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  • 特開-大型構造体の解体方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004891
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】大型構造体の解体方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
G21F9/30 535C
G21F9/30 531E
G21F9/30 535F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104771
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391019658
【氏名又は名称】株式会社中部プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高山 克志
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 司
(72)【発明者】
【氏名】八木 寿和
(57)【要約】
【課題】大型構造体を簡単且つ効率的に解体できる。
【解決手段】大型構造体10の解体方法は、吊り具30を用いて開口部を下にして大型構造体10を吊るとともに床面40上に配置された第1スペーサ41の上に載置する載置工程と、床面40に立つ作業者の手が届く所定の高さ位置において、第1切断装置を用いて周壁11を周壁11の周方向に沿って切断することで大型構造体10を下部構造体16と上部構造体17とに分割する第1切断工程と、第1切断工程の途中において、周壁11のうち切断により生じる隙間に楔20を打設する打設工程と、吊り具30を用いて上部構造体17を吊り上げる吊り上げ工程と、第2切断装置を用いて下部構造体16を切断することで周方向において複数に分割する第2切断工程とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁及び前記周壁の縁部により形成される開口部を有し、筒状または逆さ椀状をなす大型構造体の解体方法であって、
吊り具を用いて前記開口部を下にして前記大型構造体を吊るとともに床面の上または前記床面上に配置されたスペーサの上に載置する載置工程と、
前記床面に立つ作業者の手が届く所定の高さ位置において、第1切断装置を用いて前記周壁を前記周壁の周方向に沿って切断することで前記大型構造体を下部構造体と上部構造体とに分割する第1切断工程と、
前記第1切断工程の途中において、前記周壁のうち切断により生じる隙間に楔を打設する打設工程と、
前記吊り具を用いて前記上部構造体を吊り上げる吊り上げ工程と、
第2切断装置を用いて前記下部構造体を切断することで前記周方向において複数に分割する第2切断工程と、を備える、
大型構造体の解体方法。
【請求項2】
前記第1切断工程に先立ち、前記所定の高さ位置において、前記周方向において所定の間隔をあけて複数の貫通孔を前記周壁に形成する貫通孔形成工程を備え、
前記第1切断工程では、複数の前記貫通孔のうちの1つの貫通孔から、当該貫通孔と前記周方向において隣り合う他の前記貫通孔までの部分を、前記第1切断装置を用いて前記周方向に沿って切断する作業を行うとともに、当該作業を前記周壁の全周にわたって繰り返し行う、
請求項1に記載の大型構造体の解体方法。
【請求項3】
前記第1切断工程では、前記大型構造体の内側から前記第1切断装置を用いて前記周壁を切断する、
請求項1に記載の大型構造体の解体方法。
【請求項4】
前記吊り具を用いて前記上部構造体を前記下部構造体と上下方向において重ならない位置の前記床面の上または前記床面上に配置された前記スペーサとは別のスペーサの上に載置し、
前記上部構造体を前記大型構造体とみなすとともに、前記上部構造体に対して、前記第1切断工程、前記打設工程、前記吊り上げ工程、及び前記第2切断工程を行う、
請求項1に記載の大型構造体の解体方法。
【請求項5】
前記大型構造体は、原子炉格納容器の上蓋であり、
前記大型構造体には、前記吊り具を取り付ける取付部が設けられている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の大型構造体の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型構造体の解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の廃止措置に伴う解体工事においては、解体撤去物が放射性廃棄物となることから、解体撤去物が所定の保管容器に収納されて保管される。解体撤去物は、保管容器に収納するために、例えば1m角の立方体よりも小さい大きさに切断される。
【0003】
放射性廃棄物のうち、放射性物質の放射能濃度が低く、人の健康への影響がほとんどないものについて、国の認可及び確認を得た後に、一般の廃棄物として再利用または処分することができる制度、所謂クリアランス制度がある。
【0004】
こうしたクリアランス制度を受けるために、解体撤去物の放射能濃度の測定、所謂クリアランス測定が行われる。クリアランス測定用容器への収納性及び取り扱いやすさなどを考慮して、上記解体撤去物は、さらに細断される。
【0005】
こうした解体撤去物の1つとして、原子格納容器の上蓋がある(例えば特許文献1参照)。上蓋は、例えば直径8m、高さ4m、厚み34mm、重量40tを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-206759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者等は、上蓋の解体方法として以下の方法を開発した。すなわち、上蓋の開口部を下にして上蓋を床面の上に載置する。このとき、上蓋の内部及び外部にそれぞれ足場を組む。次に、上蓋を上から順に切断することで複数の切断片に分割する。しかしながら、上記解体方法の場合、上蓋の内部及び外部に足場を組む必要がある。また、上蓋から切断される切断片も重量物となるため、吊り具を用いて切断片を降下させるために玉掛け作業及びクレーン操作などが切断片毎に必要となる。このため、上蓋の解体作業が煩雑なものとなる。
【0008】
なお、こうした課題は、原子炉格納容器の上蓋に限らず、周壁及び周壁の縁部により形成される開口部を有し、筒状または逆さ椀状をなす大型構造体においては、同様にして生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための大型構造体の解体方法の各態様を記載する。
[態様1]
周壁及び前記周壁の縁部により形成される開口部を有し、筒状または逆さ椀状をなす大型構造体の解体方法であって、吊り具を用いて前記開口部を下にして前記大型構造体を吊るとともに床面の上または前記床面上に配置されたスペーサの上に載置する載置工程と、前記床面に立つ作業者の手が届く所定の高さ位置において、第1切断装置を用いて前記周壁を前記周壁の周方向に沿って切断することで前記大型構造体を下部構造体と上部構造体とに分割する第1切断工程と、前記第1切断工程の途中において、前記周壁のうち切断により生じる隙間に楔を打設する打設工程と、前記吊り具を用いて前記上部構造体を吊り上げる吊り上げ工程と、第2切断装置を用いて前記下部構造体を切断することで前記周方向において複数に分割する第2切断工程と、を備える、大型構造体の解体方法。
【0010】
同構成によれば、吊り具を用いて大型構造体が床面の上またはスペーサの上に載置された状態において、床面に立つ作業者の手が届く所定の高さ位置において、第1切断装置を用いて周壁が周方向に沿って切断される。これにより、大型構造体が、下部構造体と上部構造体とに分割される。
【0011】
第1切断工程の途中において切断長が長くなると、周壁のうち切断により形成された隙間に、大型構造体の上部が落ち込むことで当該隙間の上下幅が小さくなる。その結果、第1切断装置を用いた切断ができなくなるおそれがある。
【0012】
この点、上記構成によれば、第1切断工程の途中において、周壁のうち切断により形成された隙間に楔が打設される。これにより、上記隙間に、大型構造体のうち当該隙間よりも上側の部分が落ち込むことで当該隙間の上下幅が小さくなることを抑制できるので、第1切断装置を用いた切断を円滑に行うことができる。
【0013】
また、床面に立つ作業者の手の届く所定の高さ位置において第1切断装置が用いられる、すなわち第1切断工程が高所作業とならないため、第1切断装置としてワイヤーソーなどの大型の切断装置を用いることが可能となる。これにより、ハンドツールの使用を低減できるので、ハンドツールの使用に伴う災害の発生を抑制できる。また、高所作業を減らすことができるので、足場を低減あるいは廃止できる。
【0014】
次に、吊り具を用いて大型構造体が吊り上げられる。そして、下部構造体が切断されて周方向において複数に分割される。このため、下部構造体を床面の上またはスペーサの上から移動させることなく複数に分割することができる。これにより、作業エリアを小さくできる。
【0015】
したがって、大型構造体を簡単且つ効率的に解体できる。
[態様2]
前記第1切断工程に先立ち、前記所定の高さ位置において、前記周方向において所定の間隔をあけて複数の貫通孔を前記周壁に形成する貫通孔形成工程を備え、前記第1切断工程では、複数の前記貫通孔のうちの1つの貫通孔から、当該貫通孔と前記周方向において隣り合う他の前記貫通孔までの部分を、前記第1切断装置を用いて前記周方向に沿って切断する作業を行うとともに、当該作業を前記周壁の全周にわたって繰り返し行う、態様1に記載の大型構造体の解体方法。
【0016】
同構成によれば、上記1つの貫通孔を第1切断装置の切断部を導入するパイロット孔として利用できる。また、貫通孔の各々が、第1切断工程を間欠的に行う際の目標位置となるとともに、楔を打設する位置を決める際の目安となる。したがって、第1切断工程を容易に行うことができる。
【0017】
[態様3]
前記第1切断工程では、前記大型構造体の内側から前記第1切断装置を用いて前記周壁を切断する、態様1または態様2に記載の大型構造体の解体方法。
【0018】
同構成によれば、大型構造体の内側において第1切断装置が用いられるので、第1切断装置が破損した場合に大型構造体が防護壁として機能する。これにより、安全対策のための設備を低減できる。
【0019】
[態様4]
前記吊り具を用いて前記上部構造体を前記下部構造体と上下方向において重ならない位置の前記床面の上または前記床面上に配置された前記スペーサとは別のスペーサの上に載置し、前記上部構造体を前記大型構造体とみなすとともに、前記上部構造体に対して、前記第1切断工程、前記打設工程、前記吊り上げ工程、及び前記第2切断工程を行う、態様1から態様3のいずれか一項に記載の大型構造体の解体方法。
【0020】
同構成によれば、上部構造体を簡単且つ効率的に解体できる。したがって、大型構造体を一層簡単且つ効率的に解体できる。
[態様5]
前記大型構造体は、原子炉格納容器の上蓋であり、前記大型構造体には、前記吊り具を取り付ける取付部が設けられている、態様1から態様4のいずれか一項に記載の大型構造体の解体方法。
【0021】
同構成によれば、原子炉格納容器の上蓋には、当該上蓋を開閉する作業を行う吊り具を取り付けるための取付部が既設されているので、解体のために当該取付部を別途設ける作業が発生しない。このため、原子炉格納容器の上蓋を簡単且つ効率的に解体できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、大型構造体を簡単且つ効率的に解体できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、スペーサの上に載置された上蓋を示す側面図である。
図2図2(a)は、貫通孔形成工程を示す上蓋の側面図であり、図2(b)は、第1切断工程を示す上蓋の側面図であり、図2(c)は、打設工程を示す上蓋の側面図である。
図3図3は、下部構造体と、別のスペーサの上に載置された上部構造体とを示す側面図である。
図4図4は、第2切断工程を示す下部構造体の側面図である。
図5図5は、別のスペーサの上に載置された上部構造体と切断予定線とを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1図5を参照して、大型構造体の解体方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の大型構造体10は、原子力発電所の原子炉格納容器の上蓋である。
図1に示すように、大型構造体10は、周壁11、周壁11の上部を覆う頂壁13、及び周壁11の下縁部により形成される開口部12を有し、逆さ椀状をなしている。周壁11の下縁部には、全周にわたってフランジ11aが設けられている。頂壁13の外面には、取付部14が設けられている。大型構造体10は、鉄鋼材料により一体形成されている。本実施形態の大型構造体10は、例えば直径8m、高さ4m、厚み34mm、重量40tを有する。
【0025】
以降において、周壁11の周方向を単に周方向として説明する。
取付部14は、周方向において等間隔にて複数(本実施形態では4つ)設けられている。取付部14には、既設のクレーンによって大型構造体10を移動させるための吊り具30が取り付けられている。
【0026】
次に、大型構造体10の解体手順について説明する。なお、図2図4、及び図5において符号「CL」は切断予定線である。
まず、図1に示すように、吊り具30を用いて開口部12を下にして大型構造体10を吊るとともに床面40上に配置された第1スペーサ41の上に載置する(以上、載置工程)。第1スペーサ41は、例えば複数本の鉄鋼製の角材により構成される。床面40とフランジ11aとの間には、第1スペーサ41によって作業員が大型構造体10の内部に出入りする隙間が形成される。
【0027】
次に、図2(a)に示すように、床面40に立つ作業者の手が届く所定の高さ位置において、周方向において所定の間隔をあけて複数の貫通孔15a~15dを周壁11に形成する(以上、貫通孔形成工程)。貫通孔15a~15dは、電動ドリルによって形成される。上記所定の高さ位置は、例えば床面40からの高さHが1mの位置である。本実施形態では、周方向において2m毎に1つの貫通孔15a~15dを形成する。
【0028】
次に、上記所定の高さ位置において、第1切断装置を用いて周壁11を周壁11の周方向に沿って切断することで大型構造体10を下部構造体16と上部構造体17とに分割する(以上、第1切断工程)。本実施形態の第1切断装置は、ダイヤモンドワイヤーソーである。第1切断工程では、大型構造体10の内側から第1切断装置を用いて周壁11を切断することが好ましい。
【0029】
詳しくは、図2(b)に示すように、第1切断工程では、複数の貫通孔15a~15dのうちの1つの貫通孔15aから、当該貫通孔15aと周方向において隣り合う他の貫通孔15bまでの部分を、第1切断装置を用いて周方向に沿って切断する作業を行う。このとき、図2(c)に示すように、周壁11のうち切断により生じる隙間に楔20を打設する(以上、打設工程)。続いて、貫通孔15bから当該貫通孔15bと周方向において隣り合う他の貫通孔15cまでの部分を、第1切断装置を用いて周方向に沿って切断する作業を行う。またこのとき、図示は省略するが、貫通孔15b,15c同士の間において、周壁11のうち切断により生じる隙間に楔20を打設する。本実施形態では、周方向における楔20同士の間隔が2mとなる。こうした作業を周壁11の全周にわたって繰り返し行う。
【0030】
次に、図3に二点鎖線にて示すように、吊り具30を用いて上部構造体17を吊り上げる(吊り上げ工程)。続いて、図3に実線にて示すように、吊り具30を用いて上部構造体17を下部構造体16と上下方向において重ならない位置の床面40上に配置された第1スペーサ41とは別の第2スペーサ42の上に載置する。第2スペーサ42は、第1スペーサ41と同様な構成である。
【0031】
次に、図4に示すように、第2切断装置を用いて下部構造体16を切断することで周方向において複数に分割する(以上、第2切断工程)。第2切断工程では、下部構造体16を1m角未満の大きさの切断片に分割する。本実施形態の第2切断装置は、バンドソー(セイバーソーともいう)である。
【0032】
また、図5に示すように、上部構造体17を大型構造体10とみなすとともに、上部構造体17に対して、上述した第1切断工程、打設工程、吊り上げ工程、第2切断工程を行う。
【0033】
次に、本実施形態の作用について説明する。
吊り具30を用いて大型構造体10が第1スペーサ41の上に載置された状態で、床面40に立つ作業者の手が届く所定の高さ位置において、第1切断装置を用いて周壁11が周方向に沿って切断される。これにより、大型構造体10が、下部構造体16と上部構造体17とに分割される。
【0034】
第1切断工程の途中において切断長が長くなると、周壁11のうち切断により形成された隙間に、大型構造体10の上部が落ち込むことで当該隙間の上下幅が小さくなる。その結果、第1切断装置を用いた切断ができなくなるおそれがある。
【0035】
この点、本実施形態によれば、第1切断工程の途中において、周壁11のうち切断により形成された隙間に楔20が打設される。これにより、上記隙間に、大型構造体10のうち当該隙間よりも上側の部分が落ち込むことで当該隙間の上下幅が小さくなることを抑制できるので、第1切断装置を用いた切断を円滑に行うことができる。
【0036】
また、床面40に立つ作業者の手の届く所定の高さ位置において第1切断装置が用いられる、すなわち第1切断工程が高所作業にならないため、第1切断装置としてワイヤーソーなどの大型の切断装置を用いることが可能となる。これにより、ハンドツールの使用を低減できるので、ハンドツールの使用に伴う災害の発生を抑制できる。また、高所作業を減らすことができるので、足場を低減あるいは廃止できる。
【0037】
次に、吊り具30を用いて大型構造体10が吊り上げられる。そして、下部構造体16が切断されて周方向において複数に分割される。このため、下部構造体16を第1スペーサ41の上から移動させることなく複数に分割することができる。これにより、作業エリアを小さくできる。
【0038】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)大型構造体10の解体方法は、載置工程と、第1切断工程と、打設工程と、吊り上げ工程と、第2切断工程とを備える。
【0039】
こうした構成によれば、上記作用を奏するので、大型構造体10を簡単且つ効率的に解体できる。
(2)大型構造体10の解体方法は、第1切断工程に先立ち、貫通孔形成工程を備える。第1切断工程では、複数の貫通孔15a~15dのうちの1つの貫通孔15aから当該貫通孔15aと周方向において隣り合う他の貫通孔15bまでの部分を、第1切断装置を用いて周方向に沿って切断する作業を行うようにした。また、こうした作業を周壁11の全周にわたって繰り返し行うようにした。
【0040】
こうした構成によれば、上記1つの貫通孔15aを第1切断装置の切断部を導入するパイロット孔として利用できる。また、貫通孔15a~15dの各々が、第1切断工程を間欠的に行う際の目標位置となるとともに、楔20を打設する位置を決める際の目安となる。したがって、第1切断工程を容易に行うことができる。
【0041】
(3)第1切断工程では、大型構造体10の内側から第1切断装置を用いて周壁11を切断するようにした。こうした構成によれば、大型構造体10の内側において第1切断装置が用いられるので、第1切断装置が破損した場合に大型構造体10が防護壁として機能する。これにより、安全対策のための設備を低減できる。
【0042】
(4)吊り具30を用いて上部構造体17を下部構造体16と上下方向において重ならない位置の床面40上に配置された第1スペーサ41とは別の第2スペーサ42の上に載置するようにした。また、上部構造体17を大型構造体10とみなすとともに、上部構造体17に対して、第1切断工程、打設工程、吊り上げ工程、第2切断工程を行うようにした。これにより、上部構造体17を簡単且つ効率的に解体できる。したがって、大型構造体10を一層簡単且つ効率的に解体できる。
【0043】
(5)原子炉格納容器の上蓋には、当該上蓋を開閉する作業を行う吊り具30を取り付けるための取付部14が既設されているので、解体のために当該取付部14を別途設ける作業が発生しない。このため、原子炉格納容器の上蓋を簡単且つ効率的に解体できる。
【0044】
(6)ワイヤーソー及びバンドソーによって大型構造体10を切断するようにした。このため、溶断とは異なり、火や煙が生じることを抑制できる。
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0045】
・例えば上部構造体17の高さ寸法が小さい場合には、上部構造体17を更に下部構造体16と上部構造体17に分割しなくてもよい。
・下部構造体16を分割して形成される切断片を他の場所に移動させた後に、吊り具30を用いて上部構造体17を第1スペーサ41の上に載置するようにしてもよい。
【0046】
・第1切断工程を大型構造体10の外側から行うようにしてもよい。
・切断部を導入するためのパイロット孔を必要としない第1切断装置を用いる場合には、貫通孔形成工程を省略することもできる。
【0047】
・第1切断工程においてバンドソーを用いることもできる。
・上記実施形態では、第1スペーサ41(第2スペーサ42)の上に大型構造体10を載置するようにしたが、床面40の上に直接、大型構造体10を載置するようにしてもよい。
【0048】
・本開示における大型構造体10は、原子炉格納容器の上蓋に限定されない。周壁及び周壁の縁部により形成される開口部を有し、筒状または逆さ椀状をなす大型構造体であれば、他の大型構造体の解体においても適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…大型構造体
11…周壁
11a…フランジ
12…開口部
13…頂壁
14…取付部
15a~15d…貫通孔
16…下部構造体
17…上部構造体
20…楔
30…吊り具
40…床面
41…第1スペーサ
42…第2スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5