(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004843
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】支援装置、支援方法および支援プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/377 20210101AFI20250108BHJP
A61B 5/374 20210101ALI20250108BHJP
【FI】
A61B5/377
A61B5/374
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104703
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 喜代美
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘高
(72)【発明者】
【氏名】坪田 孝志
(72)【発明者】
【氏名】石田 元彦
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127DD01
4C127DD02
4C127DD07
4C127GG03
4C127GG09
4C127GG10
4C127GG11
4C127GG15
(57)【要約】
【解決手段】対話が困難な状態の対象人物に対して、生体が働きかけをした場合の、対象人物の脳波情報を取得する情報取得部と、脳波情報に基づいて、対象人物の状態を判別する判別部とを備える支援装置を提供する。情報取得部は、対象人物の生体情報をさらに取得してよい。判別部は、脳波情報と生体情報とに基づいて、対象人物の状態を判別してよい。情報取得部は、働きかけの前における対象人物の脳波情報を取得してよい。判別部は、働きかけの前の脳波情報から、働きかけの後の脳波情報への変化と、生体情報とに基づいて、対象人物の状態を示す状態情報を生成し、生成した状態情報に基づいて対象人物の状態を判別してよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対話が困難な状態の対象人物に対して、生体が働きかけをした場合の、前記対象人物の脳波情報を取得する情報取得部と、
前記脳波情報に基づいて、前記対象人物の状態を判別する判別部と、
を備える支援装置。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記対象人物の生体情報をさらに取得し、
前記判別部は、前記脳波情報と前記生体情報とに基づいて、前記対象人物の状態を判別する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記働きかけの前における前記対象人物の脳波情報を取得し、
前記判別部は、前記働きかけの前の前記脳波情報から、前記働きかけの後の前記脳波情報への変化と、前記生体情報とに基づいて、前記対象人物の状態を示す状態情報を生成し、生成した前記状態情報に基づいて前記対象人物の状態を判別する、
請求項2に記載の支援装置。
【請求項4】
前記判別部は、前記働きかけの前の前記脳波情報における、予め定められた周波数帯における脳波の振幅の全体振幅に占める割合から、前記働きかけの後の前記脳波情報における、前記周波数帯における脳波の振幅の前記全体振幅に占める割合への変化と、前記対象人物の心拍における第1パワースペクトルの大きさの第2パワースペクトルの大きさに対する割合とに基づいて、前記状態情報を生成し、
前記全体振幅は、アルファ波、ベータ波、シータ波、ガンマ波およびデルタ波の振幅の和であり、
前記第2パワースペクトルの周波数帯域は、前記第1パワースペクトルの周波数帯域よりも高周波数の帯域である、
請求項3に記載の支援装置。
【請求項5】
前記判別部は、前記変化と、前記働きかけの後における前記第1パワースペクトルの大きさの前記第2パワースペクトルの大きさに対する割合と、前記第1パワースペクトルの大きさの前記第2パワースペクトルの大きさに対する割合の予め定められた閾値との大小関係とに基づいて、前記状態情報を生成する、
請求項4に記載の支援装置。
【請求項6】
前記状態情報は、前記対象人物の複数の状態に係る情報を含み、
前記判別部は、前記変化と、前記第1パワースペクトルの大きさの前記第2パワースペクトルの大きさに対する割合とに基づいて、前記複数の状態のうちの一の状態に係る前記状態情報を生成する、
請求項4に記載の支援装置。
【請求項7】
前記周波数帯の脳波は、デルタ波、シータ波、低アルファ波および中アルファ波の少なくとも一つである、請求項6に記載の支援装置。
【請求項8】
前記周波数帯の脳波は、高アルファ波、低ベータ波、高ベータ波およびガンマ波の少なくとも一つである、請求項6に記載の支援装置。
【請求項9】
前記脳波情報および前記働きかけと、前記対象人物の状態を予め定められた状態にする前記働きかけとの関係を機械学習することにより、前記脳波情報と、前記対象人物の前記状態とに基づいて、前記対象人物の状態を予め定められた状態にする前記働きかけを推論する働きかけ推論モデルを生成する学習部をさらに備える、請求項3に記載の支援装置。
【請求項10】
前記判別部により判別された前記対象人物の状態を提示する状態提示部をさらに備え、
前記情報取得部は、前記生体の属性を示す属性情報をさらに取得し、
前記状態提示部は、前記属性情報に基づいて、前記対象人物の状態を提示する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の支援装置。
【請求項11】
前記状態提示部は、前記属性情報に基づいて、前記対象人物の状態の提示態様を変化させる、請求項10に記載の支援装置。
【請求項12】
情報取得部が、対話が困難な状態の対象人物に対して、生体が働きかけをした場合の、前記対象人物の脳波情報を取得する情報取得ステップと、
判別部が、前記情報取得ステップにおいて取得された前記脳波情報に基づいて、前記対象人物の状態を判別する判別ステップと、
を備える支援方法。
【請求項13】
コンピュータに、
対話が困難な状態の対象人物に対して、生体が働きかけをした場合の、前記対象人物の脳波情報を取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップにおいて取得された前記脳波情報に基づいて、前記対象人物の状態を判別する判別ステップと、
を備える支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援装置、支援方法および支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「ユーザに意識させることなく、強化対象行為を強化する」と記載されている(要約書)。
特許文献2には、「VR空間内の操作者の分身の3次元移動制御を実現する」と記載されている(要約書)。
特許文献3には、「個人の脳の状態が拡張現実システムのパラメータを変調するフィードバック・ループを生み出す」と記載されている(要約書)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 国際公開第2019/082687号
[特許文献2] 特開2022-020057号公報
[特許文献3] 特表2021-511612号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、支援装置を提供する。支援装置は、対話が困難な状態の対象人物に対して、生体が働きかけをした場合の、対象人物の脳波情報を取得する情報取得部と、脳波情報に基づいて、対象人物の状態を判別する判別部とを備える。
【0004】
情報取得部は、対象人物の生体情報をさらに取得してよい。判別部は、脳波情報と生体情報とに基づいて、対象人物の状態を判別してよい。
【0005】
上記いずれかの支援装置において、情報取得部は、働きかけの前における対象人物の脳波情報を取得してよい。判別部は、働きかけの前の脳波情報から、働きかけの後の脳波情報への変化と、生体情報とに基づいて、対象人物の状態を示す状態情報を生成し、生成した状態情報に基づいて対象人物の状態を判別してよい。
【0006】
上記いずれかの支援装置において、判別部は、働きかけの前の脳波情報における、予め定められた周波数帯における脳波の振幅の全体振幅に占める割合から、働きかけの後の脳波情報における、周波数帯における脳波の振幅の全体振幅に占める割合への変化と、対象人物の心拍における第1パワースペクトルの大きさの第2パワースペクトルの大きさに対する割合とに基づいて、状態情報を生成してよい。全体振幅は、アルファ波、ベータ波、シータ波、ガンマ波およびデルタ波の振幅の和である。第2パワースペクトルの周波数帯域は、第1パワースペクトルの周波数帯域よりも高周波数の帯域である。
【0007】
上記いずれかの支援装置において、判別部は、働きかけの前の脳波情報における、予め定められた周波数帯における脳波の振幅の全体振幅に占める割合から、働きかけの後の脳波情報における、周波数帯における脳波の振幅の全体振幅に占める割合への変化と、働きかけの後における第1パワースペクトルの大きさの第2パワースペクトルの大きさに対する割合と、第1パワースペクトルの大きさの第2パワースペクトルの大きさに対する割合の予め定められた閾値との大小関係とに基づいて、状態情報を生成してよい。
【0008】
上記いずれかの支援装置において、状態情報は、対象人物の複数の状態に係る情報を含んでよい。判別部は、働きかけの前の脳波情報における、予め定められた周波数帯における脳波の振幅の全体振幅に占める割合から、働きかけの後の脳波情報における、周波数帯における脳波の振幅の全体振幅に占める割合への変化と、第1パワースペクトルの大きさの第2パワースペクトルの大きさに対する割合とに基づいて、複数の状態のうちの一の状態に係る状態情報を生成してよい。
【0009】
上記いずれかの支援装置において、周波数帯の脳波は、デルタ波、シータ波、低アルファ波および中アルファ波の少なくとも一つであってよい。
【0010】
上記いずれかの支援装置において、周波数帯の脳波は、高アルファ波、低ベータ波、高ベータ波およびガンマ波の少なくとも一つであってよい。
【0011】
上記いずれかの支援装置は、脳波情報および働きかけと、対象人物の状態を予め定められた状態にする働きかけとの関係を機械学習することにより、脳波情報と、対象人物の状態とに基づいて、対象人物の状態を予め定められた状態にする働きかけを推論する働きかけ推論モデルを生成する学習部をさらに備えてよい。
【0012】
上記いずれかの支援装置は、判別部により判別された対象人物の状態を提示する状態提示部をさらに備えてよい。情報取得部は、生体の属性を示す属性情報をさらに取得してよい。状態提示部は、属性情報に基づいて、対象人物の状態を提示してよい。
【0013】
上記いずれかの支援装置において、状態提示部は、属性情報に基づいて、対象人物の状態の提示態様を変化させてよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、支援方法を提供する。支援方法は、情報取得部が、対話が困難な状態の対象人物に対して、生体が働きかけをした場合の、対象人物の脳波情報を取得する情報取得ステップと、判別部が、情報取得ステップにおいて取得された脳波情報に基づいて、対象人物の状態を判別する判別ステップとを備える。
【0015】
本発明の第3の態様においては、支援プログラムを提供する。支援プログラムは、コンピュータに、対話が困難な状態の対象人物に対して、生体が働きかけをした場合の、対象人物の脳波情報を取得する情報取得ステップと、情報取得ステップにおいて取得された脳波情報に基づいて、対象人物の状態を判別する判別ステップとを備える。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】対象人物110に対して生体120が働きかけをする前の状況、および、働きかけをしている状況の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一つの実施形態に係る支援装置100の一例を示すブロック図である。
【
図5A】学習部40による学習の一例を示す図である。
【
図5B】働きかけ推論モデル42による推論の一例を示す図である。
【
図6】対象人物110に対して生体120が働きかけEnをする前の状況、および、働きかけEnをしている状況の他の一例を示す図である。
【
図7】本発明の一つの実施形態に係る支援方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一つの実施形態に係る支援装置100が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、対象人物110に対して生体120が働きかけをする前の状況、および、働きかけをしている状況の一例を示す図である。対象人物110は、例えば病気である、障害がある等の理由により、対話が困難な状態にある。対話が困難な状態とは、身体動作が困難であることにより身体動作による意思表示が困難な場合を含んでよい。生体120は、対象人物110に働きかけをすることにより対象人物110の潜在的な状態に影響を与え得る生命体である。生体120は、人間であってよく、犬、猫等の動物であってもよい。本例においては、生体120は人間である。
【0020】
対象人物110に対する働きかけを、働きかけEnとする。働きかけEnとは、対象人物110に対して話しかける、姿を見せる、接触する等、対象人物110の潜在的な状態に影響を与える動作、または、音楽をかける、空調を変える等、対象人物110の周囲の環境を変更する動作を指してよい。
図1の例では、人間である生体120が、入院中の対象人物110に対して「お見舞いに来たよ」と話しかけている。
【0021】
対象人物110の状態を、状態Sとする。状態Sは、対象人物110の潜在的な状態であってよい。対象人物110の潜在的な状態とは、対象人物110が自身では気付いていない、自己の心理状態である。状態提示部30は、状態Sを提示する。状態提示部30は、ディスプレイ、モニタ等であってよい。
【0022】
生体120が働きかけEnをする前の対象人物110の状態Sを、状態S1とする。生体120が働きかけEnをした場合の対象人物110の状態Sを、状態S2とする。状態S2は、生体120が働きかけEnをした後の対象人物110の状態Sである。
図1の破線部に、対象人物110の状態S1および状態S2が示されている。
図1の例では、生体120が働きかけEnをする前では、対象人物110は「いつも一人だし、つまらないな」と感じている。
図1の例では、生体120が働きかけEnをした後では、対象人物110は「今日はみんなが会いに来てくれて嬉しい」と感じている。
図1の例では、働きかけEnは、人間である生体120が対象人物110に自身の姿を見せること、および、「お見舞いに来たよ」と話しかけること、である。
【0023】
図2は、本発明の一つの実施形態に係る支援装置100の一例を示すブロック図である。支援装置100は、情報取得部10および判別部20を備える。支援装置100は、状態提示部30、状態学習部40、記憶部50および制御部90を備えてよい。情報取得部10は、認識部12を含んでよい。
【0024】
支援装置100の一部または全体は、コンピュータにより実現されてよい。制御部90は、当該コンピュータのCPU(Central Processing Unit)であってよい。支援装置100がコンピュータにより実現される場合、当該コンピュータには、当該コンピュータを支援装置100として機能させるためのプログラムがインストールされていてよく、後述する支援方法を実行させるためプログラムがインストールされていてもよい。
【0025】
対象人物110の脳波情報を、脳波情報Ibとする。情報取得部10は、対象人物110の脳波情報Ibを取得する。脳波情報Ibは、対象人物110の脳波の時間波形の少なくとも一部を再現する情報であってよい。脳波情報Ibは、脳波の時間波形をサンプリングしたデータを含んでよく、一つまたは複数の周波数における脳波の周波数成分の大きさを示すデータを含んでよく、他のデータを含んでもよい。例えば脳波情報Ibは、アルファ波、ベータ波、シータ波、デルタ波およびガンマ波の少なくとも一つの成分の大きさを示すデータを含む。
【0026】
アルファ波はさらに、周波数帯域により高アルファ波、中アルファ波および低アルファ波に分類される場合がある。ベータ波は、高ベータ波および低ベータ波に分類される場合がある。脳波情報Ibは、高アルファ波、中アルファ波および低アルファ波の少なくとも一つの大きさを示すデータを含んでもよい。脳波情報Ibは、高ベータ波および低ベータ波の少なくとも一方の大きさを示すデータを含んでもよい。
【0027】
脳波情報Ibは、対象人物110の頭および顔を含む頭部における一つまたは複数の位置で測定された、一つまたは複数の脳波の時間波形の情報を含んでよい。例えば脳波情報Ibは、国際10-20法のように、対象人物110の頭皮近傍に等間隔で配置された電極の電位の時間波形を測定することで取得されてよく、他の方法で取得されてもよい。頭皮に配置される複数の電極は、等間隔でなくてもよい。当該電極は、ヘッドギア、ヘッドホン、イヤホン、眼鏡等、対象人物110の頭部に装着するウェアラブル器具に設けられてもよい。脳波情報Ibは、対象人物110の体内に埋め込まれた電極における電気信号が、無線通信で取得された情報であってもよい。
図1の例では、脳波情報Ibは、無線により制御部90に送信される。
【0028】
対象人物110が状態S1の場合における対象人物110の脳波情報Ibを、脳波情報Ib1(
図1参照)とする。対象人物110が状態S2の場合における対象人物110の脳波情報Ibを、脳波情報Ib2(
図1参照)とする。情報取得部10は、脳波情報Ib2を取得する。情報取得部10は、脳波情報Ib1を取得してよい。判別部20は、脳波情報Ib2に基づいて対象人物110の状態S2を判別する。判別部20は、脳波情報Ib1に基づいて対象人物110の状態S1を判別してよい。
【0029】
状態提示部30は、判別部20により判別された状態Sを提示してよい。状態提示部30は、例えば対象人物110のアバターを提示し、アバターの表情、動作等により状態S2を提示する。
図1の例では、状態提示部30は、対象人物110の、「今日はみんなが会いに来てくれて嬉しい」と感じている状態S2を提示している。これにより、生体120は、対話が困難な対象人物110の状態S2を認知できる。
図1の例では、生体120は、対象人物110の状態S2を認知することにより、「あ、喜んでくれている」と感じている。
図1の例では、状態提示部30に表示される仮想動物の表情により、状態S2が提示されている。
【0030】
判別部20は、対象人物110の脳波の特定の周波数成分の大きさに基づいて、状態S1または状態S2を判別してよい。判別部20は、アルファ波、ベータ波、シータ波、デルタ波およびガンマ波のうちの一つまたは複数の成分の大きさに基づいて、状態S1または状態S2を判別してよい。
【0031】
あるタイミングにおけるアルファ波(8Hz以上14Hz未満)、ベータ波(14Hz以上26Hz未満)、シータ波(4Hz以上8Hz未満)、ガンマ波(26Hz以上40Hz未満)およびデルタ波(4Hz未満)の振幅の和を、全体振幅Asとする。一例として、対象人物110のデルタ波の振幅の全体振幅Asに占める割合が、アルファ波の振幅の全体振幅Asに占める割合、ベータ波の振幅の全体振幅Asに占める割合、シータ波の振幅の全体振幅Asに占める割合、および、ガンマ波の振幅の全体振幅Asに占める割合のいずれよりも大きい場合、対象人物110が睡眠状態と推測され得る。一例として、対象人物110の会談中におけるシータ波の振幅の全体振幅Asに占める割合が、対象人物110の会談前におけるシータ波の振幅の全体振幅Asに占める割合よりも大きい場合、対象人物110の疲労、眠気が増加していると推測され得る。
【0032】
一例として、対象人物110の低アルファ波(8Hz以上10Hz未満)の振幅と中アルファ波(10Hz以上12Hz未満)の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が、時間の経過に伴い増加している場合、対象人物110のリラックス度が増加していると推測され得る。
【0033】
一例として、対象人物110の高アルファ波(12Hz以上14Hz未満)の振幅と低ベータ波(14Hz以上18Hz未満)の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が、時間の経過に伴い増加している場合、対象人物110のリラックスと集中とのバランスが良い状態が増加していると推測され得る。リラックスと集中とのバランスが良い状態とは、所謂没頭状態である。
【0034】
対象人物110のリラックス度は、対象人物110の低アルファ波の振幅と中アルファ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が大きいほど、高い蓋然性が高い。このため、判別部20は、脳波情報Ib2における低アルファ波の振幅と中アルファ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が大きいほど、対象人物110のリラックス度が高いと判別してよい。対象人物110の没頭度は、対象人物110の高アルファ波の振幅と低ベータ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が大きいほど、高い蓋然性が高い。このため、判別部20は、脳波情報Ib2における高アルファ波の振幅と低ベータ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が大きいほど、対象人物110の没頭度が高いと判別してよい。
【0035】
判別部20は、働きかけEnの後における対象人物110の低アルファ波の振幅と中アルファ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が、働きかけEnの前における対象人物110の低アルファ波の振幅と中アルファ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合よりも大きい場合、対象人物110の安心感が増加していると判別してよい。判別部20は、働きかけEnの後における対象人物110の高アルファ波の振幅と低ベータ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が、働きかけEnの前における対象人物110の高アルファ波の振幅と低ベータ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合よりも大きい場合、対象人物110の没頭度が増加していると評価してよい。
【0036】
判別部20は、対象人物110のアルファ波、ベータ波、シータ波、デルタ波およびガンマ波のうちの複数の成分を組み合わせて、状態S1および状態S2の少なくとも一方を判別してもよい。例えば、対象人物110のアルファ波の大きさをベータ波の大きさで除算した値が大きいほど、対象人物110のリラックス度は高い蓋然性が高い。このため、判別部20は、対象人物110のアルファ波の大きさをベータ波の大きさで除算した値が大きいほど、対象人物110のリラックス度が高いと判別してよい。
【0037】
脳波情報Ib1には、対象人物110の潜在的な状態S1が反映され得る。脳波情報Ib2には、対象人物110の潜在的な状態S2が反映され得る。判別部20は、脳波情報Ib2に基づいて対象人物110の状態S2を判別する。支援装置100は、対象人物110の潜在的な状態S2を判別できる。状態提示部30が当該状態S2を提示することにより、生体120は対象人物110の状態S2を認知できる。
【0038】
図3は、情報取得部10の一例を示す図である。情報取得部10は、脳波情報Ibを測定可能な脳波計を有してよく、外部の脳波計が測定した脳波情報Ibを取得する通信機を有してもよい。本例の情報取得部10は、ヘッドギア式の脳波計である。情報取得部10は、イヤホン式の脳波計であってもよい。本例において、生体120は、ヘッドギア式またはイヤホン式の脳波計を装着した状態の対象人物110に、働きかけEnをする。これにより、情報取得部10は、対象人物110に働きかけEnをした場合の脳波情報Ib2を取得する。
【0039】
判別部20および制御部90(
図2参照)は、ヘッドギア式の脳波計の筐体に収容されていてよく、されていなくてもよい。判別部20および制御部90が当該筐体に収容されていない場合、情報取得部10により取得された脳波情報Ib2は、無線により制御部90に送信されてよい。
【0040】
状態提示部30は、
図3に示されるヘッドギアの筐体に収容されていてよく、されていなくてもよい。状態提示部30が当該ヘッドギアの筐体に収容されていない場合、状態提示部30は、当該ヘッドギアの筐体とは別途、設置されたディスプレイ、モニタ等であってよい。状態S1または状態S2に係る情報は、無線により状態提示部30に送信されてよい。
【0041】
対象人物110の生体情報を、生体情報Igとする。生体情報Igには、対象人物110の心拍情報、発汗量の情報および体温情報の少なくとも一つが含まれてよい。対象人物110の生体情報Igは、対象人物110が装着したウェアラブル器具(例えば
図3に示されるヘッドギア式の脳波計)に設けられたセンサにより取得されてよい。
【0042】
情報取得部10(
図2参照)は、対象人物110の生体情報Igをさらに取得してよい。情報取得部10は、生体120が対象人物110に対して働きかけEnをした場合の生体情報Igを取得してよい。判別部20(
図2参照)は、脳波情報Ib2と生体情報Igとに基づいて、対象人物110の状態S2を判別してよい。生体情報Igには、対象人物110の潜在的な状態Sが反映されやすい。例えば、対象人物110がストレスを感じている場合、対象人物110は、副交感神経よりも交感神経が優位な状態になりやすい。副交感神経よりも交感神経が優位な場合、対象人物110の心拍変動は小さくなりやすく、発汗量は大きくなりやすい。このため、判別部20は、脳波情報Ibおよび生体情報Igに基づくことにより、対象人物110の状態S2を適切に判別できる。
【0043】
判別部20(
図2参照)は、脳波情報Ibと生体情報Igとに基づいて、状態情報Isを生成してよい。状態情報Isとは、対象人物110の潜在的な状態Sに基づく情報である。判別部20は、脳波情報Ib1から脳波情報Ib2への変化と、生体情報Igとに基づいて、状態情報Isを生成してよい。判別部20は、状態情報Isに基づいて対象人物110の状態Sを判別してよい。
【0044】
対象人物110の心拍における第1パワースペクトルの大きさをLFとし、第2パワースペクトルの大きさをHFとする。第2パワースペクトルの周波数帯域は、第1パワースペクトルの周波数帯域よりも高周波数の帯域である。第1パワースペクトルの周波数帯域と第2パワースペクトルの周波数帯域とは重ならなくてよい。第1パワースペクトルの周波数帯域は、例えば0.04-0.15Hzである。第2パワースペクトルの周波数帯域は、例えば0.15-0.4Hzである。
【0045】
脳波情報Ib1における高ベータ波(18以上26Hz未満)およびガンマ波の振幅の全体振幅Asに占める割合から、脳波情報Ib2における高ベータ波およびガンマ波の振幅の全体振幅Asに占める割合への変化を、変化C1とする。判別部20は、変化C1と、HFに対するLFの割合(LF/HF)とに基づいて、状態情報Isを生成してよい。
【0046】
一例として、働きかけEnの後における対象人物110の高ベータ波の振幅とガンマ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が、働きかけEnの前における対象人物110の高ベータ波の振幅とガンマ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合よりも大きく、且つ、働きかけEnの後におけるHFに対するLFの割合(LF/HF)が閾値以上である場合、対象人物110のイライラ状態、神経過敏状態またはストレス状態が増加していると推測され得る。この場合、判別部20(
図2参照)は、対象人物110のイライラ状態、神経過敏状態またはストレス状態が増加していると判別してよい。
【0047】
HFに対するLFの割合(LF/HF)が当該閾値以上である場合、対象人物110は副交感神経よりも交感神経が優位の状態と判断されてよい。HFに対するLFの割合(LF/HF)が当該閾値未満である場合、対象人物110は交感神経よりも副交感神経が優位の状態と判断されてよい。当該閾値は、2であってよく、3であってもよく、4であってもよく、5であってもよい。
【0048】
一例として、働きかけEnの後における対象人物110の高ベータ波の振幅とガンマ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が、働きかけEnの前における対象人物110の高ベータ波の振幅とガンマ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合よりも大きく、且つ、働きかけEnの後におけるHFに対するLFの割合(LF/HF)が閾値未満である場合、対象人物110の興奮状態が増加していると推測され得る。この場合、判別部20(
図2参照)は、対象人物110の興奮状態が増加していると判別してよい。
【0049】
判別部20は、働きかけEnの後におけるHFに対するLFの割合(LF/HF)と、HFに対するLFの割合の閾値との大小関係と、変化C1とに基づいて、状態情報Isを生成してよい。当該閾値は、予め定められてよい。判別部20(
図2参照)は、働きかけEnの後における対象人物110の高ベータ波の振幅とガンマ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が、働きかけEnの前における対象人物110の高ベータ波の振幅とガンマ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合よりも大きく、且つ、働きかけEnの後におけるHFに対するLFの割合(LF/HF)が閾値以上である場合、対象人物110の警戒感が増加しているとの状態情報Isを生成してよい。判別部20は、働きかけEnの後における対象人物110の高ベータ波の振幅とガンマ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合が、働きかけEnの前における対象人物110の高ベータ波の振幅とガンマ波の振幅との和の全体振幅Asに占める割合よりも大きく、且つ、働きかけEnの後におけるHFに対するLFの割合(LF/HF)が閾値未満である場合、対象人物110の興奮度が増加しているとの状態情報Isを生成してよい。
【0050】
図4は、状態情報Isの一例を示す図である。状態情報Isは、対象人物110の複数の状態(第1状態Is-1~第n状態Is-n)に係る情報を含んでよい。本例においては、状態情報Isは、対象人物110の四つの状態(第1状態Is-1~第4状態Is-4)に係る情報を含む。
図4において、低周波数f1の脳波とは、デルタ波、シータ波、低アルファ波および中アルファ波の少なくとも一つを指し、高周波数f2の脳波とは、高アルファ波、低ベータ波、高ベータ波およびガンマ波の少なくとも一つを指す。
【0051】
対象人物110の脳波の振幅であって、予め定められた周波数帯における脳波の振幅を、振幅Afとする。働きかけEnの前における対象人物110の脳波の振幅Afを、振幅Af1とする。働きかけEnの後における対象人物110の脳波の振幅Afを、振幅Af2とする。予め定められた周波数帯における脳波とは、低アルファ波、中アルファ波、高アルファ波、低ベータ波、高ベータ波、ガンマ波およびシータ波の少なくとも一つであってよい。
【0052】
判別部20(
図2参照)は、振幅Af1の全体振幅Asに占める割合から、振幅Af2の全体振幅Asに占める割合への変化と、HFに対するLFの割合(LF/HF)とに基づいて、状態情報Isを生成してよい。当該状態情報Isは、対象人物110の複数の状態のうちの一の状態に係る状態情報Is(第1状態Is-1~第n状態Is-nのいずれか)であってよい。
【0053】
本例において、第1状態Is-1は、低周波数f1の脳波において、振幅Af2の全体振幅Asに占める割合が、振幅Af1の全体振幅Asに占める割合よりも大きく、且つ、働きかけEnの後におけるHFに対するLFの割合(LF/HF)が閾値以上である場合の対象人物110の状態である。対象人物110が第1状態Is-1である場合、対象人物110の疲労状態、眠気状態が増加していると推測され得る。対象人物110が第1状態Is-1である場合、判別部20(
図2参照)は、対象人物110の疲労状態、眠気状態が増加しているとの状態情報Isを生成してよい。
【0054】
本例において、第2状態Is-2は、低周波数f1の脳波において、振幅Af2の全体振幅Asに占める割合が、振幅Af1の全体振幅Asに占める割合よりも大きく、且つ、働きかけEnの後におけるHFに対するLFの割合(LF/HF)が閾値未満である場合の対象人物110の状態である。対象人物110が第2状態Is-2である場合、対象人物110のリラックス状態が増加していると推測され得る。対象人物110が第2状態Is-2である場合、判別部20(
図2参照)は、対象人物110の安心度が増加しているとの状態情報Isを生成してよい。
【0055】
本例において、第3状態Is-3は、高周波数f2の脳波において、振幅Af2の全体振幅Asに占める割合が、脳波Af1の全体振幅Asに占める割合よりも大きく、且つ働きかけEnの後におけるHFに対するLFの割合(LF/HF)が閾値以上である場合の対象人物110の状態である。対象人物110が第3状態Is-3である場合、対象人物110のイライラ状態、神経過敏状態またはストレス状態が増加していると推測され得る。対象人物110が第3状態Is-3である場合、判別部20(
図2参照)は、対象人物110のイライラ状態、神経過敏状態またはストレス状態が増加しているとの状態情報Isを生成してよい。
【0056】
本例において、第4状態Is-4は、高周波数f2の脳波において、振幅Af2の全体振幅Asに占める割合が、脳波Af1の全体振幅Asに占める割合よりも大きく、且つ、働きかけEnの後におけるHFに対するLFの割合(LF/HF)が閾値未満である場合の対象人物110の状態である。対象人物110が第4状態Is-4である場合、対象人物110の没頭状態が増加していると推測され得る。対象人物110が第4状態Is-4である場合、判別部20(
図2参照)は、対象人物110の没頭状態が増加しているとの状態情報を生成してよい。
【0057】
図5Aは、学習部40による学習の一例を示す図である。学習部40は、脳波情報Ib1の対象人物110に働きかけEnをした場合に当該対象人物110が状態S2になった場合において、脳波情報Ib1および働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習する。学習部40は、脳波情報Ib1および働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習することにより、働きかけ推論モデル42を生成する。
【0058】
図5Bは、働きかけ推論モデル42による推論の一例を示す図である。
図5Bにおける働きかけ推論モデル42は、脳波情報Ib1および働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習済みである。
図5Bに示される推論の段階における対象人物110の脳波情報Ib1を脳波情報Ib1'とし、対象人物110の予め定められた状態S2を状態S2'とする。状態S2'とは、生体120にとっての対象人物110の所望の状態であってよい。当該所望の状態とは、例えば第2状態Is-2である。状態S2'とは、対象人物110にとっての所望の状態であってもよい。
【0059】
働きかけ推論モデル42は、脳波情報Ib1'と状態S2'とに基づいて、対象人物110を状態S2'にする働きかけEn'を推論する。働きかけ推論モデル42は、脳波情報Ib1および働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習しているので、対象人物110を状態S2'にする働きかけEnが、脳波情報Ib1'と状態S2'とに基づいて推論され得る。これにより、支援装置100のユーザは、対象人物110を状態S2'にできる蓋然性の高い働きかけEn'を推論できる。働きかけ推論モデル42は、記憶部50(
図2参照)に記憶されてよい。
【0060】
学習部40(
図2参照)は、複数の生体120について、脳波情報Ib1および働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習してよい。学習部40は、複数の生体120について、脳波情報Ib1および働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習することにより、働きかけ推論モデル42を生成してよい。
【0061】
支援装置100は、生体120を認識する認識部12(
図2参照)を備えてよい。認識部12は、情報取得部10に含まれてよい。認識部12は、例えば撮像素子、マイクロフォン等である。認識部12が撮像素子の場合、認識部12は一の生体120と他の生体120とを撮像画像により識別する。認識部12がマイクロフォンの場合、認識部12は一の生体120と他の生体120とを、一の生体120の声の周波数と他の生体120の声の周波数とにより識別する。
【0062】
学習部40は、認識部12が認識した生体120について、脳波情報Ib1および働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習してよい。学習部40は、生体120ごとに働きかけ推論モデル42を生成してもよい。
【0063】
図6は、対象人物110に対して生体120が働きかけEn'1および働きかけEn'2をしている状況の一例を示す図である。本例において、学習部40(
図2参照)は、脳波情報Ib1および働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習している。本例において、働きかけEn'1は、人間である生体120が対象人物110に自身の姿を見せ、且つ、「お見舞いに来たよ」と話しかけることである。本例では、働きかけEn'1をされた対象人物110は、「来てくれてありがとう。でも、今日は何かつまらないな・・」と感じている。判別部20は、対象人物110のこの状態S2を判別する。本例では、状態提示部30には、当該状態S2が仮想動物の表情により提示されている。
【0064】
状態提示部30は、対象人物110を状態S2'にし得る働きかけEn'2を提示してよい。これにより、生体120は、対象人物110を予め定められた状態S2'にする働きかけEn'を認知できる。本例においては、働きかけEn'2は土産物の贈与である。本例においては、生体120は対象人物110に土産物を贈与しつつ「お祖母ちゃんの大好物、○○を持って来たよ」と話しかけている。学習部40(
図2参照)は、脳波情報Ib1および働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習している。このため、生体120は、働きかけEn'により、対象人物110を状態S2'にできる蓋然性が高い。
【0065】
情報取得部10(
図2参照)は、生体120が働きかけEn'をした後の脳波情報Ib2を取得してよい。判別部20(
図2参照)は、脳波情報Ib2に基づいて対象人物110の状態S2'を判別してよい。状態提示部30は、判別部20(
図2参照)により判別された、対象人物110の状態S2'を提示してよい。本例においては、状態提示部30は、対象人物110の、「○○を持ってきてくれたのね、嬉しい」と感じている状態S2'を提示している。これにより、生体120は対象人物110の状態S2'を認知できる。本例においては、生体120は、対象人物110の状態S2'を認知することにより、「あ、嬉しそう嬉しそう」と感じている。本例においては、状態提示部30に表示される仮想動物の表情により、状態S2'が提示されている。生体120は、対象人物110の状態S2'を認知することにより、状態提示部30により提示された働きかけEn'が適切であったかを確認できる。
【0066】
情報取得部10(
図2参照)は、生体120の属性を示す属性情報を取得してよい。当該属性情報を、属性情報Iaとする。生体120が人間の場合、属性情報Iaには、当該人間の年齢、性別、職業および嗜好の少なくとも一つに関する情報が含まれてよい。属性情報Iaには、生体120が対象人物110の親族か否かに関する情報が含まれてよい。生体120が、対象人物110の親族の場合、属性情報Iaには、対象人物110と当該生体120との親等に関する情報が含まれてよい。
【0067】
学習部40(
図2参照)は、生体120の属性情報Iaと、脳波情報Ib1および当該生体120による働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習してもよい。働きかけ推論モデル42は、脳波情報Ib1'と状態S2'と属性情報Iaとに基づいて、対象人物110を状態S2'にする働きかけEn'を推論する。対象人物110の脳波情報Ib1'が一の脳波情報Ib1である場合において、当該対象人物110を状態S2'にするための働きかけEn'は、生体120の属性により異なり得る。働きかけ推論モデル42は、属性情報Iaと、脳波情報Ib1および働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習しているので、対象人物110を状態S2'にする働きかけEnが、脳波情報Ib1'と状態S2'と属性情報Iaとに基づいて推論され得る。
【0068】
状態提示部30は、働きかけ推論モデル42により推論された働きかけEn'を、生体120の属性ごとに提示してよい。例えば、状態提示部30は、生体120が看護師の場合と、生体120が対象人物110の友人等の見舞客の場合とで、それぞれ異なる働きかけEn'を提示する。これにより、生体120は、自身の属性に応じた最適な働きかけEn'を判別できる。
【0069】
認識部12(
図2参照)が撮像素子の場合、認識部12は生体120の撮像顔像に基づいて属性情報Iaを取得してよい。認識部12がマイクロフォンの場合、認識部12は生体120の声の周波数に基づいて属性情報Iaを取得してよい。
【0070】
状態提示部30(
図2参照)は、属性情報Iaに基づいて、対象人物110の状態Sを提示してよい。状態提示部30は、属性情報Iaに基づいて、対象人物110の状態Sを提示するかまたは提示しないかを選択してよい。記憶部50には、状態Sを提示してよい属性情報Iaまたは提示しない属性情報Iaが記憶されていてよい。
【0071】
状態提示部30(
図2参照)は、属性情報Iaに基づいて、対象人物110の状態Sの提示態様を変化させてよい。例えば、対象人物110の状態Sが第1状態Is-1(例えば疲労状態等)または第3状態Is-3(例えばイライラ状態等)であり、且つ、生体120が看護師の場合、状態提示部30は、対象人物110の第1状態Is-1または第3状態Is-3を生体120に提示してよい。生体120が看護師の場合、当該生体120は対象人物110の状態Sを正確に認知することが好ましい。このため、状態提示部30は、対象人物110の第1状態Is-1または第3状態Is-3を生体120に提示してよい。
【0072】
例えば、対象人物110の状態Sが第1状態Is-1(例えば疲労状態等)または第3状態Is-3(例えばイライラ状態等)であり、且つ、生体120が見舞客の場合、状態提示部30は、対象人物110の第1状態Is-1または第3状態Is-3を当該生体120に控えめに提示してよく、提示しなくてもよい。この場合における見舞客とは、親族以外の見舞客、例えば対象人物110の友人等の見舞客を指してよい。控えめの提示とは、例えば、状態提示部30に表示される仮想動物の表情を無表情にするか、元気の無い表情にするか、または、表情を変更しない等である。生体120が見舞客の場合、対象人物110の第1状態Is-1または第3状態Is-3を当該生体120が正確に認知することで、当該生体120はショックを受け得る。このため、状態提示部30は、対象人物110の第1状態Is-1または第3状態Is-3を、生体120に控えめに提示するか、または、提示しなくてよい。状態提示部30は、対象人物110の第1状態Is-1または第3状態Is-3を、当該生体120以外の、例えば看護師には、提示してもよい。
【0073】
判別部20(
図2参照)は、認識部12(
図2参照)により認識された生体120に基づいて、生体120の属性を判別してよい。情報取得部10(
図2参照)は、判別された当該属性に基づいて、属性情報Iaを取得してよい。判別部20は、当該属性情報Iaに基づいて、生体120に対象人物110の状態Sを提示するかを判別してよい。判別部20により状態Sを提示すると判別された場合、状態提示部30は、対象人物110の当該状態Sを生体120に提示してよい。
【0074】
判別部20は、属性情報Iaに基づいて、状態Sの提示の態様を判別してもよい。提示の態様とは、状態Sをそのまま提示する、控えめに提示する、提示しない、等を指す。例えば、判別部20は、生体120を看護師または親族と判別した場合、状態Sをそのまま提示すると判別してよい。例えば、判別部20は、生体120を対象人物110の友人等と判別した場合、状態Sを控えめに提示するか、提示しないと判別してよい。
【0075】
図7は、本発明の一つの実施形態に係る支援方法の一例を示すフローチャートである。本発明の一つの実施形態に係る支援方法を、
図2に示される支援装置100を例に説明する。支援方法は、情報取得ステップS100および判別ステップS104を備える。支援方法は、情報取得ステップS90、状態学習ステップS102および状態提示ステップS106を備えてよい。
【0076】
情報取得ステップS100は、情報取得部10が、対話が困難な状態の対象人物110に対して、生体120が働きかけEnをした場合の、対象人物110の脳波情報Ibを取得するステップである。判別ステップS104は、判別部20が、情報取得ステップS100において取得された脳波情報Ibに基づいて、対象人物110の状態Sを判別するステップである。
【0077】
情報取得ステップS100は、情報取得部10が、対象人物110の生体情報Igをさらに取得するステップであってよい。判別ステップS104は、情報取得ステップS100において取得された脳波情報Ibと生体情報Igとに基づいて、対象人物110の状態Sを判別するステップであってよい。
【0078】
情報取得ステップS90は、情報取得部10が、働きかけEnの前における対象人物110の脳波情報Ib1を取得するステップである。判別ステップS104は、判別部20が、働きかけEnの前の脳波情報Ib1から、働きかけEnの後の脳波情報Ib2への変化と、生体情報Igとに基づいて、対象人物110の状態Sを示す状態情報Isを生成し、生成した状態情報Isに基づいて対象人物110の状態Sを判別するステップであってよい。
【0079】
判別ステップS104は、判別部20が、働きかけEnの前の脳波情報Ib1における、予め定められた周波数帯における脳波の振幅の全体振幅Asに占める割合から、働きかけEnの後の脳波情報Ib2における、当該周波数帯における脳波の振幅の全体振幅Asに占める割合への変化と、対象人物110の心拍におけるHFに対するLFの割合(LF/HF)とに基づいて、状態情報Isを生成するステップであってよい。
【0080】
判別ステップS104は、判別部20が、働きかけEnの前の脳波情報Ib1における、予め定められた周波数帯における脳波の振幅の全体振幅Asに占める割合から、働きかけEnの後の脳波情報Ib2における、当該周波数帯における脳波の振幅の全体振幅Asに占める割合への変化と、働きかけEnの後におけるHFに対するLFの割合(LF/HF)と、HFに対するLFの割合の予め定められた閾値との大小関係とに基づいて、状態情報Isを生成するステップであってよい。
【0081】
状態情報Isは、対象人物110の複数の状態に係る情報を含んでよい。判別ステップS104は、判別部20が、働きかけEnの前の脳波情報Ib1における、予め定められた周波数帯における脳波の振幅の全体振幅Asに占める割合から、働きかけEnの後の脳波情報Ib2における、当該周波数帯における脳波の振幅の全体振幅Asに占める割合への変化と、第1パワースペクトルの大きさの第2パワースペクトルの大きさに対する割合とに基づいて、複数の状態のうちの一の状態に係る状態情報Isを生成するステップであってよい。
【0082】
状態学習ステップS102は、状態学習部40が、働きかけ推論モデル42を生成するステップである。状態学習ステップS102は、状態学習部40が、脳波情報Ib1および働きかけEnと、状態S2との関係を機械学習することにより、脳波情報Ib1'と状態S2'とに基づいて、対象人物110を状態S2'にする働きかけEn'を推論する働きかけ推論モデル42を生成するステップである。
【0083】
判別ステップS104は、判別部20が、状態学習ステップS102において推論された対象人物110の状態Sに基づいて、対象人物110を予め定められた状態にする働きかけEnを判別するステップであってよい。
【0084】
状態提示ステップS106は、状態提示部30が、判別ステップS104において判別された対象人物110の状態Sを提示するステップである。情報取得ステップS100は、情報取得部10が、生体120の属性を示す属性情報Iaをさらに取得するステップであってよい。状態提示ステップS106は、状態提示部30が、属性情報Iaに基づいて対象人物110の状態Sを提示するステップであってよい。状態提示ステップS106は、状態提示部30が、属性情報Iaに基づいて対象人物110の状態Sの提示態様を変化させるステップであってもよい。
【0085】
図8は、本発明の一つの実施形態に係る支援装置100が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の一例を示す図である。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る支援装置100に関連付けられる操作、または、支援装置100の一または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該一または複数のセクションを実行させることができ、またはコンピュータ2200に、本発明の方法に係る各段階(
図7参照)を実行させることができる。当該プログラムは、コンピュータ2200に本明細書に記載されたフローチャート(
図7)およびブロック図(
図2)におけるブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0086】
本発明の一つの実施形態に係るコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216およびディスプレイデバイス2218を含む。CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216およびディスプレイデバイス2218は、ホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200は、通信インターフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226およびICカードドライブ等の入出力ユニットをさらに含む。通信インターフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226およびICカードドライブ等は、入出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータは、ROM2230およびキーボード2242等のレガシの入出力ユニットをさらに含む。ROM2230およびキーボード2242等は、入出力チップ2240を介して入出力コントローラ2220に接続されている。
【0087】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作することにより、各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはRAM2214の中に、CPU2212によって生成されたイメージデータを取得することにより、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0088】
通信インターフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、読み取ったプログラムまたはデータを、RAM2214を介してハードディスクドライブ2224に提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取るか、または、プログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0089】
ROM2230は、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、または、コンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ2240は、様々な入出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ2220に接続してよい。
【0090】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い、情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0091】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0092】
CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにしてよい。CPU2212は、RAM2214上のデータに対し、様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は、次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0093】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理されてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示に記載された、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索または置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は、結果をRAM2214に対しライトバックしてよい。
【0094】
CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、第2の属性値を読み取ることにより、予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0095】
上述したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能である。プログラムは、当該記録媒体によりコンピュータ2200に提供されてよい。
【0096】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0097】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0098】
10・・・情報取得部、12・・・認識部、20・・・判別部、30・・・状態提示部、40・・・学習部、42・・・働きかけ推論モデル、50・・・記憶部、90・・・制御部、100・・・支援装置、110・・・対象人物、120・・・生体、2200・・・コンピュータ、2201・・・DVD-ROM、2210・・・ホストコントローラ、2212・・・CPU、2214・・・RAM、2216・・・グラフィックコントローラ、2218・・・ディスプレイデバイス、2220・・・入出力コントローラ、2222・・・通信インターフェース、2224・・・ハードディスクドライブ、2226・・・DVD-ROMドライブ、2230・・・ROM、2240・・・入出力チップ、2242・・・キーボード