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  • 特開-輸送管の保護カバーおよび保護方法 図1
  • 特開-輸送管の保護カバーおよび保護方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004796
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】輸送管の保護カバーおよび保護方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20250108BHJP
   E04G 21/04 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
F16L57/00 A
E04G21/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104625
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】523239088
【氏名又は名称】株式会社ESA
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】豊田 明彦
【テーマコード(参考)】
2E172
3H024
【Fターム(参考)】
2E172AA05
3H024AA04
3H024AB01
3H024AC05
(57)【要約】
【課題】 輸送管の損傷の早期発見を可能にしつつ、輸送管が破裂した際のコンクリートの飛散を抑制することができる輸送管の保護カバーを提供する。
【解決手段】 コンクリートポンプ車の輸送管10を被覆する保護カバー1であって、輸送管10に巻き付けられる浸透層2と、浸透層2を覆う透明または半透明のカバー層4とを備え、浸透層2は、カバー層4と反対側から吸収した生コンクリートの水分がカバー層4まで浸透する。浸透層2は、不織布からなることが好ましい。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートポンプ車の輸送管を被覆する保護カバーであって、
輸送管に巻き付けられる浸透層と、前記浸透層を覆う透明または半透明のカバー層とを備え、
前記浸透層は、前記カバー層と反対側から吸収した生コンクリートの水分が前記カバー層まで浸透する輸送管の保護カバー。
【請求項2】
前記浸透層は、不織布からなる請求項1に記載の輸送管の保護カバー。
【請求項3】
前記浸透層およびカバー層を輸送管に巻き付けた状態で固定する固定ベルトを更に備え、
前記カバー層は、周方向の終端に厚肉の補強部を備える請求項1に記載の輸送管の保護カバー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の輸送管の保護カバーによりコンクリートポンプ車の輸送管を被覆する輸送管の保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートポンプ車の輸送管の保護カバーおよび保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートポンプ車から輸送管により生コンクリートを圧送して打設する際に輸送管が破裂すると、生コンクリートが周囲に飛散するおそれがあることから、輸送管を保護カバーで被覆することが従来から検討されている。例えば、特許文献1には、軟質性の合成樹脂材料によりチューブ状に成形して輸送管の外周に被せることができる輸送管カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭54-109324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された輸送管カバーは、単層のカバーであるため強度が不足し易いだけでなく、不透明な材料からなるため輸送管に亀裂やひび等が生じても目視することができず、破裂の前兆を的確に把握することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、輸送管の損傷の早期発見を可能にしつつ、輸送管が破裂した際のコンクリートの飛散を抑制することができる輸送管の保護カバーおよび保護方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記目的は、コンクリートポンプ車の輸送管を被覆する保護カバーであって、輸送管に巻き付けられる浸透層と、前記浸透層を覆う透明または半透明のカバー層とを備え、前記浸透層は、前記カバー層と反対側から吸収した生コンクリートの水分が前記カバー層まで浸透する輸送管の保護カバーにより達成される。
【0007】
この輸送管の保護カバーにおいて、前記浸透層は、不織布からなることが好ましい。
【0008】
更に、前記浸透層およびカバー層を輸送管に巻き付けた状態で固定する固定ベルトを備えることが好ましく、前記カバー層は、周方向の終端に厚肉の補強部を備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明の前記目的は、上述した輸送管の保護カバーによりコンクリートポンプ車の輸送管を被覆する輸送管の保護方法により達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の輸送管の保護カバーおよび保護方法によれば、輸送管の損傷の早期発見を可能にしつつ、輸送管が破裂した際のコンクリートの飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る輸送管の保護カバーの側面図である。
図2図1に示す輸送管の保護カバーを輸送管に巻き付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る輸送管の保護カバー(以下、単に「保護カバー」という)の側面図である。また、図2は、図1に示す保護カバーをコンクリートポンプ車の輸送管に巻き付けた状態を示す断面図である。図1および図2に示すように、保護カバー1は、浸透層2、カバー層4および固定ベルト6を備えており、浸透層2およびカバー層4によって輸送管10を被覆する。
【0013】
浸透層2は、輸送管10の外周面に巻き付けられて、鉄パイプである輸送管10から漏出した生コンクリートの水分を、後述するカバー層4とは反対側の面から吸収して、カバー層4まで厚み方向全体に浸透させる層である。浸透層2は、例えば、耐衝撃性、クッション性、耐久性、保形性に優れるスポンジ状の多孔質体等により形成することができる。
【0014】
本実施形態の浸透層2は、繊維がランダムに配向された不織布によって形成されており、生コンクリートの水分を、厚み方向および面内方向に含浸させることができる。不織布の材料である繊維は、ポリエステル系やアクリル系等の有機系繊維の他に、ガラス繊維やセラミック繊維等の無機系繊維であってもよい。浸透層2の厚みは特に限定されないが、大きすぎると輸送管10の被覆や水分の浸透が困難になり易い一方、小さすぎると強度が不十分になり易いことから、浸透層2の厚みを5~15mm程度にすることが好ましい。浸透層2の好ましい具体例として、日本バイリーン株式会社製のエアフィルタ(型式:PS/300N)を挙げることができる。浸透層2の巻き付け方向の長さは、輸送管10の外周面の周方向長さに略一致させることが好ましい。
【0015】
カバー層4は、透明な合成樹脂からなる層であり、可撓性、強度、耐久性に優れることが好ましい。カバー層4は、例えば、ポリカーボネート樹脂からなる厚みが0.5mm程度の透明シートにより形成することができる。カバー層4の巻き付け方向の一端部には、浸透層2の巻き付け方向の一端部が接着等により固定された固定部3が形成されている。カバー層4は、浸透層2を輸送管10に巻き付けた後に、この浸透層2の外側に巻き付けることが可能であり、輸送管10に対する保護カバー1の取り付けを容易に行うことができる。保護カバー1は、コンクリートポンプ車に設置後の輸送管10に取り付けることも可能であるが、コンクリートポンプ車に設置する前の輸送管10に保護カバー1を取り付けた後、保護カバー1付きの輸送管10をコンクリートポンプ車に設置することで、設置作業を容易に効率良く行うことができる。
【0016】
カバー層4の巻き付け方向の長さは、浸透層2に巻き付けた際に重なり代が生じるように、浸透層2の巻き付け方向長さよりも長く設定されている。カバー層4の巻き付け方向の他端部には、カバー層4の他の部分よりも厚肉の補強部4aが形成されている。カバー層4は、生コンクリートが浸透層2に含浸した様子を外部から視認可能であればよく、透明以外に半透明であってもよい。カバー層4の巻き付け方向の中央付近には、面ファスナーからなる固定部4bが設けられている。
【0017】
固定ベルト6は、輸送管10に巻き付けられた浸透層2およびカバー層4を固定するためのベルトである。固定ベルト6の一方面には、面ファスナーからなる固定面6aが形成されている。固定ベルト6は、巻き付け方向の一端部をカバー層4の固定部4bに固定し、カバー層4に沿って巻き付けて他端部をカバー層4の固定部4bに固定することで、浸透層2およびカバー層4を輸送管10に巻き付けた状態で固定することができる。固定ベルト6による浸透層2およびカバー層4の固定は、面ファスナーを使用する以外に、バックルやスナップボタン等の着脱可能な他の固定手段を使用してもよい。
【0018】
上記の構成を備える保護カバー1は、1または複数を用いて輸送管10を被覆することにより、浸透層2およびカバー層4の二層構造によって輸送管10を高強度で保護することができるので、輸送管が破裂した際のコンクリートの飛散や被害の拡大を防止することができる。また、夏場の高温時や冬場の低温時においても、生コンクリートの品質を良好に維持する効果を期待することができる。
【0019】
輸送管10に亀裂やひびが生じて生コンクリートが漏出すると、生コンクリートの水分が浸透層2に浸透してカバー層4まで広がるため、漏出の有無を目視により容易に把握することができる。したがって、輸送管10の点検や保守に際して保護カバー1を取り外す必要がないため、作業を迅速容易に行うことができ、輸送管10の損傷の早期発見が可能である。
【0020】
また、固定ベルト6によって、浸透層2およびカバー層4を輸送管10に巻き付けた状態で固定することにより、保護カバー1を輸送管10にスマートに密着させることができるので、美観を良好に維持しつつ、コンクリートポンプ車の走行中や作業中の空気抵抗を受け難くすることが可能であり、例えば、ブーム式のコンクリートポンプ車による高所作業時の安全性を向上させることができる。カバー層4は、巻き付け方向に沿った周方向の終端に厚肉の補強部4aを備えているため、固定ベルト6を締め付けると、補強部4aによって、浸透層2およびカバー層4を輸送管10に確実に押さえ付けることができる。
【0021】
浸透層2およびカバー層4は、耐久性が高いものを使用することで再利用が可能であり、これによって環境負荷の軽減を図ることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 保護カバー
2 浸透層
4 カバー層
6 固定ベルト
10 輸送管
図1
図2