(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004954
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】スクリーンおよびそれを用いたプロジェクションマッピング装置
(51)【国際特許分類】
G09B 25/00 20060101AFI20250108BHJP
E21D 9/14 20060101ALI20250108BHJP
G03B 21/56 20060101ALI20250108BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20250108BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20250108BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
G09B25/00 Z
E21D9/14
G03B21/56
G03B21/00 D
G03B21/14 Z
H04N5/74 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104873
(22)【出願日】2023-06-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開日 令和5年6月7日 公開場所 さがみはらリニアブース(〒252-0131 神奈川県相模原市緑区西橋本3-10-40)
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】張 志▲せん▼
(72)【発明者】
【氏名】南部 忍
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 英介
【テーマコード(参考)】
2H021
2K203
5C058
【Fターム(参考)】
2H021BA01
2K203FA63
2K203GB33
2K203GC22
2K203MA30
5C058BA35
5C058EA33
(57)【要約】
【課題】シールドマシンを用いたシールド工法の説明を低コストで分かり易く行う。
【解決手段】スクリーン20の湾曲した迫り出し領域21に、カッタヘッドの回転により地中を掘削しながら前へ移動するシールドマシンの前方から見た斜視画像およびセグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影する第1の投影画像と、円形領域23に、カッタヘッドの前方から見た斜視画像を投影し、迫り出し領域21に、シールドマシンのスキンプレートの外周面およびセグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影する第2の投影画像と、湾曲した凹み領域22に、軸方向に破断したセグメントの内周面の前方から見た斜視画像を投影し、円形領域23に、径方向に沿って一部が破断したセグメントの径方向断面の前方から見た斜視画像を投影し、迫り出し領域21に、セグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影する第3の投影画像とを制御部により選択的に投影する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像投影手段により画像を立体的に投影するスクリーンであって、
前記スクリーンの投影面は、
投影方向の鉛直断面が湾曲した凸状になって水平方向に延びて形成された迫り出し領域と、
投影方向の鉛直断面が湾曲した凹状になって前記迫り出し領域の延長領域上に形成された凹み領域と、
前記迫り出し領域と前記凹み領域との間において前記迫り出し領域および前記凹み領域に連続するように形成され、円形状をなし、当該円の中心を通る鉛直軸を回転軸にして回転したように傾斜した円形領域とを有する、
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
前記スクリーンの投影面は、
前記迫り出し領域、前記凹み領域および前記円形領域の上部に形成され、平面状に形成された上部平坦領域と、
前記迫り出し領域、前記凹み領域および前記円形領域の下部に形成され、平面状に形成された下部平坦領域とをさらに有する、
ことを特徴とする請求項1記載のスクリーン。
【請求項3】
請求項1記載のスクリーンと、
前記スクリーンに画像を投影する画像投影手段と、
前記スクリーンの前記迫り出し領域、前記凹み領域および前記円形領域を水平方向に延びる地中のトンネルと仮想したトンネル掘削機に係わる画像を処理するとともに、当該画像が前記スクリーンに投影されるように前記画像投影手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記迫り出し領域に、カッタヘッドの回転により地中を掘削しながら前へ移動するトンネル掘削機の前方から見た斜視画像、および当該トンネル掘削機の掘削で形成されたトンネルの内壁に沿って順次組み立てられるセグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記カッタヘッドよりも前方の前記迫り出し領域、前記円形領域および前記凹み領域に掘削する地中の画像を投影する第1の投影画像と、
前記円形領域に、回転する前記カッタヘッドの前方から見た斜視画像を投影し、前記迫り出し領域に、前記カッタヘッドの後方に位置する前記トンネル掘削機のスキンプレートの外周面および前記セグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記凹み領域に掘削する地中の画像を投影する第2の投影画像と、
前記凹み領域に、軸方向に沿って破断した前記セグメントの内周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記円形領域に、前記凹み領域に投影された画像と連続するとともに径方向に沿って一部が破断した前記セグメントの径方向断面の前方から見た斜視画像を投影し、前記迫り出し領域に、前記円形領域に投影された画像と連続した前記セグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影する第3の投影画像と、
が選択的に投影されるように前記画像投影手段を制御することを特徴とするプロジェクションマッピング装置。
【請求項4】
請求項2記載のスクリーンと、
前記スクリーンに画像を投影する画像投影手段と、
前記スクリーンの前記迫り出し領域、前記凹み領域および前記円形領域を水平方向に延びる地中のトンネルと仮想したトンネル掘削機に係わる画像を処理するとともに、当該画像が前記スクリーンに投影されるように前記画像投影手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記迫り出し領域に、カッタヘッドの回転により地中を掘削しながら前へ移動するトンネル掘削機の前方から見た斜視画像、および当該トンネル掘削機の掘削で形成されたトンネルの内壁に沿って順次組み立てられるセグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記カッタヘッドよりも前方の前記迫り出し領域、前記円形領域および前記凹み領域に掘削する地中の画像を投影する第1の投影画像と、
前記円形領域に、回転する前記カッタヘッドの前方から見た斜視画像を投影し、前記迫り出し領域に、前記カッタヘッドの後方に位置する前記トンネル掘削機のスキンプレートの外周面および前記セグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記凹み領域に掘削する地中の画像を投影する第2の投影画像と、
前記凹み領域に、軸方向に沿って破断した前記セグメントの内周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記円形領域に、前記凹み領域に投影された画像と連続するとともに径方向に沿って一部が破断した前記セグメントの径方向断面の前方から見た斜視画像を投影し、前記迫り出し領域に、前記円形領域に投影された画像と連続した前記セグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影する第3の投影画像と、
が選択的に投影され、
前記上部平坦領域に、地中の画像または地中および地上の画像が投影され、
前記下部平坦領域に、前記第1の投影画像、前記第2の投影画像および前記第3の投影画像を説明するための画像が前記第1の投影画像、前記第2の投影画像および前記第3の投影画像の投影時に投影される、
ように前記画像投影手段を制御することを特徴とするプロジェクションマッピング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンおよびそれを用いたプロジェクションマッピング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路、鉄道、地下鉄、上下水道等のトンネルを地中に構築する技術として、トンネル掘削機を使用した施工法がある。その施工法の代表的なものとしてシールド工法が知られている。このシールド工法では、土砂を掘削するビットが円周状・放射状に設置されたカッタヘッドと呼ばれる回転する面板が先端に設置されたシールドマシンが用いられ、切羽(掘削面)にカッタヘッドを押し当てて地中を掘進しながら掘削土砂を後方に送ることによりトンネルを形成し、トンネル内にコンクリート製あるいは鋼製のセグメントを組み立てている。
【0003】
シールドマシンは、当該シールドマシンの外殻をなし土水圧に抵抗するための筒状のスキンプレート、スキンプレートの先端に設置されて地盤を掘削するための前述したカッタヘッド、切羽の崩壊を防ぐ圧力をかけるために土砂や泥水などを充填する空間であるチャンバ、セグメントを所定位置に設置して環状に組み立てるためのエレクタ、シールドマシンを掘進させるためのシールドジャッキ、地山の陥没や崩落を防ぐために掘削壁面とセグメントとの間に裏込め材を注入するための裏込め注入装置、スキンプレートの後部内周に設置されて地下水や裏込め材が機内に流入しないようにするためのテールシールなど、様々な機能を持った装置で構成されている。
【0004】
なお、シールド工法に用いられるシールドマシンについては、例えば特許文献1や特許文献2などに記載の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-082142号公報
【特許文献2】特開2022-072377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、このようなシールドマシンを用いたシールド工法を、一般の方に正しく理解してもらうために説明する場合、従来では、模型やパネルが用いられていた。
【0007】
しかしながら、シールドマシンの模型を用いて説明する場合には、製作コストが高額になるのみならず、運搬コストがかかる上に、精密で壊れやすいために慎重な取り扱いが求められることになる。
【0008】
また、模型では実際のシールドマシンが有する上述した様々な装置の動作を再現することは極めて困難である。パネルでこれらの装置の動作を説明することは可能ではあるが、平面的なために臨場感をもった説明は困難である。そのため、例えば、「シールドマシン内でセグメントを組めばトンネルが出来上がる」、「掘削した土砂はトンネル坑内から外部へ搬送する」などを分かり易く説明することが難しかった。
【0009】
そして、これらの問題はシールドマシンにとどまらず、トンネルボーリングマシンなど、トンネル掘削機を用いたトンネル施工法の全般に広く当てはまることである。
【0010】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、トンネル掘削機を用いたトンネル施工法の説明を、従来技術と比較して低コストで分かり易く行うことのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のスクリーンは、画像投影手段により画像を立体的に投影するスクリーンであって、前記スクリーンの投影面は、投影方向の鉛直断面が湾曲した凸状になって水平方向に延びて形成された迫り出し領域と、投影方向の鉛直断面が湾曲した凹状になって前記迫り出し領域の延長領域上に形成された凹み領域と、前記迫り出し領域と前記凹み領域との間において前記迫り出し領域および前記凹み領域に連続するように形成され、円形状をなし、当該円の中心を通る鉛直軸を回転軸にして回転したように傾斜した円形領域とを有する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明のスクリーンは、上記請求項1に記載の発明において、前記スクリーンの投影面は、前記迫り出し領域、前記凹み領域および前記円形領域の上部に形成され、平面状に形成された上部平坦領域と、前記迫り出し領域、前記凹み領域および前記円形領域の下部に形成され、平面状に形成された下部平坦領域とをさらに有する、ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため、請求項3に記載の本発明のプロジェクションマッピング装置は、請求項1記載のスクリーンと、前記スクリーンに画像を投影する画像投影手段と、前記スクリーンの前記迫り出し領域、前記凹み領域および前記円形領域を水平方向に延びる地中のトンネルと仮想したトンネル掘削機に係わる画像を処理するとともに、当該画像が前記スクリーンに投影されるように前記画像投影手段を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記迫り出し領域に、カッタヘッドの回転により地中を掘削しながら前へ移動するトンネル掘削機の前方から見た斜視画像、および当該トンネル掘削機の掘削で形成されたトンネルの内壁に沿って順次組み立てられるセグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記カッタヘッドよりも前方の前記迫り出し領域、前記円形領域および前記凹み領域に掘削する地中の画像を投影する第1の投影画像と、前記円形領域に、回転する前記カッタヘッドの前方から見た斜視画像を投影し、前記迫り出し領域に、前記カッタヘッドの後方に位置する前記トンネル掘削機のスキンプレートの外周面および前記セグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記凹み領域に掘削する地中の画像を投影する第2の投影画像と、前記凹み領域に、軸方向に沿って破断した前記セグメントの内周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記円形領域に、前記凹み領域に投影された画像と連続するとともに径方向に沿って一部が破断した前記セグメントの径方向断面の前方から見た斜視画像を投影し、前記迫り出し領域に、前記円形領域に投影された画像と連続した前記セグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影する第3の投影画像と、が選択的に投影されるように前記画像投影手段を制御することを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するため、請求項4に記載の本発明のプロジェクションマッピング装置は、請求項2記載のスクリーンと、前記スクリーンに画像を投影する画像投影手段と、前記スクリーンの前記迫り出し領域、前記凹み領域および前記円形領域を水平方向に延びる地中のトンネルと仮想したトンネル掘削機に係わる画像を処理するとともに、当該画像が前記スクリーンに投影されるように前記画像投影手段を制御する制御手段とを有し、前記制御手段は、前記迫り出し領域に、カッタヘッドの回転により地中を掘削しながら前へ移動するトンネル掘削機の前方から見た斜視画像、および当該トンネル掘削機の掘削で形成されたトンネルの内壁に沿って順次組み立てられるセグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記カッタヘッドよりも前方の前記迫り出し領域、前記円形領域および前記凹み領域に掘削する地中の画像を投影する第1の投影画像と、前記円形領域に、回転する前記カッタヘッドの前方から見た斜視画像を投影し、前記迫り出し領域に、前記カッタヘッドの後方に位置する前記トンネル掘削機のスキンプレートの外周面および前記セグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記凹み領域に掘削する地中の画像を投影する第2の投影画像と、前記凹み領域に、軸方向に沿って破断した前記セグメントの内周面の前方から見た斜視画像を投影し、前記円形領域に、前記凹み領域に投影された画像と連続するとともに径方向に沿って一部が破断した前記セグメントの径方向断面の前方から見た斜視画像を投影し、前記迫り出し領域に、前記円形領域に投影された画像と連続した前記セグメントの外周面の前方から見た斜視画像を投影する第3の投影画像と、が選択的に投影され、前記上部平坦領域に、地中の画像または地中および地上の画像が投影され、前記下部平坦領域に、前記第1の投影画像、前記第2の投影画像および前記第3の投影画像を説明するための画像が前記第1の投影画像、前記第2の投影画像および前記第3の投影画像の投影時に投影される、ように前記画像投影手段を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、地中を掘進する様子のトンネル掘削機を用いたトンネル施工の画像がスクリーンに立体的に投影されるので、トンネル掘削機を用いたトンネル施工法の説明を従来技術と比較して低コストで分かり易く行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態であるスクリーンが取り付けられる取付台を示す斜視図である。
【
図2】
図1の取付台およびこの取付台に取り付けられたスクリーンを示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施の形態であるプロジェクションマッピング装置を示すブロック図である。
【
図4】
図2のスクリーンに投影された第1の投影画像の一例を示す説明図である。
【
図5】
図2のスクリーンに投影された第1の投影画像の他の一例を示す説明図である。
【
図6】
図2のスクリーンに投影された第2の投影画像の一例を示す説明図である。
【
図7】
図2のスクリーンに投影された第3の投影画像の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態であるスクリーンが取り付けられる取付台を示す斜視図、
図2は
図1の取付台およびこの取付台に取り付けられたスクリーンを示す斜視図である。
【0019】
図1において、スクリーン20(
図2)の取付台10は、平面視で長方形を呈して床面等に設置される台座11と、台座11の上に当該台座11の短辺と平行になって所定間隔を開けて立設された複数枚(本実施の形態では6枚)の縦板12と、これらの縦板12の上に取り付けられた天板13と、縦板12の背後に取り付けられた背面板14と、2枚の縦板12に跨がるようにして設置された円形板15とで構成されている。そして、取付台10は、台座11の長辺が前後となるように設置される。なお、本実施の形態において、取付台10は木製であるが、木製以外であってもよい。
【0020】
縦板12は、上板部12aと、下板部12bと、上板部12aと下板部12bとに挟まれた中板部12cとで構成されている。
図1に示すように、左側に位置する2枚の縦板12-1とこれら以外の縦板12-2とでは、中板部12cの形状が異なっている。すなわち、縦板12-1の中板部12cは、後ろ側に位置する矩形板12caと、前側に位置して弧状に切り欠かれた凹状板12cbとからなり、その先端は上板部12aおよび下板部12bの先端と同じになっている。また、縦板12-2の中板部12cは、上板部12aおよび下板部12bと同じ幅の矩形板12ccと、矩形板12ccの前側に位置して弧状に突出した凸状板12cdとからなる。したがって、縦板12-1は、中板部12cの凹状板12cbに形成された弧状の切り欠きだけ凹んでいるのに対して、縦板12-1は、中板部12cを構成している凸状板12cdの部分だけ弧状に突出している。
【0021】
前述した円形板15は、互いに隣接した位置にある縦板12-1の凹状板12cbと縦板12-2の凸状板12cdとに架け渡されるようにして取り付けられている。したがって、円形板15は、正面から見た場合、円形状をなし、当該円の中心を通る鉛直軸を回転軸にして回転したように傾斜している。なお、本実施の形態において、円形板15は真円となっているが、楕円であってもよい。
【0022】
画像投影手段であるプロジェクタ30(
図3)により画像が立体的に投影されるスクリーン20は、このような取付台10の前部を覆うように取り付けられる。これにより、スクリーン20の投影面は次の5つの領域で構成される。
【0023】
すなわち、縦板12-2の中板部12c(詳しくは、中板部12cの凸状板12cd)に取り付けられた領域が、投影方向の鉛直断面が湾曲した凸状になって水平方向に延びて形成された迫り出し領域21となる。縦板12-1の中板部12c(詳しくは、中板部12cの凹状板12cb)に取り付けられた領域が、投影方向の鉛直断面が湾曲した凹状になって迫り出し領域21の延長領域上に形成された凹み領域22となる。円形板15に取り付けられた領域が、迫り出し領域21と凹み領域22との間において迫り出し領域21および凹み領域22に連続するように形成されて、円の中心を通る鉛直軸を回転軸にして回転したように傾斜した円形領域23となる。さらに、縦板12の上板部12aに取り付けられた領域が、迫り出し領域21、凹み領域22および円形領域23の上部に形成されて、平面状に形成された上部平坦領域24となる。そして、縦板12の下板部12bに取り付けられた領域が、迫り出し領域21、凹み領域22および円形領域23の下部に形成されて、平面状に形成された下部平坦領域25となる。
【0024】
本実施の形態において、スクリーン20には、例えば表面に白色塗装されたプラスチック板が用いられている。但し、スクリーン20には、紙(厚紙)、キャンバス布、木製板などプラスチック板以外を用いてもよい。
【0025】
なお、本実施の形態のスクリーン20では、迫り出し領域21を構成するプラスチック板、凹み領域22を構成するプラスチック板、円形領域23を構成するプラスチック板、上部平坦領域24を構成するプラスチック板、および下部平坦領域25を構成するプラスチック板に分かれている。したがって、それぞれのプラスチック板に分割することで、嵩張らずに運搬することが可能になっている。
【0026】
さて、本発明の一実施の形態であるプロジェクションマッピング装置は、
図3に示すように、以上に説明したスクリーン20と、スクリーン20に画像を投影するプロジェクタ30と、シールドマシン(トンネル掘削機)に係わる画像を処理するとともに、当該画像がスクリーン20に投影されるようにプロジェクタ30を制御するパーソナルコンピュータなどの制御部(制御手段)40とで構成されている。
【0027】
そして、スクリーン20の迫り出し領域21、凹み領域22および円形領域23には、水平方向に延びる地中のトンネルと仮想したシールドマシンに係わる画像が投影される。また、スクリーン20の上部平坦領域24には、トンネル直上部の地中の画像および地上の画像が投影される。さらに、スクリーン20の下部平坦領域25には、迫り出し領域21、凹み領域22および円形領域23に投影された画像を説明するための画像などが投影される。
【0028】
なお、本願において画像とは、動画の映像あるいは静止画の映像のみならず、文字や図形なども含まれる概念である。
【0029】
ここで、制御部40がプロジェクタ30を制御することによってスクリーン20に投影される画像について、
図4~
図7を用いて説明する。
図4および
図5は
図2のスクリーンに投影された第1の投影画像の一例を示す説明図、
図6は
図2のスクリーンに投影された第2の投影画像の一例を示す説明図、
図7は
図2のスクリーンに投影された第3の投影画像の一例を示す説明図である。
【0030】
本実施の形態において、制御部40により、これら第1の投影画像、第2の投影画像および第3の投影画像が選択的にスクリーン20に投影されるようになっている。
【0031】
また、
図4~
図7に示すように、スクリーン20に投影される背景画像は地中を模した画像であり、
図4~
図6に示すようにスクリーン20の全体に地中を模した画像が投影されたり、
図7に示すように、地中を模した画像とともに上部平坦領域24の一部には地上を模した画像が投影される。なお、地上を模した画像では、地上を走行する車両や歩行者などの画像を投影して臨場感を持たせるようにしてもよい。
【0032】
さて、第1の投影画像とは、
図4および
図5に示すように、スクリーン20の迫り出し領域21に投影されるカッタヘッドV10-1の回転により地中VGを掘削しながら前へ移動するシールドマシンV10の外郭をなすスキンプレートの外周面V10-3の前方から見た斜視画像、ならびにシールドマシンV10の掘削で形成されたトンネルの内壁に沿って順次組み立てられるセグメントVSの外周面VS-1の前方から見た斜視画像である。また、カッタヘッドV10-1よりも前方の迫り出し領域21、円形領域23および凹み領域22に投影される地中の画像である。なお、第1の投影画像の投影時には、この第1の画像を説明するための画像が下部平坦領域25に投影される。
【0033】
すなわち、第1の投影画像の一例を示す
図4では、カッタヘッドV10-1の回転でチャンバV10-2に土砂を取り込みながら地中VGを掘削しながら前へ移動するシールドマシンV10の前方から見た斜視画像と、シールドマシンV10の後方で順次組み立てられるセグメントVSの外周面VS-1の前方から見た斜視画像が迫り出し領域21に投影されている。
【0034】
また、このような第1の投影画像を説明するための画像として、回転するカッタヘッドV10-1の画像が下部平坦領域25に投影されている。
【0035】
第1の投影画像の他の一例を示す
図5では、
図4に示す画像よりも掘り進んだシールドマシンV10の前方から見た斜視画像とセグメントVSの外周面VS-1の前方から見た斜視画像が迫り出し領域21に投影されている。また、このような第1の投影画像を説明するための画像として、掘削壁面とセグメントVSとの間に裏込め材VFを注入する画像が下部平坦領域25に投影されている。
【0036】
なお、第1の投影画像において、スクリーン20の迫り出し領域21に投影されるシールドマシンV10の画像としては、例えば、当該シールドマシンV10の外郭をなすスキンプレートの外周面V10-3を破断して内部のエレクタやシールドジャッキなどの動作が分かるようにした前方から見た斜視画像など、シールドマシンV10の掘進に関連した
図4や
図5に示す以外の画像を投影してもよい。このとき、下部平坦領域25には、エレクタによりセグメントVSが組み立てられる画像や、セグメントVSの先端面に反力をとってシールドジャッキが伸縮する画像などを投影することができる。
【0037】
また、以下に説明する第2の投影画像および第3の投影画像を含めて、スクリーン20の迫り出し領域21および凹み領域22に投影されるシールドマシンV10のスキンプレートの外周面V10-3の画像、セグメントVSの外周面VS-1や内周面VS-2の画像には、迫り出し領域21および凹み領域22の曲面に合わせて立体感が出るように、仮想空間での奥行き方向に対する寸法的な補正がされている。
【0038】
このように、地中を掘削しながら前へ移動するシールドマシンV10の前方から見た斜視画像やセグメントVSの外周面VS-1の前方から見た斜視画像をスクリーン20の迫り出し領域21に投影することでこれらを立体的に投影することが可能になり、シールドマシンV10の動作やトンネルを構成するセグメントVSを具体的に分かり易く表示することができる。
【0039】
なお、以下に説明する場合を含めて、下部平坦領域25は第1の投影画像、第2の投影画像、第3の投影画像を説明するための画像が投影される領域であることから、背景画像には、地中を模した画像以外の画像を投影するようにしてもよい。
【0040】
次に、第2の投影画像とは、
図6に示すように、円形領域23に投影される回転するカッタヘッドV10-1の前方から見た斜視画像、ならびに迫り出し領域21に投影されるカッタヘッドV10-1の後方に位置するシールドマシンV10のスキンプレートの外周面V10-3およびセグメントVSの外周面VS-1の前方から見た斜視画像である。また、凹み領域22に投影される地中の画像である。
【0041】
また、第2の投影画像の投影時には、この第2の画像を説明するための画像、ここではシールド工法を説明した画像などが下部平坦領域25に投影される。
【0042】
このように、回転するカッタヘッドV10-1の前方から見た斜視画像を円形領域23に投影し、カッタヘッドV10-1に後続したスキンプレートの外周面V10-3の前方から見た斜視画像およびセグメントVSの外周面VS-1の前方から見た斜視画像を迫り出し領域21に投影することで、これらを立体的に投影することが可能になり、シールドマシンV10で地中を掘進しながらセグメントVSを組み立ててトンネルを築造していくシールド工法を具体的に分かり易く表示することができる。
【0043】
また、第1の投影画像に続いて第2の投影画像を投影することにより、第1の投影画像のようにしてシールドマシンV10が地中VGを掘削しながら前へ移動することで第2の投影画像に示す状態に到達することが直感的に理解できるようになっている。
【0044】
次に、第3の画像とは、
図7に示すように、凹み領域22に投影される軸方向に沿って破断したセグメントVSの内周面VS-2の前方から見た斜視画像、円形領域23に投影される径方向に沿って一部が破断したセグメントVSの径方向断面VS-3の前方から見た斜視画像、迫り出し領域21に投影されるセグメントVSの外周面VS-1の前方から見た斜視画像である。なお、円形領域23に投影されたセグメントVSの径方向断面VS-3の画像は、凹み領域22に投影されたセグメントVSの内周面VS-2の画像と連続している。また、迫り出し領域21に投影されたセグメントVSの外周面VS-1の画像は、円形領域23に投影されたセグメントVSの径方向断面VS-3の画像と連続している。
【0045】
そして、第3の投影画像の投影時には、この第3の画像を説明するための画像、ここではセグメントVSを軸方向に見た奥行きのある画像が下部平坦領域25に投影される。
【0046】
さらに、
図7に示すように、上部平坦領域24には、地中を模した画像の上部に地上を模した画像(ここでは、市街地の画像)が投影されている。
【0047】
このように、セグメントVSの内周面VS-2の前方から見た斜視画像を凹み領域22に投影し、セグメントVSの径方向断面VS-3の前方から見た斜視画像を円形領域23に投影し、セグメントVSの外周面VS-1の前方から見た斜視画像を迫り出し領域21に投影することで、組み立てられたセグメントVSを立体的に投影することが可能になり、地中に築造されたトンネルであるセグメントVSを具体的に分かり易く表示することができる。
【0048】
また、地上を模した画像を上部平坦領域24に投影することで、日常の生活空間が何らの制約を受けることなく、当該生活空間の地下にトンネル(つまり環状に組み立てられたセグメントVS)が築造されることを分かり易く表示することができる。
【0049】
このように、本実施の形態のプロジェクションマッピング装置を構成するスクリーン20の投影面は、投影方向の鉛直断面が湾曲した凸状になって水平方向に延びて形成された迫り出し領域21と、投影方向の鉛直断面が湾曲した凹状になって迫り出し領域21の延長領域上に形成された凹み領域22と、迫り出し領域21と凹み領域22との間において迫り出し領域21および凹み領域22に連続するように形成されて正面を向けて傾斜した円形領域23とを有している。さらに、迫り出し領域21、凹み領域22および円形領域23の上部には平面状となった上部平坦領域24を、これらの下部には平面状となった下部平坦領域25を有している。
【0050】
そして、プロジェクションマッピング装置を構成する制御部40によって、このような形状のスクリーン20に対して、前述した第1の投影画像、第2の投影画像および第3の投影画像が選択的に投影されるようになっている。さらに、これら第1の投影画像、第2の投影画像および第3の投影画像を説明するための画像が各投影画像の投影時に投影されるようになっている。
【0051】
したがって、地中を掘進する様子のシールドマシンV10を用いたシールド工法の画像がスクリーン20に立体的に投影されることになる。これにより、高コストで慎重な取り扱いが求められる模型や、平面的で臨場感に欠けるパネルを用いることなく、シールドマシンV10を用いたシールド工法の説明を、従来技術と比較して低コストで分かり易く行うことが可能になる。
【0052】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0053】
たとえば、投影画像を投影する順序は、第1の投影画像、第2の投影画像、第3の投影画像の順序である必要はなく、どのような順序であってもよい。
【0054】
また、スクリーン20を形成する上部平坦領域24および下部平坦領域25は必須ではない。よって、上部平坦領域24および下部平坦領域25が設けられていないスクリーン20では、地上の画像や、第1の投影画像、第2の投影画像および第3の投影画像を説明するための画像は投影されない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上の説明では、本発明のプロジェクションマッピング装置に投影されるシールドマシンの種類は特に限定されるものではなく、泥土圧シールドマシンや泥水式シールドマシンなど、様々な種類のシールドマシンを適用することができる。さらに、シールドマシンに限られず、例えばトンネルボーリングマシンなど、シールド工法以外のトンネル掘削機全般に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 取付台
11 台座
12 縦板
12a 上板部
12b 下板部
12c 中板部
12ca 矩形板
12cb 凹状板
12cc 矩形板
12cd 凸状板
13 天板
14 背面板
15 円形板
20 スクリーン
21 迫り出し領域
22 凹み領域
23 円形領域
24 上部平坦領域
25 下部平坦領域
30 プロジェクタ
40 制御部
V10 シールドマシン(トンネル掘削機)
V10-1 カッタヘッド
V10-2 チャンバ
V10-3 スキンプレートの外周面
VF 裏込め材
VG 地中
VS セグメント
VS-1 外周面
VS-2 内周面