(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004793
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用の電解液及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/035 20060101AFI20250108BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20250108BHJP
H01G 9/145 20060101ALI20250108BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
H01G9/035
H01G9/028 G
H01G9/145
H01G9/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104622
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000236953
【氏名又は名称】富山薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】秋本 啓太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝拓
(57)【要約】
【課題】本発明は、車載用のAV機器や電装機器などにおける、最高使用温度が85~150℃となどの過酷な高温環境下においても、長期にわたって、低いESRを維持できる電解コンデンサ用の電解液及びこの電解液を用いた電解コンデンサの提供を課題とする。
【解決手段】酸および/または酸成分と塩基成分とからなる塩である溶質と、有機溶媒と、フェノチアジンおよび/またはフェノチアジン誘導体とを含有する、電解液であり、該電解液と、陽極箔と、陰極箔と、固体電解質層を有するコンデンサ素子と、該コンデンサ素子に含浸された電解液とを、外装容器内に有し、該陽極箔は、表面に誘電体酸化被膜層を有し、固体電解質層は、ドーパント成分をドープした導電性ポリマーからなる固体電解質を含有する電解コンデンサ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解コンデンサ用の電解液であって、
該電解コンデンサは、陽極箔と、陰極箔と、固体電解質層を有するコンデンサ素子と、該コンデンサ素子に含浸された電解液とを、外装容器内に有し、
該陽極箔は、表面に誘電体酸化被膜層を有し、
該固体電解質層は、ドーパント成分をドープした導電性ポリマーからなる固体電解質を含有し、
該電解液は、溶質と、有機溶媒と、フェノチアジンおよび/またはフェノチアジン誘導体とを含有し、
該溶質は、酸、および/または、酸成分と塩基成分とからなる塩である、
電解コンデンサ用の電解液。
【請求項2】
前記溶質の前記電解液中の含有量が、0.1質量%以上、40質量%以下であり、
前記フェノチアジンおよび/または前記フェノチアジン誘導体の前記電解液中の含有量が、0.01質量%以上、3質量%以下である、
請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記有機溶媒が、グリコール系化合物を含む、請求項1に記載の電解液。
【請求項4】
さらに、酸化防止剤を含有する、請求項1に記載の電解液。
【請求項5】
さらに、ニトロ化合物を含有する、請求項1に記載の電解液。
【請求項6】
前記溶質が、芳香族カルボン酸および/またはその塩を含有する、請求項1に記載の電解液。
【請求項7】
前記溶質が、フタル酸、安息香酸、ボロジサリチル酸、およびこれらの塩からなる群から選択される、少なくとも1種以上を含有する、請求項1に記載の電解液。
【請求項8】
前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される、少なくとも1種以上を含有する、請求項1に記載の電解液。
【請求項9】
前記ドーパント成分が、ポリスチレンスルホン酸を含有する、請求項1に記載の電解液。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の電解液を用いて作製された、電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酷な環境下でも、長期にわたって低ESRなどを維持できる高性能な電解コンデンサ用の電解液及びこの電解液を用いて作製した電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、AV機器や車載用の電装機器などにおいては、高信頼化の要望がますます高まっている、そこで使用される電解コンデンサ用においても、小型化、大容量化、高周波領域における低等価直列抵抗化(以下、低ESR化ともいう。)などの性能の向上が必要になっている。
【0003】
特に、電子機器の高周波化に伴い、電解コンデンサにおいても、高周波領域での等価直列抵抗(以下、ESRという)特性に優れた大容量の電解コンデンサが求められてきている。最近では、このような高周波領域におけるESRを低減するために、電解質として従来の駆動用電解液よりも電気伝導度の高い導電性ポリマー等の固体電解質、又は固体電解質と電解液とを併用した電解コンデンサが検討され製品化されている。
【0004】
具体的には、ポリピロール、ポリチフェン、ポリアニリンなどの導電性ポリマーからなる固体電解質とともに、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸、サリチル酸などのアンモニウム塩、アミン塩や、サリチル酸とホウ酸の複合化合物であるボロジサリチル酸のアンモニウム、アミン塩などを含有し、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、エチレングリコールなどの有機溶媒からなる電解液を含む電解コンデンサが使用されている。かかる電解コンデンサは、大容量を有し、かつ漏れ電流も小さいことから、高特性を有する電解コンデンサとして知られている(特許文献1~3参照)。
【0005】
特に、特許文献1には、固体電解質層と駆動用電解液を備えた電解コンデンサが記載されており、駆動用電解液が有機カルボン酸と無機酸を有し、塩基成分が三級アミンであり、添加剤としてピロガロールなどの酸化防止剤が用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5052746号公報
【特許文献2】特開2015-165550号公報
【特許文献3】特許第5305569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、車載用の電装機器などに使用される電解コンデンサに対しては、最高使用温度が85~150℃等の過酷な高温環境下において、しかも、長期にわたって、低いESRなどの高性能を維持できる特性が求められている。
本発明は、特に、車載用のAV機器や電装機器などにおける、最高使用温度が85~150℃となどの過酷な高温環境下においても、長期にわたって、低いESRを維持できる電解コンデンサ用の電解液及びこの電解液を用いた電解コンデンサの提供を目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々研究を重ねたところ、固体電解質層と電解液を備えた電解コンデンサにおいて、フェノチアジンまたはフェノチアジン誘導体を含有する電解液が上記の目的を達成し得ることを見出した。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づくものであり、下記の態様を有する。
1.電解コンデンサ用の電解液であって、
該電解コンデンサは、陽極箔と、陰極箔と、固体電解質層を有するコンデンサ素子と、該コンデンサ素子に含浸された電解液とを、外装容器内に有し、
該陽極箔は、表面に誘電体酸化被膜層を有し、
該固体電解質層は、ドーパント成分をドープした導電性ポリマーからなる固体電解質を含有し、
該電解液は、溶質と、有機溶媒と、フェノチアジンおよび/またはフェノチアジン誘導体とを含有し、
該溶質は、酸、および/または、酸成分と塩基成分とからなる塩である、
電解コンデンサ用の電解液。
2.前記溶質の前記電解液中の含有量が、0.1質量%以上、40質量%以下であり、
前記フェノチアジンおよび/または前記フェノチアジン誘導体の前記電解液中の含有量が、0.01質量%以上、3質量%以下である、
上記1に記載の電解液。
3.前記有機溶媒が、グリコール系化合物を含む、上記1または2に記載の電解液。
4.さらに、酸化防止剤を含有する、上記1~3の何れかに記載の電解液。
5.さらに、ニトロ化合物を含有する、上記1~4の何れかに記載の電解液。
6.前記溶質が、芳香族カルボン酸および/またはその塩を含有する、上記1~5の何れかに記載の電解液。
7.前記溶質が、フタル酸、安息香酸、ボロジサリチル酸、およびこれらの塩からなる群から選択される、少なくとも1種以上を含有する、上記1~6の何れかに記載の電解液。8.前記導電性ポリマーが、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、およびこれらの誘導体からなる群から選択される、少なくとも1種以上を含有する、上記1~7の何れかに記載の電解液。
9.前記ドーパント成分が、ポリスチレンスルホン酸を含有する、上記1~8の何れかに記載の電解液。
10.上記1~9の何れかに記載の電解液を用いて作製された、電解コンデンサ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、最高使用温度が85~150℃等の過酷な高温環境下においても、長期にわたって、低いESRを維持できる電解コンデンサ用の電解液、および電解コンデンサが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<電解コンデンサ>
本発明の電解コンデンサは、陽極箔と、陰極箔と、固体電解質層を有するコンデンサ素子と、該コンデンサ素子に含浸された電解液とを外装容器内に有する。
本願発明の電解コンデンサは、長期にわたって高温条件において低ESRを維持することができ、AV機器、携帯電話、ノートパソコンなどの各種民生用機器用電源、車載用の電装機器、産業機器などにおいて多用される電解コンデンサとして広く使用することができる。
【0012】
[固体電解質層]
固体電解質層は、固体電解質を含有する層である。
該固体電解質層は、ドーパント成分をドープした導電性ポリマーからなる固体電解質を含有することが好ましい、
【0013】
(導電性ポリマー)
導電性ポリマーの具定例としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン又はそれらの誘導体が挙げられ、これらからなる群から選択される、少なくとも一種以上を含有することが好ましい。
【0014】
本発明で使用する固体電解質は、上記ドーパント成分の存在下で導電性ポリマーのモノマーを化学酸化重合又は電解酸化重合することによって得ることができる。もしくは、化学酸化重合によって微粒子状に形成された導電性ポリマーを水等の分散媒に分散した分散液又は溶解した溶液を接触させることで得ることができる。
また、上記化学酸化重合又は電解酸化重合は、上記ドーパント成分及び導電性ポリマーのモノマーの一部又は全てを、化学酸化ドープが起こりうる官能基を有するモノマーに置き換えても良い。
【0015】
導電性ポリマーのモノマーの具体例としては、3,4-エチレンジオキシチオフェン、メチル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、エチル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、プロピル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、3,4-プロピレンジオキシチオフェン、メチル-3,4-プロピレンジオキシチオフェン、エチル-3,4-プロピレンジオキシチオフェン、プロピル-3,4-プロピレンジオキシチオフェン、3,4-エチレンジオキシフラン、メチル-3,4-エチレンジオキシフラン、エチル-3,4-エチレンジオキシフラン、プロピル-3,4-エチレンジオキシフラン、3,4-プロピレンジオキシフラン、メチル-3,4-プロピレンジオキシフラン、エチル-3,4-プロピレンジオキシフラン、プロピル-3,4-プロピレンジオキシフラン、3,4-エチレンジチアチオフェン、メチル-3,4-エチレンジチアチオフェン、エチル-3,4-エチレンジチアチオフェン、プロピル-3,4-エチレンジチアチオフェン、3,4-プロピレンジチアチオフェン、メチル-3,4-プロピレンジチアチオフェン、エチル-3,4-プロピレンジチアチオフェン、プロピル-3,4-プロピレンジチアチオフェン等が挙げられる。
導電性ポリマーは、これらの群からなるモノマーの1種または2種以上を(共)重合させて得ることができる。
【0016】
上記の中でも、電解コンデンサのESRが低くなるという点で、3,4-エチレンジオキシチオフェン、メチル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、エチル-3,4-エチレンジオキシチオフェンが好ましい。
【0017】
(ドーパント成分)
上記ドーパント成分は、高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基を有した化合物であればよい。
該官能基の具体例としては、硫酸エステル基、リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が好ましい。これらの中でも、ドープ効果の点より、硫酸エステル基、カルボキシル基、スルホ基がより好ましく、スルホ基が更に好ましい。
【0018】
ドーパント成分の具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、およびこれらの金属塩等が挙げられる。これらは単独の重合体であっても、2種類以上の共重合体であってもよい。これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸が好ましい。
【0019】
上記化学酸化ドープが起こりうる官能基を有するモノマーの具体例としては、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸ナトリウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸リチウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸カリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸ナトリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸アンモニウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム等が挙げられる。
【0020】
(分散媒)
上記分散媒としては、水又は有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、セロソルブ類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等を用いることができる。
本発明の導電性ポリマー分散液又は溶液には、高沸点有機溶媒を含有させてもよい。高沸点有機溶媒の中でも、特に沸点が150~250℃である高沸点有機溶媒が好ましい。
【0021】
導電性ポリマー分散液又は溶液における有機溶媒の含有量は、1~20質量%が好ましく、5~15質量%が特に好ましい。有機溶媒の含有量が1質量%未満の場合には、表面が均一な導電性ポリマーを含有する固体電解質層を形成し難くなる問題があり、20質量%超の場合には、溶媒を除去する乾燥工程に長時間を要し易くなる。
【0022】
また、導電性ポリマー分散液又は溶液には、成膜性、膜強度を調整するために、バインダ樹脂、界面活性剤、アルカリ化合物を含有させてもよい。導電性ポリマー分散液は、導電性ポリマーが分散媒に分散しているものであり、導電性ポリマーの一部が分散媒に溶解していてもよい。
【0023】
(高沸点有機溶媒)
該高沸点有機溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。これらの中でも特にエチレングリコール又はγ-ブチロラクトンが、表面が均一な導電性ポリマーを含有する固体電解質層を形成できる点でより好ましい。
【0024】
[陽極箔及び陰極箔]
電解コンデンサに用いる陽極及び陰極は、弁作用金属を含有することが好ましい。
弁作用金属の具体例としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ及びチタンが挙げられ、これらからなる群より選ばれる1種を含有することが好ましく、アルミニウムを含有することがより好ましい。
また、電解コンデンサは、用いる陽極及び陰極の形状により、チップ型又は巻回型に分類され、弁作用金属は、通常、焼結体又は箔の形状で用いられるが、箔の形状、すなわち、陽極箔及び陰極箔として用いられることが好ましい。
陽極箔は、表面に、弁作用金属の酸化物からなる、誘電性酸化被膜層を有することが好ましい。
【0025】
[電解コンデンサの製造方法]
本発明の電解コンデンサの製造方法は、固体電解質層の形成工程を含む。
固体電解質層は、導電性ポリマーの分散液又は溶液に、コンデンサ素子を浸漬などの手段により接触させ、溶媒を乾燥することにより形成することができる。あるいは、コンデンサ素子を導電性ポリマーのモノマー溶液に浸漬し、次いで、化学重合や電解重合により固体電解質層を形成することもできる。
次いで、電解液は、電解液を固体電解質層が形成されたコンデンサ素子に浸漬などの手段により接触させることにより、含有させることができる。または予め電解液を充填させた外装容器に、固体電解質層が形成されたコンデンサ素子を外装容器に挿入することで、コンデンサ素子に含有させることができる。
【0026】
<電解液>
本発明の電解液は、溶質と、有機溶媒と、フェノチアジンおよび/またはフェノチアジン誘導体とを含有する。
【0027】
本発明の電解液中の溶質の含有量は、0.1~40質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、5~15質量%が更に好ましい。該含有量が上記範囲よりも少ない場合には、十分な陽極の誘電体酸化被膜層の修復効果が得られにくく、一方、上記範囲よりも多い場合には、ESRが上昇しやすくなる。
【0028】
本発明の電解液中の、フェノチアジンおよび/またはフェノチアジン誘導体の含有量は、0.01質量%以上、3質量%以下が好ましく、0.05質量%以上、2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上、1質量%以下が更に好ましい。該含有量が0.01質量%未満の場合には、十分な低ESR維持の効果が得られにくく、一方、3質量%超の場合には、フェノチアジンおよび/またはフェノチアジン誘導体が溶解しきらない虞があり、高温環境下において静電容量の低下が大きくなる。
【0029】
本発明の電解液に含有される水分量は、陽極の誘電体酸化被膜の修復を補助する為には、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。
また、リフローはんだ付け等の200℃以上の熱がかかった際の、電解コンデンサーの水蒸気による内圧上昇を抑える為には、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。
【0030】
更に、本発明の電解液のpHは、3~7が好ましく、4.5~6.5がより好ましく、4~6が更に好ましい。pHが上記範囲であれば、高温環境下で長期にわたって低ESRを維持し易くなる。
【0031】
[溶質]
本発明の電解液に含有される溶質は、酸および/または塩を含有する。塩は、酸成分と塩基成分とからなる化合物である。
上記の酸または酸成分としては、有機酸または無機酸を用いることができる。
有機酸は、芳香族または脂肪族であってよく、カルボキシル基、スルホニル基、ヒドロキシ基、チオール基、エノール基等の何れを有する酸であってもよい。
【0032】
有機酸の具体例としては、芳香族カルボン酸(フタル酸、安息香酸、サリチル酸、ボロジサリチル酸等)、酒石酸、グリコール酸、アジピン酸、2-ブチルオクタン二酸等が挙げられる。
これらの有機酸の中でも、芳香族カルボン酸が好ましく、芳香族カルボン酸の中でも、フタル酸、安息香酸、ボロジサリチル酸がより好ましい。
【0033】
無機酸の具体例としては、ホウ酸、りん酸、りん酸モノエステル、りん酸ジエステル、スルホン酸類等が挙げられる。
【0034】
また、有機酸、無機酸は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよく、複合化合物を形成していてもよい。複合化合物の例としては、ボロジサリチル酸、ボロジグリコール酸等が挙げられる。
【0035】
酸成分と塩基成分とからなる塩の酸成分には、上記の有機酸および/または無機酸を用いることができる。
【0036】
塩基成分としては、アンモニア、又は1~4級アミン、アミジン化合物などが挙げられる。中でもアンモニア、1~3級アミンが好ましく、3級アミンが特に好ましい。3級アミンとしては、トリアルキルアミン類(トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルn-プロピルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、メチルエチルn-プロピルアミン、メチルエチルイソプロピルアミン、ジエチルn-プロピルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、トリn-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn-ブチルアミン、トリtert-ブチルアミンなど)、フェニル基含有アミン(ジメチルフェニルアミン、メチルエチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミンなど)が挙げられる。
【0037】
上記の中でもトリアルキルアミン類が好ましく、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン及びトリエチルアミンからなる群より選ばれる1種以上を含むことが、より好ましい。
【0038】
塩の組み合わせとしては、芳香族カルボン酸、ホウ酸、りん酸、りん酸モノエステル、りん酸ジエステル、スルホン酸類からなる群から選ばれる一種以上の酸成分と、1~4級アミンの塩基成分とからなる塩が好ましく、塩基成分はトリアルキルアミン類である場合がより好ましい。また、酸成分の芳香族カルボン酸は、フタル酸、安息香酸、ボロジサリチル酸からなる群から選ばれる一種以上がより好ましい。
【0039】
具体的な塩としては、安息香酸のアンモニウム塩、安息香酸のジメチルアミン塩、安息香酸のジメチルエチルアミン塩、安息香酸の1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム塩、フタル酸のアンモニウム塩、フタル酸のジメチルアミン塩、フタル酸のジメチルエチルアミン塩、フタル酸の1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム塩、アゼライン酸のアンモニウム塩、アゼライン酸のジメチルアミン塩、アゼライン酸のジメチルエチルアミン塩、アゼライン酸の1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム塩、ボロジサリチル酸のアンモニウム塩、ボロジサリチル酸のジメチルアミン塩、ボロジサリチル酸のジメチルエチルアミン塩、ボロジサリチル酸の1,2,3,4-テトラメチルイミダ
ゾリニウム塩等が挙げられ、これらの中でも、特に安息香酸のジメチルエチルアミン塩、フタル酸のジメチルエチルアミン塩、ボロジサリチル酸のジメチルエチルアミン塩が好ましい。
【0040】
[有機溶媒]
電解液に用いる有機溶媒には、プロトン性極性溶媒および/又は非プロトン性極性溶媒を用いることができ、単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0041】
プロトン性極性溶媒の具体例としては、一価アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール等)、ポリアルキレングリコール類(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等が挙げられる。
【0042】
非プロトン性の極性溶媒の具体例としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、アミド系(N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、スルホラン系(スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン等)、鎖状スルホン系(ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン)、環状アミド系(N-メチル-2-ピロリドン等)、カーボネイト類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、イソブチレンカーボネート等)、ニトリル系(アセトニトリル等)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシド等)、2-イミダゾリジノン系〔1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノン(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジ(n-プロピル)-2-イミダゾリジノン等)、1,3,4-トリアルキル-2-イミダゾリジノン(1,3,4-トリメチル-2-イミダゾリジノン等)〕等が挙げられる。
【0043】
電解液に用いる有機溶媒は、上記の中でも、高コンデンサ静電容量を得やすい理由から、スルホラン、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、グリコール系化合物(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール)、ベンジルアルコール及びグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましく、スルホラン又はグリコール系化合物を含有することがより好ましい。
スルホランは低温環境下でのコンデンサのESRを低減する効果が高く、グリコール化合物は上記の中でも揮発性が低く長期間の高温環境下でも電解液量を維持できる。
グリコール系化合物としては、エチレングリコール又はポリエチレングリコールを含有することが更に好ましい。
【0044】
[フェノチアジンおよび/またはフェノチアジン誘導体]
本発明の電解液は、高温環境下で長期にわたって低ESRを維持する為に、フェノチアジンおよび/またはフェノチアジン誘導体を含有することが好ましい。
【0045】
フェノチアジン誘導体の具体例としては、2-メチルフェノチアジン、2-エチルフェノチアジン、2-ヒドロキシフェノチアジン、2-メトキシフェノチアジン、2-エトキシフェノチアジン、2-アセチルフェノチアジン、2-フェニルフェノチアジン、2-シアノフェノチアジン、2-(トリフルオロメチル)フェノチアジン、10-メチルフェノチアジン、10-エチルフェノチアジン、10-ヘキシルフェノチアジン、10-ヒドロ
キシフェノチアジン、10-メトキシフェノチアジン、10-エトキシフェノチアジン、10-アセチルフェノチアジン、10-フェニルフェノチアジン、10-[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]-10H-フェノチアジンなどが挙げられる。
上記の中でも、フェノチアジン、2-メトキシフェノチアジンがより好ましい。
【0046】
[添加剤]
本発明の電解液には、高温環境下で長期にわたって電解コンデンサのESRの上昇を抑えたり、電解コンデンサの寿命性能や抵抗性能などの特性を改善したりする目的で、上記以外の化合物を添加剤として含有することができる。かかる添加剤は、特に限定されるものではない。
添加剤としては、例えば酸化防止剤が挙げられる。
【0047】
(酸化防止剤)
本発明の電解液は、高温環境下で長期にわたってESRの上昇を抑える為に、酸化防止剤を含有することができる。
酸化防止剤の具体例としては、フェノール化合物、アゾ化合物、シラン化合物、キノン化合物などが挙げられる。
上記のフェノール化合物の具体例としては、ヒドロキノン、カテコール、ピロガロール、プロトカテク酸、没食子酸、没食子酸メチル、カテキン、ガレイン、ミリセチン、タンニン酸、2,3,3‘,4,4’,5‘-ヘキサヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒドロキシ基を少なくとも2つ有する芳香族化合物が好ましい。
【0048】
(その他の添加剤)
本発明の電解液には、高温環境下で長期にわたって電解コンデンサのESRの上昇を抑えたり、電解コンデンサの寿命性能や抵抗性能などの特性を改善したりする目的で、酸化防止剤以外にも、種々の化合物からなる添加剤を含有することができる。かかる添加剤は、特に限定されるものではない。
具体的な添加剤としては、リン系化合物(リン酸及びリン酸イソプロピル、リン酸ブチル、リン酸ジイソプロピル、リン酸ジブチル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチルなどのリン酸エステルなど)、ホウ酸、多糖類(マンニット、ソルビットなど)、ホウ酸と多糖類(マンニット、ソルビットなど)との錯化合物、ホウ酸と多価アルコール(エチレングリコール、グリセリンなど)との錯化合物、pH調整化合物(尿素およびジメチル尿素などの尿素化合物や、グリシンおよびβ-アラニンなどのアミノ酸化合物など)、水素ガス吸収効果のあるニトロ化合物(o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、p-ニトロベンジルアルコールなど)等が挙げられる。
【実施例0049】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内での変更が可能である。
【0050】
<導電性ポリマー分散液の調製>
ドーパント成分である、ポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量:50,000)の20質量%水溶液12.2gを、水187.5gに混合して10分間攪拌した。次に、モノマーとしての3,4-エチレンジオキシチオフェン2.04gを投入してさらに15分間攪拌しモノマー溶液を調製した。得られたモノマー溶液は、薄い黄色を呈していた。
上記モノマー溶液に含まれるポリスチレンスルホン酸の量は、モノマー溶液に含まれる3,4-エチレンジオキシチオフェン100質量部に対して119質量部であった。
【0051】
モノマー溶液を攪拌しながら、酸化剤としての硫酸鉄(III)0.012gと、過硫酸アンモニウム4.46gを滴下して、室温下で15時間攪拌して化学酸化重合を行った。このときモノマー溶液は、薄い黄色から濃紺色へ変化した。
【0052】
次いで、得られた反応液に対して、両性イオン交換樹脂(オルガノ社商品名:MB-1、イオン交換形:-H、-OH)を50.1g投入して、2時間攪拌した。これにより、反応溶液のpHは1.15から1.83に変化した。
上記の操作によって、1.3質量%のポリスチレンスルホン酸がドーピングされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を含有する導電性ポリマー分散液を得た。
【0053】
<コンデンサ素子の作製>
表面をエッチング処理した後に化成処理を行って酸化皮膜層を形成し、リード端子を取り付けたアルミニウム陽極箔と、表面をエッチング処理しリード端子を取り付けたアルミニウム陰極箔とをセルロース繊維からなるセパレータ(厚み0.05mm)を介して巻回して、コンデンサ素子を作製した。
【0054】
<電解液の作製およびアルミニウム電解コンデンサの作製・評価>
(実施例1)
上記で得られたコンデンサ素子を、上記導電性ポリマー分散液に浸漬し、コンデンサ素子を引き上げた後溶媒を蒸発させることにより、導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成した。
次いで、溶質として5質量%の安息香酸のジメチルエチルアミン塩、添加剤としてフェノチアジンを0.05質量%、溶媒としてエチレングリコールを含有する電解液を製造した。
電解液中の水分含有量は、微量水分測定装置CA-200(三菱ケミカルアナリテック社製)を用い、カールフィッシャー電量滴定法により測定した。
そして、この電解液をこのコンデンサ素子に含浸した。
次いで、コンデンサ素子を有底筒状のアルミニウムケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、カーリング加工することにより封止した。
その後、105℃の条件でエージング処理を施し、封止後の外形寸法直径10mm、高さ10mmを有する円筒形で、定格電圧が35Vの、アルミニウム電解コンデンサを得た。
【0055】
(実施例2)
電解液のフェノチアジンの含有量を0.1質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0056】
(実施例3)
電解液のフェノチアジンの含有量を1質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0057】
(実施例4)
電解液のフェノチアジンの含有量を3質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0058】
(実施例5)
電解液の溶媒を分子量300のポリエチレングリコール1(PEG300)に変更したこと以外は、実施例1と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0059】
(実施例6)
電解液のフェノチアジンの含有量を0.1質量%に変更したこと以外は、実施例5と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0060】
(実施例7)
電解液のフェノチアジンの含有量を1質量%に変更したこと以外は、実施例5と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0061】
(実施例8)
電解液の溶質をフタル酸のジメチルエチルアミン塩に変更したこと以外は、実施例2と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0062】
(実施例9)
電解液の溶質をボロジサリチル酸のジメチルエチルアミン塩に変更したこと以外は、実施例2と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0063】
(実施例10)
電解液のフェノチアジンを、2-メトキシフェノチアジンに変更したこと以外は、実施例2と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0064】
(実施例11)
p-ニトロベンジルアルコールを1質量%追加したこと以外は、実施例2と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0065】
(実施例12)
ピロガロールを0.1質量%追加したこと以外は、実施例2と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0066】
(実施例13)
尿素を0.5質量%追加したこと以外は、実施例2と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0067】
(実施例14)
ジメチル尿素を0.5質量%追加したこと以外は、実施例2と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0068】
(実施例15)
グリシンを0.5質量%追加したこと以外は、実施例2と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0069】
(実施例16)
β-アラニンを0.5質量%追加したこと以外は、実施例2と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0070】
(比較例1)
電解液にフェノチアジンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0071】
(比較例2)
電解液の溶媒をポリエチレングリコール分子量300(PEG300)に変更したこと
以外は、比較例1と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0072】
(比較例3)
電解液の溶質をフタル酸のジメチルエチルアミン塩に変更したこと以外は、比較例1と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0073】
(比較例4)
電解液の溶質をボロジサリチル酸のジメチルエチルアミン塩に変更したこと以外は、比較例1と同様に操作してアルミ電解コンデンサを作製した。
【0074】
<評価>
作製したアルミ電解コンデンサに対して、150℃環境下で1000時間にわたる定格電圧35Vの負荷試験を行い、キーサイト・テクノロジー製E4980AプレシジョンLCRメータを用いて、電解コンデンサの周波数100kHzにおけるESRの測定を行った。その結果を表1~表4に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
<評価結果まとめ>
本願発明の電解液を用いた全実施例のアルミ電解コンデンサは、150℃の高温環境下において、全比較例のアルミ電解コンデンサよりも、1000時間にわたって低ESRを維持した。
本発明の電解液は、AV機器、携帯電話、ノートパソコンなどの各種民生用機器用電源、車載用の電装機器、産業機器などに多用される電解コンデンサ用の電解液として広く使用される。