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特開2025-4892台車、台車装置、長尺部材の運搬及び切断方法
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  • 特開-台車、台車装置、長尺部材の運搬及び切断方法 図1
  • 特開-台車、台車装置、長尺部材の運搬及び切断方法 図2
  • 特開-台車、台車装置、長尺部材の運搬及び切断方法 図3
  • 特開-台車、台車装置、長尺部材の運搬及び切断方法 図4
  • 特開-台車、台車装置、長尺部材の運搬及び切断方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004892
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】台車、台車装置、長尺部材の運搬及び切断方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20250108BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
G21F9/28 A
G21F9/30 531H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104772
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391019658
【氏名又は名称】株式会社中部プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上嶋 亨紀
(72)【発明者】
【氏名】安藤 章敦
(57)【要約】
【課題】長尺部材の運搬及び切断を効率よく行うことができる。
【解決手段】台車11は、断面円形状の外周面を有する長尺部材の運搬及び切断に用いられる。台車11は、基台20と、基台20を下方から支持する複数のキャスタ30と、基台20上に取り付けられ、長尺部材の外周面を下方から支持する支持部40とを備える。支持部40は、長尺部材の周方向において長尺部材を回転可能に支持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形状の外周面を有する長尺部材の運搬及び切断に用いられる台車であって、
基台と、
前記基台を下方から支持する複数のキャスタと、
前記基台上に取り付けられ、前記長尺部材の外周面を下方から支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、前記長尺部材の周方向において前記長尺部材を回転可能に支持する、
台車。
【請求項2】
前記支持部は、前記長尺部材の外周面のうち前記周方向における互いに異なる複数の部分をそれぞれ支持する複数のローラを有する、
請求項1に記載の台車。
【請求項3】
前記ローラの外周面を押圧することで当該ローラの回転を規制する押圧部と、当該ローラの外周面を押圧する押圧状態と当該ローラの外周面を押圧しない非押圧状態との間で前記押圧部の状態を切替可能に構成された切替部と、を含む規制機構を備える、
請求項2に記載の台車。
【請求項4】
前記切替部は、
前記押圧部が連結された一端を有する連結軸と、
前記連結軸を前記連結軸の軸線方向に沿って移動可能に支持する軸支持部と、
前記連結軸の他端に当接することで、前記軸線方向における前記他端側への前記連結軸の移動を規制可能な規制部と、
前記規制部の位置を変更可能な操作部と、を有する、
請求項3に記載の台車。
【請求項5】
前記支持部は、前記基台に対し、締結部材を介して着脱可能に取り付けられており、
前記軸線方向における前記連結軸の前記一端から前記押圧部の先端までの距離を変更可能に構成されている、
請求項4に記載の台車。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の台車を複数備える、
台車装置。
【請求項7】
請求項6に記載の台車装置を用いて長尺部材の運搬及び切断を行う長尺部材の運搬及び切断方法であって、
複数の前記台車を前記長尺部材の延在方向に沿って互いに間隔をあけて配置する配置工程と、
前記台車の各々の前記支持部により前記長尺部材の外周面を支持させることで前記長尺部材を複数の前記台車に載置する載置工程と、
前記台車同士の間の位置において前記長尺部材を切断する切断工程と、を含む、
長尺部材の運搬及び切断方法。
【請求項8】
前記支持部は、前記長尺部材の外周面のうち前記周方向における互いに異なる複数の部分をそれぞれ支持する複数のローラを有し、
前記台車は、前記ローラを押圧することで当該ローラの回転を規制する押圧部と、当該ローラを押圧する押圧状態と当該ローラを押圧しない非押圧状態との間で前記押圧部の状態を切替可能に構成された切替部と、を含む規制機構を備え、
前記長尺部材の運搬または切断を行う前に、前記切替部によって前記押圧部の状態を前記押圧状態に切り替える、
請求項7に記載の長尺部材の運搬及び切断方法。
【請求項9】
前記長尺部材は、内部に汚染物質を含む配管である、
請求項8に記載の長尺部材の運搬及び切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車、台車装置、長尺部材の運搬及び切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の廃止措置に伴う解体工事においては、解体撤去物が放射性廃棄物となることから、解体撤去物が所定の保管容器に収納されて保管される。解体撤去物は、保管容器に収納するために、例えば1m角の立方体よりも小さい大きさに切断される。
【0003】
放射性廃棄物のうち、放射性物質の放射能濃度が低く、人の健康への影響がほとんどないものについて、国の認可及び確認を得た後に、一般の廃棄物として再利用または処分することができる制度、所謂クリアランス制度がある。
【0004】
こうしたクリアランス制度を受けるために、解体撤去物の放射能濃度の測定、所謂クリアランス測定が行われる。クリアランス測定用容器への収納性及び取り扱いやすさなどを考慮して、上記解体撤去物は、さらに細断される。
【0005】
こうした解体撤去物としては、例えば原子力発電所のタービン建屋の配管設備がある(例えば特許文献1参照)。こうした配管設備の解体工事は、既設の配管設備から、数メートルの長さの配管を切り出して台車に載置する工程、配管を台車に固縛する工程、台車を切断用架台のある場所へ運搬する工程を備える。また、上記解体工事は、配管に吊り具を装着するとともに固縛を解除し、吊り具によって台車から配管を降ろす工程、吊り具によって切断用架台に配管を載置する工程、配管を切断して数十cmの長さの複数の配管に分割する工程を備える。また、上記解体工事は、分割された配管を切断用架台から降ろす工程、配管を細断用架台のある場所へ運搬する工程、細断用架台に配管を載置する工程、配管を細断して複数に分割する工程を備える。また、上記解体工事は、配管の分割体を保管容器に収納する工程、及び保管容器を保管エリアへ運搬して保管する工程を備える。
【0006】
こうした工程を繰り返すことにより解体工事が進められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-17598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした従来の解体工事は、台車に載置されている配管を切断用架台に載せ替えるために、吊り具を用いて台車から配管を降ろす工程や、吊り具を用いて切断用架台に配管を載置する工程を備える。また、配管の載せ替えを行う際には、配管内に含まれる放射性物質が飛散しないように慎重な作業が求められる。このため、配管の運搬及び切断を効率よく行う上で、改善の余地がある。
【0009】
なお、こうした課題は、原子力発電所の配管の運搬及び切断に限らず、断面円形状の外周面を有する長尺状部材の運搬及び切断においては、同様にして生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための台車、台車装置、及び長尺部材の運搬及び切断方法の各態様を記載する。
[態様1]
断面円形状の外周面を有する長尺部材の運搬及び切断に用いられる台車であって、
基台と、
前記基台を下方から支持する複数のキャスタと、
前記基台上に取り付けられ、前記長尺部材の外周面を下方から支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、前記長尺部材の周方向において前記長尺部材を回転可能に支持する、
台車。
【0011】
同構成によれば、支持部により長尺部材の外周面を下方から支持させることで長尺部材を台車に載置できる。そして、キャスタによって台車を移動させることで長尺部材を運搬できる。また、長尺部材が台車に載置された状態において、支持部によって長尺部材を周方向に回転させることができる。これにより、台車に載置された状態の長尺部材の上半分を切断した後に、長尺部材を180度回転させることで、それまで長尺部材の下半分であった部分を上半分にすることができるので、当該部分を容易に切断することができる。したがって、長尺部材の運搬及び切断を効率よく行うことができる。
【0012】
[態様2]
前記支持部は、前記長尺部材の外周面のうち前記周方向における互いに異なる複数の部分をそれぞれ支持する複数のローラを有する、
態様1に記載の台車。
【0013】
同構成によれば、複数のローラによって長尺部材を回転可能に安定して支持することができる。
[態様3]
前記ローラを押圧することで当該ローラの回転を規制する押圧部と、当該ローラを押圧する押圧状態と当該ローラを押圧しない非押圧状態との間で前記押圧部の状態を切替可能に構成された切替部と、を含む規制機構を備える、
態様2に記載の台車。
【0014】
同構成によれば、切替部によって押圧部の状態が押圧状態に切り替えることで、押圧部によりローラの回転が規制されるようになる。これにより、長尺部材の回転が規制されるので、長尺部材の運搬及び切断を安定して行うことができる。
【0015】
また、上記構成によれば、切替部によって非押圧状態に切り替えることで、ローラの回転が許容されるようになる。これにより、台車に載置された状態の長尺部材を周方向に回転させることができる。
【0016】
したがって、長尺部材の運搬及び切断を一層効率よく行うことができる。
[態様4]
前記切替部は、前記押圧部が連結された一端を有する連結軸と、
前記連結軸を前記連結軸の軸線方向に沿って移動可能に支持する軸支持部と、
前記連結軸の他端に当接することで、前記軸線方向における前記他端側への前記連結軸の移動を規制可能な規制部と、
前記規制部の位置を変更可能な操作部と、を有する、
態様3に記載の台車。
【0017】
同構成によれば、操作部によって規制部の位置を変更することで、連結軸の軸線方向において連結軸の他端側への移動が規制される状態と、当該移動が規制されない状態とに切り替えることができる。すなわち、押圧状態と非押圧状態との間で押圧部の状態を切り替えることができる。したがって、規制機構を簡単な構成により具現化できる。
【0018】
[態様5]
前記支持部は、前記基台に対し、締結部材を介して着脱可能に取り付けられており、
前記軸線方向における前記連結軸の前記一端から前記押圧部の先端までの距離を変更可能に構成されている、
態様4に記載の台車。
【0019】
同構成によれば、締結部材による締結を解除することで、基台から支持部を取り外すことができる。そして、外径の異なる他の長尺部材を支持可能な他の支持部を締結部材により基台に取り付けることができる。この場合、連結軸の一端と支持部を構成するローラの外周面との間の距離が変更される。この点、上記構成によれば、連結軸の一端から押圧部の先端までの距離を適宜変更することで、押圧部によってローラの外周面を押圧できる。したがって、外径の異なる複数の長尺部材に対して共通の規制機構を用いることができる。
【0020】
[態様6]
態様1から態様5のいずれか一項に記載の台車を複数備える、
台車装置。
【0021】
同構成によれば、複数の台車を長尺部材の延在方向に沿って互いに間隔をあけて配置した状態で、複数の台車の支持部により、長尺部材の外周面を支持させることで長尺部材が複数の台車に載置される。そして、複数の台車のキャスタによって複数の台車を一体的に移動させることで長尺部材を運搬できる。また、長尺部材が複数の台車に載置された状態において、複数の台車の支持部によって長尺部材を周方向に回転させることができる。これにより、台車同士の間の位置において長尺部材の上半分を切断した後に、長尺部材を180度回転させることで、それまで長尺部材の下半分であった部分を上半分にすることができるので、当該部分を容易に切断できる。したがって、台車装置の全長よりも長い長尺部材の運搬及び切断を効率よく行うことができる。
【0022】
[態様7]
態様6に記載の台車装置を用いて長尺部材の運搬及び切断を行う長尺部材の運搬及び切断方法であって、
複数の前記台車を前記長尺部材の延在方向に沿って互いに間隔をあけて配置する配置工程と、
前記台車の各々の前記支持部により前記長尺部材の外周面を支持させることで前記長尺部材を複数の前記台車に載置する載置工程と、
前記台車同士の間の位置において前記長尺部材を切断する切断工程と、を含む、
長尺部材の運搬及び切断方法。
【0023】
同方法によれば、態様6の作用効果と同様な作用効果を奏することができる。
[態様8]
前記支持部は、前記長尺部材の外周面のうち前記周方向における互いに異なる複数の部分をそれぞれ支持する複数のローラを有し、
前記台車は、前記ローラの外周面を押圧することで当該ローラの回転を規制する押圧部と、当該ローラの外周面を押圧する押圧状態と当該ローラの外周面を押圧しない非押圧状態との間で前記押圧部の状態を切替可能に構成された切替部と、を含む規制機構を備え、
前記長尺部材の運搬または切断を行う前に、前記切替部によって前記押圧部の状態を前記押圧状態に切り替える、
態様7に記載の長尺部材の運搬及び切断方法。
【0024】
同方法によれば、長尺部材の運搬または切断を行う際にローラの回転が規制されるようになる。これにより、複数の台車に載置された状態の長尺部材の回転が規制されるので、長尺部材の運搬及び切断を安定して行うことができる。
【0025】
[態様9]
前記長尺部材は、内部に汚染物質を含む配管である、
態様8に記載の長尺部材の運搬及び切断方法。
【0026】
長尺部材が内部に汚染物質を含む配管である場合、運搬用の台車から切断用の架台に長尺部材を載せ替える際に、汚染物質が外部に飛散するおそれがある。
この点、上記方法によれば、長尺部材が複数の台車に載置された状態で移動及び切断を行うことができる。これにより、長尺部材を運搬用の台車から切断用の架台に載せ替える工程を省略できるので、汚染物質が外部に飛散することを抑制できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、長尺部材の運搬及び切断を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、一実施形態に係る台車の斜視図である。
図2図2(a)は、規制機構を中心とした拡大平面図であり、図2(b)は、規制機構を中心とした拡大側面図である。
図3図3(a)は、押圧部が非押圧状態であるときの台車の側面図であり、図3(b)は、押圧部が押圧状態であるときの台車の側面図である。
図4図4は、台車装置に長尺部材が載置された状態を示す側面図である。
図5図5(a)は、長尺部材の上半分を切断した状態を示す側面図であり、図5(b)は、長尺部材を図5(a)の状態から180度回転させた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1図5を参照して、一実施形態について説明する。
図4に示すように、台車装置10は、複数(本実施形態では5台)の台車11を備える。台車11は、断面円形状の外周面を有する長尺部材90の運搬及び切断に用いられる。本実施形態の長尺部材90は、原子力発電所の既設の配管設備から切り出されてストレートな配管であり、内部に放射性物質などの汚染物質を含む。
【0030】
図1に示すように、台車11は、基台20と、キャスタ30と、支持部40と、規制機構50とを備える。
次に、台車11の構成について詳細に説明する。
【0031】
<基台20>
図1に示すように、基台20は、基台本体21と、ベースプレート22と、リング23とを有する。基台本体21は、いずれも平面状をなすとともに互いに平行な上面及び下面を有する。基台本体21は、平面視長方形状であり、鋼材により形成されている。
【0032】
なお、以降において、上記長方形の長辺方向及び短辺方向をそれぞれ第1方向X及び第2方向Yとして説明する。第1方向X及び第2方向Yの双方に直交する方向は、上下方向Zである。
【0033】
基台本体21の上面には、2つのベースプレート22が取り付けられている。ベースプレート22は、第1締結部材61及び第2締結部材62によって基台本体21に締結されている。第1締結部材61及び第2締結部材62は、ボルトである。ベースプレート22は、長方形板状であり、第2方向Yにおいて互いに間隔をあけて配置されている。ベースプレート22の長辺方向は、第1方向Xと一致している。ベースプレート22の一方の短辺には、把手22aが連結されている。ベースプレート22及び把手22aは、ステンレス鋼などの金属製である。
【0034】
基台本体21の上面には、2つのリング23が連結されている。リング23は、第1方向Xにおける両端であり、且つ第2方向Yにおける中央部に設けられている。リング23は、基台本体21と同一の鋼材により形成されている。
【0035】
<キャスタ30>
図1に示すように、基台本体21の下面には、基台20を下方から支持する複数のキャスタ30が連結されている。
【0036】
本実施形態では、4つのキャスタ30が基台本体21の下面の4つの角部にそれぞれ取り付けられている。
<支持部40>
図1図2(a)、及び図2(b)に示すように、各ベースプレート22上には、長尺部材90の外周面を下方から支持する支持部40が設けられている。支持部40は、長尺部材90の周方向Cにおいて長尺部材90を回転可能に支持する。
【0037】
支持部40は、長尺部材90の外周面のうち周方向Cにおける互いに異なる複数の部分をそれぞれ支持する複数のローラ41を有する。本実施形態の支持部40は、2つのローラ41を有する。
【0038】
ベースプレート22の上面には、一対の軸受け台42が第2方向Yにおいて互いに間隔をあけて取り付けられている。
軸受け台42は、取付壁部42aと立壁部42bとを有する。取付壁部42aは、第1方向Xに沿って延びる長辺を有する平面視長方形板状であり、ベースプレート22に上記第1締結部材61を介して着脱可能に取り付けられている。立壁部42bは、第2方向Yにおいて他方の軸受け台42側の縁部から起立している。一対の軸受け台42の立壁部42b同士の間に、上記2つのローラ41が第1方向Xにおいて互い間隔をあけて設けられている。
【0039】
ローラ41は、中心孔を有するローラ本体41aと、ローラ本体41aの中心孔に挿通されるとともに第2方向Yに沿って延びる軸部41bとを有する。軸部41bの両端部は、一対の軸受け台42の立壁部42bを貫通している。軸部41bの両端部には、ナット43が螺合されている。ローラ本体41aは、軸部41bにより回転可能に支持されている。ローラ本体41aは、例えば樹脂製である。
【0040】
ベースプレート22の上面からの2つの軸部41bの高さは、互いに同一である。
<規制機構50>
図1図2(a)、及び図2(b)に示すように、規制機構50は、押圧部51と切替部52とを備える。
【0041】
押圧部51は、ローラ41の外周面を押圧することでローラ41の回転を規制する。
切替部52は、ローラ41の外周面を押圧する押圧状態(図3(a))とローラ41の外周面を押圧しない非押圧状態(図3(b))との間で押圧部51の状態を切替可能に構成されている。
【0042】
切替部52は、連結軸53と、軸支持部54と、規制部55cと、操作部55bとを有する。
詳しくは、ベースプレート22の上面のうち第1方向Xにおいて把手22aが設けられている側とは反対側には、略直方体状の取付台57が取り付けられている。
【0043】
取付台57の上面には、一対の軸受け台58が第2方向Yにおいて互いに間隔をあけて取り付けられている。
軸受け台58は、取付壁部58aと立壁部58bとを有する。取付壁部58aは、第1方向Xに沿って延びる長辺を有する平面視長方形板状であり、取付台57に第3締結部材70を介して着脱可能に取り付けられている。第3締結部材70は、ボルトである。立壁部58bは、第2方向Yにおいて他方の軸受け台58側の縁部から起立している。一対の軸受け台58の立壁部58b同士の間に、第2方向Yに沿って延びる軸部59が連結されている。
【0044】
図2(a)、及び図2(b)に示すように、一対の軸受け台58の立壁部58b同士の間には、第1方向Xに沿って延在する円筒状の軸支持部54が連結されている。軸支持部54は、立壁部58bのうち支持部40側の端部に溶接にて連結されている。
【0045】
軸支持部54には、連結軸53が挿通されている。軸支持部54は、連結軸53を連結軸53の軸線方向である第1方向Xに沿って移動可能に支持する。
連結軸53のうち支持部40側の端部には、雄ねじが設けられている。
【0046】
押圧部51は、円柱状をなすとともに、連結軸側の端面に開口する雌ねじを有する。押圧部51の雌ねじに連結軸53の雄ねじが螺入されることで押圧部51の一端53aが連結軸53に連結されている。
【0047】
一対の軸受け台58の間には、軸部59の軸線を中心にレバー55が回動可能に設けられている。
レバー55は、軸部59が挿通される挿通部55aと、挿通部55aから第1方向Xにおいて連結軸53から離れる側に延在する操作部55bと、操作部55bの延在方向に交差する方向(図2(b)の下方)に延在する規制部55cとを有する。
【0048】
規制部55cは、レバー55の操作部55bが第1方向Xに沿った姿勢において、連結軸53の他端53bに当接することで、第1方向Xにおける他端53b側への連結軸53の移動を規制可能に構成されている。すなわち、操作部55bは、規制部55cの位置を変更可能に構成されている。
【0049】
図2(b)に示すように、押圧部51は、第1方向Xにおける連結軸53の一端53aから押圧部51の先端51aまでの距離ΔXを変更可能に構成されている。詳しくは、押圧部51に対する連結軸53のねじの締め込み量を変更することで、上記距離ΔXが変更可能に構成されている。
【0050】
次に、台車装置10を用いた長尺部材90の運搬及び切断方法について説明する。
図4に示すように、まず、複数の台車11を長尺部材90の延在方向に沿って互いに間隔をあけて配置する(以上、配置工程)。このとき、図3(a)に示すように、切替部52によって押圧部51の状態を非押圧状態に切り替える。
【0051】
次に、台車11の各々の支持部40により長尺部材90の外周面を支持させることで長尺部材90を複数の台車11に載置する(以上、載置工程)。
次に、図3(b)に示すように、切替部52によって押圧部51の状態を押圧状態に切り替える。そして、キャスタ30によって各台車11を移動させることで、切断場所まで長尺部材90を運搬する。
【0052】
次に、図5(a)に示すように、台車11同士の間の位置において長尺部材90を切断する(切断工程)。詳しくは、台車11同士の間の位置において長尺部材90の上半分を切断する。
【0053】
次に、図3(a)に示すように、切替部52によって押圧部51の状態を非押圧状態に切り替える。
次に、図5(b)に示すように、長尺部材90を180度回転させることで、それまで長尺部材90の下半分であった部分91を上半分にする。
【0054】
次に、図3(b)に示すように、切替部52によって押圧部51の状態を押圧状態に切り替える。
最後に、上記部分91を切断できることで、長尺部材90を5つに分割する。
【0055】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)台車11は、基台20と、複数のキャスタ30と、支持部40とを備える。支持部40は、長尺部材90の周方向Cにおいて長尺部材90を回転可能に支持する。
【0056】
こうした構成によれば、支持部40により長尺部材90を下方から支持させることで長尺部材90を台車11に載置できる。そして、キャスタ30によって台車11を移動させることで長尺部材90を運搬できる。また、長尺部材90が台車11に載置された状態において、支持部40によって長尺部材90を周方向Cに回転させることができる。これにより、台車11に載置された状態の長尺部材90の上半分を切断した後に、長尺部材90を180度回転させることで、それまで長尺部材90の下半分であった部分91を上半分にすることができるので、当該部分91を容易に切断することができる。したがって、長尺部材90の運搬及び切断を効率よく行うことができる。
【0057】
(2)支持部40は、長尺部材90の外周面のうち周方向Cにおける互いに異なる複数の部分をそれぞれ支持する複数のローラ41を有する。このため、複数のローラ41によって長尺部材90を回転可能に安定して支持することができる。
【0058】
(3)台車11は、押圧部51と、ローラ41の外周面を押圧する押圧状態とローラ41の外周面を押圧しない非押圧状態との間で押圧部51の状態を切替可能に構成された切替部52とを含む規制機構50を備える。
【0059】
こうした構成によれば、切替部52によって押圧部51の状態が押圧状態に切り替えることで、押圧部51によりローラ41の回転が規制されるようになる。これにより、長尺部材90の回転が規制されるので、長尺部材90の運搬及び切断を安定して行うことができる。また、上記構成によれば、切替部52によって押圧部51の状態が非押圧状態に切り替えることで、ローラ41の回転が許容されるようになる。これにより、台車11に載置された状態の長尺部材90を周方向Cに回転させることができる。したがって、長尺部材90の運搬及び切断を一層効率よく行うことができる。
【0060】
(4)切替部52は、連結軸53と、軸支持部54と、規制部55cと、操作部55bとを有する。
こうした構成によれば、操作部55bによって規制部55cの位置を変更することで、連結軸53の軸線方向である第1方向Xにおいて連結軸53の他端53b側への移動が規制される状態と、当該移動が規制されない状態とに切り替えることができる。すなわち、押圧状態と非押圧状態との間で押圧部51の状態を切り替えることができる。したがって、規制機構50を簡単な構成により具現化できる。
【0061】
(5)軸線方向である第1方向Xにおける連結軸53の一端53aから押圧部51の先端51aまでの距離ΔXを変更可能に構成されている。
こうした構成によれば、第1締結部材61による締結を解除することで、基台20から支持部40を取り外すことができる。そして、外径の異なる他の長尺部材90を支持可能な他の支持部40を第1締結部材61により基台20に取り付けることができる。この場合、連結軸53の一端53aと支持部40を構成するローラ41の外周面との間の距離ΔXが変更される。
【0062】
この点、上記構成によれば、連結軸53の一端53aから押圧部51の先端51aまでの距離ΔXを適宜変更することで、押圧部51によってローラ41の外周面を押圧できる。したがって、外径の異なる複数の長尺部材90に対して共通の規制機構50を用いることができる。
【0063】
(6)台車装置10は、台車11を複数備える。
こうした構成によれば、複数の台車11を一列にて互いに間隔をあけて配置した状態で、複数の台車11の支持部40により、長尺部材90の外周面を支持させることで長尺部材90が複数の台車11に載置される。そして、複数の台車11のキャスタ30によって複数の台車11を一体的に移動させることで長尺部材90を運搬できる。また、長尺部材90が複数の台車11に載置された状態において、複数の台車11の支持部40によって長尺部材90を周方向Cに回転させることができる。これにより、台車11同士の間の位置において長尺部材90の上半分を切断した後に、長尺部材90を180度回転させることで、それまで長尺部材90の下半分であった部分91を上半分にすることができるので、当該部分91を容易に切断できる。したがって、台車装置10の全長よりも長い長尺部材90の運搬及び切断を効率よく行うことができる。
【0064】
(7)長尺部材90の運搬及び切断方法は、複数の台車11を前記長尺部材の延在方向に沿って互いに間隔をあけて配置する配置工程を含む。また、長尺部材90の運搬及び切断方法は、台車11の各々の支持部40により長尺部材90の外周面を支持させることで長尺部材90を台車11に載置する載置工程と、台車11同士の間の位置において長尺部材90を切断する切断工程とを含む。
【0065】
こうした方法によれば、(6)と同様な作用効果を奏することができる。
(8)長尺部材90の運搬及び切断方法は、前記長尺部材の運搬または切断を行う前に、切替部52によって押圧部51の状態を押圧状態に切り替える。
【0066】
こうした方法によれば、長尺部材90の運搬または切断を行う際にローラ41の回転が規制されるようになる。これにより、複数の台車11に載置された状態の長尺部材90の回転が規制されるので、長尺部材90の運搬及び切断を安定して行うことができる。
【0067】
(9)長尺部材90が内部に汚染物質を含む配管である場合、運搬用の台車から切断用の架台に長尺部材90を載せ替える際に、放射性物質などの汚染物質が外部に飛散するおそれがある。
【0068】
この点、上記方法によれば、長尺部材90が複数の台車11に載置された状態で移動及び切断を行うことができる。これにより、長尺部材90を運搬用の台車から切断用の架台に載せ替える工程を省略できるので、放射性物質などの汚染物質が外部に飛散することを抑制できる。
【0069】
(10)台車11が2つのリング23を備えているため、クレーンなどによって台車11を吊り上げることができる。これにより、キャスタ30によって台車11を移動させることが難しい場所であっても台車11を移動させることができる。
【0070】
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0071】
・長尺部材90は、内部に放射性物質などの汚染物質を含まないものであってもよい。
・台車装置10を構成する台車11の数は、5台に限定されず、2台以上であれば何台でもよい。
【0072】
・長尺部材90は、ストレートな配管に限定されず、屈曲部を有する配管であってもよい。この場合であっても、配置工程において、複数の台車11を、長尺部材90の延在方向に沿って互いに間隔をあけて配置すればよい。
【0073】
・長尺部材90は、配管などの中空部材に限定されず、中実部材であってもよい。
・連結軸53の一端53aから押圧部51の先端51aまでの距離ΔXを変更できないものであってもよい。この場合、連結軸53の一端部によって押圧部51を構成すればよい。
【0074】
・運搬時や切断時に長尺部材90が回転しないのであれば、規制機構50を省略することもできる。
・支持部40は、2つのローラ41を備えるものに限定されず、3つ以上のローラを有していてもよい。
【0075】
・台車11は、2つの支持部40を備えるものに限定されず、支持部40を1つだけ備えるものや3つ以上備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
10…台車装置
11…台車
20…基台
21…基台本体
22…ベースプレート
22a…把手
23…リング
30…キャスタ
40…支持部
41…ローラ
41a…ローラ本体
41b…軸部
42…軸受け台
42a…取付壁部
42b…立壁部
43…ナット
50…規制機構
51…押圧部
51a…先端
52…切替部
53…連結軸
53a…一端
53b…他端
54…軸支持部
55…レバー
55a…挿通部
55b…操作部
55c…規制部
57…取付台
58…軸受け台
58a…取付壁部
58b…立壁部
59…軸部
61…第1締結部材
62…第2締結部材
70…第3締結部材
90…長尺部材
91…部分
図1
図2
図3
図4
図5