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特開2025-4797プログラム、情報処理方法及び情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004797
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/20 20180101AFI20250108BHJP
【FI】
G16H50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104626
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】522504215
【氏名又は名称】一般社団法人気道疾患研究会
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山本 一道
(72)【発明者】
【氏名】ムハッマド・ワッヌース
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】肺機能についての新しい概念の診断基準を提供可能なプログラム、情報処理方法及び情報処理システム等を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、プログラムが提供される。このプログラムは、取得ステップと、推定ステップと、生成ステップとをコンピュータに実行させるように構成される。取得ステップでは、患者の肺機能に関する第1肺機能情報を取得する。推定ステップでは、第1肺機能情報と、所定期間内に予め取得された肺機能に関する第2肺機能情報と、予測モデルとに基づいて、肺機能の時系列推移に関するパラメータを推定する。生成ステップでは、第1肺機能情報と、第2肺機能情報と、パラメータとの関係を示す情報である第1視覚情報を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムであって、
取得ステップと、推定ステップと、生成ステップとをコンピュータに実行させるように構成され、
前記取得ステップでは、患者の肺機能に関する第1肺機能情報を取得し、
前記推定ステップでは、前記第1肺機能情報と、所定期間内に予め取得された前記肺機能に関する第2肺機能情報と、予測モデルとに基づいて、前記肺機能の時系列推移に関するパラメータを推定し、
前記生成ステップでは、前記第1肺機能情報と、前記第2肺機能情報と、前記パラメータとの関係を示す情報である第1視覚情報を生成する、
プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
記憶制御ステップをさらに備え、
前記推定ステップでは、前記第1肺機能情報と、前記パラメータとに基づいて、前記肺機能における異常の有無を推定し、
前記記憶制御ステップでは、前記異常があると推定された場合、前記第1肺機能情報が前記患者から取得された時間と、前記異常があることとを記憶させるように制御し、
前記時間は、前記第1肺機能情報に紐付けられており、
前記生成ステップでは、所定期間における前記記憶された回数が所定回数に到達した場合、前記異常を示す情報である第2視覚情報を生成する、
プログラム。
【請求項3】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記推定ステップでは、前記第1肺機能情報と、前記第2肺機能情報と、前記パラメータとに基づいて、呼吸器疾患を鑑別し、
前記生成ステップでは、前記鑑別された結果を示す情報である第3視覚情報を生成する、
プログラム。
【請求項4】
請求項3に記載のプログラムにおいて、
前記呼吸器疾患は、肺炎、急性拒絶反応、及び慢性拒絶反応の少なくとも1つである、
プログラム。
【請求項5】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記推定ステップでは、前記第1肺機能情報における1秒量のデータと、前記第2肺機能情報における1秒量のデータと、前記予測モデルとに基づいて、前記パラメータを推定する、
プログラム。
【請求項6】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記推定ステップでは、前記第1肺機能情報における6秒量のデータと、前記第2肺機能情報における6秒量のデータと、前記予測モデルとに基づいて、前記パラメータを推定する、
プログラム。
【請求項7】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記予測モデルは、時系列モデルである、
プログラム。
【請求項8】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記予測モデルは、自己回帰和分移動平均モデルである、
プログラム。
【請求項9】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記第1肺機能情報及び前記第2肺機能情報は、1日2回以上の頻度で取得された情報である、
プログラム。
【請求項10】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記パラメータは、前記第1肺機能情報及び前記第2肺機能情報の時系列における傾き、平均、及び標準誤差の少なくとも1つである、
プログラム。
【請求項11】
情報処理方法であって、
請求項1から10までの何れか1項に記載のプログラムの各ステップを備える、
情報処理方法。
【請求項12】
情報処理システムであって、
制御部を備え、
前記制御部は、請求項1から10までの何れか1項に記載のプログラムの各ステップを実行するように構成される、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理方法及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、肺機能検査装置の較正装置が開示されている。
【0003】
この較正装置について説明する。オペレータが押し/引きする較正ポンプは、大気、DLco測定装置、及び検査ガス用バッグにそれぞれ独立に接続可能に構成する。各系統は気圧作動弁によって独立に開閉可能に構成すると共に、各気圧作動弁は第1から第3電磁弁によって別個独立に制御可能に構成する。一方、検査ガス用バッグは、電磁ポンプとガスボンベに対し選択的に接続可能に、第4及び第5電磁弁によって構成する。較正ポンプの動作の各フェーズにおける各電磁弁及び電磁ポンプの開閉状態及び動作状態は、コントローラによって制御可能に構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-186345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された較正装置は、肺機能についての従来の診断基準を適用したものに過ぎなかった。
【0006】
本発明では上記事情を鑑み、肺機能についての新しい概念の診断基準を提供可能なプログラム、情報処理方法及び情報処理システム等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、プログラムが提供される。このプログラムは、取得ステップと、推定ステップと、生成ステップとをコンピュータに実行させるように構成される。取得ステップでは、患者の肺機能に関する第1肺機能情報を取得する。推定ステップでは、第1肺機能情報と、所定期間内に予め取得された肺機能に関する第2肺機能情報と、予測モデルとに基づいて、肺機能の時系列推移に関するパラメータを推定する。生成ステップでは、第1肺機能情報と、第2肺機能情報と、パラメータとの関係を示す情報である第1視覚情報を生成する。
【0008】
このような態様によれば、肺機能についての新しい概念の診断基準を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】情報処理システム100を表す構成図である。
図2】情報処理装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】端末300のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】情報処理装置200(制御部210)によって実現される機能を示すブロック図である。
図5】情報処理装置200によって実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。
図6】アクティビティA110に対応する、第1肺機能情報を入力するための画面例である。
図7】アクティビティA240に対応する、第1視覚情報が表示された画面例である。
図8】アクティビティA240に対応する、第1視覚情報及び第2視覚情報が表示された画面例である。
図9】アクティビティA240に対応する、第1視覚情報及び第3視覚情報が表示された画面例である。
図10】アクティビティA180において所定期間における異常回数が所定回数に到達した場合における鑑別診断に対するアルゴリズムを示す図である。
図11】異常を示す情報である第2視覚情報が生成されない場合における鑑別診断に対するアルゴリズムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0011】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0012】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0013】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0014】
1.ハードウェア構成
第1節では、本実施形態のハードウェア構成について説明する。
【0015】
1-1.情報処理システム100
図1は、情報処理システム100を表す構成図である。情報処理システム100は、情報処理装置200と、端末300とを備え、これらがネットワークを通じて接続されている。これらの構成要素についてさらに説明する。ここで、情報処理システム100に例示されるシステムとは、1つ又はそれ以上の装置又は構成要素からなるものである。したがって、例えば、情報処理装置200単体であっても情報処理システム100に例示されるシステムになりうる。
【0016】
1-2.情報処理装置200
図2は、情報処理装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。情報処理装置200は、制御部210と、記憶部220と、通信部250とを有し、これらの構成要素が情報処理装置200の内部において通信バス260を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0017】
制御部210は、情報処理装置200に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部210は、例えば、不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部210は、記憶部220に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、情報処理装置200に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部220に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部210によって具体的に実現されることで、制御部210に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、第2節においてさらに説明する。なお、制御部210は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部210を有するように実施してもよい。またそれらの組み合わせであってもよい。
【0018】
記憶部220は、情報処理装置200の情報処理に必要な様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部210によって実行される情報処理装置200に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組み合わせであってもよい。
【0019】
通信部250は、USB、IEEE1394、Thunderbolt(登録商標)、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、5G/LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。すなわち、情報処理装置200は、通信部250を介して、端末300とネットワークを介して種々の情報を通信する。
【0020】
1-3.端末300
図3は、端末300のハードウェア構成を示すブロック図である。端末300は、制御部310と、記憶部320と、表示部330と、入力部340と、通信部350とを有し、これらの構成要素が端末300の内部において通信バス360を介して電気的に接続されている。制御部310、記憶部320及び通信部350の説明は、情報処理装置200における制御部210、記憶部220及び通信部250の説明と略同様のため省略する。
【0021】
表示部330は、端末300の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。表示部330は、ユーザが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)の画面を表示する。これは例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示デバイスを、端末300の種類に応じて使い分けて実施することが好ましい。以下では、表示部330は、端末300の筐体に含まれるものとして説明する。
【0022】
入力部340は、端末300の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。例えば、入力部340は、表示部330と一体となってタッチパネルとして実施されてもよい。タッチパネルであれば、ユーザは、タップ操作、スワイプ操作等を入力することができる。もちろん、タッチパネルに代えて、スイッチボタン、マウス、QWERTキーボード等を採用してもよい。すなわち、入力部340は、ユーザによってなされた操作入力を受け付ける。当該入力は、命令信号として、通信バス360を介して制御部310に転送される。そして、制御部310は、必要に応じて所定の制御や演算を実行しうる。
【0023】
2.機能構成
第2節では、本実施形態の機能構成について説明する。前述の通り、記憶部220に記憶されているソフトウェアによる情報処理がハードウェアの一例である制御部210によって具体的に実現されることで、制御部210に含まれる各機能部として実行されうる。
【0024】
図4は、情報処理装置200(制御部210)によって実現される機能を示すブロック図である。上記のように、情報処理装置200(情報処理システム100)は、制御部210を備える。具体的には、情報処理装置200(制御部210)は、本実施形態のプログラムの各ステップを実行するように構成される。情報処理装置200(制御部210)は、本実施形態のプログラムの各ステップに対応して、取得部211と、推定部212と、生成部213と、記憶制御部214とを備える。ここで、本実施形態のプログラムは、取得ステップと、推定ステップと、生成ステップと、記憶制御ステップとを情報処理装置200等のコンピュータに実行させるように構成される。
【0025】
取得部211は、種々の情報を取得するように構成される。取得部211は、取得ステップを実行するように構成される。例えば、取得部211は、患者の肺機能に関する第1肺機能情報を取得する。
【0026】
推定部212は、種々の情報を推定するように構成される。推定部212は、推定ステップを実行するように構成される。例えば、推定部212は、当該第1肺機能情報と、所定期間内に予め取得された、当該患者の肺機能に関する第2肺機能情報と、予測モデルとに基づいて、当該患者の肺機能の時系列推移に関するパラメータを推定する。
【0027】
生成部213は、種々の情報を生成するように構成される。生成部213は、生成ステップを実行するように構成される。例えば、生成部213は、第1肺機能情報と、第2肺機能情報と、パラメータとの関係を示す情報である第1視覚情報を生成する。
【0028】
記憶制御部214は、種々の情報を記憶させるように構成される。記憶制御部214は、記憶制御ステップを実行するように構成される。例えば、記憶制御部214は、患者の肺機能の異常が推定された場合、第1肺機能情報が患者から取得された時間と、当該患者の肺機能に異常があることとを記憶させるように制御する。
【0029】
3.情報処理方法
第3節では、前述した情報処理装置200の情報処理の流れについて説明する。この情報処理方法は、本実施形態のプログラムの各ステップを備える。この情報処理方法は、取得ステップと、推定ステップと、生成ステップとを備える。取得ステップでは、患者の肺機能に関する第1肺機能情報を取得する。推定ステップでは、当該第1肺機能情報と、所定期間内に予め取得された、当該患者の肺機能に関する第2肺機能情報と、予測モデルとに基づいて、当該患者の肺機能の時系列推移に関するパラメータを推定する。生成ステップでは、当該第1肺機能情報と、当該第2肺機能情報と、当該パラメータとの関係を示す情報である第1視覚情報を生成する。
【0030】
図5は、情報処理装置200によって実行される情報処理の流れを示すアクティビティ図である。以下、このアクティビティ図の各アクティビティに沿って、説明するものとする。ここで、第2肺機能情報が取得された「所定期間」は、例えば、10~200日間であってもよく、50~150日間であると好ましく、100~120日間であるとより好ましい。具体的には例えば、10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,105,110,115,120,125,130,135,140,145,150,155,160,165,170,175,180,185,190,195,200日間であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
まず、端末300における制御部310は、患者の肺機能に関する第1肺機能情報を情報処理装置200に入力する(アクティビティA110)。アクティビティA110では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)入力部340は、患者から第1肺機能情報の入力を受け付ける。(2)制御部310は、通信部350を介して、入力された第1肺機能情報を情報処理装置200に入力する。
【0032】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、第1肺機能情報を端末300から取得する(アクティビティA120)。換言すると、取得ステップでは、患者の肺機能に関する第1肺機能情報を端末300から取得する。アクティビティA120では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)通信部250は、入力された第1肺機能情報を端末300から受信する。(2)制御部210は、受信された第1肺機能情報を記憶部220に記憶させる。
【0033】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、患者の肺機能の時系列推移に関するパラメータを推定する(アクティビティA130)。換言すると、推定ステップでは、第1肺機能情報と、所定期間内に予め取得された、患者の肺機能に関する第2肺機能情報と、予測モデルとに基づいて、当該パラメータを推定する。
【0034】
本実施形態では、推定ステップでは、第1肺機能情報における1秒量のデータと、第2肺機能情報における1秒量のデータと、予測モデルとに基づいて、当該パラメータを推定する。1秒量のデータを用いることにより、特に、肺移植後に生じうる、肺炎、急性拒絶反応、及び慢性拒絶反応などの異常を的確に把握することができる。
【0035】
ここで、肺機能の時系列推移に関するパラメータは、第1肺機能情報及び第2肺機能情報の時系列における傾き、平均、及び標準誤差の少なくとも1つであってもよい。このようなパラメータを推定することにより、時系列に沿った肺機能の推移におけるトレンドを考慮し、肺機能の低下を精度良く診断することができる。
【0036】
また、予測モデルは、自己回帰和分移動平均モデル(Autoregressive integrated moving averageモデル:ARIMAモデル)であると好ましい。このような態様によれば、肺機能の推移のような非定常過程を有するデータに対して好適に用いることができる。
【0037】
アクティビティA130では、例えば、次の4段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、記憶部220に記憶された、第1肺機能情報及び第2肺機能情報を読み出す。(2)制御部210は、推定処理を実行し、第1肺機能情報及び第2肺機能情報に対してARIMAモデルを適用する。(3)制御部210は、推定処理を実行し、肺機能の時系列推移に関するパラメータを推定する。(4)制御部210は、推定されたパラメータを記憶部220に記憶させる。
【0038】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、患者の肺機能に関する第1肺機能情報と、所定期間内に予め取得された、当該患者の肺機能に関する第2肺機能情報と、パラメータとの関係を示す情報である第1視覚情報を生成する(アクティビティA140)。すなわち、生成ステップでは、第1肺機能情報と、第2肺機能情報と、パラメータとの関係を示す情報である第1視覚情報を生成する。
【0039】
アクティビティA140では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、記憶部220に記憶された、第1肺機能情報、第2肺機能情報及びパラメータに関する情報を読み出す。(2)制御部210は、生成処理を実行し、読み出された各情報間の関係を示す第1視覚情報を生成する。(3)制御部210は、生成された第1視覚情報を記憶部220に記憶させる。
【0040】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、患者の肺機能に関する第1肺機能情報と、肺機能の時系列推移に関するパラメータとに基づいて、肺機能における異常の有無を推定する(アクティビティA150)。換言すると、推定ステップでは、第1肺機能情報と、パラメータとに基づいて、肺機能における異常の有無を推定する。ここで、肺機能における異常は、例えば、第1肺機能情報(最新に入力された、患者の肺機能に関する情報)が、ARIMAモデルにより予測された予測変動線(平均)の2SEの範囲から外れている場合を示す。この場合、肺機能が著しく低下していると考えられるため、何らかの異常が生じていると推定される。
【0041】
アクティビティA150では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、記憶部220に記憶された、第1肺機能情報及びパラメータに関する情報を読み出す。(2)制御部210は、推定処理を実行し、患者の肺機能における異常の有無を推定する。
【0042】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、患者の肺機能に異常があると推定された場合、アクティビティA170の処理に移行させる(アクティビティA160のYES)。一方、情報処理装置200における制御部210は、患者の肺機能に異常がないと推定された場合、アクティビティA200の処理に移行させる(アクティビティA160のNO)。
【0043】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、患者の肺機能に異常があることを記憶させる(アクティビティA170)。換言すると、記憶制御ステップでは、患者の肺機能において異常があると推定された場合、第1肺機能情報が当該患者から取得された日時と、当該患者の肺機能に異常があることとを記憶させるように制御する。ここで、日時は、第1肺機能情報に紐付けられているものとする。すなわち、例えば、第1肺機能情報が「2023年6月17日9時」に取得されたことが端末300に入力された場合、「2023年6月17日9時」という日時情報が第1肺機能情報に紐付けられる。
【0044】
アクティビティA170では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、記憶部220に記憶された、所定期間内における異常回数に関する情報を読み出す。(2)制御部210は、当該異常回数をインクリメントする。(3)制御部210は、インクリメントされた当該異常回数を記憶部220に記憶させる。ここで、(3)の情報処理は、第1肺機能情報が患者から取得された日時、及び当該患者の肺機能に異常があることを記憶させるように制御する情報処理の例である。
【0045】
ここで、異常回数がカウントされる「所定期間」は、例えば、3日間であってもよく、5日間であると好ましく、7日間であるとより好ましい。具体的には例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31日間であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本実施形態では、一例として、7日間とする。
【0046】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、7日間における異常回数が所定回数に到達したか否かを判定する(アクティビティA180)。制御部210は、7日間における異常回数が所定回数に到達したと判定された場合、アクティビティA190の処理に移行させる(アクティビティA180のYES)。一方、制御部210は、7日間における異常回数が所定回数に到達していないと判定された場合、アクティビティA200の処理に移行させる(アクティビティA180のNO)。
【0047】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、患者の肺機能における異常を示す情報である第2視覚情報を生成する(アクティビティA190)。換言すると、生成ステップでは、7日間(所定期間)における異常回数(第1肺機能情報が患者から取得された日時と、患者の肺機能に異常があることとが記憶された回数)が所定回数に到達した場合、当該患者の肺機能における異常を示す情報である第2視覚情報を生成する。
【0048】
ここで、所定回数は、所定期間との関係で適宜設定されればよく、所定期間を7日間、第1肺機能情報を1日当たり2回取得するとした場合、例えば、1回であってもよく、2回であると好ましく、3回であるとより好ましい。この場合、具体的には例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14回であってもよい。
【0049】
アクティビティA190では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、生成処理を実行し、肺機能における異常を示す情報である第2視覚情報を生成する。(2)制御部210は、生成された第2視覚情報を記憶部220に記憶させる。
【0050】
アクティビティA190によれば、肺機能に異常があることを精度良く報知することができる。
【0051】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、患者が罹患している呼吸器疾患を鑑別する(アクティビティA200)。換言すると、推定ステップでは、患者の肺機能に関する第1肺機能情報と、所定期間内に予め取得された、当該患者の肺機能に関する第2肺機能情報と、当該患者の肺機能の時系列推移に関するパラメータとに基づいて、当該呼吸器疾患を鑑別する。
【0052】
アクティビティA200では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、記憶部220に記憶された、第1肺機能情報、第2肺機能情報及びパラメータを読み出す。(2)制御部210は、推定処理を実行し、患者が罹患している呼吸器疾患を鑑別する。(3)制御部210は、鑑別された結果(鑑別された呼吸器疾患の種類)を記憶部220に記憶させる。
【0053】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、鑑別された結果を示す情報である第3視覚情報を生成する(アクティビティA210)。換言すると、生成ステップでは、鑑別された結果を示す情報である第3視覚情報を生成する。鑑別された結果は、例えば、(1)肺炎と急性拒絶反応との双方が考えられるが、肺炎の方が可能性が高い、(2)異常なしと考えられる、(3)慢性拒絶反応と急性拒絶反応との双方が考えられ、双方ともに同じ程度の可能性である、などの結果を示す。
【0054】
アクティビティA210では、例えば、次の3段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、記憶部220に記憶された、鑑別された結果に関する情報を読み出す。(2)制御部210は、生成処理を実行し、鑑別された結果を示す情報である第3視覚情報を生成する。(3)制御部210は、生成された第3視覚情報を記憶部220に記憶させる。
【0055】
アクティビティA210によれば、鑑別された呼吸器疾患を患者に報知することができる。
【0056】
続いて、情報処理装置200における制御部210は、生成された各視覚情報(第1視覚情報、(該当する場合)第2視覚情報、及び第3視覚情報)を端末300に送信する(アクティビティA220)。アクティビティA220では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部210は、記憶部220に記憶された、第1視覚情報、第2視覚情報及び第3視覚情報を読み出す。(2)制御部210は、通信部250を介して、第1視覚情報、第2視覚情報及び第3視覚情報を端末300に送信する。
【0057】
続いて、端末300における制御部310は、各視覚情報を情報処理装置200から受信する(アクティビティA230)。アクティビティA230では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)通信部350は、情報処理装置200から送信された第1視覚情報、第2視覚情報及び第3視覚情報を受信する。(2)制御部310は、受信された第1視覚情報、第2視覚情報及び第3視覚情報を記憶部320に記憶させる。
【0058】
続いて、端末300における制御部310は、各視覚情報を表示部330に表示させるように制御する(アクティビティA240)。アクティビティA240では、例えば、次の2段階の情報処理が実行される。(1)制御部310は、記憶部320に記憶された、第1視覚情報、第2視覚情報及び第3視覚情報を読み出す。(2)制御部310は、第1視覚情報、第2視覚情報及び第3視覚情報を表示部330に表示させるように制御する。
【0059】
なお、(1)アクティビティA140、(2)アクティビティA150からA190、(3)アクティビティA200からA210は、(1)、(2)、(3)の順番に限られず、任意の順番であってもよい。すなわち、例えば、(2)、(3)、(1)の順番で情報処理が実行されてもよい。
【0060】
4.画面例
第4節では、本実施形態の画面例について説明する。
【0061】
図6は、アクティビティA110に対応する、第1肺機能情報を入力するための画面例である。この画面例(以下「入力画面400」ともいう。)は、端末300における表示部330に表示される。入力画面400は、領域410、領域420、領域430及び領域440を含む。
【0062】
領域410には、患者から取得された第1肺機能情報のうち、日付と時間帯を入力するための領域である。ここで、第2肺機能情報は、過去に第1肺機能情報として入力された、患者の肺機能に関する情報である。すなわち、第1肺機能情報は、新たな肺機能情報が入力されることで、第2肺機能情報となる。
【0063】
ここで、領域410における時間帯は、朝、夕のどちらかを選択可能としている。すなわち、第1肺機能情報及び第2肺機能情報は、1日2回以上の頻度で取得された情報であってもよい。このような態様によれば、情報が十分量になるため、肺機能の低下を精度良く診断することができる。
【0064】
領域420は、患者から取得された第1肺機能情報のうち、FEV6(6秒量)、FEV1(1秒量)及びSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)を入力するように構成される。本実施形態では、これらのうちFEV1の値を用いて、肺機能の時系列を推定している。
【0065】
領域430は、体重、体温、脈拍、収縮期血圧及び拡張期血圧を入力するように構成される。領域430の各項目は、いわゆるバイタルサインを示し、患者に自身の体の変化を気づかせるために設定されている。
【0066】
領域440には、内服薬1、内服薬2及び内服薬3を入力するための領域である。内服薬1では、プログラフ/グラセプター、ネオーラル、又は、なしを選択可能に構成される。内服薬2では、セルセプト、イムラン/アザニン、又は、なしを選択可能に構成される。内服薬3では、プレドニン、又は、なしを選択可能に構成される。そして、領域440は、内服薬1、内服薬2及び内服薬3それぞれの「飲んだ量」を入力可能に構成される。
【0067】
図7は、アクティビティA240に対応する、第1視覚情報が表示された画面例である。この画面例(以下「結果画面500」ともいう。)は、端末300における表示部330に表示される。結果画面500は、折れ線510、予測変動線521、1SE線522及び2SE線523を含む。
【0068】
折れ線510は、第1肺機能情報及び第2肺機能情報の時系列の推移を示す。本実施形態では、折れ線510は、第1肺機能情報及び第2肺機能情報のうち1秒量のデータで表現されている。
【0069】
予測変動線521は、折れ線510の平均移動線を考慮に入れて推定された平均線を示す。すなわち、予測変動線521は、請求項におけるパラメータの1つである「平均」を示す。本実施形態では、予測変動線521は、患者が入力した日付よりも15日前から104日前までの連続90日間の第2肺機能情報にARIMAモデルを適用して推定されたものとする。したがって、予測変動線521は、日々更新される。
【0070】
1SE線522は、本日の第1肺機能情報の推定値から標準誤差を減じ、推定された傾きを考慮して算出された直線を示す。
【0071】
2SE線523は、本日の第1肺機能情報の推定値から標準誤差×2を減じ、推定された傾きを考慮して算出された直線を示す。
【0072】
図8は、アクティビティA240に対応する、第1視覚情報及び第2視覚情報が表示された画面例である。ここで、通知540は、請求項の「第2視覚情報」に相当する。本実施形態では、異常回数が1週間に3回カウントされたものを肺機能の有意な低下として、通知540を通知している。結果画面500では、通知540として、「肺機能に何らかの異常がありそうです。」と表示されており、患者は、自身の肺機能に異常がある可能性があることが分かる。
【0073】
図9は、アクティビティA240に対応する、第1視覚情報及び第3視覚情報が表示された画面例である。ここで、通知550は、請求項の「第3視覚情報」に相当する。本実施形態では、第5節で説明するアルゴリズムに基づいて鑑別された結果として、通知550を通知しているものとする。結果画面500では、通知550として、「肺炎又は急性拒絶反応が生じている可能性があります。急性拒絶反応よりも肺炎である可能性の方が高いです。」と表示されており、患者は、肺炎又は急性拒絶反応が生じている可能性があることが分かる。
【0074】
5.鑑別診断に対するアルゴリズム
第5節では、本実施形態の鑑別診断に対するアルゴリズムについて説明する。
【0075】
図10は、アクティビティA180において所定期間における異常回数が所定回数に到達した場合における鑑別診断に対するアルゴリズムを示す図である。すなわち、図10では、異常を示す情報である第2視覚情報が生成された場合における当該アルゴリズムを示している。本実施形態では、鑑別される呼吸器疾患は、肺炎、急性拒絶反応、及び慢性拒絶反応の少なくとも1つであるものとして説明する。
【0076】
このアルゴリズムでは、第1肺機能情報の入力日から遡って、直近14日間、15日前から45日前までの連続31日間、15日前から105日前までの連続91日間、の3つの期間について同時に測定される。ここで、肺機能の低下速度が1‰よりも早いものを有意と判断し、「+」で表す。なお、直近14日間、15日前から45日前までの連続31日間のデータは、データ量の関係により、線形回帰モデルが使用されてもよい。
【0077】
そして、3つの期間の何れにも有意な低下が認められなかった場合、「異常なし」として鑑別される。直近14日間のみに有意な低下が認められた場合、「急性拒絶反応よりも肺炎の可能性が高い」として鑑別される。直近14日間、15日前から45日前までの連続31日間に有意な低下が認められた場合、「肺炎よりも急性拒絶反応の可能性が高い」として鑑別される。3つの期間の全てにおいて有意な低下が認められた場合、「急性拒絶反応に加えて慢性拒絶反応が生じている可能性がある」として鑑別される。
【0078】
図11は、異常を示す情報である第2視覚情報が生成されない場合における鑑別診断に対するアルゴリズムを示す図である。このアルゴリズムでは、第1肺機能情報の入力日から遡って、直近14日間、15日前から45日前までの連続31日間、15日前から105日前までの連続91日間、の3つの期間について同時に測定される。肺機能の低下速度が1‰よりも早いものを有意と判断し、「+」で表す。なお、直近14日間、15日前から45日前までの連続31日間のデータは、データ量の関係により、線形回帰モデルが使用されてもよい。
【0079】
そして、3つの期間の全てにおいて有意な低下が認められた場合、「慢性拒絶反応が生じている可能性がある」として鑑別される。その他の場合においては、「異常なし」として鑑別される。
【0080】
このような態様によれば、呼吸器疾患のうち、肺移植後に生じる呼吸器疾患に焦点を当てることができる。
【0081】
本実施形態の態様によれば、肺機能についての新しい概念の診断基準を提供することができる。また、肺機能の低下を精度良く診断することができる。さらに、肺機能の推移について多くの情報を提供することができる。また、簡単な構成のため、節約されたリソースを他の中核機能に使用することができる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0083】
6.変形例
第6節では、本実施形態の変形例について説明する。
【0084】
制御部210は、各種データ及び各種情報について記憶部220に書き出し処理(記憶処理)及び読み出し処理をしているが、これに限られず、例えば、制御部210内のレジスタやキャッシュメモリ等を使用して、各アクティビティの情報処理を実行してもよい。
【0085】
本実施形態では、1秒量のデータを用いてパラメータを推定する例を説明したが、これに限られることはない。例えば、推定ステップでは、第1肺機能情報における6秒量のデータと、第2肺機能情報における6秒量のデータと、予測モデルとに基づいて、パラメータを推定してもよい。また、推定ステップでは、1秒量のデータ及び6秒量のデータの双方を用いて、パラメータを推定してもよい。
【0086】
6秒量のデータを用いる態様によれば、例えば間質性肺炎など、様々な肺機能の異常を的確に把握することができる。また、1秒量のデータ及び6秒量のデータの双方を用いる態様によれば、様々な肺機能の異常をより的確に把握することができる。
【0087】
本実施形態では、予測モデルの例を自己回帰和分移動平均モデルとして説明したが、これに限られることはない。例えば、予測モデルは、時系列モデルであってもよい。
【0088】
予測モデルとして時系列モデルを用いる態様によれば、肺機能の推移のような時系列データに対して好適に用いることができる。
【0089】
本実施形態では、呼吸器疾患は、肺移植後に生じうる、肺炎、急性拒絶反応、及び慢性拒絶反応の少なくとも1つを示すものとして説明したが、これに限られることはない。例えば、呼吸器疾患は、肺移植に関わりがなくてもよく、間質性肺炎、喘息などであってもよい。
【0090】
本実施形態では、鑑別診断に対するアルゴリズムにおいて、肺機能の低下速度が1‰よりも早いものを有意としたが、これに限られることはない。肺機能の低下速度が有意であるとする基準は、例えば、0.5‰よりも早いものとしてもよく、0.8‰よりも早いものとしてもよく、1.1‰よりも早いものとしてもよい。具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2.0,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3.0‰よりも早いものであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0091】
7.その他
次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0092】
(1)プログラムであって、取得ステップと、推定ステップと、生成ステップとをコンピュータに実行させるように構成され、前記取得ステップでは、患者の肺機能に関する第1肺機能情報を取得し、前記推定ステップでは、前記第1肺機能情報と、所定期間内に予め取得された前記肺機能に関する第2肺機能情報と、予測モデルとに基づいて、前記肺機能の時系列推移に関するパラメータを推定し、前記生成ステップでは、前記第1肺機能情報と、前記第2肺機能情報と、前記パラメータとの関係を示す情報である第1視覚情報を生成する、プログラム。
【0093】
このような態様によれば、肺機能についての新しい概念の診断基準を提供することができる。また、肺機能の低下を精度良く診断することができる。さらに、肺機能の推移について多くの情報を提供することができる。また、簡単な構成のため、節約されたリソースを他の中核機能に使用することができる。
【0094】
(2)上記(1)に記載のプログラムにおいて、記憶制御ステップをさらに備え、前記推定ステップでは、前記第1肺機能情報と、前記パラメータとに基づいて、前記肺機能における異常の有無を推定し、前記記憶制御ステップでは、前記異常があると推定された場合、前記第1肺機能情報が前記患者から取得された時間と、前記異常があることとを記憶させるように制御し、前記時間は、前記第1肺機能情報に紐付けられており、前記生成ステップでは、所定期間における前記記憶された回数が所定回数に到達した場合、前記異常を示す情報である第2視覚情報を生成する、プログラム。
【0095】
このような態様によれば、肺機能に異常があることを精度良く報知することができる。
【0096】
(3)上記(1)又は(2)に記載のプログラムにおいて、前記推定ステップでは、前記第1肺機能情報と、前記第2肺機能情報と、前記パラメータとに基づいて、呼吸器疾患を鑑別し、前記生成ステップでは、前記鑑別された結果を示す情報である第3視覚情報を生成する、プログラム。
【0097】
このような態様によれば、鑑別された呼吸器疾患を患者に報知することができる。
【0098】
(4)上記(3)に記載のプログラムにおいて、前記呼吸器疾患は、肺炎、急性拒絶反応、及び慢性拒絶反応の少なくとも1つである、プログラム。
【0099】
このような態様によれば、呼吸器疾患のうち、肺移植後に生じる呼吸器疾患に焦点を当てることができる。
【0100】
(5)上記(1)から(4)までの何れか1つに記載のプログラムにおいて、前記推定ステップでは、前記第1肺機能情報における1秒量のデータと、前記第2肺機能情報における1秒量のデータと、前記予測モデルとに基づいて、前記パラメータを推定する、プログラム。
【0101】
このような態様によれば、特に、肺移植後に生じうる、肺炎、急性拒絶反応、及び慢性拒絶反応などの異常を的確に把握することができる。
【0102】
(6)上記(1)から(5)までの何れか1つに記載のプログラムにおいて、前記推定ステップでは、前記第1肺機能情報における6秒量のデータと、前記第2肺機能情報における6秒量のデータと、前記予測モデルとに基づいて、前記パラメータを推定する、プログラム。
【0103】
このような態様によれば、例えば間質性肺炎など、様々な肺機能の異常を的確に把握することができる。
【0104】
(7)上記(1)から(6)までの何れか1つに記載のプログラムにおいて、前記予測モデルは、時系列モデルである、プログラム。
【0105】
このような態様によれば、肺機能の推移のような時系列データに対して好適に用いることができる。
【0106】
(8)上記(1)から(7)までの何れか1つに記載のプログラムにおいて、前記予測モデルは、自己回帰和分移動平均モデルである、プログラム。
【0107】
このような態様によれば、肺機能の推移のような非定常過程を有するデータに対して好適に用いることができる。
【0108】
(9)上記(1)から(8)までの何れか1つに記載のプログラムにおいて、前記第1肺機能情報及び前記第2肺機能情報は、1日2回以上の頻度で取得された情報である、プログラム。
【0109】
このような態様によれば、情報が十分量になるため、肺機能の低下を精度良く診断することができる。
【0110】
(10)上記(1)から(9)までの何れか1つに記載のプログラムにおいて、前記パラメータは、前記第1肺機能情報及び前記第2肺機能情報の時系列における傾き、平均、及び標準誤差の少なくとも1つである、プログラム。
【0111】
このような態様によれば、時系列に沿った肺機能の推移におけるトレンドを考慮し、肺機能の低下を精度良く診断することができる。
【0112】
(11)情報処理方法であって、上記(1)から(10)までの何れか1つに記載のプログラムの各ステップを備える、情報処理方法。
【0113】
このような態様によれば、肺機能についての新しい概念の診断基準を提供することができる。また、肺機能の低下を精度良く診断することができる。さらに、肺機能の推移について多くの情報を提供することができる。また、簡単な構成のため、節約されたリソースを他の中核機能に使用することができる。
【0114】
(12)情報処理システムであって、制御部を備え、前記制御部は、上記(1)から(10)までの何れか1つに記載のプログラムの各ステップを実行するように構成される、情報処理システム。
【0115】
このような態様によれば、肺機能についての新しい概念の診断基準を提供することができる。また、肺機能の低下を精度良く診断することができる。さらに、肺機能の推移について多くの情報を提供することができる。また、簡単な構成のため、節約されたリソースを他の中核機能に使用することができる。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0116】
100 :情報処理システム
200 :情報処理装置
210 :制御部
211 :取得部
212 :推定部
213 :生成部
214 :記憶制御部
220 :記憶部
250 :通信部
260 :通信バス
300 :端末
310 :制御部
320 :記憶部
330 :表示部
340 :入力部
350 :通信部
360 :通信バス
400 :入力画面
410 :領域
420 :領域
430 :領域
440 :領域
500 :結果画面
510 :折れ線
521 :予測変動線
522 :1SE線
523 :2SE線
540 :通知
550 :通知
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11