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特開2025-49673制御装置、制御モデル生成方法及び試験装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025049673
(43)【公開日】2025-04-04
(54)【発明の名称】制御装置、制御モデル生成方法及び試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 9/04 20060101AFI20250327BHJP
【FI】
G01M9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023157991
(22)【出願日】2023-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟屋 伊智郎
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 容子
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼山 享大
(72)【発明者】
【氏名】水野 誠二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲濱▼ 浩司
【テーマコード(参考)】
2G023
【Fターム(参考)】
2G023AA02
2G023AB02
2G023AB12
2G023AC06
2G023AD01
(57)【要約】
【課題】流速の調整を行う際の手間を低減する。
【解決手段】制御装置は、流体が流通可能な流路と、流路に設けられ供試体が姿勢を変更可能に配置される試験室と、モータにより回転翼を回転させることで流路内に流体の流れを発生させる流体駆動装置とを備える試験装置を制御する制御装置であって、供試体の姿勢を示す迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを含む試験情報を取得し、試験室における流体の流速が一定となるように、取得した試験情報に応じてモータの回転を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通可能な流路と、前記流路に設けられ供試体が姿勢を変更可能に配置される試験室と、モータにより回転翼を回転させることで前記流路内に前記流体の流れを発生させる流体駆動装置とを備える試験装置を制御する制御装置であって、
前記供試体の姿勢を示す迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを含む試験情報を取得し、
前記試験室における前記流体の流速が一定となるように、取得した前記試験情報に応じて前記モータの回転を制御する
制御装置。
【請求項2】
前記流路内を流通する流体の等価質量をM
前記流路内を流通する流体の等価粘性をC
前記流体駆動装置から流出する流体の流速をv
前記流体駆動装置の推力係数をKRT
前記モータの角速度をω
とし、
前記等価質量M、前記等価粘性C、前記流速v及び前記角速度ωのそれぞれが、少なくとも前記供試体の迎角α、前記横滑り角β及び前記ロール角γの少なくとも1つをパラメータとする変数である場合、
前記流速vと、前記角速度ωと、前記迎角α、前記横滑り角β及び前記ロール角γの少なくとも1つと、の関係を示す関係データを用いて前記等価質量M、前記等価粘性C及び前記推力係数KRTを同定し、
【数1】
に基づいて、前記流速vの目標値に到達するように前記角速度ωを求める
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記流路内を流通する流体の慣性係数をλ
前記流路内を流通する流体の粘性係数をλ
前記流体駆動装置から流出する流体の流速をv
前記モータの角速度をω
とし、
前記慣性係数λ、前記粘性係数λ、前記流速v及び前記角速度ωのそれぞれが、少なくとも前記供試体の迎角α及び横滑り角βをパラメータとする変数である場合、
前記流速vと、前記角速度ωと、前記迎角α、前記横滑り角β及び前記ロール角γの少なくとも1つと、の関係を示す関係データを用いて前記慣性係数λ及び前記粘性係数λを同定し、
【数2】
に基づいて、前記流速vの目標値に到達するように前記角速度ωを求める
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記慣性係数λ、前記粘性係数λ、前記流速v及び前記角速度ωのそれぞれは、更に前記流路内の温度Tをパラメータとする変数である
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記流体駆動装置から流出する流体の流速の目標値をv
前記モータの角速度の補償値をω
とすると、
前記モータの角速度ωは、
前記流速の目標値vと前記試験室における前記流速のフィードバック値である流速vとに基づいて算出される角速度の中間値ωFBに対して、
【数3】
で示される角速度の補償値ωが加算された値である
請求項3に記載の制御装置。
【請求項6】
流体が流通可能な流路と、
前記流路に設けられ、供試体が姿勢を変更可能に配置され、前記供試体の姿勢を示す迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを含む試験情報を取得する取得部を含む試験室と、
モータにより回転翼を回転させることで前記流路内に前記流体の流れを発生させる流体駆動装置と、
前記モータの回転を制御する制御装置と
を備える試験装置の制御モデルを生成する制御モデル生成方法であって、
前記供試体の姿勢を示す迎角α及び横滑り角βを変化させた場合について、前記流体駆動装置から流出する流体の流速vと、前記モータの角速度ωの値とを取得し、前記流速vと、前記角速度ωと、前記迎角α、前記横滑り角β及び前記ロール角γの少なくとも1つと、の関係を示す関係データを取得する取得ステップと、
取得された前記関係データに基づいて、前記流路内を流通する流体の粘性係数λの値を同定する第1同定ステップと、
取得された前記関係データと、同定された前記粘性係数λとに基づいて、前記流路内を流通する流体の慣性係数λを同定する第2同定ステップと、
取得された前記関係データと、同定された前記慣性係数λ及び前記粘性係数λとに基づいて制御モデルを生成する生成ステップと
を含む制御モデル生成方法。
【請求項7】
前記関係データは、前記流速vと、前記角速度ωと、前記迎角αと、前記横滑り角βとの関係を示し、
前記取得ステップでは、前記迎角α及び前記横滑り角βの一方を一定とし、他方を階段状に変化させる
請求項6に記載の制御モデル生成方法。
【請求項8】
前記関係データは、前記流速vと、前記角速度ωと、前記迎角αと、前記横滑り角βとの関係を示し、
前記取得ステップでは、前記迎角α及び前記横滑り角βの一方を一定とし、他方をスイープ状に変化させる
請求項6に記載の制御モデル生成方法。
【請求項9】
流体が流通可能な流路と、
前記流路に設けられ、供試体が姿勢を変更可能に配置され、前記供試体の姿勢を示す迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを含む試験情報を取得する取得部を含む試験室と、
モータにより回転翼を回転させることで前記流路内に前記流体の流れを発生させる流体駆動装置と、
前記試験室における前記流体の流速が一定となるように、前記取得部で検出された前記試験情報に応じて前記モータの回転を制御する制御装置と
を備える試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御モデル生成方法及び試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気流に対する供試体の特性を試験する風洞試験装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。風洞試験装置は、風洞内に送風機が設けられており、この送風機を駆動して風洞内に空気の流れを形成し、計測領域で供試体の各種特性を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-311732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような風洞試験装置では、供試体の姿勢を変化させると風速が変動する。そのため、供試体の姿勢を変更する度に風速の調整を行わなければならず、手間がかかる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、風速の調整を行う際の手間を低減することが可能な制御装置、制御モデル生成方法及び試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る制御装置は、流体が流通可能な流路と、前記流路に設けられ供試体が姿勢を変更可能に配置される試験室と、モータにより回転翼を回転させることで前記流路内に前記流体の流れを発生させる流体駆動装置とを備える試験装置を制御する制御装置であって、前記供試体の姿勢を示す迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを含む試験情報を取得し、前記試験室における前記流体の流速が一定となるように、取得した前記試験情報に応じて前記モータの回転を制御する。
【0007】
本開示に係る制御モデル生成方法は、風洞と、前記風洞に設けられ、供試体が姿勢を変更可能に配置され、前記供試体の姿勢を示す迎角及び横滑り角を少なくとも含む試験情報を取得する取得部を有する試験室と、モータにより回転翼を回転させることで前記風洞内に風を発生させる送風装置と、前記モータの回転を制御する制御装置とを備える風洞試験装置の制御モデルを生成する制御モデル生成方法であって、前記供試体の姿勢を示す迎角α及び横滑り角βを変化させた場合について、前記送風装置から流出する風の風速vと、前記モータの角速度ωの値との関係を取得する取得ステップと、取得された前記風速vと角速度ωとの関係に基づいて、前記風洞内を流通する風の慣性係数λの値を同定する第1同定ステップと、取得された前記風速vと角速度ωとの関係と、同定された前記慣性係数λとに基づいて、前記風洞内を流通する風の粘性係数λを同定する第2同定ステップと、取得された前記風速vと角速度ωとの関係と、同定された前記慣性係数λ及び前記粘性係数λとに基づいて制御モデルを生成する生成ステップとを含む。
【0008】
本開示に係る試験装置は、流体が流通可能な流路と、前記流路に設けられ、供試体が姿勢を変更可能に配置され、前記供試体の姿勢を示す迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを含む試験情報を取得する取得部を含む試験室と、モータにより回転翼を回転させることで前記流路内に前記流体の流れを発生させる流体駆動装置と、前記試験室における前記流体の流速が一定となるように、前記取得部で検出された前記試験情報に応じて前記モータの回転を制御する制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、風速の調整を行う際の手間を低減することが可能な制御装置、制御モデル生成方法及び試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る風洞試験装置の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、風洞試験装置の一例を示す機能ブロック図である。
図3図3は、風洞試験装置の等価モデルの一例を示す図である。
図4図4は、風洞試験装置の等価モデルの他の例を示す図である。
図5図5は、風洞試験装置の等価モデルの他の例を示す図である。
図6図6は、本実施形態に係る制御モデル生成方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、取得ステップにおけるテストパターン運転における動作の例を示す図である。
図8図8は、風速と角速度との関係を示す図である。
図9図9は、風洞試験装置の制御モデルの他の例を示す図である。
図10図10は、取得ステップにおけるテストパターン運転における動作の他の例を示す図である。
図11図11は、迎角と揚力係数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
図1は、本実施形態に係る風洞試験装置の一例を模式的に示す図である。図2は、風洞試験装置の一例を示す機能ブロック図である。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る風洞試験装置(試験装置)100は、風洞(流路)10と、試験室20と、送風装置(流体駆動装置)30と、制御装置40とを備える。
【0013】
風洞10は、流体として空気、二酸化炭素等の気体が流通可能である。風洞10としては、例えば回流型風洞、開放型風洞等の各種の風洞を用いることができる。本実施形態において、風洞10は、例えば回流型風洞である。風洞10は、送風路11と、吸い込み口12と、吹き出し口13とを有する。回流型風洞では、送風路11が例えば4箇所で折り曲げられており、吸い込み口12と吹き出し口13とが対向する。送風路11は、空気が流れる経路である。吸い込み口12は、送風路11の一方の端部に設けられる。吹き出し口13は、送風路11の他方の端部に設けられる。
【0014】
試験室20は、送風路11の吸い込み口12と吹き出し口13との間に配置される。試験室20は、吸い込み口12と吹き出し口13との間に供試体Pが配置される。供試体Pとしては、例えば航空機、車両等が挙げられる。風洞10は、送風路11の両端が試験室20と接続される。風洞10の送風路11と試験室20とで、空気が循環する経路を形成している。
【0015】
試験室20には、供試体支持部21が設けられる。供試体支持部21は、供試体Pの姿勢を変更可能となるように当該供試体Pを支持する。また、試験室20には、取得部22が設けられる。取得部22は、供試体Pの姿勢を示す迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つ含む試験情報を取得する。取得部22は、試験室20における風速を取得する。本実施形態において、迎角α、横滑り角β及びロール角γの基準は、吹き出し口13から吹き出される風の吹き出し方向に沿った軸AXとすることができる。
【0016】
送風装置30は、送風路11の内部に配置される。送風装置30は、例えばファン等の回転翼31をモータ32により回転させることで、風洞10内に風を発生させる。
【0017】
制御装置40は、試験室20における風速が一定となるように、試験情報に応じてモータ32の回転を制御する。
【0018】
制御装置40は、モータ32の動作を制御する。制御装置40は、通信部41、処理部42及び記憶部43を有する。
【0019】
通信部41は、外部機器との間で有線又は無線による通信を行う。通信部41は、ネットワークインタフェースカード等のインタフェースを含む。
【0020】
処理部42は、各種の情報処理を行う。処理部42は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリとを含む。
【0021】
処理部42は、試験室20における風速が一定となるように、試験情報に応じてモータ32の回転を制御する。
【0022】
記憶部43は、各種プログラム、データ等の情報を記憶する。記憶部43は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のストレージを含む。
【0023】
制御装置40では、処理部42においてプロセッサが各種プログラムを読み出してメモリに展開することで情報処理を実行する。各種プログラムとしては、例えば通信部41が受信したプログラム、記憶部43に記憶されたプログラム、外部の記録媒体に記録されたプログラム等が挙げられる。制御装置40は、各種の情報処理を実行する情報処理装置(コンピュータ)として機能する。なお、制御装置40とは異なる他の情報処理装置が各種プログラムを実行してもよいし、制御装置40と他の情報処理装置とが協働して各種プログラムを実行してもよい。
【0024】
本実施形態において、風洞10内を流通する風の等価質量をM、風洞10内を流通する風の等価粘性をC、送風装置30から流出する風の風速をv、送風装置30の推力係数をKRT、モータ32の角速度をωとし、等価質量M、等価粘性C、風速v及び角速度ωのそれぞれが、供試体Pの迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つをパラメータとする変数である場合、処理部42は、流速vと、角速度ωと、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つと、の関係を示す関係データを用いて等価質量M、等価粘性C及び推力係数KRTを同定し、
【数1】
に基づいて、風速vの目標値に到達するように角速度ωを求めることで、試験室20における風速が一定となるようにモータ32の回転を制御することができる。
【0025】
等価モデルM1において、等価質量M、等価粘性C、風速v及び角速度ωのそれぞれは、上記したように、供試体Pの迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つをパラメータとする変数である。なお、等価質量M、等価粘性C、風速v、推力係数KRT及び角速度ωのそれぞれは、更に風洞10内の温度Tをパラメータとする変数であってもよい。
【0026】
図3は、風洞試験装置の等価モデルの一例を示す図である。図3に示す等価モデルM1は、上記の数1で示される関係を満たす風洞試験装置100の等価モデルである。等価モデルM1は、演算部51と、伝達要素52、53、54、55を有する。演算部51は、送風装置30の推力、すなわち送風装置30の推力係数とモータ32の角速度の2乗との積であるKRT・ωが入力される。また、演算部51には、後述する伝達要素55の出力結果が入力される。演算部51は、入力された上記のKRT・ωから伝達要素55の出力結果を減算し、算出結果を出力する。伝達要素52は、演算部51の算出結果が入力される。伝達要素52は、演算部51の算出結果を上記の等価質量Mで除算し、算出結果を出力する。伝達要素53は、伝達要素52の算出結果が入力される。伝達要素53は、伝達要素52の算出結果を積分した結果を風速vとして出力する。伝達要素54は、伝達要素53で算出された風速vが入力される。伝達要素54は、風速vを2乗した値を出力する。伝達要素55は、伝達要素54の出力結果に上記の等価粘性Cを乗算した値を出力する。伝達要素55の出力結果は、上記の演算部51に入力される。
【0027】
上記の数1において、両辺をM・KRTで割った場合、以下の数2で示す関係が得られる。
【0028】
【数2】
【0029】
数2において、λは、風洞10内を流通する風の慣性係数である。また、λは、風洞10内を流通する風の粘性係数である。慣性係数λ、粘性係数λ、風速v及び角速度ωのそれぞれが、供試体Pの迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つをパラメータとする変数である場合、処理部42は、流速vと、角速度ωと、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つと、の関係を示す関係データを用いて慣性係数λ及び粘性係数λを同定し、数2に基づいて、風速vの目標値に到達するように角速度ωを求めることで、試験室20における風速が一定となるようにモータ32の回転を制御することができる。
【0030】
図4は、風洞試験装置の等価モデルの他の例を示す図である。図4に示す等価モデルM2は、上記の数2で示される関係を満たす風洞試験装置100の等価モデルである。等価モデルM2は、演算部61と、伝達要素60、62、63、64、65を有する。伝達要素60は、送風装置30のモータ32の角速度を2乗した値ωを出力する。演算部61には、伝達要素60の出力結果が入力される。また、また、演算部61には、後述する伝達要素65の出力結果が入力される。演算部61は、入力された上記のωから伝達要素65の出力結果を減算し、算出結果を出力する。伝達要素62は、演算部61の算出結果が入力される。伝達要素62は、演算部61の算出結果を上記の慣性係数λで除算し、算出結果を出力する。伝達要素63は、伝達要素62の算出結果が入力される。伝達要素63は、伝達要素62の算出結果を積分した結果を風速vとして出力する。伝達要素64は、伝達要素63で算出された風速vが入力される。伝達要素64は、風速vを2乗した値を出力する。伝達要素65は、伝達要素64の出力結果に上記の粘性係数λを乗算した値を出力する。伝達要素65の出力結果は、上記の演算部61に入力される。
【0031】
図5は、風洞試験装置の等価モデルの他の例を示す図である。図5に示す等価モデルM3は、図4に示す等価モデルM2に対して、更に伝達要素66を追加した構成である。伝達要素66は、伝達要素63で算出された風速vが入力される。伝達要素66は、風速vに対して断面積比A/Aを乗算し、算出結果を出力する。なお、断面積Aは、送風装置30の出口の断面積である。また、断面積Aは、試験室20の入口の断面積である。伝達要素66の出力結果は、試験室20に流入する風の風速vとなる。
【0032】
等価モデルM2、M3において、慣性係数λ、粘性係数λ、風速v及び角速度ωのそれぞれは、上記したように、供試体Pの迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つをパラメータとする変数である。なお、慣性係数λ、粘性係数λ、風速v及び角速度ωのそれぞれは、更に風洞10内の温度Tをパラメータとする変数であってもよい。
【0033】
制御装置40の処理部42は、試験室20における風速vが一定となるように、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを含む試験情報に応じてモータ32の回転を制御する。この制御により、供試体Pの姿勢を変化させる場合、供試体Pの迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つに応じて制御装置40により自動で試験室20の風速vを調整することができるため、風速vの調整を行う際の手間を低減することが可能となる。また、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つパラメータを用いて制御を行うため、高精度の制御が可能となる。
【0034】
次に、上記した等価モデルM2、M3を生成する制御モデル生成方法を説明する。図6は、本実施形態に係る制御モデル生成方法の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、本実施形態に係る制御モデル生成方法は、取得ステップS10と、第1同定ステップS20と、第2同定ステップS30と、生成ステップS40とを含む。以下、各ステップについて順に説明する。
【0035】
取得ステップS10では、供試体Pの姿勢を示す迎角α及び横滑り角βを変化させた場合について、送風装置30から流出する風の風速vと、モータ32の角速度ωの値との関係を取得する。なお、パラメータとして迎角α、横滑り角βに加えて、ロール角γ、風洞10内の温度T等の他のパラメータを追加する場合、追加するパラメータについても風速vと角速度ωとの関係を取得する。
【0036】
取得ステップS10では、風洞試験装置100を用いたテストパターン運転を行うことで、上記関係を取得することができる。図7は、取得ステップS10におけるテストパターン運転における動作の例を示す図である。図7に示すように、テストパターン運転においては、送風装置30のモータ32の回転数N(rpm)、供試体Pの迎角α、横滑り角βをそれぞれ所定の範囲内で変化させて動作を行い、風速vを取得する。なお、当該風速vについては、送風装置30の後流側で不図示のセンサによって計測した値を用いてもよいし、試験室20内で不図示のセンサによって計測した値から、送風装置30の出口の断面積Abと試験室20の入口の断面積Amとの比率に基づいて算出した値を用いてもよい。
【0037】
図7に示す例では、まず、モータ32の回転数Nを50rpmで一定とした状態で、迎角αを-8°から28°まで30秒間ずつ4°ごとに階段状に増加させ、迎角αが28°に到達した後、-8°まで30秒間ずつ4°ごとに階段状に減少させる。
【0038】
より具体的には、まず迎角αを-8°で一定とした状態で30秒間保持し、その後迎角αを0.4°/sの割合で-4°に到達するまで4°増加させる。迎角αが-4°に到達した場合、-4°で一定とした状態で30秒間保持する。その後、同様に迎角αが0°に到達するまで0.4°/sの割合で4°増加させ、0°に到達した場合、0°で一定とした状態で30秒間保持する。このような動作を28°に到達するまで行う。
【0039】
その後、迎角αを0.4°/sの割合で24°に到達するまで4°減少させる。迎角αが24°に到達した場合、24°で一定とした状態で30秒間保持する。その後、同様に迎角αが20°に到達するまで0.4°/sの割合で4°減少させ、20°に到達した場合、20°で一定とした状態で30秒間保持する。このような動作を-8°に到達するまで行う。
【0040】
迎角αを上記のように変化させる間、横滑り角βについては0°で一定とする。迎角αの上記の変化が1サイクル行われた場合、横滑り角βを0°から10°まで0.4°/sの割合で増加させる。横滑り角βが10°に到達した場合、10°で一定とした状態で、迎角αの変化を上記同様に1サイクル行う。横滑り角βを10°として迎角αの変化を1サイクル行った後、横滑り角βを10°から20°まで0.4°/sの割合で増加させる。横滑り角βが20°に到達した場合、20°で一定とした状態で、迎角αの変化を上記同様に1サイクル行う。
【0041】
その後、モータ32の回転数Nを50rpmから100rpmまで2.5rpm/sの割合で20秒間増加させる。モータ32の回転数Nが100rpmに到達した場合、100rpmで一定とした状態で、同様に迎角α及び横滑り角βを変化させる。その後、モータ32の回転数Nを150rpm、200rpmとした場合について、同様に迎角α、横滑り角βを変化させる。なお、上記の説明では、横滑り角βを一定とする間に迎角αを階段状に変化させる場合を例に挙げて説明したが、この態様に限定されない。例えば、迎角αを一定とする間に横滑り角βを階段状に変化させるようにしてもよい。
【0042】
上記のように回転数N、迎角α、横滑り角βを変化させる間、風速vの測定を行うことにより、角速度ω、風速vb、迎角α、横滑り角βの関係を示す関係データが取得される。なお、角速度ωは、回転数Nから演算して求める。取得ステップS10では、取得されたデータのうち、平衡点における値を抽出する。ここで、平衡点とは、上記のテストパターン運転において、回転数N、風速vb、迎角α、横滑り角βが一定の状態をいうことができる。本実施形態においては、例えば所定期間における変化率が閾値以下となる場合を平衡点に達したとみなすことができる。すなわち、取得ステップS10では、所定期間における変化率が閾値以下となるような角速度ω、風速v、迎角α、横滑り角βの組み合わせを関係データとして抽出する。抽出した関係データは、記憶部43に記憶させておくことができる。なお、抽出した関係データに基づいて、例えば迎角α、横滑り角βを入力した場合に風速vを出力するような学習モデルとして記憶部43に記憶させてもよい。
【0043】
第1同定ステップS20では、取得された関係データに基づいて、風洞10内を流通する風の粘性係数λの値を同定する。送風装置30から流出する風の風速加速度が0の場合、すなわち、定常状態の場合、
【数3】
が成立する。
【0044】
数3に基づいて、粘性係数λチルダ(λの上に「~」:以下同様)
【数4】
を得ることができる。
【0045】
なお、粘性係数λチルダを求める際には、例えば迎角α及び横滑り角βを用いて、線形面補間等の面補間を用いて推定してもよい。なお、粘性係数λチルダを推定する手法としては、上記の面補間に限定されない。
【0046】
図8は、風速vと角速度ωとの関係を示す図である。図8において、横軸が風速vを示し、縦軸が角速度ωを示す。図8に示すように、粘性係数λチルダは、定常状態の角速度ωバー(ωの上に「-」)と、定常状態の風速vバー(vの上に「-」)との関係を示す直線の傾きKeqの2乗となる。従って、取得した関連データに基づいて、傾きKeqを迎角α及び横滑り角βで関数化した、
【数5】
を得ることができる。
【0047】
第2同定ステップS30では、取得された関係データと、同定された粘性係数λとに基づいて、風洞10内を流通する風の慣性係数λMを同定する。
【0048】
上記した数2に基づいて、
【数6】
を得ることができる。
【0049】
第2同定ステップS30では、当該数6に基づいて、リグレッションモデルによる非線形方程式の同定法を用いて慣性係数λMを求めることができる。
【0050】
リグレッサの各要素は、
【数7】
で示される。
【0051】
数7において、ω及びv の値は、取得した関係データのω及びvに基づいて算出できる。また、vドット(vの上に・)については、vを微分演算することで算出できる。
【0052】
ここで、数6の左辺をベクトルfで示すと、
【数8】
である。
【0053】
これを用いて最小自乗法を用いて推定することにより、慣性係数λチルダ(λの上に「~」:以下同様)
【数9】
を得ることができる。
【0054】
生成ステップS40では、取得された関係データと、同定された慣性係数λチルダ及び粘性係数λチルダとに基づいて、
【数10】
で示される制御モデルを生成する。
【0055】
数10において、慣性係数λチルダ及び粘性係数λチルダは、迎角α及び横滑り角βの関数である。なお、取得ステップS10において、パラメータとして迎角α、横滑り角βに加えて、ロール角γ、風洞10内の温度T等の他のパラメータを追加した場合、慣性係数λチルダ及び粘性係数λチルダは、迎角α、横滑り角βに加えて、ロール角γ、風洞10内の温度T等の他のパラメータについての関数となる。
【0056】
このように、取得ステップS10、第1同定ステップS20、第2同定ステップS30及び生成ステップS40を行うことで、風速vを高精度に制御可能な制御モデルを生成することができる。
【0057】
図9は、風洞試験装置100の制御モデルの他の例を示す図である。図9に示す制御モデルM4は、上記した等価モデルM3を含んでいる。すなわち、制御モデルM4は、演算部71、73と、伝達要素72、74、75を有する。演算部71には、送風装置30から流出する風の風速の指令値vが入力される。演算部71には、等価モデルM3の出力である風速vの値が入力される。演算部71は、風速の指令値vから風速vを減算した値を出力する。伝達要素72は、演算部71の出力結果が入力される。伝達要素72は、演算部71の出力結果に対してPID制御等の各種制御を行い、結果であるωFBを出力する。演算部73には、伝達要素72の出力結果が入力される。演算部73には、後述する伝達要素75の出力結果である角速度の補償値ωが入力される。演算部73は、演算部71の出力結果と演算部75の出力結果とを加算し、算出結果を角速度ωcomとして出力する。伝達要素74は、上記した等価モデルM3である。伝達要素74には、角速度ωとして、演算部73の演算結果である角速度ωcomが入力される。伝達要素74は、試験室20における風速vを出力する。また、伝達要素74は、迎角α及び横滑り角βの値を出力する。伝達要素75には、風速の指令値vが入力される。また、伝達要素75には、伝達要素74から出力される迎角α及び横滑り角βの値が入力される。伝達要素75は、入力された風速の指令値vと迎角α及び横滑り角βの値とを用いて、
【数11】
を満たす角速度の補償値ωを出力する。
【0058】
このように、図9に示す制御モデルM4において、等価モデルM3に入力されるモータ32の角速度ωcomは、数11で示される補償値ωがフィードフォワード制御により加算された値である。このように、制御モデルM4では、供試体Pの迎角α及び横滑り角βに基づいて必要な角速度の補償値ωを算出し、算出結果に基づいてフィードフォワード制御を行うことができる。このため、供試体Pの迎角α及び横滑り角βに応じたより適切なモータ32の角速度ωcomをモデルM3に入力することができる。
【0059】
図10は、取得ステップS10におけるテストパターン運転における動作の他の例を示す図である。上記した図7では、迎角αを階段状に変化させる場合を例に挙げて説明したが、この態様に限定されない。図10に示すように、迎角αをスイープ状に変化させるようにしてもよい。
【0060】
図10に示す例では、モータ32の回転数Nを例えば上記同様に50rpm、100rpm、150rpm、200rpmで一定とした状態で、迎角αを-8°から28°まで一定の割合で直線的に増加させる。迎角αが28°に到達した後、28°から-8°まで一定の割合で直線的に減少させる。このように、迎角αを直線的に変化させることで、迎角αを階段状に変化させる場合に比べて、試験時間の短縮化を図ることができる。
【0061】
図11は、迎角αと揚力係数Cとの関係を示す図である。図11において、横軸が迎角αを示し、縦軸が揚力係数Cを示す。図11において、丸印は、迎角αを段階的に変化させた場合の値を示す。また、曲線は、迎角αをスイープ状に変化させた場合の変化を示す。図11に示すように、迎角αをスイープ状に変化させる場合、揚力係数Cの最大値を容易に判別することができる。これに対して、迎角αを段階的に変化させた場合、揚力係数Cの最大値を判別することが困難である。実際には、最大値が存在すると思われる区間について、さらに細かく迎角αを階段状に変化させて揚力係数Cの最大値を求める必要がある。このため、迎角αをスイープ状に変化させる場合には、迎角を段階的に変化させる場合に比べて、1回のテストパターン試験における運転時間を大幅に削減することが可能となる。
【0062】
以上のように、本開示の第1態様に従えば、流体である気体が流通可能な風洞10と、風洞10に設けられ、供試体Pが姿勢を変更可能に配置される試験室20と、モータ32により回転翼31を回転させることで風洞10内に風を発生させる送風装置30とを備える風洞試験装置100を制御する制御装置40であって、供試体Pの姿勢を示す迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを含む試験情報を取得し、試験室20における風速が一定となるように、取得した試験情報に応じてモータ32の回転を制御する。
【0063】
この構成によれば、試験室20における風速vが一定となるように、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを含む試験情報に応じてモータ32の回転を制御する。この制御により、供試体Pの姿勢を変化させる場合、供試体Pの迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つに応じて制御装置40により自動で試験室20の風速vを調整することができるため、風速vの調整を行う際の手間を低減することが可能となる。また、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つのパラメータを用いて制御を行うため、高精度の制御が可能となる。
【0064】
本開示の第2態様に従えば、第1態様に係る制御装置40において、風洞10内を流通する風の等価質量をM、風洞10内を流通する風の等価粘性をC、送風装置30から流出する風の風速をv、送風装置30の推力係数をKRT、モータ32の角速度をωとし、等価質量M、等価粘性C、風速v及び角速度ωのそれぞれが、少なくとも供試体の迎角α及び横滑り角βをパラメータとする変数である場合、流速vと、角速度ωと、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つとの関係を示す関係データを用いて等価質量M、等価粘性C及び推力係数KRTを同定し、
【数12】
に基づいて、風速vの目標値に到達するように角速度ωを求める。この構成によれば、少なくとも供試体の迎角α及び横滑り角βをパラメータとする等価質量M、等価粘性C、風速v、推力係数KRT及び角速度ωの変数を用いて、数12に基づいて風速vの目標値に到達するように角速度ωを求めることにより、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つの変化に応じて試験室20における風速vの値を高精度に調整できる。
【0065】
本開示の第3態様に従えば、第1態様に係る制御装置40において、風洞10内を流通する風の慣性係数をλ、風洞10内を流通する風の粘性係数をλ、送風装置30から流出する風の風速をv、モータ32の角速度をωとし、慣性係数λ、粘性係数λ、風速v及び角速度ωのそれぞれが、少なくとも供試体の迎角α及び横滑り角βをパラメータとする変数である場合、流速vと、角速度ωと、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つの関係を示す関係データを用いて慣性係数λ及び粘性係数λを同定し、
【数13】
に基づいて、風速vの目標値に到達するように角速度ωを求める。この構成によれば、供試体Pの迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つをパラメータとする慣性係数λ、粘性係数λ、風速v及び角速度ωの変数を用いて、数13に基づいて風速vの目標値に到達するように角速度ωを求めることにより、数12に示す場合に比べて少ない変数により、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つの変化に応じて試験室20における風速vの値を高精度に調整できる。
【0066】
本開示の第4態様に従えば、第3態様に係る制御装置40において、慣性係数λ、粘性係数λ、風速v及び角速度ωのそれぞれは、更に風洞10内の温度Tをパラメータとする変数である。この構成によれば、試験情報としてロール角γ、風洞10内の温度Tといった他のパラメータの変化に応じて、より高精度に風速vを調整することができる。
【0067】
本開示の第5態様に従えば、第1態様に係る制御装置40において、送風装置30から流出する風の風速の目標値をv、モータ32の角速度の補償値をωとすると、モータ32の角速度ωは、流速の目標値vと試験室20における風速のフィードバック値である風速vとに基づいて算出される角速度の中間値ωFBに対して、
【数14】
で示される角速度の補償値ωが加算された値である。この構成によれば、供試体Pの迎角α及び横滑り角βに基づいて必要な角速度の補償値ωを算出し、算出結果に基づいてフィードフォワード制御を行うことができる。この場合において、数14に示すように、風速の加速度にも対応させて送風装置30の角速度ωを連続的に加速させることができるため、供試体Pの迎角α及び横滑り角βに応じたより適切なモータ32の角速度ωを得ることができる。
【0068】
本開示の第6態様に従えば、流体である気体が流通可能な風洞10と、風洞10に設けられ、供試体Pが姿勢を変更可能に配置され、供試体Pの姿勢を示す迎角及び横滑り角を少なくとも含む試験情報を取得する取得部22を有する試験室20と、モータ32により回転翼31を回転させることで風洞10内に風を発生させる送風装置30と、モータ32の回転を制御する制御装置40とを備える風洞試験装置100の制御モデルを生成する制御モデル生成方法であって、供試体Pの姿勢を示す迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを変化させた場合について、送風装置30から流出する風の風速vと、モータ32の角速度ωの値とを取得し、風速vと、角速度ωと、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つと、の関係を示す関係データを取得する取得ステップと、取得された関係データに基づいて、風洞10内を流通する風の粘性係数λの値を同定する第1同定ステップと、取得された関係データと、同定された粘性係数λとに基づいて、風洞10内を流通する風の慣性係数λを同定する第2同定ステップと、取得された関係データと、同定された慣性係数λ及び粘性係数λとに基づいて制御モデルを生成する生成ステップとを含む制御モデル生成方法が提供される。
【0069】
この構成によれば、取得ステップ、第1同定ステップ、第2同定ステップ及び生成ステップを行うことにより、風速vを高精度に制御可能な制御モデルを生成することができる。
【0070】
本開示の第7態様に従えば、第1態様に係る風洞試験装置100において、関係データは、流速vと、角速度ωと、迎角αと、横滑り角βとの関係を示し、取得ステップでは、迎角及び横滑り角の一方を一定とし、他方を階段状に変化させる。この構成によれば、迎角及び横滑り角の他方を階段状に変化させることで、当該他方を変化させつつ定常状態の値を取得することができる。
【0071】
本開示の第8態様に従えば、第1態様に係る風洞試験装置100において、関係データは、流速vと、角速度ωと、迎角αと、横滑り角βとの関係を示し、取得ステップでは、迎角及び横滑り角の一方を一定とし、他方をスイープ状に変化させる。この構成によれば、迎角及び横滑り角の他方をスイープ状に変化させることで、1回のテストパターン試験における運転時間を大幅に削減することが可能となる。
【0072】
本開示の第9態様に係る試験装置は、流体である気体が流通可能な風洞10と、風洞10に設けられ、供試体Pが姿勢を変更可能に配置され、供試体Pの姿勢を示す迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを含む試験情報を取得する取得部22を含む試験室20と、モータ32により回転翼31を回転させることで風洞10内に風を発生させる送風装置30と、試験室20における風速が一定となるように、取得した試験情報に応じてモータ32の回転を制御する制御装置とを備える。
【0073】
この構成によれば、試験室20における風速vが一定となるように、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つを含む試験情報に応じてモータ32の回転を制御する。この制御により、供試体Pの姿勢を変化させる場合、供試体Pの迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つに応じて制御装置40により自動で試験室20の風速vを調整することができるため、風速vの調整を行う際の手間を低減することが可能となる。また、迎角α、横滑り角β及びロール角γの少なくとも1つのパラメータを用いて制御を行うため、高精度の制御が可能となる。
【0074】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、流体として空気が流通する風洞10を流路とする風洞試験装置100を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。例えば、流体として、例えば水などの液体が流通する配管、液槽等の流路を有する試験装置であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 風洞(流路)
11 送風路
12 吸い込み口
13 吹き出し口
20 試験室
21 供試体支持部
22 取得部
30 送風装置(流体駆動装置)
31 回転翼
32 モータ
40 制御装置
41 通信部
42 処理部
43 記憶部
51,61,71,73,75 演算部
52,53,54,55,60,62,63,64,65,66,72,74,75 伝達要素
100 風洞試験装置(試験装置)
AX 軸
M1,M2,M3 等価モデル
M4 制御モデル
P 供試体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11