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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004832
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6557 20140101AFI20250108BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20250108BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20250108BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20250108BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20250108BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20250108BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20250108BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20250108BHJP
   H01M 10/6561 20140101ALI20250108BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20250108BHJP
【FI】
H01M10/6557
H01M50/209
H01M50/293
H01M50/291
H01M50/262 Z
H01M10/613
H01M10/647
H01M50/204 401H
H01M10/6561
H01M10/651
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104684
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 賢一
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC01
5H031KK08
5H040AA00
5H040AS04
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY05
5H040AY08
5H040CC23
5H040CC28
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】複数の蓄電セル及び樹脂枠がケースの開口側に向かって凸となるように変形するのを抑制することが可能な蓄電モジュールを提供すること。
【解決手段】蓄電モジュールは、複数の蓄電セルと、樹脂枠200と、ケースと、を備える。樹脂枠200は、一対の蓄電セル間に介在する介在部210と、冷却流体の流路を形成する流路形成部220と、を有する。流路形成部220は、介在部のうち第2方向における一方側の領域に設けられた一方側流路形成部222と、介在部のうち第2方向における他方側の領域に設けられた他方側流路形成部224と、を有する。一方側流路形成部222の断面二次モーメントは、他方側流路形成部224の断面二次モーメントよりも大きい。第1方向における他方側流路形成部224のばね定数は、第1方向における一方側流路形成部222のばね定数よりも大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並ぶように配置された複数の蓄電セルと、
前記複数の蓄電セルのうち互いに隣接する一対の蓄電セル間に配置された樹脂枠と、
前記第1方向における両側から前記複数の蓄電セルを拘束しながら前記複数の蓄電セル及び前記樹脂枠を収容しており、前記第1方向と直交する第2方向における一方側に向かって開口するケースと、を備え、
前記樹脂枠は、
前記一対の蓄電セル間に介在する介在部と、
前記介在部のうち前記蓄電セルと対向する面に設けられており、前記蓄電セルを冷却するための冷却流体の流路を形成する流路形成部と、を有し、
前記流路形成部は、
前記介在部のうち前記第2方向における前記一方側の領域に設けられた一方側流路形成部と、
前記介在部のうち前記第2方向における他方側の領域に設けられた他方側流路形成部と、を有し、
前記一方側流路形成部の断面二次モーメントは、前記他方側流路形成部の断面二次モーメントよりも大きく、
前記第1方向における前記他方側流路形成部のばね定数は、前記第1方向における前記一方側流路形成部のばね定数よりも大きい、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記他方側流路形成部は、
前記介在部から起立する起立部と、
前記起立部を包囲する包囲部と、を有し、
前記起立部は、前記包囲部から突出している、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記包囲部は、前記起立部と別体で構成されている、請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記包囲部は、前記起立部の圧縮弾性率よりも高い曲げ剛性を有する、請求項3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記起立部は、
前記包囲部を保持する保持部と、
前記保持部の先端に設けられており、前記介在部とともに前記包囲部を挟持する挟持部と、を有する、請求項3又は4に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2022-163449号公報には、複数の電池セルと複数の樹脂枠とを交互に配列方向に積層したスタックと、スタックを配列方向に圧縮した状態で収容するロアケースと、を備える電池パックが開示されている。ロアケースは、上向きに開口している。樹脂枠は、電池セルと向かい合う面の少なくとも一方に、配列方向に延びる複数の櫛歯を有している。複数の櫛歯は、電池セルの高さ方向の中央部よりも上側に位置する複数の上側櫛歯と、高さ方向の中央部よりも下側に位置する複数の下側櫛歯と、を含む。複数の上側櫛歯は、下側に位置する上側櫛歯ほど配列方向の櫛歯の高さが低くなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-163449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2022-163449号公報に記載される電池パックでは、複数の上側櫛歯における断面二次モーメントが複数の下側櫛歯における断面二次モーメントよりも大きい場合、スタックが上向きに凸となるように変形する懸念がある。
【0005】
本開示の目的は、複数の蓄電セル及び樹脂枠がケースの開口側に向かって凸となるように変形するのを抑制することが可能な蓄電モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に従った蓄電モジュールは、第1方向に並ぶように配置された複数の蓄電セルと、前記複数の蓄電セルのうち互いに隣接する一対の蓄電セル間に配置された樹脂枠と、前記第1方向における両側から前記複数の蓄電セルを拘束しながら前記複数の蓄電セル及び前記樹脂枠を収容しており、前記第1方向と直交する第2方向における一方側に向かって開口するケースと、を備え、前記樹脂枠は、前記一対の蓄電セル間に介在する介在部と、前記介在部のうち前記蓄電セルと対向する面に設けられており、前記蓄電セルを冷却するための冷却流体の流路を形成する流路形成部と、を有し、前記流路形成部は、前記介在部のうち前記第2方向における前記一方側の領域に設けられた一方側流路形成部と、前記介在部のうち前記第2方向における他方側の領域に設けられた他方側流路形成部と、を有し、前記一方側流路形成部の断面二次モーメントは、前記他方側流路形成部の断面二次モーメントよりも大きく、前記第1方向における前記他方側流路形成部のばね定数は、前記第1方向における前記一方側流路形成部のばね定数よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の蓄電セル及び樹脂枠がケースの開口側に向かって凸となるように変形するのを抑制することが可能な蓄電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態の蓄電モジュールの構成を概略的に示す平面図である。
図2図1におけるII-II線での断面図である。
図3】樹脂枠の正面図である。
図4図3におけるIV-IV線での断面図である。
図5図3におけるV-V線での断面図である。
図6】樹脂枠の変形例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態の蓄電モジュールの構成を概略的に示す平面図である。図2は、図1におけるII-II線での断面図である。この蓄電モジュール1は、例えば、車両に搭載される。
【0011】
図1及び図2に示されるように、蓄電モジュール1は、複数の蓄電セル100と、複数の樹脂枠200と、エンドプレート300と、ケース400と、弾性部材500と、を備えている。
【0012】
複数の蓄電セル100は、第1方向(図1における左右方向)に並ぶように配置されている。蓄電セル100として、例えば、リチウムイオン電池が挙げられる。各蓄電セル100は、扁平な直方体に形成されている。
【0013】
各樹脂枠200は、互いに隣接する一対の蓄電セル100間に配置されている。
【0014】
エンドプレート300は、第1方向におけるスタック(複数の蓄電セル100及び複数の樹脂枠200)の両側に配置されている。
【0015】
ケース400は、第1方向における両側から複数の蓄電セル100を拘束しながら複数の蓄電セル100及び樹脂枠200を収容している。ケース400は、第1方向と直交する第2方向における一方側(図2における上側)に向かって開口している。具体的に、ケース400は、スタックの下方に設けられた底壁410(図2を参照)と、第1方向におけるスタックの両側に配置された一対の拘束壁420(図1を参照)と、を有している。各拘束壁420は、第1方向における底壁410の端部から起立している。一対の拘束壁420は、第1方向における両側からスタックを拘束している。
【0016】
弾性部材500は、底壁410とスタックとの間に配置されている。弾性部材500は、第1方向に長く延びる形状を有している。弾性部材500は、スタックと底壁410との間に供給された冷却流体(空気等)が一対の蓄電セル100間を通ることなくスタックの側方(図2における左右方向)に抜けるのを抑制するための部材である。
【0017】
次に、図3図5を参照しながら、樹脂枠200について詳細に説明する。樹脂枠200は、介在部210と、流路形成部220と、を有している。
【0018】
介在部210は、一対の蓄電セル100間に介在している。介在部210は、互いに隣接する一対の蓄電セル100間の絶縁を確保する機能を有している。介在部210は、例えば、PPやPEからなる。
【0019】
流路形成部220は、介在部210のうち蓄電セル100と対向する面に設けられている。流路形成部220は、蓄電セル100を冷却するための冷却流体(底壁410とスタックとの間に供給される流体)の流路を形成している。図3において矢印で示されるように、流路形成部220は、介在部210の下方から上方に向かって供給される冷却流体を介在部210の側方(第1方向及び第2方向の双方と直交する方向)に向けて案内する形状に形成されている。なお、冷却流体の流れ方向は、上記矢印の向きと逆であってもよい。流路形成部220は、一方側流路形成部222と、他方側流路形成部224と、を有している。
【0020】
一方側流路形成部222は、介在部210のうち第2方向における前記一方側(ケース400が開口する側)の領域に設けられている。図4に示されるように、一方側流路形成部222は、介在部210を形成する材料と同じ材料で介在部210と一体的に形成されている。
【0021】
他方側流路形成部224は、介在部210のうち第2方向における他方側(本実施形態では底壁410側)の領域に設けられている。
【0022】
一方側流路形成部222の断面二次モーメントが他方側流路形成部224の断面二次モーメントよりも大きくなるように、流路形成部220の形状が設定されている。本実施形態では、図3に示されるように、一方側流路形成部222において幅方向(第1方向及び第2方向の双方と直交する方向)に連続的に延びる部位の体積は、他方側流路形成部224において幅方向に連続的に延びる部位の体積よりも大きい。
【0023】
第1方向における他方側流路形成部224のばね定数は、第1方向における一方側流路形成部222のばね定数よりも大きい。本実施形態では、他方側流路形成部224は、起立部225と、包囲部226と、を有している。
【0024】
起立部225は、介在部210から起立している。起立部225は、介在部210を形成する材料と同じ材料で介在部210と一体的に形成されている。
【0025】
包囲部226は、起立部225を包囲している。包囲部226の介在部210からの突出寸法は、起立部225の介在部210からの突出寸法よりも小さい。換言すれば、起立部225は、包囲部226から突出している。
【0026】
本実施形態では、包囲部226は、起立部225と別体で構成されている。図5に示されるように、起立部225は、包囲部226を保持する保持部225aと、保持部225aの先端に設けられた挟持部225bと、を有している。保持部225aは、介在部210とつながっている。挟持部225bは、介在部210とともに包囲部226を挟持している。すなわち、挟持部225bは、保持部225aからの包囲部226の離脱を阻止する機能を有している。
【0027】
包囲部226は、第1方向における起立部225の圧縮弾性率よりも高い曲げ剛性を有している。包囲部226は、金属や繊維強化プラスチック(FRP)等からなる。
【0028】
以上のように、本実施形態の蓄電モジュール1では、一方側流路形成部222の断面二次モーメントが他方側流路形成部224の断面二次モーメントよりも大きく、第1方向における他方側流路形成部224のばね定数が第1方向における一方側流路形成部222のばね定数よりも大きいため、スタック(複数の蓄電セル100及び樹脂枠200)が第2方向における一方側(ケース400が開口する側)に向けて凸となるように変形することが抑制される。
【0029】
なお、図6に示されるように、他方側流路形成部224は、介在部210及び一方側流路形成部222を形成する材料と異なる材料(例えば、PPS、PEEK、繊維強化PP/PE、ステンレス、鋼、アルミ)で形成されてもよい。この場合、樹脂枠200が2色成形により形成されてもよいし、介在部210に対して他方側流路形成部224が接続されてもよい。あるいは、図示は省略するが、一方側流路形成部222が、介在部210及び他方側流路形成部224を形成する材料と異なる材料(例えば、PPS、PEEK、繊維強化PP/PE、ステンレス、鋼、アルミ)で形成されてもよい。いずれの場合においても、第1方向における他方側流路形成部224のばね定数が第1方向における一方側流路形成部222のばね定数よりも大きくなるように一方側流路形成部222の材料及び他方側流路形成部224の材料が選定される。
【0030】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0031】
[態様1]
第1方向に並ぶように配置された複数の蓄電セルと、
前記複数の蓄電セルのうち互いに隣接する一対の蓄電セル間に配置された樹脂枠と、
前記第1方向における両側から前記複数の蓄電セルを拘束しながら前記複数の蓄電セル及び前記樹脂枠を収容しており、前記第1方向と直交する第2方向における一方側に向かって開口するケースと、を備え、
前記樹脂枠は、
前記一対の蓄電セル間に介在する介在部と、
前記介在部のうち前記蓄電セルと対向する面に設けられており、前記蓄電セルを冷却するための冷却流体の流路を形成する流路形成部と、を有し、
前記流路形成部は、
前記介在部のうち前記第2方向における前記一方側の領域に設けられた一方側流路形成部と、
前記介在部のうち前記第2方向における他方側の領域に設けられた他方側流路形成部と、を有し、
前記一方側流路形成部の断面二次モーメントは、前記他方側流路形成部の断面二次モーメントよりも大きく、
前記第1方向における前記他方側流路形成部のばね定数は、前記第1方向における前記一方側流路形成部のばね定数よりも大きい、蓄電モジュール。
【0032】
この蓄電モジュールでは、一方側流路形成部の断面二次モーメントが他方側流路形成部の断面二次モーメントよりも大きく、第1方向における他方側流路形成部のばね定数が第1方向における一方側流路形成部のばね定数よりも大きいため、複数のセル及び樹脂枠が第2方向における一方側(ケースが開口する側)に向けて凸となるように変形することが抑制される。
【0033】
[態様2]
前記他方側流路形成部は、
前記介在部から起立する起立部と、
前記起立部を包囲する包囲部と、を有し、
前記起立部は、前記包囲部から突出している、態様1に記載の蓄電モジュール。
【0034】
この態様では、起立部が第1方向に圧縮荷重を受けることによって起立部が第1方向と直交する方向に膨張しようとするのが包囲部によって制限されるため、他方側流路形成部のばね定数が一方側流路形成部のばね定数よりも大きくなる。
【0035】
[態様3]
前記包囲部は、前記起立部と別体で構成されている、態様2に記載の蓄電モジュール。
【0036】
この態様では、包囲部の厚みや材料を調整することによって簡単に他方側流路形成部のばね定数を調整することが可能となる。
【0037】
[態様4]
前記包囲部は、前記起立部の圧縮弾性率よりも高い曲げ剛性を有する、態様3に記載の蓄電モジュール。
【0038】
[態様5]
前記起立部は、
前記包囲部を保持する保持部と、
前記保持部の先端に設けられており、前記介在部とともに前記包囲部を挟持する挟持部と、を有する、態様3又は4に記載の蓄電モジュール。
【0039】
この態様では、包囲部が起立部から離脱するのが抑制される。
【0040】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1 蓄電モジュール、100 蓄電セル、200 樹脂枠、210 介在部、220 流路形成部、222 一方側流路形成部、224 他方側流路形成部、225 起立部、225a 保持部、225b 挟持部、226 包囲部、300 エンドプレート、400 ケース、410 底壁、420 拘束壁、500 弾性部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6