(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004752
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】非対称ガラスファイバプリフォーム及びファイバ自体の改良された断層撮影屈折率プロファイル評価
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20250107BHJP
G01M 11/00 20060101ALI20250107BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
G01N21/41 Z
G01M11/00 G
G01N21/17 620
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024093947
(22)【出願日】2024-06-10
(31)【優先権主張番号】18/214156
(32)【優先日】2023-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515174489
【氏名又は名称】ヘレーウス クオーツ ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quartz North America LLC
【住所又は居所原語表記】100 Heraeus Boulevard, Buford, GA 30518, United States of America
(71)【出願人】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,マキシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】ポナダー,カール
【テーマコード(参考)】
2G059
2G086
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059BB15
2G059DD15
2G059EE04
2G059FF02
2G059GG01
2G059GG03
2G059HH01
2G059JJ02
2G059JJ17
2G059JJ22
2G059JJ23
2G059KK04
2G059MM01
2G086AA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】屈折率プロファイル(RIP)が実質的に対称でない場合のプリフォームのRIPの決定方法を提供する。
【解決手段】(i)プリフォームは、第1の投影角から開始して走査され、測定データを通して物体を表す生データが作成される。(ii)任意選択で、物体を回転させ、すべての投影角が走査され、すべての測定データが作成されるまで、ステップ(i)を反復的に繰り返す。(iii)サイノグラムを形成するために測定データを処理し、任意選択のステップ(ii)が完了した場合、本方法はステップ(v)に進む。(iv)物体を回転させ、すべての投影角が走査されるまでステップ(i)及び(iii)を反復的に繰り返す。(v)2D RIPを計算する。(vi)対象の線セクションが2D RIP内で選択される。(vii)フィッティング手順が、対象の線セクションに適用される。(viii)最後に、屈折率ステップ/勾配及び寸法が決定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の屈折率プロファイル(RIP)を決定する方法であって、前記方法が、
(a)長手方向軸を有する光学物体を含む前記物体であって、前記長手方向軸を中心として、少なくとも1つの層が外向きに延びており、前記少なくとも1つの層が、断面において完全な回転対称性を欠いている、物体を準備するステップと、
(b)第1の投影角から開始して前記物体を光ビームで走査し、測定データを通して前記物体を表す生データを作成するステップと、
(c)任意選択で、前記物体を回転させ、すべての投影角が走査され、すべての測定データが作成されるまで、ステップ(b)を反復的に繰り返すステップと、
(d)サイノグラムを形成するために前記測定データを処理し、前記任意選択のステップ(c)が完了した場合、ステップ(f)に進むステップと、
(e)前記物体を回転させ、すべての投影角が走査されるまでステップ(b)及び(d)を反復的に繰り返すステップと、
(f)2D RIPを計算するステップと、
(g)前記2D RIP内で対象の線セクションを選択するステップと、
(h)フィッティング手順を対象の前記線セクションに適用するステップと、
(i)屈折率ステップ/勾配及び寸法を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記物体を走査する前記ステップ(b)が、前記円筒状光学物体への入射点における入射ビームを前記円筒長手方向軸を横切る方向に方向付けるステップを含み、偏向角ψは、出射ビームと前記入射ビームとの間の角度として定義され、yは、デカルト座標系における前記円筒長手方向軸と前記入射ビームの前記入射点との間の距離である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2D RIPを計算する前記ステップが、逆ラドン変換に基づいて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
サイノグラムを形成するために前記測定データを処理する前記ステップが、偏向関数を計算するステップと、位相シフト図を計算するステップと、前記サイノグラムを形成するために前記位相シフト図をスタックするステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生データが、原画像を含み、前記方法が、「画像ROI」機能を有する走査カメラを使用すること、異なる露出のいくつかの画像を収集すること、HDRを有する走査カメラを使用すること、及びフィルタリングアルゴリズムを使用してOVD回折を除去すること、のうちの1つ以上によって、前記原画像の品質を改善するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
半径ランアウト補正を適用すること、及び前記サイノグラムを細かいメッシュに補間することのうちの1つ以上によって、前記サイノグラムの品質を改善するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)で準備される前記物体が、ファイバプリフォームである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ファイバプリフォームを特徴付け、プリフォーム製造プロセスを適合させるために、決定された前記屈折率ステップ/前記勾配及び前記寸法を使用するステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(f)の前に、すべての投影角が走査されたか否かを決定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(f)の後に、有意なRIP測定アーチファクトが前記2D RIPに存在するか否かを決定し、存在しない場合には、幾何学的形状及び屈折率ステップを決定し、前記方法を終了するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
対象の前記選択された線セクションに前記フィッティング手順を適用する前記ステップ(h)が、前記線セクションから前記フィッティング手順のための開始パラメータを抽出するステップと、第1の適合領域を定義するステップと、実際の層が階段状であるかどうかを決定するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記フィッティング手順は、前記実際の層が階段状である場合、解析偏向曲線を生成するステップと、前記解析偏向曲線を偏向RIPに変換するステップと、前記初期線セクションと比較して前記偏向RIPの精度を計算するステップと、を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(i)の後に、前記2D RIP内の対象のすべての線セクションが特徴付けられたか否かを決定するステップ(j)を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記2D RIP内の対象のすべての線セクションが特徴付けられるまで、ステップ(g)、(h)、(i)、及び(j)を反復的に繰り返すステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記物体の測定アーチファクト補償された屈折率プロファイルを計算するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、屈折率測定に関し、より詳細には、ファイバプリフォームなどの透明な円筒状物体の屈折率プロファイルを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバプリフォーム、光ファイバ、光パイプ、光チューブなどの透明な円筒状物体は、様々な光学用途で使用される。多くの場合、そのような物体の屈折率プロファイル(refractive index profile、RIP)を知ることが望ましい。例えば、光ファイバは、ファイバプリフォームを加熱し、溶融端部を細いガラス糸に線引きすることによって形成される。プリフォームのRIPは、結果として得られる光ファイバのRIPを定義し、それに応じて光ファイバの導波特性が決定する。したがって、ファイバプリフォームのRIPを正確に測定できることが重要である。
【0003】
円筒状光学物体、特に光ファイバ用プリフォームの半径方向RIPを決定するための様々な方法が存在する。円筒状光学物体は、多くの場合、円筒長手方向軸を有し、その軸を中心に、層半径rk及び層屈折率nkを有する少なくとも1つの層kが、半径方向に軸の周りに対称的に均一に延びている。もちろん、非放射状RIP、非対称RIP、又は勾配RIPを有する多くの物体も存在し、本開示は、非対称RIPを有する物体に焦点を当てる。偏向角分布ψ(ρ,θ)が測定され、RIPが偏向角分布から再構成される(ρは、走査位置であり、θは、測定された投影角である)。RIPは、屈折率分布としても知られており、記号n(x,y)によって表され、ここで、x及びyは、デカルト座標である。
【0004】
デカルト座標系は、3つのデカルト数値座標(x,y,z)によって3次元空間内の各点を一意に指定し、3つのデカルト数値座標は、同じ長さ単位で測定された、3つの固定された相互に垂直な有向線から点までの符号付き距離である。各基準線は座標軸又は単にシステムの軸と呼ばれ、それらが交わる点はその原点であり、通常は順序付けられたトリプレット(0、0、0)である。座標は、原点からの符号付き距離として表現される、3つの軸上への点の垂直投影の位置として定義することもできる。
【0005】
残念ながら、屈折率分布を直接測定することができない。屈折率分布は通常、光学素子の体積領域を透過する光ビームの偏向又は干渉として間接的に決定され、光学素子に対する光ビームの段階的な透過は、「走査」と呼ばれ、ρの方向に行われる。光学素子内の空間屈折率分布は、ビーム入射点(入射ビーム)におけるビーム方向に基づく出射光ビーム(出射ビーム)の干渉又は偏向から推測することができる。長手方向軸を横切る方向(ρ方向)での単一の固定投影角θに対する光ビームの走査中に測定された偏向角ψの群は、偏向角分布ψ(ρ,θ)を形成する(ここで、θは固定である)。
【0006】
より良好な視認及び例示のために、幾何学的関係を
図1に概略的に示す。n
0<n
1となるような屈折率n
0を有する屈折率調整流体によって囲まれた均一な屈折率n
1を有する物体が示されている。物体の半径は、r
1である。偏向角ψは、出射ビームと入射ビームとの間の角度として定義され、yは、円筒長手方向軸と入射ビームの入射点との間の距離として定義される。物体を走査するとき、ビームは、物体に接触するとすぐに屈折し、物体の中心に向かって方向付けられる。物体の中心までのビームの最短距離は、半径r
*によって与えられ、これは、後の数値積分の定式化に現れる(文献では逆アーベル変換と呼ばれることが多い)。
【0007】
屈折率の完全に階段状の屈折率分布を有する軸方向に対称な物体の場合、偏向角分布ψ(y)は、以下の式(1)を参照して数学的に記述することができる。
【0008】
【0009】
式(1)において、mは、物体の層数、n0は、周囲媒質の屈折率、nkは、k番目の層の屈折率、rkは、k番目の層の半径である。式(1)に従って測定データに基づく偏向角分布から屈折率プロファイルを計算するための既知の数学的方法は、以下の式(2)から計算される周知の数値積分(文献では「逆アーベル変換」と呼ばれる)に基づく。
【0010】
【数2】
ここで、rは、物体の円筒長手方向軸からビーム経路までの最短距離であり、すなわち、式(3)で定義され、
【0011】
【数3】
Rは、屈折率分布の基準点、すなわち、基準屈折率(大気、屈折率調整流体、又は物体を取り囲む基準ガラス板)の半径方向位置である。位置Δtからψの偏導関数を適用することによって、定式化は、数学でよく知られている逆アーベル変換の形になる。原理的には、逆アーベル変換は、式(1)に反映されているような理想的な階段屈折率状分布だけでなく、軸対称RIPのあらゆる種類の偏向角分布に適用できる。
【0012】
米国特許第4,227,806号には、光ファイバプリフォームのパラメータを非破壊的に決定する方法が記載されている。プリフォームは、コア-クラッド構造に横方向に入射するレーザビームによって走査され、出射ビームの偏向角が測定され、その後、屈折率分布が既知であるプリフォームの理論的又は経験的な偏向角分布と比較される。測定中、プリフォームは、偏向角が大きくなりすぎるのを防ぐために、屈折率調整流体を収容している槽内に配置される。
【0013】
米国特許第4,441,811号には、円筒状の透明な光学プリフォームの屈折率分布を決定するための方法及び装置が記載されている。この場合も、屈折率調整流体中に挿入されたプリフォームは、光軸に対して垂直に延びる、横方向に入射する光ビームによって走査される。光ビームは、プリフォームのガラスによって偏向され、位置設定可能な検出器上に光学デバイスによって画像化される。屈折率プロファイルは、偏向角分布から数値積分を用いて計算される。プリフォーム直径、コア直径、偏心率、及びCCDR値(クラッド対コア直径比)などの他のプリフォームパラメータも、再構成されたRIPから決定することができる。
【0014】
断層撮影は、任意の種類の透過波(光波など)の使用による切片又は切片化による画像化である。光ファイバプリフォームのRIPを決定するためにコンピュータ断層撮影(CT)を使用することは周知である。例えば、Y.Zhaoら、「Nondestructive Measurement for Arbitrary RIP Distribution of Optical Fiber Preforms」、Journal of Lightwave Technology、第22巻、第2号、478~86頁(2004年)、Y.Zhaoら、「Nondestructive Measurement of Refractive Index Profile for Holey Fiber Preforms」、Optics Express、第11巻、第20号、2474~79頁(2003年)、Y.Zhaoら、「Tomographic Reconstruction for Arbitrary Refractive Index Distribution of Optical Fiber Preforms」、Symposium on Optical Fiber Measurements,at 51~54(2004年)、及びA.Novozamsky、「Tomography Reconstruction of Geometry and Refractive Index Profile of Highly Asymmetric Optical Fiber Preforms」、Proc.SPIE、第7746巻、77461O-1~77461O-6頁(2010年)を参照されたい。
【0015】
逆アーベル変換を使用することによって横方向に測定された偏向角分布からRIPを再構成する方法は、米国特許第4,744,654号、同第5,078,488号、及び同第4,515,475号にも見出すことができる。以下の技術論文は、逆ラドン変換を使用する方法を記載している:Michael R.Hutsel及びThomas K.Gaylord、「Concurrent three-dimensional characterization of the refractive-index and residual-stress distributions in optical fibers」、Applied Optics、第51巻、第22号、5442~52頁(2012年)、及びS.Flemingら、「Nondestructive Measurement for Arbitrary RIP Distribution of Optical Fiber Preforms」、Journal of Lightwave Technology、第22巻、第2号、478~86頁(2004年)。
【0016】
P.Chuら、「Nondestructive Determination of Refractive Index Profile of an Optical Fiber:Fast Fourier Transform Method」、Applied Optics、第182巻、第7号、1117~22頁(1979年)(参照によりこの文書に組み込まれる)は、縞パターンを利用する別の方法を提示している。この方法は、高速フーリエ変換(FFT)を使用して逆アーベル変換を解き、経路長を屈折率プロファイルに変換する。FFT法の利点は、計算を迅速に処理できることである。
【0017】
しかしながら、逆アーベル変換又は逆ラドン変換のいずれかを使用した、横方向に測定された偏向角分布からのRIP又は屈折率プロファイルn(r)(対称の場合)又はn(x,y)(非対称の場合)の単純な再構成による、実際のRIPとの差は無視できるほどではない。この誤差の理由は、透明な物体と環境との間の境界上、又は半径方向屈折率ステップ間の境界上の屈折率不連続部において生じる既知の測定アーチファクトである。光学物体の境界付近の体積領域において(外側から内側に見た場合)低屈折率から高屈折率へ屈折率がジャンプする境界で行われる測定は、原理的に照明や特徴付けができない領域をもたらす。上向きの屈折率ジャンプの場合の測定方法によって引き起こされる測定不能領域の発生は、内側クラッド層よりもコアの屈折率が比較的高い光ファイバに典型的である。
【0018】
誤差源は、単純なケース、すなわち、均一な屈折率分布n
1を有するロッドを参照することによって
図2の略図に示され、ロッドは、屈折率数n
0を有する屈折率調整流体(屈折率適合液又は浸漬液とも呼ばれる)に挿入され、ここで、n
0は、n
1未満である。ロッドの走査中、入射点に接線方向に衝突するビームは、ロッドの中心に向かって屈折され、異なる伝搬方向を有する出射ビームとしてロッドから出射し、
図2に示されるようなビーム経路をもたらす。したがって、光ビームが接線方向に透過できない(すなわち、測定中にビームによって決して照射されない)エリア又は領域が物体内に存在する。このエリアは、
図2において斜線で示され、半径r
*及び角度β(ベータ)で示され、角度βは、90度-ψ/2である。結果として、領域r
*<r<r
1における偏向角を測定することは不可能であり、この測定誤差により、再構成屈折率値が実際の屈折率より低いことが明らかになる。
【0019】
例えば、階段屈折率プロファイルの再構成RIPの典型的な差及び誤差は、プロファイルの丸い及び小さすぎるステップ高である。Werner J.Glantschnigによる刊行物「Index profile reconstruction of fiber preforms form data containing a surface refraction component」Applied Optics、号29巻、第19号、2899~2907頁(1990年)(参照により本明細書に組み込まれる「Glantschnig刊行物」)は、測定不能領域によってもたらされる問題に対処する刊行物の1つである。Glantschnigは、不連続部の直前の偏向角分布の内側の3つの測定点に基づく補間によって、測定不可能な領域における実際に欠けている偏向角が推測され得ることを示唆している。
【0020】
3つの測定点に基づく補間は、必ずしも良好な結果をもたらすとは限らない。したがって、RIPを測定する方法のいくつかは、単純な均質ロッドのRIPの正確な測定を提供することができない。この欠点の1つの理由は、ロッドの境界又は縁部における屈折率不連続部が存在することである。Glantschnig刊行物は、屈折率不連続部が偏向関数データから正確に再構成されない理由を説明している。Glantschnig刊行物は、RIPを測定するための方法を提案しているが、物体の縁部において偏向角を精密に測定することを必要とし、これは、実行不能と言えるほど困難である。
【0021】
これらの問題を解決するために、コーニング社(Corning Incorporated)に発行された米国特許第8,013,985号(参照により本明細書に組み込まれる)は、この再構成方法の修正を提案している。ファイバプリフォームのような透明な円筒状物体のRIPを測定するために、ビーム偏向角関数が測定される。実際のRIPを表す推定RIPは、数値モデルによって測定偏向角分布に適合される。測定において、測定されるファイバプリフォームは、レーザと変換レンズとの間に配置される。プリフォームは、中心軸と、プリフォーム半径Rを定義する円筒面とを有する。高さxで円筒面に衝突する入射ビームは、プリフォーム内で偏向され、出射ビームとして別の角度で再び出射し、このビームは、光検出器によって検出され、コントローラによって処理される。偏向角は、出射ビームと入射ビームとの間の角度として定義され、レーザビームの高さxを変化させることによって変更され、偏向角分布が測定される。
【0022】
この目的のために、測定された偏向関数について対称相関を完了して、中心座標を定義する。測定された偏向関数は、中心座標を中心として2等分され、2等分された各々について屈折率半プロファイルが得られ、結果として各半分について推定屈折率プロファイルをもたらす。RIP計算に関連するパラメータは、プリフォームの半径rkと層の屈折率nkである。目標角度分布ψtは、測定された偏向関数に反復的に適合され、境界(屈折率不連続部)に近い測定点は、プリフォームの縁部内又は縁部上で省略される。数学関数のこの算術反復適合方法は、「フィッティング」と呼ぶことができる。
【0023】
米国特許第8,013,985号によれば、フィッティングは、上記の式(1)(ただし、式の第2行に示されるアークコサイン部分を考慮せずに)が、RIPの未知のパラメータ、すなわちプリフォームの半径Rの値(又は屈折率不連続部の半径の値)、並びに未知の屈折率値を式に挿入することによって行われ、未知のパラメータは、得られた目標角度分布ψtが測定偏向角分布ψmに最もよく一致するように変更される。したがって、目標角度分布は、未知のパラメータを用いて、測定偏向角分布に適合(フィッティング)される。
【0024】
このように適合されシミュレートされた目標角度分布に基づいて、再構成屈折率プロファイルが導出される。このプロファイルは、内側物体領域の半径よりも大きい再構成プリフォーム半径R*まで延びる。RIPが少なくとも1つの不連続部を有する円筒状物体の場合、本方法は、不連続部によってそれぞれ定義される様々な物体領域に適用される。
【0025】
この方法では、シミュレートされた目標角度分布ψtが、未知のパラメータをフィッティングさせることによって測定された偏向角分布ψmに適合され、屈折率プロファイルの更に外側に位置する不連続部の境界まで延び得る半径方向屈折率分布が、シミュレートされた目標角度分布から導出される。
【0026】
したがって、屈折率不連続部によって半径方向に分離されたいくつかの層を有する光学物体の完全なRIPの検出は、外側から内側へのそれぞれの不連続部によって定義された層の連続的な測定、計算、及び推定を必要とする。系統的誤差及び数値的誤差は、シミュレートされた目標角度分布のフィッティングをもたらし得る。更に、偏向角分布の比較、すなわちシミュレートされたものと測定されたものとの比較は、あまり例証的なものではなく、フィッティングが最適であるかどうか、及び任意選択でどのように最適であるか、又は事後補正又は更なる変更を必要とするかどうか、及び任意選択でどの値が事後補正又は更なる変更を必要とするかを決定するために高度な専門知識を必要とすることが分かっている。
【0027】
‘985特許と同様に、本出願の譲受人(Heraeus Quarzglas GmbH & Co.KG of Hanau,Germany)に発行され、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第10,508,973号は、軸対称プリフォームのためのフィッティング手順を開示している。‘973特許は、円筒状光学物体、特に光ファイバ用プリフォームの屈折率プロファイルを決定する方法を教示している。本方法は、(a)調整された偏向角分布を得るために、偏向角分布の極値決定を含む、測定された偏向角分布を調整するステップと、(b)調整された偏向角分布を調整屈折率プロファイルに変換するステップと、(c)調整された屈折率プロファイルを、仮想屈折率プロファイルの層半径及び層屈折率についての配向値の固定について評価するステップと、(d)配向値を有する仮想屈折率プロファイルに基づいてシミュレートされた偏向角分布を生成し、偏向角分布をシミュレートされた屈折率プロファイルに変換するステップと、(e)適合されたパラメータによって定義されるフィッティングされたシミュレートされた屈折率プロファイルを得るために、パラメータの反復適合によってシミュレートされた屈折率プロファイルを調整屈折率プロファイルにフィッティングするステップと、(f)屈折率プロファイルを、適合されたパラメータを有する仮想屈折率プロファイルとして得るステップと、を伴う。本方法は、RIPが実質的に又は完全に階段屈折率状である場合にRIPを決定することに関する最新技術を表す。
【0028】
最新の方法は、2つの誤差のうちの少なくとも1つが生じる。第1のタイプの誤差は、RIP測定アーチファクトである。すべての再構成されたプロファイル(断層再構成2次元又は2D RIPを含む)は、典型的なプロファイリング測定アーチファクト(過小評価された屈折率ステップ、歪んだプロファイル、丸みを帯びたエッジなど)を有するため、正確な評価は不可能である。第2のタイプの誤差は、非対称性による系統的誤差である。対称分布(通常、対称の場合に測定アーチファクトを処理することができる)を単にフィッティングさせることによってほぼ対称のプリフォームの非対称性を無視することは、大きな系統的誤差をもたらす。
【0029】
したがって、軸対称又はほぼ軸対称の屈折率分布を有しない円筒形透明物体のRIPを決定する方法が依然として必要とされている。RIPは、実質的又は完全に階段屈折率状であってもなくてもよい。また、測定アーチファクト誤差を最小限に抑える方法も必要とされている。もちろん、この方法は、妥当性、精度、信頼性及び再現性に関しても改善されなければならない。これに関連した必要性は、プリフォームの組み立てを改善し、プリフォーム顧客の要求を満たす方法、特にますます複雑になる設計のプリフォームが必要とされている。
【発明の概要】
【0030】
これら及び他の必要性を満たすために、及びその目的を考慮して、本開示は、特にRIPが実質的に対称でない場合に、プリフォームなどの物体の屈折率プロファイルを決定するための方法を提供する。本方法は、以下のステップを含む。(a)長手方向軸を有する光学物体を含む物体であって、長手方向軸を中心として、少なくとも1つの層が外向きに延びており、少なくとも1つの層が、断面において完全な回転対称性を欠いている、物体を準備するステップと、(b)第1の投影角から開始して物体を光ビームで走査し、測定データを通して物体を表す生データを作成するステップと、(c)任意選択で、物体を回転させ、すべての投影角が走査され、すべての測定データが作成されるまで、ステップ(b)を反復的に繰り返すステップと、(d)サイノグラムを形成するために測定データを処理し、任意選択のステップ(c)が完了した場合、ステップ(f)に進むステップと、(e)物体を回転させ、すべての投影角が走査されるまでステップ(b)及び(d)を反復的に繰り返すステップと、(f)2D RIPを計算するステップと、(g)2D RIP内で対象の線セクションを選択するステップと、(h)フィッティング手順を対象の線セクションに適用するステップと、(i)屈折率ステップ/勾配及び寸法を決定するステップと、を含む、方法。
【0031】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は両方とも、本開示の例示であり、限定ではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本開示は、添付の図面に関連して読まれるとき、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的な慣行に従って、図面の様々な特徴は縮尺通りではないことを強調しておく。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小されている。特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図を含む。図面に含まれるカラー図を有する本特許又は特許出願公開の写しは、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁によって提供される。図面には、以下の図が含まれる。
【
図1】
図1は、様々な幾何学的関係を概略的に示す、均一な屈折率分布を有する物体を通る放射経路を示す。
【
図2】
図2は、接線方向放射を検出することができない斜線の測定不能領域による屈折率プロファイリングにおける測定アーチファクトを示す、均一な屈折率分布を有する物体を通る放射経路を示す。
【
図3】
図3は、コンピュータ断層撮影を用いて屈折率プロファイルを決定するのに適用可能な変数を示す。
【
図4】
図4は、偏向関数測定システムの概略図である。
【
図5A】
図5Aは、非対称ガラスファイバプリフォームを評価するための改良された方法の第1段階中に、所与の投影角(例:θ=8°)での様々な方向の偏向関数の測定後、ρ軸に沿った位置(ミリメートル単位)に対してプロットされた偏向角分布ψ(ρ)(度単位)の一例のグラフである。
【
図5B】
図5Bは、横座標及び縦座標の両方に沿って縮小スケールを使用して、
図5Aのグラフの中央部分を強調するグラフである。
【
図6】
図6は、非対称ガラスファイバプリフォームを評価するための改良された方法の第1段階中にデータを計算するために使用することができるラドン変換を示す。
【
図7】
図7は、位相シフトを計算し、
図5に示された測定データをスタックすることによって結果として得られるサイノグラムである。
【
図8】
図8は、ラドン変換の逆変換を
図7のサイノグラムに適用した後のx-y平面における(すなわち、プリフォームの線セクションについての)相対屈折率の図を示す。
【
図9】
図9は、非対称ガラスファイバプリフォームを評価するための、改良された方法の特定の実施形態のステップを示す流れ図である。
【
図10】
図10は、
図9に示された改良された方法の1つのステップに適用されるフィッティング手順の特定の実施形態のステップを要約する流れ図である。
【
図11】
図11は、調整された屈折率プロファイルn’(r)と、ステッププロファイルを有するプリフォームのプロファイルの評価によってモデル化された仮想屈折率プロファイルn
*(r)と、を有する、半径r(ミリメートル単位)に対してプロットされた相対屈折率n(r)-1.4587のグラフを示す。
【
図12】
図12は、一般化されたフィッティング手順を示す、半径r(ミリメートル単位)に対してプロットされた相対屈折率n(r)-1.4587のグラフである。
【
図13】
図13は、本開示の方法の一実施形態を単一の楕円形コアを有するプリフォームに適用した例を示し、具体的には、本方法によって作成されたサイノグラムである。
【
図14】
図14は、本開示の方法の一実施形態を単一の楕円形コアを有するプリフォームに適用した例を示し、具体的には、、単一の楕円形コアを有するプリフォームの再構成2D RIPを示す、x-y平面における相対屈折率n(x,y)-1.446の図である。
【
図15】
図15は、本開示の方法の一実施形態を単一の楕円形コアを有するプリフォームに適用した例を示し、具体的には、
図14の図のコアを通って引かれた線セクションに沿って取られたデータに対する線セクションフィッティング手順を示すグラフである。
【
図16】
図16は、本開示の方法の一実施形態を単一の楕円形コアを有するプリフォームに適用した例を示し、具体的には、単一の楕円形コアを有するプリフォームについて、ミリメートル単位の位置rに対する相対屈折率n(x,y)-1.446のグラフであり、2つの異なる線セクション及び単一測定値対断層撮影測定値を比較している。
【
図17】
図17は、本開示の方法の一実施形態を、八角形のクラッドを有する単一コアを有するプリフォームに適用する例を示し、具体的には、本方法によって作成されたサイノグラムである。
【
図18】
図18は、本開示の方法の一実施形態を、八角形のクラッドを有する単一コアを有するプリフォームに適用する例を示し、具体的には、八角形のクラッドを有する単一コアを有するプリフォームの再構成された2D RIPを示す、x-y平面における相対屈折率n(x,y)-1.446の図である。
【
図19】
図19は、本開示の方法の一実施形態を、八角形のクラッドを有する単一コアを有するプリフォームに適用する例を示し、具体的には、
図18の図のコアを通って引かれた第1の線セクションに沿って取られたデータに対する線セクションフィッティング手順を示すグラフである。
【
図20】
図20は、本開示の方法の一実施形態を、八角形のクラッドを有する単一コアを有するプリフォームに適用する例を示し、具体的には、
図18の図のコアを通って引かれた第2の線セクションに沿って取られたデータに対する線セクションフィッティング手順を示すグラフである。
【
図21】
図21は、 本開示の方法の一実施形態を7つのコアを有するプリフォームに適用した例を示し、具体的には、本方法によって作成されたサイノグラムである。
【
図22】
図22は、本開示の方法の一実施形態を7つのコアを有するプリフォームに適用した例を示し、具体的には、7つのコアを有するプリフォームの再構成された2D RIPを示す、x-y平面における相対屈折率n(x,y)-1.4587の図である。
【
図23】
図23は、本開示の方法の一実施形態を7つのコアを有するプリフォームに適用した例を示し、具体的には、
図22の図の中心コアを通って引かれた第1の線セクションに沿って取られたデータに対する線セクションフィッティング手順を示すグラフである。
【
図24】
図24は、本開示の方法の一実施形態を7つのコアを有するプリフォームに適用した例を示し、具体的には、
図22の図の中心コアを通って引かれた第2の線セクションに沿って取られたデータに対する線セクションフィッティング手順を示すグラフである。
【
図25】
図25は、本開示の方法の一実施形態を6つのコアを有するプリフォームに適用する例を示し、具体的には、本方法によって作成されたサイノグラムである。
【
図26】
図26は、本開示の方法の一実施形態を6つのコアを有するプリフォームに適用する例を示し、具体的には、6つのコアを有するプリフォームの再構成された2D RIPを示す、x-y平面における相対屈折率n(x,y)-1.4587の図である。
【
図27】
図27は、本開示の方法の一実施形態を6つのコアを有するプリフォームに適用する例を示し、具体的には、
図26の図の第1のコアを通って引かれた線セクションに沿って取られたデータに対する線セクションフィッティング手順を示すグラフである。
【
図28】
図28は、本開示の方法の一実施形態を6つのコアを有するプリフォームに適用する例を示し、具体的には、
図26の図の別のコアを通って引かれた線セクションに沿って取られたデータに対する線セクションフィッティング手順を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書及び以下の特許請求の範囲において、いくつかの用語に言及し、これらの用語は、それらに帰する以下の意味を有すると定義されるものとする。「含む(include)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」などの用語は、包含するが限定されないこと、すなわち包括的であり排他的ではないことを意味する。本明細書で使用される「実質的に」という用語は、近似を示す記述用語であり、「かなりの程度」又は「指定されたものの全体ではなく大部分」を意味し、指定されたパラメータに対する厳密な数値境界を回避することを意図している。
【0034】
「約、ほぼ(about)」(又は「およそ(approximately)」)という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、並びに他の量及び特徴が正確ではなく、正確である必要もないが、公差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、及び当業者に公知の他の要因を反映して、所望に応じて近似であっても及び/又はより大きくても若しくはより小さくてもよいことを意味する。値が、ほぼ特定の数である又は特定の数にほぼ等しいと記載されている場合、その値は、その数の±10%以内である。例えば、約10である値は、9~11(9と11を含む)の値を指す。「約、ほぼ」という用語が、値又は範囲の終点を説明する際に使用される場合、本開示は、特定の値又は終点を含むと理解されるべきである。本明細書中の数値又は範囲の終点が「約、ほぼ」を記載しているか否かにかかわらず、数値又は範囲の終点は、2つの実施形態:「約、ほぼ」によって修飾されたもの及び「約、ほぼ」によって修飾されていないものを含むことが意図される。範囲のそれぞれの終点は、他の終点に関連して、及び他の終点とは独立しての両方で有意であることが更に理解されるであろう。
【0035】
「約、ほぼ」という用語は、特に明記しない限り、範囲内のすべての用語を更に指す。例えば、約1、2、又は3は、約1、約2、又は約3と等価であり、約1~3、約1~2、及び約2~3を更に含む。組成物、構成要素、成分、添加剤、及び同様の態様、並びにそれらの範囲について開示される特定の値及び好ましい値は、例示のみを目的とし、それらは、他の定義された値又は定義された範囲内の他の値を除外しない。本開示の組成物及び方法は、任意の値又は値の任意の組み合わせ、特定の値、より特定の値、及び記載された好ましい値を有するものを含む。
【0036】
本開示で使用される不定冠詞「a」又は「an」及びその対応する定冠詞「the」は、別段の指定がない限り、少なくとも1つ、又は1つ以上を意味する。本開示で使用される方向を示す用語(例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部)は、描かれた図及びそれらの図に与えられた座標軸に関してのみ用いられ、絶対的な向きを暗示することを意図していない。
【0037】
光ファイバプリフォームの屈折率プロファイル(RIP)を決定するためにコンピュータ断層撮影(CT)を使用することは周知である。CTを使用してRIPを決定するのに適用可能な変数は、
図3に提供される図によって定義される。n
0<n(x,y)となるような屈折率n
0を有する屈折率調整流体によって囲まれた屈折率分布n(x,y)を持つ物体が示されている。デカルト座標x及びyは、物理的物体(例えば、ガラス体)に属する。物体を走査するとき、ビームは、物体に接触するとすぐに屈折し、矢印で示された経路に沿って物体の中心に向かって方向付けられる。偏向角ψは、出射ビームと入射ビームとの間の角度として定義される。
【0038】
CTの間、物体は回転される。試料を保持し回転させる機構(典型的には回転ステージ)は、簡略化のため、
図4には示されていない。しかしながら、断層撮影は、試料を回転させる正確な方法を必要とする。手動での回転は可能であるが、実用的ではない。エンコーダを有する電動の回転ステージがより適している。
【0039】
投影角と呼ばれる角度θによる物体の回転により、デカルト標軸x’及びy’が得られる。走査手順は、走査位置ρに沿ってy’の方向に行われる。所与の固定された投影角では、そのような走査により、測定された偏向角ψ(ρ,θ=固定)が得られる。正確なRIPを決定するために投影角θの大きなセットについて偏向角分布ψ(ρ,θ)を測定することが必要である。したがって、偏向角分布ψ(ρ,θ)が測定され、RIPが偏向角分布から再構成される(ρは走査位置であり、θは測定された投影角である)。
【0040】
本方法は、ファイバプリフォームの形態の透明な円筒状物体を参照して以下に説明する。しかしながら、当業者であれば、説明した方法は、所与の波長の放射における屈折率を有する任意の円筒状物体に一般的に適用することができ、対応する偏向角分布は、ある波長の放射の横方向透過を介して測定することができ、測定データにフィッティングすることができる関数として表すことができる目標偏向角分布関数が存在することを理解するであろう。ここで図面を参照すると、同様の参照番号は、図面を構成する様々な図を通して同様の要素を指し、
図4は、測定偏向角分布関数を確立するために使用することができる基本的な偏向角分布測定システム100の例示的な実施形態を示す概略図である。偏向角は、式:ψ=arctan(カメラ上の投影/カメラまでの距離)によって計算される。
【0041】
システム100は、一対の軸外ミラー4の間に、一対の光軸15及び第3の光軸(図示せず)を有する。1つ以上のレーザ源(レーザダイオード1a、1b、及び1cなど)はそれぞれ、レーザビーム(又は「光ビーム」)を生成し、1つ以上のレーザビームを1つ以上のビームコンバイナファイバ2に提供し、ビームコンバイナファイバ2は、1つ以上のレーザビームをビーム調整器3に送達する。(光ファイバ通信において、シングルモード光ファイバは、シングルモードの光、すなわち横モードのみを搬送するように設計された光ファイバである。規格G.652は、シングルモード光ファイバの最も広く使用されている形態を定義している)。1つ以上のビームコンバイナファイバ2は、2つの入力及び1つの出力を有するY字形ファイバ、又はスプライス領域にクロストークを有するX字形ファイバのいずれかである。ビーム調整器3は、第1の光軸15に沿って位置合わせされており、レーザビームの特性を変更する。ビーム調整器3によって放出されたビームは、第1の光軸15に沿って進み、一対のミラー4及びアパーチャ(又は「ピンホール」)5を有する軸外放物面反射器に入る。第1のミラー4は、アパーチャ5を通過する平行ビームを生成する。第2のミラー4は、第2の光軸15に沿ってこれらのビームを集束する。
【0042】
軸外放物面反射器の第2のミラー4から反射された集束ビームは、光シャッタ6を通過し、測定セル9に入射する。シャッタ6への制御電圧が高いままである限り、シャッタ6は開いたままである。しかしながら、電圧が低くなるとすぐに、シャッタ6は閉じ、固有の「フェイルセーフ」動作、すなわちセキュリティを提供する。
【0043】
測定セル9は、平面であり、第2の光軸15に対して直角である対向する側面を有する。測定セル9内には、典型的には、より低い屈折率を有する少なくとも1つのクラッド層によって囲まれた、より高い屈折率を有するコアを有するファイバプリフォームの形態で、測定対象の均一な又はステップ型RIPを有する透明な円筒状物体11が配置されている。屈折率調整流体10が、測定セル9内の物体11を取り囲んでいる。例示的な一実施形態では、屈折率調整流体10は、物体11の屈折率に近いが同じではない屈折率を有する油である。しかしながら、簡単にするために、屈折率調整流体10の屈折率は、測定セル9と一致しており、その結果、入射点及び出射点における追加の偏向は、図示された実施形態では生じない。
【0044】
広く一般的に使用されているパラフィンRI屈折率整合油の代替として、グリセロール-水混合物も使用することができる。混合比は、1.333(水RI)~1.48(グリセロールRI)の範囲内の所望のRIレベルへのRIの比較的容易かつ正確な調節又は調整を可能にする。
【0045】
レーザビームは、測定セル9に入り、最初に物体11の第1の縁部で物体11に入射し、第1の屈折を経る。第1の屈折したレーザビームは、次に、物体11を通って進み、レーザビームが第2の屈折を経て物体11から出る、物体11の反対側の縁部から出る。ギリシャ文字Ψ(psi)によって識別される偏向角は、入射レーザビームに対する出射レーザビームの角度によって定義される。出射レーザビームは、次いで、フィルタ(例えば、赤外ロングパスフィルタ)12を通過し、光検出器ユニットによって検出される。フィルタ12は、環境光が測定に悪影響を及ぼすのを防止するのに役立つ。適切な光検出器ユニットは、光学アクティブセンサ14を有するライン走査カメラ13を含む。(ライン走査カメラの代替品を使用することもできる。他の適切なカメラの中には、2Dカメラ及び時間遅延積分又は「TDI」ライン走査カメラがある。TDIライン走査カメラは、幾分ハイブリッドであり、例えば、16,384×256ピクセルを有する2Dセンサであるが、そのアーキテクチャ及びセンサは、ライン走査カメラのように1次元に拡張される。)次いで、光検出器ユニットは、対応する検出器信号を、処理のためにデータ接続17を介してコントローラ16に送信する。
【0046】
測定セル9は、測定セル9を支持すると共に測定セル9を移動方向8(例えば、
図4に示すように上下)に移動させるように構成された線形ステージ7に取り付けられている。測定セル9の中心水平軸及び測定セル9内の物体11に対してレーザビームの高さの範囲にわたって偏向角の測定を実行することによって、コントローラ16によって受信及び処理される対応する検出器信号は、以下でより詳細に説明されるように、測定された偏向角を生成する。換言すれば、線形ステージ7の移動は、測定された偏向関数が物体11の半径の範囲を含むように、測定セル9及び物体11に対してレーザビームの高さを変化させることを可能にする。もちろん、カメラがレーザビームと位置合わせされたままであるように、カメラをレーザビームに対して移動させることも可能であり、その逆も可能である。
【0047】
図4に示す実施形態では、測定セル9内の物体11が移動(例えば、走査)されるが、別の実施形態では、物体11の異なる部分を通じてレーザビームを送るためにレーザビームの高さを変更することができるように、他の構成要素(レーザダイオード1a、1b、1c及び光検出器ユニットなど)すべてを物体11(静止した状態に保持されている)に対して同時に移動(例えば、走査)させることができる。
【0048】
コントローラ16は、例えば、プロセッサユニット(例えば、CPU)、メモリユニット、及びサポート回路を含むコンピュータであり、それらはすべて動作可能に相互接続されている。プロセッサは、産業環境で使用することができる任意の形態の汎用コンピュータプロセッサであってもよく、又はそのような汎用コンピュータプロセッサを含んでもよい。メモリユニットは、以下で詳細に説明される方法を実行するようにプロセッサに指示する命令(例えば、ソフトウェア)を記憶することができるコンピュータ可読媒体を含む。メモリユニットは、例えば、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フロッピー若しくはハードディスクドライブ、又は他の形態のデジタル記憶装置であってもよい。例示的な一実施形態では、メモリユニットに記憶された命令は、プロセッサによって実行されると、プロセッサを、以下で説明する方法のうちの1つ以上を実行するようにシステム100を制御する(すなわち指示する若しくは実行させる)特定用途向けプロセッサに変換するソフトウェアの形態である。サポート回路は、プロセッサに動作可能に(例えば、電気的に)結合されており、キャッシュ、クロック回路、入出力サブシステム、電源、制御回路などを含んでもよい。
【0049】
レーザダイオード1a,1b,1c、シャッタ6、線形ステージ7、及びライン走査カメラ13はそれぞれ、複数のデータ接続17に沿ってコントローラ16に信号及びデータを送信し、かつコントローラ16から信号及びデータを受信するように構成されている。データ接続17は、有線であっても、又は無線であってもよく、当業者に知られている任意の従来のデータ接続17が好適である。
【0050】
偏向関数を得るために、上述したものと同様の多くの他の偏向関数測定システムを使用することができる。使用されるシステムにかかわらず、円筒状光学物体11のRIPを決定するためのいくつかの方法が可能である。偏向角は、式:ψ=arctan(カメラへの投影/カメラまでの距離)によって計算される。
【0051】
上述したように、CTは周知の逆ラドン変換に基づく。この変換は、RIPフィールドに適用されるとき、式(4)のように書くことができる。
【0052】
【数4】
ここで、θは、投影角であり、ρは、走査位置であり(
図3に示され、上述されたように)、ηは、調査中の物体によって引き起こされる波面位相シフトである。(X線CTでは、η(ρ,θ)は、吸収分布であり、密度分布の再構成につながることに留意されたい。)常に、ラドン変換の結果は、極座標(r,φ)で与えられ、極座標(r,φ)は、x=r(cosφ)、y=r(sinφ)によってデカルト座標に関連する。結果として得られた分布をn(r,φ)からn(x,y)に数値的に変換することが一般的である。極座標及びデカルト座標のメッシュグリッドは一致しないので、再構成された2D RIPn(r,φ)は、最近傍補間、双一次補間、三次補間、及びスプライン補間を含むがこれらに限定されない補間を使用することによって、n(x,y)に変換することができる。
【0053】
干渉RIプロファイリングとは対照的に、位相シフト図η(ρ,θ)は、典型的には直接測定可能ではない。代わりに、偏向関数ψ(ρ,θ)は、アクセス可能であり、式(5)で与えられる近似によって位相シフト図η(ρ,θ)に変換することができる。
【0054】
【数5】
ここで、n
0は、ρ=0における基準屈折率である。
【0055】
断層撮影では通常、測定データは、典型的には、再構成の品質を改善するために前処理される。このような前処理は、正確に定義された偏向関数原点の重要性がよく知られているRIプロファイリング分野においても当てはまる。測定システム100のすべての機械部品及び構成要素がいかに精密に製造され組み立てられるかにかかわらず、原点を数値的に微調整することは常に有益である。半径対称プロファイルの評価のために、いわゆる準備された偏向関数を達成するための異なるアプローチが存在し、これは、微調整された原点を有する測定された偏向関数ψprepared(y)=ψmeasured(y-yshift)-ψOffsetである。2つのパラメータψOffset及びyshiftは非常に小さいが、典型的には、任意の特定の測定システム100では0ではない。半径対称RIPについてこれら2つのパラメータを定義するためのいくつかの手法が、米国特許第10,508,973号に述べられている。
【0056】
非対称RIPでは、固定された投影角θに対する偏向関数は複雑であり得る。そのような複雑さは、準備された偏向関数ψprepared/(ρ,θ)=ψmeasured/(ρ-ρshift)-ψOffsetを達成する可能性を低下させる。しかしながら、一般に断層撮影においては、再構成された画像の品質を改善するための多くの技術が存在する。再構成された画像品質を改善するための研究及びアルゴリズムの大部分は、X線及びNMR-CTに焦点を当てているが、方法のいくつかは、断層撮影RIPの分野において適用可能である。簡単にするために、再構成された画像の品質を改善するためのほんのいくつかの例が以下の開示において与えられ、当業者は、追加の又は代替の方法を選んで選択することができる。
【0057】
測定された各偏向角分布ψ(ρ,θ)に対してρshiftを適切に定義することは、断層撮影における周知の半径ランアウト補正として理解することができる。半径ランアウトは、投影角θを変化させるZ軸に沿った単なる回転の代わりに、軌道移動が生じるときに起きる。数学的には、これは各投影角θに対してシフトを加える。半径ランアウトの影響を受けた断層再構成画像は、典型的には、不鮮明なエッジ、不明瞭な特徴又は遷移などが生じる。結果として、半径ランアウト補正は、再構成画像のエントロピーを最小化することによって達成することができる。この場合、各単一投影のρshiftを変化させ、再構成を計算する必要がある。この反復プロセスは、多くの時間のかかる再構成の計算を必要とするので、あまり効率的ではない。好ましい別のアプローチを以下に説明する。
【0058】
ほとんどの場合、測定された試料内の1つ以上の特徴が、半径ランアウト補正のために使用され得る。当業者は、以下の基準によって適切な特徴を特定することができる。特徴は、鋭いRIステップ(数マイクロメートルにわたって少なくとも10
-3のRI差が好ましい)を有するべきであり、その結果、任意のエッジ検出アルゴリズムが良好に機能する。また、特徴は、再構成された2D RIP内の対象の領域を定義するか、又は取り囲むことも好ましい。この基準は、特徴のエッジが外側のRI変動の偏向によって歪められないことを保証する。実際には、各投影角θの測定値は、個々のρ
shiftだけシフトされ、その結果、特徴は、内部がどのようにカオス的に見えるかに関係なく、原点を中心として同心円状に位置合わせされる。図面に含まれるサイノグラムに示されるように、これは、特徴対が位置合わせされるように各列が垂直にシフトされることを意味する。
図17は、例えば、円形の特徴が、
【数6】
でサイノグラム内の直線の水平線として現れることを示す。非円形の特徴は、サイノグラム内の正弦波の鏡像対として現れ、鏡像軸は、ρ=0mmである。
【0059】
ρ
shiftによる測定された偏向関数ψ
measuredの適切な位置合わせに加えて、再構成された2D RIPの品質は、各測定された投影に対してψ
Offsetを適切に定義することによっても改善され得る。
図4に示されるような測定システム100は、2つのビーム垂直面及び一定の屈折率を有する周囲の基準材料を使用するので、両側(ρ=0及びρ=ρ
ref)の基準を通る結果として得られる位相シフトηは等しくなければならない。この制約は、各測定された投影についてψ
Offsetを固定するために使用することができる。特に、偏向関数オフセットψ
Offsetは、両側の基準材料にわたる積分(式(5)における積分上限ρを基準位置ρ
refに設定すること)により、η(ρ=0)=η(ρ=ρ
ref)の等しい位相シフトが得られるように、変化される。ρ
shift及びψ
Offsetを適切に定義することにより、準備された偏向関数ψ
prepared(ρ,θ)、したがって、準備された位相シフト図η
prepared(ρ,θ)の計算が可能になる。
【0060】
再構成の品質を改善するためのRIP特有の数学的ツールに加えて、より一般的なCTツールも同様に存在する。ツールの数は、サイノグラム補間に関する以下の所与の例に限定されない。逆ラドン変換は、走査位置ρ及び投影角θにわたる積分を有する。理想的には、ステップサイズdρ及びdθの両方は非常に小さい。しかしながら、dρ及びdθによって定義されるより細かいメッシュサイズは、必要とされる全体的な測定時間を増加させるので、トレードオフが存在する。
【0061】
より小さいステップサイズdρ、dθ、又はdρ及びdθ両方を使用することによってメッシュサイズを減少させることに加えて、サイノグラム内で補間することが可能である。追加の投影角θの補間は、再構成品質の改善に関して特に優れた結果をもたらす。その理由は、サイノグラムが典型的には、小さなスケールではdθの方向にあまり変化しないからである。対照的に、不連続性は典型的にはdρの方向に存在する。測定された投影間の1つ又はいくつかの追加の補間された投影角θから開始して、準備されたサイノグラム内の投影の数は、測定された投影の数の10倍、20倍、又は更にそれ以上に達する可能性がある。多くの異なる方法を2次元補間に適用することができ、最近傍補間、双一次補間、三次補間、及びスプライン補間を含むが、これらに限定されない。
【0062】
周波数領域フィルタは、準備された位相シフト図η(ρ,θ)に逆ラドン変換を適用するために使用される必要がある。異なるタイプのフィルタが画像再構成に適している。そのようなフィルタの中には、Ram-Lakフィルタ、Shepp-Loganフィルタ、Cosineフィルタ、Hamming窓フィルタ、及びHann窓フィルタがある。Ram-Lakフィルタは、Rampフィルタとしても知られている。このフィルタはノイズに敏感であるので、結果を改善するために適切な窓で乗算される。Shepp-Loganフィルタは、Ram-Lakフィルタにsinc又はサンプリング関数を乗算することによって得られる。Cosineフィルタは、Ram-Lakフィルタにコサイン関数を乗算することによって得られる。同様に、Hammingフィルタ及びHannフィルタは、Ram-LakフィルタにHamming窓及びHann窓をそれぞれ乗算することによって得られる。Ram-Lakフィルタ及びShepp-Loganフィルタは、高域通過フィルタであり、エッジ情報をそのままに保つ。Cosineフィルタ、Hammingフィルタ及びHannフィルタは、帯域通過フィルタである。それらは、画像を平滑化し、画像から余分なエッジを除去するために使用される。
【0063】
現代のCTでは、再構成の品質を改善するための多くの方法が存在しており、当業者であればここでも適用することができる。しかしながら、そのような改善は、常に、調査中の特定の物体に依存し、特定の方法は、特定の物体にとって有益である場合、単に追加の計算時間をもたらす場合、又は結果を悪化させる場合もある。物体内の大きな屈折率ステップに起因する大きな偏向の場合、直線逆投影の代わりに逆伝搬を適用することが有益であり得る。しかしながら、この反復手順は、多くのリソースを必要とし、結果としてより長い計算時間をもたらす。
【0064】
光ファイバプリフォームのRIPの測定は、光ファイバ導波路の品質の検査にとって、また、ファイバを線引きする前のプリフォームの追加処理(例えば、オーバーコーティング又はエッチング)の仕様にとっても重要である。プリフォームの場合、非破壊技術が特に有用である。この文献に開示されている方法は、プリフォームを通して走査される横方向に向けられた光ビームの偏向の測定に基づいている。本方法は更に、多くの角度投影における測定された偏向関数のセットの数値処理に基づく。上記に開示された方法は、プリフォームが円形であるという仮定に更に基づいてRIPを計算する。しかしながら、非常に非対称な断面を有するプリフォームのためのRIPの断層撮影再構成のための方法が望まれる。
【0065】
非対称ファイバプリフォームのRI特徴に対処するための試みがなされてきた。例えば、K.Togaら、「Microscopic Computer Tomography Measurement of Nonaxisymmetrically Distributed Optical Fiber Refractive Index」、Journal of Lightwave Technology、第6巻、第1号、73~79頁(1988年)、及びB.Bachimら、「Microinterferometric Optical Phase Tomography for Measuring Small,Asymmetric Refractive-Index Differences in the Profiles of Optical Fibers and Fiber Devices」、Applied Optics、第44巻、第3号、316~27頁(2005年)を参照されたい。これらの2つの参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
以下の開示は、対称でないか又は少なくとも実質的に対称でない物体の正確なRIPを提供する改良された方法のステップを説明する。このようなプリフォームは、意図しない非対称性を有するプリフォームであってもよい。更に、この方法は、マルチコアプリフォーム、Pandaプリフォーム(偏光を誘起するためにコアの両側に円形で対称な応力ロッドを有する、一般的なスタイルの偏光維持ファイバを形成するために使用される)、又は非円形界面を有するファイバレーザ用のプリフォームに使用することができる。
【0067】
非対称ガラスファイバプリフォームを評価するための改良された方法は、2つの主な段階を有する。第1の段階は、断層撮影屈折率の決定を伴う。第2段階は、測定アーチファクトの補正を伴う。
【0068】
本方法の第1段階では、偏向関数が異なる向きに対して測定される(単一の走査は非対称プリフォームについて無益な情報を提供する)。行われる測定の回数は、測定を行うために必要とされる時間(より少ない測定はより迅速である)に対するデータの精度(より高い分解能を与えるためにより多くの測定が所望される)のバランスをとらなければならない。例えば、システム100は、1つの光源を使用して2°ごとにプリフォームを走査するのに約18分、又は3つの光源を使用して0.5°ごとにプリフォームを走査するのに約3.6時間かかる可能性がある(0.5°刻みの走査は、プリフォームの周囲360°全体に対して720回の測定が行われることを意味する)。測定により、偏向角分布ψ(ρ,θ)が得られる。
図5Aは、所与の投影角(θ=8°)についてρ軸に沿った位置(ミリメートル単位)に対してプロットされた、単純化した場合の例示的な偏向角分布ψ(ρ,θ)(度単位)のグラフである。
図5Bは、横座標及び縦座標の両方に沿って縮小スケールを使用して
図5Aのグラフの中央部分を強調したグラフである。
【0069】
測定値は、一旦測定されると断層撮影評価にかけられる。そのような評価は、位相シフトを計算するステップと、サイノグラムを形成するためにスタックするステップと、を含む。サイノグラムは、走査中に取得されたデータの完全なセットを表す便利な方法を提供し、データ取得中の系統的誤差をチェックするため、又は前処理ステップ(例えば、半径ランアウト補正)が正しく機能することを検証するために有用である。
【0070】
図6に示すように、ラドン変換は、x-y平面上で定義された関数fを、平面内の線の2次元(θ,s)空間上で定義された関数Rf(つまり、ラドン変換)に変換する積分変換であり、特定の線におけるその値は、その線にわたる関数の線積分に等しい。パラメータρは、直線A-A’の一部分の長さであり、sは、原点からの線の距離であり、θは、線に対する法線又は垂線がx軸となす角度である。この変換は、1917年にヨハン・ラドンによって導入され、逆変換の式も提供した。ラドンは更に、積分が平面について行われる(線についての積分はX線変換として知られている)、3次元における変換のための式を含んでいた。これは、後に、より高次元のユークリッド空間に一般化され、積分幾何の文脈においてより広く一般化された。逆ラドン変換は、物体の断面走査に関連付けられた投影データから画像を作成する断層撮影に広く適用可能である。
【0071】
関数fが未知数を表す場合、逆ラドン変換は、断層撮影走査の出力として得られる投影データを表す。したがって、ラドン変換の逆は、投影データから元の量を再構成するために使用することができ、したがって、反復再構成としても知られる断層撮影再構成のための数学的基礎を形成する。中心から外れた点源の逆ラドン変換は正弦波であるため、逆ラドン変換データの描写はサイノグラムと呼ばれることが多い。その結果、多数の走査の逆ラドン変換は、サイノグラムと呼ばれる異なる振幅及び位相を有する多数の正弦波として図形的に現れる。
【0072】
図7は、位相シフトを計算し、
図5Aに示された測定データをスタックすることによって結果として得られるサイノグラムである。位相シフトは、任意の単位(略してa.u.)で表される。任意の単位は、所定の基準測定値に対するある量の量の比を示すための測定値の相対単位である。「所定の」とは、事前に決定されることを意味し、したがって、所定の特性は、何らかの事象に先立って決定されなければならない、すなわち、選択又は少なくとも知られなければならない。
図8は、ラドン変換の逆変換を適用した後のx-y平面における(すなわち、プリフォームの断面に対する)相対屈折率の図を示す。屈折率は、周囲の基準ガラス板の屈折率(n
0=1.4587)に基づいた相対値で示されている。
【0073】
したがって、屈折率分布は、既知の技術(逆ラドン変換が好ましい)を用いて決定される。これらのステップは、非対称ガラスファイバプリフォームを評価するための改良された方法の第1の「断層撮影」段階を完了する。残念ながら、その結果は、過小評価された屈折率ステップ、歪んだプロファイル、丸みを帯びたエッジなどの典型的な測定アーチファクトを示す。
【0074】
測定アーチファクトは、本方法の第2段階において補正される。アーチファクトの補正は、上述の‘973号の方法のような方法を、断層撮影データから得られた2D RIPの選択された線セクション(すなわち、「開始RIP」)に適用することによって達成される。「モデル化されたRIP」は、(変更されることになる)いくつかのパラメータに基づいて対称的なプリフォームを仮定した後に作成される。「歪んだRIP」は、(i)モデル化されたRIPの偏向角分布をシミュレートし、(ii)シミュレートされた分布から歪んだRIPを計算することによって、モデル化されたRIPから計算される。パラメータは、歪んだRIPが開始RIPに近づくまで、モデル化されたRIPに対して変更される。このアプローチは近似である。補正の計算は、開始RIPが回転対称性を有するプリフォームで測定されたかのように行われるが、そうではない。重要な基礎となる仮定は、実際の試料に対する測定アーチファクトが回転対称プリフォームに対して同様であるということである。
【0075】
改善された評価方法の出発点は、断層撮影測定及び再構成(改善された画像化のために今日利用可能なすべてのCT技術を含む)に基づく2D-RIPである。対象の領域(コア、サイドピット、エッジなど)の1つ以上の線セクションが選択される。選択された線セクションの各々に従って、抽象的で架空であるが対称的なプリフォームが、選択された線セクションに「フィッティング」される。簡略化された説明のために、抽象的で架空の対称プロファイルが直接フィッティングされ得ることが仮定される。しかしながら、このようなRIP(典型的な測定アーチファクトを含む)に対して分析的表現が存在しないため、プロファイルを直接フィッティングさせることはできない。したがって、フィッティング手順は、反復ごとに以下のステップを含む:(i)(変更されることになる)いくつかのパラメータに基づいて対称プリフォームを仮定するステップと、(ii)偏向角分布をシミュレーションするステップと、(iii)対称RIPを再構成するステップと、(iv)選択された断面の偏差を計算するステップと、を含む。この測定及び評価手順によって、断層撮影2D RIP再構成は、最初にすべての非対称性を処理し(系統的誤差が生じないように)、線セクションのフィッティング手順が残りを行う、特に、屈折率プロファイリングにおける典型的な測定アーチファクトに対処する。
【0076】
図9は、対称断面を有しない、又は少なくとも実質的に対称断面を有しない物体の正確な屈折率プロファイルを提供する改良された方法500の特定の実施形態のステップを示す流れ図である。方法500は、円筒長手方向軸を有する円筒状光学物体11の半径方向RIPを決定し、円筒長手方向軸を中心として、少なくとも1つの層が軸非対称に延びている。方法500のステップ501において、偏向関数は、投影角(シータ)0から開始して測定される。ステップ502において、物体11が走査される。ステップ502の完了後、方法500のステップ504に直接進むことが可能である。
【0077】
任意選択的に、必須ではないが、原画像を走査から作成することができる。任意選択のステップ503では、様々な技術のうちの1つ以上を使用して、原画像の品質を改善することができる。例えば、走査カメラは、オペレータが画像取得のために使用されるセンサアレイの部分を指定することを可能にする「画像ROI」機能を有する。ROIは、「対象の領域(region of interest)」の頭字語である。画像ROIが指定されている場合、カメラはその領域内からの画素データのみを送信する。ほとんどのカメラにおいて、この仕様は、カメラの最大フレームレートを著しく増加させる。ROIを明るくすることができる。別の技術を適用して、異なる露出のいくつかの画像を収集することができる。
【0078】
原画像の品質を改善する技術の別の例として、高ダイナミックレンジ(又はHDR)を有する走査カメラが使用され得る。要するに、HDRは、「より良い」ピクセルを生成するのに役立つ。HDRによって輝度レベルの範囲が拡大されており、それにより、白と黒との間の強化された区別が可能である。色の範囲も拡大されているため、色もより詳細にすることができる。
【0079】
原画像の品質を改善する技術の更に別の例として、フィルタリングアルゴリズムを使用してOVD回折を除去することができる。外付け法(Outside vapor deposition、OVD)は、ガラスを層状に堆積させて多孔質堆積物(ガラススート)を生成するプロセスである。多孔質ガラス堆積物は、例えば、塩素ガスを流すこと(脱水素化)によって洗浄して、OHパーセンテージを低減することができる。同時に、多孔質堆積物は、ガラスプリフォームになる(ガラス化)。ガラス化のような更なる処理ステップにかかわらず、プロセスに関連するマイクロ層構造体が残る可能性があり、マイクロスケールでのRI変動にも影響を及ぼす可能性がある。これらの非常に頻繁なRI変動は、レーザ及び更に非コヒーレント光ビームで走査されるときに回折をもたらす。
【0080】
より高い回折次数は、0次ビームをより高い次数によって区別することができない非常に厳しいケースまで、偏向角の決定の精度を低下させる。OVD製造プロセスによって引き起こされる高周波数RIマイクロ層構造は、典型的には、非周期的であり、かつ湾曲しているので、回折パターンは、より高い回折次数が0次ビームからの回折次数よりも明るくなり得る点まで、非常に不規則であり得る。0次ビームの評価のみが有用な偏向角分布及び妥当なRIP再構成をもたらすことは当業者には周知である。OVD回折の厳しさのレベル(すなわち、より高次の回折次数内の光の強度)に応じて、OVDフィルタアルゴリズムを適用することによる追加の前処理が必要とされる場合がある。
【0081】
物体11を(第1の投影角から開始して)光ビームで走査し、測定データを通して物体を表す生データを作成するステップを含むステップ502の後、方法500は、2つの代替経路のうちの1つに沿って進むことができる。第1の代替経路は、物体11をπ/180などの小さい角度(シータ)だけ回転させ、全範囲(0~2π)内のすべての投影角が走査され、すべての測定データが取得されるまでステップ502を反復的に繰り返すことを含む。次に、本方法は、位相シフトサイノグラムを作成するために測定データを処理してスタックし、ステップ508に進む。
【0082】
ステップ502の後の第2の代替経路が
図9に示されている。方法500のステップ504において、偏向関数及び位相シフト図が(上述のように)計算される。また、偏向関数を計算する中間ステップなしで、位相シフト図を直接計算することも可能である(すなわち、中間ステップは任意選択である)。位相シフト図は、ステップ505においてサイノグラムを形成するために、上述したようにエクスポートされ、スタックされる。次に、方法500は、ステップ506において、全範囲(0から2π)内のすべての投影が測定されたかどうかを尋ねる。全範囲がまだ測定されていない場合、方法500は、ステップ507を実施する。ステップ507において、物体11は、π/180のような小さな角度(シータ)だけ回転され、方法500は、ステップ502に戻り、物体11を走査する。ステップ502、503(任意選択)、504、505、506、及び507が、全範囲(0~2π)内のすべての投影が測定されるまで反復的に繰り返されて、方法500は、ステップ508に進むことができる。
【0083】
任意選択のステップ508において、サイノグラムの品質は、様々な技術のうちの1つ以上を使用して改善され得る。一例として、半径ランアウトを補正することができる。別の例として、サイノグラムを細かいメッシュに補間することができる。
【0084】
ステップ509において、2D RIPは、逆ラドン変換を適用することによってサイノグラムから計算される。この計算については上述した。ステップ509は、方法500の第1段階を完了する。
【0085】
ステップ510は、方法500の第2の段階を開始し、何らかの有意なRIP測定アーチファクトが2D RIPに存在するかどうかを尋ねる。測定アーチファクトは、屈折率ステップが低い値から高い値へ(外側から内側への方向に)遷移するときに発生する。この遷移は、各選択された線セクションについて決定することが比較的容易である。「有意」という語は、例えば、RIステップの鋭さを指すことができる(すなわち、ステップが鋭くなればなるほど、アーチファクトがより有意になる)。ステップが勾配であり、放物線形状のRI)を有するゲルマニウムドープコアの場合のように急峻でない場合、アーチファクトは存在しないか、又は無視することができる。
【0086】
RIP測定アーチファクトが有意でない場合、方法500は、ステップ520を実施する。ステップ520において、方法500がステップ580で終了する前に、特定の幾何学的形状及び屈折率ステップが決定される。有意なRIP測定アーチファクトが2D RIPに存在する場合、方法500は、ステップ530に進む。ステップ530において、対象の線セクション(対象の領域又はROIとも呼ばれる)が2D RIP内で選択される。次に、ステップ540において、選択された線セクションにフィッティング手順が適用される。フィッティング手順についての更なる詳細は、以下の
図10に関連して提供される。
【0087】
ステップ540において適用されたフィッティング手順が1つ以上の停止基準を満たすと、方法500は、ステップ560に進む。停止基準は、フィッティング手順の結果を、評価されている物体11の選択された線セクションについての所定の精度レベルと比較することによって決定することができる。所定の精度レベルは、特定の用途に依存し得る。典型的な所定の精度は約90%であり、更なる所定の精度は約92%であり、好ましい所定の精度は約95%であり、より好ましい所定の精度は約97%であり、最も好ましい所定の精度は約99%以上である。
【0088】
ステップ560において、RIステップ、幾何学的形状、勾配、及び寸法などのフィッティングパラメータがエクスポートされる。次に、方法500は、ステップ570において、プリフォーム内のすべての対象の領域が特徴付けられたかどうかを尋ねる。すべての対象の領域より少ない領域が特徴付けられた場合、方法500は、ステップ530に戻り、2D RIP内で新しい対象の線セクションが選択される。ステップ530、540、及び560は、すべての対象の領域が特徴付けられるまで反復的に繰り返され、方法500は、ステップ580に進んで完了することができる。
【0089】
図10は、改善された方法500のステップ540において適用されるフィッティング手順の特定の実施形態のステップを要約する流れ図である。ステップ530において2D RIP内で選択された対象の線セクション(又はROI)は、ステップ541におけるフィッティング手順の開始として使用される。次いで、ステップ542において、フィッティング手順のための開始パラメータが線セクションから抽出され、ステップ543において、第1のフィッティング領域が定義される。次に、方法500は、ステップ544において、実際の層が階段状であるかどうかを尋ねる。ステップ544で提示された質問に対する回答が否定である場合、方法500は、ステップ545で、別の内側層が存在するかどうかを尋ねる。ステップ545において提示された質問に対する回答が肯定である場合、ステップ546において、フィット領域は次の内側層に移動され、方法500は、ステップ544に戻る。したがって、ステップ544、545、及び546を含むループが、ステップ544で提示された質問が肯定的に回答されるか、又はステップ545で提示された質問が否定的に回答されるまで作られる。
【0090】
ステップ545において提示された質問に対する回答が否定である場合、方法500は、ステップ547において、線セクションが階段状であるかどうかを尋ねる。ステップ547において提示された質問に対する回答が肯定である場合、ステップ548において、測定アーチファクト補償されたパラメータ及び線セクションが達成されており、フィッティング手順540は終了する。ステップ547で提示された質問に対する回答が否定である場合、ステップ549で測定アーチファクト補償されたRIPが決定され、ステップ550で測定アーチファクト補償された線セクションが達成される。
【0091】
ステップ544において提示された質問に対する回答が肯定である場合、ステップ551において、等価な軸対称RIPとして測定アーチファクトを模倣するように意図された軸対称RIPの解析偏向曲線が生成される。ステップ552において、偏向は、偏向RIPに変換される。次に、ステップ553において、初期線セクションと比較して偏向RIPの精度が計算される。精度は、統計モデルの予測精度を定量化するR二乗統計量によって測定することができる。統計は、予測によって説明される結果変数における分散の割合を示す。これは、決定係数R2、r2、及びr二乗としても知られている。R2は、典型的には、0から1(又は100%)の範囲の値を有する。1の値は、予測が観測値と同一であることを示す。1より大きいR2の値を有することは不可能である。0の値は、観測値と予測値との間に線形関係が存在しないことを示し、この文脈における「線形」は、観測値と予測値との間に非線形関係が存在する可能性が依然としてあることを意味する。最後に、0.5の値は、結果変数における分散の半分がモデルによって説明されることを意味する。時には、R2はパーセンテージ(例えば、50%)として表される。
【0092】
次に、方法500は、ステップ554において、特定の停止基準が満たされた(例えば、特定のR二乗値がステップ553において計算された)かどうかを尋ねる。フィッティング手順の反復ごとに、初期パラメータ(nk及びrk)の変動は次第に小さくなる。変動が、ある閾値を下回るほど十分に小さくなると、フィッティング反復の継続は不要である。実際には、精度を制限する他の固有誤差があるので、例えば10-5より小さいnkの変動を行うことは意味がない。同じ見解が層半径rkにも当てはまる。
【0093】
ステップ554で提示された質問に対する回答が否定である場合、方法500は、ステップ555に進み、ここで、方法500がステップ551に戻る前に、実際のフィッティングパラメータnm及びrmが変更される。したがって、ステップ551、552、553、554、及び555を含むループが、ステップ554で提示された質問が肯定的に回答されるまで作られる。ステップ554で提示された質問に対する回答が肯定である場合、方法は、ステップ545に戻る。
【0094】
図11の図は、単純なステッププロファイルを有するプリフォームについて、調整された屈折率プロファイルn’(r)と、その評価によってモデル化された仮想屈折率プロファイルn
*(r)とを示す。屈折率は、屈折率調整流体の屈折率(n
0=1.4587)に基づいた相対値で示されている。図では、相対屈折率n(r)-1.4587が、半径r(ミリメートル単位)に対してプロットされている。
【0095】
仮想屈折率プロファイルn*(r)は、実際に予想されるプリフォームの屈折率プロファイルを既に示しているか、又は屈折率プロファイルに近い。仮想屈折率プロファイルは、調整屈折率プロファイルn’(r)と、プロファイルから導出された配向値とに基づいており、配向値は、測定不能領域からの屈折率及び半径の推定値を含む。
【0096】
式(1)を使用して、シミュレートされた偏向角分布Ψ”(y)が、次の方法ステップにおいて仮想屈折率プロファイルn*(r)から生成される。したがって、それによって得られたシミュレートされた偏向角分布ψ*(y)は、プリフォームの屈折率プロファイルの仮定(すなわち、仮想屈折率プロファイルn*(r))に基づいており、これは、次いで、元の測定値の補正及び評価の後に、調整された屈折率プロファイルn’(r)から導出される。
【0097】
図11にこの指定でプロットされた、シミュレートされた屈折率プロファイルn”(r)は、シミュレートされた偏向角分布ψ”(y)を式(2)の数値積分によって変換することにより再度得られる。プロファイルは、クラッド領域52とコア領域51との間に丸みを帯びた領域53を有する。(上述したように、このようなコアロッドは、プリフォームにおいて、フッ素ドープ又はゲルマニウムドープ石英ガラスの内側クラッド層及び非ドープ石英ガラスの外側クラッド層によって囲まれていることが多い)。この丸みを帯びた領域53を除いて、シミュレート屈折率n”(r)は、調整された屈折率プロファイルn’(r)とほぼ一致する。仮定された屈折率分布n
*(r)が大きく異なることを考慮すると、このことは顕著である。この類似性は、仮想屈折率プロファイルn
*(r)の基礎となる仮定がプリフォームの実際の屈折率プロファイルn(r)に既に非常に近いことを示唆している。すなわち、
図11の仮想屈折率プロファイルn
*(r)は、実際の屈折率プロファイルn(r)を正確に又は少なくとも十分に正確に反映している。
【0098】
実際には、シミュレートされた屈折率プロファイルn”(r)と調整された屈折率プロファイルn’(r)との間の正確な一致を達成することはできない。しかしながら、シミュレートされた屈折率プロファイルn”(r)を調整された屈折率プロファイルn’(r)に反復的にフィッティングさせることによって、適切かつ任意の正確な適合を達成することが可能である。代替的な一般化されたフィッティング手順は、
図12を参照して説明することができる。
【0099】
代替的なフィッティング手順は、完全に階段状ではないが、(外側から内側への方向に)低から高への急峻なRIステップに起因する現在の測定アーチファクトを有するRIPのより正確な評価を可能にする。
図12では、特定の相対屈折率n(r)-1.4587が半径r(ミリメートル単位)に対してプロットされている。測定データ301は、「X」で示されている。RIPの典型的な測定アーチファクトはr=±22mmに現れ、その結果、再構成された測定値は、その領域内の実際のRIPとは異なる。フィッティング手順の目標は、RIステップ及びその関連するアーチファクト誤差を決定することであり、これは、後で測定データ301を補正するために使用することができる。この目的のために、先に説明したフィッティング手順と同様に、シミュレーションヘルパ302及び関連するシミュレーションフィット又はフィッティング曲線303が与えられる。シミュレーションヘルパ302は、r=±22mmにおけるRIステップを推定し、カバーすることを目標として生成された、仮定されたRIPである。シミュレーションヘルパ302の仮定されたRIPは、式(1)を使用することによって偏向関数の生成を可能にする。式(2)を用いてこの偏向関数を変換することにより、フィッティング曲線303が得られる。
【0100】
固定範囲(例えば、21mm<|r|)について、フィッティング曲線303がRIステップの周りで測定データ301に一致するように、シミュレーションヘルパ302のパラメータが変更される。領域は、任意の内側RI勾配がフィットに影響を及ぼさないように十分に小さくなければならないが、この丸みを帯びた曲線形状が十分ロバストにフィッティングされ得るように十分に広くなければならない。視覚的フィードバックに応じて、当業者は、フィッティング手順を改善するために選択された領域を調整することができる。
【0101】
シミュレーションヘルパ302とフィッティング曲線303との間の差を測定データ301に加えることは、フィット結果304をもたらす。結果は、測定されたRIPよりも正確である。より複雑なプリフォームの場合、このフィッティング手順は、発生するRIステップごとに必要に応じて繰り返すことができる。この場合、シミュレーションヘルパ302のRIP、フィッティング曲線303、及びフィット結果304は、異なる領域のそれぞれに応じて一緒につなぎ合わされる。
【0102】
特徴付けられたプリフォーム自体がそのような記載されたRIステップを有しないが、外側表面付近のドープされていない溶融シリカのRIを有する特定の場合であっても、この方法はまた、以下の理由で非常に有用である。装置100のようなセットアップは、通常、ドープされていない溶融シリカ測定セル9を有するが、これは、この材料が均質に入手可能であり、絶対RIが、その分散、温度依存性、及び他の特性を含めてよく知られているからである。発生する偏向角を、装置100がそれらを捕捉することができるように十分小さく保つために、屈折率調整流体10を使用することもまた、最新技術である。屈折率調整流体10のRIが測定セル9の上方にあり、RIがガラス物体11の外側領域にある場合、測定アーチファクトは、測定セル9と屈折率調整流体10との境界に現れ、内側領域全体にも影響を及ぼす。このアーチファクトを完全に回避する唯一の方法は、屈折率調整流体10が測定セル9及びガラス物体11の外側領域と完全に一致することである。一般的な実用性の問題(屈折率調整流体10として適した液体の強い温度依存性による)に加えて、これは境界を完全に排除し、その結果、ガラス物体9、屈折率調整流体10、及び測定セル11の間の区別が不可能になる。
【実施例0103】
本開示の全体的な性質をより明確に示すために以下の実施例が含まれる。これらの実施例は、本開示を例示するものであり、制限するものではない。
【0104】
図13~
図16は、単一の楕円形コアを有するプリフォームの実施例1を示す。
図13は、方法500を適用することによって、すなわち、プリフォームを回転させ、測定値を取得し、測定値を左から右にスタックすることによって作成されたサイノグラムである。ラドン変換の適用前の、単一コアを反映する単一の正弦波形状が示されている。垂直線は、第1の線セクション310及び第2の線セクション312を反映していることに留意されたい。サイノグラムは、ρ-θ平面における偏向角分布ψ(ρ,θ)の大きさを任意の単位で示す。
【0105】
図14は、単一の楕円形コアを有するプリフォームの再構成された2D RIPを示す、x-y平面における相対屈折率n(x,y)-1.446の図である。第1の線セクション310は、楕円の2つの頂点の間の楕円の長軸(最長直径)に沿って取られる。第2の線セクション312は、楕円の短軸又は最短直径に沿って取られる。
【0106】
図14の図のコアを通って引かれた第2の線セクション312に沿って取られたデータは、線セクションフィッティング手順を示す
図15のグラフに示される。グラフは、相対屈折率n(r)-1.446をミリメートル単位の位置rに対してプロットしている。
図15は、方法500の主要な概念を示す。
図15のグラフは、3つの曲線、すなわち、選ばれた断層撮影再構成線セクションデータを通る曲線320、シミュレーションフィット曲線321、及びフィット結果(又は仮定)曲線322を含む。仮定されたRIステップは0.002及び0.01であり、これは方法500で非常に良好に評価することができる。
【0107】
図16は、第1の線セクション310及び第2の線セクション312を使用する、断層撮影測定及びその中の評価方法の必要性を強調している。
図16のグラフは、単一の楕円形コアを有するプリフォームについて、相対屈折率n(r)-1.446をミリメートル単位の位置rに対してプロットし、2つの異なる断層線セクションを単一の関連測定値と比較している。曲線330は、第1の線セクション310に沿った単一の測定値を示し、曲線332は、第2の線セクション312に沿った単一の測定値を示す。曲線334は、第1の線セクション310に沿った断層撮影測定値を示し、曲線336は、第2の線セクション312に沿った断層撮影測定値を示す。したがって、方法500は、単純な評価(基本的な逆アーベル変換)と比較することができる。単一の測定中の向きに応じて、結果は大きく変化し得る。対照的に、RIPのレベルは、選択された線セクションとは無関係である。方法500のフィット関数及び結果として得られるプロファイルは、グラフの過負荷を回避するために省略される。
【0108】
図17~
図20は、ほぼ半径対称であると考えられ得る八角形のクラッドを有する単一コアを有するプリフォームの実施例2を示す。コアは、Heraeus Quarzglas GmbH & Co.KG of GermanyによってFluosil(登録商標)の登録商標で販売されているフッ素ドープされた石英ガラスから作られる。
図17は、方法500を適用することによって、すなわち、プリフォームを回転させ、測定値を取得し、測定値を左から右にスタックすることによって作成されたサイノグラムである。垂直線は、第1の線セクション340及び第2の線セクション342を反映していることに留意されたい。サイノグラムは、ρ-θ平面における偏向角分布ψ(ρ,θ)の大きさを任意の単位で示す。
【0109】
図18は、八角形のクラッドを有するプリフォームの再構成された2D RIPを示す、x-y平面における相対屈折率n(x,y)-1.446の図である。第1の線セクション340は、八角形クラッドの対向する頂点を通る長軸に沿って取られる。第2の線セクション342は、八角形のクラッドの頂点間の対向する平坦セクションを通る短軸に沿って取られる。
【0110】
図18の図のコアを通って引かれた線セクション342に沿って取られたデータは、線セクションフィッティング手順を示す
図19のグラフに示される。グラフは、相対屈折率n(r)-1.446をミリメートル単位の位置rに対してプロットしている。
図19のグラフは、4つの曲線、すなわち、測定された線セクションデータを通る曲線350、シミュレーションフィット曲線351、フィット結果(又は仮定)曲線352、及び単一測定再構成曲線353を含む。グラフは、方法500の利点を示し、単一の測定と比較して断層撮影評価の必要性を強調する。
【0111】
図18の図のコアを通って引かれた線セクション340に沿って取られたデータは、線セクションフィッティング手順を示す
図20のグラフに示される。グラフは、相対屈折率n(r)-1.446をミリメートル単位の位置rに対してプロットしている。
図20のグラフは、4つの曲線、すなわち、測定された線セクションデータを通る曲線360、シミュレーションフィット曲線361、フィット結果(又は仮定)曲線362、及び単一測定再構成曲線363を含む。グラフは、方法500の利点を示し、単一の測定と比較して断層撮影評価の必要性を強調する。
【0112】
図21~
図24は、7つのコアを有する更に複雑なプリフォームの実施例3を示す。
図21は、方法500を適用することによって、すなわち、プリフォームを回転させ、測定値を取得し、測定値を左から右にスタックすることによって作成されたサイノグラムである。非中心コアの各々に1つずつ、6つの正弦波形状が示されている。垂直線は、第1の線セクション370及び第2の線セクション372を反映していることに留意されたい。サイノグラムは、ρ-θ平面における偏向角分布ψ(ρ,θ)の大きさを任意の単位で示す。
【0113】
図22は、7つのコアを有するプリフォームの再構成された2D RIPを示す、x-y平面における相対屈折率n(x,y)-1.4587の図である。第1の線セクション370は、中心コアを通って取られたより短い線セクションである。第2の線セクション372は、中心コアを通って取られたより長い線セクションである。
【0114】
図22の図の中心コアを通って引かれたより長い線セクション372に沿って取られたデータは、線セクションフィッティング手順を示す
図23のグラフに示される。グラフは、相対屈折率n(r)-1.4587をミリメートル単位の位置rに対してプロットしている。
図23のグラフは、3つの曲線、すなわち、測定された線セクションデータを通る曲線380、シミュレーションフィット曲線381、及びフィット結果(又は仮定)曲線382を含む。このグラフは、方法500の利点を示す。ラドン変換及びその逆変換は、
図21のサイノグラムと
図23のグラフとの間の遷移に適用することができる。
【0115】
図22の図の中心コアを通って引かれたより短い線セクション370に沿って取られたデータは、線セクションフィッティング手順を示す
図24のグラフに示される。グラフは、相対屈折率n(r)-1.4587をミリメートル単位の位置rに対してプロットしている。
図24のグラフは、3つの曲線、すなわち、測定された線セクションデータを通る曲線384、シミュレーションフィット曲線385、及びフィット結果(又は仮定)曲線386を含む。このグラフは、方法500の利点を示す。
【0116】
図25~
図28は、6つのコアを有し、中心コアがないプリフォームの実施例4を示す。
図25は、方法500を適用することによって、すなわち、プリフォームを回転させ、測定値を取得し、測定値を左から右にスタックすることによって作成されたサイノグラムである。各コアに1つずつ、6つの正弦波形状が示されている。曲線は、第1の線セクション390及び第2の線セクション392を反映していることに留意されたい。
図25のサイノグラム内に示される線セクション390、392は、2D RIP(
図26参照)内の線セクション390、392が中心を通過しないので、湾曲して見える。サイノグラムは、ρ-θ平面における偏向角分布ψ(ρ,θ)の大きさを任意の単位で示す。
【0117】
図26は、6つのコアを有するプリフォームの再構成された2D RIPを示す、x-y平面における相対屈折率n(x,y)-1.4587の図である。第1の線セクション390は、コアのうちの1つを通るより短い線セクションである。第2の線セクション392は、コアのうちの別のコアを通るが、約±32mmのプリフォーム境界を含む、より長い線セクションである。
【0118】
より長い線セクション392に沿って取られたデータは、線セクションフィッティング手順を示す
図27のグラフに示されている。グラフは、相対屈折率n(r)-1.4587をミリメートル単位の位置rに対してプロットしている。
図27のグラフは、3つの曲線、すなわち、測定された線セクションデータを通る曲線394、シミュレーションフィット曲線395、及びフィット結果(又は仮定)曲線396を含む。このグラフは、方法500の利点を示す。
【0119】
より短い線セクション390に沿って取られたデータは、線セクションフィッティング手順を示す
図28のグラフに示されている。グラフは、相対屈折率n(r)-1.4587をミリメートル単位の位置rに対してプロットしている。
図28のグラフは、3つの曲線、すなわち、測定された線セクションデータを通る曲線397、シミュレーションフィット曲線398、及びフィット結果(又は仮定)曲線399を含む。このグラフは、方法500の利点を示す。
【0120】
これらの例は、計算されたプリフォームパラメータ、特に屈折率ステップが、方法500によりはるかに正確であることを示す。方法500は、マルチコアプリフォーム、中空コアファイバプリフォーム、Pandaプリフォーム、又は非円形界面を有するファイバレーザ用のプリフォームを含む、非対称プリフォームの顧客にとって有益である。
【0121】
特定の具体的な実施形態及び実施例を参照して上に図示して説明したが、本開示は示した詳細に限定されることを意図していない。むしろ、特許請求の範囲の均等物の範囲及び範囲内で、本開示の趣旨から逸脱することなく、詳細において様々な修正を行うことができる。例えば、本書において記載されているすべての広義の範囲は、広義の範囲に含まれるすべての狭義の範囲もその範囲に含まれることが明示的に意図されている。