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特開2025-4801音響発生ユニット及びこれを有するヘルメット用通話装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004801
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】音響発生ユニット及びこれを有するヘルメット用通話装置
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/30 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
A42B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104630
(22)【出願日】2023-06-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年3月24日~26日に、株式会社あおごちが、下記展示会に出品した。 THE 50th TOKYO MOTORCYCLE SHOW(東京ビッグサイト) 令和5年4月3日に、パークアップ株式会社が、下記アドレスの「Moto Megane」のウェブサイトに掲載した。 https://www.motomegane.com/news-release/featuredarticles/tmcs/mcs2023/tmcs2023_addsound_pickup_20230403 令和5年4月21日に、有限会社キッチュが、下記アドレスの「MOVIE Collection」のウェブサイトに掲載した。 https://www.moviecollection.jp/movie/192824/
(71)【出願人】
【識別番号】518041755
【氏名又は名称】株式会社あおごち
(71)【出願人】
【識別番号】000126517
【氏名又は名称】株式会社アサヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100163706
【弁理士】
【氏名又は名称】釜谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 斉
(72)【発明者】
【氏名】山川 哲也
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107EA08
3B107EA13
(57)【要約】
【課題】 コンパクトで軽量でありながら、指向性を持ち音圧レベルが高い音響発生ユニットと、耳の近傍であって耳から離間させた位置にあっても通話内容等が良く聴こえるヘルメット用通話装置を提供する。
【解決手段】 エキサイターにより振動板が振動させて、振動板から発生した音響を、音響ガイド膨出部で集音して音響ガイド筒から放出される音響発生ユニットと、音響発生ユニットの側面部を所定間隔離れて取り囲み耳の略方向に開口部を有する側壁部により、発生した音響の音圧レベルを上げ、また、周波数3kHz近傍の音を増強した音響を耳に届けるようにしたので、耳の近傍であって耳から離間させた位置にあっても、通話内容等が良く聴こえるヘルメット用通話装置を得ることができた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキサイターを用いて音響を発生するように構成された音響発生ユニットであって、
前記音響発生ユニットは、振動板とエキサイター、振動板ダンパー、振動板保持部、音響ガイド部を有し、
前記振動板には、前記エキサイターが固定され、
前記振動板保持部は、前記振動板の前面を開口させて、側面及び背面を覆うように配置され、前記振動板ダンパーを介して前記振動板を振動可能に保持し、
前記音響ガイド部は、前記振動板の前面の開口を、前記振動板保持部から連続する形で前記振動板に対して略所定間隔開けて、覆うような音響ガイド膨出部を有し、
前記音響ガイド膨出部の一部には筒状の開口穴である音響ガイド筒を有し、
前記エキサイターにより前記振動板が振動すると、前記振動板から発生した音響は、前記音響ガイド膨出部で集音されて音響ガイド筒から放出されるように構成されている
ことを特徴とする音響発生ユニット。
【請求項2】
前記音響ガイド筒と、その内部の前記音響ガイド膨出部と前記振動板との間の空間により、所定の高音域の周波数の音を共鳴させるようにすることにより、前記所定の高音域の周波数をピークとして音を増強して発生させる構成を有している
ことを特徴とする請求項1記載の音響発生ユニット。
【請求項3】
前記所定の高音域の周波数は3kHz近傍である
ことを特徴とする請求項2記載の音響発生ユニット。
【請求項4】
ヘルメットを頭部に装着した使用者が通話できるように、前記ヘルメットに取り付け可能に構成されたヘルメット用通話装置であって、
前記ヘルメット用通話装置は、音響発生部及び音声マイク部、通信部を有し、
前記音響発生部は、使用者の耳の近傍であって耳から離間した位置に配置され、耳に対して音響を発生するように構成され、請求項1乃至請求項3記載の音響発生ユニットと前記音響発生ユニットが固定板ダンパーを介して固定される裏面凹部を有し、
前記音響発生ユニットの前記音響ガイド筒は耳の略方向に向けて配置され、
前記裏面凹部は、前記響発生ユニットの側面部を所定間隔離れて取り囲む裏面凹部側壁部を有しており、
前記裏面凹部の前記裏面凹部側壁部は耳の略方向に向かって開口されるよう構成されている
ことを特徴とするヘルメット用通話装置。
【請求項5】
前記振動板ユニットの側面部は概略所定の高さを有し、前記裏面凹部側壁部との間に、所定の高さと所定幅を有する空隙部が形成されており、
前記空隙部の内側は、前記振動板ユニットと前記裏面凹部との隙間から形成される内部空間を有しており、
前記振動板ユニットの側面部と前記裏面凹部側壁部との間の空隙と、その内部の内部空間により、所定の中音域の周波数の音を共鳴させるようにすることにより、所定の中音域の周波数近傍の音響を増強して発生させる構成を有している
ことを特徴とする請求項4記載のヘルメット用通話装置。
【請求項6】
前記音響ガイド筒は、前記音響ガイド膨出部において、前記音声マイク部から離間するような位置に配置されるよう構成されていることを特徴とする請求項5記載のヘルメット用通話装置。
【請求項7】
前記音響ガイド膨出部の前記音響ガイド筒以外の部分であって前記音響ガイド膨出部の上部の部分が、前記ヘルメット用通話装置の筐体によって一部覆われていて、この覆われている前記音響ガイド膨出部の部分が、切りかかれている
ことを特徴とする請求項6記載のヘルメット用通話装置。
【請求項8】
前記ヘルメット用通話装置は、前記ヘルメット用通話装置を前記ヘルメットに取り付けるための取付アダプターを有し、
前記ヘルメット用通話装置を前記取付アダプターを介して前記ヘルメットに取り付けたときに、前記ヘルメット用通話装置の背面は前記ヘルメットに対して所定間隔離間して取り付けられているように構成されている
ことを特徴とする請求項5記載のヘルメット用通話装置。
【請求項9】
前記ヘルメット用通話装置は、前記ヘルメットの左右の側部から背面部に固定可能に構成された略U字形の形状のアーム部を有し、
前記アーム部は、使用者の左右の耳にそれぞれ略対向するように配置された音響発生部と、後部にバッテリーを収納する電源収納部を有している
ことを特徴とする請求項5記載のヘルメット用通話装置。
【請求項10】
前記アーム部は、前記アーム部の左右に配置された前記音響発生部の少なくとも一方の更に前に突出するよう構成されたアーム突出部を備え、
前記アーム突出部には前記音声マイク部が設けられている
ことを特徴とする請求9記載のヘルメット用通話装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響発生ユニット及びこれを有するヘルメット用通話装置に関する。より詳細には、エキサイターを用いて音響を発生するようにした音響発生ユニット及びこれを有するヘルメットに取り付けられて使用されるヘルメット用通話装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンパクトで軽量でありながら、指向性を持ち音圧レベルが高い音響発生ユニットや、耳の近傍であって耳から離間させた位置にあっても通話内容等が良く聴こえるヘルメット用通話装置が求められている。
【0003】
このような装置として、特許文献1にて開示されたヘルメットに取り付ける無線機用スピーカー箱がある。この装置は、音響発生ユニットとしてスピーカーを内蔵したスピーカー箱を、耳に接触させずに音声を聞くことができる位置に、取付け金具によりヘルメットに取付けたものである。
【0004】
ここで、従来の無線機の音声を聞く方法として、耳に直接当てるイヤホン、ヘッドホン型と、無線機自体に内蔵されたスピーカー型があるが、工事現場等、周囲の騒音が大きな場所で無線機による無線連絡のためイヤホン、ヘッドホンを用いた場合には、工事当事者の片耳をイヤホン、ヘッドホンで密閉することになる。そして、一方の耳で周囲の騒音を長時間聞いていると、生理的に頭痛等の苦痛を訴えてくる。また、無線機内蔵スピーカー型では、周囲の騒音によって音声が掻き消され聞き取りにくいという欠点がある。
【0005】
この装置のスピーカー箱によれば、耳に接触することなく、無線機からの音声を聞く事ができるとともに、両耳で周囲の騒音を聞くことができる。このように構成することにより、耳にイヤホン、ヘッドホンの異物感が無くなり、また、無線機内蔵スピーカー型の様に音声が掻き消される事もなく、常に安定した音声が得られる。
【0006】
また、このような装置として、特許文献2にて開示されたヘルメットに取り付ける無線機がある。この装置は、ヘルメットに音響発生構造として無線機や情報端末機を本体と蓄電池を左右に分けて取付け、これらを結ぶ電源線をヘルメットの後方に配置するよう構成したものである。
【0007】
ここで、クレーンとの交信をしながら行う玉掛作業は、クレーン等を用いての荷役運搬作業において、フック等で吊るための吊り具を用いて行う荷掛けおよび荷下ろしの作業であり、高度な技能を必要とするものである。またここで、特許文献1記載のスピーカー箱の場合、接続線により胸ポケットや腰のベルトにある無線機等に接続されていることになる。
【0008】
そうすると、無線機を使う合図者、玉掛者は実際の作業者であり、工具を使う作業、玉掛作業、組付けの確認と頻繁に動きが多い職種であり、常に顔、身体の前に位置する接続線は作業の妨げになる。すなわち、接続線がヘルメットから胸ポケット、腰ベルトまで繋がっているので無線機を装着している合図者、玉掛者の作業効率が低下し、誤って接続線を損傷しクレーンとの交信が途絶え、作業に支障があることになる。
【0009】
また、狭い場所で機器の据付、試運転、点検調整を行う時、離れた場所で実際の機器が動き、制御盤で監視、表示されている。緊急事態に行う配線の変更、再操作のスイッチの入り、切りは失敗が許されないので二重、三重の再確認が必要であり作業員を補助する情報端末機が正常に機能することが必要とされる。
【0010】
本装置の無線機等によれば、ヘルメットに本体と蓄電池を左右に分けて取付け、電源線をヘルメットの後方に配置しているので、首の負担となる重さを左右に分散し、作業に支障が無く、長時間の使用でも首への負担を軽減した構造となった。また、狭い場所で機器の点検、調整を行う場合でも、ヘルメット幅より飛び出しが少なく、作業姿勢を妨げない、長時間の使用が可能なものとなった。
【0011】
また、このような装置として、特許文献3にて開示されたヘルメット用通話装置がある。この装置は、音響発生構造として振動板と振動板を振動させ音声を発生させるエキサイターを備える音声発生部を有していて、ヘルメットを頭部に装着した使用者が通話できるように、ヘルメットに直接、またはアダプターを介して取り付け可能に構成されている。そして、通信部を有する本体部、音声発生部と音声マイク部を有し、振動板は、使用者の少なくとも一方の耳の外側近傍に耳を覆うように配置されている。
【0012】
そのため、このヘルメット用通話装置は、周囲の騒音が大きな場所でも聞きやすく、使いやすいものとなった。また、いろいろな形や大きさや、いろいろなメーカーのヘルメットに対して、後付けで取り付けが可能となった。
そして、このヘルメット用通話装置は全体に薄く構成されているため、ヘルメットの幅からの飛び出しが少なく、また、一体に構成されているため、配線用の接続線等を引き回す必要もなく、使いやすく、また安全に使用することが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実用新案登録第3054182号公報
【特許文献2】実用新案登録第3231461号公報
【特許文献3】特開2023-8473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、特許文献2に記載されているように、スピーカー箱から出ている接続線が作業者の作業の妨げになるという不都合があった。
また、大騒音の工事現場において、耳から離した位置にあるスピーカー箱から十分な音量を得るためには、特許文献1の図面にあるように、それなりに大きなスピーカーが必要となる。スピーカーが大きくなると、磁界を形成する磁石も重くなる。そうすると、スピーカー箱を首で支える重さが重くなり、また、これを駆動する消費電力は大きく、電源も大きく重いものが必要となるという不都合があった。
【0015】
また、特許文献2に記載の技術では、ヘルメットに無線機等の本体と蓄電池を左右に分けて取付けて重さを左右に分散し、首への負担を軽減しているが、いずれにせよ、合計した重さは首で支えていることになり、首で支える重さが大きくなってしまうという不都合があった。また、使用しているスピーカーも小型のものであり、しかも耳から離間しているので、聞こえる音も限られてしまうという不都合があった。
【0016】
また、特許文献3に記載の技術では、エキサイターで振動させ音声を発生させるための大きな振動板が耳の外側近傍に耳を覆うように配置されているため、特に狭い場所での作業等では、振動板が作業者の作業の妨げになるという不都合があった。また、単にこの振動板を振動させ音声を発生させる構成のため、振動する振動板により耳のある内面方向だけでなく、外面方向にも音声を発生させることになり、通話内容等が外部に漏れやすいという不都合があった。そして、音声マイク部は振動板に取り付けられているため、大きな音量を発生させた場合等では、ハウリングの制御が難しいという不都合があった。
【0017】
本発明の目的は、コンパクトで軽量でありながら、指向性を持ち音圧レベルが高い音響発生ユニットと、耳の近傍であって耳から離間させた位置にあっても通話内容等が良く聴こえるヘルメット用通話装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。
【0019】
本発明は、エキサイターを用いて音響を発生するようにされた音響発生ユニットに関する。
そして、音響発生ユニットは、振動板とエキサイター、振動板ダンパー、振動板保持部、音響ガイド部を有し、振動板の一面には、エキサイターが固定され、振動板保持部は、振動板の前面を開口させて、側面及び背面を覆うように配置され、振動板ダンパーを介して振動板を振動可能に保持し、音響ガイド部は、振動板の前面の開口を、振動板保持部から連続する形で振動板に対して略所定間隔開けて、覆うような音響ガイド膨出部を有し、音響ガイド膨出部の一部には筒状の開口穴である音響ガイド筒を有し、エキサイターにより振動板が振動すると、振動板から発生した音響は、音響ガイド膨出部で集音されて音響ガイド筒から放出されるように構成されていることを特徴とする。
【0020】
また、音響ガイド筒と、その内部の音響ガイド膨出部と振動板との間の空間により、所定の高音域の周波数の音を共鳴させるようにすることにより、所定の高音域の周波数をピークとして音を増強して発生させる構成を有していることを特徴とする。
【0021】
また、高音域の所定の高音域の周波数は3kHz近傍であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、ヘルメットを頭部に装着した使用者が通話できるように、ヘルメットに取り付け可能に構成されたヘルメット用通話装置に関する。
そして、ヘルメット用通話装置は、音響発生部及び音声マイク部、通信部を有し、音響発生部は、使用者の耳の近傍であって耳から離間した位置に配置され、耳に対して音響を発生するように構成され、請求項1乃至請求項3記載の音響発生ユニットと音響発生ユニットが固定板ダンパーを介して固定される裏面凹部を有し、音響発生ユニットの音響ガイド筒は耳の略方向に向けて配置され、裏面凹部は、響発生ユニットの側面部を所定間隔離れて取り囲む裏面凹部側壁部を有しており、裏面凹部の裏面凹部側壁部は耳の略方向に向かって開口されるよう構成されていることを特徴とする。
【0023】
また、振動板ユニットの側面部は概略所定の高さを有し、裏面凹部側壁部との間に、所定の高さと所定幅を有する空隙部が形成されており、空隙部の内側は、振動板ユニットと裏面凹部との隙間から形成される内部空間を有しており、振動板ユニットの側面部と裏面凹部側壁部との間の空隙と、その内部の内部空間により、所定の中音域の周波数の音を共鳴させるようにすることにより、所定の中音域の周波数近傍の音響を増強して発生させる構成を有していることを特徴とする。
【0024】
また、音響ガイド筒は、音響ガイド膨出部において、音声マイク部から離間するような位置に配置されるよう構成されていることを特徴とする。
【0025】
また、音響ガイド膨出部の音響ガイド筒以外の部分であって音響ガイド膨出部の上部の部分が、ヘルメット用通話装置の筐体によって一部覆われていて、この覆われている音響ガイド膨出部の部分が、切りかかれていることを特徴とする。
【0026】
ヘルメット用通話装置は、ヘルメット用通話装置をヘルメットに取り付けるための取付アダプターを有し、ヘルメット用通話装置を取付アダプターを介してヘルメットに取り付けたときに、ヘルメット用通話装置の背面はヘルメットに対して所定間隔離間して取り付けられているように構成されていることを特徴とする。
【0027】
また、ヘルメット用通話装置は、ヘルメットの左右の側部から背面部に固定可能に構成された略U字形の形状のアーム部を有し、アーム部は、使用者の左右の耳にそれぞれ略対向するように配置された音響発生部と、背面部にバッテリーを保持するよう構成されていることを特徴とする。
【0028】
そして、アーム部は、アーム部の左右に配置された音響発生部の少なくとも一方の更に前に突出するよう構成されたアーム突出部を備え、アーム突出部には音声マイク部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、上述の特徴を有することから、下記に示すことが可能となる。
【0030】
エキサイターを用いて音響を発生するようにされた音響発生ユニットであって、音響発生ユニットは、振動板とエキサイター、振動板ダンパー、振動板保持部、音響ガイド部を有し、振動板の一面には、エキサイターが固定され、振動板保持部は、振動板の前面を開口させて、側面及び背面を覆うように配置され、振動板ダンパーを介して振動板を振動可能に保持し、音響ガイド部は、振動板の前面の開口を、振動板保持部から連続する形で振動板に対して略所定間隔開けて、覆うような音響ガイド膨出部を有し、音響ガイド膨出部の一部には筒状の開口穴である音響ガイド筒を有し、エキサイターにより振動板が振動すると、振動板から発生した音響は、音響ガイド膨出部で集音されて音響ガイド筒から放出されるように構成されているので、コンパクトで軽量でありながら、指向性を持ち音圧レベルが高い音響が発生する音響発生ユニット得られた。
【0031】
音響ガイド筒と、その内部の音響ガイド膨出部と振動板との間の空間により、所定の高音域の周波数の音を共鳴させるようにすることにより、所定の高音域の周波数をピークとして音を増強して発生させる構成を有しているので、エキサイターを用いて音響発生させたときに、所定の高音域の周波数近傍の音響を増強して発生させることができた。
【0032】
高音域の所定の高音域の周波数は3kHz近傍であるので、人間の耳に聞こえやすい周波数である高音域の周波数3kHz近傍の音響を増強して発生させることができた。
【0033】
また、ヘルメットを頭部に装着した使用者が通話できるように、ヘルメットに取り付け可能に構成されたヘルメット用通話装置であって、ヘルメット用通話装置は、音響発生部及び音声マイク部、通信部を有し、音響発生部は、使用者の耳の近傍であって耳から離間した位置に配置され、耳に対して音響を発生するように構成され、請求項1乃至請求項3記載の音響発生ユニットと音響発生ユニットが固定板ダンパーを介して固定される裏面凹部を有し、音響発生ユニットの音響ガイド筒は耳の略方向に向けて配置され、裏面凹部は、響発生ユニットの側面部を所定間隔離れて取り囲む裏面凹部側壁部を有しており、裏面凹部の裏面凹部側壁部は耳の略方向に向かって開口されるよう構成されているので、イヤホン、ヘッドホンのように耳を密閉することなく、コンパクトで軽量な構造でありながら、耳の近傍であって耳から離間させた位置にあっても通話内容等が良く聴こえるヘルメット用通話装置を得ることが可能となった。
【0034】
また、振動板ユニットの側面部は概略所定の高さを有し、裏面凹部側壁部との間に、所定の高さと所定幅を有する空隙部が形成されており、空隙部の内側は、振動板ユニットと裏面凹部との隙間から形成される内部空間を有しており、振動板ユニットの側面部と裏面凹部側壁部との間の空隙と、その内部の内部空間により、所定の中音域の周波数の音を共鳴させるようにすることにより、所定の中音域の周波数近傍の音響を増強して発生させる構成を有しているので、エキサイターを用いて音響発生させたときに、所定の中音域の周波数近傍の音響を増強して発生させることが可能となった。
【0035】
また、音響ガイド筒は、音響ガイド膨出部において、音声マイク部から離間するような位置に配置されるよう構成されているので、ヘルメット用通話装置が大きな音量で音響を発生させた場合でも、ハウリングを起きにくくすることが可能となった。
【0036】
また、音響ガイド膨出部の音響ガイド筒以外の部分であって音響ガイド膨出部の上部の部分が、ヘルメット用通話装置の筐体によって一部覆われていて、この覆われている音響ガイド膨出部の部分が、切りかかれているので、ヘルメット用通話装置の厚さを薄く構成することが可能となった。
【0037】
また、ヘルメット用通話装置は、ヘルメット用通話装置をヘルメットに取り付けるための取付アダプターを有し、ヘルメット用通話装置を取付アダプターを介してヘルメットに取り付けたときに、ヘルメット用通話装置の背面はヘルメットに対して所定間隔離間して取り付けられているように構成されているので、ヘッドランプをヘルメットに取付ベルトで取り付けるとき、取付ベルトをヘルメット用通話装置の背面とヘルメットの間に通すことが可能となった。
【0038】
また、ヘルメット用通話装置は、ヘルメットの左右の側部から背面部に固定可能に構成された略U字形の形状のアーム部を有し、アーム部は、使用者の左右の耳にそれぞれ略対向するように配置された音響発生部と、背面部にバッテリーを保持するよう構成されているので、ヘルメット用通話装置をヘルメットにしっかりと固定し、左右の耳にそれぞれ、左右の音響発生部からの音響を届けることが可能となった。
【0039】
そして、アーム部は、アーム部の左右に配置された音響発生部の少なくとも一方の更に前に突出するよう構成されたアーム突出部を備え、アーム突出部には音声マイク部が設けられているので、音響発生部と音声マイク部の距離を取ることができて、ハウリングの起きるのを低減させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の使用例を示す模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置をヘルメットに取り付けるときの状態を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の構成を示し、(A)が表面方向から見た斜視図、(B)が裏面方向から見た斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の構成を示し、(A)は参考斜視図、(B)は正面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の構成を示し、(C)は背面図、(D)は上面図、(E)は底面図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の構成を示し、(F)は左側面図、(G)は右側面図、(H)は参考斜視図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の構成を示す分解斜視図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の要部の構成を示し、(A)が表面方向から見た斜視図、(B)が裏面方向から見た斜視図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の要部の構成を示す分解斜視図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の要部の構成を示す分解斜視図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の構成を示し、(A)(B)はそれぞれ断面図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の使用例を示す部分断面図である。
図13】本発明の実施形態の違いによるヘルメット用通話装置の周波数特性を示すグラフである。
図14】本発明の第1の実施形態に係るヘルメット用通話装置の回路構成を示すブロック図である。
図15】本発明の第2の実施形態に係るヘルメット用通話装置の構成を示し、(A)が表面方向から見た斜視図、(B)が裏面方向から見た斜視図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係るヘルメット用通話装置の構成を示し、(A)が背面図、(B)が断面図である。
図17】本発明の第3の実施形態に係るヘルメット用通話装置の使用例を示す斜視図である。
図18】本発明の第3の実施形態に係るヘルメット用通話装置をヘルメットから取り外したときの状態を示す斜視図である。
図19】本発明の第3の実施形態に係るヘルメット用通話装置の要部の構成を示し、(A)が背面図、(B)が断面図である。
図20】本発明の第4の実施形態に係るヘルメット用通話装置を頭部装着機器に取り付けるときの状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、ヘルメット用通話装置が取り付けられたヘルメットを頭部に使用者が装着した状態における、使用者側から見た状態での前後方向、上下方向、左右方向を示し、使用者の顔のある方向を前方向、その反対の方向を後方向と呼ぶこととする。
但し、以下に示す前後、上下、左右等の方向は、説明の便宜上示すものであり、本技術はこれらの方向に限定して適用されることはない。
【0042】
(第1の実施形態)
図1乃至図14を参照して、本発明の第1の実施形態のヘルメット用通話装置1(ヘルメット用通話装置)について説明する。
図1及び図2はヘルメット用通話装置1の使用例を示す斜視図、図3(A)(B)はその構成を示す斜視図、図4乃至図6の(A)乃至(H)はその外形を意匠的に表現した図、図7は斜視分解図、図8(A)(B)は要部の構成を示す斜視図、図9及び図10は要部の斜視分解図、図11(A)(B)は断面図、図12はその使用例を示す模式図、図13はその周波数特性を示すグラフ、図14は回路ブロック図である。
【0043】
図1は、ヘルメット用通話装置1が左側部に取り付けられたヘルメット1000(ヘルメット)を頭部に装着した使用者Uが、身に付けたスマートフォン等の携帯端末Sを介して、ヘルメット用通話装置1を用いて通話をしている状況を示すものである。ここで、ヘルメット用通話装置1について説明する前に、ヘルメット1000について、少し説明する。
【0044】
図1に示すように、ヘルメット1000は作業用ヘルメットまたは産業用保護帽と呼ばれるものであって、工事現場等において、飛来・落下物や墜落時、転倒時の頭部への衝撃を吸収して、頭部の損傷を防ぐ役目をするものである。作業用ヘルメットには、半球体の形状をしたMPタイプ、これに前ひさしの付いた野球帽タイプ、前ひさしが付いていてデザイン性も高いアメリカンタイプと呼ばれるものがあるが、ヘルメット1000はアメリカンタイプのものである。
【0045】
図1に示すように、ヘルメット1000は頭部を覆い保護する殻部でありABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂等でできた帽体1100(帽体)、衝撃を吸収等する図示されないハンモック等、そして頭部に固定し脱落を防ぐためのアゴひも1200を有している。帽体1100は、半球体の形状の帽体本体1110と前ひさし1120を有し、前ひさし1120に連続した縁部全周部には断面略U字形の形状の、首筋への雨垂れの侵入を防ぐ側溝部1130が形成されている。
【0046】
図1に示すように、ヘルメット用通話装置1は、略矩形の箱型に形成され、ヘルメット1000の左側部に取り付けられている。ここで、ヘルメット用通話装置1は、イヤホン、ヘッドホンのように耳を密閉することなく、使用者Uの耳の外側近傍であって、耳とは離間した位置に配置されている。
【0047】
図2は、ヘルメット用通話装置1がどのようにヘルメット1000に取り付けられているかを示す斜視図である。
図2に示すように、ヘルメット1000の左側面部に取付アダプター100(取付アダプター)が両面粘着テープ等で固定されている。そして、取付アダプター100にヘルメット用通話装置1を係合するように装着することにより、ヘルメット用通話装置1はヘルメット1000に固定される。
【0048】
図3(A)はヘルメット用通話装置1を表面方向から見た斜視図、図3(B)は裏面方向から見た斜視図である。
図3(A)に示すように、ヘルメット用通話装置1の本体部10表面の上部には操作部20が形成され、前方向から略半球状の形状をした電源ボタン21、通信表示22、充電表示23、音声マイクミュートつまみ24、音量つまみ25、接続コネクター26が配置されている。ここで、電源ボタン21を略半球状の形状として突出させているのは、使用者Uが手に作業用手袋等を付けていても、確実に操作ができるようにするためである。
【0049】
図3(B)に示すように、本体部10の裏面の上部には、四角い、略箱型の形状の裏面膨出部11が裏面側に突出している。裏面膨出部11には、取り付けアダプター100に係合する取り付けアダプター係合部12が形成されている。なお、取り付けアダプター100と取り付けアダプター係合部12がどのように係合するかは、後述するものとする。
【0050】
図3(B)に示すように、本体部10の裏面下部の後部には、略四角い形状の裏面側に開口した凹部である裏面凹部13(裏面凹部)が形成され、内部に音響発生ユニット30(音響発生ユニット)が固定されている。また、裏面の前部下端部にはマイク穴14を有する音声マイク保持部15が(音声マイク部)裏面方向に突出して形成されている。
図3(A)(B)に示すように、本体部10の後部が突出し、ヘルメット1000に固定されている取り付けアダプター100と紐等で連結してヘルメット用通話装置1の落下を防止するための、落下防止用本体穴16が形成されている。
【0051】
図4乃至図6の(A)乃至(H)は、ヘルメット用通話装置1の外形を意匠図的に表現したものである。すなわち、図4(A)はヘルメット用通話装置1を表面方向から見た参考斜視図、図4(B)は正面図、図5(C)は背面図、図5(D)は上面図、図5(E)は下面図、図6(F)は左側面図、図6(G)は右側面図、図6(H)は裏面方向から見た参考斜視図に、それぞれ相当する図である。
【0052】
図7は、ヘルメット用通話装置1の裏面方向から斜視した状態での分解図であり、この図を用いて、ヘルメット用通話装置1の内部の構成について説明する。
図7に示すように、ヘルメット用通話装置1の外装ケース40(筐体)は、樹脂製の表面ケース41と裏面ケース42を有している。裏面ケース42により、表面ケース41を裏面側から、蓋をするように覆うよう構成されている。また、表面ケース41の背面前上部には、電源ボタン保持板43が固定できるように構成されている。
【0053】
ここで、外装ケース40は、全体として防水構造となるように構成されている。すなわち、表面ケース41と裏面ケース42との組み立てに際しては、両者の互いに重なり合う部分に沿ってO(オー)リング44を介してネジで固定するようにして、水密に組み立てられる。なお、O(オー)リング44の代わりに、防水用両面テープ等を挟むようにして防水構造を構成してもよい。
【0054】
図7に示すように、電気関連部50は、メイン基板60とバッテリー51(バッテリー)、音声マイク52有している。メイン基板60上にはアンテナや、図示されない制御回路、スイッチ、LED等の電気部品53や、接続コネクター26がマウントされている。また、メイン基板60には、音響発生ユニット30からのケーブルがブッシュを介して水密に結線される。また、バッテリー51や音声マイク52のケーブルも結線されている。
【0055】
そして、電源ボタン21はシリコンゴム等の柔軟な材質からなり、電源ボタン保持板43により水密に保持され、その穴を介して、メイン基板60上の図示されないスイッチを押圧可能に構成される。また、通信表示22と充電表示23は導光管であって、メイン基板60上にマウントされたそれぞれの図示されないLEDの光を外部に導光し、電源ボタン保持板43により固定される。
【0056】
また、接続コネクター26は、パッキン付き防水USBコネクターであって、表面ケース41の側面の穴を介して、外部から接続可能に水密に配置される。なお、外部から接続可能な接続コネクター26の中に、粉体が入り込むのを防止できるよう、接続コネクター26を蓋状のもので着脱自在に塞ぐように構成してもよい。これは、例えば使用者Uが、粉体の出る環境で作業することができるようにするためである。
【0057】
また、音声マイクミュートつまみ24は防水ブッシュを介して、レバーやスライド板、圧縮コイルバネ等からなるクリック感付与部27を介し、メイン基板60上の図示されない音声マイクミュート切り替えスイッチを切り替える。なお、音声マイクミュートつまみ24は音声マイク52からの音をミュートするかどうかを切り替えて、上下どちらをミュートにするかは、別途設定が可能に構成されている。
【0058】
そして、裏面ケース42の前方下部に設けられている音声マイク穴14は、内側から図示されない防水シートによって水密に塞がれている。そして、音声マイク保持部15内側には、ウインドスクリーンのための図示されない風防発泡材を介して、ウレタンゴムからなる音声マイク防振保持部54に保持された音声マイク52(音声マイク部)が設けられている。
【0059】
図8(A)は音響発生ユニット30を裏面すなわち耳の方向から見た斜視図、図8(B)は表面方向から見た斜視図であり、図9は音響発生ユニット30の裏面方向から斜視した状態での分解図である。これらの図を用いて、音響発生ユニット30の構成について説明する。
【0060】
図9に示すように、音響発生ユニット30は、裏面方向から、音響ガイド部31(音響ガイド部)、樹脂からなり振動板の役目をするダイヤフラム32(振動板)、エキサイター70(エキサイター)、ダイヤフラム用ダンパー33(振動板ダンパー)、ユニット取付板34、振動板保持部35(振動板保持部)及び音声発生ユニット取付ダンパー36(固定板ダンパー)を有している。ダイヤフラム用ダンパー33の前部中央は前方向に突出していて、エキサイター70からのケーブルを水密に外部に出すブッシュの役目をしている。
【0061】
ここで、音響ガイド部31には、ダイヤフラム32から略所定間隔をもって蓋をするように覆っている音響ガイド膨出部37(音響ガイド膨出部)と、音響ガイド膨出部37の後下部の部分に長円型で筒状に形成された開口穴である音響ガイド筒部38(音響ガイド筒)が設けられている。また、音響ガイド部31の下端部の略U字型の部分は、表面側に突出する所定高さの壁状となっており、音響ガイド壁39が形成されている。
これらの構成がどのような機能をし、組み合わされるかについては後述する。
【0062】
次に、図10(A)(B)(C)を用いて、このヘルメット用通話装置1に使用されているエキサイター70の構成について説明する。図10(A)はエキサイター70を表面方向から見た斜視図、図10(B)は裏面方向から見た斜視図、図10(C)は表面方向から斜視した状態での分解図である。
【0063】
図10(A)(B)(C)に示すように、エキサイター70は、略長方形をした樹脂からなるエキサイターフレーム71を有し、中央には中空部を有している。この中空部中央には、略有底の円筒形をした振動伝達部72があり、略S字型をした4本のダンパー73、73、73、73で振動自在に保持され、振動伝達部72の一端の有底の部分は外部に突出し、この有底の部分の外面には両面粘着テープ74が貼付されている構成となっている。
【0064】
図10(C)に示すように、振動伝達部72の他端部の円筒形の外面に円筒形に巻かれたコイル75が嵌合されて接着剤等で固着される。コイル75の両端子は端子板76、76に接続されている。エキサイター70は、他のエキサイターと同様、磁気回路を形成する有底の円筒状をしたヨーク77と永久磁石78を有し、コイル75はヨーク77の側部内面と永久磁石78の側部外面との隙間に位置するよう保持される。そして、端子板76、76から駆動電力がコイル75に供給されると、コイル75はヨーク77と永久磁石78の隙間を往動し、4本のダンパー73、73、73、73に保持された振動伝達部72が振動を開始する構成となっている。
【0065】
図11(A)(B)は、ヘルメット用通話装置1の断面図であって、図11(A)は図6(H)におけるA-A断面を示し、図10(B)はB-B断面を示している。すなわち、どちらも音響発生ユニット30の中央の部分で切断しているが、音響ガイド筒部38の部分だけは、説明のため、音響ガイド筒部38の中央の部分で切断した図となっている。
【0066】
図11(A)に示すように、外装ケース40の表面ケース41と裏面ケース42は、O(オー)リング44を介して水密に組み立てられている。これは、ヘルメット用通話装置1を雨中や粉体等の多い過酷な場所で使用するときに、雨や粉体等が外装ケース40の内部に侵入するのを防止するためである。また、ヘルメット用通話装置1の中の上部から前部には、図示されないアンテナ等の電気部品53がマウントされた略L字状の形状のメイン基板60が保持されている。
【0067】
図11(A)(B)に示すように、裏面凹部13には、音響発生ユニット30が音声発生ユニット取付ダンパー36を介して固定され、音響発生ユニット30にはエキサイター70は保持されている。なお、図5(C)や図11(A)に示すように、音響発生ユニット30の上部は、裏面ケース42によって覆われているが、これは、音響発生ユニット30から発生した音声が、ヘルメット1000に邪魔をされずに耳に届くようにするためである。
それでは、図8図9図10(A)(B)及び図11(A)(B)を用いて、その構成と動作について詳しく説明する。
【0068】
図8図9図10(B)及び図11(A)(B)に示すように、音響発生ユニット30のダイヤフラム32の裏面略中央にエキサイター70の振動伝達部72の一端が両面粘着テープ74を介して固定される。ダイヤフラム32は、シリコン系等の軟質素材からなる弾性体であるダイヤフラム用ダンパー33の内側に設けられた溝に嵌め込まれ、ダイヤフラム用ダンパー33は、音響ガイド部31と振動板保持部35の間に挟み込まれるように固定される。また、振動板保持部35の底部の2つの穴は弾性体である音声発生ユニット取付ダンパー36の溝に嵌め込まれ、音声発生ユニット取付ダンパー36は、ユニット取付板34を用いて、裏面凹部13の底部の突起部にネジによって固定されている。
【0069】
すなわち、図11(A)に示すように、ダイヤフラム32は、ダイヤフラム用ダンパー33を介して区切られて、音響ガイド部31と振動板保持部35に保持されている。また、ダイヤフラム32とダイヤフラム用ダンパー33、そして音響ガイド部31と振動板保持部35によってその内部に生成された水密な空間の中空部に、ダイヤフラム32裏面に固定されたエキサイター70は保持される。また、音響発生ユニット30は、弾性体である音声発生ユニット取付ダンパー36を介して、裏面凹部13内に固定され保持されている。
ここでエキサイター70を水密な空間に保持するようにしたのは、ヘルメット用通話装置1を雨中や粉体等の多い過酷な場所で使用するときに、雨や粉体等がエキサイター70の内部に侵入するのを防止するためである
【0070】
図10(C)および図11(A)において、エキサイター70に音声信号の駆動電力が加えられると、鉄等の磁性体からなるヨーク77と永久磁石78から構成される磁気回路には大きな重量があるので、振動伝達部72の方が大きく振動する。そして、エキサイター70の振動伝達部72によりダイヤフラム32が振動し、音響発生ユニット30から音声が発生される。
【0071】
なおここで、大きな重低音の音の駆動電流の入力があった場合等には磁気回路も大きく振動して、ヨーク77の背面が中空部の内壁にぶつかって異音が発生する恐れがある場合には、ヨーク77の背面と内壁の間に低反発ウレタンフォーム等を挟むように構成してもよい。また、エキサイター70は、本実施形態では上記の形のものを用いたが、必要に応じ、他のいろいろな形のエキサイターを用いてもよいことは、勿論である。
【0072】
さてここで、図8図9及び図11(A)(B)を用いて、音響ガイド部31等の働きについて説明する。
音響ガイド部31は、2つの役割をしている。一つは、ダイヤフラム32との関係であり、もう一つは、裏面凹部13との関係である。以下、それぞれについて詳しく述べる。
【0073】
図8図9及び図11(A)(B)に示すように、ダイヤフラム32は、音響発生ユニット30内でダイヤフラム用ダンパー33に保持され、エキサイター70により振動し音響を発生させる。音響ガイド部31の音響ガイド膨出部37は、ダイヤフラム32から略所定間隔をもって蓋をするように覆っていて、その一部に音響ガイド筒部38が開口しているので、ダイヤフラム32からの音響を集音する役目をする。
【0074】
すなわち、ダイヤフラム32で発生した音響は、音響ガイド膨出部37によって集音され、音圧が上がり、開口である音響ガイド筒部38から、大きな音として、耳に向かって放出される。そのため、耳には、ダイヤフラム32で発生した音響の音圧レベルが上がった、指向性のある音が届けられる。また、音響ガイド筒部38の内面は筒状に構成されているため、より指向性が向上したものとなる。
【0075】
また、音響ガイド筒部38の内面は所定の長さの筒状に構成され、所定の開口面積を有し、音響ガイド筒部38の内側の音響ガイド膨出部37とダイヤフラム32とにより構成される空間は、所定の体積を有している。すなわち、所定の長さとの開口面積を持つ音響ガイド筒部38の筒状の部分と、その内側の所定の体積を持つ空間により、いわゆるヘルムホルツ共鳴が起こるように構成されている。ここでは、その共鳴周波数は概略3kHzに設定され、このヘルムホルツ共鳴により、高音域の3kHz近傍の音が増強されて、耳に届くように構成されている。
【0076】
ところで、ヘルムホルツ共鳴とは、開口部を持つ容器の内部にある空気がバネとして作用し、開口部が負荷となって作用することにより、これらの構成が共鳴(共振)することで音が発生することである。そして、バスレフ式スピーカーでは、ヘルムホルツ共鳴を用いて低音部の音響を増強したりするが、高音部は専用のスピーカーが用いられ、高音部の増強には用いられていない。今回、ヘルムホルツ共鳴を用いて高音部を増強させたのは、エキサイターを用いた音響装置ならではの問題を解決するためである。
【0077】
すなわち、エキサイターはもともと、取り付けたパネルや板を振動させ、空気を震わせて音を発生させる仕組みであり、低音部の音響を発生させることは容易だが、高音部の音響は難しいとされてきた。本発明の発明者は、エキサイターを用いて高音部を出すために、軽く小さな振動板を振動させて高音部を得るようにした。そして、耳に対して音圧を上げるため、振動板を覆い、小さな穴から集音して音をだすようにして、更に穴に筒状部を設け、指向性を持たせるようにした。
【0078】
そして、所定の容積を持ち筒状の開口部を持つことは、ヘルムホルツ共鳴の装置と類似することから、ヘルムホルツ共鳴の計算式を用いて、高音部の音が発生する形状にしてみたところ、高音部の音を増強することが分かったというものである。
いずれにせよ、エキサイターを用いた音響装置において、共鳴を用いて所定の周波数の高さの音響を増強させることを、今回、成功させることができた。
【0079】
次に、裏面凹部13との関係について説明する。
図3(B)、図7図11(A)(B)に示すように、裏面凹部13の開口されている部分には、音響発生ユニット30が固定される底部と底部を取り囲む裏面凹部側壁部17(裏面凹部側壁部)から構成され、裏面方向、すなわち略耳の方向に開口されている。ここで、裏面凹部側壁部17は、裏面ケース42と表面ケース41から伸びる壁状の部分が、相互に組み合わさり、音響発生ユニット30の側部を取り囲むような連続した側壁を構成している。
【0080】
図11(A)(B)に示すように、エキサイター70によりダイヤフラム32が振動すると、その振動はダイヤフラム用ダンパー33を介して、音声発生ユニット取付ダンパー36に保持されている音響発生ユニット30全体に伝わり、振動させる。このとき、ダイヤフラム用ダンパー33を介するために、音響振動のうち主に中低域から低音域の音が、音響発生ユニット30が振動することにより発生する。
【0081】
音響発生ユニット30が振動することにより発生した音響は、側部が裏面凹部13の裏面凹部側壁部17に囲まれているため、音響の発生方向がガイドされて、裏面凹部13の開口部のある裏面方向に音声が主に伝達される。すなわち、裏面凹部13は、音響発生ユニット30の振動により発生した音響に指向性を持たせて、使用者の耳の略方向に向けて音声が伝達されるようにしている。また、耳の略方向以外の方向へ音響が伝わることを減少させて、通話内容が外部に漏れるのを防ぐ働きをしている。
【0082】
さて、図8(B)及び図11(A)(B)に示すように、音響ガイド部31の下側部の略U字型の部分には、表面側に突出する所定の高さを持つ壁状の音響ガイド壁39が形成されている。そして、音響ガイド壁39は、裏面凹部13の裏面凹部側壁部17によって狭い間隔離間して囲まれている。また、音響ガイド部31の側部の音響ガイド壁39以外の部分も所定の肉厚を有し、裏面凹部側壁部17により狭い間隔離間して囲まれている。すなわち、音響ガイド部31の側部と裏面凹部側壁部17は、狭い間隔離間するよう構成され所定の開口面積を有し、離間部は音響ガイド壁39と側部の肉厚により、概略所定の高さを有する連続した空隙部となっている。そして、その空隙部の内側は、音響発生ユニット30と裏面凹部13の隙間から構成される所定の体積の内部空間を有していることになる。
【0083】
発明者は、この構成も、ヘルムホルツ共鳴の装置と類似するものと考えた。
すなわち、空隙部の内側の内部空間にある空気がバネとして作用し、空隙部が負荷となって作用することにより、ヘルムホルツ共鳴が起こるように構成されているものとした。そして、空隙部の開口面積と概略の平均高さと、内部空間の容積を基にして共鳴周波数を概略800Hzに設定して作成してみたところ、ヘルムホルツ共鳴により、中音域の周波数700Hzから1kHzの音が増強されたものとなった。この中音が増強された音響は、裏面凹部13により方向性が付けられ、耳に届くように構成されている。
なお、音響ガイド壁39を、音響ガイド部31の下側部だけでなく、側部の例えばすべてにつけるようにしてもよいことは、勿論である。
【0084】
またここで、図11(A)(B)に示すように、音響発生ユニット30が振動すると、その振動は音声発生ユニット取付ダンパー36を介して、外装ケース40全体に伝わり、振動させる。このとき、音声発生ユニット取付ダンパー36を介するために、音響振動のうち、中音部が減衰して、主に低音から重低音の音域の音響が、外装ケース40が振動することにより発生する。低音から重低音の音域の音響は距離が離れるに従って減衰が起こりやすいが、裏面凹部13により方向性が付けられるため増強され、耳に届きやすいように構成されている。
【0085】
図3(B)に示すように、音響発生ユニット30が固定されている裏面凹部13は、ヘルメット用通話装置1の裏面の後下部にあり、音声マイク52を有するマイク穴14は前下部に位置している。そのため、両者間を所定距離で離間させることができ、ハウリングやマイクノイズ等を起こすことを減少させることができた。また、ダイヤフラム32からの音響を直接発する音響ガイド筒部38は、音響ガイド膨出部37の後下部の音声マイク52から遠いところに位置しているため、更にハウリング等を起こすことを減少させることができた
【0086】
図12は、図1におけるC-C断面を示す模式断面図であって、ヘルメット1000に装着されたヘルメット用通話装置1と使用者Uの耳の位置の関係を示すものである。なお、この断面図では、音響発生ユニット30の中央の部分で切断しているが、音響ガイド筒部38の部分だけは、説明のため、音響ガイド開口部38の中央の部分で切断した図となっている。
【0087】
図12に示すように、音響ガイド筒部38と裏面凹部13は、開口部を略耳の方向に向けて、音響を発生するよう構成されており、これは、発生した音声が外部に漏れるのを軽減し、通話内容が外部に漏れるのを防止する働きをする。また、音響発生ユニット30の上部は裏面ケース42によって覆われているが、これは音響発生ユニット30の上部にはヘルメット1000があり、発生した音響がヘルメット1000の方向に行くのを防止するためである。
【0088】
図13は、ヘルメット用通話装置1において音響ガイド膨出部37がある通常の場合と、音響ガイド膨出部37がない場合の、音響発生ユニット30から5cm離れた位置で測定した周波数特性を示すグラフである。すなわち、音響ガイド部31から中央部の音響ガイド膨出部37の部分だけを取り去り、中央部が開口されて、ダイヤフラム32が剥き出しになったものの場合と、通常の形の音響ガイド筒部38の付いた音響ガイド部31のものの場合とを比較したものである。なおここで、この5cmという距離は、音響発生ユニット30から耳の鼓膜までの、概ねの距離である。
【0089】
図13に示すように、音響ガイド部31がある場合は、ない場合と比べて、特に周波数50Hzから600Hzの音域や周波数700Hzから1KHzの音域等、音域のほぼ全域において、10dB程度向上している。これは、音響ガイド膨出部37によって集音され、音響ガイド筒部38から音圧レベルの高い音として、耳に向かって放出された結果と考えられる。
【0090】
また、概略周波数3KHzをピークとして周波数2KHzから4KHzの音域では、20dB程度向上している。これは、音響ガイド筒部38の筒状の部分とその内側の所定の体積を持つ空間によるヘルムホルツ共鳴によるものと考えられる。なお、高音の音域が出すぎて、耳障りになるくらい大きくなってしまったときには、イコライザーを用いて簡単に調整が可能となる。すなわち、ある音域の音響が出ていない場合は、調整して大きくすると不自然な音になり難しいが、ある音域の音響が大き過ぎる場合は、調整して小さくしても自然な感じの音となり容易にできるものである。
【0091】
この測定により、音響ガイド筒部38が付きの音響ガイド膨出部37の、集音効果と共鳴による音響増強効果を確認することができた。
なお、この測定では、音響ガイド部3について、中央部の音響ガイド膨出部37の部分がない形のものと、音響ガイド膨出部37の部分がある通常の形のものとの比較であり、音響ガイド部31の側部の形は同一のもので行っている。すなわち、音響ガイド部31の側部と裏面凹部側壁部17等による共鳴による音響増強効果は、直接読むことはできないが、概略周波数800Hzをピークとする近傍が、大きくなっていることが分かる。
【0092】
以上のように、音響ガイド部31を有する音響発生ユニット30と音響ガイド部31により、小型のエキサイター70を用いても、十分な音圧レベルと、使用者Uが聴きやすい音質の音響が得られた。
このように、小型のエキサイター70を使用できることにより、より小型化、軽量化が可能となり、また消費電力も小さくできるので、より長時間化やバッテリーの小型化が可能となった。
【0093】
ところで、図1では、ヘルメット用通話装置1が取り付けられたヘルメット1000を頭部に装着した使用者Uが、携帯端末Sを介して、通話をしている状況と説明したが、これがどのように行われているかを説明する。
図14は、図1がどのように行われているかの詳細を示す回路ブロック図である。
図14に示すように、メイン基板60は、コントロール部61を有し、バッテリー51は電源部62を介して、表示部63と操作部64はそれぞれのインターフェイスを介して、コントロール部61に接続されている。
【0094】
図14に示すように、エキサイター70はコントロール部61に接続されたエキサイター駆動部65により駆動される。音声マイク52は音声マイク信号処理部66を介してコントロール部61に接続される。また、コントロール部61は通信部67(通信部)と接続され、通信部67を介して携帯端末Sと通信を行うよう構成されている。
【0095】
図14において、接続コネクター26であるUSBコネクターに図示されない外部ケーブルが接続されると、電源部62を介してバッテリー51の充電が行われる。このとき、表示部63に光を出す図示されないLEDが作動し充電表示23を赤く点灯して、充電が完了すると消灯する。また、接続コネクター26に外部ケーブルを接続させた状態で、コントロール部61のファームウェアのアップデート等を行うこともできる。
【0096】
図14において、操作部20の一つである電源ボタン21が長押しされると、ヘルメット用通話装置1が起動する。ここで、初めて電源をいれたときには、自動的にペアリングモードになり、通信表示22が赤と青を交互に点滅する。通信部67は携帯端末SとBluetooth(登録商標)接続して無線通信可能に構成されているので、ここでペアリングを行えば、以後は自動的に接続がされる。携帯端末Sと接続待ち、接続中の状態は、それぞれ異なる通信表示22の青色の点滅の仕方で表示がされる。また、携帯端末Sに接続された状態で、携帯端末Sによってファームウェアのアップデート等を行ったり、いろいろなヘルメット用通話装置1の設定を行ったりすることが可能となっている。
【0097】
また、図14において、操作部20として図示されない加速度センサーを有しており、ヘルメット用通話装置1またはヘルメット1000の表面を手の平でたたくようにしてタップ操作をすることができる。例えば、電話がかかってきたときに、タップを1回すれば通話が可能となり、もう1回タップすると電話を切ることができる。また、タップを2回すると、Siri(登録商標)やGoogleアシスタント(登録商標)等の音声アシスタントを立ち上げることができる。
【0098】
図14において、操作部20の別の一つである音声マイクミュートつまみ24を切り替えると、前述したように、音声マイク52からの音をミュートするかどうかを切り替えることができる。なお、音声マイクミュートつまみ24の上下のどちらをミュートにするかは、携帯端末Sにより設定が可能に構成されている。これは、使用者Uの使い勝手を優先させるためである。
【0099】
ここで、音声マイクミュートつまみ24を押し釦ではなく、メカニカルな切り替えつまみにしたのは、使用者Uが目視することなく、切り替えを把握できるようにするためである。そして、本体部10から音声マイクミュートつまみ24が飛び出しているため、使用者Uがグローブや軍手等をしていても、音声マイクミュートつまみ24の操作が可能となっている。
【0100】
また、操作部20の一つである音量つまみ25を回動させると、操作部64に組み込まれたロータリーエンコーダーが回動し、音量調節が可能となる。ここで、音量調節を手動で行えるようにしたのは、使用者Uが回りの状況や、通話の内容等から判断して、音量を変えられるようにするためである。
【0101】
図14において、音声マイク52は通話のとき等において、使用者Uの音声を捉えるためのものである。ここで、図1に示すように、音声マイク52の位置は、従来のようなアームを用いて口元付近にマイクを設置せず、口元から少し離間したところに配置してある。このように口元から少し離間した位置であっても、指向性があまり高いマイクでなければ、使用者Uの音声をマイクが十分に捕らえることができることは、発明者たちによって確認されている。
【0102】
それでは、図2図3(B)を用いて、ヘルメット用通話装置1がどのようにヘルメット1000に固定された取付アダプター100に係止されるかを説明する。
【0103】
図2に示すように、取付アダプター100は中央部に大きな平面状のヘルメット取付部101を有し、この裏面に両面粘着テープを用いてヘルメット1000に固定できるように構成されている。そして、ヘルメット取付部101の一段段差が付いた上下の端部には4つの被係止部102、上部中央にはロック解除レバー103、下部には落下防止取付穴104が設けられている。
【0104】
図3(B)に示すように、ヘルメット用通話装置1の取り付けアダプター係合部12には、4つの係止部18とロック解除レバー係合部19が設けられている。
図2に示すように、取り付けアダプター係合部12を取付アダプター100に押し付け、そのまま押し下げると、それぞれの係止部18が被係止部102に係止され、ロック解除レバー係合部19にロック解除レバー103に係合する。ヘルメット用通話装置1を取り外すときには、ロック解除レバー103を押しながら上部に持ち上げるようにすればよい。
【0105】
ここで、上下に所定高さを有するヘルメット取付部101から一段段差が付けて、ヘルメット1000から所定間隔離した位置にそれぞれの被係止部102を配置している。これは、ヘルメット1000にヘルメット用通話装置1を取り付けたときに、ヘルメット用通話装置1の背面とヘルメット取付部101との間を、所定間隔離するためである。すなわち、工事用ヘルメットではヘッドランプをヘルメット1000に取り付ける必要がある場合があり、この段差は、ヘッドランプを取り付けるための取り付けベルトを通すためのものである。
【0106】
図2に示すように、ヘルメット用通話装置1は落下防止用本体穴16を有し、取付アダプター100は落下防止取付穴104を有しているので、両者を図示されない落下防止用紐等で結びつけるようにすることが好ましい。これは、ヘルメット1000を頭部に装着した使用者Uが、例えば高所で作業中、不用意にヘルメット用通話装置1がヘルメット1000から外れてしまったような場合でも、ヘルメット用通話装置1の落下を防ぎ、ヘルメット用通話装置が紛失したり、壊れたり、または他人にぶつかったりすることを防止できるようにするためである。
【0107】
また、落下防止用紐の途中や端部に図示されない連結ロック部を設けてもよい。このような構成にすると、ヘルメット1000から連結ロック部で外してヘルメット用通話装置1を単独で、充電等をすることが可能となる。
なお、ここでは落下防止用紐を用いて説明したが、落下防止用ワイヤー等を用いてもよいことは、勿論である。
【0108】
以上説明したように、本実施形態のヘルメット用通話装置1では、音響発生ユニット30と、音声発生ユニット30が音声発生ユニット取付ダンパー36を介して固定される裏面凹部13により、主に音響を発生させているので、この音響を発生させる構成を音響発生部(音響発生部)ということとする。
【0109】
そして、エキサイター70によりダイヤフラム32が振動すると、発生した音響は、音響ガイド部31で集音されて、音圧レベルの高い音響が音響ガイド筒部38から放出されて耳に伝達される。また、音響発生ユニット30が振動して、裏面凹部13により指向性をもって、中音から低音の音域の音響が耳に届けられる。更に、音響発生ユニット30の振動が音声発生ユニット取付ダンパー36を介して固定される裏面凹部13に伝達され、低音から重低音の音域の音響が裏面凹部13から生じて、使用者の耳に伝達されるように構成されている。
【0110】
また、音響発生ユニット30の側部と裏面凹部側壁部17との空隙部と、その内部の空間により、周波数800Hzをピークとする周波数700Hzから1KHzの中域の音が共鳴して増強されるように構成されている。そのため、中域の音がより充実したものになった。
【0111】
そして、音響ガイド部31の内部の空間と音響ガイド筒により所定の周波数である3kHz近傍の高音の音が共鳴するように構成することにより、概略周波数3kHzをピークとする周波数3KHz近傍の音域での音響を増強して発生されるようになっている。ところで、人間の耳には特徴があって、聞こえやすい周波数は、3kHz前後とされている(「新しい「等ラウドネス曲線」が世界の音の評価基準に!」 インターネット〈産総研・サイエンス・タウン 暮らしの安全と快適のために 「人間の耳に合わせた国際基準?」 (aist.go.jp) 〉、(「聞こえやすい声」とは、どんな声? インターネット〈https://www.sasazuka-vocal.jp/blog/detail/2018121800025/〉。
【0112】
すなわち、高い周波数は、鼓膜を振動させやすくなって、結果的に聞こえやすくなるのだという。この「聞こえやすい声」というのは、ヘルメット用通話装置1のように、周囲の騒音があるような場所でも使用される機器では、たいへん重要である。ただし、3kHz前後の音だけでは、小さなラジオの音のようになり、人間の声らしく聞こえない。
【0113】
本実施形態では、エキサイター70によるダイヤフラム32の振動により音圧レベルの高い音響が発生して、中音から低音、そして、低音から重低音の音域の音響、更に周波数3KHz近傍の音域の増強された音響が、バランスよく音響発生部から耳に届けられる。そのため、人間の声らしい聴きやすい音響となり、コンパクトで軽量な構造でありながら、耳から離間させた位置にあっても通話内容等が良く聴こえるものとなった。また、耳の略方向以外の方向へ音声が伝わることを減少させて通話内容が外部に漏れるのを防ぐことができた。そして、コンパクトなヘルメット用通話装置1は、邪魔にならず、狭い場所での作業等でも有用に使用できる。
【0114】
このような音響を発する装置を、エキサイター70を用いた音響発生部ではなく、スピーカーで実現しようとした場合、大きな口径のスピーカーが必要となり、またそれに伴い、大きな電力も必要となり、ヘルメットに装着する通話装置としては、不適である。
【0115】
さて、本実施形態では、スマートフォン等の携帯端末Sを介して通話をするように構成されており、そのため、工事現場等の連絡等でたいへん便利に使用できる。
例えば、Facebook(登録商標)メッセンジャー等のグループ通話機能を用いれば、工事現場等の作業者全員に対する定時の連絡等や、緊急事態が生じたとき等の緊急連絡等も容易に実現できる。
また例えば、山奥のトンネル工事等の工事現場では、移動通信システム用の移動基地局を設置することにより、本社との連絡や作業者間の連絡等を容易に実現させることができる。
【0116】
また、携帯端末Sの通話機能だけでなく、その他の機能、例えば音声再生機能等も活用できる。
例えば、複雑な工程を伴う単独で行うような作業等の場合、その手順に沿った工程を予め音声で携帯端末Sに収録して、これを現場において音声で再生させれば、手順通りの抜けのない作業等を、両手を使って行うことが可能となる。
また例えば、各作業における最終点検項目等について、同様にして、携帯端末Sに読み上げさせながら、漏れのない点検等をすることが可能となる。
【0117】
なお、図3(A)に示すように、ヘルメット用通話装置1の表面には大きな平面を有しているので、ここに会社名や管理番号等を表示するためのラベル等を張り付けることができる。また、ラベルを貼るのではなく、直接、表面に印刷してもよい。また、当日の作業内容や、その作業に伴う注意事項等のメモ書きを貼付し、作業者全員で注意喚起等を行うようにしてもよい。
【0118】
またなお、図1図14に示すように、本実施形態では、ヘルメット用通話装置1はスマートフォン等の携帯端末Sを介して通話をするように構成しているが、これに限定されない。例えば、通信部67に通常のインカム等の無線機の機能を加えれば、ヘルメット用通話装置1単独での通話が可能となる。
【0119】
(第2の実施形態)
図15及び図16を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の構成を有しているが、音響発生ユニット30の一部の形状が異なり、また全体の厚さが薄くなっていて、工事現場等の通話に特化し、またより適合したものとなっている。
以下、第1の実施形態と同じ部分は同一符号を付し、説明を省略し、異なっている部分のみを説明する。
【0120】
図15(A)はヘルメット用通話装置1を表面方向から見た斜視図、図15(B)は裏面方向から見た斜視図であり、図16(A)は背面図、図16(B)は図15(B)におけるD-D断面を示す断面図である。ここで、図16(B)では、音響発生ユニット30の中央の部分で切断しているが、音響ガイド筒部38の部分だけは、説明のため、音響ガイド筒部38の中央の部分で切断した図を表している。
【0121】
図15(A)(B)に示すように、本実施形態のヘルメット用通話装置1は、第1の実施形態のものと、ほぼ同一の形状をしているが、音響発生ユニット30と裏面ケース42の形状が異なっている。
すなわち、図16(A)(B)に示すように、音響発生ユニット30の音響ガイド部31の上部が切り欠かれ、上部はダイヤフラム32が剥き出しとなり、この剥き出しの部分を、裏面ケース42の厚さを薄くして、覆うような構成となっている。
【0122】
このように構成することにより、ヘルメット用通話装置1の厚さをより薄くできたため、ヘルメット1000の側面からの突出を減ずることが可能となり、工事現場等ではより便利に使用できるものとなった。
しかしながら、ダイヤフラム32を音響ガイド部31がすべて覆わないため、その分、集音効果等も減ることになるが、このような構成でも、通話には十分な音質と音量が得られることは、確認されている。
【0123】
(第3の実施形態)
図17乃至図19(A)(B)を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態では、第1の実施形態と同様の音響発生構造等を有しているが、特に自転車用のヘルメットに適合したものとなっている。また、通話ばかりでなく、音楽等も使用者Uが楽しめるようにされたものとなっている。
以下、第1の実施形態と同じ部分は同一符号を付し、説明を省略し、異なっている部分のみを説明する。
【0124】
図17はヘルメット用通話装置1がヘルメット1000に取り付けている状態、図18はヘルメット1000から取り外した状態、図19(A)は右側の音響発生構造を示す裏面側から見た部分図、図19(B)は図19(A)におけるE-E断面を示す断面図である。ここで、図19(B)ではヘルメット1000を含む断面で表し、また、音響発生ユニット30の中央の部分で切断しているが、音響ガイド筒部38の部分だけは、説明のため、音響ガイド筒部38の中央の部分で切断した図を表している。またここで、図19(A)の二点鎖線FFは、図19(B)の状態のときのヘルメット1000の下端の位置を示している。
【0125】
まず、本実施形態で用いられるヘルメット1000について説明する。
図17及び図18に示すように、本実施形態のヘルメット1000は、第1の実施形態と同様に衝撃を受けたとき一時外力を分散させる役目をする帽体1100を有し、その内部には、衝撃力を吸収する役目をする発泡スチロール等でできたライナーを有している。また、転倒時等にヘルメットをしっかり保持するための顎ひもも有しているが、ここでは、その記載を省略している。ヘルメット1000の下端部には雨だれ用の側溝部を持たず横に切ったような形になっており、また後部には、少し凹んだ形のヘルメット凹部1300が2か所設けられている。
【0126】
図18に示すように、本実施形態のヘルメット用通話装置1は、上方から見たとき略U字形の形になる取り付けアーム80(アーム部)を有する。取り付けアーム80の左右下部には左右の形が面対称となる形で音声発生ユニット保持部81、81(音響発生部)が形成され、後部に回路電源収納部82(電源収納部)が形成されている。
【0127】
また、取り付けアーム80は、左側の音声発生ユニット保持部81から先が前方に突出して、音声マイク保持部83(アーム突出部)が形成されている。取り付けアーム80の音声発生ユニット保持部81、81の上部の左右内面には、ヘルメット係合部84、84が形成されている。また、取り付けアーム80の後部内面にはヘルメット凹部1300、1300に嵌るヘルメット凸部85、85が形成されている。
【0128】
図19(A)(B)に示すように、ヘルメット係合部84はヘルメット1000の下端部に所定のバネ力を持って係合するように構成されている。
すなわち、ヘルメット用通話装置1をヘルメット1000に装着するには、まず、ヘルメット1000の後部の後部内面にはヘルメット凹部1300、1300にヘルメット凸部85、85を当接して嵌める。次に、左右のヘルメット係合部84、84をヘルメット1000下端部に、下から押し込むように係合させれば、しっかりとヘルメット1000に装着させることができる。
【0129】
図18に示すように、回路電源収納部82は後方に四角い箱型に膨出し、内部に図示されないメイン基板60とバッテリー51が内蔵されている。また、左右の音声発生ユニット保持部81、81には、面対称の形をした音響発生ユニット30、30(音響発生部)が内向きに固定され、音声マイク保持部83には図示されない音声マイク52(音声マイク部)が内向きに固定されている。そして、メイン基板60と音響発生ユニット30、30、音声マイク52は、取り付けアーム80内に組み込まれた図示されないケーブルによって、結線されている。
【0130】
図18及び図19(A)(B)に示すように、音声発生ユニット保持部81、81は、内向きに開口部を向けた凹部形状の取り付けアーム裏面凹部86、86と、取り付けアーム裏面凹部86、86から後方に伸びる三角形の形の三角板87、87を有している。
そして、音響発生ユニット30、30は、第1の実施形態で説明したものと、構成が同様のため、同様の効果を生ずる。
【0131】
すなわち、ダイヤフラム32で発生した音響は、音響ガイド膨出部37によって集音され、音圧が上がり、開口である音響ガイド筒部38から、大きな音として、耳に向かって放出される。そのため、耳には、ダイヤフラム32で発生した音響の音量が上がった、指向性のある音が届けられる。また、音響ガイド筒部38の内面は筒状に構成されているため、より指向性が向上したものとなる。
【0132】
また、所定の長さとの開口面積を持つ音響ガイド筒部38の筒状の部分と、その内側の所定の体積を持つ空間により、いわゆるヘルムホルツ共鳴が起こるように構成されている。ここでは、その共鳴周波数は所定の周波数に設定され、このヘルムホルツ共鳴により、高音のその所定の周波数近傍の音が増強されて、耳に届くように構成されている。なおここで、所定の周波数は、特に3kHzにこだわらない。というのは、本実施形態のヘルメット用通話装置1では、通話も行うが、音楽等も楽しめるよう、音作りする必要があるからであり、それに適した周波数の音を増強させてもよいからである。
【0133】
そして、音響発生ユニット30が振動することにより発生した音響は、取り付けアーム裏面凹部86とヘルメット1000の下端面によって、側部と底部が囲まれている。そのため、音響の方向がガイドされて、裏面凹部13の開口部のある裏面方向に音声が主に伝達される。すなわち、裏面凹部13は、音響発生ユニット30の振動により発生した音響に指向性を持たせて、使用者の耳の略方向に向けて音声が伝達されるようにしている。また、耳の略方向以外の方向へ音響が伝わることを減少させて、通話内容や音楽等が外部に漏れるのを防ぐ働きをしている。
【0134】
またここで、図19(A)(B)に示すように、音響発生ユニット30が振動すると、その振動は音声発生ユニット取付ダンパー36を介して、音声発生ユニット保持部81に伝わり、振動させる。このとき、音声発生ユニット取付ダンパー36を介するために、音響振動のうち、中低音部が減衰され、主に低音から重低音の音域の音響が、取り付けアーム裏面凹部86や三角板87が振動することにより発生する。
【0135】
そして、低音から重低音の音域の音響は距離が離れるに従って減衰が起こりやすいが、取り付けアーム裏面凹部86により方向性が付けられるため増強され、耳に届きやすいように構成されている。
なおここで、本実施形態の音響ガイド部31は、第1の実施形態で説明した音響ガイド壁39等を有していない。そのため、中音の1kHz近傍の音の増強は特にされてはいないが、されるようにしてもよいことは、勿論である。
【0136】
図18に示すように、音声マイク52を有する音声マイク保持部83は、左側の音声発生ユニット保持部81から先が前方に突出して構成されている。そのため、音響発生ユニット30を音声マイク52から所定距離離間させることができ、ハウリングやマイクノイズ等を起こすことを減少させることができた。また、ダイヤフラム32からの音響を直接発する音響ガイド筒部38は、音響ガイド膨出部37の後下部に位置するよう構成されているため、音声マイク52から離間させ、更にハウリング等を起こすことを減少させることができた。
【0137】
以上述べたように、本実施形態の自転車用のヘルメット用通話装置1は、通話ばかりでなく、音楽も楽しむことができるものであり、サイクリング等で便利に使用することができるものとなった。なお、ヘルメット用通話装置1にメモリーを搭載し、ヘルメット用通話装置1だけで音楽を再生させて楽しめるように構成してもよいことは、勿論である。
【0138】
また、UberEats(登録商標)等のスマートフォンで注文した食事を自転車等で届けてくれるサービスがあるが、これらの配達員に、配達先を音声でナビゲートさせ案内させることもできるし、また本部との連絡も容易となる。
【0139】
また、例えば、スポーツ用のヘルメットについても適用してもよい。
例えば、スノーボード等の教室においては、インストラクターと生徒たちはスノーボード等用のヘルメットを装着している。これらのヘルメットにヘルメット用通話装置1を取り付ければ、グループ音声チャット機能を用いて、生徒の演技等に対するインストラクターの指導や、生徒からの質問とその答え等の音声を、メンバー全員で共有することが可能となる。なお、スノーボード用ヘルメットには耳当て部が付いているものがあるが、この場合も、外部の音は聞こえるよう構成されている。
その他、スキーやスケートボード等の他のスポーツでも、有効に活用が可能となる。
【0140】
なお、本実施形態の自転車用のヘルメットへの取り付け方は、その一例であって、ヘルメットの凹凸等形状に合わせて、取り付けアームの係合部を対応してもよいし、または、第1の実施形態のように、取付アダプターを介してもよいのは、勿論である。
【0141】
(第4の実施形態)
図20を参照して、本発明の第4の実施形態について説明する。
これらの実施形態では、第1の実施形態で説明したヘルメット用通話装置1を、ヘルメット1000ではなく、頭部装着機器の一つであるヘッドマウントディスプレイ2000に適用したものである。この場合、通話ばかりでなく、音楽や映画、ゲームも楽しめるよう、音響発生部の音作りを合わせるようにすることが好ましい。
以下、第1の実施形態と同じ部分は同一符号を付し、説明を省略し、異なっている部分のみを説明する。
【0142】
まず、ヘッドマウントディスプレイ2000について説明する。
図20に示すように、ヘッドマウントディスプレイ2000は、ディスプレイ部2100と、ディスプレイ部2100を頭部に装着するためのヘッドバンド2200を有している。ディスプレイ部2100には、いずれも図示されない有機EL(エレクトロ・ルミネセンス)ディスプレイ等の表示素子や接眼レンズ、ジャイロセンサー等が内蔵され、頭部の動きに合わせ、表示される画像も動くように構成されている。また、ヘッドバンド2200は、頭部の上部を結ぶ上部ヘッドバンド2210と鉢巻状の側部ヘッドバンド2220を有している。
【0143】
図20に示すように、側部ヘッドバンド2220の左右にそれぞれ取付アダプター100を固定する。そして、ヘルメット用通話装置1と、ヘルメット用通話装置1と面対称の形に構成された右側取付用のヘルメット用通話装置1をそれぞれの取付アダプター100を取り付けると、音響装置の付いたヘッドマウントディスプレイ2000となる。
【0144】
なおここで、左右のヘルメット用通話装置1、1は、一方がマスター、他方がスレーブのような関係になっており、マスター側で携帯端末S等と通信し、スレーブ側とともに、ステレオ音響や3D立体音響を発生させるように構成されている。
【0145】
本発明のヘルメット用通話装置1は、指向性が強くて音の定位が良いので、映画鑑賞やゲーム用等に便利に使用できる。例えばシューティングゲームに用いた場合には、相手の足音や、味方の位置等を音で状況を把握することができることになり、優位にゲームを進めることができる。また、一緒にゲームする仲間との通話も可能となる。
【0146】
特にVR(ヴァーチャル・リアリティ)ゲームでは、その世界で戦う・走るなどの動作や、自分が向いた方向に応じて変化する音を感じ取ることで、あたかもゲームの中に入り込んだかのような感覚を楽しめるものである。そのためにも、臨場感を感じられる3D立体音響を耳に対して発生することができる、このような音響装置は重要となる。
【0147】
以上説明したように、ヘルメット用通話装置1はヘルメットに限定されず、ヘッドマウントディスプレイ2000のようないろいろな頭部装着機器に用いてもよいことは勿論である。この場合、以下のようにも表現できる。
頭部装着機器を頭部に装着した使用者が音響を聞けるように、頭部装着機器に取り付け可能に構成された頭部装着機器用音響装置であって、音響装着機器用通話装置の音響発生部は、エキサイターによる振動板を振動させて音響を発生する音声発生ユニットを有することを特徴とする頭部装着機器用音響装置。
【0148】
本発明のヘルメット用通話装置は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述した実施の形態においては、ヘルメット用通話装置はヘルメットに対して着脱可能に構成されているが、最初からヘルメットと一体になるよう構成してもよい。この場合、ヘルメット用通話装置がヘルメットに組み込まれているので突出する部分が少なくなり、取り扱いがより容易になる。
【0149】
また例えば、本発明の音声発生ユニットを、ヘルメットのような使用者の頭部に装着される機器ではなく、使用者の頭部を支えるような機器に用いてもよい。そして、使用者の耳の近傍であって耳から離間した位置に、この音声発生ユニットを用いた音響発生部を配置すれば、使用者の耳に発生した音響を届けられることになる。
【0150】
このような使用者の頭部を支えるような機器には、例えば、自動車のヘッドレスト等が考えられる。自動車のヘッドレストの部分に、この音響発生部を組み込めば、シートに座っている使用者に、ヘッドレストから音響を届けられることになる。なおこの場合、音声発生ユニットを凹部状のものではなく、大きな平板状のものに取り付けるように構成してもよい。大きな平板状のものであれば、振動により低音域の大きな音響等を発生することが可能になると考えられるからである。
【0151】
また、このような使用者の頭部を支えるような機器には、例えば、ゲーミング・チェアのヘッドレスト等が考えられる。ゲーミング・チェアのヘッドレストの部分に、この音響発生部を組み込めば、モニターを見ながらゲームをしている使用者が、指向性の良い立体音響とともに、ゲームに没頭できることになる。
【0152】
その他、いろいろな機器等に、この音声発生ユニットを用いた音響発生部を組み込んでもよいのは勿論である。
【符号の説明】
【0153】
U 使用者
S 携帯端末
1 ヘルメット用通話装置
10 本体部
11 裏面膨出部
12 取り付けアダプター係合部
13 裏面凹部
14 マイク穴
15 音声マイク保持部
16 落下防止用本体穴
17 裏面凹部側壁部
18 係止部
19 ロック解除レバー係合部
20 操作部
21 電源ボタン
22 通信表示
23 充電表示
24 音声マイクミュートつまみ
25 音量つまみ
26 接続コネクター
27 クリック感付与部
30 音声発生ユニット
31 音響ガイド部
32 ダイヤフラム
33 ダイヤフラム用ダンパー
34 ユニット固定部
35 振動板保持部
36 音声発生ユニット取付ダンパー
37 音響ガイド膨出部
38 音響ガイド筒部
39 音響ガイド壁
40 外装ケース
41 表面ケース
42 裏面ケース
43 電源ボタン保持板
44 O(オー)リング
50 電気関連部
51 バッテリー
52 音声マイク
53 電気部品
54 音声マイク防振保持部
60 メイン基板
61 コントロール部
62 電源部
63 表示部
64 操作部
65 エキサイター駆動部
66 音声マイク信号処理部
67 通信部
70 エキサイター
71 エキサイターフレーム
72 振動伝達部
73 ダンパー
74 両面粘着テープ
75 コイル
76 端子板
77 ヨーク
78 永久磁石
80 取り付けアーム
81 音声発生ユニット保持部
82 回路電源収納部
83 音声マイク保持部
84 ヘルメット係合部
85 ヘルメット凸部
86 取り付けアーム裏面凹部
87 三角板
100 取付アダプター
101 ヘルメット取付部
102 被係止部
103 ロック解除レバー
104 落下防止取付穴
1000 ヘルメット
1100 帽体
1110 帽体本体
1120 前ひさし
1130 側溝部
1200 アゴひも
1300 ヘルメット凹部
2000 ヘッドマウントディスプレイ
2100 ディスプレイ部
2200 ヘッドバンド
2210 上部ヘッドバンド
2220 側部ヘッドバンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20