(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004839
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】車両側部構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/06 20060101AFI20250108BHJP
E05F 11/54 20060101ALI20250108BHJP
E05F 15/655 20150101ALI20250108BHJP
【FI】
B60J5/06 B
E05F11/54 A
E05F15/655
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104697
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 頼和
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA15
2E052EB01
2E052KA02
(57)【要約】
【課題】スライドドアが閉じている際に、スライドドアが車両幅方向内側から車両幅方向外側に押された場合に、スライドドアが車体の外側に押し出されることを抑制する。
【解決手段】乗降用開口と、乗降用開口の上縁に沿って車両前後方向に延びるアッパレール30Bとを有する車体側面構造体と、アッパレール30Bに案内されるアッパヒンジ32Bが取り付けられ、アッパヒンジ32Bとともに車両前後方向にスライドして乗降用開口を開閉するスライドドア22Bと、を備え、アッパヒンジ32Bは、スライドドア22Bの車両前後方向の第1端部22Bcの上部に取り付けられ、スライドドア22Bが閉じているときに、スライドドア22Bの第2端部22Bdの上部を車体側面構造体に係止する上部係止機構60Bを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗者が乗降する乗降用開口と、前記乗降用開口の上縁に沿って車両前後方向に延びるアッパレールと、を有する車体側面構造体と、
前記アッパレールに案内されるアッパヒンジが取り付けられ、前記アッパヒンジとともに車両前後方向にスライドして前記乗降用開口を開閉するスライドドアと、を備える車両側部構造であって、
前記アッパヒンジは、前記スライドドアの車両前後方向の第1端部の上部に取り付けられ、
前記スライドドアが閉じているときに、前記スライドドアの前記第1端部と車両前後方向で反対側の第2端部の上部を前記車体側面構造体に係止する上部係止機構を備えること、
を特徴とする車両側部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両側部構造であって、
前記上部係止機構は、
前記スライドドアの前記第2端部の上部に取り付けられたラッチと、
前記乗降用開口の前記上縁に配置された上ストライカと、を含み、
前記ラッチは、前記スライドドアが閉じた際に、前記上ストライカを係止することを特徴とする車両側部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両側部構造であって、
前記上ストライカは、前記ラッチが当接する位置に切り欠きが設けられていること、
を特徴とする車両側部構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両側部構造であって、
前記車体側面構造体は、
前記乗降用開口の側縁から当該乗降用開口を離れる方向に延びて前記車体側面構造体に配置されたセンタレールと、前記センタレールより低い位置で、前記乗降用開口の前記側縁の近傍に配置されたロアヒンジと、を備え、
前記スライドドアは、前記センタレールにガイドされるセンタヒンジと、前記ロアヒンジにガイドされるロアレールと、を備え、前記センタヒンジと前記ロアレールとともに車両前後方向にスライドして前記乗降用開口を開閉し、
前記センタヒンジは前記スライドドアの前記第2端部に取り付けられ、前記ロアレールは、前記スライドドアの下部に配置され、
前記スライドドアが閉じているときに、前記スライドドアの下部を前記車体側面構造体に係止する下部係止機構を備えること、
を特徴とする車両側部構造。
【請求項5】
請求項4に記載の車両側部構造であって、
前記下部係止機構は、前記乗降用開口の下縁を構成するフロアパネルに配置された開口と、
前記スライドドアの下部に配置され、前記開口の周縁の前記フロアパネルに係合可能なフックを含む下部係止ユニットと、を含むこと、
を特徴とする車両側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドアを備える車両の側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、側面に両開き式のスライドドアを備える車両において、スライドドアが閉じた際に、スライドドアの下端を車体のフロアに固定するロック機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車体に取り付けられたレールにガイドされ、開く際に車体の外側に向かって斜め後方にせりだした後、車体の側面に沿って後方にスライドするスライドドアを備える車両が用いられている。このような車両では、スライドドアが車両幅方向内側から車両幅方向外側に押された場合でも、スライドドアが車体の外側に押し出されないことが求められる。
【0005】
そこで、本開示は、スライドドアが閉じている際に、スライドドアが車両幅方向内側から車両幅方向外側に押された場合に、スライドドアが車体の外側に押し出されることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両側部構造は、搭乗者が乗降する乗降用開口と、前記乗降用開口の上縁に沿って車両前後方向に延びるアッパレールと、を有する車体側面構造体と、前記アッパレールに案内されるアッパヒンジが取り付けられ、前記アッパヒンジとともに車両前後方向にスライドして前記乗降用開口を開閉するスライドドアと、を備える車両側部構造であって、前記アッパヒンジは、前記スライドドアの車両前後方向の第1端部の上部に取り付けられ、前記スライドドアが閉じているときに、前記スライドドアの前記第1端部と車両前後方向で反対側の第2端部の上部を前記車体側面構造体に係止する上部係止機構を備えること、を特徴とする。
【0007】
このように、上部係止機構とアッパヒンジによってスライドドアの上部が車体側面構造体に支持されるので、スライドドアが閉じている際に、スライドドアが車両幅方向内側から車両幅方向外側に押された場合でも、スライドドアが車体の外側に押し出されることを抑制できる。
【0008】
本開示の車両側部構造において、前記上部係止機構は、前記スライドドアの前記第2端部の上部に取り付けられたラッチと、前記乗降用開口の前記上縁に配置された上ストライカと、を含み、前記ラッチは、前記スライドドアが閉じた際に、前記上ストライカを係止してもよい。
【0009】
これにより、簡便な構造でスライドドアの上部を車体側面構造体に支持できる。
【0010】
本開示の車両側部構造において、前記上ストライカは、前記ラッチが当接する位置に切り欠きが設けられてもよい。
【0011】
これにより、スライドドアが車両幅方向内側から車両幅方向外側に押された場合に、ラッチがストライカに対して下方向に移動してストライカの係止が外れることを抑制できる。
【0012】
本開示の車両側部構造において、前記車体側面構造体は、前記乗降用開口の側縁から当該乗降用開口を離れる方向に延びて前記車体側面構造体に配置されたセンタレールと、前記センタレールより低い位置で、前記乗降用開口の前記側縁の近傍に配置されたロアヒンジと、を備え、前記スライドドアは、前記センタレールにガイドされるセンタヒンジと、前記ロアヒンジにガイドされるロアレールと、を備え、前記センタヒンジと前記ロアレールとともに車両前後方向にスライドして前記乗降用開口を開閉し、前記センタヒンジは前記スライドドアの前記第2端部に取り付けられ、前記ロアレールは、前記スライドドアの下部に配置され、前記スライドドアが閉じているときに、前記スライドドアの下部を前記車体側面構造体に係止する下部係止機構を備えてもよい。
【0013】
これにより、スライドドアの上部に加え、スライドドアの上下方向中央部と、下部とが車体側面構造体に支持されるので、スライドドアが閉じている際に、スライドドアが車両幅方向内側から車両幅方向外側に押された場合に、スライドドア全体が車体の外側に押し出されることを抑制できる。
【0014】
本開示の車両側部構造において、前記下部係止機構は、前記乗降用開口の下縁を構成するフロアパネルに配置された開口と、前記スライドドアの下部に配置され、前記開口の周縁の前記フロアパネルに係合可能なフックを含む下部係止ユニットと、を含んでもよい。
【0015】
これにより、簡便な構造でスライドドアの下部を車体側面構造体に支持できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の車両側部構造は、スライドドアが閉じている際に、スライドドアが車両幅方向内側から車両幅方向外側に押された場合でも、スライドドアが車体の外側に押し出されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の車両側部構造を備える車両を示す斜視図である。
【
図2】実施形態の車両側部構造、特に左側の側部構造を示す斜視図である。
【
図3】アッパレールと、センタレールと、ロアヒンジにガイドされてスライドドアが開閉する動作と、スライドドアが閉じた際の上部係止機構とを示す説明図である。
【
図4】スライドドアと、アッパレールと、アッパヒンジと、上ストライカと、ラッチとを示す平面図である。
【
図6】スライドドアが車両幅方向外側に押された際のラッチ板の上ストライカの係止状態を示す断面図である。
【
図7】フロアパネルに配置された開口と、スライドドアに設けられた下部係止ユニットで構成される下部係止機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照しながら、実施形態の車両側部構造100について説明する。最初に
図1を参照しながら車両側部構造100を備える車両10について説明する。尚、各図に示す矢印FR、矢印UP、矢印LHは、車両10の前側、上側、左側をそれぞれ示している。また、各矢印FR、UP、LHの反対方向は、後側、下側、右側を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両10の前後方向の前後、左右方向の左右、上下方向の上下を示すものとする。また、車両10の左右方向(幅方向)において車両10の前後方向に延びる中心線に近い側を車幅方向内側、遠い側を車幅方向外側と記す。各図において、矢印OUTの向きが車幅方向外側である。
【0019】
図1は、車両10の外観を模式的に示す斜視図である。車両10は、概略直方体の車体12を有し、車体12の四隅に車輪14が配置される。車体12の前面の上側領域には、ウインドシールドガラス16が配置され、下側の領域の左右にはヘッドランプ18が配置されている。車体12の後面には、前面のウインドシールドガラス16と同形状のバックウインドガラス(不図示)が配置され、前面のヘッドランプ18と同じ位置にリアコンビネーションランプ(不図示)が配置されている。
【0020】
車体12の側面には、乗降用のドア20が配置されている。ドア20は、車体12の一方の側面に配置され、左側通行の地域では左側面に、右側通行の地域では右側面に配置される。また、ドア20を両側面に配置することもできる。ドア20は、車両10の前後方向に沿ってスライドする2枚のスライドドア22A、22Bを有し、スライドドア22A、22Bのスライドにより、ドア20が開閉する両開き式のドアである。後で
図3を参照して説明するように、スライドドア22A、22Bは、開くときに、閉じた状態からまずスライドしつつ車両10の幅方向外側に動き、その後、車体12の外側を車体側面に沿ってスライドする。スライドドア22A、22Bには、それぞれドアガラスが設けられドア窓が形成されている。スライドドア22A、22Bの窓以外の部分をドアパネル23A、23Bと記す。ドア20は、車両前後方向において、車体12の側面のほぼ中央に配置され、ドア20の前方および後方にサイドウインドウガラス24が配置され側方窓が形成されている。ドア20が配置されていない側面には、車体12の前後方向のほぼ全体にわたって側方窓が形成されている。
【0021】
図2は、車両側部、特に乗降口に関連する車両側部構造100を模式的に示す図である。
図2には、左側の車両側部構造100が示され、特に車体12の車体側面構造体26とスライドドア22A、22Bが互いに分離された状態で示されている。尚、車両10の右側にドアが設けられる場合、その構造は、図示する左側の構造と左右対称である。車体側面構造体26には、搭乗者等が乗降する際通過する乗降用開口28が形成されている。スライドドア22A、22Bは、乗降用開口28を開閉する。尚、
図2において、スライドドア22A、22Bは、背後が透けて見える状態で示されている。
【0022】
図2に示すように、車体側面構造体26は、ルーフサイドレール26aと、ロッカ(図示せず)と、前ピラー26cと、後ピラー26dと、フロアパネル56とを含んでいる。ルーフサイドレール26aは、車体側面構造体26の上部で車両前後方向に延びる長手の骨格部材である。ロッカは車体側面構造体26の下部で車両前後方向に延びる骨格部材である。前ピラー26cは、ルーフサイドレール26aとロッカとを車両上下方向に接続する骨格部材である。後ピラー26dは前ピラー26cより車両後方に配置されて、ルーフサイドレール26aとロッカとを車両上下方向に接続する骨格部材である。
【0023】
ルーフサイドレール26aと、前ピラー26cと、後ピラー26dと、フロアパネル56とは、長方形の乗降用開口28を区画する。ルーフサイドレール26aの下端は、乗降用開口28の上縁28aを構成する。また、前ピラー26cの後縁は、乗降用開口28の前側縁28cを構成し、後ピラー26dの前縁は乗降用開口28の後側縁28dを構成する。また、フロアパネル56の左端部は、乗降用開口28の下縁28bを構成する。
【0024】
スライドドア22A、22Bの概略形状も直方形であり、それぞれが乗降用開口28の約半分を覆う大きさを有している。2枚のスライドドア22A、22Bの上部をそれぞれ22Aa、22Baと記し、下部をそれぞれ22Ab、22Bbと記す。2枚のスライドドア22A、22Bの互いに閉じ合わさる端部、すなわちドア20を開いたときに乗降口を規定する端部を第1端部22Ac、22Bcと記し、第1端部22Ac、22Bcと車両前後方向で反対側の端部を第2端部22Ad、22Bdと記す。スライドドア22A、22Bの上部22Aa、22Baおよび下部22Ab、22Bbは、乗降用開口28の上縁28aおよび下縁28bに対応し、車両10の前後方向に沿って延びている。スライドドア22Aの第1端部22Acとスライドドア22Bの第1端部22Bcは、車両10の前後方向において互いに向き合っており、それぞれ上下方向に沿って延びている。スライドドア22Aの第2端部22Adは、スライドドア22Aが閉じているとき、乗降用開口28の前側縁28cに沿い、かつ隣接するように位置する。スライドドア22Bの第2端部22Bdは、スライドドア22Bが閉じているとき、乗降用開口28の後側縁28dに沿い、かつ隣接するように位置する。
【0025】
また、車両側部構造100は、スライドドア22A、22Bを閉じ位置に引き寄せ位置決めするとともに、スライドドア22A、22Bを車体側面構造体26に係止、又はロックする上部係止機構60A、60Bと、中央部ロック機構42A、42Bと、ドア係合機構46と、下部係止機構50A、50Bとを備えている。
【0026】
次に、
図2、
図3を参照しながら、各レールとスライドドア22A、22Bのスライド機構について説明する。
図3は、スライドドア22Bのスライドの様子を示す図であり、閉じた状態と、開いた状態が重ねて表されている。
図3の上部にはアッパレール30Bに関連する支持構造が、中央部にはセンタレール35Bに関連する支持構造が、下部にはロアレール38Bに関連する支持構造が示されている。なお、スライドドア22Aに係る構成は、スライドドア22Bに係る構成と前後対称である。
【0027】
図2に示すように、スライドドア22A、22Bは、車両10の上部、中央部、下部の3箇所においてスライド可能に支持されている。詳細には、スライドドア22A、22Bは、アッパレール30A、30Bと、センタレール35A、35Bと、ロアレール38A、38Bと、各レールに対して相対的にスライドするアッパヒンジ32A、32Bと、センタヒンジ36A、36Bと、ロアヒンジ40A、40Bと、によってスライド可能に支持されている。また、スライドドア22A、22Bは、駆動ユニット54A、54Bによってスライド駆動され、これらのレールによって案内されてスライドする。
【0028】
図2に示すように、アッパレール30A、30Bは、乗降用開口28の上縁28aに沿って車両前後方向に延びるように車体側面構造体26のルーフサイドレール26aに取付けられている。アッパレール30Aがスライドドア22Aに対応し、アッパレール30Bがスライドドア22Bに対応する。以下、同様に、スライドドア22Aに対応する要素の符号に「A」を付し、スライドドア22Bに対応する要素の符号に「B」を付す。
【0029】
図3に示すように、アッパレール30Bのスライドドア22Aに近い側の端が第1端部30Ba、スライドドア22Aから遠い側の端が第2端部30Bbである。
図3においては、アッパレール30B左端部が第1端部30Baであり、右端部が第2端部30Bbである。
図3に示すように、アッパレール30Bは、第1端部30Baに向けて車幅方向内側に湾曲しており、湾曲した部分よりも第2端部30Bb側では略直線形状となっている。
【0030】
図2に示すように、アッパヒンジ32A、32Bは、スライドドア22A、22Bの上部22Aa、22Baと第1端部22Ac、22Bcとが形成する角部に設けられている。アッパヒンジ32A、32Bは、対応するアッパレール30A、30Bとスライド可能に係合する。
図3に示すように、アッパヒンジ32Bは、スライドドア22Bに固定されるアッパヒンジ基部74と、アッパヒンジ基部74に対して回動可能なアッパヒンジブラケット76を含む。アッパヒンジブラケット76は、先端において、アッパレール30Bと係合するガイドローラ77を回転可能に支持している。スライドドア22Bがスライドするとき、アッパヒンジ32Bもスライドドア22Bと共にスライドする。アッパヒンジ32Aは、アッパヒンジ32Bと前後対象で同様の構成で、同様にスライドドア22Aと共にスライドする。
【0031】
図2に示すように、センタレール35A、35Bは、乗降用開口28の前側縁28cと後側縁28dから乗降用開口28を離れる方向に延びるように、車体側面構造体26に配置されている。センタレール35A、35Bは、アッパレール30A、30Bよりも低い位置に、例えば乗降用開口28の中央よりも少し下側の高さの位置に配置されている。
図3に示すように、センタレール35Bは、第1端35Baに向けて車幅方向内側に湾曲しており、湾曲した部分よりも第2端35Bb側では略直線形状となっている。センタレール35Bは、第2端35Bbに向けて、わずかに車幅方向内側に湾曲していてもよい。
【0032】
図2に示すように、センタヒンジ36A、36Bは、スライドドア22A、22Bの第2端部22Ad、22Bdの近傍で、センタレール35A、35Bが配置された高さに設けられている。センタヒンジ36A、36Bは、対応するセンタレール35A、35Bにスライド可能に係合する。
図3に示すように、センタヒンジ36Bは、スライドドア22Bに固定されるセンタヒンジ基部78と、センタヒンジ基部78に対して回動可能なセンタヒンジブラケット80を含む。センタヒンジブラケット80は、先端において、センタレール35Bに係合するガイドローラ81を回転可能に支持している。これにより、スライドドア22Bがスライドするとき、センタヒンジ36Bはスライドドア22Bと共にスライドする。これにより、スライドドア22Bが開いたとき、スライドドア22Bの第2端部22Bdが車体12に近づく。センタヒンジ36Aは、センタヒンジ36Bと前後対象で同様の構成で、同様にスライドドア22Aと共にスライドする。
【0033】
図2に示すように、ロアレール38A、38Bは、スライドドア22A、22Bの、センタレール35A、35Bより低い位置、例えばスライドドア22A、22Bの下部22Ab、22Bbの近傍に、下部22Ab、22Bbに沿って取付けられている。前ピラー26cのロアレール38Aが配置された高さにはロアヒンジ40Aが取り付けられている。ロアヒンジ40Aは、ロアレール38Aに対して相対的にスライド可能に係合する。また、後ピラー26dのロアレール38Bが配置された高さにはロアヒンジ40Bが取り付けられている。
【0034】
図3に示すように、ロアヒンジ40Bは、後ピラー26dに固定されるロアヒンジ基部82と、ロアヒンジ基部82に対して回動可能なロアヒンジブラケット84を含む。ロアヒンジブラケット84は、先端において、ロアレール38Bに対して相対的にスライド可能に係合するガイドローラ83を回転可能に支持している。これにより、ロアヒンジ40Bは、ロアレール38Bに対して相対的にスライド可能に係合する。スライドドア22Bがスライドするとき、ロアレール38Bもスライドドア22Bと共にスライドする。ロアレール38A、ロアヒンジ40Aは、ロアレール38B、ロアヒンジ40Aと前後対象で同様の構成で、同様にスライドドア22Aと共にスライドする。
【0035】
図2に示すように、駆動ユニット54A、54Bは、ルーフサイドレール26aに配置されている。駆動ユニット54A、54Bは、それぞれ駆動モータ(不図示)と、駆動モータとアッパヒンジ32A、32Bをつなぐワイヤなどの伝達要素(不図示)を含む。駆動モータにより、アッパヒンジ32A、32Bが、アッパレール30A、30Bに沿ってスライドし、これによりスライドドア22A、22Bがスライドして開閉する。
【0036】
図3に示すように、スライドドア22Bが、閉じた状態から開くとき、スライドドア22Bは、まず、矢印Y1で示されるように、各レール30B、35B、38Bの湾曲部分に案内されて、後方に向けて移動しつつ、車幅方向外側に向けて移動する。これにより、スライドドア22Bは、車体側面構造体26よりも車幅方向外側にせり出す。続けて、スライドドア22Bは、矢印Y2で示されるように、車体側面構造体26の外側を、その表面に沿って後方にスライドし、
図3において右側に示す開いた状態となる。
【0037】
スライドドア22Bを閉めるときは、上記と逆に動作し、スライドドア22Bが閉じ位置に来ると、後で説明する上部係止機構60Bと、中央部ロック機構42Bと、ドア係合機構46と、下部係止機構50Bが動作し、スライドドア22Bを閉じ位置に引き寄せ位置決めするとともに、車体側面構造体26に係止、又はロックする。
【0038】
もう1つのスライドドア22Aの開閉動は、上述のスライドドア22Bと同様であり、スライドの方向のみが反対向きとなる。上部係止機構60Aと、中央部ロック機構42Aと、ドア係合機構46と、下部係止機構50Aの動作とは、上記の上部係止機構60Bと、中央部ロック機構42Bと、ドア係合機構46と、下部係止機構50Bの動作と同様である。
【0039】
次に、
図2から
図5を参照しながら上部係止機構60Bの詳細について説明する。
図2、4、5に示すように、上部係止機構60Bは、上ストライカ34Bとラッチ33Bとで構成される。上部係止機構60Aは、上部係止機構60Bと前後対称の構造で、
図2に示す上ストライカ34Aとラッチ33Aとで構成される。
【0040】
図2に示すように、上ストライカ34A、34Bは、ルーフサイドレール26aの前ピラー26c側の端部と、後ピラー26dの側の端部に取付けられている。このように、上ストライカ34A、34Bは、乗降用開口28の上縁28aに配置されている。また、スライドドア22A、22Bの第1端部22Ac、22Bcと車両前後方向で反対側の第2端部22Ad、22Bdの上部には、それぞれラッチ33A、33Bが設けられている。後で
図4を参照して説明するように、スライドドア22A、22Bが閉じると、ラッチ33A、33Bは、上ストライカ34A、34Bを係止する。
【0041】
図4、
図5に示すように、上部係止機構60Bは、ラッチ33Bと、上ストライカ34Bとで構成される。ラッチ33Bは、上板331Bと、下板335Bと、ラッチ板332Bと、ピン333B、336Bとを含んでいる。ここで、
図4の上の図は、スライドドア22Bが閉まった状態におけるアッパレール30Bと、アッパヒンジ32Bと、上部係止機構60Bを示す。
図4の下の図は、上の図のA部の詳細であり、上部係止機構60Bの拡大平面図である。
【0042】
上板331Bは、車両幅方向内側に開放した略U字状の切り欠き部337Bを備える平板部材である。下板335Bは、上板331Bと同一形状の切り欠き部338Bを備える平板部材である。上板331Bと下板335Bとは2本のピン333B、336Bで上下方向に重ね合わせて固定されている。ラッチ板332Bは、車両前方に向かって開放する開口339Bを有するC字形の板部材である。ラッチ板332Bは、上板331Bと下板335Bとの間に挟み込まれて、ピン333Bの周りに回転可能に取付けられている。ラッチ板332Bは、
図4中の実線と一点鎖線で示す位置の間でピン333Bの周りに回転する。上板331Bはボルト334Bでスライドドア22Bの車両幅方向側のフレーム221Bに固定されている。
【0043】
図5に示すように、上ストライカ34Bは、ルーフサイドレール26aの下側に取付けられたブラケット261に固定されるU字型の部材であり、二本の脚部341B、342Bを含んでいる。二本の脚部341B、342Bは車両幅方向に並ぶようにルーフサイドレール26aに取付けられている。スライドドア22Bが閉じた状態では、上ストライカ34Bの二本の脚部341B、342Bはラッチ板332BのC字形の開口339Bの内部に車両幅方向に並んで位置し、ラッチ板332Bは二本の脚部341B、342Bを車両幅方向に係止する。
【0044】
図5に示すように、車両幅方向内側の脚部341Bの車両幅方向内側面には切り欠き343Bが設けられている。これにより、
図6に示すように、車両幅方向内側から車両幅方向外側に向かう力Fがスライドドア22Bに加わった際には、力Fによりラッチ板332Bが
図6中の矢印91に示すように、車両幅方向外側に移動する。すると、
図6中に矢印92で示すように、ラッチ板332Bの開口339Bの車両幅方向内側が上ストライカ34Bの車両幅方向内側の脚部341Bに当接する。これにより、力Fは上ストライカ34Bにより受け止められ、スライドドア22Bの第2端部30Bbの上部が、ラッチ33Bと上ストライカ34Bを介してルーフサイドレール26aに支持される。これにより、車両幅方向内側から車両幅方向外側に向かう力Fが加わった際に、スライドドア22Bの第2端部30Bbの上部が車両幅方向外側にせり出すことを抑制できる。また、この際、ラッチ板332Bが切り欠き343Bに入り込むので、ラッチ板332Bが上下方向にずれることが抑制される。これにより、ラッチ板332Bが上ストライカ34Bの車両幅方向内側の脚部341Bから外れることを抑制できる。
【0045】
尚、
図6では、車両幅方向内側から車両幅方向外側に向かう力Fがスライドドア22Bに加わった場合について説明したが、逆に、車両幅方向外側から車両幅方向内側に向かう力がスライドドア22Bに加わった場合には、ラッチ板332Bの開口339Bの車両幅方向外側が上ストライカ34Bの車両幅方向外側の脚部342Bに当接する。これにより、力は上ストライカ34Bにより受け止められ、スライドドア22Bの第2端部30Bbの上部が、ラッチ33Bと上ストライカ34Bを介してルーフサイドレール26aに支持される。これにより、例えば、側突の場合等に、スライドドア22Bが車両幅方向内側に移動することを抑制できる。
【0046】
次に中央部ロック機構42A、42Bについて説明する。
図2に示すように、中央部ロック機構42A、42Bは、前ストライカ43Aと第2端部ロックユニット44A、後ストライカ43Bと第2端部ロックユニット44Bで構成される。前ストライカ43Aは、前ピラー26cの上下方向の中央より下側に取り付けられている。第2端部ロックユニット44Aは、前ストライカ43Aに対応してスライドドア22Aの第2端部22Adに設けられている。同様に、後ストライカ43Bは、後ピラー26dの上下方向の中央より下側に取り付けられている。第2端部ロックユニット44Bは、後ストライカ43Bに対応してスライドドア22Bの第2端部22Bdに取り付けられている。第2端部ロックユニット44A、44Bは、対応する前ストライカ43A、後ストライカ43Bの棒状部分に掛かるフック(不図示)を含む。スライドドア22A、22Bが閉じたとき、フックが対応する前ストライカ43A、後ストライカ43Bに係合することで、スライドドア22A、22Bの第2端部22Ad、22Bdの上下方向の中央部が車体12に固定される。
【0047】
次にドア係合機構46について説明する。
図2に示すように、ドア係合機構46は、第1端部ストライカ47と第1端部ロックユニット48とで構成される。第1端部ストライカ47は、スライドドア22Aの第1端部22Acの上下方向において中央部に配置されている。第1端部ロックユニット48は、第1端部ストライカ47に対応して、スライドドア22Bの第1端部22Bcに設けられている。第1端部ロックユニット48は、第1端部ストライカ47の棒状部分に掛かるフック(不図示)を含む。スライドドア22A、22Bが閉じたとき、フックが対応する第1端部ストライカ47に係合することで、スライドドア22A、22B同士が互いに固定される。第1端部ストライカ47と第1端部ロックユニット48の配置に関しては、上記とは逆に、つまり第1端部ストライカ47をスライドドア22Bに、第1端部ロックユニット48をスライドドア22Aに取付けてもよい。
【0048】
次に
図2、
図7を参照しながら下部係止機構50A、50Bについて説明する。
図7に示すように、下部係止機構50Bは、開口68Bと、下部係止ユニット52Bで構成される。下部係止機構50Aは、下部係止機構50Bと前後対称の構成で、
図2に示す開口68Aと、下部係止ユニット52Aで構成される。
【0049】
図2に示すように、開口68A、68Bは、乗降用開口28の下縁28bの車両前後方向の中央に配置されている。スライドドア22Aの第1端部22Acと下部22Abとが形成する角部には、開口68Aに対応して下部係止ユニット52Aが設けられている。スライドドア22Bの第1端部22Bcと下部22Bbとが形成する角部には、開口68Bに対応して下部係止ユニット52Bが設けられている。
【0050】
図7に示すように、開口68Bは、乗降用開口28の下縁28bを規定するフロアパネル56に設けられている。開口68BはT字形状である。
【0051】
下部係止ユニット52Bは、フック66と、駆動モータを含むアクチュエータ70と、アクチュエータの駆動力をフック66に伝達するギヤ、リンク、レバー等を含む伝達機構72とを含む。フック66は、先端に爪66aを含み、フック66が図中の矢印Y3の方向に回動すると、爪66aが開口68B中に進入し、開口68Bの周縁のフロアパネル56に係合する。
【0052】
スライドドア22A、22Bが閉じたとき、フック66が対応する開口68A、68Bの周縁のフロアパネル56に係合することで、スライドドア22A、22Bの下部22Ab、22Bbが車体12に係止される。このように、下部係止機構50A、50Bは、フロアパネル56の開口68Aと下部係止ユニット52Aにより、またフロアパネル56の開口68Bと下部係止ユニット52Bにより、スライドドア22A、22Bの下部22Ab、22Bbを車体側面構造体26に係止する。
【0053】
以上説明したように、実施形態の車両側部構造100では、上部係止機構60A、60Bとアッパヒンジ32A、32Bによってスライドドア22A、22Bの上部22Aa、22Baが車体側面構造体26に支持されるので、スライドドア22A、22Bが閉じている際に、スライドドア22A、22Bが車両幅方向内側から車両幅方向外側に押された場合でも、スライドドア22A、22Bが車体12の外側に押し出されることを抑制できる。
【0054】
また、上部係止機構60A、60Bは、上ストライカ34A、34Bと、スライドドア22A、22Bが閉じた際に、上ストライカ34A、34Bを係止するラッチ33A、33Bとで構成されており、上ストライカ34Bは、ラッチ33Bが当接する位置に切り欠き343Bが設けられている。これにより、スライドドア22Bが車両幅方向内側から車両幅方向外側に押された場合に、ラッチ板332Bが上ストライカ34Bに対して下方向に移動して上ストライカ34Bの係止が外れることを抑制できる。上ストライカ34A、ラッチ33Aは、上ストライカ34B、ラッチ33Bと同様の構成で、同様に、スライドドア22Aが車両幅方向内側から車両幅方向外側に押された場合に、ラッチ板が上ストライカ34Aに対して下方向に移動して上ストライカ34Aの係止が外れることを抑制できる。
【0055】
また、車両側部構造100は、スライドドア22A、22Bが閉じた際に、スライドドア22A、22Bを車体側面構造体26に係止、又はロックする、中央部ロック機構42A、42Bと、下部係止機構50A、50Bと、を備えている。これにより、スライドドア22A、22Bが閉じた際に、スライドドア22A、22Bの上部22Aa、22Baに加えて、スライドドア22A、22Bの上下方向中央部と、下部22Ab、22Bbとが車体側面構造体26に支持される。これにより、スライドドア22A、22Bが閉じた際に、スライドドア22A、22Bが車両幅方向内側から車両幅方向外側に押された場合に、スライドドア22A、22Bが全体として車体12の外側に押し出されることを抑制できる。
【0056】
尚、以上の説明では、車両側部構造100のドア20は、スライドドア22A、22Bを含む両開き式のドアとして説明したが、これに限らず、例えば、一方のスライドドア22Bのみを含む片開き式ドアであってもよい。この場合、ドア係合機構46を備えないようにしてもよい。
【0057】
以上の説明では、上部係止機構60A、60Bは、上ストライカ34A、34Bと、ラッチ33A、33Bとで構成されるとして説明したがこれに限らない。例えば、下部係止機構50A、50Bと同様、脚部341B、342Bが車両前後方向に並ぶように上ストライカ34A、34Bをルーフサイドレール26aに取付け、ラッチ33A、33Bに代えて、
図7に示す下部係止ユニット52Bと同様の構造の上部係止ユニットをスライドドア22A、22Bに取付けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 車両、12 車体、14 車輪、16 ウインドシールドガラス、18 ヘッドランプ、20 ドア、22A、22B スライドドア、22Aa、22Ba 上部、22Ab、22Bb 下部、23A、23B ドアパネル、24 サイドウインドウガラス、26 車体側面構造体、26a ルーフサイドレール、26c 前ピラー、26d 後ピラー、28 乗降用開口、28a 上縁、28b 下縁、28c 前側縁、28d 後側縁、30A、30B アッパレール、32A、32B アッパヒンジ、33A、33B ラッチ、34A、34B 上ストライカ、35A、35B センタレール、36A、36B センタヒンジ、38A、38B ロアレール、40A、40B ロアヒンジ、42A、42B 中央部ロック機構、43A 前ストライカ、43B 後ストライカ、46 ドア係合機構、47 第1端部ストライカ、48 第1端部ロックユニット、50A、50B 下部係止機構、52A、52B 下部係止ユニット、54A、54B 駆動ユニット、56 フロアパネル、60A、60B 上部係止機構、66 フック、66a 爪、68 開口、68 T字開口、70 アクチュエータ、72 伝達機構、74 アッパヒンジ基部、76 アッパヒンジブラケット、77、81、83 ガイドローラ、78 センタヒンジ基部、80 センタヒンジブラケット、82 ロアヒンジ基部、84 ロアヒンジブラケット、100 車両側部構造、221B フレーム、261 ブラケット、331B 上板、332B ラッチ板、333B、336B ピン、334B ボルト、335B 下板、337B、338B 切り欠き部、339B 開口、341B、342B 脚部、343B 切り欠き。