの内径は、本体部3aの内径よりも大きい。各受口部3bの外周には、雄ねじ3dが形成されている。
【0018】
本体部3aの軸方向両端部における受口部3bよりも径内側には、一次シール溝3e及び二次シール溝3fが形成されている。一次シール溝3eは、連通孔3cの内周面から軸方向外端に向かって、徐々に拡径するように切り欠かれたテーパ溝である。二次シール溝3fは、一次シール溝3eと受口部3bとの間において円筒状に形成されている。
【0019】
インナーリング4は、絶縁性の合成樹脂材料からなる。絶縁性の合成樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、又はフッ素樹脂(パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)など)が挙げられる。本実施形態のインナーリング4は、半導体製造装置で使用される移送流体(薬液)に純粋性が求められるので、フッ素樹脂からなる。
【0020】
インナーリング4は、膨出部4aと、一次シール部4bと、二次シール部4cと、を有する。膨出部4aは、インナーリング4の軸方向外側において、径外側に山状に突出して形成されている。膨出部4aは、チューブ10の端部に圧入され、当該端部を拡径する。これにより、インナーリング4は、チューブ10の端部に接続される。
【0021】
一次シール部4bは、インナーリング4の軸方向内側の径内側において、円環状に形成されている。一次シール部4bの外周面は、軸方向内端から軸方向外端へ向かって徐々に縮径している。一次シール部4bは、継手本体3の一次シール溝3eに挿入されて押圧される。二次シール部4cは、インナーリング4の軸方向内側の径外側において、円筒状に形成されている。二次シール部4cは、継手本体3の二次シール溝3fに挿入(圧入)される。
【0022】
チューブ10の端部に膨出部4aが圧入されたインナーリング4は、継手本体3の受口部3bの内周に嵌め込まれる。これにより、チューブ10の端部は、インナーリング4の膨出部4aと継手本体3の受口部3bとによって挟持される。インナーリング4の内径は、継手本体3の内径と同一である。インナーリング4には、移送流体が流れる連通孔4dが軸方向に貫通して形成されている。インナーリング4の連通孔4dは、本体部3aの連通孔3cとチューブ10の流路孔10aとを連通している。これにより、各インナーリング4の連通孔4dは、本体部3aの連通孔3cと共に、両チューブ10の流路孔10a同士を連通している。
【0023】
ユニオンナット5は、例えば、PVC、PP、PE又はフッ素樹脂(PFAやPTFEなど)の合成樹脂材料によって円筒状に形成されている。ユニオンナット5は、押圧部5aと、雌ねじ5bと、を有する。押圧部5aは、ユニオンナット5の軸方向外側において、径内側に突出して形成されている。雌ねじ5bは、ユニオンナット5の軸方向内側の内周に形成されている。雌ねじ5bは、継手本体3の雄ねじ3dに締め込まれる。その締め込みによって、押圧部5aの軸方向内端部は、膨出部4aにより径外側に膨らむチューブ10の外周面を押圧する。
【0024】
以上の構成により、ユニオンナット5の雌ねじ5bが継手本体3の雄ねじ3dに締め込まれると、インナーリング4の一次シール部4b及び二次シール部4cは、それぞれ継手本体3の一次シール溝3e及び二次シール溝3fに挿入される。これにより、継手本体3(本体部3a)とインナーリング4との接続部分のシール性能、及びインナーリング4の外周面と継手本体3(受口部3b)の内周面とのシール性能が確保される。また、ユニオンナット5の押圧部5aにより、チューブ10の端部が管継手1から抜け出すのを抑制することができる。
【0025】
なお、継手部材2の形状については、雄ねじ3dが形成される受口部3bが円筒状に形成されていればよく、本体部3aは、円筒状に形成されてもよいし、多角筒状に形成されてもよい。
【0026】
<多孔質体>
管継手1は、継手本体3の連通孔3cに配置された多孔質体6をさらに備える。図2は、多孔質体6を示す斜視図である。図1及び図2において、多孔質体6は、全体として円板状に形成されている。多孔質体6の外径は、連通孔3cの孔径よりも大きい。多孔質体6は、三次元の網目構造を有する骨格6aと、骨格6aに形成された多数の気孔6bと、を備える。
【0027】
多孔質体6は、導電性を有する材料によって形成されている。本実施形態の多孔質体6は、例えばグラファイト又はガラス状カーボンからなる。多孔質体6の気孔率は、例えば40%から95%である。多孔質体6の抵抗率は、例えば10Ω・cm以下、好ましくは10Ω・cm以下である。
【0028】
<保持部>
管継手1は、多孔質体6が連通孔3cに配置された状態で多孔質体6を保持する保持部7をさらに備える。本実施形態の保持部7は、継手本体3の本体部3aの内周に形成された環状の凹溝71からなる。凹溝71は、多孔質体6の外周部が嵌め込まれる大きさに形成されている。多孔質体6は、その外周部が凹溝71に嵌め込まれることで、連通孔3cに配置された状態で保持される。
【0029】
以上の構成により、継手本体3の連通孔3cに流れ込んだ移送流体は、多孔質体6の軸方向一方側から、多数の気孔6bを通過して、多孔質体6の軸方向他方側へ流れる。このため、移送流体が帯電している場合、その移送流体が多孔質体6を通過することで、移送流体に帯電している電荷は、導電性の多孔質体6及び継手本体3を介してアース線12に導かれて放電される。
【0030】
<作用効果>
第1実施形態の管継手1によれば、帯電した移送流体は、導電性の継手本体3の連通孔3cに配置された導電性の多孔質体6を通過するので、移送流体に帯電した電荷は、多孔質体6を介して継手本体3に放電される。その際、多孔質体6の内部では、移送流体が多数の気孔6bを通過して多方向に流れるため、多孔質体6に接触する移送流体が増加する。これにより、移送流体から多孔質体6を介して継手本体3へ効率よく放電することができる。その結果、チューブ10にピンホールなどの絶縁破壊が発生するのを抑制することができる。
【0031】
多孔質体6は、継手本体3の内周に形成された凹溝71(保持部7)に嵌め込まれるので、移送流体によって多孔質体6が継手本体3の連通孔3cから押し流されるのを効果的に抑制することができる。
【0032】
本実施形態の多孔質体6は、本体部3aの連通孔3cに配置されているが、これに限定されない。例えば、インナーリング4を、導電性を有する材料により形成することで、継手本体3とインナーリング4により筒体を構成し、多孔質体6を、インナーリング4の連通孔4dに配置してもよい。その場合、連通孔4dの内周面には、多孔質体6を嵌め込む凹溝71(保持部7)を形成してもよいし、凹溝71を形成せずに多孔質体6の外周面を圧入してもよい。後者の場合、連通孔4dの軸方向外端部の内周面に多孔質体6の外周面を圧入すれば、ユニオンナット5の締め込んだときに、押圧部5aがチューブ10及び膨出部4aを介して多孔質体6を径内側へ押圧する。これにより、多孔質体6は、インナーリング4の連通孔4dに配置された状態で保持される。
【0033】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る流路継手構造を示す断面図である。本実施形態の流路継手構造は、第1実施形態の管継手1の変形例であり、継手部材2の構成が第1実施形態と相違する。本実施形態の継手部材2は、導電性を有する材料により形成された筒体である継手本体3のみで構成されている。継手本体3は、本体部3aと、本体部3aの径外側から軸方向両側に延びる一対の受口部3bと、本体部3aとの径内側から軸方向両側に延びる一対の接続部3gと、を有する。
【0034】
各接続部3gは、円筒状に形成されている。各接続部3gの内径は、本体部3aの内径と同一である。各接続部3gには、移送流体が流れる連通孔3hが軸方向に貫通して形成されている。連通孔3hは、継手本体3の連通孔3cとチューブ10の流路孔10aとを連通している。これにより、各接続部3gの連通孔3hは、本体部3aの連通孔3cと共に、両チューブ10の流路孔10a同士を連通している。各接続部3gの軸方向両端部は、それぞれチューブ10の端部に圧入され、当該端部を拡径する。これにより、継手本体3の各接続部3gは、チューブ10の端部に接続される。
【0035】
以上の構成により、ユニオンナット5の雌ねじ5bが継手本体3の雄ねじ3dに締め込まれると、ユニオンナット5の押圧部5aの軸方向内端部は、継手本体3の接続部3gにより径外側に膨らむチューブ10の外周面を押圧する。これにより、チューブ10の端部が管継手1から抜け出すのを抑制することができる。
【0036】
本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態の管継手1においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0037】
本実施形態の多孔質体6は、本体部3aの連通孔3cに配置されているが、接続部3gの連通孔3hに配置されてもよい。その場合、接続部3gの内周面には、多孔質体6を嵌め込む凹溝71(保持部7)を形成してもよいし、凹溝71を形成せずに多孔質体6の外周面を圧入してもよい。後者の場合、接続部3gの軸方向外端部の内周面に多孔質体6の外周面を圧入すれば、ユニオンナット5の締め込んだときに、押圧部5aがチューブ10を介して多孔質体6を径内側へ押圧する。これにより、多孔質体6は、接続部3gの連通孔3hに配置された状態で保持される。
【0038】
[第3実施形態]
<全体構成>
図4は、第3実施形態に係る流路継手構造20を示す断面図である。本実施形態の流路継手構造20は、例えば、半導体製造装置で使用される薬液が移送流体として流れる配管経路において、2つの流体デバイス30,30にそれぞれ形成された流路孔30a,30a同士をシールして接続するために用いられる。本実施形態の各流体デバイス30は、ポンプ、バルブ、アキュムレータ、フィルタ、流量計、圧力センサ、又は配管ブロック等からなる。
【0039】
流路継手構造20は、各流体デバイス30にそれぞれ形成された一次シール溝(シール溝)21及び二次シール溝22と、ガスケット23と、クランプ27と、を備える。以下、本実施形態では、ガスケット23の軸方向中央から軸方向両側へ向かう方向を軸方向外側といい、ガスケット23の軸方向両側から軸方向中央へ向かう方向を軸方向内側という。
【0040】
一次シール溝21は、各流体デバイス30における流路孔30aの接続端部の径外側において、軸方向内端から軸方向外端に向かって徐々に拡径するように切り欠かれた環状のテーパ溝である。二次シール溝22は、各流体デバイス30において一次シール溝21よりも径外側において円筒状に形成されている。
【0041】
ガスケット23は、導電性を有する材料によって形成された筒体である。本実施形態のガスケット23は、導電性と耐薬品性を有する充填剤が配合されたカーボン樹脂からなる。ガスケット23には、移送流体が流れる連通孔23aが軸方向に貫通して形成されている。連通孔23aは、2つの流体デバイス30,30の流路孔30a,30a同士を連通している。
【0042】
ガスケット23は、円筒状の本体部24と、本体部24の軸方向両側に設けられた一対の一次シール部(シール部)25及び一対の二次シール部26と、を有する。本体部24の外周には、アース線32が接続されている。
【0043】
一次シール部25は、本体部24における軸方向両端部の径内側から軸方向外側に突出している。一次シール部25は、円環状に形成されている。一次シール部25の外周面は、軸方向内端から軸方向外端へ向かって徐々に縮径している。一次シール部25は、流体デバイス30の一次シール溝21に挿入されて押圧される。
【0044】
二次シール部26は、本体部24における軸方向両端部の径外側から軸方向外側に突出している。二次シール部26は、円筒状に形成されている。二次シール部26は、流体デバイス30の二次シール溝22に挿入(圧入)される。
【0045】
以上より、ガスケット23における一対の一次シール部25及び一対の二次シール部26は、両流体デバイス30の一次シール溝21及び二次シール溝22に挿入される。これにより、両流体デバイス30,30における流路孔30a,30a同士の接続部分のシール性能が確保される。
【0046】
クランプ27は、ガスケット23により接続された両流体デバイス30,30の端部同士を連結する部材である。クランプ27は、例えば断面略C字状に形成されている。本実施形態のクランプ27は、両流体デバイス30,30の端部に形成されたフランジ部30b,30b同士を、軸方向両外側から挟み込んで締め付ける。これにより、各流体デバイス30の一次シール溝21及び二次シール溝22にガスケット23の一次シール部25及び二次シール部26が挿入されたシール状態で維持される。
【0047】
流路継手構造20は、クランプ27以外に、ボルトとナット等の他の連結手段を備えていてもよい。また、ガスケット23は、一対の二次シール部26を有していなくてもよい。その場合、両流体デバイス30の二次シール溝22は不要となる。
【0048】
<多孔質体>
流路継手構造20は、ガスケット23の連通孔23aに配置された多孔質体6をさらに備える。本実施形態の多孔質体6は、全体として円柱状に形成されている。多孔質体6の外径は、連通孔23aの孔径と略同一である。多孔質体6の外周面6cは、連通孔23aの内周面23a1に嵌め込まれている。
【0049】
連通孔23aの内周面23a1は、各流体デバイス30の流路孔30aの内周面30a1よりも大径である。多孔質体6の軸方向の長さは、連通孔23aの内周面23a1の軸方向の長さよりも長い。多孔質体6の軸方向両側それぞれの外周縁部には、円環状の当接面6dが形成されている。当接面6dは、多孔質体6の軸方向内端から軸方向外端へ向かって徐々に縮径するテーパ面である。多孔質体6の他の構成は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0050】
<保持部>
流路継手構造20は、多孔質体6がガスケット23の連通孔23aに配置された状態で多孔質体6を保持する保持部7をさらに備える。本実施形態の保持部7は、両流体デバイス30の一次シール溝21に形成された一対の円環状の段差面72と、ガスケット23の一対の一次シール部25と、によって構成されている。
【0051】
段差面72は、一次シール溝21の一部分からなる。具体的には、段差面72は、一次シール溝21において、一次シール部25と接触しない面であり、連通孔23aの内周面23a1と流路孔30aの内周面30a1との間に形成されている。多孔質体6がガスケット23の連通孔23aに配置された状態で、両流体デバイス30の一対の段差面72は、多孔質体6の軸方向両端部の当接面6dに当接する。これにより、多孔質体6は、一対の段差面72同士の間に挟み込まれる。
【0052】
ガスケット23の一次シール部25は、流体デバイス30の一次シール溝21に挿入されると、一次シール溝21に押圧されることで、径内側へ倒れ込むように変形する。径内側へ倒れ込んだ一次シール部25は、多孔質体6の外周面6cを径内側へ押圧する。したがって、多孔質体6の外周面6cの軸方向両端部は、一対の一次シール部25により径内側へ押圧される。
【0053】
多孔質体6は、一対の段差面72同士の間に挟み込まれるとともに、一対の一次シール部25により径内側へ押圧されることで、ガスケット23の連通孔23aに配置された状態で保持される。
【0054】
本実施形態の保持部7は、一対の段差面72と一対の一次シール部25とによって構成されているが、一対の段差面72のみ、又は一対の一次シール部25のみで構成されてもよい。また、第1実施形態と同様に、ガスケット23の連通孔23aの内周面23a1に、多孔質体6が嵌め込まれる凹溝を形成し、この凹溝を保持部7としてもよい。
【0055】
以上の構成により、ガスケット23の連通孔23aに流れ込んだ移送流体は、多孔質体6の軸方向一方側から、多数の気孔6bを通過して、多孔質体6の軸方向他方側へ流れる。このため、移送流体が帯電している場合、その移送流体が多孔質体6を通過することで、移送流体に帯電している電荷は、導電性の多孔質体6及びガスケット23を介してアース線32に導かれて放電される。
【0056】
<作用効果>
第2実施形態の流路継手構造20によれば、帯電した移送流体は、導電性のガスケット23の連通孔23aに配置された導電性の多孔質体6を通過するので、移送流体に帯電した電荷は、多孔質体6を介してガスケット23に放電される。その際、多孔質体6の内部では、移送流体が多数の気孔6bを通過して多方向に流れるため、多孔質体6に接触する移送流体が増加する。これにより、移送流体から多孔質体6を介してガスケット23へ効率よく放電することができる。その結果、流体デバイス30にピンホールなどの絶縁破壊が発生するのを抑制することができる。
【0057】
ガスケット23の連通孔23aに配置された多孔質体6は、両流体デバイス30における一対の段差面72同士の間に挟み込まれるとともに、一対の一次シール部25により径内側へ押圧される。したがって、移送流体によって多孔質体6がガスケット23の連通孔23aから押し流されるのを効果的に抑制することができる。
【0058】
[その他]
以上のとおり開示した各実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものでない。例えば、上述の各実施形態の管継手1及び流路継手構造20は、半導体製造装置以外に、液晶・有機EL分野、医療・医薬分野、又は自動車関連分野などに適用してもよい。上述の各実施形態の保持部7は、凹溝71や段差面72に限定されず、多孔質体6を連通孔3c,23aに配置された状態で保持できれば、他の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 管継手(流路継手構造)
2 継手部材
3 継手本体(筒体)
3c 連通孔
3d 雄ねじ
5 ユニオンナット
5b 雌ねじ
6 多孔質体
7 保持部
10 チューブ(流体デバイス)
10a 流路孔
20 流路継手構造
21 一次シール溝(シール溝)
23 ガスケット(筒体)
23a 連通孔
23a1 内周面
25 一次シール部(シール部)
30 流体デバイス
30a 流路孔
30a1 内周面
71 凹溝
72 段差面
図1
図2
図3
図4