(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004938
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/48 20060101AFI20250108BHJP
H01Q 13/10 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
H01Q1/48
H01Q13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104851
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】新井 拓人
(72)【発明者】
【氏名】岩國 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】白戸 裕史
(72)【発明者】
【氏名】内田 大誠
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】日景 隆
【テーマコード(参考)】
5J045
5J046
【Fターム(参考)】
5J045DA03
5J045HA02
5J045MA07
5J046AA04
5J046AB08
(57)【要約】
【課題】不要放射の発生を抑制する。
【解決手段】地導体板で形成される共振器、を備え、前記地導体板の少なくとも一部には切れ込みが入っており、前記切れ込みは、切れ込みが入っていない場合に生じる定在波である仮想定在波、の少なくとも一部の腹の位置に存在するという条件を満たし、前記切れ込みはエッチングにより入れられる、アンテナ。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地導体板で形成される共振器、
を備え、
前記地導体板の少なくとも一部には切れ込みが入っており、
前記切れ込みは、切れ込みが入っていない場合に生じる定在波である仮想定在波、の少なくとも一部の腹の位置に存在するという条件を満たし、
前記切れ込みはエッチングにより入れられる、
アンテナ。
【請求項2】
前記切れ込みの長さは、前記仮想定在波の波長の略四分の一の長さという条件を満たす、
請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記地導体板の一方は広帯域で動作する形状の放射スロットを有する、
請求項1又は2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記地導体板に挟まれた空間に、ストリップ線路と、前記ストリップ線路に結合された結合器とを備える、
請求項1又は2に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記切れ込みの入った地導体板は、プリント基板に対してエッチングにより切れ込みが入れられたものである、
請求項1に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
トリプレートアンテナ等の、2枚の地導体板の間に所定の構造が挟まれた構造を有するアンテナが存在する。このようなアンテナでは一方の地導体板と他方の地導体板とが平行平板共振器の役割を果たす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】電子情報通信学会『知識の森』、4群2編 アンテナ・伝搬、第5章 平面アンテナ (URL; http://ieice-hbkb.org/files/04/04gun_02hen_05.pdf)
【非特許文献2】山本尚也、日景 隆、山本 学、“両平面回路と葉状ボウタイスロット素子を用いた広帯域平面アレーアンテナの設計、”信学技報, vol. 121, no. 126, AP2021-43, pp. 109-114, 2021年7月
【非特許文献3】山本尚也、日景 隆、山本 学、和井秀樹、岩國辰彦、内田大誠、北 直樹、“反射板付き広帯域スロットアレーアンテナにおける利得低下抑制に関する検討、”信学技報, vol. 122, no. 3, AP2022-6, pp. 28-33, 2022年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら共振周波数で平行平板モードの不要共振が発生する場合がある。その結果、プリント基板の端部が放射スロットのように働き、不要放射が発生する場合があった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、不要放射の発生を抑制する技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、地導体板で形成される共振器、を備え、前記地導体板の少なくとも一部には切れ込みが入っており、前記切れ込みは、切れ込みが入っていない場合に生じる定在波である仮想定在波、の少なくとも一部の腹の位置に存在するという条件を満たし、前記切れ込みはエッチングにより入れられる、アンテナである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、不要放射の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態のアンテナの概要を説明する第1の説明図。
【
図2】実施形態のアンテナの概要を説明する第2の説明図。
【
図3】実施形態のアンテナの等価構造の一例を示す図。
【
図4】実施形態における第1の地導体板の構造の詳細の一例を説明する説明図。
【
図5】実施形態における仮想定在波と切れ込みとの関係を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態のアンテナ100を説明する第1の説明図である。より具体的には、
図1は、アンテナ100の理解の容易のため、実施形態のアンテナ100の備える各部品を分離して表示した図の一例である。
図2は、実施形態のアンテナ100の概要を説明する第2の説明図である。より具体的には、
図2は、実施形態のアンテナ100の断面図の一例である。
【0010】
アンテナ100は、第1の地導体板1と、第1の誘電体基板2と、ストリップ線路3と、結合器4と、第2の誘電体基板5と、第2の地導体板6とを備える。アンテナ100は、例えばトリプレートアンテナである。
【0011】
第1の地導体板1は、地導体板である。第1の誘電体基板2は誘電体基板である。ストリップ線路3は、第1の誘電体基板2の基板面上に形成されたストリップ線路である。結合器4は、第1の誘電体基板2の基板面上に形成された結合器であって、ストリップ線路3に結合された結合器である。第2の誘電体基板5は、第1の誘電体基板2と異なる誘電体板であって第2の地導体板6に接触する誘電体板である。第2の地導体板6は、第1の地導体板とは異なる地導体板である。
図1及び
図2の例において、第2の地導体板6は、放射スロット7を有する。放射スロット7は、例えば、第2の地導体板6に開いた開口部である。
【0012】
第1の地導体板1と、第1の誘電体基板2と、ストリップ線路3及び結合器4と、第2の誘電体基板5と、第2の地導体板6との配置を説明する。アンテナ100において、第1の地導体板1と、第1の誘電体基板2と、ストリップ線路3及び結合器4と、第2の誘電体基板5と、第2の地導体板6とは、
図2に示すように一軸方向に積層された状態にある。
【0013】
具体的には、第1の地導体板1の一方の面は第1の誘電体基板2の一方の面に接する。第1の誘電体基板2の他方の面はストリップ線路3及び結合器4の一方の面に接する。ストリップ線路3及び結合器4の他方の面は第2の誘電体基板5の一方の面に接する。第2の誘電体基板5の他方の面は、第2の地導体板6の一方の面に接する。
【0014】
なお
図2において符号3(4)は、ストリップ線路3及び結合器4を意味し、符号6(7)は、第2の地導体板6及び放射スロット7を意味する。
【0015】
なお、第1の誘電体基板2と、ストリップ線路3と、結合器4と、第2の誘電体基板5とは、アンテナ100が第1の地導体板1と第2の地導体板6との間に挟まれた空間に存在する構造の一例である。第1の地導体板1と第2の地導体板6との間には電磁波のモードを有する空間があればよい。したがって、第1の地導体板1と第2の地導体板6との間に挟まれた空間は、例えば誘電体であってもよいし、液体であってもよいし、気体であってもよいし、空洞であってもよい。また、第2の地導体板6は、必ずしも放射スロット7を有する必要は無い。
【0016】
図3は、実施形態のアンテナ100の等価構造の一例を示す図である。より具体的には、
図3は、アンテナ100の等価構造の断面図である。さらに具体的には、
図3は、アンテナ100の等価構造を有するアンテナであるアンテナ200の断面図である。
【0017】
アンテナ200は第1等価地導体板8、等価空間9及び第2等価地導体板10を備える共振器である。アンテナ200はアンテナ100の等価構造であるので、第1等価地導体板8は、第1の地導体板1の等価構造である。したがって第1等価地導体板8は、地導体板である。
【0018】
また、アンテナ200はアンテナ100の等価構造であるので、等価空間9は、第1の誘電体基板2と、ストリップ線路3と、結合器4と、第2の誘電体基板5との組が形成する構造の等価構造である。等価空間9は、第1の誘電体基板2と、ストリップ線路3と、結合器4と、第2の誘電体基板5との組が形成する構造の等価構造であればどのようなものであってもよい。
【0019】
なお、上述したように第1の誘電体基板2と、ストリップ線路3と、結合器4と、第2の誘電体基板5とは、アンテナ100が第1の地導体板1と第2の地導体板6との間に挟まれた空間に存在する構造の一例である。したがって等価空間9は、第1の地導体板1と第2の地導体板6との間の空間に等価な空間であればどのような空間であってもよい。したがって、等価空間9は、例えば誘電体であってもよいし、半導体であってもよいし、液体であってもよいし、気体であってもよいし、空洞であってもよい。
【0020】
また、アンテナ200はアンテナ100の等価構造であるので、第2等価地導体板10は、第2の地導体板6の等価構造である。したがって第2等価地導体板10は、地導体板である。したがって、アンテナ100は、アンテナ200の一例であるとも言える。
【0021】
図4は、実施形態における第1の地導体板1の構造の詳細の一例を説明する説明図である。第1の地導体板1は、切れ込みが入った地導体板である。切れ込みは、切れ込みの位置に関する条件である定在波抑制条件を満たす位置に入れられている。定在波抑制条件は、仮想定在波の少なくとも一部の腹の位置に存在するという条件である。仮想定在波は、切れ込みが入っていない場合に生じる定在波である。
【0022】
なお、
図4では第1の地導体板1を例に説明を行ったが、これは説明の簡単のためであり、同様のことは第2の地導体板6に対して行われてもよい。したがってアンテナ100は、第1の地導体板1と第2の地導体板6とのいずれか一方又は両方には、定在波抑制条件を満たす切れ込みが入っていればよい。すなわち、第1の地導体板1と第2の地導体板6との少なくとも一部には、定在波抑制条件を満たす切れ込みが入っていればよい。以下、第1の地導体板1と第2の地導体板6とのいずれか一方又は両方に、定在波抑制条件を満たす切れ込みがはいるという条件を、構造条件という。
【0023】
ところで上述したように、第1の地導体板1の等価構造は第1等価地導体板8であり、第2の地導体板6の等価構造は第2等価地導体板10である。したがって、構造条件は、第1等価地導体板8と第2等価地導体板10との少なくとも一部に、定在波抑制条件を満たす切れ込みが入るという条件でもある。
【0024】
以下、第1の地導体板1と第2の地導体板6とをそれぞれ区別しない場合、共振形成板という。
【0025】
なお、定在波抑制条件を満たす共振形成板は、仮想定在波の少なくとも一部の腹の位置に切れ込みが存在するという条件を満たすので、例えば全ての腹の位置に切れ込みが存在してもよいし、一部の腹の位置に切れ込みが存在してもよい。
【0026】
図5は、実施形態における仮想定在波と切れ込みとの関係を説明する説明図である。
図5の波W101が仮想定在波の一例である。
図5は、トリプレートアンテナを例に仮想定在波と共振形成板の切れ込みの位置との関係を示す。なお、説明の簡単のために用いた一例であり、等価構造が共振器であるアンテナであって切り込みを有さないアンテナであれば、同様の仮想定在波が生じる。
【0027】
図5は、トリプレートアンテナの断面図と上面図とを用いて、切れ込みの位置が仮想定在波W101の腹の位置に存在することを示す。仮想定在波の腹の位置に切り込みが入っている場合、腹の位置で開放となるため、腹が存在できなくなる。その結果、仮想定在波が存在できなくなる。
【0028】
したがって、共振形成板に定在波抑制条件を満たす切れ込みが存在するアンテナ100又はアンテナ200は、仮想定在波の発生を抑制することができる。仮想定在波が不要放射の源であるから、仮想定在波の発生の抑制は、不要放射の発生を抑制することを意味する。
【0029】
(不要放射についての説明)
ここで、定在波抑制条件を満たす切れ込みが無い場合を例に、不要放射について、念の為説明する。第1の地導体板1と第2の地導体板6とは、等価的に
図3に示すように平行平板共振器の役割を果たす。そのため、定在波抑制条件を満たす切れ込みが無い場合、ある共振周波数で平行平板モードの不要共振が発生する。なお不要共振の定義は不要放射の起因となる共振である。この不要共振により、プリント基板の端部の地導体間が等価的に放射スロットのように働き、不要放射となる。
【0030】
また、等価放射スロットの長辺は導体により短絡端、短辺は開放端となっているため、プリント基板端部で不要放射が生じる不要共振は、その波長の整数倍が等価放射スロットの長辺の長さ、つまり、第1の地導体板1及び第2の地導体板6の大きさと一致する周波数で生じる。ただし、第1の誘電体基板2及び第2の誘電体基板5の比誘電率、給電回路又は放射スロット7により共振周波数は変化する。基板サイズが波長の整数倍と一致する周波数で不要共振が存在するため、特に、広帯域アンテナでは、定在波抑制条件を満たす切れ込みが無い場合、基板サイズの変更のみで帯域外へ移動させることは困難である。
【0031】
ここまでで定在波抑制条件を満たす切れ込みが無い場合のアンテナで生じる不要放射についての説明を終える。このように定在波抑制条件を満たす切れ込みが無い場合、不要放射の発生を抑制することは困難である。一方、アンテナ100又はアンテナ200は定在波抑制条件を満たす切れ込みを有するために、不要放射の発生を抑制することができる。
【0032】
なお、
図5では一例としてY方向の共振を示したが、X方向に直交する方向であって共振形成板に平行な方向であるX方向の共振についても同様である。なおY方向は共振形成板に平行な方向であってX方向に直交する方向である。なお、設計周波数帯域内にX方向とY方向の双方に不要共振周波数が存在する場合は、X方向とY方向の両方に切れ込みを入れてもよい。なお設計周波数帯域とは、アンテナ100の設計時に設定する所望の周波数帯域である。
【0033】
なお、
図5の例において切れ込みの長さは、例えば不要共振周波数の波長の四分の一の長さである。なお不要共振周波数とは、不要共振の周波数である。したがって、不要共振周波数の波長とは、仮想定在波の波長である。より具体的には、切れ込みは、定在波の存在する方向と垂直に共振形成板の端部から例えば四分の一波長の長さで入れられている。なお、定在波の存在する方向と垂直は、
図5の例ではX方向である。したがって、不要共振周波数の波長の四分の一の長さとは、切れ込みの長さであってX方向に平行な方向の長さが不要共振周波数の波長の四分の一であることを意味する。
【0034】
なお、切れ込みの長さが不要共振周波数の波長の四分の一の長さという条件(以下「切れ込み条件」という。)を切れ込みが満たす場合の効果について説明する。
【0035】
切れ込みには両端が存在するが、一端は地導体の端部側であり、他端はその反対側である。反対側(すなわち他端)は短絡端である。したがって、端部から四分の一波長離れた位置では開放である。そのため、切れ込み条件が満たされる場合には、不要共振の腹に生じる電界を、切れ込み条件が満たされない場合よりも抑圧することができる。ただし、この説明から明らかなように、四分の一波長ではなくても略四分の一波長であれば、不要共振の発生を抑制する効果を奏する。したがって、切れ込みの長さは、不要共振周波数の波長の略四分の一の長さであれば、より一層不要共振の発生を抑制する、という効果を奏する。不要共振の発生を抑制するためには、切れ込みの長さは必ずしも正確に不要共振周波数の波長の四分の一である必要は無い。
【0036】
このように、共振器を備え、共振器を形成する2つの地導体板の一方又は両方に切れ込みを有するアンテナであって、切れ込みの位置は仮想定在波の少なくとも一部の腹の位置であるアンテナは、不要放射の発生を抑制することができる。すなわち、このように構成された実施形態のアンテナ100又はアンテナ200は、定在波抑制条件を満たす切り込みが入った共振形成板を備える。そのため、不要放射の発生を抑制することができる。
【0037】
(変形例)
なお上述したようにアンテナ100は、例えば、第1の誘電体基板2を空気層とし、反射板を装荷したスリットアンテナであってもよい。なお、第1の誘電体基板2及び第2の誘電体基板5は、空気層であってもよいし半導体層であってもよい。また、アンテナ100は、単素子アンテナであってもよいし、複数の素子を持つアレーアンテナであってもよい。
【0038】
また、放射スロットの形状は閉じた図形の形状であれば、どのような形状であってもよい。したがって、放射スロットの形状は、方形であってもよいし、円形であってもよいし、楕円であってもよいし、リングであってもよいし、ループであってもよいし、多角形であってもよいし、クロス(十字)形状であってもよいし、ボウタイであってもよいし、葉状ボウタイであってもよい。なお葉状ボウタイについては、非特許文献2の“両平面回路と葉状ボウタイスロット素子を用いた広帯域平面アレーアンテナの設計”を参照されたい。
【0039】
なお、円形の場合、アンテナ素子自体が対象構造であるため、給電方法によって偏波を変更できるという効果を奏する。
【0040】
また、リング又はループ等の閉曲線が形成する形状の場合、閉曲線に囲まれる面を通過する磁界による電磁誘導により閉曲線に電流が流れる。そして、放射スロットは流れた電流によって動作する。そのため、放射スロットは電界よりも磁界に感度が良く、近傍の電界による雑音を防ぐことができるという効果を奏する。
【0041】
クロス形状の場合、偏波共用アンテナを構成することができる、という効果を奏する。
【0042】
ボウタイ又は葉状ボウタイの形状の場合、ボウタイ又は葉状ボウタイは自己補対アンテナの一種であるため、方形の場合よりも広帯域特性が得られるという効果を奏する。なお、多角形の場合、方形よりも設計パラメータが多くなるため、広帯域特性を得られるという効果を奏する。
【0043】
またアンテナ100は、放射スロットで放射するアンテナに限らない。例えばアンテナ100は、放射スロット7のさらにその上の層にマイクロストリップアンテナ等のアンテナを備えるアンテナであってもよい。放射スロット7のさらにその上の層にマイクロストリップアンテナ等のアンテナ素子を備える場合、備えない場合に比べて方形スロットで放射するよりもインピーダンス整合を調整するパラメータが多くなるため広帯域特性を得られるという効果を奏する。
【0044】
またストリップ線路と放射スロットを結合させるための結合器4の形状は
図1の例では方形であるが、必ずしも方形である必要は無い。結合器4の形状は、閉じた図形の形状であればどのような形状であってもよく、円形であってもよいし、楕円であってもよいし、リングであってもよいし、多角形であってもよい。
【0045】
なお、
図1の例では、第1の地導体板1と第2の地導体板6とに挟まれた空間にストリップ線路3と、結合器4とを備えるアンテナを説明した。しかしながら、アンテナ100は必ずしも、第1の地導体板1と第2の地導体板6とに挟まれた空間にストリップ線路3と、結合器4とを備える必要は無い。
【0046】
なお
図1の例におけるストリップ線路3は給電線路の一例である。給電線路は必ずしもストリップ線路である必要は無く、スロット線路であってもよいし、コプレーナ線路であってもよい。給電線路がコプレーナ線路である場合、同軸線路と電磁界分布が近いため、インピーダンス整合が容易という効果を奏する。また、給電線路がスロット線路である場合、半導体素子を並列に接続することができる、という効果を奏する。
【0047】
なお上述したように、第1の地導体板1は切れ込みが入った地導体板である。切れ込みは、例えば、エッチングによって入れられてもよい。また、第1の地導体板1は、プリント基板に対してエッチングにより切れ込みを入れたものであってもよい。なお、プリント基板とは、誘電体の上に銅薄膜が蒸着されたものである。そのため、プリント基板に対してエッチングにより切れ込みを入れたものは、第1の地導体板1の一例である。
【0048】
なお、第1の地導体板1が、プリント基板に対してエッチングにより切れ込みを入れたものである場合、第1の誘電体基板2との距離が近い層は、プリント基板の誘電体の層であってもよいし、プリント基板の銅薄膜の層であってもよい。
【0049】
なお、光学の教科書等に記載のように、電磁波の伝搬する媒質として、誘電率が異なり実空間の長さが同じ2つの媒質が用意された場合、2つの媒質で光学距離は異なる。そのため、第1の誘電体基板2との距離の近い層がプリント基板の誘電体の層である場合であってプリント基板の誘電体の誘電率が埋蔵空間の誘電率と異なる場合、プリント基板の銅薄膜の層と第1の誘電体基板2との間の距離は、埋蔵空間の厚みとは異なる。違いは、埋蔵空間の誘電率にプリント基板の誘電体の層の厚みを掛け算した距離と、プリント基板の誘電率にプリント基板の誘電体の層の厚みを掛け算した距離と、の差である。なお、埋蔵空間は、第1の地導体板1がプリント基板ではなく金属である場合に、第1の地導体板1と第1の誘電体基板2とに挟まれている空間である。
【0050】
なお第1の地導体板1は、プリント基板に対してエッチングにより切れ込みを入れたものから誘電体の層が取り除かれたものであってもよい。
【0051】
なお、エッチングの方法は、例えば被加工材を酸またはアルカリの溶液に触れさせ、化学反応によって不要部分を除去するウェットエッチングであってもよいし、反応性ガスやプラズマで生成したイオンを用い、ウェーハ上の不要部分を除去するドライエッチングであってもよい。
【0052】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
100、200…アンテナ、 1…第1の地導体板、 2…第1の誘電体基板、 3…ストリップ線路、 4…結合器、 5…第2の誘電体基板、 6…第2の地導体板、 7…放射スロット、 8…第1等価地導体板、 9…等価空間、 10…第2等価地導体板