(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004862
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/26 20060101AFI20250108BHJP
B60K 6/44 20071001ALI20250108BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20250108BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20250108BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20250108BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20250108BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250108BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20250108BHJP
B60L 58/16 20190101ALI20250108BHJP
【FI】
B60W10/26 900
B60K6/44 ZHV
B60K6/48
B60W20/13
B60W20/15
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/13
B60L58/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104726
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克也
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202AA08
3D202BB08
3D202BB12
3D202BB19
3D202CC59
3D202DD24
3D202DD45
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC12
5H125BD17
5H125CA02
5H125CA09
5H125EE27
5H125EE29
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】走行モードの移行に伴うエンジン始動時のショックや振動を適切に抑制することが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンを稼働して走行するHEV走行と、前記エンジンを停止してモータの出力トルクで走行するEV走行とが可能なハイブリッド車両の制御装置において、前記HEV走行中に、バッテリーの残存電力量が移行判断閾値以下の場合は、前記HEV走行から前記EV走行への移行を禁止するとともに、前記バッテリーの劣化の進行を抑制するために設定された前記残存電力量の下限値(A)、前記EV走行から前記HEV走行へ移行する際に前記エンジンを始動するために必要な電力量(B)と、前記エンジンを始動する際に発生する振動を打ち消す制振トルクを前記モータで出力するために必要な電力量(C)とを合算した値(A+B+C)を前記移行判断閾値とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源としてエンジンおよびモータを搭載し、前記モータと電力をやり取りするバッテリーを備え、前記エンジンを稼働して走行するHEV走行と、前記エンジンを停止して前記モータの出力トルクによって走行するEV走行とが可能なハイブリッド車両の制御装置であって、
前記ハイブリッド車両の運転状態、および、前記バッテリーの残存電力量をそれぞれ検出する検出部と、
前記エンジン、前記モータ、および、前記バッテリーをそれぞれ制御するとともに、前記残存電力量に基づいて前記HEV走行と前記EV走行とを選択的に切り替えて前記ハイブリッド車両を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記ハイブリッド車両の前記HEV走行中に、前記残存電力量が移行判断閾値以下の場合は、前記HEV走行から前記EV走行への移行を禁止するとともに、
前記移行判断閾値は、前記バッテリーの劣化の進行を抑制するために設定された前記残存電力量の下限値と、前記EV走行から前記HEV走行へ移行する際に前記エンジンを始動するために必要な電力量と、前記エンジンを始動する際に発生する振動を打ち消す制振トルクを前記モータで出力するために必要な電力量とを合算した値である
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動力源としてエンジン(内燃機関)およびモータを搭載したハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの始動時に生じるショックを抑制することを目的としたハイブリッド車両の制御装置が記載されている。この特許文献1に記載されたハイブリッド車両は、エンジン、エンジンをクランキングすることが可能な第1モータ、走行用の動力を出力する第2モータ、第1モータおよび第2モータと電力のやり取りを行なう蓄電装置、ならびに、エンジン、第1モータ、および、第2モータを制御する制御装置を備えている。制御装置は、エンジンの始動時の振動を抑制するために予め定めた制振マップを有している。制振マップは、車速に対応して複数設定されており、エンジン始動時の振動を打ち消すために第1モータで出力する制振トルクを規定している。そして、制御装置は、複数の制振マップのうち、エンジンのクランキングを開始するときの車速に基づいて所定の制振マップを選択し、エンジンの始動が完了するまで、選択した制振マップを用いてエンジンのクランキングを行なうように第1モータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1に記載されたハイブリッド車両の制御装置では、エンジンを始動する際の車速に対応して選択される複数の制振マップが設定されている。具体的には、車速が0近傍の閾値未満のときに選択される停車中制振マップ、および、車速が閾値以上の時に選択される走行中制振マップが設定されている。これらの制振マップが車速に応じて適宜選択されることにより、ハイブリッド車両の走行状態に即した適切な制振制御を実行することができる。また、エンジン始動の開始時に選択された制振マップは、途中で変更されることなく、エンジンの始動が完了するまで適用される。そのため、エンジン始動中に制振マップが変更されて第1モータが出力する制振トルクが変化することに起因するショックの発生を抑止することができる。一方で、特許文献1に記載されたハイブリッド車両の制御装置では、エンジンを始動する際に必要な電力量、および、その電力を供給するバッテリー(蓄電装置)のSOCまたは残存電力量等に関して、詳細には考慮されていない。そのため、バッテリーのSOCが適当でない場合には、エンジンの始動を適切に実施できないおそれがある。例えば、エンジンを稼働させてハイブリッド車両が走行するHEV走行の状態から、エンジンを停止してモータの出力のみでハイブリッド車両が走行するEV走行の状態へ移行する際に、バッテリーのSOCが所定値を下回って少ない場合には、その後、エンジンを始動する際の制振制御を適切に実行できなくなってしまう(第1モータで適切な制振トルクを出力できなくなってしまう)。
【0005】
この発明は上記の技術的課題に着目して考え出されたものであり、走行モードの移行に伴ってエンジンを始動する際のショックや振動を適切に抑制することが可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、駆動力源としてエンジン(内燃機関)およびモータを搭載し、前記モータと電力をやり取りするバッテリーを備え、前記エンジンを稼働して走行するHEV走行と、前記エンジンを停止して、前記バッテリーから電力を供給して駆動する前記モータの出力トルクによって走行するEV走行とが可能なハイブリッド車両の制御装置であって、前記ハイブリッド車両の運転状態、および、前記バッテリーの残存電力量(SOC)をそれぞれ検出する検出部と、前記エンジン、前記モータ、および、前記バッテリーをそれぞれ制御するとともに、前記残存電力量に基づいて前記HEV走行と前記EV走行とを選択的に切り替えて前記ハイブリッド車両を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記ハイブリッド車両の前記HEV走行中に、前記残存電力量と移行判断閾値とを比較して、前記残存電力量が前記移行判断閾値以下の場合は、前記HEV走行から前記EV走行への移行を禁止するとともに、前記移行判断閾値は、前記バッテリーの劣化の進行を抑制するために設定された前記残存電力量の下限値(A)と、前記EV走行から前記HEV走行へ移行する際に前記エンジンを始動するために必要な電力量(B)と、前記エンジンを始動する際に発生する振動を打ち消す制振トルクを前記モータで出力するために必要な電力量(C)とを合算した値(A+B+C)であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明のハイブリッド車両の制御装置は、エンジンを稼働して走行するHEV走行と、エンジンを停止してモータの出力のみで走行するEV走行とを選択的に切り替えて走行することが可能なハイブリッド車両を制御対象にして、走行モードの切り替えに伴いエンジンを始動する際の振動やショックを抑制する。EV走行からHEV走行へ移行する際には、運転を停止していたエンジンを始動するのに伴う振動やショックが発生するので、この発明のハイブリッド車両の制御装置では、エンジンを始動する際に発生する振動を打ち消すための制振トルクがモータから出力される。すなわち、エンジンを始動する際には、モータは、エンジンをクランキングするために必要なトルク(クランキングトルク)に加えて、上記の制振トルクを出力する。したがって、エンジンを始動する際には、上記のようなクランキングトルクと制振トルクをモータで出力するために必要な電力量が、バッテリーに残存している必要がある。それに対して、この発明のハイブリッド車両の制御装置では、HEV走行中にバッテリーの残存電力量が確認され、その残存電力量が移行判断閾値以下になっている場合は、HEV走行からEV走行への移行が禁止される。EV走行への移行が禁止されることにより、エンジンは運転状態が継続される。そして、移行判断閾値は、バッテリーの劣化を抑制するために設定される残存電力量の下限値に加え、上記のような、クランキングトルクをモータで出力するために必要な電力量と、制振トルクをモータで出力するために必要な電力量とが合算されて設定されている。この移行判断閾値よりもバッテリーの残存電力量が多い場合に、HEV走行からEV走行への移行が許可される。EV走行に移行することによってエンジンの運転が停止される。そのため、その後に、EV走行からHEV走行へ移行する際に、エンジンを始動する場合には、バッテリーは適切な残存電力量を有しているので、上記のようなクランキングトルクおよび制振トルクをモータで適切に出力することができる。
【0008】
したがって、この発明のハイブリッド車両の制御装置によれば、EV走行からHEV走行への移行に伴ってエンジンを始動する際のショックや振動を適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、この発明のハイブリッド車両の制御装置で制御の対象にするハイブリッド車両の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、この発明のハイブリッド車両の制御装置で実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2のフローチャートで示す制御の具体的な内容を説明するための図であって、バッテリーの残存電力量を確認するための移行判断閾値のイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0011】
図1に、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veの駆動系統および制御系統の一例を示してある。
図1に示す車両Veは、駆動力源として、エンジン(ENG)1、および、モータ(MG)2を搭載しており、エンジン1およびモータ2の少なくともいずれかの出力トルクを、トランスアクスル3やデファレンシャルギヤ(図示せず)等を介して、駆動輪(車輪)4へ伝達する構成となっている。また、車両Veは、モータ2と電力をやり取りするバッテリー5を備えている。そして、車両Veは、車両Veの運転状態、および、バッテリー5の残存電力量(または、SOC)をそれぞれ検出するとともに、エンジン1、モータ2、および、バッテリー5をそれぞれ制御するため、検出部6、および、コントローラ(ECU)7を備えている。
【0012】
なお、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、駆動力源として、エンジン1のような内燃機関、および、少なくとも一基の“モータ”を搭載した“ハイブリッド車両”であればよい。
図1に示すような、周知のパラレル方式のハイブリッド車両Veであってもよい。あるいは、シリーズ・パラレル方式(もしくは、スプリット方式)の“ハイブリッド車両”であってもよい。例えば、前述した特許文献1の“
図1”に示されているような、“エンジン”および二基の“モータ”、ならびに、動力分割機構(プラネタリギヤセット)を備えたスプリット方式の“ハイブリッド車両”であってもよい。
【0013】
また、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、
図1に示すように、駆動トルクを前輪(駆動輪)4に伝達し、前輪4で駆動力を発生させる前輪駆動車であってもよい。あるいは、車両Veは、駆動トルクを、例えばプロペラシャフト(図示せず)等を介して後輪8に伝達し、後輪8で駆動力を発生させる後輪駆動車(図示せず)であってもよい。あるいは、車両Veは、トランスファ機構(図示せず)を設けて、駆動トルクを前輪4および後輪8の両方に伝達し、それら前輪4および後輪8の両方で駆動力を発生させる四輪駆動車(図示せず)であってもよい。
【0014】
検出部6は、車両Veを制御する際に必要な各種のデータや情報を取得するための機器あるいは装置であり、例えば、電源部、マイクロコンピュータ、センサー、および、入出力インターフェース等を含んでいる。特に、この発明の実施形態における検出部6は、車両Veの運転状態、および、バッテリー5の残存電力量(SOC)をそれぞれ検出するとともに、エンジン1、モータ2、および、バッテリー5をそれぞれ制御するための各種データを検出する。具体的には、検出部6は、車速を検出する車速センサー6a、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサー6b、モータ2の回転数を検出するモータ回転数センサー6c、バッテリー5の充電状態(SOC)を検出するSOCセンサー6d、バッテリー5の電流値を検出するバッテリー電流センサー6e、および、バッテリー5の温度を検出するバッテリー温度センサー6fなどを有している。そして、検出部6は、後述するコントローラ7と電気的に接続されており、上記のような各種センサーや機器・装置等の検出値または算出値に応じた電気信号等を検出データとしてコントローラ7に出力する。
【0015】
コントローラ7は、例えば、マイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置であり、この発明の実施形態におけるコントローラ7は、車両Veを制御するとともに、特に、エンジン1、モータ2、および、バッテリー5をそれぞれ制御する。コントローラ7には、上記の検出部6で検出または算出された各種データ等が入力される。コントローラ7は、入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントローラ7は、その演算結果を制御指令信号として出力し、上記のように車両Veを制御するように構成されている。なお、
図1では一つのコントローラ7が設けられた例を示しているが、コントローラ7は、制御する装置や機器毎に、あるいは、制御内容毎に、複数設けられていてもよい。
【0016】
上記のように、駆動力源として、エンジン1、および、モータ2を搭載した車両Veにおいては、エンジン1を稼働して走行するHEV走行、および、エンジン1の運転を停止してモータ2の出力トルクによって走行するEV走行が可能である。EV走行からHEV走行へ移行する際には、運転を停止していたエンジン1を始動するため、そのエンジン1の始動に伴う振動やショックが発生する。それに対して、この発明の実施形態における車両Veのコントローラ7は、エンジン1を始動する際に発生する振動を打ち消すための制振トルクをモータ2で出力する。そのような制振トルクをモータ2で出力する制御は、例えば、前述の特許文献1にも記載されているように、周知の制御技術である。更に、この発明の実施形態における車両Veのコントローラ7は、上記のような制振トルクを適切に出力して、エンジン1を始動する際の振動やショックを適切に抑制するために、例えば、次の
図2のフローチャートに示す制御を実行するように構成されている。
【0017】
図2のフローチャートに示す制御は、車両VeがHEV走行の状態で実行される。そのため、先ず、ステップS1では、車両VeがHEV走行中であるか否かが判断される。
【0018】
車両VeがHEV走行中ではないことにより、このステップS1で“No”と判断された場合は、以降の各ステップの制御を実行することなく、この
図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0019】
それに対して、車両VeがHEV走行中であることにより、ステップS1で“Yes”と判断された場合には、ステップS2へ進む。
【0020】
ステップS2では、バッテリー5の残存電力量(SOC)が移行判断閾値よりも多いか否かが判断される。移行判断閾値は、エンジン1の始動を適切に行うことが可能な状態を判断するための閾値であり、例えば、実施による走行実験やシミュレーションの結果を基に、予め定められている。具体的には、
図3に示すように、移行判断閾値は、下記の各電力量A,B,Cを合算した値となっている。
(1)電力量Aは、バッテリー5の劣化の進行を抑制するために設定された残存電力量の下限値に相当する電力量あり、
(2)電力量Bは、車両VeがEV走行からHEV走行へ移行する際に、エンジン1を始動するために必要な電力量、すなわち、エンジン1を始動する際のクランキングトルクをモータ2で出力するために必要な電力量あり、
(3)電力量Cは、エンジン1を始動する際に発生する振動を打ち消す制振トルクをモータ2で出力するために必要な電力量である。
【0021】
したがって、上記のバッテリー5の残存電力量が移行判断閾値よりも多い状態であれば、バッテリー5は、クランキングトルク、および、制振トルクをモータ2で出力させるのに十分な電力量を保持しており、エンジン1の始動、および、その始動に伴う振動やショックの抑制を適切に実施することができる状態であると判断される。
【0022】
バッテリー5の残存電力量(SOC)が移行判断閾値よりも多いことにより、ステップS2で“Yes”と判断された場合は、ステップS3へ進む。
【0023】
ステップS3では、その他のEV走行禁止条件が成立しているか否かが判断される。例えば、バッテリー5の温度が異常に高温であること、あるいは、バッテリー5の温度が異常に低温であること、あるいは、バッテリー5の異常に電流値が検出されたこと、などのEV走行禁止条件が成立しているか否かが判断される。
【0024】
その他のEV走行禁止条件は成立していないことにより、このステップS3で“No”と判断された場合は、ステップS4へ進む。
【0025】
ステップS4では、HEV走行からEV走行への移行が許可される。すなわち、この場合は、その後に、EV走行からHEV走行へ移行する際に、上記のようなクランキングトルクおよび制振トルクをモータ2で適切に出力することができ、支障なくエンジン1を始動することができる。そのため、HEV走行からEV走行への移行が許可される。
【0026】
このステップS4で、HEV走行からEV走行への移行が許可されると、この
図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0027】
一方、バッテリー5の残存電力量(SOC)が移行判断閾値以下であることにより、上記のステップS2で“No”と判断された場合には、ステップS5へ進む。
【0028】
ステップS5では、HEV走行からEV走行への移行が禁止される。すなわち、この場合は、その後に、EV走行からHEV走行へ移行する際に、上記のようなクランキングトルクおよび制振トルクをモータ2で適切に出力することができず、エンジン1を適切に始動することができないと判断される。HEV走行からEV走行への移行が禁止されることにより、エンジン1は運転状態が継続される。そのため、エンジン1の運転が継続されている間に、バッテリー5の充電状態が改善され、残存電力量が増加することが期待できる。そして、その後、バッテリー5の残存電力量が移行判断閾値よりも多くなれば、改めて、HEV走行からEV走行への移行が許可される。
【0029】
また、上記のステップS3において、その他のEV走行禁止条件が成立していることによって、ステップS3で“Yes”と判断された場合も、このステップS5に進み、HEV走行からEV走行への移行が禁止される。
【0030】
そして、ステップS5で、HEV走行からEV走行への移行が禁止されると、この
図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0031】
以上のように、この発明の実施形態におけるハイブリッド車両の制御装置では、HEV走行中にバッテリー5の残存電力量が確認され、その残存電力量が移行判断閾値以下になっている場合は、HEV走行からEV走行への移行が禁止される。この発明の実施形態における移行判断閾値は、バッテリー5の劣化を抑制するために設定される残存電力量の下限値(電力量A)加え、エンジン1を始動するクランキングトルクをモータ2で出力するために必要な電力量(電力量B)と、制振トルクをモータ2で出力するために必要な電力量(電力量C)とが合算されて設定されている。そのため、EV走行からHEV走行へ移行する際に、エンジンを始動する場合には、バッテリー5は適切な残存電力量を有した状態となっているので、上記のようなクランキングトルクおよび制振トルクをモータ2で適切に出力することができる。
【0032】
したがって、この発明の実施形態におけるハイブリッド車両の制御装置によれば、EV走行からHEV走行への移行に伴ってエンジン1を始動する際のショックや振動を適切に抑制することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 エンジン(ENG)
2 モータ(MG)
3 トランスアクスル(TA)
4 駆動輪(前輪)
5 バッテリー(BAT)
6 検出部
6a (検出部の)車速センサー
6b (検出部の)エンジン回転数センサー
6c (検出部の)モータ回転数センサー
6d (検出部の)SOCセンサー
6e (検出部の)バッテリー電流センサー
6f (検出部の)バッテリー温度センサー
7 コントローラ(ECU)
8 後輪
Ve ハイブリッド車両