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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025047650
(43)【公開日】2025-04-03
(54)【発明の名称】超伝導磁石装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 6/06 20060101AFI20250326BHJP
   H01F 6/04 20060101ALI20250326BHJP
   H10N 60/81 20230101ALI20250326BHJP
【FI】
H01F6/06 130
H01F6/06 110
H01F6/04
H10N60/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156267
(22)【出願日】2023-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 篤
(72)【発明者】
【氏名】吉田 潤
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114BB10
4M114CC03
4M114DA17
4M114DA18
(57)【要約】
【課題】鞍型超伝導コイルのための改善された支持構造を有する超伝導磁石装置を提供する。
【解決手段】超伝導磁石装置10は、ボア18を囲むようにボア18の径方向外側に配置された内周壁12aと、内周壁12aを囲むように内周壁12aの径方向外側に配置された外周壁12bとを備え、内周壁12aと外周壁12bとの間に定まる内部空間14に真空環境を提供するクライオスタット12と、ボア18を挟んで対向する一対の鞍型超伝導コイル20であって、それぞれが真空環境にさらされるように内部空間14に配置された一対の鞍型超伝導コイル20と、内部空間14において一対の鞍型超伝導コイル20の径方向外側に配置され、一対の鞍型超伝導コイル20を支持する支持フレーム30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボアを囲むように前記ボアの径方向外側に配置された内周壁と、前記内周壁を囲むように前記内周壁の径方向外側に配置された外周壁とを備え、前記内周壁と前記外周壁との間に定まる内部空間に真空環境を提供するクライオスタットと、
前記ボアを挟んで対向する一対の鞍型超伝導コイルであって、それぞれが前記真空環境にさらされるように前記内部空間に配置された一対の鞍型超伝導コイルと、
前記内部空間において前記一対の鞍型超伝導コイルの径方向外側に配置され、前記一対の鞍型超伝導コイルを支持する支持フレームと、を備えることを特徴とする超伝導磁石装置。
【請求項2】
前記一対の鞍型超伝導コイルは、前記内部空間において、前記ボアの径の1.05倍から1.32倍の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の超伝導磁石装置。
【請求項3】
前記一対の鞍型超伝導コイルは、前記ボアに向かって凹に湾曲しており、
前記支持フレームは、前記鞍型超伝導コイルの湾曲に基づく湾曲形状を有する一対のコイルマウントと、前記一対のコイルマウントを連結する一対の直線状の連結ビームとを備えることを特徴とする請求項1に記載の超伝導磁石装置。
【請求項4】
前記一対の直線状の連結ビームは、前記一対のコイルマウントに比べて鉛直方向の寸法が小さいことを特徴とする請求項3に記載の超伝導磁石装置。
【請求項5】
前記一対の直線状の連結ビームは、前記内部空間において、前記ボアの径の1.05倍から1.32倍の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の超伝導磁石装置。
【請求項6】
前記支持フレームを水平方向に支持する水平荷重支持体をさらに備え、
前記支持フレームは、前記支持フレームの外周面から径方向内側に向かって形成された凹部を有し、前記凹部で前記水平荷重支持体に支持されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の超伝導磁石装置。
【請求項7】
前記支持フレームを鉛直方向に支持する鉛直荷重支持体をさらに備え、
前記支持フレームは、前記支持フレームの外周面から径方向外側に向かって形成されたリブを備え、前記リブで前記鉛直荷重支持体に支持されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の超伝導磁石装置。
【請求項8】
前記鞍型超伝導コイルを径方向外側に向かって前記支持フレームへと押し付けるように前記支持フレームに取り付けられた第1サポートをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の超伝導磁石装置。
【請求項9】
各鞍型超伝導コイルは、径方向外側を向く第1コイル端面と、径方向内側を向く第2コイル端面と、前記第1コイル端面と前記第2コイル端面をつなぐ2つのコイル側面とを備え、
前記2つのコイル側面で前記鞍型超伝導コイルを挟み込むように前記支持フレームに取り付けられた第2サポートをさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の超伝導磁石装置。
【請求項10】
前記クライオスタットは、前記一対の鞍型超伝導コイルを冷却する一対の極低温冷凍機を備え、
前記一対の極低温冷凍機の一方が、前記クライオスタットの周方向に前記一対の鞍型超伝導コイルの間であって前記ボアに対して片側で前記クライオスタットに設置され、
前記一対の極低温冷凍機の他方が、前記クライオスタットの周方向に前記一対の鞍型超伝導コイルの間であって前記ボアに対して反対側で前記クライオスタットに設置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の超伝導磁石装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導磁石装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導磁石装置は、MCZ(Magnetic field applied Czochralski)法による単結晶引き上げ装置の磁場発生源として利用されている。単結晶引き上げ装置は一般に、単結晶引き上げ炉と、これを囲むように配置され、複数の超伝導コイルを収容したクライオスタットとを備える。超伝導コイルには典型的に、鞍型コイルまたは丸形コイルが用いられる。超伝導コイルが発生させる強力な磁場によって、引き上げ炉内の融液中の熱対流を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-28147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超伝導コイルとして鞍型コイルを用いた単結晶引き上げ装置のある既存の設計では、鞍型コイルの製造のために使用されたコイルの巻芯がそのまま鞍型コイルの支持構造として利用される。鞍型コイルは巻芯とともにクライオスタットに収められる。鞍型コイルは巻芯の外側に巻き付けられている一方で、超伝導コイルによって磁場を印加すべき単結晶引き上げ炉はクライオスタットの内側、すなわち巻芯の内側に配置される。つまり、巻芯が磁場の印加場所と鞍型超伝導コイルとの間に置かれている。このような構成では、鞍型超伝導コイルは、巻芯が占めるスペースの分だけ、磁場印加場所から遠くに配置されることになる。ビオサバールの法則によれば、コイルが発生する磁場は距離の-3乗に比例する。そのため、コイルが磁場印加場所から離れると、その距離がわずかであっても、磁場を同じ大きさで発生させるために必要となるコイルの起磁力は顕著に増加されうる。これは、必要な超伝導線材の増加をもたらし、ひいては、望ましくないことに、超伝導磁石装置の製造コストの増加をもたらしうる。
【0005】
また、単結晶引き上げ装置では、漏洩磁場を低減するために、クライオスタットの外周を取り囲むように磁気シールドが設置されていることが多い。超伝導コイルには、磁場発生時に、相応の強力な電磁力が、磁気シールドに向かう方向、すなわち径方向外向きに働くことになる。この電磁力は、上述のように鞍型超伝導コイルの支持構造として巻芯を用いる構成では、超伝導コイルを巻芯から引き離すように働く。これを避けるべく、超伝導コイルを巻芯に押し付けるために、構造部材の追加や支持構造の強化が必要となり得る。これに起因する重量増加や大型化もやはり、超伝導磁石装置の製造コストの増加をもたらしうる。
【0006】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、鞍型超伝導コイルのための改善された支持構造を有する超伝導磁石装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によると、超伝導磁石装置は、ボアを囲むようにボアの径方向外側に配置された内周壁と、内周壁を囲むように内周壁の径方向外側に配置された外周壁とを備え、内周壁と外周壁との間に定まる内部空間に真空環境を提供するクライオスタットと、ボアを挟んで対向する一対の鞍型超伝導コイルであって、それぞれが真空環境にさらされるように内部空間に配置された一対の鞍型超伝導コイルと、内部空間において一対の鞍型超伝導コイルの径方向外側に配置され、一対の鞍型超伝導コイルを支持する支持フレームと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鞍型超伝導コイルのための改善された支持構造を有する超伝導磁石装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係り、超伝導磁石装置を搭載した単結晶引き上げ装置を模式的に示す断面図である。
図2】実施の形態に係り、超伝導磁石装置を搭載した単結晶引き上げ装置を模式的に示す断面図である。
図3】実施の形態に係り、超伝導磁石装置の外観を模式的に示す斜視図である。
図4】実施の形態に係り、超伝導磁石装置における超伝導コイル配置を模式的に示す斜視図である。
図5】実施の形態に係り、超伝導磁石装置を模式的に示す断面図である。
図6】実施の形態に係り、径方向内側から見た鞍型超伝導コイルおよび支持フレームの展開図の一部を示す模式図である。
図7】実施の形態に係り、径方向外側から見た支持フレームを模式的に示す正面図である。
図8】実施の形態に係り、超伝導磁石装置における超伝導コイル配置の他の例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0011】
図1および図2は、実施の形態に係り、超伝導磁石装置10を搭載した単結晶引き上げ装置100を模式的に示す断面図である。図3は、実施の形態に係り、超伝導磁石装置10の外観を模式的に示す斜視図である。図4は、実施の形態に係り、超伝導磁石装置10における超伝導コイル配置を模式的に示す斜視図である。図5は、実施の形態に係り、超伝導磁石装置10を模式的に示す断面図である。図1には、図2のB-B断面が示され、図2には、図1のA-A断面が示される。また、図5には、図3のC-C断面が示される。
【0012】
単結晶引き上げ装置100は、単結晶引き上げ炉102と、超伝導磁石装置10とを備える。単結晶引き上げ装置100は、例えば、HMCZ(Horizontal-MCZ;横磁場型のMCZ)法によるシリコン単結晶引き上げ装置である。
【0013】
単結晶引き上げ炉102は、図1に示されるように、坩堝104と、単結晶引き上げ機構106と、ヒーター108とを備える。
【0014】
坩堝104は、溶融材料(例えば溶融シリコン)を蓄える容器であり、例えば石英で形成される。
【0015】
単結晶引き上げ機構106は、坩堝104内の溶融材料から単結晶110を単結晶引き上げ軸112に沿って上方に引き上げる駆動装置であり、単結晶引き上げ炉102の上方かつ外側に配置される引き上げ駆動源を備える。単結晶引き上げ軸112は鉛直方向(つまり水平面に垂直な方向)に延びる軸線である。単結晶引き上げ機構106は、単結晶110を単結晶引き上げ軸112まわりに回転させながら単結晶110を引き上げるように構成される。
【0016】
ヒーター108は、単結晶引き上げ炉102内で坩堝104の周囲に配置され、坩堝104を加熱する。ヒーター108による加熱によって、坩堝104内の溶融材料は溶融状態に保持される。
【0017】
超伝導磁石装置10は、クライオスタット12と、一対の鞍型超伝導コイル20と、熱シールド24と、磁気シールド26と、支持フレーム30とを備える。超伝導磁石装置10は、単結晶引き上げ装置100の磁場発生源として用いられる。
【0018】
クライオスタット12は、クライオスタット12を取りまく周囲環境16から隔離される内部空間14を有し、この内部空間14に鞍型超伝導コイル20、熱シールド24、および支持フレーム30が配置される。内部空間14は、円筒状の空間である。クライオスタット12は断熱真空容器であり、超伝導磁石装置10の動作中、クライオスタット12の内部空間14には鞍型超伝導コイル20を超伝導状態とするのに適する極低温真空環境が提供される。
【0019】
クライオスタット12は、ボア18を内側に定め、ボア18を通る中心軸、すなわち単結晶引き上げ軸112に沿って延びる円筒状の形状を有する。超伝導磁石装置10が単結晶引き上げ装置100に搭載されたとき、ボア18には単結晶引き上げ炉102が配置される。ボア18は、クライオスタット12を取りまく周囲環境16の一部であり(すなわちクライオスタット12の外にあり)、クライオスタット12に囲まれた例えば円柱状の空間である。
【0020】
クライオスタット12は、ボア18を囲むようにボア18の径方向外側に配置された内周壁12aと、内周壁12aを囲むように内周壁12aの径方向外側に配置された外周壁12bとを備える。内周壁12aと外周壁12bはともに円筒形状を有し、これらの間に鞍型超伝導コイル20、熱シールド24、および支持フレーム30が配置される。内周壁12aと外周壁12bは、単結晶引き上げ軸112を中心として同軸に配置されている。また、クライオスタット12は、内周壁12aと外周壁12bをこれらの上下それぞれで接続する天板12cおよび底板12dを備える。天板12cと底板12dは円環状の形状を有し、概ね平坦な表面を有する。クライオスタット12の内部空間14は、径方向には内周壁12aと外周壁12bとの間に定まり、鉛直方向(単結晶引き上げ軸112の方向)には天板12cと底板12dとの間に定まる。
【0021】
クライオスタット12の少なくとも内周壁12aは、鞍型超伝導コイル20がボア18に磁場を発生させるのを妨げないように、非磁性材料(例えばステンレス鋼などの非磁性金属材料)で形成されている。クライオスタット12の他の部位、すなわち外周壁12b、天板12cおよび底板12dも内周壁12aと同じ材料で形成されてもよい。
【0022】
一対の鞍型超伝導コイル20は、ボア18を挟んで対向し、単結晶引き上げ軸112に関して対称に配置されている。鞍型超伝導コイル20はそれぞれ、ボア18に向かって凹に湾曲しており、例えば、クライオスタット12の円筒形状に沿って円弧状に湾曲している。これら2つの鞍型超伝導コイル20は、同じ形状および同じサイズを有する。
【0023】
2つの鞍型超伝導コイル20のうち一方が径方向内向き、つまり単結晶引き上げ軸112に向かう方向に磁場を発生させ、他方の鞍型超伝導コイル20が径方向外向き、つまり単結晶引き上げ軸112から離れる方向に磁場を発生させる。これらの磁場の重ね合わせにより、一対の鞍型超伝導コイル20は、合成磁場22を発生させる。合成磁場22は、単結晶引き上げ軸112上で、単結晶引き上げ軸112に直交する。
【0024】
以下では説明の便宜上、図2および図3に示されるように、単結晶引き上げ軸112に垂直なXY座標平面を考える。この座標平面の原点は単結晶引き上げ軸112上にあり、X軸は、単結晶引き上げ軸112上での合成磁場22の方向に延び、Y軸は、単結晶引き上げ軸112とX軸に垂直である。単結晶引き上げ軸112をZ軸とみなすこともできる。
【0025】
熱シールド24は、鞍型超伝導コイル20および支持フレーム30を囲むようにクライオスタット12の内部空間14に配置されている。熱シールド24は、周囲環境16から鞍型超伝導コイル20への輻射熱の侵入を抑制するために設けられている。
【0026】
鞍型超伝導コイル20が発生させる磁場が外部に漏洩するのを抑制するために、磁気シールド26は、クライオスタット12の外周壁12b、天板12cおよび底板12dを覆っている。磁気シールド26は、例えば鉄などの磁性材料で形成され、クライオスタット12の外周壁12b、天板12cおよび底板12dに隣接して配置される。鞍型超伝導コイル20がボア18に磁場を発生させるのを妨げないように、磁気シールド26は、クライオスタット12の内周壁12aは覆っていない。
【0027】
クライオスタット12には、一対の鞍型超伝導コイル20、熱シールド24、および支持フレーム30を冷却する一対の極低温冷凍機28が設置されている。図2および図3には、クライオスタット12での極低温冷凍機28の例示的な配置が示されている。
【0028】
極低温冷凍機28は、例えば、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機であり、第1冷却温度に冷却される第1冷却ステージと、第1冷却温度よりも低い第2冷却温度に冷却される第2冷却ステージとを備える。極低温冷凍機28は、第1冷却ステージと第2冷却ステージがクライオスタット12の内部空間14に配置されるようにして、クライオスタット12に設置される。極低温冷凍機28の第1冷却ステージによって熱シールド24が第1冷却温度に冷却され、第2冷却ステージによって鞍型超伝導コイル20と支持フレーム30が第2冷却温度に冷却される。第1冷却温度は、例えば30K~80Kの範囲にあってもよく、第2冷却温度は、例えば3K~20Kの範囲にあってもよい。
【0029】
一対の鞍型超伝導コイル20、熱シールド24、および支持フレーム30は、それぞれが真空環境にさらされるように内部空間14に配置されている。クライオスタット12のこれらの内部構成要素は、極低温冷凍機28によって、いわゆる伝導冷却により冷却される。熱シールド24は、第1伝熱部材を介して極低温冷凍機28の第1冷却ステージに熱的に結合され、第1冷却ステージによって直接冷却される。鞍型超伝導コイル20は、第2伝熱部材を介して極低温冷凍機28の第2冷却ステージに熱的に結合され、第2冷却ステージによって直接冷却される。
【0030】
よって、この実施の形態では、クライオスタット12は、液体ヘリウムなどの極低温液体冷媒に鞍型超伝導コイル20を浸漬して冷却する浸漬冷却を用いていない。クライオスタット12には、鞍型超伝導コイル20を極低温液体冷媒とともに収容する液体冷媒槽は設けられていない。支持フレーム30は、クライオスタット12の内部空間14において鞍型超伝導コイル20に隣接するにすぎず、鞍型超伝導コイル20を囲む閉鎖区画を形成するものではない。
【0031】
一対の極低温冷凍機28のうち一方は、クライオスタット12の周方向において一対の鞍型超伝導コイル20の間であってボア18に対して片側でクライオスタット12に設置されている。他方の極低温冷凍機28は、クライオスタット12の周方向に一対の鞍型超伝導コイル20の間であってボア18に対して反対側でクライオスタット12に設置されている。例えば、図示されるように、一対の極低温冷凍機28は、Y軸上に配置されてもよい。一対の極低温冷凍機28は、単結晶引き上げ軸112を挟んで一方が+Y側に、他方が-Y側に配置されてもよい。極低温冷凍機28は、一例として、クライオスタット12の天板12cに設置される。図3に示されるように、極低温冷凍機28の一部分が、天板12cに隣接する磁気シールド26の上板から上方に突出している。
【0032】
極低温冷凍機28のこのような対称的な配置により、各極低温冷凍機28から鞍型超伝導コイル20への伝熱距離を等しくすることができる。それにより、一対の鞍型超伝導コイル20を均等に冷却することができる。
【0033】
また、鞍型超伝導コイル20が発生させる強い磁場は、極低温冷凍機28の挙動に影響し、場合によっては、冷凍能力の低下をもたらしうる。磁場は、XY平面上において、X軸上で最も強く、Y軸上で最も弱くなる。したがって、上述の極低温冷凍機28の設置位置は、磁場の低い場所が選ばれている。よって、極低温冷凍機28への磁場による悪影響を低減することができる。
【0034】
なお、このような有利な効果を奏するうえで、2つの極低温冷凍機28が厳密にY軸上に配置されることは必須でない。図2に示されるように、極低温冷凍機28は、鞍型超伝導コイル20の周方向端部から周方向に角度Δθだけ離れた角度位置に配置されてもよい。角度Δθは、例えば、少なくとも4度であってもよい。このように、極低温冷凍機28を鞍型超伝導コイル20から周方向に離して配置することにより、極低温冷凍機28への磁場による悪影響を低減することができる。
【0035】
支持フレーム30は、クライオスタット12の内部空間14において一対の鞍型超伝導コイル20の径方向外側に配置され、一対の鞍型超伝導コイル20を支持する。支持フレーム30は、ボア18を囲むようにリング状に形成されている。支持フレーム30は、超伝導磁石装置10の動作中に鞍型超伝導コイル20に働く電磁力に抗して、鞍型超伝導コイル20どうしの相対位置を保持するように鞍型超伝導コイル20を剛に連結する構造体であり、剛性フレームと呼ぶこともできる。支持フレーム30は、必要な剛性を実現するために、例えばステンレス鋼などの金属材料またはその他の適する高強度材料で形成される。
【0036】
支持フレーム30は、鞍型超伝導コイル20の湾曲に基づく湾曲形状を有する一対のコイルマウント32と、一対のコイルマウント32を連結する一対の直線状の連結ビーム34とを備える。
【0037】
コイルマウント32は、鞍型超伝導コイル20が設置される支持フレーム30の部位である。コイルマウント32は、鞍型超伝導コイル20に沿って湾曲し、鞍型超伝導コイル20の径方向外側に隣接し、鞍型超伝導コイル20を支持する。このように、コイルマウント32を鞍型超伝導コイル20に合わせた湾曲形状とすることで、超伝導磁石装置10の動作中に鞍型超伝導コイル20に電磁力が働くとき、コイルマウント32がこの電磁力を効果的に支持し、鞍型超伝導コイル20に生じうる変形を抑制できる。
【0038】
一方の連結ビーム34がコイルマウント32の一方の端部どうしを連結し、他方の連結ビーム34がコイルマウント32の他方の端部どうしを連結する。連結ビーム34は、鞍型超伝導コイル20が設置される部位ではないため、コイルマウント32のように鞍型超伝導コイル20に沿った湾曲形状をもつ必要はない。連結ビーム34を平面的な形状とすることにより、湾曲形状に比べて製作が容易となる。これは、支持フレーム30の製造コストの低減につながりうる。
【0039】
一対の直線状の連結ビーム34は、図3に示されるように、一対のコイルマウント32に比べて鉛直方向(すなわち、単結晶引き上げ軸112の方向)の寸法が小さくてもよい。これにより、連結ビーム34とコイルマウント32の鉛直方向の寸法をそろえた場合に比べて、連結ビーム34ひいては支持フレーム30を軽量化することができる。また、コイルマウント32に比べて連結ビーム34の高さが低くなっていることを利用して、連結ビーム34の上方に極低温冷凍機28の配置スペースを確保することもできる。
【0040】
なお、代替例として、連結ビーム34も、コイルマウント32と同様に、クライオスタット12の円筒形状に沿って円弧状に湾曲していてもよい。支持フレーム30は、コイルマウント32と連結ビーム34から円環状に形成されていてもよい。また、コイルマウント32と連結ビーム34は別の部材として用意され、これらが連結されて支持フレーム30が形成されてもよい。あるいは、支持フレーム30は、コイルマウント32と連結ビーム34が一体化された単一の構造体として形成されてもよい。
【0041】
図3および図5に示されるように、超伝導磁石装置10には、支持フレーム30を水平方向に支持する複数の水平荷重支持体36が設けられている。水平荷重支持体36は、超伝導磁石装置10の動作中に鞍型超伝導コイル20に働く径方向外向きの電磁力を支えるものである。
【0042】
水平荷重支持体36は、クライオスタット12の径方向に延在する棒状の形状を有し、その一端で磁気シールド26に支持され、他端で支持フレーム30のコイルマウント32に支持される。水平荷重支持体36は、磁気シールド26から、クライオスタット12の外周壁12bと熱シールド24を貫通してコイルマウント32へと延びている。鞍型超伝導コイル20に働く径方向外向きの電磁力は、水平荷重支持体36を用いて、磁気シールド26を支点として支持される。
【0043】
水平荷重支持体36の少なくとも一部、例えば水平荷重支持体36の端部は、ステンレス鋼などの金属材料で形成されてもよい。また、水平荷重支持体36を通じた磁気シールド26から鞍型超伝導コイル20への入熱を抑制するために、水平荷重支持体36の少なくとも一部、例えば水平荷重支持体36の両端を接続する棒状体は、繊維強化プラスチックなどの断熱材料で形成されてもよい。
【0044】
支持フレーム30には、支持フレーム30の外周面から径方向内側に向かって形成された凹部38が形成されている。この凹部38は、水平荷重支持体36の支持フレーム30側の端部を受け入れるために支持フレーム30のコイルマウント32に設けられている。支持フレーム30は、凹部38で水平荷重支持体36に支持されている。また、凹部38は、鞍型超伝導コイル20の内側スペースへと径方向に突出する凸部39としてコイルマウント32に形成されている。
【0045】
このようにすれば、水平荷重支持体36の一部が支持フレーム30の凹部38に収容されるから、水平荷重支持体36と支持フレーム30の合計の径方向寸法を小さくすることができる。これは、超伝導磁石装置10の小型化につながりうる。それとともに、水平荷重支持体36の径方向長さを長くとることができる。これにより、磁気シールド26と支持フレーム30との間の水平荷重支持体36による断熱距離を確保することができ、鞍型超伝導コイル20への熱負荷を低減することができる。
【0046】
1つの鞍型超伝導コイル20について、2つの水平荷重支持体36が配置される。鞍型超伝導コイル20に電磁力が働くときコイルのコーナー部(すなわち、クライオスタット12の周方向におけるコイルの端部)においてコイルに曲げ応力が生じやすい。この曲げ応力によるコイルの曲げ変形を効果的に抑制するために、水平荷重支持体36は、鞍型超伝導コイル20のコーナー部の近傍に配置されてもよい。よって、水平荷重支持体36を受け入れる凹部38は、支持フレーム30のコイルマウント32の周方向端部に形成されてもよい。なお、必要とされる場合には、各鞍型超伝導コイル20について、追加の(つまり第3の)水平荷重支持体36が配置されてもよい。
【0047】
図6は、実施の形態に係り、径方向内側から見た鞍型超伝導コイル20および支持フレーム30の展開図の一部を示す模式図である。図5および図6に示されるように、支持フレーム30には、鞍型超伝導コイル20を支持フレーム30に固定するために、第1サポート40と第2サポート42が取り付けられている。
【0048】
第1サポート40は、鞍型超伝導コイル20の径方向内側に配置されたプレートであり、支持フレーム30のコイルマウント32に取り付けられることで、鞍型超伝導コイル20を径方向外側に向かって支持フレーム30へと押し付ける。各鞍型超伝導コイル20は、径方向外側を向く第1コイル端面20aと、径方向内側を向く第2コイル端面20bとを有しており、第1コイル端面20aでコイルマウント32と接触し、第2コイル端面20bで第1サポート40と接触している。第1サポート40は、これら2つのコイル端面で鞍型超伝導コイル20を挟み込むように支持フレーム30に取り付けられている。第1サポート40は、第2サポート42を介して支持フレーム30に取り付けられてもよいし、支持フレーム30に直接取り付けられてもよい。
【0049】
このように、第1サポート40によって鞍型超伝導コイル20を支持フレーム30に押し当てることにより、クライオスタット12の径方向における鞍型超伝導コイル20の変位を抑制し、支持フレーム30上での鞍型超伝導コイル20の径方向位置を保持することができる。
【0050】
また、各鞍型超伝導コイル20は、第1コイル端面20aと第2コイル端面20bをつなぐ2つのコイル側面、すなわち、コイル外周側の第1コイル側面20cおよびコイル内周側の第2コイル側面20dを有する。第2サポート42は、これら2つのコイル側面で鞍型超伝導コイル20を挟み込むように支持フレーム30に取り付けられている。
【0051】
第2サポート42は、第1部材42aと第2部材42bを含み、第1部材42aが第1コイル側面20cに接触し、第2部材42bが第2コイル側面20dに接触する。第1部材42aは、第1コイル側面20cの一部分を覆う壁にあたり、第2部材42bは、第2コイル側面20dの一部分を覆う壁にあたる。第1部材42aと第2部材42bはそれぞれ、支持フレーム30に取り付けられている。第1部材42aと第2部材42bで鞍型超伝導コイル20を挟み込むために、第1部材42aと第2部材42bのうち一方、例えば第2部材42bは、例えばレベリングブロック、スクリュージャッキ、板バネなどの押付具を備える。
【0052】
このように、第2サポート42によって鞍型超伝導コイル20を挟み込むことにより、鞍型超伝導コイル20に電磁力が働くときに生じうる鞍型超伝導コイル20の曲げを抑制することができる。
【0053】
第1サポート40と第2サポート42の両方を設けることにより、支持フレーム30に対する鞍型超伝導コイル20の変位および変形が効果的に抑制される。これは、鞍型超伝導コイル20でのクエンチの発生を抑制することに役立つ。
【0054】
これらのコイルサポートは、図6に示されるように、鞍型超伝導コイル20の上下部分だけでなく、コーナー部にも設けられている。このようにして、第1サポート40と第2サポート42が鞍型超伝導コイル20に沿って複数箇所に設けられることで、鞍型超伝導コイル20の全周にわたる支持フレーム30への強固な固定が可能になる。
【0055】
第1サポート40と第2サポート42は、鞍型超伝導コイル20の全集に沿って連続して設けられることに代えて、複数箇所に離散的に設けられている。このような分割構造を採用したことにより、第1サポート40および第2サポート42の製作が容易になる。
【0056】
図7は、実施の形態に係り、径方向外側から見た支持フレーム30を模式的に示す正面図である。超伝導磁石装置10には、支持フレーム30を鉛直方向に支持する複数の鉛直荷重支持体44が設けられている。鉛直荷重支持体44により、鞍型超伝導コイル20などクライオスタット12の内部構成要素に働く自重を支えることができる。複数の鉛直荷重支持体44は、クライオスタット12の周方向に等角度間隔に配置されていてもよい。例えば、6個の鉛直荷重支持体44が60度ごとに配置されていてもよい。なお、図7には、支持フレーム30とともに極低温冷凍機28が示されている。
【0057】
鉛直荷重支持体44は、鉛直方向に延在する棒状の形状を有し、その一端でクライオスタット12の底面に支持され、他端で支持フレーム30のコイルマウント32に支持される。鉛直荷重支持体44の少なくとも一部、例えば鉛直荷重支持体44の端部は、ステンレス鋼などの金属材料で形成されてもよい。また、鉛直荷重支持体44を通じたクライオスタット12から鞍型超伝導コイル20への入熱を抑制するために、鉛直荷重支持体44の少なくとも一部、例えば鉛直荷重支持体44の両端を接続する棒状体は、繊維強化プラスチックなどの断熱材料で形成されてもよい。
【0058】
図7に示されるように、支持フレーム30は、支持フレーム30の外周面から径方向外側に向かって形成されたリブ46を備え、リブ46で鉛直荷重支持体44に支持されている。リブ46は、支持フレーム30のコイルマウント32の外周面上で周方向に延びている。このように、水平方向に延びるリブ46に鉛直荷重支持体44を連結することにより、リブ46がいわば緩衝材として働き、支持フレーム30に衝撃荷重(例えば、鞍型超伝導コイル20の電磁力、超伝導磁石装置10の輸送中に発生しうる衝撃など)による鉛直荷重支持体44への直接的な負荷を軽減することができる。
【0059】
なお、クライオスタット12には、図示は省略するが、鞍型超伝導コイル20に接続される電流導入端子、クライオスタット12の真空排気のための真空排気ポート、クライオスタット12内の計測機器に接続される計測用ポートなど、その他の構成要素が設けられてもよい。電流導入端子、真空排気ポート、計測用ポートのうち少なくとも1つがクライオスタット12の上面または下面に設置されてもよい。
【0060】
ところで、本書の冒頭で述べたように、鞍型超伝導コイルを用いた単結晶引き上げ装置の既存設計では、鞍型超伝導コイルの支持構造が鞍型超伝導コイルの径方向内側に取り付けられていることが多い。この場合、支持構造が占めるスペースの分だけ、鞍型超伝導コイルは、磁場を印加すべき単結晶引き上げ炉から径方向に離れて配置されることになる。コイルが発生する磁場は距離の-3乗に比例するから、単結晶引き上げ炉から鞍型超伝導コイルが離れるにつれて、必要なコイルの起磁力が顕著に増大しうる。つまり、磁場発生効率が低くなりがちである。これは、コイルに必要な超伝導線材の増加をもたらし、ひいては、望ましくないことに、超伝導磁石装置の製造コストの増加をもたらしうる。
【0061】
これに対して、実施の形態によると、鞍型超伝導コイル20がその径方向外側で支持フレーム30に支持されるから、鞍型超伝導コイル20をボア18に近接して配置することができる。したがって、磁場発生効率を向上させ、超伝導線材の使用量を低減し、さらには、超伝導磁石装置10の製造コストを低減することができる。
【0062】
また、超伝導磁石装置10の動作中、鞍型超伝導コイル20が発生させる強い磁場に応じて、鞍型超伝導コイル20には、磁気シールド26に向かう方向、つまり径方向外向きに相応の強力な電磁力が働く。鞍型超伝導コイル20は、磁気シールド26に向かって強く引っ張られることになる。
【0063】
上述の既存設計では、鞍型超伝導コイルの支持構造がその径方向内側に設けられているから、コイルに働く径方向外向きの力は、コイルを支持構造から引き離すように働くことになる。コイルが支持構造から分離されるのを避けるために、構造部材の追加や支持構造の強化が必要となり得る。これに起因する重量増加や大型化は、装置の製造コストの増加をもたらしうるから、望ましくない。
【0064】
これに対して、実施の形態によると、鞍型超伝導コイル20に働く径方向外向きの力は、鞍型超伝導コイル20を支持フレーム30に押し付けるように働くことになる。したがって、既存技術とは逆に、支持フレーム30は、比較的簡素な構成で、鞍型超伝導コイル20を効果的に支持することができる。その結果、超伝導磁石装置10の軽量化を図ることもできる。
【0065】
典型的に、単結晶引き上げ装置100に搭載されるクライオスタット12は、その外径が内径(つまりボア18の径)のおよそ1.5倍とされている。このような径方向寸法をもつクライオスタット12に適合させるうえで、好ましくは、一対の鞍型超伝導コイル20は、クライオスタット12の内部空間14において、ボア18の径の1.05倍から1.32倍の範囲内に配置されていてもよい。言い換えれば、鞍型超伝導コイル20の内径の下限値が、クライオスタット12のボア18の径の1.05倍に定められてもよい。また、鞍型超伝導コイル20の外径の上限値が、クライオスタット12のボア18の径の1.32倍に定められてもよい。
【0066】
内部空間14において鞍型超伝導コイル20の径方向内側には熱シールド24が配置されている。鞍型超伝導コイル20を熱シールド24よりも低温に冷却するうえで、鞍型超伝導コイル20と熱シールド24との物理的接触は、確実に避けることが望まれる。このような観点から、上述の1.05倍という下限値は定められている。
【0067】
内部空間14において支持フレーム30の径方向外側にも熱シールド24が配置されている。支持フレーム30は鞍型超伝導コイル20とともに、熱シールド24よりも低温に冷却される。支持フレーム30と熱シールド24との物理的接触は、確実に避けることが望まれる。また、所望の剛性をもたせるために、支持フレーム30には径方向にある程度のサイズが必要となる。このような観点から、上述の1.32倍という上限値は定められている。
【0068】
同様に、一対の直線状の連結ビーム34は、クライオスタット12の内部空間14において、ボア18の径の1.05倍から1.32倍の範囲内に配置されていてもよい。このように、連結ビーム34と熱シールド24との物理的接触を避け、これらの間の断熱を確実にすることを考慮して、連結ビーム34の径方向内側寸法の下限値がボア18の径の1.05倍に、連結ビーム34の径方向外側寸法の上限値がボア18の径の1.32倍に定められてもよい。
【0069】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。ある実施の形態に関連して説明した種々の特徴は、他の実施の形態にも適用可能である。組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態それぞれの効果をあわせもつ。
【0070】
図8は、実施の形態に係り、超伝導磁石装置10における超伝導コイル配置の他の例を模式的に示す斜視図である。図示されるように、超伝導磁石装置10には、一対の鞍型超伝導コイル20に加えて、超伝導磁石装置10における磁場分布の調整の補助のために、追加の超伝導コイル50を備えてもよい。追加の超伝導コイル50は、鞍型超伝導コイル20よりも小型のコイルであってもよく、鞍型超伝導コイル20の内側に配置されてもよい。追加の超伝導コイル50は、円形コイルであってもよいし、あるいは、鞍型コイルであってもよい。鞍型超伝導コイル20と追加の超伝導コイル50の両方が、上述の支持フレーム30に支持されていてもよい。
【0071】
実施の形態に係る超伝導磁石装置10が搭載された単結晶引き上げ装置は、シリコン以外の半導体材料またはその他の材料の単結晶を生成するための単結晶引き上げ装置であってもよい。
【0072】
適用可能であれば、超伝導磁石装置10は、単結晶引き上げ装置以外の装置に搭載されてもよい。超伝導磁石装置10は、高磁場利用機器の磁場源として高磁場利用機器に搭載され、その機器に必要とされる高磁場を発生させることができる。
【0073】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0074】
10 超伝導磁石装置、 12 クライオスタット、 12a 内周壁、 12b 外周壁、 14 内部空間、 18 ボア、 20 鞍型超伝導コイル、 20a 第1コイル端面、 20b 第2コイル端面、 28 極低温冷凍機、 30 支持フレーム、 32 コイルマウント、 34 連結ビーム、 36 水平荷重支持体、 38 凹部、 40 第1サポート、 42 第2サポート、 44 鉛直荷重支持体、 46 リブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8