IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-被膜剥離装置および被膜剥離方法 図1
  • 特開-被膜剥離装置および被膜剥離方法 図2
  • 特開-被膜剥離装置および被膜剥離方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004844
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】被膜剥離装置および被膜剥離方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20250108BHJP
   B65H 41/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
B29B17/02
B65H41/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104704
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 一敬
(72)【発明者】
【氏名】東田 佳久
(72)【発明者】
【氏名】谷野 聖
【テーマコード(参考)】
3F108
4F401
【Fターム(参考)】
3F108JA04
4F401AD02
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA35
4F401CA39
4F401CA41
4F401FA01Z
(57)【要約】
【課題】被膜付きフィルムからの被膜剥離部材への伝熱による熱変形を防止して、被膜の除去性能を保持し得る被膜剥離装置、および被膜剥離方法を提供する。
【解決手段】本発明の被膜剥離装置は、基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する装置であって、前記被膜付きフィルムを搬送する搬送機構と、前記被膜付きフィルムを加熱する加熱機構と、前記被膜付きフィルムの幅方向に延在し、前記被膜付きフィルムの前記被膜の表面と接触する先端部を有する被膜剥離部材と、前記剥離部材の前記先端部の温度を調整する温調機構と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する装置であって、
前記被膜付きフィルムを搬送する搬送機構と、
前記被膜付きフィルムを加熱する加熱機構と、
前記被膜付きフィルムの幅方向に延在し、前記被膜付きフィルムの前記被膜の表面と接触する先端部を有する被膜剥離部材と、
前記剥離部材の前記先端部の温度を調整する温調機構と、
を備える被膜剥離装置。
【請求項2】
前記温調機構が、少なくとも前記被膜付きフィルムが接触する範囲の前記先端部の温度を調整する、請求項1に記載の被膜剥離装置。
【請求項3】
前記被膜剥離部材よりも搬送方向の上流側に、前記被膜付きフィルムの被膜の表面に向けて洗浄液を吐出する洗浄液付与機構を備える、請求項1に記載の被膜剥離装置。
【請求項4】
基材フィルムの少なくとも片面に被膜が形成された被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する方法であって、
前記被膜付きフィルムを搬送させながら、前記被膜付きフィルムを加熱し、
前記被膜付きフィルムの幅方向に延在し、前記被膜付きフィルムの前記被膜の表面と接触する先端部を有する被膜剥離部材の当該先端部の温度を調整しながら、前記先端部を前記被膜の表面に接触させて前記被膜付きフィルムから前記被膜を剥離する、
被膜剥離方法。
【請求項5】
前記被膜の表面に接触している範囲の前記先端部を、前記先端部に接触する前記被膜付きフィルムの温度に対して±10℃以内の範囲に温調する、請求項4に記載の被膜剥離方法。
【請求項6】
前記被膜付きフィルムの前記被膜の表面に洗浄液を付与した後に、前記被膜剥離部材で前記洗浄液を含む被膜を剥離する、請求項5に記載の被膜剥離方法。
【請求項7】
前記被膜が水溶性樹脂を含む、請求項6に記載の被膜剥離方法。
【請求項8】
前記被膜が硬化型シリコーンを含む、請求項7に記載の被膜剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルムの表面の被膜を効率よく除去することが可能な被膜剥離装置および被膜剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは様々な分野に利用されている一方、マイクロプラスチックなど海洋汚染の原因物とされ、プラスチックによる環境負荷低減が急務となっている。
また近年、IoT(Internet of Things)の進化により、コンピュータやスマートフォンに搭載されるCPUなどの電子デバイスが増加し、それに伴い、電子デバイスを駆動するために必要な積層セラミックコンデンサー(MLCC)の数も急激に増加している。このMLCCの一般的な製造方法は、プラスチックの基材フィルム上に離型層を形成した離型フィルムをキャリアシートとして使用し、該離型フィルム上にセラミックグリーンシート層を形成する工程と、該セラミックグリーンシート層を剥離してセラミックグリーンシートとする工程がある。この工程において、セラミックシートが剥離された離型フィルムは不要物として廃棄されることとなる。
【0003】
すなわち、近年のMLCC製造数量の急激な増加に伴う離型フィルムの廃棄物としての増大が環境問題になっており、基材フィルムの再利用に向けた取り組みが活発化してきている。離型フィルムに含まれる離型層の成分は、離型性の観点から、一般的には基材フィルムを構成する成分とは異なる組成であるため、離型層が付いた離型フィルムをそのまま再溶融して再生フィルムを製膜した場合、離型層の成分が異物として存在するため、安定製膜をすることができない。
特許文献1では、離型フィルムから水溶性樹脂を含む離型層を除去する方法として、離型層に液滴の状態の洗浄液を付与し、その洗浄液を離型層の表面で液滴の状態で保持させ、その後洗浄液を含んだ離型層を剥離する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/190713号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の剥離方法では、被膜の剥離性能を向上することを目的として、被膜付きフィルムおよび/または洗浄液を加熱しているが、加熱された被膜付きフィルムの被膜を除去する剥離部材も伝熱により温度が上昇する。これにより、図3に示すように、剥離部材の被膜付きフィルムと接触する箇所で熱変形が発生し、剥離部材の全幅方向において均一に被膜付きフィルムとの接触できないおそれ、すなわち被膜の剥離ができないおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、被膜付きフィルムからの被膜剥離部材への伝熱による局所的な熱変形を防止して、被膜の除去性能を保持し得る被膜剥離装置、および被膜剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]前記課題を解決する本発明の被膜剥離装置は、基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する装置であって、前記被膜付きフィルムを搬送する搬送機構と、前記被膜付きフィルムを加熱する加熱機構と、前記被膜付きフィルムの幅方向に延在し、前記被膜付きフィルムの前記被膜の表面と接触する先端部を有する被膜剥離部材と、前記剥離部材の前記先端部の温度を調整する温調機構と、を備える。
本発明の被膜剥離装置は、下記[2]~[3]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記温調機構が、少なくとも前記被膜付きフィルムが接触する範囲の前記先端部の温度を調整する、[1]に記載の被膜剥離装置。
[3]前記被膜剥離部材よりも搬送方向の上流側に、前記被膜付きフィルムの被膜の表面に向けて洗浄液を吐出する洗浄液付与機構を備える、[1]または[2]に記載の被膜剥離装置。
[4]前記課題を解決する本発明の被膜剥離方法は、基材フィルムの少なくとも片面に被膜が形成された被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する方法であって、前記被膜付きフィルムを搬送させながら、前記被膜付きフィルムを加熱し、前記被膜付きフィルムの幅方向に延在し、前記被膜付きフィルムの前記被膜の表面と接触する先端部を有する被膜剥離部材の当該先端部の温度を調整しながら、前記先端部を前記被膜の表面に接触させて前記被膜付きフィルムから前記被膜を剥離する。
本発明の被膜剥離方法は、下記[5]~[8]のいずれかであることが好ましい。
[5]前記被膜の表面に接触している範囲の前記先端部を、前記先端部に接触する前記被膜付きフィルムの温度に対して±10℃以内の範囲に温調する、[4]に記載の被膜剥離方法。
[6]前記被膜付きフィルムの前記被膜の表面に洗浄液を付与した後に、前記被膜剥離部材で前記洗浄液を含む被膜を剥離する、[4]または[5]に記載の被膜剥離方法。
[7]前記被膜が水溶性樹脂を含む、[6]に記載の被膜剥離方法。
[8]前記被膜が硬化型シリコーンを含む、[4]~[7]のいずれかに記載の被膜剥離方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の被膜剥離装置および被膜剥離方法によれば、被膜付きフィルムからの被膜剥離部材への伝熱による局所的な熱変形を防止して、被膜の除去性能を保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態にかかる被膜剥離装置の概略図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の変形例にかかる被膜剥離装置の概略図である。
図3図3は、従来の被膜剥離装置の剥離部材の熱変形を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は本発明に係る実施形態を例示するものであり、これに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更や組み合わせが可能である。
【0011】
(実施の形態)
図1は、本発明の被膜剥離装置100の概略図である。被膜剥離装置100は、基材フィルム2の片面に被膜3を有するフィルム1(以下、被膜付きフィルムと称する場合がある)を巻き出す巻出装置10、被膜付きフィルム1の表面にある被膜3を剥離した後の基材フィルム2を巻き取る巻取装置20、フィルムに張力を付与した状態で、フィルムを矢印Xの方向に搬送するための駆動装置30-1、30-2を備えている。また被膜剥離装置100には、駆動装置30-1、30-2の間に被膜付きフィルム1を加熱する加熱機構40と、被膜付きフィルム1から被膜3を剥離する被膜剥離機構50と、被膜剥離機構50で剥離された剥離物である被膜3を吸引する吸引機構60が配置されている。以下、本実施の形態にかかる被膜剥離装置について説明する。
【0012】
[被膜付きフィルム]
本発明の被膜剥離装置100において、対象となる被膜付きフィルム1は、基材フィルム2の少なくとも片面に被膜3を有するものである。被膜3としては、有機物からなる被膜、および無機物からなる被膜を例示できる。無機物からなる被膜としては、蒸着によって設けられた金属被膜、チタン酸バリウムを主成分とするセラミックグリーンシートが挙げられる。有機物からなる被膜としては、コーティングによって設けられたアクリルなどの粘着剤、フッ素系またはシリコーン系の離型剤からなる被膜が挙げられる。好ましくは、環境への負荷等を考慮した水溶性樹脂を含む被膜である。中でも水溶性樹脂として、水溶性のポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレンアイオノマー系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール系樹脂、でんぷんのうちの少なくとも1種を主たる成分とするものがより好ましい。被膜3が容易に剥離するように、後述する被膜剥離装置100において被膜剥離機構50により被膜3を剥離する前に、洗浄液を被膜に付与しておいても良い。
水溶性樹脂を含む被膜は、水溶性樹脂を含む単層体であっても、水溶性樹脂を含む2つ以上の層の積層体であっても、水溶性樹脂を含む層と水溶性樹脂を含まない層の積層体であってもよい。
【0013】
また、被膜3としては、被膜の一部に水溶性樹脂のほかに離型成分を含む被膜付き離型フィルムが特に好ましく、効率的に被膜剥離の効果を発現することができる。ここでいう離型成分とは、被膜表面の洗浄液に対する接触角を大きく、すなわち、被膜の表面エネルギーを小さくする成分であり、例えば、ジメチルシロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、フッ素を有する化合物が挙げられる。被膜は水溶性樹脂と離型成分とを含む層でも良いし、水溶性樹脂を含む層と離型成分を含む層が積層されていても良い。積層された被膜の場合には、基材フィルムの直上に水溶性樹脂を含む層、ついで最表面に離型成分を含む層とが形成されていることが好ましく、離型成分には洗浄液として好適に使用することができる水の透過性が高いジメチルシロキサンを主骨格とする硬化型シリコーン樹脂化合物を用いるのが特に好ましい。
【0014】
[被膜剥離機構および被膜剥離装置]
駆動装置30-1、30-2は、被膜付きフィルム1、および被膜3を剥離した基材フィルム2を安定して搬送させるために、張力カットできる構成であることが好ましい。サクションロールでテンションカットした場合には、被膜付きフィルム1の被膜の一部が吸引されたりして、トラブルの原因となることがあるため、金属製の駆動ロールとゴムロールでニップされた構成がより好適に用いられる。駆動装置30-1、30-2は、防錆対策としてステンレス鋼や表面処理を施したものが好適に用いられる。
【0015】
加熱機構40は、熱風発生器41と、熱風発生器41に接続されるノズル42を備えている。熱風によって、被膜付きフィルム1の温度を40℃以上にすることで、より効率的に被膜の剥離をすることができる。被膜付きフィルム1の加熱手段は、いかなる手段でもよく、例えば加熱ロールに被膜付きフィルム1を直接接触させても良いし、被膜剥離機構の周囲をブースで囲い、赤外線ヒーターを設置して加熱しても良く、これらには限定されない。
【0016】
被膜剥離機構50は、フィルム幅方向に稜線状に延在し、被膜付きフィルム1の被膜3の表面と接触して被膜3を剥離する先端部51を有する。先端部51は、フィルム搬送方向の上流側の面52、フィルム搬送方向の下流側の面53、および上流側の面52と下流側の面53との間の側面とから構成される。フィルム搬送方向の下流側の面53は、先端部51を鋭角とするために勾配53aが設けられている。被膜剥離機構50は、金属が好ましい。被膜剥離機構50は、被膜付きフィルム1の被膜表面に対向して設置される。
【0017】
また、被膜剥離機構50は、先端部51の温度を調整する温調機構54を備える。温調機構54は、被膜3の表面に接触している先端部51を、先端部に接触する被膜付きフィルム1の温度に対して±10℃以内の範囲に温調するものであることが好ましい。温調機構54により先端部51の温度を調整、好ましくは、被膜付きフィルム1の温度に対して±10℃以内の範囲に温調することにより、被膜付きフィルム1からの先端部51への伝熱による先端部51の局所的な熱変形を防止することができる。温調機構54は、先端部51の全体を温調することが好ましいが、少なくとも被膜付きフィルム1が接触する範囲の先端部51の温度を調整できるものであればよい。被膜剥離機構50の温調手段は、いかなる手段でもよい。例えば被膜剥離機構50の内部にカートリッジヒーターなどの熱源を設置して温調してもよく、被膜剥離機構50の表面にラバーヒーターなどの熱源を設置して温調してもよく、被膜剥離機構50に熱風を当てて温調してもよく、これらには限定されない。また、被膜3の表面に接触している先端部51の温度をモニタする機構を備えていることが好ましい。モニタ結果から温調機構54へフィードバックすることがより好ましく、安定して所望の温度に制御できる。
【0018】
吸引機構60は、被膜剥離機構50で剥離した剥離物である被膜3を吸引する。被膜付きフィルム1から被膜3の除去性を向上するためには、被膜付きフィルム1に先端部15を強く押し当てることが必要となる。本実施の形態では、駆動装置30-1、30-2により被膜付きフィルム1の搬送方向を調整し、被膜付きフィルム1と基材フィルム2のなす角度θを小さくして、被膜付きフィルム1に先端部51を強く押し当てている。被膜付きフィルム1と基材フィルム2のなす角度θを小さくした場合、被膜剥離機構50による除去性は向上するが、除去した被膜3の基材フィルム2に再付着する場合がある。したがって、吸引機構60により剥離した被膜3を吸引除去することが好ましい。吸引機構60は、ノズル61と、吸引機器62とを備え、ノズル61を介して被膜剥離機構50により剥離された被膜3を真空ポンプ等の吸引機器62で吸引する。
【0019】
なお、被膜剥離装置100は、被膜剥離機構50により被膜3を剥離した基材フィルム2の品質を確認するために、被膜3の残渣や工程で付着した環境異物を検出する検査機(図示しない)を巻取装置20の前に設けても良い。検査機は、基材フィルム2の性状に合わせて選定すれば良く、透過光や反射光を用いた検査機が好適に用いられる。また、検査機で検出した被膜の残渣や工程で付着した環境異物の位置を記録するためのマーキング装置(図示しない)を、検査機と巻取装置20との間に設けても良い。マーキング装置によるマーキングの方式は、ペンやシール、あるいはレーザーなど、検出対象の位置がマーキングできれば、いかなる方式でも良い。被膜の残渣や工程で付着した環境異物をマーキングしておくことで、再溶融をする前にその箇所を除去することが可能となるため、より安定して再生フィルムを製膜することができ、再生フィルムの品質低下を防ぐこともできる。
【0020】
本実施の形態にかかる被膜剥離装置100では、温調機構54により被膜剥離機構50の先端部51を温調するため、被膜付きフィルム1からの先端部51への伝熱による先端部51の熱変形を防止することができる。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態の変形例1にかかる被膜剥離装置100Aの概略図である。被膜剥離装置100Aは、被膜剥離機構50よりも搬送方向の上流側に、被膜付きフィルム1の被膜3の表面に向けて洗浄液71を吐出する洗浄液付与機構70を備える。洗浄液付与機構70は、洗浄液を吐出する吐出ノズル72、吐出ノズルに洗浄液を送液する送液ポンプ(図示しない)、洗浄液を貯留しておくタンク(図示しない)、洗浄液を加熱する加熱装置(図示しない)を有する。被膜剥離装置100Aは、被膜3の剥離をより容易にするために好適に使用される。また、本変形例では、駆動装置30-1、30-2との間にローラ80を有し、ローラ80と駆動装置30-2により被膜付きフィルム1の搬送方向を調整し、被膜付きフィルム1と基材フィルム2のなす角度θを小さくして、被膜付きフィルム1に先端部51を強く押し当てている。
【0022】
被膜付きフィルム1の被膜表面に付与する洗浄液の量は、被膜のうちの少なくとも一部の成分を十分に溶解しうるように、被膜付きフィルム1の搬送速度に応じて、送液ポンプを調整して、必要量の洗浄液を被膜付きフィルム1の被膜表面に付与できるように、吐出ヘッドと送液ポンプの仕様を確定するのが良い。吐出ノズルは、被膜付きフィルム1の被膜表面に洗浄液を付与できれば良く、例えばスプレーやシャワーヘッドノズル、高圧水用ジェットノズルなどが例示される。
洗浄液付与機構70は、被膜付きフィルム1の被膜表面へ洗浄液71を付与できれば良く、洗浄液71を貯留した液槽を有して、液槽内に被膜付きフィルム1を浸漬することで洗浄液71を被膜表面に付与しても良い。
【0023】
被膜剥離装置100Aで使用する洗浄液は、被膜のうち少なくとも一部の成分を溶解しうる溶媒であれば、いかなる溶媒でもその効果を発現するが、環境負荷を低減するためには、水を使用することが好ましい。また、被膜付きフィルムとの濡れ性を向上させて、被膜表面に洗浄液を行き渡らせやすくするために、洗浄液に界面活性剤等を添加しても良い。
【0024】
洗浄液の加熱装置としては、吐出ヘッドを用いる場合には、吐出ヘッドにカートリッジヒーターなどの熱源を備えても良いし、洗浄液71を貯留するタンクを加熱しておいても良い。液槽を用いる場合には、液槽を加熱しても良いし、液槽の内部に投げ込み式ヒーターを設置しても良い。洗浄液71を加熱できればいかなる手段でも良く、これらに限定されない。
【0025】
以上のようにして剥離した被膜は、洗浄液71により溶解された成分を含むため、粘度が高くなっており、流動性が悪く先端部51に付着しやすい。被膜剥離装置100Aでは、吸引機構60により被膜3を強制的に吸引するので、長時間の使用でも先端部51に付着することなく剥離性能を保持することができる。
【0026】
また、被膜剥離装置100Aにおいて、洗浄液付与機構70の洗浄液を加熱する加熱装置を設置するのに変えて、実施の形態のように洗浄液を付与した被膜付きフィルム1を加熱機構40で加熱してもよい。加熱手段としては熱風発生器等(図示しない)を使用することができる。熱風によって、被膜付きフィルム1の温度を40℃以上にすることで、被膜表面に付与した洗浄液が被膜のうち少なくとも一部の成分を早く溶解して、より効率的に被膜の剥離をすることができる。
【0027】
被膜剥離装置100Aにおいて、巻取装置20で巻き取った被膜3を剥離した後の基材フィルム2は、再溶融した後に安定して再生フィルムとして製膜するために洗浄液を完全に取り除いておくことがより好ましく、被膜剥離機構50と巻取装置20との間に乾燥装置(図示しない)を設けても良い。乾燥装置は巻取前に設けておけば良く、駆動装置30-2の前後いずれでも良い。
【符号の説明】
【0028】
1 被膜付きフィルム
2 基材フィルム
3 被膜
10 巻出装置
20 巻取装置
30-1、30-2 駆動装置
40 加熱機構
41 熱風発生器
42 ノズル
50 被膜剥離機構
51 先端部
52 上流側の面
53 下流側の面
53a 勾配
60 吸引機構
61 ノズル
62 吸引機器
70 洗浄液付与機構
71 洗浄液
72 吐出ノズル
80 ローラ
100、100A 被膜剥離装置
図1
図2
図3