(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004782
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】二部式袍
(51)【国際特許分類】
A41D 1/00 20180101AFI20250108BHJP
【FI】
A41D1/00 101Z
A41D1/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104595
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】723008873
【氏名又は名称】木村 直
(72)【発明者】
【氏名】木村 直
【テーマコード(参考)】
3B030
【Fターム(参考)】
3B030BA01
3B030BB01
3B030BC02
3B030BC07
(57)【要約】
【課題】
束帯、衣冠などの袍は、通常、前後2人の衣紋道に従事した衣紋方により着付けられるもので、使用者自身による単独での着装は禁じ手とされるほど技術的に困難を来す。本発明の二部式袍は、袍の上下を分断することで、使用者自身による単独での着用を可能にし、さらに前後2人の衣紋方に着付けられた際の本来外観の再現を目指す。
【解決手段】
元来ひと続きである袍を上下に分断し、二部式化することで、上衣前身頃の両端裾を斜形状に固定する端固定部を形成し、かいこみが容易に行えるようにする。さらに、下衣が備える腰接続部を使用して、着用時の位置ずれや着崩れを防ぐ。本発明の二部式袍は、使用者単独での着装を可能とすると共に、前後2人の衣紋方によって着装された時の本来外観を再現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の肩に羽織る上衣、及び、前記人の胴に巻回される縫腋下衣、又は、前記人の胴前面を覆う闕腋下衣からなる二部式袍であって、前記上衣は、前身頃の裾をたくし上げて、抱え紐、又は、石帯紐に込み入れてかい込みを形成するかい込み形成部、を有すること、を特徴とする二部式袍。
【請求項2】
請求項1に係る二部式袍において、前記かい込み形成部は、さらに、前記前身頃の両端裾を前記前身頃裏の中央に向かって斜形状に固定する端固定部、を有すること、を特徴とする二部式袍。
【請求項3】
請求項1、又は、請求項2に係る二部式袍において、前記縫腋下衣は、腹側と背側に、腰紐、又は、袴腰帯と接続する腰接続部を有すること、を特徴とする二部式袍。
【請求項4】
請求項1、又は、請求項2に係る二部式袍において、前記縫腋下衣は、両脇を前方に折込み固定する脇固定部を有すること、を特徴とする二部式袍。
【請求項5】
請求項1、又は、請求項2に係る二部式袍において、前記縫腋下衣は、蟻先の菱形状を保持する菱形状保持部材を有すること、を特徴とする二部式袍。
【請求項6】
請求項1、又は、請求項2に係る二部式袍において、前記闕腋下衣は、中央に腰紐、又は、袴腰帯と接続する腰接続部を有すること、を特徴とする二部式袍。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着装者が単独で着装する際に高度な着装技術を必要とせず、かつ前後2人の衣紋方によって着装された際の本来の外観を再現することを目的とした二部式袍に関する。
【背景技術】
【0002】
束帯(そくたい)、衣冠(いかん)、直衣(のうし)、斎服(さいふく)、襲装束(かさねしょうぞく)などの袍は、本来、前後2人の衣紋方である衣紋道に従事した着付け師によって着付けられる他装が基本であり、被着装者単独で着装する自装は、禁じ手とされるほど技術的に困難を来す。
【0003】
非特許文献1に示される衣紋者なしの単独で袍を着装する方法や、非特許文献2に示される衣紋方一人で袍を着装する方法があるが、いずれの場合においても、前後2人の衣紋方によって着装された時の本来外観を再現することは困難を極める。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】八條忠基、"単独で着る場合(衣紋者なし)"、[online]、掲載日不明、2023年6月23日検索、インターネット<URL:http://www.kariginu.jp/kikata/7-1.htm#単独で着る場合>
【0005】
【非特許文献2】八條忠基、"衣冠の袍の着装(衣紋方一人)"、[online]、掲載日不明、2023年6月23日検索、インターネット<<URL:http://www.kariginu.jp/kikata/kitsuke-3.htm>
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、両腋の袖付け下を縫い合わせた縫腋(ほうえき)の袍(束帯、衣冠、直衣、斎服など)または、両腋の袖付け下を縫い合わさず解放された闕腋(けってき)の袍(襲装束や久米舞装束など)の着装における困難さを解消するため、元来ひと続きである袍の上下を腰付近で分断し、二部式化した二部式袍を提供することである。古くは日本書紀に天武天皇13年(684)時点で縫腋の袍や闕腋の袍の記載があるが、平安時代末期に朝廷内の装束が凋(なえ)装束から剛(こわ)装束へ変化したことで、袍の自装が困難となり衣紋道(装束に関する専門的な知識や技術を体系化したもの)に従って着装を行う衣紋方が必要となった。以降、袍の形状に大きな改革が見られず、袍の着装には依然として高度な技術が求められ現在に至るが、本発明の二部式袍は被着装者が単独で着装する際の高度な技術を必要とせず、かつ、前後2人の衣紋方によって着装された際の本来外観の再現を可能とする。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に示されるように、衣紋方不在での被着装者単独による袍の着付けは、前身頃及び、後ろ身頃の裾位置や、前身頃上前、及び、下前の打ち合わせ位置の調整が困難であり、一時的にかいこみ部を袴腰帯に挟み込む等の便法はあるものの、かいこみ形成工程、及び、かいこみ時において、前身頃上前と前身頃下前の打ち合わせ、さらに前後裾の高さにずれが生じやすい。
【0008】
また、非特許文献2に示されるように、衣紋方が1人の場合において、前述のずれに対し、胸高への仮留め等の便法はあるものの、かいこみ部の形成工程、及び、かいこみ時において、前身頃上前と前身頃下前の打ち合わせ、さらに前後裾の高さにずれが生じやすい。
【0009】
本発明の目的は、元来ひと続きである袍の上下を分断し二部式化することにより、かいこみ形成工程、及び、かいこみ時において、前身頃上前と前身頃下前の打ち合わせ、及び、前後裾の高さのずれを抑制し、被着装者単独で高度な着装技術を必要とせず、前後2人の衣紋方によって着装された時の本来外観を再現する事を目的とした二部式袍を提供する。
【0010】
本発明のさらなる目的は、着装後の所作により崩れが生じやすい前身頃両端裾の蟻先菱形状を保持可能な蟻先菱形状保持部材8を備えた二部式袍を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の二部式袍は、人の肩に羽織る縫腋上衣1、及び、前記人の胴に巻回される縫腋下衣2、又は、人の肩に羽織る闕腋上衣3、及び、前記人の胴前面を覆う闕腋下衣4からなる二部式袍であって、前記縫腋上衣1及び闕腋上衣3は、かい込みを形成するかい込み形成部を有する。
【0012】
本発明の二部式袍の前記かい込み形成部は、前身頃の両端裾を前記前身頃裏の中央に向かって斜形状に固定する端固定部13から16を有する。
【0013】
本発明の二部式袍の前記縫腋下衣2は、腹側と背側に、腰紐、又は、袴腰帯と接続する腰接続部5、6を有する。
【0014】
本発明の二部式袍の前記縫腋下衣2は、両脇を前方に折込み固定する脇固定部23、24及び25、26を有する。
【0015】
本発明の二部式袍の前記縫腋下衣2は、蟻先ALの菱形状を保持する菱形状保持部材8を有する。
【0016】
本発明の二部式袍の前記闕腋下衣4は、中央に、腰紐、又は、袴腰帯と接続する腰接続部7を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の二部式袍は、かいこみ形成部を備える縫腋上衣1、または、闕腋上衣3と、それぞれ対応する縫腋下衣2、又は、闕腋下衣4の二部式化により、かいこみ形成工程の複雑性や、かいこみ時に生じる前身頃上前と前身頃下前の打ち合わせ、前後裾の高さのずれを抑制する。その結果、高度な着装技術を必要とせず、被着装者単独での着装が可能となり、さらに前後2人の衣紋方によって着装された時の本来外観を再現する。
【0018】
本発明の二部式袍は、端固定部13から16を備え、これにより前身頃両脇裾を斜形状に固定し、かいこみ部の三角形状を容易に形成する。その結果、高度な着装技術を必要とせず、被着装者単独での着装を可能とすると共に、前後2人の衣紋方によって着装された時の本来外観を再現する。
【0019】
本発明の二部式袍は、筒状の縫腋下衣2に腰紐、または袴腰帯と接続する腰接続部5、6を備えることで、胴中心に位置するように設定される。これにより、前身頃裾の高さと胴の中心位置を適切に調整し、高度な着装技術を必要とせず、被着装者単独での着装を可能とし、さらに前後2人の衣紋方によって着装された時の、本来外観を再現する。
【0020】
本発明の二部式袍は、縫腋下衣2を備えており、前方向に折り込み固定する脇固定部23、24、及び、25、26の固定位置を調整することで、着装者の胴サイズに適応できるだけでなく、着崩れを抑制し、前後2人の衣紋方によって着装された時の本来外観を再現する。
【0021】
本発明の二部式袍は、縫腋下衣2に備える菱形状保持部材8により、固張り加工や裏打ち等の加工を施すことなく、着装後の所作によって崩れが生じやすい菱形状を、生地素材感を残しつつ保持することができる。
【0022】
本発明の二部式袍は、膝下丈のエプロン形状の闕腋下衣4が腹側の中央に縫い付けた腰接続部7を備える。この腰接続部7を腰紐や袴腰帯に接続することで、前身頃の裾の高さと、闕腋上衣3との位置関係を適切に調整し、前後2人の衣紋方によって着装された時の本来外観と同様の見栄えを再現する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例である二部式袍の全体構成を示す平面図である。
【
図2】本発明にかかる縫腋上衣1の一例を示す説明図である。
【
図3】本発明にかかる縫腋下衣2の一例を示す平面図である。
【
図4】本発明にかかる縫腋下衣2の一例を示す説明図である。
【
図5】本発明にかかる縫腋下衣2の一例を示す説明図である。
【
図6】本発明にかかる二部式袍の一例を示す説明図である。
【
図7】本発明にかかる、かいこみKの一例を示す説明図である。
【
図8】本発明にかかる、闕腋上衣3の一例を示す平面図である。
【
図9】本発明にかかる、闕腋下衣4の一例を示す平面図である。
【
図10】本発明にかかる、闕腋下衣4の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の適用された二部式袍を以下に説明する。元来ひと続きである袍を上下に分断した、縫腋上衣1、及び、縫腋下衣2、又は、闕腋上衣3、及び、闕腋下衣4を、高度な着装技術を必要とせず、被着装者単独での着装を可能とし、前後2人の衣紋方によって着装された時の本来外観と同様の見栄えを再現するものである。
【0025】
以下本発明の実施の一形態について図面を参酌しながら説明する。なお、本発明の二部式袍の各構成については、以下の実施例に限定されるものではなく、使用状況によって適宜変更することができる。
【実施例0026】
図1(a)に、本発明の二部式袍9が示されており、縫腋上衣1、及び、縫腋下衣2から構成される。使用者は、縫腋上衣1を肩に羽織った後、縫腋下衣2を胴に巻回することにより、二部式袍9を、着用する。なお、着用後の二部式袍9には、従来の袍におけるかいこみと、外観上、同様の形態を有するかいこみKが形成される。
【0027】
図2に、着用前の縫腋上衣1を平面上に配置した正面図、及び、背面図を示す。縫腋上衣1は、かいこみ形成部11から16を有し、かいこみ形成部11から16は、着用後に、かいこみKを形成するために配置される。なお、
図2は、前身頃との区別に、後身頃に斜線を描いている
【0028】
縫腋上衣1の前記かいこみ形成部11から16は、前身頃の裾を固定する裾固定部11、12、及び、前身頃の両脇裾を前記前身頃裏の中央に向かって斜形状に固定する端固定部13から16を有する。ここで、縫腋上衣1は、前身頃に、着用時、正面における打ち合わせの上側、下側に位置する上衣上前部TL、上衣下前部TRを有している。
【0029】
裾固定部11は、前身頃の裏の裾中央部、つまり、上衣上前部TLの裏側に配置される。裾固定部12は、前身頃の表の裾中央部、つまり、上衣下前部TRの表側に配置される。なお、裾固定部11と裾固定部12とは、それぞれ、一対をなし、着用時に対向する位置に配置される。
【0030】
端固定部13、15は、着用時、前身頃の裾の裏の左右の端に配置される。端固定部14、16は、前身頃裏の中央、つまり、上衣下前部TRの裏側、裾から上に所定距離だけ離れた位置に配置される。
【0031】
なお、縫腋上衣1の裾固定部11、12、及び、端固定部13から16は例えば、面ファスナーを用いる。
【0032】
図3に、着用前の縫腋下衣2を、平面上に配置した状態を示す。縫腋下衣2は、着用時、正面における打ち合わせの位置を固定する打ち合わせ固定部17から22と、脇固定部23から26、腹側と背側の、腰紐、又は、袴腰帯に接続する腰接続部5、6、及び、着装後の所作により崩れが生じやすい蟻先ALの菱形状を保持する菱形状保持部材8を有する。打ち合わせ固定部17から22、脇固定部23から26、腰接続部5、6、及び、菱形状保持部材8については、後述する。
【0033】
なお、縫腋下衣2の打ち合わせ固定部17から22、及び、両脇を前方に折り込み固定する脇固定部23、24、及び、脇固定部25、26は、例えば、面ファスナーを用いる。脇固定部23、及び、26の固定位置を調整する事により様々な胴サイズに適合する。
【0034】
図4に、着用時の縫腋下衣2の外観を示す。
図4の(a)は、着用時の縫腋下衣2を前面から見た図であり、
図4の(b)は、着用時の縫腋下衣2を背面から見た図で、
図4の(c)は、着用時の縫腋下衣2の平面図である。
【0035】
図4(c)に示すように、着用時の縫腋下衣2は、胴に巻きつけられ、打ち合わせの上側、下側に位置する下衣上前部BLと下衣下前部BRを有する。左前上前部は、使用者から見て縫腋下衣2の左側、つまり向かって右側に、下前部は使用者から見て縫腋下衣2の右側、つまり向かって左側に位置する。
【0036】
図4(c)に示すように、縫腋下衣2は、上縁に沿って、打ち合わせ固定部17から22、及び、脇固定部23から26を有している。打ち合わせ固定部17から19は、下前部の表側に配置される。打ち合わせ固定部17から19は、打ち合わせ固定部17を中心に、左右、それぞれに、打ち合わせ固定部18、19が配置される。打ち合わせ固定部20から22は、下衣上前部BLの裏側に配置される。打ち合わせ固定部20から22は、打ち合わせ固定部20を中心に、左右、それぞれに、打ち合わせ固定部21、22が配置される。なお、打ち合わせ固定部17と打ち合わせ固定部20、打ち合わせ固定部18と打ち合わせ固定部21、及び、打ち合わせ固定部19と打ち合わせ固定部22は、それぞれ、一対をなし、着用時に対向する位置に配置される。
【0037】
縫腋下衣2は、着用時、下衣上前部BL、下衣下前部BRによる打ち合わせが正面にくるように配置し、胴回りに縫腋下衣2の上縁を沿わせる際に、胴回りの長さに対して余分となる縫腋下衣2の上縁を、胴の左右の頂部から、胴の正面側に折り返すことによって、左右それぞれに形成される折り返し部を有している。したがって、折り返し部は、縫腋下衣2の上縁が重なって形成される。
【0038】
脇固定部23、26は、左右それぞれの折り返し部の端部の裏側、つまり、着用時、胴側に配置される。脇固定部24、25は、縫腋下衣2の着用時、下衣上前部BLの表側において、着用時における胴の中心から、左右に、均等な位置に配置される。なお、脇固定部23から26は、着用時に、使用者の胴回りに合わせて調整できるように、胴回り方向に沿って、ある程度の幅を有している。
【0039】
腰接続部5は、着用時に縫腋下衣2が胴の中央に来るよう、下衣下前部の内側上縁に沿って配置され、腹側の腰紐または袴腰帯に差し込み接続される。腰接続部6は、着用時に縫腋下衣2が胴の中央に来るよう、下衣の背内側上縁に沿って配置され、背側の腰紐または袴腰帯に差し込み接続される。
【0040】
菱形状保持部材8は、蟻先ALが菱形状を形成する際にその形状を維持するための部材であり、蟻先菱形状の上辺と内側の辺に沿って配置され、その形状を支える。
【0041】
菱形形状保持部材8は、着用時に菱形状となる蟻先の2辺を支える部材であり、その形状は山形を示し、底辺の両端が鋭角に成形されている。この形状は、菱形の蟻先の崩れを防ぎつつ、布の自然な風合いを損なわないように設計されている。具体的な形状の詳細は、材料や使用環境により最適化される。
【0042】
菱形形状保持部材8は、着用時に菱形状となる蟻先の2辺を支える部材であり、その形状は三角形の上頂点からやや下がった位置で頂点を形成する左右鋭角な形状を有している。この部材は、縫腋下衣2の素材やその透け感に応じて、針金、木材(竹)などを使用することも可能である。現状では、この形状をした樹脂板を差し込んで使用している。
【0043】
図5に縫腋下衣2の着用方法が示されている。
図5(a)に示すように、使用者は縫腋下衣2の上前と下前を合わせ、打ち合わせ固定部17を打ち合わせ固定部20に、打ち合わせ固定部18を打ち合わせ固定部21に、打ち合わせ固定部19を打ち合わせ固定部22にそれぞれ固定する。さらに、使用者は腹側の腰紐または袴腰帯に接続部5を、背側の腰紐または袴腰帯に接続部6をそれぞれ差し込んで接続する(
図4参照)。なお、腰紐または袴腰帯の選択は袍の下に着用する装束により異なる。下襲または半臂を着用の場合、腰紐に接続部を差し込んで接続し、単着用の場合は袴腰帯に接続部を差し込み接続する。
【0044】
図5(b)に示すとおり、使用者は両脇の脇固定部23、26を前方に折り込み、それぞれ対応する脇固定部24、25に固定する。これにより、
図5(c)に示すとおり、使用者の胴回りに合わせて縫腋下衣2がしっかりと固定され、着用される。
【0045】
その後、使用者は蟻先ALの菱形状を保持するために菱形形状保持部材8を蟻先ALの内側に差し込む。
【0046】
図6を用いて縫腋上衣1の着装方法を説明する。
図6(a)に示すように、使用者は縫腋上衣1に袖を通し、首回りを固定した後、裾固定部11、12を固定する。さらに、端固定部13を前身頃裏中央の端固定部14に、端固定部15を前身頃裏中央の端固定部16に、それぞれ固定し、かいこみ部を形成する。
【0047】
抱え紐や、石帯、又は、それらに準じるものを胴背面にあてがい、両端の紐をかいこみ部内側の腹前で結ぶ。
【0048】
図6(b)に示すように、使用者は、
図6(a)により形成したかいこみ部裾を、
図7に示す様に、前記抱え紐や、石帯紐、又は、それらに準ずるものに、中央、右、左の順に、巻き付ける様に込み入れる。このとき、かいこみの下辺位置は臍から手指3本幅下の丹田が望ましい。
【0049】
図6(c)に示すように、使用者は、中央、右、左の順に込み入れたかいこみ部下辺が弧を描くように整え、かいこみ部Kを形成する。
闕腋上衣3は、実施例1の縫腋上衣1と異なり、上衣後身頃に腰から下に長い裾(きょ)KYを備える。使用者は闕腋上衣3を肩に羽織った後、闕腋下衣4を胴前面に覆うようにあてがうことによって、二部式袍10を着用する。なお、着用後の二部式袍10は、従来の袍におけるかいこみと同様の外観を有するかいこみKが形成される。
闕腋上衣3のかいこみ形成部11から16は、前身頃の裾を固定する裾固定部11、12、および前身頃の両脇裾を前身頃裏の中央に向けて斜形状に固定する端固定部13から16を含む。ここで、闕腋上衣3は前身頃に着用時の正面に位置する上衣上前部TLと上衣下前部TRを有する。
裾固定部11は前身頃の裏の裾中央部、つまり上衣上前部TLの裏側に配置される。裾固定部12は前身頃の表の裾中央部、つまり上衣下前部TRの表側に配置される。なお、裾固定部11と裾固定部12はそれぞれ一対を成し、着用時に対向する位置に配置される。
端固定部13、15は、着用時、前身頃の裾の裏の左右の端に配置される。端固定部14、16は、前身頃の裏の中央部、つまり、上衣下前部の裏、裾から上に所定距離だけ離れた位置に配置される。
腰接続部7は、着用時、闕腋下衣4が胴の中央に位置されるよう闕腋下衣4の下前部の内側上辺に沿って配置され、着用時に腹側の、腰紐、又は、袴腰帯に差し込み接続される。
その他の実施形態では、特に、闕腋上衣3の後身頃を腰の位置で区切り、それを独立した裾(きょ)KYとして、縫腋上衣1や闕腋下衣4と組み合わせることが可能である。また、闕腋下衣4とこの独立した裾(きょ)KYを一体化させて組み合わせることも可能な選択肢として提供できる。縫腋上衣1、闕腋上衣3、縫腋下衣2、及び闕腋下衣4は、それぞれの形状を部分的に調整することで、さまざまな組み合わせを可能にする。