(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004837
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】自動運転車両
(51)【国際特許分類】
G06F 11/34 20060101AFI20250108BHJP
B60W 50/00 20060101ALI20250108BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20250108BHJP
G06F 11/30 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
G06F11/34 176
B60W50/00
G07C5/00 Z
G06F11/30 140D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104693
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 博充
(72)【発明者】
【氏名】大杉 雅道
【テーマコード(参考)】
3D241
3E138
5B042
【Fターム(参考)】
3D241BA43
3D241BA62
3E138AA07
3E138MA01
3E138MB03
3E138MB13
3E138MC11
3E138MC12
3E138ME04
5B042GB08
5B042JJ29
5B042MA08
5B042MA16
5B042MC22
5B042MC40
(57)【要約】
【課題】車両の自動運転を事後的に検証するためのデータを適切に保存すること。
【解決手段】車両が備える自動運転システムは自動運転の実行時に生成される自動運転データを保存する。自動運転システムは自動運転データを保存可能な記憶領域の空き容量に応じて保存モードを切り替える。保存モードは全保存モードと一部保存モードとを含む。全保存モードは記憶領域の空き容量が閾値以上のときに選択されるモードであって、自動運転データのうち全てのデータを保存するモードである。一部保存モードは記憶領域の空き容量が閾値未満のときに選択されるモードであって、自動運転データのうち一部のデータのみを保存するモードである。一部保存モードにおいて保存される自動運転データのうちの一部のデータは自動運転を再現可能なデータを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転が可能な車両において、
少なくとも一つのプロセッサと、
前記少なくとも一つのプロセッサにより実行される複数のインストラクションを記憶した少なくとも一つのメモリと、を備え、
前記複数のインストラクションは、前記少なくとも一つのプロセッサに、
前記自動運転の実行時に生成される自動運転データを保存することと、
前記自動運転データを保存可能な記憶領域の空き容量に応じて保存モードを切り替えることと、を実行させるように構成され、
前記保存モードは、
前記空き容量が閾値以上のときに選択される、前記自動運転データのうち全てのデータを保存する全保存モードと、
前記空き容量が前記閾値未満のときに選択される、前記自動運転データのうち一部のデータのみを保存する一部保存モードと、を含み
前記一部のデータは、前記自動運転を再現可能なデータを含む
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記全てのデータは、前記自動運転用の機械学習モデルに入力された入力データ、前記機械学習モデルによる計算過程で得られる途中計算データ、及び前記機械学習モデルの出力に基づき実行された車両制御の制御データの全てを含み、
前記一部のデータは、前記入力データと前記制御データの少なくとも一方を含む
ことを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項2に記載の車両において、
前記一部のデータは、前記制御データのみ、あるいは前記入力データのみを含む
ことを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項2に記載の車両において、
前記一部のデータは、前記途中計算データのみを含まない
ことを特徴とする車両。
【請求項5】
請求項2に記載の車両において、
前記一部のデータは、前記入力データと前記制御データのうちデータ量の少ないほうのデータである
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動運転が可能な車両に関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習モデルを利用して車両の自動運転を行う技術が知られている。特許文献1は、機械学習モデルの学習に使用可能な訓練データを収集する方法を開示している。本開示に関連する技術分野の技術水準を示す文献としては、特許文献1の他にも特許文献2及び特許文献3を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/116423号
【特許文献2】特許第6761002号公報
【特許文献3】特許第7156107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の自動運転を事後的に検証するための方法として、自動運転の実行時に生成される自動運転データをログデータとして車載記憶装置に保存することが考えられる。但し、車載記憶装置の容量には限界があるため、最低限必要なログデータを保存できないような状況を回避することが望まれる。
【0005】
本開示の1つの目的は、車両の自動運転を事後的に検証するためのデータを適切に保存することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は自動運転が可能な車両を提供する。本開示の車両は少なくとも一つのプロセッサと、少なくとも一つのプロセッサにより実行される複数のインストラクションを記憶した少なくとも一つのメモリとを備える。複数のインストラクションは少なくとも一つのプロセッサに自動運転の実行時に生成される自動運転データを保存させ、自動運転データを保存可能な記憶領域の空き容量に応じて保存モードを切り替えさせる。保存モードは全保存モードと一部保存モードとを含む。全保存モードは記憶領域の空き容量が閾値以上のときに選択されるモードであって、自動運転データのうち全てのデータを保存するモードである。一部保存モードは記憶領域の空き容量が閾値未満のときに選択されるモードであって、自動運転データのうち一部のデータのみを保存するモードである。一部保存モードにおいて保存される自動運転データのうちの一部のデータは自動運転を再現可能なデータを含む。
【発明の効果】
【0007】
全保存モードでは、自動運転の実行時に生成される自動運転データのうち全てのデータが保存されるので、自動運転を事後的に容易に検証することができる。一部保存モードでは、自動運転データのうち保存されるのは一部のデータのみであるが、保存されるデータには自動運転を再現可能なデータが含まれるので、自動運転の事後的な検証は可能である。本開示の車両によれば、全保存モードと一部保存モードとを記憶領域の空き容量に応じて切り替えることで、有限の記憶領域を有効に活用して自動運転の事後的な検証を行うためのデータを保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に係る車両の自動運転に関連する構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態に係る自動運転システムの構成例を示す概念図である。
【
図3】実施の形態に係る自動運転データの保存モードの切り替え処理の第1の例を説明するための概念図である。
【
図4】実施の形態に係る自動運転データの保存モードの切り替え処理の第2の例を説明するための概念図である。
【
図5】実施の形態に係る自動運転データの保存モードの切り替え処理の第3の例を説明するための概念図である。
【
図6】実施の形態に係る自動運転データの保存モードの切り替え処理の第4の例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.車両の自動運転
図1は本実施の形態に係る車両1の自動運転に関連する構成例を示すブロック図である。自動運転とは、車両1の操舵、加速、及び減速のうち少なくとも1つをオペレータによる運転操作によらず自動的に行うことである。自動運転は完全自動運転だけでなく、リスク回避制御、レーンキープアシスト制御、等も含む概念である。オペレータは車両1に搭乗するドライバであってもよいし、車両1を遠隔操作する遠隔オペレータであってもよい。
【0010】
車両1はセンサ群10、自動運転装置20、及び車両制御装置30を含んでいる。
【0011】
センサ群10は車両1の周囲の状況を認識するために用いられる認識センサ11を含んでいる。認識センサ11としては、カメラ、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。さらに、センサ群10は車両1の状態を検出する状態センサ12、車両1の位置を検出する位置センサ13、等を含んでいてもよい。状態センサ12としては、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ、等が例示される。位置センサ13としては、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサが例示される。
【0012】
センサ検出情報SENはセンサ群10によって得られる情報である。例えば、センサ検出情報SENはカメラによって撮影される画像を含んでいる。他の例として、センサ検出情報SENはLiDARによって得られる点群情報を含んでいてもよい。センサ検出情報SENは車両1の状態を示す車両状態情報を含んでいてもよい。センサ検出情報SENは車両1の位置を示す位置情報を含んでいてもよい。
【0013】
自動運転装置20は、認識部21、計画部22、及び制御量算出部23を含んでいる。
【0014】
認識部21はセンサ検出情報SENを受け取る。認識部21は認識センサ11により得られる情報に基づいて、車両1の周囲の状況を認識する。例えば、認識部21は車両1の周囲の物体を認識する。物体としては、歩行者、他車両(先行車両、駐車車両、等)、白線、道路構造物(例:ガードレール、縁石)、落下物、信号機、交差点、標識、等が例示される。認識結果情報RESは認識部21による認識結果を示す。例えば、認識結果情報RESは、車両1に対する物体の相対位置及び相対速度を示す物体情報を含む。
【0015】
計画部(planner)22は認識部21から認識結果情報RESを受け取る。また、計画部22は車両状態情報、位置情報、予め生成された地図情報を受け取ってもよい。地図情報は高精度3次元地図情報であってもよい。計画部22は受け取った情報に基づいて車両1の走行計画を生成する。走行計画は予め設定された目的地に到達するためのものであってもよいし、リスクを回避するためのものであってもよい。走行計画としては、現在の走行車線を維持する、車線変更を行う、追い越しを行う、右左折を行う、操舵する、加速する、減速する、停止する、等が例示される。さらに、計画部22は車両1が走行計画に従って走行するために必要な目標トラジェクトリTRJを生成する。目標トラジェクトリTRJは目標位置及び目標速度を含んでいる。
【0016】
制御量算出部23は計画部22から目標トラジェクトリTRJを受け取る。制御量算出部23は車両1が目標トラジェクトリTRJに追従するために必要な制御量CONを算出する。制御量CONは車両1と目標トラジェクトリTRJとの間の偏差を減少させるために要求される制御量であるということもできる。制御量CONは操舵制御量、駆動制御量、及び制動制御量のうち少なくとも一つを含む。
【0017】
認識部21はルールベースモデル及び機械学習モデルのうち少なくとも一方を含んでいる。ルールベースモデルは予め決められたルール群に基づいて認識処理を行う。機械学習モデルとしては、NN(Neural Network)、SVM(Support Vector Machine)、回帰モデル、決定木モデル、等が例示される。NNはCNN(Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。NNにおける各層の種類、層の数、ノード数は任意である。機械学習モデルは機械学習を通して予め生成される。認識部21はモデルにセンサ検出情報SENを入力することによって認識処理を行う。認識結果情報RESはモデルから出力される、あるいは、モデルからの出力に基づいて生成される。
【0018】
計画部22も同様に、ルールベースモデル及び機械学習モデルのうち少なくとも一方を含んでいる。計画部22はモデルに認識結果情報RESを入力することによって計画処理を行う。目標トラジェクトリTRJはモデルから出力される、あるいは、モデルからの出力に基づいて生成される。
【0019】
制御量算出部23も同様に、ルールベースモデル及び機械学習モデルのうち少なくとも一方を含んでいる。制御量算出部23はモデルに目標トラジェクトリTRJを入力することによって制御量算出処理を行う。制御量CONはモデルから出力される、あるいは、モデルからの出力に基づいて生成される。
【0020】
認識部21、計画部22、及び制御量算出部23のうち2以上は一体的に構成されていてもよい。認識部21、計画部22、及び制御量算出部23の全てが一体的に構成されていてもよい(End-to-End構成)。例えば、認識部21と計画部22は、センサ検出情報SENから目標トラジェクトリTRJを出力するNNにより一体的に構成されていてもよい。一体的構成の場合であっても、認識結果情報RESや目標トラジェクトリTRJといった中間生成物が出力されてもよい。例えば、認識部21と計画部22がNNにより一体的に構成される場合、認識結果情報RESはNNの中間層の出力であってよい。
【0021】
本実施の形態では、自動運転装置20を構成する認識部21、計画部22、及び制御量算出部23の少なくとも一部に機械学習モデルが利用される。すなわち、認識部21、計画部22、及び制御量算出部23のうち少なくとも1つは機械学習モデルを含んでいる。自動運転装置20は機械学習モデルを利用して車両1の自動運転のための情報処理の少なくとも一部を行う。
【0022】
車両制御装置30は操舵ドライバ31、駆動ドライバ32、及び制動ドライバ33を含んでいる。操舵ドライバ31は車輪を転舵する操舵装置に制御信号を与える。例えば、操舵装置は電動パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動ドライバ32は駆動力を発生させる駆動装置に制御信号を入力する。駆動装置としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制動ドライバ33は制動力を発生させる制動装置に制御信号を与える。車両制御装置30は自動運転装置20から出力される制御量CONを受け取る。車両制御装置30は制御量CONを目標値として操舵ドライバ31、駆動ドライバ32、及び制動ドライバ33のうち少なくとも1つを動作させる。これにより、車両1が目標トラジェクトリTRJに追従するように走行する。
【0023】
図2は本実施の形態に係る自動運転システム100の構成例を示す概念図である。自動運転システム100は車両1に搭載されており、車両1の自動運転のための情報処理を行う。自動運転システム100は上述の自動運転装置20の機能を少なくとも有する。さらに、自動運転システム100はセンサ群10や車両制御装置30を含んでいてもよい。
【0024】
自動運転システム100は1又は複数のプロセッサ110(以下、単にプロセッサ110と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ110は各種処理を実行する。プロセッサ110として、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、等が例示される。認識部21、計画部22、及び制御量算出部23は単一のプロセッサ110で実現されてもよいし、別々のプロセッサ110で実現されてもよい。また、自動運転システム100が車両制御装置30を含む場合、自動運転装置20と車両制御装置30とは単一のプロセッサ110で実現されてもよいし、別々のプロセッサ110で実現されてもよい。なお、別々のプロセッサ110は異なる種類のプロセッサ110を含んでもよい。
【0025】
自動運転システム100は1又は複数の記憶装置120(以下、単に記憶装置120と呼ぶ)を含んでいる。記憶装置120としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、等が例示される。記憶装置120は少なくともプログラム記憶領域130、モデルデータ記憶領域140、及びログデータ記憶領域150を含む。プログラム記憶領域130、モデルデータ記憶領域140、及びログデータ記憶領域150は単一の記憶装置120で実現されてもよいし、別々の記憶装置120で実現されてもよい。なお、別々の記憶装置120は異なる種類の記憶装置120を含んでもよい。
【0026】
プログラム記憶領域130には1又は複数のプログラムが格納されている。各プログラムは複数のインストラクションから構成されている。プログラムは車両1を制御するためのコンピュータプログラムであり、プロセッサ110によって実行される。プログラムを実行するプロセッサ110と記憶装置120との協働により、自動運転システム100による各種処理が実現されてもよい。プログラムはコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0027】
モデルデータ記憶領域140には自動運転に利用されるモデルデータが格納されている。モデルデータは認識部21、計画部22、及び制御量算出部23に含まれるモデルのデータである。上述の通り、本実施の形態では、認識部21、計画部22、及び制御量算出部23のうち少なくとも1つは機械学習モデルを含んでいるが、それらは既に訓練済みである(以下、機械学習モデルとは訓練済みの機械学習モデルを意味する)。機械学習モデルのパラメータはモデルデータに含まれる。
【0028】
ログデータ記憶領域150には自動運転の実行時に生成される自動運転データがログデータとして保存される。自動運転データは機械学習モデルを利用した自動運転に関連するデータである。自動運転データは機械学習モデルに入力された入力データ、機械学習モデルによる計算過程で得られる途中計算データ、及び機械学習モデルの出力に基づき実行された車両制御の制御データを含む。入力データはセンサ検出情報SENを含む。途中計算データは認識部21から出力される認識結果情報RES、計画部22から出力される目標トラジェクトリTRJ、及び制御量算出部23から出力される制御量CONの少なくとも1つを含む。途中計算データは認識部21による認識処理における判断の理由を含んでいてもよい。制御データは操舵ドライバ31から操舵装置に与えられる制御信号、駆動ドライバ32から駆動装置に与えられる制御信号、及び制動ドライバ33から制動装置に与えられる制御信号の少なくとも1つを含む。ログデータ記憶領域150にログデータとして記憶された自動運転データは、自動運転の事後的な検証に利用される。
【0029】
管理サーバ200は車両1の外部に存在する外部装置である。管理サーバ200は通信ネットワークを介して1又は複数の車両1と通信を行う。自動運転の最中、あるいは、自動運転の終了後、車両1のプロセッサ110はログデータ記憶領域150に保存されたログデータの少なくとも一部を管理サーバ200にアップロードしてもよい。プロセッサ110は管理サーバ200にアップロードしたログデータをログデータ記憶領域150から消去してもよい。
【0030】
管理サーバ200はデータベース220を有している。管理サーバ200は1又は複数の車両1からアップロードされるログデータを取得する。そして、管理サーバ200は取得したログデータをデータベース220に保管する。管理サーバ200は少なくとも所定期間、ログデータを保管する。ログデータは機械学習モデルを利用した自動運転の検証に利用される。
【0031】
2.自動運転データの適切な保存
機械学習モデルを利用した自動運転を高い確度で検証するためには、自動運転に関連する全ての自動運転データを保存したい。しかし、ログデータ記憶領域150の容量は有限である。このため、常に全ての自動運転データを保存しようとすると、自動運転の途中でログデータ記憶領域150が満杯になってしまう可能性がある。ログデータ記憶領域150が満杯になった場合、それ以降の自動運転において取得された自動運転データは保存することができない。
【0032】
機械学習モデルを利用した自動運転を検証する上で大事なことは、検証に必要な最低限のログデータを自動運転の開始から終了までの全ての期間にわたって残すことである。勿論、ログデータ記憶領域150の空き容量に余裕があるのであれば、自動運転に関連する全ての自動運転データをログデータとして保存しておくことが好ましい。
【0033】
本実施の形態では、自動運転データをログデータ記憶領域150に適切に保存するため、ログデータ記憶領域150の空き容量に応じて自動運転データの保存モードを切り替えることが行われる。保存モードには、全保存モードと一部保存モードとがある。全保存モードは自動運転データのうち全てのデータを保存する保存モードであって、ログデータ記憶領域150の空き容量が大きいときに選択される。一部保存モードは自動運転データのうち一部のデータのみを保存する保存モードであって、ログデータ記憶領域150の空き容量が小さいときに選択される。ただし、一部保存モードで保存されるデータはどのようなデータでも良いわけではなく、自動運転を再現可能なデータを含んでいる必要がある。
【0034】
モデルデータ記憶領域140に記憶されたプログラムには、プロセッサ110に自動運転データの保存モードを切り替えさせるためのインストラクションが含まれる。それらインストラクションがプロセッサ110によって実行されることにより、以下に例示するような保存モードの切り替え処理がプロセッサ110により実行される。
【0035】
2-1.第1の例
図3は自動運転データの保存モードの切り替え処理の第1の例を説明するための概念図である。この切り替え処理では、まず、ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値以上かどうか判定される。閾値は固定でもよいし可変値でもよい。閾値を固定値にする場合、例えば、ログデータ記憶領域150の容量の所定割合(例えば30%)を閾値に設定してもよい。閾値を可変値にする場合、例えば、自動運転の走行計画から残りの走行距離を計算し、残りの走行距離が少なくなるにつれて閾値を小さくしてもよい。
【0036】
ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値以上の場合、全保存モードにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。全保存モードで保存される自動運転データは、入力データ、途中計算データ、及び制御データの全てである。全保存モードでは、自動運転の実行時に生成される自動運転データのうち全てのデータが保存されるので、自動運転を事後的に容易に検証することができる。
【0037】
ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値未満の場合、一部保存モードAにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。自動運転データのうちの一部を保存する場合、保存するデータの選び方には様々な方法がある。一部保存モードAで保存されるデータは入力データ及び制御データである。言い換えれば、一部保存モードAでは途中計算データのみを保存しない。途中計算データを保存しないことで、ログデータ記憶領域150の空き容量のひっ迫を抑えることができる。一方、入力データと制御データは保存することで、自動運転における入力と出力との因果関係を検証することができる。
【0038】
2-2.第2の例
図4は自動運転データの保存モードの切り替え処理の第2の例を説明するための概念図である。この切り替え処理では、まず、ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値1以上かどうか判定される。閾値1は固定でもよいし可変値でもよい。閾値1を固定値にする場合、例えば、ログデータ記憶領域150の容量の所定割合(例えば40%)を閾値1に設定してもよい。閾値1を可変値にする場合、例えば、自動運転の走行計画から残りの走行距離を計算し、残りの走行距離が少なくなるにつれて閾値1を小さくしてもよい。
【0039】
ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値1以上の場合、全保存モードにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。全保存モードの内容については第1の例で説明した通りである。
【0040】
ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値1未満の場合、ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値2以上かどうか判定される。閾値2は固定でもよいし可変値でもよい。ただし、閾値2は閾値1よりも小さい値に設定される。閾値2を固定値にする場合、例えば、ログデータ記憶領域150の容量の所定割合(例えば20%)を閾値2に設定してもよい。閾値2を可変値にする場合、例えば、自動運転の走行計画から残りの走行距離を計算し、残りの走行距離が少なくなるにつれて閾値2を小さくしてもよい。
【0041】
ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値2以上の場合、一部保存モードAにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。一部保存モードAの内容については第1の例で説明した通りである。
【0042】
ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値2未満の場合、一部保存モードBにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。一部保存モードBで保存されるデータは制御データのみである。制御データのみ保存して入力データと途中計算データを保存しないことで、ログデータ記憶領域150の空き容量のひっ迫を抑えることができる。また、少なくとも制御データが保存されていれば、自動運転時にどのようなデータにより車両制御が行われたかを検証することができる。
【0043】
なお、ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値2未満の場合、制御データに代えて入力データのみをログデータ記憶領域150に保存してもよい。入力データのみ保存して途中計算データと制御用データを保存しないことで、空き容量のひっ迫を抑えることができる。また、少なくとも入力データが保存されていれば、入力データを機械学習モデルに入力することで、途中計算データも制御データも再現することができる。入力データのみを保存する保存モードを一部保存モードCという。
【0044】
2-3.第3の例
図5は自動運転データの保存モードの切り替え処理の第3の例を説明するための概念図である。この切り替え処理では、まず、ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値以上かどうか判定される。この閾値については第1の例で説明した通りである。
【0045】
ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値以上の場合、全保存モードにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。全保存モードの内容については第1の例で説明した通りである。
【0046】
ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値未満の場合、入力データ量と制御データ量とが比較される。比較される入力データ量と制御データ量はログデータ記憶領域150に記憶されているデータ量でもよい。比較される入力データ量と制御データ量は最近の所定期間において取得されたデータ量でもよい。
【0047】
入力データ量が制御データ量より大きい場合、一部保存モードBにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。一部保存モードBの内容については第2の例で説明した通りである。
【0048】
入力データ量が制御データ量以下の場合、一部保存モードCにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。一部保存モードCの内容については第2の例で説明した通りである。
【0049】
2-4.第4の例
図6は自動運転データの保存モードの切り替え処理の第4の例を説明するための概念図である。この切り替え処理では、まず、ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値以上かどうか判定される。この閾値については第1の例で説明した通りである。
【0050】
ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値以上の場合、全保存モードにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。全保存モードの内容については第1の例で説明した通りである。
【0051】
ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値未満の場合、一部保存モードDにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。一部保存モードDで保存されるデータは、入力データ、制御データ、及び途中計算データの一部である。保存される途中計算データは実際に車両制御に使用されたデータである。機械学習モデルの途中計算データを保存することで、例えば、認識部21で得られる認識結果と制御量算出部23で得られる制御量の妥当性を後に検証することが可能になる。途中計算データの一部を保存することには、例えば、全探索せずに枝刈り探索することが含まれる。その具体例としては、認識部21において全ての対象物の認識率が100%になるまで計算するのではなく、ある時間で打ち切ることを挙げることができる。別の具体例としては、計画部22におけるパスプランの計算において全てのパスプランを計算するのではなく、妥当な空間だけ探索することを挙げることができる。また、前方の認識結果のみを保存することや、近傍の認識結果のみを保存することも途中計算データの一部を保存することに含まれる。
【0052】
2-5.第5の例
ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値未満の場合、機械学習モデルが訓練済みであれば、一部保存モードCにて自動運転データをログデータ記憶領域150に保存するようにしてもよい。機械学習モデルが訓練済みであるなら、入力データを機械学習モデルに入力することで、途中計算データも制御データも再現することができるからである。一方、機械学習モデルが訓練済みでないなら、一部保存モードBにて自動運転データをログデータ記憶領域150に保存するようにしてもよい。
【0053】
2-6.第6の例
上述の第1~第5の例のうち2以上の組み合わせも可能である。例えば、第3の例は第2の例と組み合わされてもよい。ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値2未満の場合、入力データ量と制御データ量とを比較してより小さい方をログデータ記憶領域150に保存するようにしてもよい。
【0054】
また、第4の例は第1の例と組み合わされてもよい。ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値1以上の場合、全保存モードにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値1未満で閾値2以上の場合、一部保存モードDにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。そして、ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値2未満の場合、一部保存モードAにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。
【0055】
さらに、第4の例は第2の例と組み合わされてもよい。ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値1以上の場合、全保存モードにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値1未満で閾値2以上の場合、一部保存モードDにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値2未満で閾値3以上の場合、一部保存モードAにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。そして、ログデータ記憶領域150の空き容量が閾値3未満の場合、一部保存モードB又は一部保存モードCにて自動運転データがログデータ記憶領域150に保存される。
【符号の説明】
【0056】
1…車両、10…センサ群、20…自動運転装置、21…認識部、22…計画部、23…制御量算出部、30…車両制御装置、100…自動運転システム、120…記憶装置、150…ログデータ記憶領域