(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004967
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】バルブ、駆動装置、及び建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20250108BHJP
F16K 15/18 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
F16K15/18 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104895
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小島 健太郎
【テーマコード(参考)】
3H058
【Fターム(参考)】
3H058AA11
3H058BB22
3H058CD05
3H058EE16
(57)【要約】
【課題】小型油圧モータにバルブを内蔵することができるバルブ、駆動装置、及び建設機械を提供する。
【解決手段】実施形態の反転防止弁5は、ケース10に設けられて作動油を流通する2つの第1ポート12a,12b及び第2ポート13a,13bと、ケース10に設けられて2つのポート12a,12b,13a,13bに通じるバルブ孔11と、バルブ孔11の内部に収納されてバルブ孔11の軸線Aの方向へ往復移動自在なチェック25と、バルブ孔11の内部に収納されて2つのポート12a,12b,13a,13bを仕切るとともに、チェック25の往復移動を規制するシート20と、を備える。チェック25を往復移動させることにより、2つのポート12a,12b,13a,13bのうち一方側の反転圧力を他方側にバイパスさせる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に設けられて作動流体を流通する2つのポートと、
前記枠体に設けられて前記2つのポートに通じるバルブ孔と、
前記バルブ孔の内部に収納されて前記バルブ孔の軸線の方向へ往復移動自在なチェックと、
前記バルブ孔の内部に収納されて前記2つのポートを仕切るとともに、前記チェックの往復移動を規制するシートと、
を備え、
前記チェックを往復移動させることにより、前記2つのポートのうち一方側の反転圧力を他方側にバイパスさせる、
バルブ。
【請求項2】
前記バルブ孔の内部に収納された2つのハウジングを備え、
前記2つのハウジングの内部に前記チェックが往復移動自在に支持されており、
前記シートは、前記2つのハウジングを前記軸線と同軸上で、かつ所定間隔をあけて配置する、
請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記シートは、環状に形成されており、
前記シートの径方向内側には、内フランジが形成されており、
前記内フランジは、前記バルブ孔の内周面に対して径方向内側に間隔をあけて設けられ、かつ前記シートから前記軸線の方向に張り出されており、
前記内フランジの外周面に前記2つのハウジングが篏合固定されており、
前記2つのハウジングと前記枠体との間に、前記2つのポートへつながる隙間が形成される、
請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
流体ポンプと、
前記流体ポンプから吐出された作動流体により作動する流体モータと、
前記流体ポンプと前記流体モータとの間に介在されて前記流体ポンプと前記流体モータとの間の前記作動流体の流れを制御するバルブと、
を備え、
前記バルブは、
前記流体モータのケースに設けられて前記作動流体を流通する2つのポートと、
前記ケースに設けられて前記2つのポートに通じるバルブ孔と、
前記バルブ孔の内部に収納されて前記バルブ孔の軸線の方向へ往復移動自在なチェックと、
前記バルブ孔の内部に収納されて前記2つのポートを仕切るとともに、前記チェックの往復移動を規制するシートと、
を備え、
前記チェックを往復移動させることにより、前記2つのポートのうち一方側の反転圧力を他方側にバイパスさせる、
駆動装置。
【請求項5】
車体と、
前記車体に設けられて前記車体を駆動するための駆動装置と、
を備え、
前記駆動装置は、
流体ポンプと、
前記流体ポンプから吐出された作動流体により作動する流体モータと、
前記流体ポンプと前記流体モータとの間に介在されて前記流体ポンプと前記流体モータとの間の前記作動流体の流れを制御するバルブと、
を備え、
前記バルブは、
前記流体モータのケースに設けられて前記作動流体を流通する2つのポートと、
前記ケースに設けられて前記2つのポートに通じるバルブ孔と、
前記バルブ孔の内部に収納されて前記バルブ孔の軸線の方向へ往復移動自在なチェックと、
前記バルブ孔の内部に収納されて前記2つのポートを仕切るとともに、前記チェックの往復移動を規制するシートと、
を備え、
前記チェックを往復移動させることにより、前記2つのポートのうち一方側の反転圧力を他方側にバイパスさせる、
建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ、駆動装置、及び建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、油圧モータは、回転方向や停止が切換弁により切り換えられる。油圧モータの回転状態において切換弁を中立位置に切り換えた場合、油圧モータはブレーキ動作後に停止する。油圧モータの停止直後において、油圧モータに揺り戻しによる衝撃(ショック)が発生する。この衝撃を防止するバルブが提案されている。このバルブによれば、切換弁を中立位置に切り換えて油圧モータを停止する際に、油圧モータの停止直後に揺り戻しにより発生する衝撃を防止することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来のバルブは、ケースに形成したバルブ孔の内部にチェックを2つ備え、2つのチェックをバルブ孔の両側から組み込む必要がある。このため、バルブをコンパクトに形成することが難しく、例えば小型油圧モータの枠体にバルブを設けるスペースを確保できなかった。よって、小型油圧モータにバルブを適用させるためには、小型油圧モータの外部にバルブを外付けする必要があった。
また、小型油圧モータについては、扁平タイプのケースがニーズとして要求されており、小型油圧モータのコンパクト化は必須である。
【0005】
本発明は、小型油圧モータに内蔵することができるバルブ、駆動装置、及び建設機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るバルブは、枠体に設けられて作動流体を流通する2つのポートと、前記枠体に設けられて前記2つのポートに通じるバルブ孔と、前記バルブ孔の内部に収納されて前記バルブ孔の軸線の方向へ往復移動自在なチェックと、前記バルブ孔の内部に収納されて前記2つのポートを仕切るとともに、前記チェックの往復移動を規制するシートと、を備え、前記チェックを往復移動させることにより、前記2つのポートのうち一方側の反転圧力を他方側にバイパスさせる。
【0007】
シートは、チェックの往復移動を規制するために、チェックの外径より小径に形成する必要がある。このため、シートを枠体に一体形成した場合、2つのチェックをシートの両側から分けてバルブ孔の内部に組み込む必要がある。
【0008】
そこで、この構成において、枠体に形成されたバルブ孔の内部にシートを収納した。このため、例えば、シートとチェックとを一体に組み付けた状態において、バルブ孔の開口部からバルブ孔の内部に組み込むことができる。これにより、バルブ孔の片側にのみ開口部を設けるだけでバルブを形成できる。すなわち、バルブ孔の開口部を両側に設ける必要がない。この結果、バルブをコンパクトに形成することが可能になり、小型油圧モータの枠体にバルブを設けるスペースを確保できる。これにより、小型油圧モータにバルブを内蔵することができる。
また、小型油圧モータに要求されている扁平タイプの枠体にバルブを内蔵することができる。
【0009】
さらに、枠体に形成されたバルブ孔の内部にシートを収納することにより、チェックを2つに分けてシートの両側に配置する必要がない。このため、チェックを一体にまとめることができる。よって、チェックの加工性を容易にできる。
加えて、バルブ孔の片側にのみ開口部を設けるだけでシートとチェックとをバルブ孔の内部に組み込むようにした。このため、バルブ孔の両側から開口部を設ける場合と比べて、バルブ孔の加工精度を容易に確保できる。
【0010】
上記構成において、前記バルブ孔の内部に収納された2つのハウジングを備え、前記2つのハウジングの内部に前記チェックが往復移動自在に支持されており、前記シートは、前記2つのハウジングを前記軸線と同軸上で、かつ所定間隔をあけて配置してもよい。
【0011】
上記構成において、前記シートは、環状に形成されており、前記シートの径方向内側には、内フランジが形成されており、前記内フランジは、前記バルブ孔の内周面に対して径方向内側に間隔をあけて設けられ、かつ前記シートから前記軸線の方向に張り出されており、前記内フランジの外周面に前記2つのハウジングが篏合固定されており、前記2つのハウジングと前記枠体との間に、前記2つのポートへつながる隙間が形成されてもよい。
【0012】
本発明の他の態様に係る駆動装置は、流体ポンプと、前記流体ポンプから吐出された作動流体により作動する流体モータと、前記流体ポンプと前記流体モータとの間に介在されて前記流体ポンプと前記流体モータとの間の前記作動流体の流れを制御するバルブと、を備え、前記バルブは、前記流体モータのケースに設けられて前記作動流体を流通する2つのポートと、前記ケースに設けられて前記2つのポートに通じるバルブ孔と、前記バルブ孔の内部に収納されて前記バルブ孔の軸線の方向へ往復移動自在なチェックと、前記バルブ孔の内部に収納されて前記2つのポートを仕切るとともに、前記チェックの往復移動を規制するシートと、を備え、前記チェックを往復移動させることにより、前記2つのポートのうち一方側の反転圧力を他方側にバイパスさせる。
【0013】
このように構成することで、バルブをコンパクトに形成して小型油圧モータのケースにバルブを設けるスペースを確保できる。これにより、バルブを内蔵した小型油圧モータを備えた駆動装置を提供することができる。
また、小型油圧モータに要求されている扁平タイプのケースにバルブを内蔵した駆動装置を提供することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る建設機械は、車体と、前記車体に設けられて前記車体を駆動するための駆動装置と、を備え、前記駆動装置は、流体ポンプと、前記流体ポンプから吐出された作動流体により作動する流体モータと、前記流体ポンプと前記流体モータとの間に介在されて前記流体ポンプと前記流体モータとの間の前記作動流体の流れを制御するバルブと、を備え、前記バルブは、前記流体モータのケースに設けられて前記作動流体を流通する2つのポートと、前記ケースに設けられて前記2つのポートに通じるバルブ孔と、前記バルブ孔の内部に収納されて前記バルブ孔の軸線の方向へ往復移動自在なチェックと、前記バルブ孔の内部に収納されて前記2つのポートを仕切るとともに、前記チェックの往復移動を規制するシートと、を備え、前記チェックを往復移動させることにより、前記2つのポートのうち一方側の反転圧力を他方側にバイパスさせる。
【0015】
このように構成することで、バルブをコンパクトに形成して枠体にバルブを設けるスペースを確保できる。これにより、バルブを内蔵した小型油圧モータを備えた建設機械を提供することができる。
また、小型油圧モータに要求されている扁平タイプの枠体にバルブを内蔵した建設機械を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小型油圧モータにバルブを内蔵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態における建設機械の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態における駆動装置の油圧回路図である。
【
図3】本発明の実施形態における反転防止弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態に係るバルブ、駆動装置、及び建設機械を図面に基づいて説明する。
【0019】
<建設機械>
図1は、実施形態における建設機械の概略構成図である。
図1に示すように、建設機械100は、例えば油圧ショベル等である。建設機械100は、旋回体(請求項における車体の一例)101と、旋回体101の下部に設けられた走行体102と、これら旋回体101や走行体102を駆動するための駆動装置1と、を備える。
【0020】
旋回体101は、走行体102に対して旋回する。旋回体101は、キャブ103と、キャブ103に一端が連結されたブーム104と、ブーム104の他端に一端が連結されたアーム105と、アーム105の他端に連結されたバケット106と、を備える。キャブ103は、旋回体101に搭乗する操作者を支持する。ブーム104は、旋回体101の本体に対して揺動する。アーム105は、ブーム104に対して揺動する。バケット106は、アーム105に対して揺動する。すなわち、ブーム104、アーム105、及びバケット106は、建設機械100の作業装置を構成する。
【0021】
<駆動装置>
駆動装置1は、例えば主要部が旋回体101内に設けられている。駆動装置1から供給される作動油(請求項における作動流体の一例)によって、旋回体101、走行体102、ブーム104、アーム105及びバケット106を駆動する。
【0022】
図2は、実施形態における駆動装置の油圧回路図である。
図1、
図2に示すように、駆動装置1は、駆動源となる油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2から吐出された作動油の流れを切り換える切換弁(制御弁)3と、油圧ポンプ2から吐出された作動油により作動する油圧モータ(請求項におけるモータの一例)4と、油圧モータ4及び切換弁3の間に介在された反転防止弁(請求項におけるバルブの一例)5と、を備えている。
本実施形態では、油圧モータ4として小型油圧モータを例に説明するが、油圧モータ4を大型油圧モータとしてもよい。以下、油圧モータ4を「小型油圧モータ4」ということがある。
【0023】
切換弁3は、スプール3aを中立位置P1に配置することにより、油圧ポンプ2から吐出された作動油をタンク6に戻すことができる。スプール3aを第1旋回位置P2に配置することにより、作動油を第1流路7に導くことができる。スプール3aを第2旋回位置P3に配置することにより、作動油を第2流路8に導くことができる。
反転防止弁5は、切換弁3と油圧モータ4とを接続する第1流路7及び第2流路8の途中に設けられている。以下、反転防止弁5について詳しく説明する。
【0024】
<反転防止弁>
図3は、実施形態における反転防止弁の断面図である。
図2、
図3に示すように、反転防止弁5は、枠体(請求項における枠体の一例)としての油圧モータ4のケース(請求項におけるケースの一例)10に内蔵されている。反転防止弁5は、ケース10に設けられたバルブ孔(請求項におけるバルブ孔の一例)11と、バルブ孔11に通じる第1ポート(請求項における2つのポートの一方の一例)12a,12bと、バルブ孔11に通じる第2ポート(請求項における2つのポートの他方の一例)13a,13bと、を備える。
【0025】
バルブ孔11は、例えばケース10の一方側(
図3の紙面左側)に開口部14を有する凹部である。バルブ孔11は、ケース10の一方側からみて円形状に形成されている。バルブ孔11の軸線Aの方向における他方側は、ケース10の壁部15によって塞がれている。バルブ孔11の一方側は、プラグ84によって閉塞されている。
以下、バルブ孔11の軸線Aの方向を単に「軸線A方向」と称する。バルブ孔11の開口部14側(一方側)を「第1方向側」、バルブ孔11の壁部15側(他方側)を「第2方向側」と称する。
【0026】
第1ポート12a及び第2ポート13aは、軸線A方向の第1方向側に位置し、第1流路7に通じている。第1ポート12b及び第2ポート13bは、軸線A方向の第2方向側に位置し、第2流路8に通じている。
バルブ孔11の内部には、シート(請求項におけるシートの一例)20と、シート20の両側に配置された2つのハウジング(請求項におけるハウジングの一例)22,23と、2つのハウジング22,23の内部に配置されたチェック(請求項におけるチェックの一例)25と、が収納されている。
【0027】
シート20は、例えば環状に形成されている。シート20は、バルブ孔11の内部に収納され、軸線A方向において概ね中央に配置されている。シート20の外周面20aは、バルブ孔11の内周面11a(請求項における内周面の一例)に対して接触されている。シート20の外周面20aには溝部26が環状に形成されている。溝部26にはOリング27が収納されている。Oリング27は、シート20の両側に配置された2つのハウジング22,23の間をシールしている。すなわち、シート20は、第1方向側に位置する第1ポート12aと、第2方向側に位置する第1ポート12bとを仕切る。シート20は、第1方側に位置する第2ポート13aと、第2方向側に位置する第2ポート13bとを仕切る。
【0028】
シート20の径方向の内側には、環状に形成された2つの内フランジ(請求項における内フランジの一例)28,29が形成されている。2つの内フランジ28,29は、バルブ孔11の内周面11aに対して径方向の内側に間隔をあけて設けられている。2つの内フランジ28,29は、シート20から軸線A方向に張り出されている。2つの内フランジ28,29は、後述するチェック25の往復移動を規制する。
【0029】
以下の説明では、2つの2つの内フランジ28,29のうち、第1方向に張り出された内フランジ28を第1内フランジ28と称する。2つの2つの内フランジ28,29のうち、第2方向に張り出された内フランジ29を第2内フランジ29と称する。
【0030】
2つのハウジング22,23は、シート20側にそれぞれ第1開口部32,52を有する有底筒状に形成されている。2つのハウジング22,23は、軸線Aと同軸上に配置されている。以下の説明では、2つのハウジング22,23のうち、シート20を挟んで第1方向に配置されたハウジングを第1ハウジング22と称する。2つのハウジング22,23のうち、シート20を挟んで第2方向に配置されたハウジングを第2ハウジング23と称する。第1ハウジング22は、第1開口部32を有する。第2ハウジング23は、第1開口部52を有する。
【0031】
第1ハウジング22の外周面22aは、バルブ孔11の内周面11aに比べて小径に形成されている。第1ハウジング22の底部22bには、第1開口部32の内径よりも小さい内径の第2開口部33が形成されている。第2開口部33は、軸線Aと同軸上に配置されている。第2開口部33は、底部22bの内外を軸線A方向で通じさせている。
【0032】
第1ハウジング22の周壁部22dには、径方向に貫通する複数の第1小孔88が形成されている。第1小孔88によって、周壁部22dの径方向の内外が通じる。
第1ハウジング22の底部22bには、径方向に貫通する複数の第2小孔86が形成されている。第2小孔86によって、外周面22aと第2開口部33とが通じる。
【0033】
第1ハウジング22は、第1開口部32側の端部22cが第1内フランジ28の径方向の外側に篏合固定されている。第1ハウジング22の端部22cは、シート20の第1方向側の壁面20bに接触している。この状態のとき、第1ハウジング22の外周面22aとバルブ孔11の内周面11aとの間に、環状の第1隙間(請求項における隙間の一例)35が形成される。第1隙間35は、第1ポート12a及び第2ポート13aへつながる。このため、第1ポート12a、第2ポート13a、及び第1隙間35には、第1流路7を流れる作動油が流通される。
【0034】
第1ハウジング22の内部には、円板状の第1座部42が収納されている。第1座部42は、底部22bに接触するように配置されている。第1座部42には、開口部42aが形成されている。開口部42aは、軸線Aと同軸上に形成されている。開口部42aの内径は、第2開口部33の内径よりも小さい。第1座部42の開口部42aを介し、第2開口部33と第1ハウジング22の内部とが通じている。
【0035】
第1ハウジング22の第2開口部33には、第1ポペット37が軸線A方向に移動自在に収納されている。第1ポペット37は、第1方向側に第3開口部38を有する有底筒状に形成されている。第1ポペット37の底部37aには、小孔87が形成されている。小孔87は、底部37aの内外を軸線A方向で通じさせる。小孔87は、軸線Aと同軸上に配置されている。
【0036】
第1ポペット37の内部には、第1圧縮ばね39が収納されている。第1圧縮ばね39は、第1ポペット37の底部37aとプラグ84との間で圧縮されている。第1圧縮ばね39の復元力により、第1ポペット37の底部37aが第1座部42に押し付けられている。第1ポペット37と第1圧縮ばね39とにより第1流量調整弁が構成される。
【0037】
第2ハウジング23の構成も第1ハウジング22の構成と同様である。第2ハウジング23は、第1ハウジング22に対してシート20を中心に対称に形成されている。
すなわち、第2ハウジング23の外周面23aは、バルブ孔11の内周面11aに比べて小径に形成されている。第2ハウジング23の底部23bには、第1開口部52の内径よりも小さい内径の第2開口部53が形成されている。第2開口部53は、軸線Aと同軸上に配置されている。第2開口部53は、底部23bの内外を軸線A方向で通じさせている。
【0038】
第2ハウジング23の周壁部23dには、径方向に貫通する複数の第1小孔94が形成されている。第1小孔94によって、周壁部23dの径方向の内外が通じる。
第2ハウジング23の底部23bには、径方向に貫通する複数の第2小孔92が形成されている。第2小孔92によって、外周面23aと第2開口部53とが通じる。
【0039】
第2ハウジング23は、第1開口部52側の端部23cが第2内フランジ29の径方向の外側に篏合固定されている。第2ハウジング23の端部23cは、シート20の第2方向側の壁面20cに接触している。この状態のとき、第2ハウジング23の外周面23aとバルブ孔11の内周面11aとの間に、環状の第2隙間(請求項における隙間の一例)55が形成される。第2隙間55は、シート20のOリング27により第1隙間35に対して仕切られている。第2隙間55は、第1ポート12b及び第2ポート13bへつながる。このため、第1ポート12b、第2ポート13b、及び第2隙間55には、第2流路8を流れる作動油が流通される。
【0040】
第2ハウジング23の内部には、円板状の第2座部62が収納されている。第2座部62は、底部23bに接触するように配置されている。第2座部62には、開口部62aが形成されている。開口部62aは、軸線Aと同軸上に形成されている。開口部62aの内径は、第2開口部53の内径よりも小さい。第2座部62の開口部62aを介し、第2開口部53と第2ハウジング23の内部とが通じている。
【0041】
第2ハウジング23の第2開口部53には、第2ポペット57が軸線A方向に移動自在に収納されている。第2ポペット57は、第2方向側に第3開口部58を有する有底筒状に形成されている。第2ポペット57の底部57aには、小孔93が形成されている。小孔93は、底部57aの内外を軸線A方向で通じさせる。小孔87は、軸線Aと同軸上に配置されている。
【0042】
第2ポペット57の内部には、第2圧縮ばね59が収納されている。第2圧縮ばね59は、第2ポペット57の底部57aとケース10の壁部15との間で圧縮されている。第2圧縮ばね59の復元力により、第2ポペット57の底部57aが第2座部62に押し付けられている。第2ポペット57と第2圧縮ばね59とにより第2流量調整弁が構成される。
【0043】
チェック25は、2つのハウジング22,23の内周面に支持されている。チェック25は、両端部が大径に形成されているとともに、中間部が小径に形成されている。具体的には、チェック25は、第1方向側に位置する第1拡径部71と、第1拡径部71に一体に形成された第1傾斜部72と、第2方向側に位置する第2拡径部73と、第2拡径部73に一体に形成された第2傾斜部74と、第1傾斜部72及び第2傾斜部74を連結する中間部75と、を有する。第1拡径部71、第1傾斜部72、中間部75、第2傾斜部74、及び第2拡径部73は同軸上において一体に形成されている。
【0044】
第1拡径部71は、外径が第1ハウジング22の内径に対して僅かに小さく形成されているとともに、第1内フランジ28に比べて大径に形成されている。このため、第1拡径部71は、第1ハウジング22内において第1内フランジ28よりも第1方向側で軸線A方向に往復移動自在に支持されている。第1拡径部71における第1方向側の端面71aには、第1凹部77が形成されている。第1凹部77は、軸線A方向からみて円形状であり、軸線Aと同軸上に配置されている。
【0045】
第1傾斜部72は、第1拡径部71から中間部75に向かうに従って縮径する円錐台形に形成されている。
【0046】
第2拡径部73は、外径が第2ハウジング23の内径に対して僅かに小さく形成されているとともに、第2内フランジ29に比べて大径に形成されている。このため、第2拡径部73は、第2ハウジング23内において第2内フランジ29よりも第2方向側で軸線A方向に往復移動自在に支持されている。第2拡径部73における第2方向側の端面73aには、第2凹部78が形成されている。第2凹部78は、軸線A方向からみて円形状であり、軸線Aと同軸上に配置されている。
【0047】
第2傾斜部74は、第2拡径部73から中間部75に向かうに従って縮径する円錐台形に形成されている。
中間部75は、第1傾斜部72及び第2傾斜部74を一体に連結している。中間部75は、外径が第1内フランジ28及び第2内フランジ29の内径に比べて小さく形成されている。
【0048】
チェック25の第1凹部77と第1座部42との間には、第3圧縮ばね81が圧縮した状態で設けられている。チェック25の第1拡径部71と第1座部42との間には、第1背室V1が形成される。第1背室V1に機能については後述する。
チェック25の第2凹部78と第2座部62との間には、第4圧縮ばね82が圧縮した状態で設けられている。チェック25の第2拡径部73と第2座部62との間には、第2背室V2が形成される。第2背室V2に機能については後述する。
【0049】
チェック25は、例えば第2方向に移動した際にシート20の第1内フランジ28に第1傾斜部72が当たる。これにより、チェック25の第2方向への移動が規制される。また、チェック25は、例えば第1方向に移動した際にシート20の第2内フランジ29に第2傾斜部74が当たる。これにより、チェック25の第1方向への移動が規制される。すなわち、チェック25は、往復移動がシート20により規制される。
【0050】
このように構成された反転防止弁5は、例えば、シート20、チェック25、及び2つのハウジング22,23等を一体に組み付けた状態において、バルブ孔11の開口部14からバルブ孔11の内部に組み込むことができる。一体に組み付けたシート20、チェック25、及び2つのハウジング22,23等が開口部14からバルブ孔11の内部に組み込まれた後、開口部14がプラグ84により閉塞される。
【0051】
チェック25は、無負荷状態では、各圧縮ばね81,82によって中立位置に配置される。チェック25の中立位置とは、第1ハウジング22と第2ハウジング23との間の中央(シート20の軸線A方向の中央)とチェック25の軸線A方向の中央とが一致する位置である。
【0052】
<反転防止弁の動作>
次に、
図2、
図3に基づいて、反転防止弁5によって油圧モータ4の揺り戻しにより発生する衝撃を防止する例について説明する。
一般に油圧モータ4は、切換弁3により回転方向や停止が切り換えられる。油圧モータ4の回転状態において、中立位置P1に切換弁3を切り換えた場合、ブレーキ作動後に旋回体101は停止するために減速する。旋回体101が減速する過程において、旋回体101は旋回時の慣性力により旋回を続けようとする。
【0053】
このため、油圧モータ4はポンプ作用をする。この状態では、油圧モータ4の排出側ポートでブレーキ圧力が発生する。以下、ブレーキ圧力が発生する排出側ポートを、例えば第2ポート13aとして説明する。この場合、油圧モータ4から第1流路7及び第2ポート13aを経て第1隙間35に作動油が導かれる。第1隙間35に導かれた作動油は、第1ハウジング22の第2小孔86から第1ポペット37の小孔87を経てチェック25の第1背室V1に流入する。
【0054】
第1背室V1に流入した作動油により、チェック25が軸線A方向のd第2方向側に移動する。チェック25の移動後に、チェック25の第1傾斜部72が第1内フランジ28に当たり、チェック25の第2方向側への移動を停止する。チェック25の移動が停止した状態では、第1ハウジング22の第1小孔88から通路W1を経て中間室Uに通じるバイパス通路が遮断される。そして、旋回体101が一旦停止される。
【0055】
旋回体101は、一旦停止した直後にブレーキ圧力により反転する。このため、第2流路8の作動油の圧力が上昇する。よって、油圧モータ4から第2流路8及び第2ポート13bを経て第2隙間55に作動油が導かれる。第2隙間55に導かれた作動油は、第2ハウジング23の第2小孔92から第2ポペット57の小孔93を経てチェック25の第2背室V2に流入する。第2背室V2に流入した作動油により、チェック25が軸線A方向において第1方向側に移動しようとする。
【0056】
この時、チェック25の第1背室V1における作動油は第1ポペット37と第1圧縮ばね39とにより構成される第1流量調整弁の作用で緩やかに流出する。このため、チェック25の第1方向側への移動が僅かに遅れる。この間に第2ポート13bの作動油は第2ハウジング23の第1小孔94から通路W2を経て中間室Uに流れ、第1ハウジング22の第1小孔88を経て第2ポート13a側にバイパスする。その後、バイパス通路の第1小孔94を第2拡径部73で遮断する位置まで移動して、第2傾斜部74が第2内フランジ29に当たる。
【0057】
このように、油圧モータ4による第2ポート13b側の反転圧力発生の過程において、チェック25を軸線A方向に往復移動させることにより、第2ポート13b側に発生した反転圧力を第2ポート13a側にバイパスさせることができる。このため、作動油が封入されることなく反転を防止できる。これにより、切換弁3を中立位置P1に切り換えて油圧モータ4を停止する際に、油圧モータ4の停止直後に揺り戻しにより発生する衝撃(ショック)を防止できる。
【0058】
以上説明したように反転防止弁5では、ケース10に形成されたバルブ孔11の内部にシート20を収納した。このため、例えば、シート20、チェック25、及び2つのハウジング22,23等を一体に組み付けた状態において、開口部14からバルブ孔11の内部に組み込むことができる。これにより、バルブ孔11の開口部14を両側に設ける必要がなく、バルブ孔11の片側にのみ開口部14を設けるだけで反転防止弁5を形成できる。
【0059】
この結果、反転防止弁5をコンパクトに形成することが可能になり、小型油圧モータ4のケース10に反転防止弁5を設けるスペースを確保できる。したがって、小型油圧モータ4のケース10に反転防止弁5を内蔵することができる。
また、小型油圧モータ4に要求されている扁平タイプのケース10に反転防止弁5を内蔵することができる。
【0060】
さらに、ケース10に形成されたバルブ孔11の内部にシート20を収納することにより、チェック25を2つに分けてシート20の両側に配置する必要がない。このため、チェック25を一体にまとめることができる。よって、チェック25の加工性を容易にできる。
加えて、バルブ孔11の片側にのみ開口部14を設けるだけでシート20、チェック25、及び2つのハウジング22,23等をバルブ孔11の内部に組み込むようにした。よって、バルブ孔11の両側から開口部を設ける場合と比べて、バルブ孔11の加工精度を容易に確保できる。
【0061】
また、シート20、チェック25、及び2つのハウジング22,23等を一体に組み付けた状態でバルブ孔11の内部に組み込むことにより、2つのハウジング22,23を同軸上のシート20の両側に所定間隔をあけて配置できる。これにより、バルブ孔11の両側に開口部を設けて、両側の開口部から2つのハウジング22,23を収納する必要がなくなる。よって、反転防止弁5をコンパクトに形成できる。
【0062】
さらに、第1ハウジング22を第1内フランジ28で篏合固定することにより、第1ハウジング22とバルブ孔11の内周面11aとの間に、第1ポート12a及び第2ポート13aへつながる第1隙間35を形成した。また、第2ハウジング23を第2内フランジ29で篏合固定することにより、第2ハウジング23とバルブ孔11の内周面11aとの間に、第1ポート12b及び第2ポート13bへつながる第2隙間55を形成した。これにより、第1ポート12a及び第2ポート13aへつながる第1隙間35と、第1ポート12b及び第2ポート13bへつながる第2隙間55と、を容易に形成できる。
【0063】
加えて、第1ハウジング22を第1内フランジ28で篏合固定し、第2ハウジング23を第2内フランジ29で篏合固定することにより、シート20を利用して第1隙間35及び第2隙間55を形成できる。これにより、第1ハウジング22及び第2ハウジング23の形状を簡素化でき、第1ハウジング22及び第2ハウジング23の加工性を容易にできる。
【0064】
また、上述の駆動装置1によれば、反転防止弁5をコンパクトに形成することにより、反転防止弁5を小型油圧モータ4のケース10に設けるスペースを確保できる。これにより、反転防止弁5を内蔵した小型油圧モータ4を備えた駆動装置1を提供することができる。
また、小型油圧モータ4に要求されている扁平タイプのケースに反転防止弁5を内蔵した駆動装置1を提供することができる。
【0065】
さらに、上述の建設機械100によれば、反転防止弁5をコンパクトに形成することにより、反転防止弁5を小型油圧モータ4のケース10に設けるスペースを確保できる。これにより、反転防止弁5を内蔵した小型油圧モータ4を備えた建設機械100を提供することができる。
また、小型油圧モータ4に要求されている扁平タイプのケースに反転防止弁5を内蔵した建設機械100を提供することができる。
さらに、反転防止弁5をコンパクトに形成することにより、建設機械100の狭いスペースにも反転防止弁5を搭載することができる。これにより、建設機械100の配管レイアウトを容易にすることができる。
【0066】
本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態では、建設機械100として、旋回体101、ブーム104、アーム105、及びバケット106を備えた油圧ショベルを例に説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、他の建設機械等に本発明を適用してもよい。
【0067】
上述の実施形態では、油圧モータ4として小型油圧モータを例に説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、他の油圧モータの例として大型油圧モータ等に上述の実施形態の構成を適用してもよい。
上述の実施形態では、作動流体として作動油を例示した。しかしながらこれに限られるものではなく、作動油以外の作動流体に本発明を適用してもよい。作動流体は液体に限られるものではなく、気体でもよい。
【0068】
上述の実施形態では、油圧モータ4のケース10を反転防止弁5の枠体として利用した場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、ケース10とは別に反転防止弁5の枠体を設けてもよい。
【0069】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換えることは可能である。また、上述した各変形例を組み合わせても構わない。
【0070】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0071】
1…駆動装置、5…反転防止弁(バルブ)、10…ケース(枠体)、11…バルブ孔、11a…バルブ孔の内周面、12a,12b…第1ポート(2つのポートの一方)、13a,13b…第2ポート(2つのポートの他方)、20…シート、22…第1ハウジング(2つのハウジングの一方)、23…第2ハウジング(2つのハウジングの他方)、25…チェック、28…第1内フランジ(内フランジ)、29…第2内フランジ(内フランジ)、35…第1隙間(隙間)、55…第2隙間(隙間)、100…建設機械、101…旋回体(車体)、A…軸線