(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004969
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】アンカー
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20250108BHJP
【FI】
E04B1/41 503F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104899
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】591091641
【氏名又は名称】三宅 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】三宅 晃
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA56
2E125AC13
2E125AC21
2E125BA16
(57)【要約】
【課題】全く錆びることのないALC用のアンカーを提供する。
【解決手段】筒状のアンカー本体の軸方向中央から先端に渡って、周方向に等間隔に複数のスリットが設けられて、隣接するスリット間を食い込み足となし、前記アンカー本体の先端に拡径部材が挿入され、後端に被固定部材の固定部である雌ネジを備えたアンカーを前提とする。前記アンカー本体を樹脂で成形し、補強金具で補強したものである。前記補強金具は、前記食い込み足の内側に対応する形状の食い込み足と同数の補強足と、当該複数の補強足の後端側で補強足相互を連結する連結環を備えた構成とする。前記補強金具は、アンカー本体の前記食い込み足の内側に補強足が沿い、前記食い込み足の付け根に前記連結環を位置させて補強構造とし、当該連結環の径を前記取付け部の雌ネジの径より小さくして、前記雌ネジの先端位置に段差を形成し、当該段差で、打ち込み治具を受ける構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のアンカー本体の軸方向中央部から先端に渡って、周方向に等間隔に複数のスリットが設けられて、隣接するスリット間を食い込み足となし、前記アンカー本体の先端に拡径部材が挿入され、後端に被固定部材の固定部である雌ネジを備えたアンカーにおいて、
樹脂で成形された前記アンカー本体と、
前記食い込み足の内側に対応する形状の食い込み足と同数の補強足と、当該複数の補強足の後端側で補強足相互を連結する連結環を備えた、補強金具と、
前記アンカー本体の内側であって、前記食い込み足の内側に補強足が沿うように前記補強金具が配設された補強構造と、
前記補強金具の連結環の後端の径が、前記雌ネジの内径より小さく、前記雌ネジの先端位置に形成された、打込受け段差と
を備えたことを特徴とするアンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明はALC用アンカーに関し、特に、樹脂製のアンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
ALC(軽量気泡コンクリート)用のアンカーとしては実公平4-50727公報(
図5)に示す、先端に3本の食い込み足を持った構造が使用されている。
【0003】
金属(例えば鉄)の筒状体100の中央部から軸方向先端に渡って、周方向に等間隔に複数のスリット110を形成して、隣り合うスリット間で食い込み足120を形成する。前記食い込み足120は先端程厚みが薄いテーパを形成し、当該複数の食い込み足120の先端には拡径部材20が嵌め込まれた状態となる。
【0004】
上記のアンカーをALCに、専用の打ち込みドリルを使用して打ち込んでいくと、食い込み足120がALCに食い込んでいくのであるが、このとき拡径部材20が、食い込み足120を広げてALCの中で開くので、アンカーとしての機能を呈することになる。
【0005】
このように固定されたアンカーの後端に設けられた固定部材130を利用して、被固定物を固定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のアンカーは、ALCに強力に固定できるので、建築部材として有益で、使用頻度は高いのであるが、主として鉄製であり、錆に若干弱いきらいがある。
【0008】
もっとも施工後は本体の殆どの部分がALCに埋まっているので、通常の環境では錆が出ることはないが、海に近い地域、湿度の高い環境ではまれに当該アンカーとALCの隙間から塩水や水分が入込んで錆びることがある。
【0009】
殆ど錆びない材料としてのステンレスを使用することも考えられるが、材料の違いから、製造工程も大きく異なり、価格が鉄製の10倍程度にもなる。この価格は大量に使用するこの種アンカーにふさわしくない値段となる。また、ステンレスであっても全く錆びないということではなく、強い塩分や蒸気に晒されると錆びることがある。
【0010】
材料に樹脂を選択すると、当然錆は発生しないが、強度が十分でなくまた、打ち込み時に食い込み足が折れることがある。
【0011】
本発明は上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、錆ない材質である樹脂と鉄を組み合わせることによって、全く錆びることのないALC用のアンカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、筒状のアンカー本体の軸方向中央から先端に渡って、周方向に等間隔に複数のスリットが設けられて、隣接するスリット間を食い込み足となし、前記アンカー本体の先端に拡径部材が挿入され、後端に被固定部材の固定部である雌ネジを備えたアンカーを前提とする。
【0013】
本発明は、前記アンカー本体を樹脂で成形し、補強金具で補強したものである。
【0014】
前記補強金具は、前記食い込み足の内側に対応する形状の食い込み足と同数の補強足と、当該複数の補強足の後端側で補強足相互を連結する連結環を備えた構成とする。
【0015】
前記補強金具は、アンカー本体の前記食い込み足の内側に補強足が沿い、前記食い込み足の付け根に前記連結環を位置させて補強構造とし、当該連結環の径を前記取付け部の雌ネジの径より小さくして、前記雌ネジの先端位置に段差を形成し、当該段差で、打ち込み治具を受ける構成である。
【発明の効果】
【0016】
上記のように、本願発明は樹脂製の本体と金属製(鉄製)の補強金具とによる複合体を形成しているので、樹脂と金属の複合効果を発揮する。すなわち、ALCに打ち込むとき、金属の腰の強さで、ALCに食い込むことができ、また、前記腰の強さで、引き抜き強度が大きくなる。また、前記補強金具は、前記樹脂製の本体に包まれた構成になっているので、海浜地域あるいは湿度の高い環境にあるALC建造物に使用しても錆ない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】本願発明と、打ち込み治具の関係を示す図である。
【
図4】発明のALCアンカーをALCに打ち込んだ状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の斜視図を示すものであり、
図2は、その軸方向断面図である。
【0019】
図5に示す、従来の金属製のアンカーの外形と同様の樹脂製のアンカー本体が射出成型で形成される。
【0020】
すなわち、樹脂製の筒状体10の軸方向中央部から先端に渡って、周方向に等間隔に複数のスリット11が設けられる。隣接する前記スリット間は、食い込み足12を構成する。
【0021】
前記筒状体10の後端は、内部に所定深さの雌ネジが形成され、被固定部材が固定される固定部13が設けられる。
【0022】
前記各食い込み足12は、筒状体10の軸方向先端に行くに従って、段階的に薄くなるよう(図面上3段階)に、テーパを形成しており、その先端は三角に尖った形状となっている。これによって、後に説明する打ち込み時にALCに食い込みやすくなる。
【0023】
前記筒状体10とは別に、以下の補強金具が用意される。
【0024】
補強金具30は、前記筒状体10の内径に対応する金属性のパイプの、後端部を連結環33とし、前記食い込み足12の内側に対応する形状で、食い込み足12と同数の補強足32が形成される。
【0025】
すなわち、補強金具30は金属性のパイプの軸方向に、前記複数のスリット11に対応する位置に軸方向の切込み31を設けて、前記隣り合う切込み間を補強足32とする。前記複数の補強足32は補強金具の後端の連結環33で連結される。
【0026】
このように構成された補強金具30は前記筒状体10を成形するための成形型の内側に配設され、この状態で、前記成形型に樹脂を射出する。これによって、前記補強足32は、食い込み足12の内側に密着し、当該食い込み足12と一体化した状態となり、前記連結環33が、前記固定部13の雌ネジの先端側に位置する構造となる。
【0027】
前記連結環33の径は前記固定部33の雌ネジの径より小さくなっており、前記固定部33の雌ネジの先端位置との間に段差40を形成する。後に説明するように、当該段差40で打ち込み治具50を受け止めることになる。
【0028】
前記各補強足32には軸方向に複数の小穴34が設けられ、前記のように成形型に注入された樹脂が、小穴34に入り込むことによって、金属である補強金具30と樹脂である筒状体10が完全に一体化して、剥離しない複合体を形成する。
【0029】
前記食い込み足12の先端には、従来同様拡径部材20が嵌め込まれ、打ち込み時に前記食い込み足12の径を広げながらALCに食い込むことになる。
【0030】
図3は、本発明のアンカーと打ち込み治具50との関係を示したものである。
図3(a)に示す打ち込み治具50の先端51が、
図3(b)に示すように、本発明のアンカーの固定部13の先端の前記段差40に当てられ、打ち込みドリルで打ち込み作業をすることになる。
【0031】
この打ち込み作業時に樹脂部分に大きな力が加わると、樹脂部分が損傷し、結果としてアンカーの機能を発揮しないおそれもあるので、打ち込み時には打ち込み治具50は、その先端51のみが前記段差40に当てられ、他の部分は樹脂部分に触れないようになっている。
【0032】
図4は、鉄の補強金具30をポリカーボネイトの筒状体10で覆った本願発明のアンカーを、ALCに打ち込んだ状態を示す写真である。
【0033】
前記したように食い込み足12は、前記連結環33の後端が打ち込み治具50の先端を受け止めることになり、強固にALCに打ち込まれた状態となっており、また、補強金具30の腰の強さにより、引き抜き強度も大きくなる。更に鉄製である補強金具30は、プラスチックである筒状体10に包まれているので、外気に直接触れることはなく、錆びることはない。
【0034】
仮に、樹脂の筒状体のみでアンカーを形成し、ALCに打ち込んだ場合、食い込み足が折れることがあり、この場合はアンカーとしての用をなさない。あるいは食い込み足が折れないでALCに打ち込まれることも多いが、金属による腰の強さがないので、引き抜き強度が小さく、大きな荷重に耐えないことになる。
【0035】
この点、本願発明は、プラスチックの筒状体に鉄製の補強金具を組み合わせた複合体としての効果、すなわち樹脂の効果として錆びない、金属の効果として腰が強い、の複合効果を発揮し、ステンレス以上に効果のあるALC用アンカーを得ることができる。
【符号の説明】
【0036】
10(100) 筒状体
11(110) スリット
12(120) 食い込み足
13(130) 固定部
20 拡径部材
30 補強金具
31 切込み
32 補強足
33 連結環
34 小穴
40 段差
50 打ち込み治具
51 打ち込み治具の先端